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日本経済再生と日中関係 中国人がこれほど激しく日本に反発する理由 経済面で急接近する中韓両国
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/207.html
投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 22 日 06:12:06: cT5Wxjlo3Xe3.
 

JBpress>日本再生>世界の中の日本 [世界の中の日本]
日本経済再生と日中関係
2012年10月22日(Mon) 瀬口 清之
 「日本経済にとっての中国経済の重要性は来年、再来年になればよりはっきりと見えてくる。それは日本の高度成長期における米国経済のようなインパクトを持つものだ」

 これは講演等の機会に繰り返し述べてきた私の見方である。日本と中国が今後、一段とウィン・ウィン関係を強めることにより日本経済へのプラスのインパクトがさらに高まることを予想したものだった。

 ところが、尖閣諸島国有化問題を巡る日中関係の悪化により、タイミングは予想より早く、方向は日中両国の経済に対するマイナス効果が生じる形で日中経済関係の重要性が明らかになりつつある。

日中関係悪化は両国の経済だけでなく内政にとっても大きなダメージに


経済減速感が強まる中国〔AFPBB News〕

 中国での受注急減を背景に日本の大手自動車メーカーが3社とも大幅減産に追い込まれた。

 自動車産業は関連産業の裾野がとくに広いため、他の日本企業に与える影響が大きい。最近は各社とも自動車部品の現地調達比率を引き上げているため、中国経済への影響も同様に大きいはずである。

 中国リスクに対する懸念の増大が、自動車関連産業以外も含めた日本企業全体の対中投資戦略の抜本的な見直しにつながれば、両国経済へのダメージはさらに拡大する。

 消費税増税を決定したものの、財政再建、経済再生の道筋が見えていない日本経済にとっては極めて深刻な問題である。足許の経済回復、雇用確保、そして長期的には日本経済再生を目指すのであれば、早期に日中関係の正常化を図る必要があるのは言うまでもない。

 好むと好まざるとにかかわらず、日中両国の関係はすでにそこまで緊密化しているのである。それを明確に意識しながら対中外交に臨むことが必要となっている。

 中国に対して安易に妥協することは政治的に不可能であるが、経済回復、雇用確保、経済再生のエンジンとなる日中間のウィン・ウィンの経済関係を犠牲にすることもできない。

 経済関係を犠牲にすれば、国民が一番困るのは言うまでもないが、政権与党としても経済停滞を招いた責任を追及され、次の総選挙で政権交代に追い込まれる可能性が高まるからである。

 この政治と経済のバランスをうまくとりながら、日中関係をコントロールしていくことが今後の日本の政権与党にとって極めて重要な課題であることが今回の事件によって明らかになった。

 一方、中国政府は、今後経済成長率が徐々に低下していく中で、貧富の格差の改善、国有企業の民営化、官僚の汚職・腐敗・権力乱用の是正、環境保護規制の強化など、いくつもの難題を抱えながら、経済と社会秩序の安定を維持していかなければならない。

 そうした内政事情を考慮すれば、日中経済関係を政治外交の犠牲にできなくなった点は中国の政権にとっても同様であるはずだ。

天安門事件後、日本がいち早く中国と経済協力を復活させた理由

 少し視点を変えて、過去の日中関係を振り返ってみたい。1980年代、中国経済は改革開放路線を順調に歩み、日本は中国に対する経済協力、技術支援を惜しまなかった。

 1989年の天安門事件の後、中国は世界中から人権問題を批判されて国際社会の中で孤立した。国内経済面では保守化回帰への揺り戻しの中で、経済発展が停滞した。その時、世界に先駆けて中国への経済協力を復活させたのは日本政府だった。

 それは中国を再び世界の中で孤立させるのではなく、改革開放政策の継続によって世界の政治経済の重要なプレイヤーの一員として加わらせるために自ら率先して動いたものである。それが日本の国益にとって重要であるという判断に基づく外交戦略だった。

 米国の政策に対する受け身の形で外交政策を展開することが多い日本にとっては、珍しく主体的に国益と国家戦略を考えて動いた結果だった。

 その考え方は世界から支持され、日本に続いて他の欧米諸国も中国との関係回復に動いた。その発端を開いたのは日本だったのである。

 その後、10年以上を経て日本経済はその恩恵を受けた。中国は1990年代以降、インフレや不良債権問題に苦しみながらも改革開放の基本方針を堅持し、長期にわたって高度成長を続け、日本にとって重要な貿易相手国となった。

