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QE3に期待できない理由 貿易赤字拡大でGDP大幅マイナス成長も、反日が多方面に波及 米量的緩和がドル高・円安を招く理由
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/226.html
投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 23 日 07:12:00: cT5Wxjlo3Xe3.
 

QE3に期待できない理由

2012年10月23日(火)  ノリエリ・ルービニ

バーナンキFRB議長が9月13日、量的金融緩和第3弾の実施を発表したが効果は期待薄だ。大規模な財政出動とともに行ったQE1、QE2と異なり、米政府は緊縮策へ舵を切る。金利は既に低く、他国も緩和策を実施しているため、ドル安効果も限られるからだ。
 米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)に踏み切ったのに伴い、重要な疑問が3つ浮上している。

 第1はQE3によって、「貧血気味」の米経済の成長を即、加速できるのかという疑問だ。第2はその場合、リスク資産、つまり米国を含む世界の株式市場に持続的な上昇基調をもたらすのか、だ。第3は、GDP(国内総生産)成長率及び株式市場に与える影響は、QE1及びQE2と同じなのか、それとも異なるのか、という疑問である。

規模、期間で従来を上回るQE3


ベン・バーナンキFRB議長はQE3に踏み切ったが、米国が今年末から「財政の崖」に直面すれば効果は限られる(写真:ロイター/アフロ)
 QE3は、QE1やQE2及び昨秋導入された債券購入プログラム「オペレーション・ツイスト」を上回るほどではないにせよ、リスク資産に強力な影響を及ぼすとする見方は多い。

 実際、これまで導入された金融緩和策は株価の持続的な上昇をもたらしてきた。QE3は従来の緩和策を規模、期間のうえで上回る。だが、積極的な金融緩和を続けるというFRBの断固たる姿勢にもかかわらず、QE3の実体経済や米国株への影響は、従来の緩和策に比べはるかに小さく、効果も長続きしない可能性がある。

 例えば、次のような要因について考えてみてほしい。まず念頭に置く必要があるのが、QE1やQE2が導入された時点では、株式のバリュエーション(評価の水準)も企業の利益水準も現在よりはるかに低かったという点だ。

 S&P500種株価指数は2009年3月に660まで下落、米国企業及び銀行のEPS(1株当たり利益)は金融危機発生後の最低水準に落ち込み、PER(株価収益率)は1ケタ台にすぎなかった。だが、S&P500種株価指数は当時の水準から倍以上値上がりし、現在は1430近辺にある。平均EPSも100ドル近くに達し、PERは14倍を超えている。

 2010年にQE2が実施された時でさえ、S&P500種株価指数やPER、EPSは現在の水準を大幅に下回っていた。十分あり得ることだが、QE3の導入にもかかわらず米国の経済成長が上向かなければ、米企業の業績は落ち込み、株式のバリュエーションには下押し圧力がかかるだろう。

 しかも、今回は財政刺激策を期待できない。QE1とQE2によって米国がいずれの場合も深刻な景気後退と二番底を免れたのは、同時に大規模な財政出動が行われたからだ。ところがQE3の場合、反対に米政府は緊縮財政に踏み出す意向で、今後場合によっては「財政の崖」すら待ち構えている。

QE1、2では発表前から回復加速

 財政の崖、すなわち今年末から始まる減税の期限切れ及び歳出の強制削減の完全実施によって、米GDPは4.5%落ち込むとされる。この事態をたとえ回避できたとしても、財政緊縮効果によって2013年、GDPは1.5%程度の打撃を被る公算は極めて大きい。

 米国の経済成長率は現在、年率1.6%。このことを考えると、財政の緊縮効果がたとえ1%にとどまったとしても、2013年の経済成長率はほぼゼロとなる。QE3に加えて、住宅市場と製造業がそこそこ回復すれば、2013年の米国の成長率が現在の水準近辺で横ばいとなる余地はある。

 しかし、今のところ幅広い分野で景気が回復に向かっている兆候はない。これに対して2010年と2011年は、景気先行指標を見る限り、景気は上期に底入れし、金融緩和が発表される以前から加速し始めていた。このため、QEは既に回復に向かっていた経済を後押しする格好となり、資産価格が長期にわたって上昇を続けたのだ。

 対照的に直近の経済指標からは、米国経済が今も上期と同様に停滞していることがうかがえる。事実、このところの労働市場や設備投資の低迷、所得の伸び悩みは、第3四半期に成長が加速する可能性を示唆していた夏場のシグナルとは相容れない。

