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米大統領選、国際貿易に関する的外れな議論 プライベートバンクの終わり 結婚指輪を売って「明日のパン」を買うギリシャ人
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/358.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 02 日 12:44:45: cT5Wxjlo3Xe3.
 


JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
米大統領選、国際貿易に関する的外れな議論
2012年11月02日(Fri) Financial Times

(2012年11月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 誇張や偽善はどんな選挙運動でも避けられないのかもしれないが、国際経済と貿易に関する米大統領選の議論を見て、専門家は来週火曜日(11月6日)の投票が早く終わることを切望している。

 牧場でのんびり草をほおばる政策通たちは、獲物を求めてうろつき回る選挙陣営が自分たちの領域で暴れ回り、間違った仮定や不合理な推論、虚偽を撒き散らしていったため、うんざりして首を振る羽目になっている。
嘲笑を誘うロムニー氏の主張、オバマ大統領も虚構を喧伝

 貿易や対外投資に対するロムニー氏の発言は、困惑を引き起こしている。

 今週、広く嘲笑を誘った主張は、「クライスラーをイタリア人(フィアット)に売った」バラク・オバマ氏は、どういうわけか、同社がジープの生産を中国に移転させることに対して責任があるというロムニー氏の言い分だった(クライスラーは中国の消費者にジープを売るために現地で生産能力を回復させており、米国の生産が減るわけではない)。

 ロムニー氏はまた、中国を為替操作国に認定すれば、どういうわけか中国からの輸入品に関税を課すことができると主張している(関連する条文は1988年包括通商競争力法の第3004条だが、そのようなことは書かれていない)。

 オバマ大統領も虚構を喧伝している。企業に対する領土内課税制度という賢明な考えに対する攻撃やロムニー氏の実業界での経歴に対する攻撃を含む、オフショアリング(海外への業務委託)に対する一連の批判は、外国直接投資がゼロサムゲームであるという印象を与えている。

 輸出を倍増させるという無意味な目標を採用したり、関税によって中国からのタイヤ輸入を阻止することによるいわゆる雇用創出効果を売り込んだりすることも、貿易に対して同じような作用を果たしている。
現実を無視した議論

 残念ながら、現実的な議論をするためには、一部の国際的な経済的脅威はどんな政権の影響力も及ばないということを認めねばならず、ひいては大統領が全能であるという神話を維持する暗黙の約束を破ることになる。

 例えば、10月16日のオバマ氏とロムニー氏の2回目の討論会で行われた、ガソリン価格を引き下げることに関する真面目くさった議論は、ガソリン価格は主に世界の石油市場の動きによって決定されるという現実を無視していた。

 司会を務めたCNNのキャンディー・クローリー氏の1つの質問は、この前提にそれとなく挑戦していた。「ガソリン価格を引き下げることは政府の権限の範囲内でしょうか」と聞いたのだ。だが、その後の議論は、その通り、権限の範囲内だという考えに立って進められてしまった。

 中国を為替操作国と名指しすることはまるで問題外なため、オバマ政権はこの10月、今度は今週末にメキシコで開かれる主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で状況を判断するためという名目でまたしても年に2回発行される為替報告書の発行を先送りしながら、会議にティム・ガイトナー財務長官を派遣することさえしていない。

 G20参加国・地域を通貨のミスアラインメント(均衡レートからの乖離)と戦う世界的な部隊にするという試み――より建設的な考え方――は、概ね失敗した。

 また、世界経済にとって最大のリスクであるユーロ圏の危機は、選挙運動ではほとんど議論されてこなかった。ことによると、危機を取り上げるだけでも米国の無力さを浮き彫りにしてしまうからかもしれない。

 国際通貨基金(IMF)への拠出金を米議会から調達できないことで立場が弱くなったオバマ政権は概ね、こうした修羅場が展開されるのを傍観者の立場から眺めている。
誰が勝っても政策は変わらない、そして4年後もまた・・・

 誰が大統領に選ばれようと、世界的な景気後退に逆戻りすることがなければ、国際経済や貿易に関する米政権の政策は恐らく、途切れ途切れの扇動的な発言にとどまり、行動は控えめなものになるだろう。

 米政府は過去10年間やってきたように、為替を変動相場制に移行することを中国に迫り続ける一方、中国は2005年から2008年にかけて、そして2010年以降に行ったように、中国の利益になると判断した時に人民元が上昇するのを認めるだろう。

