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格差と世界経済:真の進歩主義 ドイツのジレンマ 忘れられているメキシコ アメリカ人やめます
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投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 16 日 05:59:27: cT5Wxjlo3Xe3.
 

JBpress>海外>The Economist [The Economist]
格差と世界経済:真の進歩主義
2012年10月15日(Mon) The Economist
(英エコノミスト誌 2012年10月13日号)

経済成長を妨げることなく格差問題に取り組むには、急進的な中道という新しい形の政治が必要だ。

 19世紀末までに、第1次グローバル化の時代といくつもの発明が世界経済を一変させた。しかし、この「金ぴか時代」は周知の通り、不平等な時代でもあり、米国では「泥棒男爵」、欧州ではテレビドラマ「ダウントン・アビー」に描かれた階級が巨万の富を得た。「誇示的消費」という概念は1899年に生まれたものだ。

 貧富の格差の拡大(と社会主義革命の脅威)は、セオドア・ルーズベルトの反トラスト法からロイド・ジョージの人民予算に至るまで、一連の改革の波を呼んだ。各国政府は競争を促進し、累進課税を導入し、社会的セーフティネット(安全網)の最初の糸を織った。

 米国で新たな「進歩主義時代」と呼ばれるこの時代が掲げる目的は、起業家の活力を損なうことなく、公平な社会を実現することだった。

現代の政治に求められる改革

 現代の政治にも同様の改革が必要だ。経済成長を損なうことなく格差を軽減する方法を考えなければならない。このジレンマは既に政治論争の中心テーマになっているが、ほとんどの場合、議論は熱くなるばかりで光明を見いだせずにいる。このため、米国の大統領選では、左派がミット・ロムニー氏を泥棒男爵と攻撃し、右派はバラク・オバマ氏を階級闘争戦士とあざ笑う。

 欧州の一部の国では、大衆にあっさりと屈する政治家が現れてきた。フランスのフランソワ・オランド大統領が提案した75%という最高所得税率を見れば分かる。

 一方、多くの新興国では、指導者が格差の問題に蓋をしようとしている。中国政府はフェラーリを乗り回す太子党の贅沢に神経をとがらせながら困惑するばかりだし、インド政府は汚職の問題に取り組もうとしない。

 問題の根本には、アイデアの不足がある。右派はいまだに、格差が問題であることに納得していない。

 左派の基本姿勢は、富裕層の所得税率を引き上げ、歳出をさらに増やすことだ。停滞した経済が起業家を必要とし、セオドア・ルーズベルトやロイド・ジョージでさえ想像しなかったほど巨大化した政府が将来の気前の良い約束で自らの首を絞めている今、こうした左派の基本姿勢は賢明とは言いかねる。

 つまり、考えを劇的に改める必要があるということだ。その新たな考え方を「真の進歩主義」と呼ぼう。

 そもそも格差は本当に取り組むべき問題なのだろうか? グローバル化と技術革新という2つの力は、世界中で格差を縮小している。貧しい国が豊かな国との差を縮めているからだ。

 しかし、多くの国では、国内の所得格差が拡大した。世界人口の3分の2以上を占める国々で、1980年以降、所得格差が拡大した。それも、驚くほど拡大した国が多い。

持つべきか、持たざるべきか

 米国では、上位0.01%の最富裕層(約1万6000世帯)の所得は、1980年の時点で国民所得の1%余りにすぎなかったが、現在では5%近くを占める。金ぴか時代を凌ぐ割合だ。

 確かに、ある程度の格差は経済にプラスになる。懸命に働き、リスクを取る動機になるし、経済発展の原動力となる有能な革新者は報われる。自由貿易主義者は常に、市場のグローバル化が進むほど、勝者の報酬が大きくなると考えてきた。

 しかし、本誌(英エコノミスト)の今週号の特集でも述べているように、現在の格差は効率を低下させ、成長に悪影響を及ぼし得る段階に到達してしまった。

 最も分かりやすいのが新興国だ。中国では、国有企業とコネに恵まれた者ばかりに融資が集まり、エリートたちは一連の独占によって利益を得ている。ロシアでは、オリガルヒ(新興財閥)の富は起業家精神とほとんど無縁だ。インドでも、あまりに頻繁に、同じことが言える。