 金融緩和は、債券や信用、為替、株式市場などを通じて実体経済に波及する。これらの主要な経路は壊れてはいないが、いまだ力強さを欠いている。事実、債券市場の経路が成長を下支えする公算は小さい。長期国債利回りは既に極めて低い水準にあるため、利回りがさらに下がっても、民間企業の借り入れコストが大幅に低下するとは期待しづらいからだ。

ドル安でも純輸出は期待できない

 信用市場の経路も同様に適切に機能していない。銀行は量的緩和により生み出された余剰の流動性をほとんど貸し出しには向けず手元に積み上げており、超過準備が膨れ上がっている。

 借り入れが可能な企業は現金を十分保有しているが、支出に慎重な姿勢を崩していない一方、多額の債務を抱えて借り入れを希望している企業(特に中小企業)や家計は、貸し渋りに直面して苦しんでいる。

 為替市場という経路も同様に機能不全に陥っている。世界的に成長が失速しているため、ドル安をもってしても純輸出の力強い回復は見込みにくい。さらに、FRBに加えて主要国の中央銀行も様々な形で量的緩和を実施しているため、FRBがQE3を導入してもドル安が加速する環境にはない。

 恐らく最も重要なのは、ドル安の貿易収支に与える影響、つまり経済成長に及ぼす影響が2つの要因によって制約されているということだ。第1は、ドル安はドル建ての商品価格の上昇を引き起こし、貿易収支の悪化を招きかねない点だ。これは、米国は商品の純輸入国となっているためだ。

 第2は、輸出の拡大によってGDPの改善が実現したとしても、GDPが改善すれば輸入も増大するという点だ。様々な実証研究によれば、ドル安が貿易収支全体に与える影響はほぼゼロと推定される。

 QEが実体経済を刺激する重要な波及経路として残るのは、株価上昇による資産効果だけだ。だが、QE3が株価の持続的上昇をもたらすとする議論は、一種の循環論法的な側面を持つ。

 資産価値の一本調子の上昇に大幅なGDP成長が必要なら、QEに続いて株価が値上がりし、その資産効果によってGDPが拡大、その結果資産価値が上昇するというのは、同語反復にすぎない。

 金融政策から実体経済への波及経路が壊れているのなら、QEが経済成長に重大な影響を及ぼすと想定することはできない。

株価上昇の資産効果も限定的

 ベン・バーナンキFRB議長は先頃、もう1つの波及経路の重要性を力説した。信頼経路である。長期にわたり極めて緩和的な金融政策を維持するというFRBのスタンスは、信頼経路を通じて個人消費を改善し得る。

 問題は、その効果がどれほど大きく、長続きするかだ。債務削減が続けられ、マクロ経済の不透明感が強く、労働市場の拡大が脆弱で、財政引き締めが成長の足かせとなる環境では、信頼感などいとも簡単に失われてしまう。

 端的に言えば、QE3は景気がマイナス成長に陥るテールリスク*1を小さくはするが、痛みを伴う債務削減の過程からいまだに脱していない景気を持続的に浮揚させるほどの力はない。

*1=確率は低いが、起きた場合には非常に大きな影響を及ぼす事象

 目先、投資家はQE3を好感してリスク選好姿勢を強めるので、それに伴い資産価値は緩やかな上昇を期待できよう。だが、経済成長が失望的なペースにとどまり、企業業績に対する期待感をしぼませるなら、株価上昇は短命で終わることになる。こうした展開となる可能性は小さくない。

国内独占掲載:Nouriel Roubini c Project Syndicate


ノリエリ・ルービニ

ニューヨーク大学スターンビジネススクール教授。経済分析を専門とするRGEモニターの会長も務める。米住宅バブルの崩壊や金融危機の到来を数年前から的確に予測したことで知られる。


Project syndicate

世界の新聞に論評を配信しているProject Syndicationの翻訳記事をお送りする。Project Syndicationは、ジョージ・ソロス、バリー・アイケングリーン、ノリエリ・ルービニ、ブラッドフォード・デロング、ロバート・スキデルスキーなど、著名な研究者、コラムニストによる論評を、加盟社に配信している。日経ビジネス編集部が、これらのコラムの中から価値あるものを厳選し、翻訳する。