 米国のITバブル崩壊後、そしてリーマンショック後の世界経済停滞の中にあって、日本経済は中国向け輸出の拡大を支えとして景気回復を実現した。

 そして現在も、欧州財政金融危機とその後の欧州経済停滞、そして米国経済の長期停滞からの回復の遅れが続く中、日本経済が相対的に健全性を維持できているのは、やはり中国との経済関係の影響が大きい。

 その意味で、日本が1990年代初頭に中国を世界の政治経済の重要なプレイヤーの一員に加わらせるために動いた政策は、日本自身にとって多大な恩恵をもたらしたのである。これは外交政策として非常に大きな成功だったと評価することができる。

 今後日本が経済再生、財政再建を実現していくためにも、中国とのウィン・ウィン関係をより強固なものとしていくことが必要である。

世界経済も日中関係の行方を固唾をのんで見守っている

 1972年に田中首相、大平外相が大きな政治リスクを冒しながら、日中国交正常化に踏み切った。そして、1980年代、大平総理が対中経済協力を実施し、それが中国経済の発展に大きく貢献した。

 そこから得られた日本にとっての果実は上記のとおりである。国家経済を長期的に発展させるには、こうした大きな国家戦略を描き、政治的なリスクを乗り越えて、国益の実現を図っていくことが重要である。

 現在、日本は中国との関係において、非常に難しい外交課題を抱えている。しかし、これは今に始まったことではない。1972年の国交正常化の方がはるかに難しい問題だったはずだ。


日中対立による世界経済への影響に懸念を示したラガルドIMF専務理事〔AFPBB News〕

 一方、経済的なメリットの大きさは明らかである。世界第2位と第3位の経済大国が、1980年代以来、双方の努力で築き上げてきた緊密な経済関係を維持して、ウィン・ウィン関係を享受しているのである。

 これをさらに発展させることが両国にとって極めて大きな恩恵をもたらすことは明白である。

 さらには、今回のIMF総会でも明らかとなったように、世界中の人々が日中関係が正常化し、両国が世界経済のリード役として停滞する世界経済の支えとなることを期待している。

 これは日中関係の改善が日本経済の再生や中国経済の安定のみならず、世界経済にとっても重要な意義を持つようになったことを示している。その土台を形成したのは1980年代から90年代の日本自身の政策努力だったことを忘れてはならない。

 今回の尖閣諸島国有化問題を巡る日中関係悪化の発端は石原都知事の尖閣購入発言だった。これを阻止し、「平穏かつ安定的な維持・管理」のために日本政府は尖閣諸島の国有化に踏み切った。その真意が中国側に理解されず、日中関係は悪化してしまった。

 しかし、日本政府の尖閣諸島に関する「平穏かつ安定的な維持管理」を目指す基本方針は日中双方の国益に沿ったものである。周恩来やケ小平が下した賢明な判断に基づいて領土問題を棚上げしてきた中国の基本方針にも合致している。

 以上を踏まえて、少なくとも現状に比べれば、平穏かつ安定的な従来の状態に戻すためには日中両国でどのような解決策があるのかを模索し、早期に実行に移すことが望まれる。

 それが中国における日本企業の製品・サービスに対する需要回復、そして対中投資の拡大傾向持続につながれば、日中両国がこれまで30年以上の時間を費やして築いてきてウィン・ウィン関係をさらに発展させることができる。

 これは1972年の国交正常化以降、1980年代、90年代と日本が主体的に取り組んできた国家戦略の果実をきちんと収穫し続けることを意味する。

 短期的な視点にとらわれず、大きな視点から日中関係の意義を考え、国益に沿った国家戦略を冷静に実現していくことが重要である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36322


JBpress>海外>中国 [中国]
それでも日中は互いに欠かせない存在である
中国人がこれほど激しく日本に反発する理由
2012年10月22日(Mon) 柯 隆
 今回の尖閣問題に関して、多くの日本人は中国人がなぜここまで激しく反発するのか不思議に思っているようだ。

