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米「財政の崖」、回避に向けた道筋は依然不透明   崖の先に日本のリスク 再選 日本に一段と要求厳しく
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/441.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 08 日 13:52:19: cT5Wxjlo3Xe3.
 

米「財政の崖」、回避に向けた道筋は依然不透明
2012年 11月 8日 11:59 JS

トップニュース
情報BOX:オバマ米大統領が選ぶ次期財務長官候補と目される顔ぶれ
注目集まる次期米国務長官の人選、「スター性が重要」との声も
日経平均は4日続落、米株急落で100円超の下げ
グアテマラ沖地震の死者約40人に、メキシコ市でも揺れ
[ワシントン 7日 ロイター] 米民主党と共和党の指導部は7日、「財政の崖」を回避するための策として、増税や歳出削減をいつどのように行うかについて、それぞれ異なる見解を示した。「財政の崖」回避に向けた両党の交渉は難航が予想される。

共和党のベイナー下院議長は「レームダックセッション中に財政不均衡の問題を一夜にして解決することはできない」と述べ、「財政の崖」を回避するため、まず短期的な解決策を見つけ出し、その後2013年に実質的な債務削減策の策定に取り組むべきと主張した。

一方、民主党のリード上院院内総務は、富裕層向けの減税を打ち切るべきと主張し、13日から始まるレームダックセッション中に民主党と共和党が主要な措置で合意できることを望むとの考えを示した。オバマ米大統領は年収25万ドルを超す富裕層向けの減税打ち切りを唱えている。

一方、オバマ大統領は7日、共和党のベイナー下院議長と民主党のリード上院院内総務に電話をかけ、財政赤字を削減し、減税や雇用創出で議会と協力していく姿勢を示した。

年末に重なる6000億ドル規模の自動的な歳出削減と減税措置の失効を回避するためにホワイトハウスと議会に残された時間は2カ月足らずとなっている。

*情報を追加して再送します。 

関連ニュース

焦点:米債券投資家の「財政の崖」めぐる懸念、大統領選後も消えず 2012年11月6日
情報BOX:米大統領選後に迫る「財政の崖」のポイント 2012年11月5日
G20財務相会合、米「財政の崖」回避に向けた対応促す 2012年11月5日
雇用拡大には「財政の崖」への対処必要=ダラス地区連銀総裁 2012年10月11日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8A700320121108


『from 911/USAレポート』第598回

    「オバマ政権の「二期目」はどうなる?」

    ■ 冷泉彰彦:作家(米国ニュージャージー州在住)


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 ■ 『from 911/USAレポート』                 第598回
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 オバマ「二期目」のスタートは、何もかもが一期目とは異なることになると思われ
ます。「チェンジ」とか「イエス・ウィ・キャン」といったスローガンが熱気をかき
立てる中で就任式を迎え、高い支持率でのスタートをした自分の一期目とも、地滑り
的という勝利で「信任」された、レーガンやクリントンの再選とも違うのです。

 逆に、今回の僅差の勝利は、大統領への信任というよりも、半分は不信任という重
たい事実を突きつけていると言えます。これに加えて、アメリカの課題は、何もかも
がオバマの責任という事実がのしかかってきます。

 一期目の時は「リーマン・ショックはブッシュ政権の経済失政」であるとか「イラ
ク戦争はブッシュが始めた悪い戦争」更には「一旦クリントンが均衡財政を実現した
のに、ブッシュが赤字を積み上げた」など、大きな問題は全て前政権のせいにできま
した。ですが、今回は違います。何もかもが大統領の責任であり、その問題を解決す
るのも大統領の責任だということになるのです。

 ということは、世論からの「白紙委任」はないと考えるべきですし、アメリカでよ
く言われる「政治的資産」はゼロからのスタートと見るべきでしょう。オバマに任せ
てとにかく「やらせてみよう」という選択ではなく、世論の期待は「問題は解決して
欲しい。そのためにロムニーよりオバマはややましだと思った」という極めて冷めた
視線なのだと思います。

 もう少し客観的な表現をするならば、今回は「改革者」であるとか「理念の体現者」
という期待を込めて選出されたのではないということです。とにかく中道実務家とし
て、また4年間の実績について「優秀な成績ではないが、落第にはしない」というこ
とで信任を受けたということです。となれば、オバマがすべきことはただ一つ、実務
的な成果を出すことになります。

 まず、再選されたオバマの直前に立ちはだかるのは、「フィスカル・クリフ(財政
の崖)」です。現在、2012年10月のアメリカ政治は、巨大な崖に直面していま
す。2010年の秋以来続いている財政規律論議が、2011年には日本の「公債特
別法案」とよく似た「債務上限バトル」になり、そこで中長期の政策が合意できな
かったために、自動的に巨大な「歳出カット」へ向けた法案が2013年の年初には
効力を持つことになっているのです。

 同時に、ブッシュ時代の減税が、オバマ政権によって暫定的に延長されてきたので
すが、これが失効します。つまり「巨大な歳出カット」と「巨大な増税」が瞬間的に
発動されるわけで、財政規律という観点からは一見すると良さそうですが、「生身の
米国経済」には巨大な影響が出るというのが一般的な見方となっています。何しろG
DPの3%が吹っ飛ぶというのだから、国際経済にも大きな影響があるでしょう。

 選挙でとりあえず信任を受けたオバマは、この問題に対処しなくてはなりません。
元はといえば、2010年に諮問委員会を作って「財政規律」論議を始めたのもオバ
マであるし、現在の財政赤字の責任も「景気刺激策」や「アフガン増派」などオバマ
が始めた政策に端を発するものが多い中、オバマが責任をもって解決しなくてはなら
ないのです。

 ここでは、3つのファクターが絡み合っています。

 一つは、自分は選挙に勝ったのだから「民主党の立場が信任された」として、あく
まで「歳出カットは押さえ気味」にして、一方で「富裕層への課税強化」へ突き進む
という力です。民主党の中には、前回の1990年代後半には、この手法に似た形で
極端な歳出カットを避けた後に、ITや金融に牽引された好況がやってきて、税収が
大幅に増えたために均衡財政が実現できた、その際の「夢よもう一度」という意見が
多く、こうしたセンチメントを後押ししているのです。今回、大統領選と同時に行わ
れた選挙でも、上院では民主党が健闘していることも、この動きを後押ししています。

 ですが、これは共和党が今回も多数派を取った下院が許さないでしょう。「財政の
崖」に関する対処法案は、今年中、つまり今回の大統領選と同時に選挙で選ばれて1
月に就任する「新議会」ではなく、任期切れ寸前の「旧議会」が決めることになるの
ですが、この点に関しては新旧両議会では大きな変化はないので、オバマとして押し
切るのは大変に難しいわけです。下手をすると合意に失敗して、崖から本当に落ちて
しまうこともありうるのです。

 二つ目は、今回の選挙が「辛勝」であったことに謙虚となり、オバマが改めて共和
党側に大きく歩み寄るという可能性です。富裕層課税を相当程度諦めると同時に、歳
出カットにも相当に応じて行く、そうして大統領としてのメンツにこだわらずに超党
派合意に持っていくという大胆な行動、オバマがそうした決意をしている可能性もあ
ります。