 米国は、少数の特別利益団体を助ける貿易協定を1つか2つ結ぶかもしれないし、結ばないかもしれないが、貿易収支に目に見える変化をもたらすことは何もしないだろう。為替レートを巡る発言は振れるかもしれないが、今後もドルのあからさまな為替操作はないだろう。多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)も死んだままだろう。

 そして、たぶん我々は4年後にまたこの場所に戻ってくる。中国に寝返ったとか雇用が海外に流出するのを許しているとか言って挑戦者が現職大統領を非難する一方、現職大統領はそうした攻撃の前提を受け入れることで、現実に対して斜めの角度で起きている世界経済についてまた議論することになるのだ。
By Alan Beattie in Washington


http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36456

[橘玲の世界投資見聞録]
香港で目の当たりにした“プライベートバンクの終わり”

 9月半ばに久しぶりに香港を訪ねた。

 デフレ不況の日本とちがって、相変わらず景気はよさそうだった。中国人の大金持ちが高級コンドミニアム(億ション)を買いまくっていて、不動産価格がものすごい勢いで上がっているのだ。日本の80年代バブルと同じで、香港の地価はマトモな経済理論で正当化できる水準をはるかに超えているのだが、「中国人は経済理論など知らないのだからまだまだ上がる」というひともいて、なんだかよくわからないことになっている。

 香港島のオフィス街には次々と超高層ビルが建ち、ショッピングモールには一流ブランド店がずらりと並んでいる。私が香港を頻繁に訪ねるようになったのは90年代の半ばからだが、当時はブランドショップで大金を払うのは日本の若い女性ばかりだった。いまや日本の若者は貯蓄志向の堅実派になり、その代わり中国本土から札束を膨らませた観光客がやってくる。
香港の代表的な高級ショッピングセンター置地広場(The Landmark) (Photo:cAlt Invest Com)

 それでも香港の街に、かつてのようなきらきらした感じがなくなったように思うのは、藤沢数希氏の『外資系金融の終わり』を読んだからだろうか?
プライベートバンカーたちのその後

『外資系金融の終わり』で藤沢氏は、世界金融危機の後、職場がどんどんしょぼくなっていく様子を活写している。

 かつては日本でも、外資系投資銀行のトレーダーは初年度から年収2000万円で、3年目には上場企業の社長の年収(平均3000万円)を超えたという。ところがいまではボーナスが分割払いになって、企業文化はすっかり様変わりしてしまった。「強欲なトレーダーたちが、巨額のボーナスを目当てに一発狙いのハイリスクなトレードをしたのが金融バブルの元凶だ」と犯人扱いされたからだ。

 ボーナスが分割払いになれば、当然、長く会社に在籍しないと資金回収できない。こうして外資系投資銀行でも「長期雇用」が当たり前になった。

 ボーナスは契約なので、業績が悪化しても、会社は過去に約束した分割ボーナスを払わなければならない。在籍年数の長い社員に高額のボーナスを払おうとすると、新入社員の給与は低く抑えざるをえない。こうして外資系投資銀行は、日本の会社とまったく同じになってしまったのだという。

 私の場合、香港で知り合ったのはほとんどが顧客相手の営業マン(プライベートバンカー)だが、そのしょぼくれ方は藤沢氏の分析とまったく同じだ。

 海外のプライベートバンカーが日本市場に殺到したのは、90年代末のインターネットバブルから2005年のIPOバブルの頃だ(その後は株価と地価が高騰する中国市場に殺到することになる)。その頃、香港から営業に来るプライベートバンカーは、東京ならパークハイアット、大阪ならリッツカールトンに泊まっていた。

 それが世界金融危機の後は、プライベートバンクをリストラされ、地元の証券会社などに転職し、日本での出張は場末のビジネスホテルみたいなところになってしまった。それでも連絡をくれるので、上野あたりのあやしげな喫茶店まで話を聞きに行っていたのだが、そのうちに日本に来ることもなくなり、いつの間にか音信不通になった。これが、私の知っているプライベートバンカーの典型的なパターンだ。
プライベートバンクのビジネスとは?