 一部の評論家は、「国有化」という言葉が意味するものが日本と中国で違うから誤解が生じている、と解釈をする。だが、領有権の争いが存在する島を国有化することは、言葉のニュアンスの違いだけでは片づけることはできない。

 筆者は、今回の両国の対立が激化する背景には、国民性の違いもあるのではないかと考えている。

 もしも中国と韓国の間で島の領有権の争いが存在し、韓国が実効支配している島に韓国大統領が上陸した場合、中国は同様に激しく反発するだろう。だが、竹島問題について日本は韓国に反発らしい反発を行っていない。

 これが中国ならば、すべての韓流ドラマの放送を禁止し、韓国へのキムチや白菜やニンニクの輸出を禁止するに違いない。揚げ句の果てに北朝鮮への援助を増額するかもしれない。

 しかし、竹島問題が騒がれても日本では韓流ドラマの放送はそれまで通りである。先日、新聞のテレビ番組欄で1日に放送される韓流ドラマをざっと数えてみたら15本もあった。竹島問題があっても日韓関係は冷えていない。

 尖閣問題以降、中国に住む日本人の友人から「柯さん、中国に滞在するのは怖い」という連絡をもらったことがある。ほぼ同時期に、中国にいる親族から「日本にいて大丈夫か? なにかあったらすぐに帰ってきなさい」と言われた。幸いにも、日本で生活する私と私の家族に日本人が危害を加えることは今のところないし、これからもないと信じている。

 むしろ、私の意見に賛同してくれる日本人も少なくない。ネット上では日本政府と日本の政治家を批判する書き込みが見られるが、ツイッターなどで私を罵る日本人は今のところ現れていない。反対に、中国版ツイッターの「微博」で、私が対日関係についてもっと冷静に対応すべしとつぶやいたら、「売国奴」と何回も罵られた。私は無一文で日本にやって来たし、中国の国有資産を処分する権限も一切持たない。一体何をもって私が国を売るというのだろうか。

 私の願いはたった1つである。日本と中国が隣同士の国として「普通の関係」に回帰することだ。特別な友好関係を結ぶ必要はない。個人の関係に例えれば、道端で挨拶する程度で十分である。

被害者の戦争の記憶はなくならない

 日中関係を論じるうえで避けて通れないのはあの戦争の負の遺産である。日本人からすれば、十分に反省しているのに、なぜ中国人や韓国人に許してもらえないのか不思議かもしれない。中国人と韓国人はいまだにことあるたびに「日本は軍国主義を復活させようとしている」と指摘する。

 日本で生活する筆者は、軍国主義の復活を夢見る日本人はごく一部で、日本が軍国主義に回帰することはないと確信している。日本は軍事費をもっと増額すべしと主張する論者もいるが、現実的には不可能である。

 いかなる側面から見ても、日本は平和な国である。とはいえ、中韓の日本に対する国民感情はなかなか変わらない。なぜなら、あの戦争の記憶は簡単には拭い去ることができないからである。

 考えてみれば、仮に日本が外国の軍隊に8年間も占領され、自国の軍人と平民が多数殺されたとすれば、70年前のことだから忘れてくださいと言われても、忘れることはできないはずである。

 24年前、私は名古屋へ留学するため南京を出発するとき、当時80歳の祖父に呼ばれ、「日本に行ったらしっかり勉強してきなさい」と激励された。そして、そばにいる祖母から「戦争のとき、おじいさんは無錫で日本軍に捕えられ、20日間留置所に入れられた」と初めて教えられた。幸い、祖父は知識人であり軍隊の兵士ではないことが判明し、その後釈放されたという。

 印象的だったのは、私を日本に送り出すとき祖父も祖母も淡々と過去の出来事を伝えただけで、日本への敵意や反感が感じられなかったことである。そうでなければ、今、私は日本にいないだろう。

 繰り返しになるが、戦争から70年経ったとはいえ、被害者は、自分がどんな仕打ちを受けたのかを忘れることはない。おそらく日本人も同じだろう。福島の会津若松の住民は、幕末の戊辰戦争の怨みでいまだに山口と鹿児島を快く思っていない、という話も聞く。無論、いつまでも過去の重荷を背負っては前へは進んでいかない。