 三つ目は、何らかの駆け引きが行われるという可能性です。例えば一番最初の諮問
委員会報告である「シンプソン=ボウルズ案」に戻るということや、「増税」+「歳
出カット」の組み合わせではあるが、何もせずに「財政の崖」を転落するほどのGD
Pへのインパクトはないという、「落とし所」を見つけるという方向性です。

 いずれにしても、以上の複雑な政治的ファクターに上手く乗って、何とかこの「財
政の崖」を回避しなくてはならないのです。

 ところで、オバマ大統領は再選されたのだから、少なくとも一期目の4年間の政策
はそのまま継続される、というわけには必ずしも行かないでしょう。というのは、主
要閣僚のうちの何名かは、既に閣外へ去るという意志を表明しているからです。

 その筆頭は、ヒラリー・クリントン国務長官です。ヒラリーは、2007年から0
8年の民主党予備選では、オバマと最後まで指名争いを行ったばかりか、大統領候補
からの撤退後も「副大統領候補」に取り沙汰されましたが、それも逃しています。通
常なら「怨念」を残すところですが、オバマに請われて国務長官に就任し、アメリカ
外交の責任者となってからは着実に職務をこなすだけでなく、オバマの「忠臣」とし
て息の合ったところを見せてきています。

 このヒラリー外交ですが、大きく分けて3つの特徴が指摘できるように思います。

 一つは、アフガン=パキスタンへの対応です。ヒラリーは、90年代の「ファース
トレディー」の時代から、タリバンの無害化=承認が可能かという検討を夫のビル・
クリントンが行い、最終的に断念した経験、更にはアフリカでの米大使館連続爆破テ
ロなどの攻撃を受ける中で、対アルカイダの空爆などを経験しつつ、アルカイダとい
う反米運動との「戦い」をずっと戦ってきた人物でもあるわけです。

 また、911以降の状況下では、パキスタンのムシャラフ政権を支えつつ、ブッ
シュがアフガンでの対タリバン戦争を戦う中で上院議員として戦地にも赴き、また対
パキスタン外交を担当することもあったわけです。その長い経験の延長上に、201
1年のオサマ・ビンラディンの所在把握から殺害までの「オペレーション」の責任の
一端も担っているのです。

 二つ目は、対アラブの外交です。確かに「アラブの春」の行く末は不透明であり、
エジプトやリビアが果たしてどのように安定するのか、現時点でも不確定要素は大き
いわけです。ですが、いくらムバラクや軟化後のカダフィが「アメリカのパートナー」
であったからと言って、こうした「民衆の支持を失った独裁者」をアメリカがいつま
でも支えることは不可能でした。その意味で、オバマの決断でアメリカは「アラブの
春」の支持を決定し、ヒラリーは外交工作でこの判断を支えたわけです。

 三つ目は、対中国外交です。オバマは、明確に「今後の米国の軍事的関心はアジ
ア・太平洋にあり」ということを宣言しており、これをヒラリーの外交と、パネッタ
国防長官の軍事戦略が支える形になっていたわけです。特にヒラリーは、南沙諸島の
問題で南シナ海全体の支配を狙う中国に対して強い牽制を行う中で、ベトナムやオー
ストラリアとの連携を密にして、軍事バランス、外交のバランスの確保に注力してき
ました。

 例えば、ミャンマーの軍事政権を軟化させ、スーチー女史の解放と自由な選挙の実
施、西側との和解という流れを作ったのもヒラリー外交ですし、この問題は中国の影
響力を外してゆくという深謀遠慮の下で行われているということも指摘できます。そ
のヒラリー・クリントンという「片腕」をオバマは失うのです。

 後任はどうなるのでしょうか? 例えば、スーザン・ライス現国連大使では線が細
すぎるし、民主党の外交というと、一時期は影響力のあったビル・リチャードソン
(元ニューメキシコ知事)はスキャンダルでほぼ過去の人になっているという具合で、
民主党系の人物としては人材難という面があります。

 そんな中で、2004年に大統領選で敗北した後も、実力上院議員として活動して
いるジョン・ケリー氏が「国務長官をやりたがっている」という報道もあります。

 いずれにしても、同じオバマ政権が続くとは言っても、外交は大きく見直しになる
と思われます。特に、中国に関しては、相手の政権交代も重なる中で、「関係改善」
への動きが出て来ると思われます。

 閣外に去ることが決まっているのは、ヒラリー・クリントンだけではありません。
2009年の組閣にあたって、最も重要視されたポストであったティモシー・ガイト
ナー財務長官も、家庭の事情で退任を表明しています。

 金融危機における公的資金の注入、そしてその後の通貨政策など、オバマ「第一期
政権」を大きく支えてきたこの人物が去るというのは、非常に政権にとって大きな問
題になるでしょう。ですが、この問題はガイトナー財務長官の去就だけでは終わりま
せん。

 ガイトナー氏とコンビを組むように、景気、金融の危機を脱するべくQE1からQ
E3に至る流動性供給を発動してきた連銀のバーナンキ議長も、2014年1月に任
期が切れます。バーナンキ議長に関しては、2010年の再任時にも、上院で多くの
反対票が出ていますし、今回の選挙戦でオバマに挑戦したロムニー候補は、自分が大
統領になったらバーナンキ氏を交代させると言明までしていました。

 一部には、バーナンキ氏自身が2014年には再任を求めず、愛着のあるプリンス
トン大学の教授に復帰するという観測もあります。まだまだ景気の底力が出てきてな
い不安定なアメリカ経済をどう運営していくのか、財務長官人事に加えて、FRB議
長の人事というにもオバマ「二期目」に取っては難題になるように思います。

 こうした人事は政策に直結して行きます。今回の選挙では、ロムニーが勝てばドル
高になるという予測もありましたが、オバマになっても、向こう何年もドル安が続く
とは限らない、そうした見方もしておく必要があるようにも思われるのです。

 では、オバマのメッセージ発信ということでは、二期目はどうなるのでしょうか?
2009年にオバマはノーベル平和賞を受賞しました。その理由となったのが、プラ
ハでの「核廃絶スピーチ」であり、カイロでの「イスラムとの和解スピーチ」でした。
中長期の長いレンジを視野に入れつつ、往年のアメリカが持っていたような底抜けの
理想主義を訴えるオバマの姿には、世界中が熱狂したのでした。ですが、そうした
メッセージの発信者としてのオバマは姿を消していきました。

 一連の「アラブの春」という運動は、明らかにオバマの2009年のスピーチに触
発されていますし、オバマもその初期には運動に対する明確な支持をしています。で
すが、リビア、エジプトなどの「ポスト独裁政権」の姿が迷走する中で、オバマの言
動は「アメリカの国益」を第一とした現実的、あるいは利己的なものに変わっていま
す。

 また、日本では「ヒロシマでの献花」の実現ということで、オバマという大統領な
ら実行してくれるのではという期待があるわけです。オバマと個人的にも近いルース
現駐日大使が、積極的に広島や長崎での慰霊活動を行なっていることも、オバマ自身
が献花を行いたいという個人的な意志のあることを匂わせています。

 こうした問題に関しては、リーマン・ショック以降の景気回復に忙しく、またアフ
ガン戦争への決着をつけるなど「前任から引き継いだ負の遺産」を処理する「一期目」
には不可能でも、多くの票を得て信任を受けた「二期目」には可能になるのではない
か、私はそのように見ていました。