ウォール街に限らず、富裕層が手厚く優遇されている〔AFPBB News〕

 先進国では、縁故主義はもっと巧妙に姿を隠している。ウォール街が過度の富を享受している1つの要因は、「大き過ぎてつぶせない金融機関」に与えられる暗黙の補助金だ。医師や弁護士といった高給の職業には、不必要な競争制限的慣行がいくつもある。

 そして、最も不公正な富の移転が、福祉支出の使い道の誤りだ。社会的支出は、貧しい人を助けるよりも、比較的豊かな人にうまみをもたらすことが多い。

 米国で上位5分の1の富裕層が手にした住宅補助(住宅ローン金利の控除)は、下位5分の1の貧困層が暮らす公営住宅に使われた金額の4倍にも達する。

 能力主義が生み出す格差さえも、成長を妨げることがある。所得格差がある程度まで拡大すると、特に教育などの面で機会均等が損なわれる。

 米国の社会的流動性は、一般通念に反し、大方の欧州諸国より低い。富裕層と貧困層の子供ではテストの点数にも差があるが、その差は25年前より30〜40%ほど広がっている。また、指標の取り方にもよるが、中国は米国よりも階級間の流動性が低い。

 最上層にいる人の一部は、格差そのものが問題であることに今後も疑問を持ち続けるだろう。しかし、そうした人でさえ、格差の軽減に利害関係を持つ。もし格差の拡大が続けば、変化への気運が高まり、誰のためにもならない政治的な結末を招きかねないためだ。

 共産主義はもう復活することはないかもしれないが、まずい思想はいくらでもある。

 だからこそ、真の進歩主義への計画が必要なのだ。以下に本誌の提案を紹介する。左派、右派からアイデアを拝借し、成長を妨げない3つの方法で格差問題に取り組む案である。

競争を促進し、対象を絞り、改革を実行せよ

 優先すべきは、中国の国有企業であれウォール街の大手銀行であれ、独占や既得権に対するルーズベルト式の攻撃だ。


世界一の富豪カルロス・スリム氏がメキシコの通信産業で財を成したのはただの偶然ではない〔AFPBB News〕

 特に新興国では、政府との契約に透明性を持たせ、効果的な反トラスト法を導入する必要がある。世界一の富豪カルロス・スリム氏がメキシコの通信会社で財を築いたのは偶然ではない。メキシコの通信業界は競争圧力が低く、とてつもない高価格が維持されていた。

 先進国にも、開放すべきものが多々ある。欧州連合(EU)経済で、本物の単一市場と呼べる部分はごくわずかにすぎない。教育制度を改革し、選択を導入することも重要だ。米国の教職員組合は、ウォール街の銀行家が誰もやったこともないほど社会の流動性を損ねた。

 欧州の労働法や、中国の戸籍登録制度「戸口」の名残といった歪みを排除することも、大きな効果があるだろう。

 次に、政府支出の対象を貧困層と若者に絞ることだ。新興国では、富裕層を過度に優遇する結果につながっている一律の燃料補助金(アジア)や、比較的豊かな層に有利な手厚い年金(中南米)に余りに多くの予算が投入されている。しかし、最大の改革対象は、先進国の社会保障制度だ。

 社会の高齢化の現状を考えると、政府が高齢者への支出を削減できる望みはない。それでも、支出増加のペースを抑えることはできる。退職年齢の大幅引き上げや、資産調査による給付額の決定といった方法が考えられる。そうして削られた予算の一部は教育に回すことができる。

 最初の進歩主義時代には、公立の中等学校が作られた。今回は、就学前教育と失業者再教育に力を注ぐとよい。

 最後は税制改革だ。富裕層を罰するような形ではなく、累進的でありながらもっと効率的に徴税する。税金逃れが横行している新興国では、税率を引き下げて強制力を強める方がいい。

 先進国では、富裕層を優遇するような控除(米国の住宅ローン金利控除など)を廃止し、賃金と資本所得の税率の差を縮小し、富裕層が大きく負担する一部の財産税など、効率的な税への依存を高めるべきだ。