Project Syndicationは90年代に、中欧・東欧圏のメディアを支援するプロジェクトとして始まった。これらの国々の民主化を支援する最上の方法の1つは、周辺の国々で進歩がどのように進んできたか、に関する情報を提供することだと考えた。そし て、鉄のカーテンの両側の国のメディアが互いに交流することが重要だと結論づけた。

Project Syndicationは最初に配信したコラムで、当時最もホットだった「ロシアと西欧の関係」を取り上げた。そして、ロシアとNATO加盟国が対話の場 を持つことを提案した。

その後、Project Syndicationは西欧、アフリカ、アジアに展開。現在、論評を配信するシンジケートとしては世界最大規模になっている。

先進国の加盟社からの財政援助により、途上国の加盟社には無料もしくは低い料金で論評を配信している。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20121022/238414/?top_updt


焦点:貿易赤字拡大でGDP大幅マイナス成長も、反日が多方面に波及
2012年 10月 22日 16:37
トップニュース
コラム:米量的緩和がドル高・円安を招く理由=亀岡裕次氏
焦点:米ヤフー復活計画、新CEOはテクノロジー主導に軸足
日経平均6日続伸、円安背景に先物主導でプラス転化
ドル/円が2カ月ぶり高値、欧州勢参入で円売り強まる

[東京 22日 ロイター] 外需の低迷が一段と強まっている。9月貿易統計は過去最大の赤字を記録し、7─9月の日本経済はマイナス3%成長に陥る観測も浮上している。

中でも日中関係の冷え込みによる輸出への影響は10月以降本格的に出てくるとみられ、反日不買運動が長期化すれば、10─12月は輸出の停滞だけにとどまらず、生産への波及、企業収益への打撃、設備投資の停滞など、様々な影響を及ぼす恐れがある。日本経済は景気後退の瀬戸際に立っているとの見方が専門家の間で広がっており、追加緩和の是非を議論する30日の日銀決定会合にも影響する可能性がある。

<外需悪化で大幅マイナス成長に>

「大幅なマイナス成長は避けられそうにない」──22日午前に発表された9月貿易統計を受け、エコノミストの間で7─9月国内総生産(GDP)への悲観的な見方が浮上している。

9月の貿易赤字幅は同月として1979年の統計開始以来、過去最大を記録。輸出は17カ月ぶりの大幅減となった。外需の悪化は、燃料など輸入が再び増加に転じたこと、世界経済の減速がアジア新興国にも波及し、輸出減少幅を拡大させていることが相まっている。特に輸出は米国向け、欧州向け、アジア向けともに悪化したことが落ち込みを大きくさせ、輸入の増加を相殺しきれていない。

このため7─9月の外需が大幅なマイナス寄与になることは確実だ。消費や設備投資も減少が予想されているため、ニッセイ基礎研究所では成長率は年率2%を超えるマイナスに、第一生命経済研究所では3%程度のマイナスを予想している。

この先も厳しい展開を予想する声が多い。エコカー補助金終了に伴う自動車減産が一層拡大し、日中問題の悪化という新たな下ぶれ要因が加わり、10─12月も広範囲に生産活動が停滞する可能性がある。BNPパリバ証券は「対中関係悪化が日本経済にとって最後の一撃となる恐れがある」と指摘。「事態が年明けまで長引けば、輸出を中心に悪影響はさらに広がり、景気後退は避けられないだろう」とみている。

<日中問題の波及、多方面に>

対中関係悪化による実体経済全体への影響を確認するには今後の統計を待つ必要があるが、すでに企業マインドを大幅に悪化させたことが、22日午前に発表した10月ロイター短観で明らかになった。製造業の景況感は2010年1月以来の大幅な落ち込みとなった。先月まで緩やかな悪化が続いていたが、10月は尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題が受注や販売に影響しているとの声が目立ち、マインドの急激な悪化を招いている。

特に現地で不買運動の標的となっている自動車産業の影響は大きい。中国の9月自動車販売は、ドイツ、韓国、米国メーカーいずれも前年比2ケタ前後伸びている中で、日本車は4割減少した。これは日本からの自動車輸出だけでなく、「部材や機械輸出の減少に直結する可能性」(クレディ・スイス証券)がある。たとえば9月は自動車関連とみられる原動機や部品の輸出、機械や電子部品の輸出も減少している。