中国との「交流」が足りない

 アメリカ人にとって中国人は世界の中で最も分かりにくい民族である。中国人特有の「適当」な性格はアメリカ人にとっては理解不能で、不安にも感じられるようだ。私がアメリカを訪れたとき、チャイナタウンはアメリカの普通の人が立ち入ってはならない場所になっているようだった。

 同時に、アメリカの宣教師は世界で一番の冒険家と言えるかもしれない。ノーベル文学賞を受賞したパール・バックは、アメリカから中国に渡った宣教師の娘だった(彼女もまた宣教師となった)。パール・バックは中国で育ち、中国人の心を洞察できたからこそ、あの不朽の名作『大地』を生み出せたのである。

 また、第2次世界大戦後に駐中国大使を務めたスチュアート・ライデンも宣教師だった。彼は、中国人以上に中国語と中国文化に精通する専門家だった。

 一方、今の日本には中国問題の本当の専門家がずいぶんと少ない。「中国の食べ物や文化が好きだ」という日本人はいるが、中国問題の専門家と思われる人はなかなかいない。

 まず語学の問題がある(これは日本の戦後教育の大きな欠点と言える)。英語教育はずっと英文読解教育だったし、中国語教育となるともっと低レベルであり、ろくに行われていない。「中国語ができる」と自称する日本人にいろいろな場で出会うが、正直言って中国語で普通にコミュニケーションできる日本人はごくわずかである。

 何よりも致命的だと思うのは、日本のグローバル化が遅れたせいか、日本人の外国人を見る目が一向に向上しない点である。付き合う人が玉か石かを見分けるのはその人の眼力次第である。

 中国に駐在する日本人には1つの傾向が顕著に見られる。それは、彼らが中国人の悪いところばかり身につけているのである。おそらく、教養のない、質の悪い中国人ばかりと付き合っているのではないかと思われる。

 子供のときに親から「いい人と友達となって、悪い仲間と友達にならないように」と教えられなかったのだろうか。もしかしたら飲み屋のホステスとばかり友達になっているからなのかもしれない。

 日本はもっと中国のことを研究し、理解すべきである。日中関係を正常化させるには、互いを知るための交流をもっと強化しなければならない。

双方が一歩ずつ下がるのが現実的な解決策

 日本政府は尖閣諸島を国有化した。それに対して中国政府は猛烈に反発している。日中関係は解のない方程式のような局面に直面している。

 おそらく尖閣危機を解決する唯一の方法は、日中双方が一歩ずつ下がることしかないと思われる。なぜ下がらないといけないかというと、日中のいずれにとっても相手の存在が欠かせないからである。

 ただ、簡単には下がれないだろう。双方の国益とメンツがかかっているからである。では、具体的にどのように下がればいいのか。

 今回の危機は、東京都による島購入から始まったが、日本政府による島の国有化は40年前の周恩来首相と田中角栄総理による「現状維持」の口約束に反している。そのため、日本の国益を損なわない前提で現状維持の方向へ戻す必要がある。

 しかし、ここまで来て島を個人に返すわけにはいかない。であるとすれば、第3の道を探る必要がある。

 第3の道とは国有化ではなく、元の個人所有でもない選択肢である。それは前回も述べたように、第三者の日本のNGO、あるいは財団法人や社団法人に島を譲渡することだ。第三者に譲渡すれば、中国のメンツもつぶれなくて済むはずである。

 ただし、東京都が島購入を宣言する前から、ここ数年、中国の船が尖閣諸島の海域に頻繁に出入りしていた。これが国民感情の対立を誘発している。尖閣諸島を第三者に譲渡するだけでは、問題の解決にならない。

 重要なのは、それを譲渡したあと、日中が尖閣諸島に関する協定を結ぶことである。すなわち、尖閣諸島の海域を立ち入り禁止海域にし、日本の船も中国の船も立ち入りしてはならないとする。この協定の有効期間は長ければ長いほどいい。例えば、今後50年間、誰も立ち入りできないようにすれば、向こう50年は尖閣紛争が爆発しなくて済む。

 そして最初の一歩を踏み出すために、国有化を決めた野田佳彦総理は胡錦濤国家主席に直談判を申し入れるべきではないだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36306