 この提案は、既に様々な国でそれぞれ部分的に採用されている。中南米諸国は学校に投資しており、最貧困層のための条件付き給付制度を新たに構築した。中南米はほとんどの国で格差が改善している唯一の地域だ。インドとインドネシアは燃料補助金の縮小を検討している。一般にアジア諸国は、社会保障制度の整備にあたり、欧米のような浪費はしまいと決意している。

 先進国では、北欧が最も創意に富む。スウェーデンは、明らかに巨大化した社会保障制度を見直し、誰でも利用できる教育バウチャー制度を導入した。英国も教育制度改革に取り組み、福祉の簡素化を進めている。

 米国では、ロムニー氏が高齢者向け医療保険制度メディケアのための資産調査と税控除の削減を提案している(ただしロムニー氏は詳細を明らかにしていない)。

 一方、民主党のオバマ氏は、共和党のセオドア・ルーズベルトの言葉を引いて政策を正当化し、英労働党を率いるエド・ミリバンド氏は、保守党のベンジャミン・ディズレーリが唱えた「ワン・ネイション」(1つの国家)のマントに身を包もうとしている。

変革を遂げられなければすべての人が代償

 こうした党派を超えた表現は変化の兆しだ。しかし、政治家の行く手には長い道のりが待っている。右派の本能はほとんどの場合、政府を良くするというより、政府を小さくする方向に働く。

 平等主義とされる左派の失敗はもっと根本的なものだ。世界中の先進国で、社会保障制度の資金が底を突き、成長が鈍化し、格差が拡大している。しかも、左派が提示する唯一の答えは、富を生み出す者への税率を上げることだ。

 オバマ氏、ミリバンド氏、オランド氏は、公正と進歩の両立を約束する答えを提示しなければならない。それができなければ、すべての人が代償を支払うことになる。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36305


 

JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
社説:ドイツのジレンマ
2012年10月16日(Tue) Financial Times
(2012年10月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 アンゲラ・メルケル首相は長らく、ドイツの財政政策の緩和を求める声に抵抗してきた。ドイツ政府は自国の財政をきっちり管理する一方、他国にも同じことを求め、模範を示すことでユーロ圏を先導すきだと主張してきた。

 メルケル首相は、有権者の怒りを買うことも恐れていた。ドイツの有権者はこれまでのところ、政府が一段と債務を積み増すことに断固反対の姿勢を取ってきたからだ。

減税を通じた景気対策を示唆


これまでは財政緩和を求める声に抵抗してきたメルケル首相だが・・・〔AFPBB News〕

 メルケル首相は今、考えを変えつつあるようだ。確かに、首相は具体的な政策を発表していないし、ましてや何かを確約したわけでもない。首相が突如、盛大な政府支出を始める可能性も低い。

 だが、ドイツがついに減税を通じて経済を刺激する可能性を示唆する先週の動きは歓迎すべきだ。

 所得税や付加価値税の税率を引き下げれば、首相はこのところ低迷している消費支出を促進できる。ドイツ人が減税で生じた余分な資金の一部を輸入品に回せば、減税の効果は問題を抱えたユーロ圏周縁国に波及するだろう。そうなれば、ドイツが長らく要求してきた周縁国の財政再建の助けにもなる。

 財政緩和を図るべき理由は、国外にもたらす効果にとどまらない。国内にも立派な理由がある。危機の大部分を通じて、経済成長が急ピッチで、失業率が急激に低下したことから、ドイツは自国を繁栄の島と見なすことができた。

 このバラ色の状況が突如、暗転した。ユーロ圏の危機がドイツの輸出と消費者、企業双方の景況感に打撃を与えたため、経済成長は減速すると見られている。失業率も底を打ったように見える。欧州の状況が悪化し続ければ、ドイツも景気後退に陥りかねないと一部エコノミストは予測する。

有権者の関心も成長不足に移る可能性

 ドイツ政府が経済を助けるために取るべき対策はほかにもある。最も重要なのは、従来より速いペースの賃金上昇を訴えることだ。これは消費支出を促すだけではない。他のユーロ圏諸国のためにもなる。賃金が大きく上昇すれば、ドイツと欧州のパートナー諸国との競争力の格差が縮まるからだ。