 ですが、今回の再選のされ方は、恐らく「オバマのヒロシマ献花」というような
「メッセージ発信」を困難にするのではないか、私はこの点では悲観的に見ざるを得
ないのです。

 一つには、余りにも僅差の弱々しい勝利であったという点です。一期目には一旦は
現実主義に走ったが、二期目には国民の信任を得て改めて核廃絶や国際協調のメッ
セージ発信ができるようになるという目論見は、こうした「弱々しい勝ち方」では難
しいように思われるのです。

 更に言えば、本書で追跡してきたようにオバマ自身が「チェンジ」を放棄している
こと、また具体的にはメッセージ発信型の改革者ではなく、中道実務家というカテゴ
リの政治姿勢を明確にすることで、辛うじて再選されたということがあります。この
点で、改めて国際協調や核軍縮のメッセージを華々しく訴え、国内の批判を抑えてヒ
ロシマ献花を行うという可能性は薄くなってきたと見るべきでしょう。

 この点に関しては、中国や韓国との論争の中で日本がアジアでの孤立を深めて行っ
た場合には、まず不可能となるという点も指摘しておかねばなりません。

 いずれにしても、今回のオバマの勝利は「ほろ苦さ」こそ感じられるものであって、
熱狂とは無縁のものでした。下手をすると、4年間をかけての「オバマ政権の終わり」
が始まったという印象も出かねません。こうした印象を打破するためにも、とにかく
中道実務派として歴史に残る調整能力を発揮して行かねばならないのです。その最初
のハードルが「崖」への対処であり、ここに落とし所を見つけて景気の回復基調をよ
り確実なものにすることが求められるのです。

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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家(米国ニュージャージー州在住)
1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院(修士)卒。
著書に『911 セプテンバーイレブンス』『メジャーリーグの愛され方』『「関係の空
気」「場の空気」』『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』。訳書に『チャター』
がある。 またNHKBS『クールジャパン』の準レギュラーを務める。

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【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍
【発行部数】101,417部
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オバマ氏再選 日本に一段と要求厳しく…対中政策、アジア太平洋で連携強化
産経新聞 11月7日(水)19時19分配信
 【ワシントン=佐々木類】アジア太平洋最重視戦略を掲げるオバマ大統領の再選は、沖縄県・尖閣諸島など中国に主権を脅かされている日本にとり、停滞気味の日米同盟を深化させる仕切り直しの機会となる。

 スタインバーグ前国務副長官は「中国にも国益はあるが、国際法を守り他国の権益を脅かしてはならない」と語る。その一方で、東シナ海や南シナ海で挑発行為をエスカレートさせる中国海軍の動きを念頭に、日米同盟に加え「米国は、東南アジアやインドと新たな連携強化を図る必要がある」と2期目のオバマ政権の課題を指摘する。

 日本にとって対中、対日政策をめぐる1期目のオバマ政権の最大の成果は、尖閣諸島が米国の日本防衛義務を明記した日米安全保障条約の適用対象だと明言したことだ。米歴代政権の基本的立場が、尖閣諸島の領有権そのものについては態度表明しないというものだけに、中国や、日本を取り巻く安保環境に与えたインパクトは計り知れない。

 オバマ大統領はロムニー候補との討論会でも、「中国の軍事力が将来強大になるからこそ、アジア太平洋に軸足を移したのだ」と明言した。昨年11月、オーストラリア訪問時にアジア太平洋最重視戦略を打ち出したことについても、「中国の軍事的脅威に対抗するためだ」と語っている。

 これに対し、日本では民主党の鳩山由紀夫政権が東アジア共同体構想からの米国はずしを画策したり、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題をめぐり軽率な発言をしたりするなど、迷走を極めた。

 日米同盟も深化どころか関係修復に多大な時間と労力を浪費している間、中国が公船や艦船を使った挑発的な活動を活発化。同盟立て直しの区切りをつけたのは今年4月、日米両国の外務・防衛閣僚級協議で在日米軍再編見直しを共同発表してからだ。

 財政悪化で議会から国防費の削減圧力を受けているオバマ政権にとって、日本やオーストラリアなど同盟国への期待は大きい。

 米海兵隊をグアムやハワイに置き、ローテーションでオーストラリア・ダーウィンに分散展開するのはその証左だ。だがそれは、軍事費の負担と応分の汗をかくことを同盟国に求めるもので、とりわけ、日本への要求は今まで以上に厳しくなる可能性がある。

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大統領を大事にする米国 日本はフワフワせず重厚な新政権を
律儀なオバマ大統領が使い続ける腕時計
最終更新:11月7日(水)23時21分

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121107-00000602-san-int


アングル:オバマ氏勝利でドル安路線のあおり受ける日本
2012年 11月 7日 18:15

[東京 7日 ロイター] 米大統領選挙でオバマ氏が勝利し、経済政策は従来路線が継続される見込みとなった。金融政策もバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が少なくとも2014年1月までの2期目の任期を全うする予定で、日本にとっては同議長によるドル安政策のあおりを受ける構図が続きそうだ。

同議長は12月にもQE3を強化するとの観測から円高懸念が浮上、日銀も通貨競争から降りる訳にはいかないとの声も市場には強い。ただ来年に向けた世界経済の情勢を見渡せば、米国の強さが相対的に際立ち、円高ドル安傾向は和らぐとの見方も政策当局内に浮上している。

<バーナンキ議長のドル安政策続く>

オバマ大統領が再選され、議会は下院が共和党、上院は民主党が多数という現状維持となりそうだ。市場関係者は「これでは選挙前と何も変わらないことになる。ドル安政策も変わらないだろう」(クレディスイス証券チーフエコノミスト・白川浩道氏)と見ている。

「財政の崖」問題は、こうした議会のねじれ状況のもとでも、年明けのいずれかの時点で何等かの形で回避策がとられるというのが、内外での一般的な見方だ。社会保障年金減税は継続措置となる可能性が高い一方で、争点となるのは富裕層減税だが、打ち止めとなっても富裕層への影響は軽微と見られている。歳出の強制削減で、重点的に削減されるのは国防費で、関連産業への打撃が中心となりそうだ。ただその分財政再建は遅れることとなり、米国の経済は財政の重しや家計のバランスシート問題を抱えて、緩やな成長にとどまる構図が続くことになる。

他方、米国の金融政策は従来通りバーナンキ議長が担う。議長の任期は2014年1月までだが、FRBの経済見通しでは失業率が望ましい水準まで低下しそうにない。在任中はQE3からの脱却は難しそうだ。日本はこれまでもバーナンキ議長のドル安政策のあおりを受けてきたわけだが、「景気対策はFRBの金融政策に偏らざるを得ない図式。景気低迷の下、追加金融緩和が予想され、為替レートの基調はドル安・円高が続くだろう」(第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏)ということになりそうだ。

しかも、来月の米公開市場委員会(FOMC)では「ツイストオペの終了とともに、QEを上乗せしてくる可能性がある。そうなれば再び円高懸念が出てくる」(野村総研金融ITイノベーション部長・井上哲也氏}とも言われている。