ただ、日中関係悪化による対中輸出の減少が日本経済全体に与える影響は「それだけみれば、そう大きくない」(アジア開発銀行研究所・河合正弘所長)との見方もある。GDPに占める対中輸出比率は3%程度にとどまる。韓国の13%、マレーシアの8%など、他のアジア諸国の中国依存度と比較すると低い。対中輸出が2割減少したとしても、GDP全体では0.6%程度の影響だ。9月の中国向け輸出は前年比14.1%減と大幅に減少したが、月半ばに先鋭化した反日デモや不買運動の影響は半月分だけだ。通関までの時間差などもあるため、貿易統計に本格的に影響するのは10月統計からになるため、落ち込み幅がどの程度広がるのか見極めが必要だ。

<決定会合の材料に>

しかし輸出だけでなく、国内外の生産、投資への波及効果も合わせれば、影響は広がることが予想される。鉱工業生産の予測指数は9月に前月比2.9%の低下、10月は横ばいと予想されているが、輸出の減少で一段の下押しもあり得る。さらに製造業の海外売上の23%を占める中国売上の減少は「現地子会社の収益悪化なども通じて企業業績に悪影響を及ぼし、それが投資や採用を減退させる」(BNPパリバ証券)という悪循環も予想される。

日銀が30日に開く金融政策決定会合でも、議論の材料にされる可能性がある。日銀は中国経済減速などで日本経済がさらに下振れし、目標とする物価上昇率1%の達成が遠のく公算が大きいとみており、同日の会合で追加緩和の是非を議論する見通しだ。今回の貿易統計を踏まえ、輸出の減少が生産のさらなる下振れを通じて、企業の設備投資や内需にも下押しが強まるとみれば、追加緩和が必要との判断に傾く可能性がある。

(ロイターニュース 中川泉;編集 久保信博)
関連ニュース

焦点:第3四半期の中国GDP、政府の目標下回る見通し 2012年10月15日
8月の米貿易赤字は拡大、内需・外需とも弱含む 2012年10月12日
7月のギリシャ経常収支、2010年5月以来の黒字 2012年9月18日
7月の米貿易赤字は小幅増、欧州向け輸出落ち込む 2012年9月12日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE89L03M20121022?sp=true


コラム:
米量的緩和がドル高・円安を招く理由

2012年 10月 22日 19:59

亀岡裕次 大和証券 チーフ為替ストラテジスト

[東京 22日 ロイター] 米国の量的緩和第1弾(QE1)や第2弾(QE2)の下でドル円は緩和当初に上昇し、間もなく下落に向かった。しかし、第3弾(QE3)の下ではそのようにならない可能性が高い。

為替相場には、金利差などの「相対要因」と市場のリスク許容度といった「全体要因」が影響する。ドル円もこの2つの要因に左右されるが、他の通貨ペアに比べると「相対要因」に影響されやすい。

豪ドル・円などのクロス円は世界株価指数との相関が高いのに対し、ドル円は日米金利差との相関が高い。米連邦準備理事会(FRB)がQE1として2009年末までに1.75兆ドル規模の証券買い入れを行うと発表した09年3月以降、市場がリスク選好に転じ、クロス円の多くはおよそ1年にわたって上昇を続けた。

これに対しドル円は、量的緩和前の09年2月から4月にかけて上昇したものの、同年末にかけてはそれ以上に下落した。年前半はリスク選好下で米長期金利も上昇し、ドル円は堅調に推移したが、米雇用者数が減少を続けるなかで米金利が低下するようになったため、ドル安・円高が進行したのである。また、ドルが市場に大量に供給された結果として、米国のベースマネー(現金と中銀預け金の合計)は日本に対して相対的に増加することとなり、これもドル安・円高要因になった。

そして、10年11月のQE2(11年6月までに6000億ドルの国債買い入れ)の後には、米金利とともにドル円が上昇した。量的緩和の規模はQE1に比べてかなり小さく、QE2のリスク選好効果は小さかったとみられるが、減少が続いていた米国の雇用者数が10年10月に大幅に増加したことが重なって、リスク選好の株高や長期金利上昇が進んだ。

ただし、豪ドル・円などのクロス円が世界株価と同様に11年4月まで上昇を続けたのに対し、ドル円は10年12月以降、軟調となった。雇用改善の初期段階にあり、インフレ期待は上昇しても利上げ期待(期待実質金利)の上昇が抑制されたことや、QE2により米国のベースマネーが日本に対して相対的に増加したことが影響したとみられる。このように、ドル円にはリスク許容度以上に日米金利差やベースマネー比率などの相対要因が強く影響する。米国の経済動向を反映して米政策金利見通しがどう変化するかということ、日米の金融政策を反映してベースマネーがどう変化するかといったことが、ドル円相場にとって重要だ。