 2005年の秋、香港人の知人の一人がクレディスイスに転職したので、中環(セントラル)の高層ビルにあるオフィスを訪ねたことがある。
香港島にある国際金融中心 (International Finance Centre)。地上88階建てのTower 2にはUBSなどいくつかのプライベートバンクが入居している (Photo:cAlt Invest Com)

 スイスの大手プライベートバンクであるクレディスイスは、2003年12月、山口組系のヤミ金グループ、五菱会の最高責任者の口座を凍結し、日本初の大型マネーロンダリング事件として大きな話題になった。担当者は香港支店の日本人行員で、組織犯罪処罰法違反の疑いで逮捕された(2007年9月に高裁で無罪確定)。

 知人の香港人プライベートバンカーは、五菱会事件の影響で日本への出張が面倒になったとしきりにこぼしていた。

 日本に行くときには、クレディスイスの関係者だとわかるものは一切携行することが許されず、パンフレットの類は事前に日本の知人宛に国際宅配便で送っておかなくてはならない。日本で顧客に渡す名刺を見せてもらったが、そこには名前と(日本での)携帯電話番号、hotmailのアドレスが印刷されているだけだった。

次のページ>> プライベートバンカーの仕事

これではまるで犯罪者みたいだが、2008年5月、プライベートバンク最大手UBSのアメリカ部門トップが米司法当局に拘束され、このときの印象が間違っていなかったことが明らかになる。

 報道によると、スイスのUBSには米国内の顧客を担当する70?80人のプライベートバンカーがおり、観光などを装って頻繁にアメリカに入国していた。出張にあたって書類の携行はいっさい許されず、暗号化されたパソコンを使い、顧客をコードネームで呼び、プリペイドの携帯電話で海外経由の通話をし、ホテルを頻繁に変え、当局に質問された際は黙秘権を行使して弁護士に連絡する規則になっていた。

 なぜUBSがこんな「スパイ集団」になってしまったかというと、彼らのビジネスが、アメリカの富裕層の脱税幇助だったからだ。その結果UBSは、約5000件の顧客情報を米司法当局に提出し、7億8000万ドルの罰金を支払うことになった。

 しかしこれは氷山の一角で、プライベートバンクは世界じゅうで同じようなことをやっていた。違法だとわかっていながらも、それ以外に業績を維持する方法がないから、やめられなくなってしまったのだ。

 その当時は香港でも、UBSとクレディスイス、HSBCに「ジャパンデスク」と呼ばれる日本人顧客専門の営業部門があって、日本人と日本語を話す香港人のプライベートバンカーがいた。そんな彼らが定期的に日本を訪れて新規顧客を開拓し、金融商品を販売していたのだ。
その外観から「蟹ビル」と呼ばれるHSBC香港本店 (Photo:cAlt Invest Com)

 ところで、プライベートバンクは日本の富裕層にどんな金融商品を販売していたのだろうか?

 日本語のパンフレットを見せながら彼が説明してくれたところによると、一番の売れ筋は、一定の範囲で元本が保証され、5〜10%の金利がつき、日経平均が大きく上がるとボーナス金利がもらえるという仕組み債だった(逆に日経平均が大きく下落すると損失が生じる)。それ以外にも、米ドルやオーストラリアドルに連動するものなど、さまざまな仕組み債を扱っていたが、「(外貨建て)元本確保」で「高金利」なのはどれも同じだった。
某プライベートバンクの応接室から九龍サイドを眺める (Photo:cAlt Invest Com)

 こうした金融商品は会社が販売目標を決め、それがプライベートバンカーのノルマとなって、自分の顧客に営業・販売するのだという。プライベートバンカーというと格好よさそうだが、その実態は訪問販売で百科事典を売るのとたいして変わらない。

 それからちょうど3年後に、私は彼の話を思い出すことになる。

 クレディスイス香港が日本の富裕層に販売していたのは、元本保証のついた「安全な」金融商品だった。資金はグローバルな大手金融機関が責任をもって運用することになっていた。

 そのとき私はいくつかの金融商品を案内されたのだが、元本保証している金融機関はどれも同じだった。パンフレットには、「リーマン・ブラザーズ」と大きく印刷されていた。
香港の宴…

 香港の金融マンと知り合って、チャイナクラブやジャッキークラブ、マリーナクラブなど、一般人は出入りできないあちこちの“秘密クラブ”に連れて行ってもらった。そのなかでもいちばんの思い出は、世界じゅうからVIP顧客を集めたパーティに招待されたことだ。