JBpress>日本再生>国防 [国防]
経済面で急接近する中韓両国
領土問題での中韓両国の強硬姿勢の背後にあるもの
2012年10月22日(Mon) 矢野 義昭
 今年に入り竹島、尖閣諸島をめぐり日本と中韓両国との対立が深まっている。特に韓国は、退任を間近に控えた李明博大統領が、突然竹島を訪問し、天皇陛下の訪韓には謝罪が必要と発言し、あるいは野田首相の親書を返送するなど、異様なほどの強硬姿勢を示している。(敬称略)

 またそれに前後して、尖閣諸島の国有化に反対して中国国内で暴動が多発するなど、中韓が連携して日本に対して挑戦的行動を繰り返しているようにも見られる。

 しかしこのような中韓の対日強硬姿勢は、単なる偶発的な事件でも、激情に駆られた無軌道な行動でもない。背後には、日米中のパワーバランスの変化を読み取り中国寄りに舵を切った李明博政権の冷徹な戦略的計算と、南北朝鮮を含めた北アジアでの地域覇権の樹立という中国の長期戦略がある。

外交面での中韓接近

 中韓両国の関係は2011年に入り、新たな展開の兆しが見られた。2011年に国交樹立19周年を迎え、中韓両国は外相及び防衛相レベルの交流を行い、両国間の関係好転に弾みをつけようとした。

 2011年6月にブダペストでのアジア欧州外相会談の際に最初の外相会談が行われ、7月にはバリの東南アジア諸国連合(ASEAN)地域会合の際にも外相会談が行われた。また2011年7月にソウルで初の「中韓戦略対話」が行われ、引き続き同月にシンガポールで両国国防相の会談が行われた。

 同じ時期に中朝間では、中朝友好協力相互援助条約50周年を記念して2011年7月に祝賀行事が行われた。それに先立ち、同年5月に北朝鮮の金正日(故人)はロシアを訪問し、シベリアで当時大統領だったドミトリー・メドベージェフと会談している。

 その帰路に黒竜江省の省長と会談した。この金正日の訪露は、東京で行われた日中韓の3国首脳会談の際の温家宝、李明博会談に対抗して行われたものであろう。

 2011年6月には中朝は予定外の「戦略対話」を60周年記念に先立って行い、さらに8月の朝鮮人民軍代表団の訪中時には、中朝は軍事協力の強化にも合意した。

 また中朝間の新しい合弁事業についても話し合われた。しかしこのような北朝鮮による中韓接近に対する牽制外交は、6か国協議の再開のめども立たないなど外交的には行き詰っている。

 しかし2011年以降、中韓の間では新たな懸案事項も生じた。

 韓国が大統領選に備え中国が指導部の交代に差し掛かった権力の移行期に、脱北者に対する中国の扱い、韓国の排他的経済水域(EEZ)内での中国漁船の不法操業問題、前年に延坪島砲撃などを起こした北朝鮮に対する制裁をめぐる相互不信などの両国間の懸案事項が相次いで発生した。

 2012年に入り、中国と韓国は国交樹立20周年を迎え、これらの懸案の解決に向けてより積極的な外交を展開している。

 胡錦濤国家主席と李明博大統領は2012年に入り1月に北京で、3月にソウルで2度の首脳会談を行っている。外相も4月に寧波で会談している。金正日死後の中韓両国の外交関係は新たな発展の兆しをみせている。

 他方、中国と北朝鮮の間のハイレベルの接触は2011年12月以来止まっている。中国政府は北朝鮮に対して、2012年4月のミサイル発射失敗以降、自制を再度呼びかけている。

 4月16日の胡錦濤声明では北朝鮮のミサイル発射を強く非難した。発射は2012年2月の北京での米国、北朝鮮の特使の間での二国間協議の成果を無にしたと中国は見ている。

 金正恩の中国訪問もなかなか実現しない。このように中韓関係は懸案事項を抱え緊張をはらみつつも、新たな発展の可能性を示しているが、対照的に中朝関係はハイレベルの交流では新たな発展は見られない。むしろ中国指導部は北朝鮮の挑発行為の抑制に腐心しているように見られる。