さて、9月13日にQE3が決定されたが、それから1ヶ月余りが経過した10月22日現在、米国債金利やドル円は比較的小幅な上昇にとどまり、株価も決定直前と大差ない水準にある。QE3は、雇用見通しが顕著に改善するまで継続するとして予め期限や規模を定めていないが、月平均の証券買い入れ額が400億ドルと、QE1のおよそ1750億ドルやQE2の750億ドルに比べて小さく、これがリスク許容度の押し上げ効果を小さくしているものと考えられる。

また、13年初めにはブッシュ減税の期限切れと自動的な歳出削減を合わせ、5000億ドルを超える規模の「財政の崖」により米国景気が後退するリスクが残っているため、そのことがリスク許容度の高まりを抑制している面もありそうだ。

<時間とともにドル高・円安か>

ただし、今回はQE1やQE2のように、いったんは上昇した米金利やドル円が時間の経過とともに量的緩和決定時の水準を超えて下落していくというパターンにはなりにくいのではないだろうか。

なぜなら、QE3の証券買い入れペースが小さいことが、ドル供給によるドル安効果を小さくするからである。リスク選好効果が小さいかわりに、ドル安効果も小さいとみられる。

もちろん、QE3の期間が長期化すれば、証券買い入れによるドル供給の規模は拡大するわけだが、日銀の量的緩和による円供給も拡大しているため、ドル安効果と円安効果が相殺し合うだろう。現段階でFRBと日銀が決定している金融政策をもとにすると、日米のベースマネー比率は現状からほとんど変化しないと予想され、ドル円相場に与える影響はほぼ中立的とみられる。

今後、FRBが証券買い入れ規模を拡大することがあれば、おそらく日銀もそれに対応するように拡大するだろうから、QE1やQE2の時のように米国のベースマネーが相対的に増えてドル安・円高要因になることは考えにくい。QE3によるリスク許容度の上昇効果は小さいだけに、期待の反動も小さく、時間の経過とともにドル供給による米金利低下・ドル安効果が台頭することはないだろう。

むしろ今回は、米金利やドル円が次第に上昇していく可能性が高いとみられる。

第一の理由は、「財政の崖」のリスクが解消する可能性が高いことである。11月6日の米大統領・議会選挙の結果、議会のねじれ(上院:民主党多数、下院:共和党多数)、あるいは政権と議会のねじれ(大統領:民主党、上下院:共和党多数)が続く場合、「財政の崖」対策法が年末近くまで成立せずに、リスク回避の円高に傾く可能性はある。しかし、共和党にしても民主党にしても、5000億ドル以上の「財政の崖」を迎えて米経済が景気後退に陥ることを避けたいはずだ。減税継続の対象などで両党の意見が対立しても、年末までには減税の大部分延長で合意し、自動的歳出削減による財政緊縮にとどめるのではないだろうか。

「財政の崖」による景気後退リスクが解消すれば、市場はリスク選好に傾き、すでに進行しつつある資産効果(株高)による個人消費の増加が顕著となり、企業が投資や雇用を抑制する動きもなくなると考えられる。そして、米国景気の拡大ペースが上がるとともに、米金利やドル円は上昇するだろう。中間所得層や実業界寄りの民主党はドル安志向、富裕層や金融界寄りの共和党はドル高志向と言われるが、選挙で大統領が共和党、上下院ともに共和党多数になれば、「財政の崖」対策がすぐに成立することになってドル高が進むだろう。

第二の理由は、欧州信用不安が拡大する可能性が低いことである。QE1やQE2の後には、欧州信用不安の高まりがリスク回避志向と逆資産効果(株安)を通じて米国景気の減速を招き、米金利とドルが下落した。しかし、欧州安定メカニズム(ESM)や欧州中央銀行(ECB)による国債買い入れが可能になり、重債務国の国債利回りが急上昇するような事態は防げるようになった。少なくとも欧州重債務国の金利安定によって、10年と11年に起きたようなリスク回避行動による米金利低下とドル円下落は回避されると筆者は考えている。

もし欧州が重債務国を中心に財政緊縮を継続すると、欧州の景気悪化が世界の景気回復を抑えるだろうが、成長に配慮して重債務国の財政緊縮を猶予するようになれば、欧州景気の安定とともに世界景気は回復する可能性が高い。QE3下でドル円が下落基調となる可能性は低く、欧州の財政政策次第で米金利上昇とドル高・円安が進みやすくなるだろう。