 香港までの航空運賃とホテル代もすべて金融機関持ちで、アイランドシャングリラ・ホテルの大宴会場を貸し切り、司会は香港の芸能人で、ドラゴンダンスなどの出し物が次々と演じられる華やかなものだった。テーブルでいっしょになったのは、ニュージーランドで広大な農場を経営しているという華僑の夫婦と、カナダのバンクーバーを中心にスーパーマーケットチェーンを展開している華僑の一族だった。

 パーティの最後は楽団が入って、社交ダンスが始まった。80歳近いだろう華僑の大富豪は、奥さんをともなって、見事なステップでワルツを踊った。

 あの頃はみんな自信に溢れていて、金融ビジネスはきらきらと輝いていた。

 リーマンショックから4年たち、すべては幻のように消えてしまった。

(執筆・作家 橘玲)

<Profile>
橘 玲(たちばな あきら)
作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。最新刊『憶病者のための裁判入門』(文春新書)が発売中。ザイオンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』をオープン。


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http://diamond.jp/articles/-/27195?page=2


結婚指輪を売って「明日のパン」を買うギリシャ人
欧州現地ルポ ギリシャ編(後編)
2012年11月2日(金)  豊島 逸夫

 国家が破綻した時、そこで暮らす人々の生活はどうなるのか。実際にギリシャ・アテネの街を歩き、人々と話して見聞きしたことをお伝えする。ギリシャシリーズの後編である。

 アテネのランドマーク、アクロポリス神殿に行くには地下鉄アクロポリス駅から徒歩となるのだが、その駅構内のあちこちに、ミロのビーナスのような彫刻物や、古代のツボのような生活用品が、さりげなく展示されている。地下鉄の駅を建設した時に地下から採掘された品々なのだ。

 どれも東京・上野の博物館に展示されたら「国宝級」に扱われるのでは、と思われるものばかり。アテネ市街の地下には、いったいどれほどの「文化遺産」が残存していることか。この「含み資産」の総価値を「お宝鑑定団」に聞いてみたいところだ。
地下鉄の駅構内にさりげなく展示されている古代の彫刻や生活用品。これが東京上野の博物館にあったら、国宝級の扱いでは?と思われる。
ギリシャ国内では、金は売られている

 とはいえ、ギリシャは小国。独メルケル首相の本音は「スペインはtoo big to fail 、つまり大きすぎて潰せない」。でもギリシャは、イタリア・スペインに防火壁を構築したところで即、切る、というシナリオが筆者の見立てである。

 ギリシャ国民も、どうやら「いずれ捨てられる」と覚悟しているようで、せっせとユーロ紙幣の貯蔵に走り、金持ちは資産の海外逃避に動く。

「有事の金」より「有事のユーロ」。

 外為市場でどれだけユーロが売られても、極限状態のギリシャ国内で、イザというときモノを買えるのはユーロ紙幣に限る。仮に新ドラクマ(ユーロ導入以前に使われていたギリシャの通貨単位)に移行しても、国内の平行市場でユーロ紙幣にはプレミアムがつくだろう。クレジットカードや銀行カードはアテにならぬ。
アテネの金買い取りショップ。結婚指輪を売って明日食べるパンを買うといったような、切迫感に満ちた客が多い。

 ギリシャ国内では、「有事の金」は売られている。郊外の駅近くには必ず「金買い取りショップ」がある。「数少ない成長産業」なのだそうだ。日本と異なるのは、「タンスの肥やし」と化した古いゴールドジュエリーを売って「お小遣い稼ぎ」などというような悠長さが全く感じられないところだ。まさに「明日のパン」を買うために、お宝の結婚指輪を泣く泣く手放すという切迫感に満ち溢れている。

 とはいえ、海外旅行の穴場としてアテネはお薦めだ。まず、治安が良い。地下鉄も大型車両で乗り心地は東京メトロ・銀座線よりはるかに良い。デモ隊との衝突映像ばかりがメディアには流れるが、それは国会議事堂前のシンタグマ広場だけのことだ。

 そして観光客の減少とユーロ安により、日本人観光客の価値観で見れば費用が「安い」。普通のホテルが東横イン並み。安価なトルコのリゾート地を好むロシア人観光客にとっても今年の夏休みの人気スポットが、ギリシャのリゾート地だそうな。