<大胆な緩和政策打てない理由>

日本にとってドル安円高に対抗する手段はほとんどない。いくらG20共同声明で「過度な為替変動が望ましくない」との認識が示されても、為替介入への理解を得られたわけではない。政府が機動的な経済対策に動けなければ、必然的に日銀への期待感が高まることになる。

JPモルガン証券のチーフエコノミスト、菅野雅明氏は「円安は日銀だけでは実現できず、相手との相対的な関係。FEDやECBと比べて市場が日銀の方が緩和的だと判断することで初めて可能となる」と説明する。

そうしたもとでも日銀が米国同様の大胆な金融緩和に踏み切れないのは、財政事情が重しとなっている。白川総裁が繰り返し説明しているように、大規模な国債買い入れは財政ファイナイナンスと受け止められかねない。また 「買い入れた国債をFEDのように将来の売却を前提にすることは、日本の財政状況からみて難しい」(第一生命経済研究所・熊野氏)との指摘がある。

<QE3下では円高進まず>

一方、このままQE3のもとで円高ドル安傾向が続くわけではないとの見方も浮上してきた。世界経済の変化が認識され始めてきたためだ。

一部の日銀関係者の間では、今後も米国の金融政策にはほとんどオプションもなく、現在の緩和路線は変わらないとしながらも、QE2とQE3で金融市場への影響は異なるとの見方がある。以前は、世界の投資家が新興国の成長を前提にしたドル売り・他国資産買いに動き、ドル安傾向となっていたが、現在はリスクオフ姿勢が強まり、ドルというハードカレンシーを保有するようになった。そのためドル安はそれほど進んでいないというものだ。

さらには、そうしたリスクオフの背景にある欧州不安、中国の構造的な成長鈍化、それに伴う新興国全般の減速などもあり、世界経済のけん引役が米国になるとの見方が出ている。シェールガス革命も米経済への期待感を高めていることから、ドルが売れられにくいという事情がある。

オバマ政権の下でバーナンキ路線が継続され、ドル安路線におびえる日本にとっては、こうした米国への期待感が円高進行を食い止めるてくれるなら何よりだ。景気後退に陥った日本経済にとっては、追い風が吹く日が待たれる情勢だ。

(ロイターニュース 中川泉;編集 石田仁志)

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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8A607420121107?sp=true


アングル:大統領再選で政治勢力分布に変化なし、経済状況は逆風
2012年 11月 7日 17:56 JST
[ワシントン 7日 ロイター] 米オバマ大統領の再選が確定した。大統領は直ちに増税と歳出削減による「財政の崖」問題への対応を迫られる。長期的に持続可能な連邦財政に向けた調整も求められるが、議会は上院が民主党、下院は共和党が制する現状に変化はなく、難航が予想される。

以下は今回の大統領・議会選を受けたポイント分析。

◎ワシントンでの勢力分布

政治的に変化はない見通し。下院は引き続き共和党が制する一方、上院は現状どおりオバマ大統領の民主党が多数派となる。ただ上下両院の議会選の結果、両党の穏健派は減少する見込み。

両院のねじれが続くため、税制や歳出をはじめ多くの面で議会審議が暗礁に乗り上げると予想され、所定の法案可決も困難になる可能性がある。

プリンストン大学のジュリアン・ゼルツァー教授(歴史)は「党派性が一段と強まる」と予想している。

◎国内経済の選挙への影響

国内経済は引き続き回復期にある。過去の例からみて、選挙の年に経済が緩やかながらも拡大している場合、大統領は再選されており、今回も踏襲した。

オバマ大統領は、景気後退の要因はブッシュ前大統領にあるとの有権者の判断にも支えられた。

◎財政の崖

オバマ大統領は1期目に共和党との間で財政赤字削減で合意できなかったが、2期目も引き続き困難が予想される。

大統領は富裕層への増税と国防予算削減で10年間で4兆ドル以上の赤字削減を訴えているが、共和党には不評だ。赤字削減策が完全に実施されれば2013年の経済成長率を押し下げることになり、エコノミストの一部はこの影響を和らげるために、家計の税負担軽減が必要と指摘している。

◎オバマ大統領が直面する景気の現状と雇用問題

国内経済は依然2007―09年の景気後退(リセッション)からの回復途上にあり、。過去2年の経済成長率は平均で2.1%に過ぎず、景気後退期に失われた870万人の雇用のうち450万人しか取り戻していない。2300万人が失業あるいは潜在失業者で、多くがパートタイム職しか得ていない。

大統領が議会と財政赤字削減策で合意したとしても、経済成長率を0.2―0.3%程度押し上げるだけで、景気後退期の多大な富の喪失という、景気押し下げの主因への対策が必要だ。

2007年から10年の間に住宅価格が下落するなか、家計資産額(中央値)は38%と記録的に減少しており、住宅の価値を上回る住宅ローン残高を抱えている人は1100万人に上る。

景気後退期に失われた雇用のうち、建設や、金融などの住宅関連の職種は回復が遅れており、将来的に熟練労働者の不足につながる可能性がある。

メジロウ・ファイナンシャル(シカゴ)の副首席エコノミスト、アドルフォ・ローレンティ氏は、「失業の大部分は構造的なものと判断しており、今後問題になるだろう。景気が力強くなっても失業率を7%以下に引き下げるのは難しくなると思われる」と述べた。

欧州債務危機や中国の景気減速などによる需要減退も打撃となる。ローレンティ氏は「経済成長への健全な世界的な推進役がいないという状況にある。これが問題であり、オバマ大統領も容易には解決できない」と述べた。

◎共和党

共和党の大統領候補は前回に引き続き中南米(ヒスパニック)系の有権者から3分の1も支持を得られなかった。選挙人に占めるヒスパニック系の割合が増えていることを踏まえると、今後に課題を残した形。

共和党の主流は、保守的な地域を地盤とする議員が多い下院となった。

ブルッキングス研究所のフェロー、ジョン・ハダク氏は、次の大統領選で共和党は一段と保守的な候補を選んだほうがよいとの声が党内で高まる可能性を指摘する。「右派に軸足を移すだろう。穏健派を候補にしなければよかったとの声が強まる」と述べた。

◎オハイオ州はオバマ大統領制する

激戦州となったオハイオ州はオバマ大統領が制した。自動車が主要産業である同州で、オバマ大統領による2009年のゼネラル・モーターズ(GM)やクライスラー救済が影響したとみられ、白人男性からも一定の支持を得た。

ロイター/イプソスの出口調査によると、白人男性の得票でオバマ大統領は全国平均では20%ポイントの差で敗れているが、オハイオ州ではその差は13%ポイントだった。
http://jp.reuters.com/articlePrint?articleId=JPTYE8A604720121107


米大統領選はオバマ氏が再選へ:識者はこうみる
2012年 11月 7日 14:42
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[東京 7日 ロイター]  米主要メディアは、大統領選で民主党のオバマ大統領が共和党のロムニー候補に勝利したと伝えた。オバマ氏は、MSNBCが再選を報じると、ツイッターで「皆さんのおかげだ。ありがとう」とコメントした。