急拡大する中韓経済関係

 2010年以降の中韓の経済関係は急速に拡大している。2010年の中韓貿易は、年間32.6%上昇し2071億7000万ドルに達した。そのうち中国から韓国への輸出は687億7000万ドルであり、中国の韓国からの輸入は1384億ドルと、それぞれ28.1%と35%前年よりも増加している。

 中国の対韓貿易赤字は696億3000万ドルと前年よりも42.5%急増し、過去最高になった。韓国は中国にとり3番目の貿易相手国となり、3番目の輸出先、2番目の輸入先国となった。

 2010年の韓国による中国への投資案件の新規認可分は、1.6%増加し1695件となった。中国の韓国資本の利用額は、26億9000万ドルになり、0.3%減少した。

 2010年末時点には、韓国の中国に対する累積投資案件は、5万2172件に達し、韓国資本の利用額は473億ドルに達し、韓国は中国の3番目の投資国となった。

 他方、金融以外への中国の韓国に対するに対する直接投資額は2010年には1200億ドルに達した。2010年末時点の中国の韓国に対する累積投資額は10億4000万ドルであった。

 新たに契約された労働サービスと契約案件は2010年には3億5000万ドルに達し、そのうち送金額は2億6000万ドルになった。韓国には5978人の中国人労働者が派遣され、2010年末までに、累積送金額は55億6000万ドルになり、派遣労働者の累積数は38万人に上った。

 特に注目されるのは中韓の自由貿易協定(FTA)交渉が、日本抜きで3国間交渉に先立ち実施されたことである。中韓両国は両国担当大臣の共同記者会見の場で、2012年5月2日にFTA交渉を開始することを宣言した。

 陳徳銘中国商務相は、5月には第1回の交渉が始まるとし、2年以内に結論が出ることを期待すると述べた。また「FTA交渉の開始は、北アジアの経済的統合と地域全体の繁栄と安定をもたらすことになるであろう」と述べた。

 バーク・タエホ(Bark Taeho)韓国貿易相は、両国が合意の不可欠の一部として、物品、サービス、投資その他の分野での貿易手続きについて最終的に決着するための交渉を開始することになると述べた。

 また同相は、両国は残りの交渉時間を費やして、これらの手続きに基づき多方面にわたり交渉し、単一の理解に到達するであろうと述べている。

 両大臣は、物品とサービスの貿易自由化の水準はWTOに対して誓約している両国の水準以上のものにすることでも合意した。また微妙な貿易品目の分野を扱うために、通常の交渉の場とは別に微妙な問題を扱う交渉の場を設定すると述べた。

 中韓両国間の貿易は過去20年間で大幅に増加し、2011年は18.6%増加して2456億ドルに達した。中国は韓国にとり最大の貿易相手国となり、韓国もまた中国の第4番目の投資国となっている。

枠外に取り残されつつある日本

 中韓共同記者会見から約2週間後の2012年5月14日に、日中韓3国の包括的協力パートナーシップの強化に関する共同宣言が公表された。

 その中では、3国は、世界経済の不確実さ、開発途上国の債務問題の悪化、西アジアと北アフリカでの情勢の不安定と東アジアの成長力の継続にかんがみ、3国間のさらなる協力が3国の安定的な経済成長に寄与し、北東アジアの経済統合を加速させることを認識すると述べている。

 中韓の貿易関係は近年急拡大する傾向にあり、両国間の北朝鮮を含めた「北アジア」の経済統合と経済発展についての協力関係は強化される方向にある。

 それに対して、中韓両国の共同記者会見から約2週間後に日中韓の3国の共同宣言が発せられたことでも象徴されるように、日本は一歩枠外に置かれており、「北東アジア」の経済統合と発展よりも中韓主導の「北アジア」の統合と発展が先行している感がある。

 経済面での中韓両国の自信と相互協力の進展が日本との領土問題への強硬姿勢にも反映していると見られる。

 なお『新華社通信ネット』2012年6月20日付は、中韓のFTA交渉開始について論評し、世界貿易機関(WTO)の枠組みは加盟国間の合意成立に失敗したが、中韓のFTAは中国、韓国と日本の経済統合に拍車をかけるであろうとしている。