 アテネで市民と直接対話をすると、まず中国人かと問われる。筆者が日本人と分かると、警戒心を解く。

「中国は我が国の港を買っているのよ」との一言がキッカケで調べてみると、中国の国営海運会社コスコ(中国遠洋運輸公司)が、アテネ首都圏にある外港都市ピレウスのコンテナ港運権益を35年契約、34億ユーロの対価で購入している。さらに、ピレウス港近郊の陸運への積み替え施設と梱包センターも既に買収しており、ピレウス港湾運営会社の株式を23%取得する意向も示している。
温家宝首相のギリシャ来訪が「中国来襲」

 クレタ島の港にも食指を動かし、ギリシャ第2の都市テッサロニキでは、コンテナ・ターミナル入札に参加したところで市民の反対運動に遭っているという。

 加えて中国資本は、アテネ国際空港の20年契約の権益(2026〜46年)に関して5億ユーロの対価でギリシャ政府と獲得交渉を進めている。

 アジアから見れば「欧州の入り口」ともいえるギリシャのインフラを「どさくさに紛れに買い占めている」(ある市民の言葉)と見えるので、中国人への警戒感も強まるわけだ。

 当の中国側は昨年、温家宝首相がギリシャ訪問の際には「困難な状況にある良き友人を助けに来ました」と述べたが、現地の新聞は「中国来襲」と書き立てた。
ギリシャ人のガイドとアテネ市内を歩くと庶民の本音が聞ける。街中も地下鉄も総じて安全。報道で見るのとは違うアテネの素顔が見えた。アジア人の筆者は、どこへ行ってもまず「中国人か?」と問われる。ギリシャのインフラを買う中国資本に警戒しているためだ。

 実は、ポルトガルの首都・リスボンを訪問したときも、中国人と間違えられて警戒された。ポルトガル政府が中国の国有電力配送会社の国家電網公司とオマーン・オイルに電力会社RENを5億9200万ユーロで売却することに合意していたからだ。

 ポルトガルはユーラシア大陸最西端のロカ岬に象徴されるがごとく、欧州とアメリカ大陸・北アフリカを結ぶ地政学的に重要な拠点である。もし政府に長期戦略があれば、リスボン空港を一大ハブ空港にできたであろうに、とも感じたが、中国は既にしたたかに動いていたのだ。

 そもそも、ギリシャもポルトガルも欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)からの救済の条件として「民営化」を進めているが、その実態は「おいしい案件」にのみ買い手がつくという状況だ。

 そして、ロシア。

 そもそも、ギリシャはギリシャ正教、ロシアはロシア正教と宗教的に「身内」関係にある上、両国に挟まれたトルコとは犬猿の仲が続いている。
ユーロ離脱が招く政治不安が頭痛のタネ

 また、キプロス島は、ギリシャ系とトルコ系に南北分断されているが、国際的に承認されているギリシャ系のキプロス共和国は、ロシアと欧州の投資マネーの主要な租税回避地となっており、住民の1割はロシア人と言われるほどだ。

 そのキプロス沖に原油・天然ガスの存在が確認され、ロシア第2の天然ガス生産会社ノバテクが入札参加に動いている。

 この海域をめぐっては、既に、ギリシャ、キプロス共和国、イスラエルが排他的経済地域を宣言しており、トルコが反発している。

 このような状況下で、仮にギリシャがユーロを離脱すれば、ロシアとイスラエルが接近する可能性が十分に考えられる。

 現地アテネで感じることは、北大西洋条約機構(NATO)としてもドイツとしても、地政学的に重要なギリシャをおいそれとは切れないという、現実であった。
著者プロフィール

豊島 逸夫(としま・いつお)

豊島 逸夫豊島逸夫事務所代表。一橋大学経済学部卒。国内銀行、スイス銀行外国為替貴金属ディーラー、ワールド ゴールド カウンシル(金の国際機関)日本代表を経て現職。金関連の著作も多く、日経電子版、ブログなどでの情報発信も旺盛。機関投資家向けにはブルームバーグ端末Toshima&Associates(コード GLD)。ツイッターは@jefftoshima
仕事の問い合わせはjefftoshima@hyper.ocn.ne.jp


このコラムについて
豊島逸夫の「金脈探訪」

元ワールドゴールドカウンシル(金の国際機関)日本代表である金(ゴールド)取引のプロ、豊島逸夫氏が、金相場や金にまつわるトピックを、市場や世界中の国々を舞台にレポートします。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121016/238130/?ST=print  

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