オバマ大統領再選に関する市場関係者の見方は以下の通り。

●「快勝」で株価には短期的にプラス

<立花証券 顧問 平野憲一氏>

オバマ大統領が早い時間に「快勝」したことで、短期的には株価にプラスとみている。オバマ大統領の再選を織り込んできたことから、外為市場で急激なドル安・円高が進むということもないだろう。日経平均は200日移動平均線をいったん上抜ける可能性もある。ただし「財政の崖」問題が今後、マーケットを振り回す要因となりそうだ。

●議会のねじれ解消せず、財政問題で現実的な着地

<みずほインベスターズ証券 チーフマーケットエコノミスト 落合昂二氏>

米大統領選挙で、予想通りにオバマ大統領が再選を果たしたことで、市場の不透明要因がなくなった。東京市場はひとまず、選挙結果を消化した。

今後の焦点は財政の崖問題への対応に移る。議会のねじれ現象が解消しなかったことで、オバマ大統領は難しい政策運営を余儀なくされるだろうが、同問題を放置すると米景気に深刻な影響を与えかねないだけに、支出削減を取り込みながら財政支出による現実的な着地を模索することになるのではないか。

●1期目はリーマン・ショックのリカバリー、2期目から本領発揮

<トヨタアセットマネジメント 投資戦略部 チーフストラテジスト 濱崎優氏>

当初からオバマ氏優勢が伝えられていただけに、予想どおりの結果と言える。マーケットの反応も米S&P総合500種先物が一段安と想定した動きを見せている。ただ、ひととおり織り込まれれば、徐々に落ち着いていくのではないか。

今の米経済は自由化、規制撤廃、優勝劣敗という政策を軸に据える共和党のやり方に耐えられるとは思えない。こうしたやり方が結果としてリーマン・ショックを招いた経緯もあり、1期目のオバマ政権は2回もの大規模な財政出動を行って景気崩壊を防ぐといったことに追われ、リカバリーに精一杯だった。2期目からは強いリーダーシップのもと、本領を発揮すると予想している。

ロムニー氏が勝利した場合と異なり、オバマ氏だと現在の金融緩和路線が継続するとの安心感はある。財政出動が封じられている状況下では、金融緩和が経済を下支えする。金融緩和の恩恵から個人消費、住宅投資は好調だ。

「財政の崖」への対応はいずれは通過しなければならない問題。旧議会では決められず、年明けの新議会に委ねられるとみている。このため、この問題は若干、先送りされるというのがメーンシナリオだ。

●FRB金融政策への大きな影響ない

<SMBC日興証券 チーフ債券ストラテジスト 末澤豪謙氏>

オバマ大統領再選、上院が民主党、下院が共和党の過半数維持ということで、基本的にメーンシナリオに落ち着いた。したがって、マーケットへの影響は限定的だろう。また、大統領選挙を終えたことで、当面は不透明要因が払しょくされ、市場は安定化するのではないか。今回の選挙結果を受けてリスクオフが進むとみていない。

今後は年末から年明けにかけて、財政の崖やシーリングの問題をどのように調整していくかということになる。さらに景気動向、欧州のギリシャ、スペイン救済問題、中国の指導部交代後の財政・経済政策にターゲットが移るとみている。財政の崖に関しては、議会がねじれ継続となり、昨年の夏同様に相当もめるとは思うが、昨年も超党派で妥協がはかられた経緯があるので、時間はかかると思うが、最終的には相当程度緩和される結果になるとみている。金融政策については、現状の米連邦準備理事会(FRB)の政策への大きな影響はないだろう。

今回の選挙結果を受けた米国、日本の10年債は、米債に関しては年末にかけての景気動向、円債は政局がポイントになるとみている。円債は0.7─1%を中心にしたレンジが年内は想定される。米債の場合は、景気が回復傾向にあるので、金利にやや上昇圧力が加わりそうだ。

●リスク資産価格は上昇へ

<オムニベスト・グループの共同社長兼最高投資責任者、トム・ソワニック氏>

オバマ大統領の勝利で、バーナンキ氏が引き続き連邦準備理事会(FRB)議長を務めるとみられるため、リスク資産が上昇するだろう。今夜はドルが軟調で、量的緩和が続くとの見方が反映されている。

オバマ大統領の勝利は、FRBが安定し、富の再配分に焦点があてられることを意味する。ドッド・フランク法(金融規制改革法)も維持されるだろう。

オバマ勝利で、銀行に対する規制が強化され、銀行ビジネスと証券ビジネスが分離される可能性があることは誰でも知っている。それは証券会社の追い風となる可能性はあるが、銀行にとってはいいことではない。

●株価の大きな要因にはならず

<ジャナス・キャピタル・グループの債券戦略担当グローバル責任者、コリーン・デンツラー氏>

過去数日間の市場の無風状態から判断して、市場は既にオバマ大統領の勝利を織り込んでいる。従って上下どちらにも大きな動きは必ずしも予想されない。

企業が経営に関する決定を下し始めることができるといった安心感から来る相場の反騰を除き、株価が大きく上昇するとは見込んでいない。

市場を動かす大きな要因にはならないだろう。

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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8A604120121107?sp=true

【第4回】 2012年11月8日 長野美穂
なぜオバマは続投できたのか?
失業率が最悪の激戦地・ネバダ州から
人々の歓喜と落胆を実況中継
――ジャーナリスト・長野美穂
「もうロムニーの悪夢を見ない」
オバマ続投に湧くサポーターたち


オバマ再選が決まった瞬間、ラスベガスのホテルで喜ぶオバマのネバダチーム。 写真右は、州の精神病院で働くセラピストのアルシア
 オバマ続投。それが決まった瞬間、ネバダ州・ラスベガスのホテルの宴会場に集まっていたオバマ陣営のサポーターたちは湧き返った。

「もう、ロムニーが大統領になる悪夢を見て、夜中にうなされて跳び起きることもなくなるんだ……」

 レズリー・ニューマンはそう言って胸を押さえた。涙が彼女の目尻に溜まっていた。68歳のレズリーはリーマンショック後、持ち家だけは何とか死守したが、老後の蓄えを全て失った。42歳の息子は職を失い、医療保険もない。

「でも、これからきっと良くなる。ロムニー政権になったらどうなっていたかと思うだけでぞっとする。オバマの医療保険改革で、息子が医療を受けられるようになるんだもの」


サインを抱えた女性の写真
 ネバダ州は、リーマンショック以降、全米で最悪の失業率を記録し続けてきた。全米の失業率が8%を少しだけ下回った今も、ネバダの失業率は11.8%とダントツに高い。2年前には14%を突破したこともある。多くの住民が職を失い、家を失い、干上がっている砂漠の州だ。

 別のオバマ支持者、アルシア・クラークは、公立の精神病院で働くサイコセラピストだ。彼女もため息をついて胸をなで下ろしていた。

「ロムニーが大統領になったら、福祉関連の予算はごっそり削られるから、心配だった。私の患者は自殺寸前の重症の人が多いから、州や国からの予算維持は死活問題なの」


ニューヨークのコロンビア大学の学生、アレキサンダー。激戦地の故郷・ネバダでオバマに投票するために大陸を横断してきた
 オバマ勝利と、民主党が上院の過半数を占めたことに喜びを隠しきれず、ダンスのステップを踏んでいたフランク・ディクソン(68)は、ネバダ州の保護観察員の仕事を28年間勤め、リタイヤしたばかりだ。