 なお、それに続き、「中国とASEANのFTAおよび韓国とASEANのFTAが署名された後、中韓のFTAが計画通り成立すれば、2国間の貿易条約が中国、韓国、日本の間で締結されることになり、東アジア自由貿易協定(EAFTA)が実現することになろう」との、中国社会科学院の専門家の意見を紹介している。

 さらに、2008年の金融危機以降、中国にとり域内経済協力は死活的に重要になっているとし、中国は、欧米から内需拡大の圧力を受けているが、低賃金労働に依存している経済では内需拡大には時間がかかる、その代案として中国はFTAを必要としており、中韓のFTAが成立すれば、日米の事実上の貿易協定とみられている環太平洋経済協力(TPP)に対する中国の影響力も強まるであろうと論じている。

 ここには、日米のTPPに対し、中韓のFTAを対置させ、中国主導でアジアの経済圏を確立し、その中に韓国も巻き込んで、日米のTPPに対抗しようとする中国の長期経済戦略がうかがわれる。

 特に韓国に対して、中国とのFTAは長期的に3.7%の韓国のGDP成長をもたらすが、米国とのFTAは1.7%、EUとのFTAは1.5%しか韓国の成長をもたらさないとし、中国とのFTAが韓国の長期的利益になることを強調している。

 また野村証券の見積もりを引用し、韓国のGDP成長に最大のインパクトを与える貿易相手国は中国であり、次いで米国、EUであり、日本は4番目となると指摘している。

 最後に、中国にとり韓国は米国やEUに次ぐ重要性を持つが、中韓FTAが実施されれば、韓国が米国、EUと並ぶ重要性を持つ自由貿易取引相手国になるうえで有利となろうと、再度中韓FTAの韓国にとってのメリットを強調している。

 ここにも、中国側の周到な韓国経済の自国経済圏への取り込み戦略が表れている。

中国寄りに舵を切った韓国

 このような中国側の動きに呼応するように、韓国中央銀行は2012年7月1日に、元の国際化に備えて、中国のA株に3億ドルを集中投資し、外貨準備の通貨を分散化した。

 また中国との金融面での関係を強化するため、中国国債の購入に着手し、2012年1月には中国人民銀行の了解を取りつけ、2012年4月末には200億元、32億ドル相当の中国国債を購入した。

 このような韓国の金融面での対中接近は金正日の死の直後からすでに始まり、迅速に施策を実行に移していることに注意しなければならない。韓国はすでに日米寄りの路線から少なくとも金融経済面では中国寄りの路線に舵を切ったと言える。

 他方で李明博大統領は、2010年10月に英紙『フィナンシャル・タイムズ』に対して、平和定着と共同繁栄が究極的に南北統一につながるため、北朝鮮に中国式改革開放を促すと語っている。

 また北の内部分裂も突然の崩壊も望ましくなく、「最も望ましいのは北朝鮮が徐々に改革を進めることである」とも述べている。

 さらに、2010年11月のG20サミットで李大統領は、胡錦濤主席と25分にわたり会談し、未来志向的かつ戦略的パートナーシップの進展に向け、努力していくことで意見を一致させた。

 このうち、北朝鮮問題については、李大統領は「北朝鮮が中国を見ながら『(改革・開放の)素晴らしいモデルがすぐ隣にある』と認識し、付いていけるよう、中国がさらに努力してほしい」と求め、これに対し胡主席は、「北朝鮮の指導者が中国を訪問した際にも、南北関係の改善が韓半島(朝鮮半島)の平和と安定を守るうえで重要だ、という点を強調した」と語った(『朝鮮日報』2010年11月12日)。

 このように、2010年当時から李明博大統領は北朝鮮の改革開放を促しており、2011年の金正日の死去と金正恩の後継体制成立は、念願の北朝鮮の漸進的な改革開放政策採用への働きかけの好機と見たものと思われる。

 それが、2012年初めからの急速な経済、金融面での対中接近政策に表れている。他方で日本の経済低迷と政局の混迷、東日本大地震での打撃、エネルギー政策の混乱は李大統領に日本は頼むに足らずとの判断を強めさせ、ますます対中接近を加速させたとも見られる。