 こうした景気拡張的な政策を取る論拠は、経済の実利主義だけによるわけではない。政治的なご都合主義も働く。ドイツの政治家はこれまで、経済にとって有益なうえに有権者を喜ばすことにもなると考え、国家財政を引き締めることを選んできた。

 だが、2013年の選挙に向けて景気の減速感が増せば、有権者は債務に対する警戒を緩め、成長の不足をより心配するようになるかもしれない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36319

 


 

JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
米大統領選で忘れられている重要国メキシコ
2012年10月16日(Tue) Financial Times
(2012年10月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


人口構造からしても、米国は変貌を遂げて中南米諸国の一員になろうとしている〔AFPBB News〕

 選挙は何らかの結果をもたらすと言われる。しかし11月6日に行われる米国大統領選挙が、この国が直面している最大のトレンド――米国が変貌を遂げて中南米諸国の一員になっていくこと――に大きなインパクトを及ぼすかどうかは疑わしい。

 米国の人口動態の趨勢や地域統合の動きにとって、バラク・オバマ大統領とミット・ロムニー氏の違いはさほど重要でないうえに、両者の討論はこれらの問題に全く関係のないものになっているからだ。

 考えてみてほしい。メキシコは今、米国にとって最も重要な貿易相手国へと急速に変化しつつある。既に米国にとっては2番目に大きな輸出先だ。それにもかかわらず、今回の選挙戦では、麻薬か不法移民の話題でしかメキシコのことが語られていない。現実と政治がここまで大きくかけ離れることはめったにない。

米国経済にとって中国並みに重要な国になりつつあるメキシコ

 米国における中南米を巡る現実は以下の通りだ。第1に、メキシコはこのところ急速に、米国経済にとって中国並みに重要な国になりつつある。米国ではここ数カ月、製造業の雇用が中国から米国に戻ってくる「リショアリング」の可能性について期待がかなり高まっているが、帰還先を「北米」に拡大するなら、このトレンドはもう進行中だ。

 メキシコは今や、米国企業やそのほかの多国籍企業が製造拠点を設ける国の座を中国と争うようになっている。米国とメキシコの経済的な統合度は、ユーロ導入国同士のそれに匹敵するほどなのだ。

 こうした流れが生じている最大の理由は、石油価格の上昇に求められる。米国企業は東アジアのような遠いところで作った製品を米国内に持ち込んできたが、原油高のためにその輸送コストが次第に重荷になっている。

 もう1つの主な理由は、中国の賃金水準の持続的な上昇にある。大手金融グループのHSBCによれば、2000年には中国の平均的な労働者が受け取る賃金は時間当たり35セントで、メキシコのそれは1ドル72セントだったが、現在では中国が1ドル63セントでメキシコが2ドル11セントとなっている。近いうちにメキシコの人件費の方が安くなるだろう。

 国内が製造業ブームに沸いていることから、メキシコ人はもう、米国の建設現場で働いたりカリフォルニア州やフロリダ州で果物の収穫作業に従事したりすることにさほど興味を示さなくなっている。

 米国の選挙戦で示唆されていることは対照的に、米国への不法移民のトレンドはここ数年逆方向になっている。10年前には、年当たりでざっと80万人のメキシコ人が――そのほとんどが不法に――国境を越えて米国にやって来たが、今ではこの人の流れが反転しているのだ。

反転した人の流れ


米アリゾナ州ノガレスで、米国への不法入国が発覚したメキシコ人をメキシコに送還する米税関国境警備局の職員〔AFPBB News〕

 移民史上最も平和な移住の時代は終わりを迎えた。

 オバマ氏もロムニー氏もこのメモは受け取っていないようだが、オバマ大統領は150万人近い不法移民を強制退去させることでこのトレンドを後押ししてきた。この強制退去の人数は、ジョージ・ブッシュ前大統領とビル・クリントン元大統領の合計値をも上回る。

 今では、メキシコ人が米国に投資するために国境を越えてくるケースも多くなっている。筆者の同僚であるアダム・トムソンが報告しているように、メキシコ企業の間では両国国境の北側での事業展開が1つのブームになっている。