「共和党はこれに懲りて、法案成立を阻止するためだけに議会でノーと投票する無意味な抵抗を辞めてほしいね。まだフロリダの選挙結果が出てないのに、オバマが勝ったってことは、フロリダで共和党がどんなに汚い手を使って票を盗もうと、無駄だってことの証明なんだから」

「また共産主義の独裁政治か」
明暗分かれたロムニー陣営の落胆


敗戦が確定したロムニー陣営。「すべての票が開票されるまで、信じない」と右の男性
 その30分後、ラスベガスの別のホテルの大ホールでは、ロムニー支持者たちが苦虫を噛みつぶしたような顔で、ロムニーの敗北スピーチを聞いていた。

 オバマ再選に怒りを隠さないのは、娘が軍隊に入隊しているというラリー・クラークだ。

「イスラエルをないがしろにしているオバマが、イスラム勢に肩入れして、アメリカ市民を危険にさらしている。シリアやリビアなど中東がとんでもないことになっているのに、弱い大統領を選んだこの国をどこが攻撃してくるかわからない」


オバマ再選に涙を流す女性
 あまりの怒りで首の神経が痛むと言うラリーは、ポケットから携帯用の鍼を出して、首のツボに刺した。

「だいたい、本当にアメリカで生まれたかどうかも怪しい人間が、大統領をやっていること自体おかしいのよ。出生届だってフォトショップでつくったに違いない」と言うのは、ロムニー支持者のアニタ・プロウト。

 ロムニー陣営では、オバマはBOという略語で呼ばれ、「共産主義の独裁政治のBOの4年間が始まるなら、いっそカナダへ移住でもするか」と言うジョークも聞こえた。

 リベラルと保守の激戦地の1つ、ネバダでオバマが勝つまでの軌跡、そしてロムニー陣営が最終週をどう闘ったのかを振り返ってみよう。


ラスベガスのカジノ街。「リーマンショック以降、ヨーロッパからの観光客がガタ落ちした」と、あるタクシーの運転手
 ど金色のトランプタワーがそびえ、巨大カジノやホテルが並ぶ「ラスベガス・ストリップ」と呼ばれる繁華街を少し離れると、ホームレスが家財道具を詰めたカートを引いて歩く光景が目に付く。高金利のペイデイ・ローンの新しい店が、雨後のタケノコのように道の角に次々と出現し、その隣にはポーカーやギャンブルの店、そして質屋や酒屋が並ぶ。

 そんな中、これまで一度も政治運動をしたことがなかったというミッキー・オー(55)は、初めて家のドアを恐る恐るノックし、ロムニー陣営のボランティアとして、サンダルの底をすり減らしていた。

55歳で貧困層に転落した会計士も
失業率が最悪を続けるネバダの実情


ロムニーの敗戦スピーチを聞くロムニー支持者
「オバマには失望した。この国に韓国から移民してきて30年。これまで会計士としてキャリアを順調に積み上げてきたのに、生まれて初めて職を失った。ロムニーなら経済を何とかできる。職を創造する環境にしてくれるはず」

 独身のミッキーは、ラスベガスでも比較的裕福なサマーリン地区に自力で3ベッドルームの家を買い、心地良い生活をエンジョイしていた。だが、13ヵ月前、勤めていた食品会社の「USフードサービス」が会計部門を他州に移し、職を失った。


料理がふんだんに用意されたロムニー陣営。敗戦で、パーティームードはなし
「ずっと中流だと思っていた自分が、今では一気に貧困層に転落よ。健康保険も買えない。情けなさと敗北感で胸が張り裂けそう。55歳でもっと稼ぐぞと思っていた矢先に、今ではたとえ時給15ドルでも、誰も私を雇ってくれないんだから」

 12月1日には失業保険の支給が切れる。1日に8〜15通のレジメを応募先に送ってきたが、この1年1ヵ月、面接の通知はゼロだ。

「ロムニーがもし当選しても、翌日、私が仕事にありつけるわけじゃないことくらいわかってる。そこまで楽観的じゃない。でもオバマよりロムニーの方が圧倒的にビジネスの実績がある。そこに賭けるしか、私、もう後がない」

 ライアンがロムニー陣営に副大統領候補として加わったとき、無職のミッキーは15ドルをロムニー陣営に寄付した。ライアンの国家赤字削減案に共感したからだ。


写真左が失業13ヵ月目の会計士のミッキー。「私の時間とエネルギーをロムニー再選のために投資する」
 同じ頃、ラスベガス市内に複数あるオバマ事務所の1つを訪ねてみた。ドアを開けると、数十人のヒスパニック系の高校生たちで溢れかえっていた。1人ずつクリップボードを持ち、市内の住民の氏名、電話番号が載った紙の束を抱えている。

「おーい、皆! バンのピックアップの時間を間違えないように。自分の担当地域、わかってるな!」

 リーダーの声が響く。駐車場ではミニバンが待機し、高校生たちを乗せてそれぞれの住宅地へと向かう。

 当然だが、18歳以下には選挙権がない。だが、ここラスベガスでは、オバマ陣営の票集めをする主な「ソルジャー」たちは、16歳や17歳のあどけない高校生たちなのだ。サウル・ゴンザレス(16)と従兄弟のマリア・ヘルナンデス(17)もその1人だ。


投票日前日。オバマ事務所で電話で市民に投票を呼びかける高校生たち
 黒人やヒスパニック系住民が多い北ラスベガス市の住宅街をあてがわれた2人は、1日70件近いノルマをこなすべく、ドアをノックする。

「まず民主党員か無党派の人の家に行くように言われてる。共和党員の家に行ってもまず無駄だし」とサウル。彼がオバマを支持する最大の理由は「ヘルスケア」だ。

「今、僕の家族には健康保険はないけど、オバマのプランで家族が病院に行けるようになるから」

「医療、教育、移民政策に共感」
オバマ陣営は高校生の人海戦術も


投票権のない高校生のマリアとサウルはオバマ票獲得のために、1日70件個別訪問のノルマをこなしていた
 さらに将来の大学の学費ローンも、オバマ政権下なら安く抑えられるはずだとサウル。医療と教育。この2点のために「自分ができることは今やらないと」と彼は言う。

「高校生人海戦術」は、電話ボランティアでも威力を発揮していた。別のオバマ事務所では、高校生4人のグループが、携帯電話で住民に片っ端から電話をかけていた。

「オバマの名を出すと、突然怒鳴られたりすることもあるんだ。正直ビクビクしちゃうよ」「だいたい、俺たち男が電話かけると怒鳴られるよな。女の子の声の方が得だよ」

 そう言いながら、スタッフからあてがわれた古い携帯電話で1件1件に電話をかけているのは、ヘスースとワンという名の男子高校生だ。


ボランティアの中でもダントツの票獲得を果たしたバイリンガルのケンシー
 彼らの隣で圧倒的な票獲得実績を誇るのが、17歳のケンシー・ヘレラ。ホンジュラスから移民してきた両親を持つ彼女は、スペイン語に堪能で、持ち前の明るさもあって、ヒスパニック系の住民たちをオバマに投票するように何人も説得した「凄腕ボランティア」だ。