安全保障面でもみられる中韓接近の兆し

中国はいまだに北朝鮮とは軍事同盟関係にある。1950年から53年の朝鮮戦争の間、中国は北朝鮮を援助し、50万人の兵員を、北朝鮮軍を支援するために派兵した。このときの中国の支援が後の正式な軍事同盟の端緒となった。

 1961年には両国は中朝友好協力相互援助条約を締結、同条約第二条では、「両締約国は、共同ですべての措置を執りいずれの一方の締約国に対するいかなる国の侵略をも防止する。いずれか一方の締約国がいずれかの国又は同盟国家群から武力攻撃を受けて、それによって戦争状態に陥つたときは他方の締約国は、直ちに全力をあげて軍事上その他の援助を与える」とする有事の際の自動介入条項が規定されており、その後1981年と2001年に延長され、2021年まで有効である。

 しかし中国にとっては、軍事的に強すぎる北朝鮮も弱すぎる北朝鮮も、いずれも望ましいものではない。

 中国は、北朝鮮が核武装することにより、日本、韓国、台湾その他のアジア諸国が彼ら自身の核抑止力と弾道ミサイル能力を保有すると決定する結果になることを懸念している。

 また、北朝鮮が周辺国に過度に脅威を与えると、米国が地域の安全のためにより強硬な対応策をとり、地域内の米国の同盟国や友好国にミサイル防衛システムを配備するようになるかもしれない。そうなれば、中国が台湾対岸などに展開しているミサイルの威嚇効果が低下することになる。

 逆に北朝鮮が軍事的に弱体になり、内部崩壊を起こして大量の難民が中朝国境に押し寄せたり、あるいは北朝鮮の軍が崩壊して米韓軍が北進し米軍と地続き国境で接することも回避しなければならない。特に北朝鮮が核兵器を保有していることから、核兵器の管理体制が混乱に陥ることも中国としては大きな懸念事項であろう。

 以上の観点から見れば、中国にとっては北朝鮮が過度の核武装を追求することも、軍事的挑発に出ることも避けなければならないことになる。

 しかし中国にとり台湾統一は最優先すべき核心的な利益であり、その意味で北朝鮮にとっての領土の統一を中国が保証することは、中国の核心的利益とも関連しており、中国としては北朝鮮の統一要求を無視することはできない。

 このように北朝鮮と中国の軍事的な同盟関係は基本的には維持されているものの、中国にとり北朝鮮は、強すぎても困るが弱すぎても困る、そのうえ時には反抗して中国の懸念の種ともなる厄介な隣国でもある。

 他方の韓国は米国と同盟関係にあり、中朝同盟と休戦ラインを挟んで対峙するというのが朝鮮戦争以来続いてきた朝鮮半島における軍事的な対立構図であった。

 しかしこの構図にも、近年微妙な変化が表われている。2012年5月の日中韓3国共同声明では、3国間の防災、地震についての共同研究に並び、原子力の安全確保の分野での協力拡大と、海賊、エネルギー安全保障、サイバーセキュリティ、テロリズム、大量破壊兵器の拡散などの非伝統的分野での安全保障問題における協力の促進も謳われている。

 中韓の間でのこれら分野での協力強化が正式に謳われたことは画期的であり、将来中韓の軍事交流その他の信頼醸成が進み、朝鮮半島全体に対する中国の軍事的影響力が増大することになるかもしれない。

まとめ

 中韓両国の間には、黄海海上での境界線の不確定、高句麗史についての歴史認識問題、脱北者の扱いに関する問題などの懸案事項がある。

 また中朝対米韓という軍事同盟の対立構図がなくなったわけではない。しかし中国は、すでに北朝鮮に対して貿易、投資、鉱山開発、エネルギー、食糧の供給などの面で、圧倒的な支配力を固めている。

 今後中国としては、韓国との経済関係をまず拡大し、その後外交的にも軍事的にも影響下に取り込んでいこうとする長期戦略を追求していくものと思われる。

 それに相応して、日本の地位と経済的外交的な朝鮮半島に対する影響力は後退し、安全保障面でも在韓米軍の役割と戦力は縮小していくかもしれない。

 このような朝鮮半島をめぐる大きなパワーバランスの変化に今日本は直面しつつある。日本自らも長期の経済戦略、国家としての生き残りのための戦略を考え、主体的に実行しなければならない時に来ている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36318  

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