*亀岡裕次氏は、大和証券の投資戦略部担当部長・チーフ為替ストラテジスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

関連ニュース

FRBの積極的な緩和策、世界経済にも寄与=バーナンキ議長 2012年10月15日
コラム:米国経済を覆う「日本化」の正体=河野龍太郎氏 2012年10月15日
ロイター調査:米QE3買い入れ額予想は6000億ドル 2012年10月6日
9月シカゴ地区購買部協会景気指数、09年9月以来初の50割れ 2012年9月28日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE89L05520121022?sp=true


FRB議長、QE3での米国債購入を年内決定−各社予想規模
  10月22日(ブルームバーグ):米連邦準備制度は量的緩和第3弾(QE3)で、1カ月当たり400億ドル(約3兆1700億円)の住宅ローン担保証券(MBS)購入に加え、米国債の買い入れを年末までに決定すると、債券取引の主要金融機関は予想している。米国の失業と消費者信頼感の改善は持続不可能との見方が根拠。
ブルームバーグ・ニュースが先週、プライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)21社に実施した調査では全社がQE3の対象を米政府証券に広げると予想していることが分かった。QE3で景気が上向くとの観測に基づき債券相場のボラティリティ(変動性)が大きくなっているわけではなく、むしろ1988年以降の最小に近い水準にある。これは、安全な避難先としての米国債需要が続いていることを示している。
米失業率は9月に7.8%に改善し、2009年以来の低水準となったほか、ブルームバーグの米消費者信頼感指数 も14日終了週に6カ月ぶり高水準に達した。しかし債券トレーダーらは、欧州債務危機が長引く中、米議会が財政の崖と呼ばれる6070億ドルの減税失効と歳出削減を回避できなければ、景気は減速する可能性があるとみている。JPモルガン・チェースのエコノミストは18日、13年1−3月(第1四半期)と4−6月(第2四半期)の米成長率見通しを引き下げた。
バークレイズの米経済調査ディレクター、マイケル・ゲーペン氏(ニューヨーク在勤)は17日の電話取材で、「米連邦準備制度は景気回復ペース、特に労働市場の改善に満足していないと表明してきた。より力強い回復のために一段の措置を講じ、自分たちが望む景気回復を実現するまで措置を拡大し続ける意向を示している」と述べた。
各社の予想
6670億ドル相当の短期債を売却して償還期限が長めの証券を購入する米連邦準備制度のオペレーション・ツイスト (ツイストオペ)は12月31日に期限を迎えることから、一段の刺激策導入への期待が高まっている。9月13日の連邦公開市場委員会(FOMC)声明でMBS購入計画を明らかにした際、連邦準備制度は「継続的かつ持続的な労働市場の改善」が見られるまで市場に流動性を供給し続けると表明していた。
今週23、24日開催のFOMCで新たなプログラム導入が発表されると予想しているプライマリーディーラーは皆無だった。
バンク・オブ・アメリカ(BOA)は、連邦準備制度が追加措置として1カ月当たり450億−600億ドルの米国債購入に踏み切ると予想。バークレイズは買い入れが来年6月まで続き、計2700億ドル規模に達するとの見通しを示している。RBCキャピタル・マーケッツは、米国債の購入規模を1カ月当たり300億ドルとみており、クレディ・スイス・グループは同450億ドルを来年実施すると予想している。
原題:Bernanke Sedates Bond Traders Seeing Treasuries Added toQE3 (1)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:New York Liz Capo McCormick emccormick7@bloomberg.net;New York Daniel Kruger dkruger1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Dave Liedtka dliedtka@bloomberg.net
更新日時: 2012/10/22 13:19 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MC9SCC6K50Z501.html

 

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コメント
 
01. 健奘 2012年10月23日 23:18:52 : xbDm84QDmOFmc : e4mRofwlsU
ヴェーバーも、利潤を得るという動機が、経済社会を駆動するもっとも大きな要因だと認めていた。だからこそ、否定的に利潤を追求すると言う、資本主義を開花させた精神を見抜けたわけだ。

しかし、こと、日本の研究では、"道"、"求道"が、社会を駆動する大きな原動力だということも見ていた。

利潤を追求することが、社会をより良くする、そういう時代が終わりつつあるのだとすれば、"求道の多様化"が、より研究されても良いのではないだろうか。


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