 男の子たちが冷たく電話を切られるその横で、ケンシーは電話の相手と談笑し、会話をキープしている。

「私がオバマを支持する理由は、移民政策よ。特に若い違法移民に在留資格を与える案には大賛成」

労働者地区のオバマ事務所と対照的
裕福な住宅地にあったロムニー事務所


オバマ事務所はラスベガス市内だけでも複数箇所ある。ここはヒスパニック系住民の多い地域にある事務所
 オバマの事務所が労働者が多く住む地区に点在してるのに対し、ネバダ州のロムニー選挙本部は裕福な住宅地のサマーリン地域にある。「イン・アンド・アウト」という人気のハンバーガーチェーン店の真向かいにあるロムニー事務所は、赤と青と白の3色で綺麗にデコレーションされていた。部屋の角には共和党のシンボルであるゾウのぬいぐるみがある。

 受付の前に行くと、「ご用を承りましょうか?」とさっと数人から笑顔で声がかかる。ほとんどが白人スタッフ、白人ボランティアだ。

「適当に歩き回って写真撮ってっていいですよ」と言うオバマ事務所とは違い、ロムニー事務所では、広報担当が写真のアングルを指定する。「選挙日まであと4日! 電話を徹底的にかけまくろう」という手書きの張り紙とゾウのぬいぐるみを写真に撮ろうとしたら、「それはちょっと」とやんわり止められた。


ロムニー陣営のネバダ事務所は、こんな大きな家が建ち並ぶ高級住宅街にある
 電話ボランティアの隣には「ベル」が置いてあり、1票獲得ごとに「チン!」と鳴らしている。ボランティアの多くは中高年だ。軍事産業の会社をリストラされた中年白人女性が電話をする横で、同じく失業中のミシェル・ワーネックが6時間、電話をかけ続けていた。

「先週は5人の民主党員をロムニー支持者に転向させたの。秘訣は、オバマケアになると、シニア層がどれだけ損するかを説明すること」


ロムニー事務所で投票日4日前に電話をかけるボランティアたち。白人の中高年が多い
 選挙直前にニューヨークやニュージャージーなど東部の州を襲ったハリケーン・サンディ。ニュージャージー州を訪れたオバマは、宿敵だったはずの共和党のクリス・クリスティ知事から大統領としての働きを大絶賛され、一気に好感度を上げた後、大打撃を受けたニューヨーク州には寄らず、ネバダへ飛んできた。

 共和党と民主党の激戦地・ネバダにオバマが来たのは、この選挙戦中10回目だ。北ラスベガス市の黒人が多く住む地域にやってきたオバマは、30分間の短いスピーチを終えて、瞬く間に間に飛び去った。

 マーティン・ルーサー・キング牧師と一緒に黒人公民権運動のために行進した経験を持つ72歳のローズ・ジョーンズ・ウェイドは、オバマのスピーチを聞きに来た。

「職が争点なのは明らかだけど、自分たちが失業したからって、オバマに怒りをぶつけるのは筋違い。企業が利潤追求のために存在する限り、リストラはなくならないし、それはオバマのせいではない。ブッシュが滅茶苦茶にした国をたった4年で建て直せという方が、もともと無理な注文なんだから」

貧困の実情なんて
裕福なロムニーにわからない


同じくオバマの遊説で。「女性の労働者に男性と同等の賃金を約束する法律をロムニーは通さないはず」とビバリー
 カジノ産業に頼るネバダの失業率が高く、人々の間の不満が高まっているのはどうなのだろう?

「仕事がないって言うけど、隠れた求人って口コミやオンラインでくまなく探せばあるはずなのよ。私は58歳でリタイヤしたけど、いまだに『働いてくれ』って何ヵ所からもせがまれてるわよ」と言うのは、62歳のビバリー・アン・リッチモンドだ。オバマ支持者で、18歳でホテルの夜勤からスタートし、人事関係のキャリアを積み、家も買った。

 1987年に5万9000ドルで買った家は、その価値が4倍になったこともあったが、今では買い値よりも下がってしまった。それでも40年間、男性と対等に仕事をしてきて、自分の名で土地や家を所有できていることは、何にも代え難い達成感だとビバリーは言う。


「ブッシュと共和党が残したツケをオバマが払ってきた4年間だった」とローズ。オバマの選挙直前のネバダ遊説で
「ロムニーが討論会で『女性の名前で一杯のバインダーを持ってる』という言葉で、いかに女性雇用を促進したかを強調しようとしたのは、女性への侮辱でしかない」とも。

「貧困とは何か、シングル・マザーの家庭で育つとはどういうことかを、銀のスプーンを口にくわえて生まれてきて、一生裕福な生活を送るロムニーに理解できるわけがない」と8人の子どもを育てたローズは言う。


投票日直前にネバダを訪れ、アジア系の票集めに奔走するロムニーの政策担当ディレクター、ラニー・チェン
 オバマがネバダに駆けつけたすぐ後に、ロムニー陣営の副大統領候補であるポール・ライアンも予告なしにラスベガスを訪れた。さらにその後、ロムニーの政策ディレクターである34歳のラニー・チェンもラスベガスにやってきた。

 台湾系アメリカ人の彼は、共和党のブレーンのトップに登りつめた数少ない若きアジア系の1人。ラスベガス市内のアジア系食料品店でロムニー支持者たちを集め、最後の激励をした。

「アジア系はネバダ人口の11%にもなり、アジア系の投票が勝利のカギを握っている。特に労働組合の勢力が強いこのクラーク郡では、あなたたちの投票が決め手になる」

 アジア系のロムニー支持者の中には、オバマの医療保険改革を鋭く批判する医師がいた。外科医であるレディ・ダンドルは、オバマケアが実施されれば、5年以内にアメリカの医療は世界一の水準から滑り落ち、イギリス並みになるという。

「無保険の人間をカバーするために、金銭的にもしわ寄せが他の人間にいく。患者ケアにとっても最悪だ。この国で医療費がこれだけ高いのは、医療の訴訟が多いからだが、オバマケアでは、訴訟については何ひとつ言及していない」

この国はチャンスをくれる
これからも同じであってほしい


韓国系アメリカ人のミ・パク。中絶と同性婚に断固反対
 韓国からの移民ミ・パク(62)は、中絶と同性婚に断固反対であり、「オバマには怒りしか感じない。有色人種初の大統領という点は尊敬するけど、私の息子たちも満足な職をまだ得られていないし」と語る。

 投票日前に、ヘンダーソン地区のショッピング・センターに開設された投票ブースでさっさと投票を済ませていたのが、72歳のディエター・シュワイツだ。製薬会社のファイザーで科学者として働き、高コレステロール血症治療薬の「リピトール」の開発も行なったディエターは、ドイツから1960年代にアメリカに移民してきた。

 ケネディが暗殺されたのを実験室のラジオで聞いたのを、昨日のことのように覚えているという。

「オバマに投票したよ。ロムニーはビジネス減税でスモール・ビジネスに活気が戻ると言っているけど、そんなことで経済は立て直せない」


ドイツからの移民で科学者のディエター。ショッピングセンターの投票所でオバマに投票
 ディエターいわく、レストランが潰れるのも、小売業がうまくいかないのも、不況でお客が来ないのが原因であって、税制の問題ではないという。