 メキシコ企業はこの現象を冗談まじりに「レコンキスタ(国土回復運動)」と呼んでいる。メキシコは1846年の戦争で米国にかなりの領土を奪われているからだ。

 片や米国は今でも、メキシコとの関係を法と秩序の問題だと捉えている。しかし、両国の統合で重要なのは経済だ。その先頭を走っているのは、米国最大のセメントメーカーとなったセメックスや、サラ・リーの事業の一部を10億ドル近い価格で先日買収した製パン会社グルポ・ビンボといったメキシコ企業である。

 メキシコ最大の放送局であるテレビサが出資するユニビジョンは、今や米国で5番目に大きなテレビネットワークになっており、近いうちに3大ネットワークに食い込んでくるかもしれない。

目もくらむ速さで変化する米国の人口構造

 第2に、米国の人口構造は目もくらむ速さで変化している。世間では遠い将来に、すなわちメキシコ系米国人が米国の全人口の3分の1を占めると予想されている2050年に焦点を合わせる向きが多いが、足元の数字でもめまいを引き起こすには十分だ。

 例えば、米国で最も人口の多いテキサス州とカリフォルニア州では、学校に通う子供たちの過半数がヒスパニック系で占められている。この子供たちは明日の有権者にほかならない。法と秩序の問題としてしか語られないことが多い米国とメキシコの関係を、大人になった彼らが許容するかどうかは疑問だ。

 隠し撮りされていた今年5月の資金集めの会合で、ロムニー氏は「(自分の)父親がメキシコ人の両親の元に生まれていたら、私がこの選挙に勝つ可能性はもっと高くなっていたはずだ」と冗談を言っていた。ロムニー氏の父親はメキシコにある米国人モルモン教徒の入植地で育てられた。ここには現在も、ロムニー氏の親族が住んでいるという。

 米国のヒスパニック系の有権者のうち、来月の選挙でロムニー氏に投票する人は3分の1にも満たないだろう。しかし、残る3分の2の有権者がオバマ氏を熱狂的に支持しているわけではない。

 認識が現実に追いつくのは果たしていつのことになるだろうか? 今から20年前、ロス・ペロー氏が第3党の候補として名乗りを上げ、ジョージ・ブッシュ氏(父親の方)とクリントン氏の大統領選挙の形勢を一変させたことがあった。

 ペロー氏はその翌年、北米自由貿易協定(NAFTA)に反対するキャンペーンを展開し、その批准を阻止する寸前まで突き進んだ(結局は、大統領になったクリントン氏がやっとの思いで連邦議会の承認を取りつけた)。

メキシコ側が国境警備を強化する日も?

 テキサス生まれの一匹狼であるペロー氏は、米国の雇用が南の方に「吸い込まれる大きな音がする」と言ってNAFTAを強く批判していたが、その主張は間違っていた。メキシコも米国もこの協定から利益を得ており、両国は切っても切れない関係になっているからだ。

 とはいえ、賃金がメキシコに大量に吸い込まれていくことをもし予測していたら、ペロー氏はほぼ及第点だったと言えるかもしれない。メキシコの中間層が今後豊かになるにつれて、米国の悩み多き中間層との差は縮小していくのだろう。実際、両者はコインの裏表の関係にある。

 メキシコの中間層が追いついた段階で、ひょっとしたら、メキシコ側が国境警備を強化しなければならない日がやって来るのかもしれない。

By Edward Luce


「アメリカ人やめます」
成功を求めて米国籍を離脱する時代に
2012年10月16日(Tue) 石 紀美子
 「日本人やめたい」──昨今の政治情勢や停滞の続く経済状況から、そんなことを冗談めかして口にする人がいる。もちろん実行することはないし、実際に日本国籍から離脱することは簡単なことではない。

 しかし、簡単に市民権を放棄できる国がある。米国だ。そして今年、米国の市民権を放棄する人の数が、史上最高となると予想されている。

「非国民」扱いされたフェイスブックの共同設立者

 2000年以来、年間200人台から多い年でも700人台だった米国籍離脱者および永住権放棄者の数は、2011年におよそ1800人となった。2012年はそれを上回る勢いで増えているという(内国歳入庁)。

 数としてはさほど多いように感じないかもしれないが、米国が二重国籍を認めていること、そしてこれまで世界で最も人気のあった国籍だったことを考えると、この変化を軽く見ることはできない。