「失業者や失業を恐れる人間が、外食するわけないじゃないか。そんな庶民の懐具合は、富裕層のロムニーには想像できないんだろう」

 ナチ政権下のドイツで育ったというディエターは、「I Voted」のステッカーをみんなが胸に着けて誇らしげに歩いている中で、「とにかく政治的には目立ちたくない」派だ。オバマTシャツを着たり、ステッカーをつけたりは決してしない。だが、こう断言した。

「この国は移民してきた自分にとって、最高の国だ。惜しみなくチャンスを与えてくれた。だから、これからやって来る人たちにも、同じであってほしいと思って投票した」
http://diamond.jp/articles/print/27596


コラム:オバマ再選が導く強力緩和体制、崖の先に日本のリスク
2012年 11月 7日 17:24 JST
田巻 一彦

[東京 7日 ロイター] オバマ米大統領の再選が決まり、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長のリーダーシップによる量的緩和第3弾(QE3)路線が強くサポートされるだろう。懸念される財政の崖をめぐる米経済へのマイナス効果は、短期的にはQE3の強化で乗り切るシナリオが予想される。

仮に米金融政策の余波でドル安/円高が進展しそうになれば、12月にも日銀が追加緩和に踏み切るシナリオも排除できないだろう。欧州では欧州中銀(ECB)による新たな債券買い入れプログラム(OMT)が導入され、米欧日とも強力な金融緩和政策を推進し、その効果が出ている間に財政赤字削減に向けた構造改革に取り組む体制が出来上がったと言えるのではないか。

ただ、米国が財政の崖を克服した後に、大きな地殻変動が待ち受けている可能性がある。住宅や自動車販売などの回復、シェールガス・シェールオイルを背景にしたエネルギー革命が奏功し、米経済が目覚ましく回復すれば、米長期金利は上昇に転じるのではないか。その動きが日本国内に波及すると、先進国で最も安定している金融システムが一転、激しく動揺するリスクも出てくる。

<6000億ドルの米財政の崖、放置なら米経済下押し>

共和党のロムニー候補が当選した場合、米国のマクロ経済政策で最も影響を受けるのは、金融政策の運営スタンスであるとみられてきた。ロムニー候補はQE政策に批判的で、QE3政策の変更やバーナンキ議長の任期切れ前の辞任の可能性なども予想される展開の1つだった。

しかし、オバマ大統領が再選されたことで、バーナンキ議長の強い指導力で進められているQE3が、このまま遂行されることが決まったと言える。強力な金融緩和政策で米経済のリスクを低減しながら、オバマ大統領による米経済の構造変革を促す政策を実行していくかたちが整ったと見るべきだろう。

当面は、米財政に待ち受ける財政の崖の問題をどのように解決していくのかが、最大の問題となる。上下両院選の結果、上院の民主党多数と下院の共和党多数も確定し、ねじれた米議会とホワイトハウスの調整が難航すれば、約6000億ドルという財政からのサポートがなくなる事態に直面する。これは米国内総生産(GDP)の約4%に相当し、米経済を大きく下押しする力になる。

<早ければ12月にQE3の下で緩和強化へ、円高進展なら日銀追加緩和も>

12月に入っても調整の難航が予想されれば、FRBがその機動性を生かしてQE3の枠組みの中で緩和を強化する可能性が高まるだろう。今年12月末には長期国債を買って短期国債を売却するいわゆる「ツイストオペ」が終了する。1つの選択肢として、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で短期国債売却の停止後も長期国債の購入を継続する対応を決める可能性がある。また、モーゲージ担保証券(MBS)の購入額を毎月400億ドルから引き上げる選択肢も検討される可能性がある。

12月FOMCにおいて、QE3の枠組みの下で緩和が強化された場合、ドル安の観測がマーケットに広がりやすくなるだろう。2年米国債利回りの低下余地はほとんどなく、ドル安/円高にはなりにくいとの見方もあるが、10年米国債利回りには低下余地があり、対ドルで円高の圧力が高まりやすくなると予想する。

円高の進展が強まれば、企業や個人のマインドが冷え込み、輸出主導で落ち込んできた日本経済の一段の下振れリスクを大きくさせかねない。中国や欧州、米国など海外経済の減速度合いによっては、日銀が9月、10月に続いて12月にも追加緩和に踏み切る展開もあり得るのではないか。

<米欧日の緩和体制、リスクオン心理呼ぶ要因に>

一方、米欧日の先進国経済に視野を広げてみると、オバマ大統領の再選によってFRBのQE3路線が維持されたことで、強力な金融緩和体制が米欧日の三極に出来上がったとも言える。QE3で財政の崖を克服しようとする米国、OMTで南欧国債の利回り上昇を回避しようとしている欧州、そして共同文書を作成して政府・日銀がデフレ脱却に向け強力に連携することを示した日本と、仮に危機的な状況に陥っても機動的に対応できるスキームは整った。

その意味で、市場関係者の中から今回のオバマ大統領の勝利を以て、リスクオンの機運が高まってくる機会になるとの見方が出てきたのも、うなづける点が多い。この時間的な猶予を有効に使って、米欧日とも政府が財政赤字の削減や経済構造の改革に向け、思い切った対応策を打ち出すべきだ。もし、足元での温和的な市場の動向を横目で見つつ、米欧日の政府がともに何もせず、惰眠をむさぼっていれば、大きなしっぺ返しを市場から受けることになると予想する。

<崖乗り切り後、米経済回復と長期金利上昇のシナリオ>

また、別の次元でも油断のならない状況が待ち受けている。もし、QE3の下での緩和強化によって、米経済が財政の崖を乗り切ったとしたら、その後には予想を超えるスピードで米経済が回復する展開もあるのではないか。

FRBによる累次の金融緩和政策の結果、自動車ローンを中心にしたローン残高は拡大傾向を示しており、最近の米自動車販売の急回復は、その反射的効果の側面が大きいようだ。さらに住宅市場も長らく続いた下降局面から持ち直しに入っており、足元でのローン金利の低下が需要を押し上げる要因として働きだしている。

また、シェールオイルの増産の結果、米国の原油産出高は2013年にはサウジアラビアを抜いて世界トップに躍り出るという予測もあり、エネルギーコストの低下を背景にした「交易条件の好転」をテコにした米経済のエンジン温度上昇が、だれの目にも明らかになる展開が考えられる。

2013年半ばにかけ、こうした点がマーケットに認識されれば、米長期金利は現在の1%後半から2%台ないし3%台に上昇し、4%をうかがうこともあり得ると考える。その時に欧州情勢が小康を維持していれば、米独日の長期金利は、米長期金利の上昇を起点として、上昇過程に入る可能性がある。

<米長期金利上昇に無防備な日本の銀行と金融システム>

ここで問題なのが、わが日本の実態だ。国内銀行はメガバンクから地方銀行に至るまで国債保有比率を高めてきた。もし、日本の長期金利が米長期金利上昇の波及を受け、現在の0.7%台から1.7%台へと100bp上がると、銀行の資産状態を直撃することになる。そればかりではない。長期金利の上昇によって、日本の財政赤字が発散する懸念について、海外からの厳しい目にさらされるリスクも増大するだろう。

短期的なドル安/円高のリスクばかりに目を奪われ、中長期的な対応策を取らなければ、その先に何倍もの高いツケを払わされるリスクがあると指摘したい。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE8A606620121107?sp=true  

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