 突然この問題が脚光を浴びたのは、ある若き億万長者が「節税のため」に国籍を放棄し、シンガポールに移住したことが明らかになったからである。

 エデゥアルド・サベリン氏(30)は、会員数10億人を超えたソーシャル・ネットワーキング・サービス「フェイスブック」の共同設立者の1人だ。共同設立者といっても、数年前に会社を追われ、フェイスブックの急成長に貢献することはなかった。しかし彼はフェイスブックの株式を推定4%所有していた。

 彼が米国籍を離脱した後に、フェイスブックの新規株式公開があった。サベリン氏の持ち株が時価推定で38.4億ドル(ブルームバーグ推定)だと知れ渡ると、全米が彼の国籍放棄を税金逃れだと決めつけ、非国民扱いした。

 キャピタルゲイン課税だけでもおよそ6億ドルの税金を支払わなければならないところを、キャピタルゲイン課税のないシンガポールに行けばその分の節税になるはずだ、というのが大方の見方だった。

 個人がおよそ500億円の節税とは、あまりにも桁違いの話で現実味がないが、彼は結果的に全米から集中砲火を浴びることになった。

「引き留め策」実施でも国籍離脱者はあとを絶たず

 大金持ちが国籍を別の国に移すと聞くと、たいていの人は「税金逃れだろう」と考える。しかし、サベリン氏のケースの詳細を知り、また、他の離脱者の声を聞けば聞くほど、いちがいにそうとは言えないことが分かってくる。

 過去には、大手企業の創始者や、大手投資ファンドの創始者など、名の通ったビジネスマンたちが“税金逃れ”と思しき理由で国籍を離脱し、バハマ諸島などに移住している。特に1990年代に著名な大金持ちが次々と国籍を放棄し問題になった。

 当時のクリントン政権は大きな非難を浴び、金持ちが絡む法案には及び腰の議会も何かしら対策を講じなければならなくなった。

 その結果、96年に30年ぶりに改定された移民法では、資産50万ドル以上かつ一定以上の所得税を支払い続けてきた記録があれば、自動的に「税金逃れの国籍離脱」と見なされることになった。そのペナルティーとして、離脱後の10年間は課税され続けることになる。

 また、理由の内容に関係なく、国籍離脱者の実名を連邦政府発行の官報に、四半期ごとに公表する「名前を公表して辱める案(Name and Shame)」が実行された。さらに、「税金逃れの国籍離脱」と認められた人物は、米国への入国を永久的に拒否されるという条項も盛り込まれた。

 しかし、移民法の改定後も国籍離脱者の数が特に減ることもなく、それまでと同じように定期的に大金持ちが市民権を放棄したというニュースが流れ、状況に変化は見られなかった。

 その理由は簡単だ。億万長者の税金逃れという理由は、ごくごく一部のことだったのだ。経済的な理由で離脱した人々の大半は、裕福ではあるが、注目されるほどの資産を持たない人々だった。

離脱者の大半は大金持ちではない

 米国は、居住地ではなく市民権をもとに課税する、世界で数少ない国の1つである。つまり、世界のどこに住んでいようとも、長年米国に住んでいなくても、一定以上の所得がある米国市民権所有者は、米在住の人と同じように課税されるのだ。

 極端なケースでは、親がたまたま米国旅行中に産気づき、米国内で生まれてしまったが、すぐに故郷の国に戻り、その後二度と米国を訪れることのなかった人がいるとする。そんな人が成人し、年間所得が800万円前後(毎年変更)以上になると、住んでいる国と米国に税金を納めなければならなくなる。

 次のようなケースもよく見られる。

 物心ついてから親の都合で米国に移住し、米国で市民権を得る。成人して、米国と出身国の両国に会社を設立する。もしくはさらにスケールの大きなグローバルなビジネスに関与する。次第に米国以外の国での生活の比重が高まり、米国には出張に訪れるくらいだけになる。しかし、住んでいる国だけでなく、米国にも税金を払わなければならない。そんな生活が何年も続いていると、二重課税が大きな負担だと感じるようになる。

 経済的な理由で米国籍を放棄する人たちには、このように二重課税の負担が重すぎるという理由が最も多いのだ。

 サベリン氏のケースは後者に近い。彼はもともとブラジルで生まれ育っている。父親が大成功を収めた実業家で、サベリン氏が11歳のとき、身代金目当てに金持ちの子供たちを誘拐していた犯罪組織に目をつけられた。そこで、サベリン氏は両親と一緒に米国に移住した。その後、両親共々、米国市民権を得た。

 彼はハーバード大学在学中に、フェイスブック創設に関与した。だが、初期に事業から手を引き、2009年からはシンガポールに渡ってIT関係の事業に幅広く投資してきた(彼は大学在学中から様々な投資で成功を収め、「金を生む天才」とされていた)。

 つまり、彼は報道で言われるように税金逃れのためにシンガポールに渡ったのではなく、人生の次の舞台として彼の地を選んだのである。

それでも「さよなら税」を払ったサベリン氏

 もう1つ、彼が節税のみの理由で米国を後にしたのではないことを裏付ける事実がある。

 2008年、スイスのUBS銀行が、長年、大がかりな米国人富裕層の資産隠しと脱税に関与していたことが明らかになる事件があった。このとき、資産隠しをしていると疑われる米国人顧客の情報の開示を巡り、スイスと米国の国際問題に発展した。

 米国税庁はこの事件をきっかけに、海外に在住、もしくは海外で収入のある米国人に対する徴税をより厳格化した。毎年の税金申告を怠ったり、誤った申告をした場合の罰金も、以前より厳しく取り立てるようになった。罰金は、2年続けて申告を怠っただけで、破産に近い状態になるほど高額になる。しかも米国の税金申請は複雑で、膨大な書類を作成しなければならない。

 さらに、海外在住の米国人に追い打ちをかけるような事態が発生した。スイスをはじめとするヨーロッパの銀行は、毎年、米国税庁に米国人顧客の情報を開示しなければならなくなった。それを回避するため、米国人クライアントを断るようになったのだ。

 米国税庁からの税金の取り立てはきびしくなり、毎年の書類提出は煩雑を極め、さらに金融機関との関係も複雑になった。そのことにうんざりした米国人の多くが米国籍を放棄する事態に至った。

 そこで米国政府はさらに法律を厳しくし、国籍を離脱する場合は、離脱する前日に資産全てを売却したと仮定し、その額に対して課税する「さよなら税(Exit Tax)」を制定した。

 サベリン氏は、まだ手放していないフェイスブックの株を、離脱日前日の時価で計算され、その額に対する税金を支払って米国を去った。その他の資産も考慮し、推定でおよそ5億ドルの「さよなら税」を払ったとされている。

 フェイスブックの株価は将来的に上がるかもしれないが、下がるかもしれない。つまり、「さよなら税」の方が、国籍離脱による節税額より上回る可能性もある。サベリン氏も他の離脱者たちも、この事実を理解している。単なる節税が目的なら、米国籍を放棄するのはリスクが高いのだ。

スーパーマンも米国籍離脱?

 では、米国籍を離脱する人々が増えているのはなぜなのか。

 そもそも米国は移民の国であるため、多重国籍の国民が多い。加えてグローバル化の進展で、ビジネスチャンスはあらゆる国に広がった。また、インターネットにより世界のどこからでも情報収集やコミュニケーションが可能になった。

 世界を飛び回って生きる人々にとって、市民権やそれに伴う国への忠誠心、つながりが以前より薄れている。

 市民権を簡単に買える国も増えた。チャンスがあれば、または経済的合理性があるのならば、その国へ移ればいい。自分たちは特定の国に束縛されたり心理的にとらわれたりしない「世界人」なのだ、という新しい風潮が、米国籍離脱者が増加する1つの理由になっていると思われる。

 彼らを「税金逃れ」など、従来の価値観で批判するのは当てはまらない。当人たちが、そのような世界観からすでに離脱しているからである。

 コミック「スーパーマン」の最近のエピソードに、スーパーマンが米国籍の離脱を考えていると告白する話がある。1938年にクリプトン星からやって来て、米国人として育ったスーパーマンは「真のグローバルなヒーローになるため」国籍を放棄したいと言う。

 国籍や市民権に対する意識の変化は、現実の世界だけでなく、コミックの世界にまで忍び寄っている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36278  

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