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新卒採用論で無視され続けている普通の学生たちを助けよ  就職活動における「負のスパイラル」 「親バカ・バイアス」 
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/443.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 08 日 14:06:10: cT5Wxjlo3Xe3.
 


「新卒採用論で無視され続けている普通の学生たちを助けよ」

海老原嗣生氏に聞く「日本の雇用」(前編)

2012年11月8日(木)  金野 索一

 日本政策学校代表理事の金野索一です。
 「日本の選択:13の論点」と銘打ち、2012年の日本において国民的議論となっている13の政策テーマを抽出し、そのテーマごとに、ステレオタイプの既成常識に拘らず、客観的なデータ・事実に基づきロジカルな持論を唱えている専門家と対談していきます。政策本位の議論を提起するために、1つのテーマごとに日本全体の議論が俯瞰できるよう、対談者の論以外に主要政党や主な有識者の論もマトリックス表に明示します。さらに、読者向けの政策質問シートを用意し、読者自身が持論を整理・明確化し、日本の選択を進められるものとしています。
 今回は【雇用】をテーマに海老原嗣生氏(株式会社ニッチモ代表取締役)と対談を行いました。
 海老原氏は、産業構造の変化により製造業の仕事が減り、対人折衝能力が必要なサービス系の仕事が増えたことで雇用のミスマッチが起こっていることを関心事として述べられています。また雇用についての的外れな議論の多さを指摘しており、例えば「正社員の代替で非正規社員が増えた」という定説を否定し、データを示して、雇用問題として取りざたされている論点の多くは論理的でないと指摘しています。
 対談の中で「大企業が非正規化させたとか、大企業が悪だという話に行ってしまうから、何も解決しないのでしょう。新卒偏重の超大手が3年既卒OKにしたって、それで救われるのは、一部のエリート大学を出た人のみ。それよりも、普通の学生に、割れ鍋に綴じ蓋なペアが見つかる仕組みが欲しい」と語っており、派遣労働は雇用調整の為に維持し、それぞれに合った仕事をみつける仕組み作りを提案されています。本当は何が問題なのか、読者自身が客観的なデータから日本の問題を考えていただければ幸いです。
(協力:渡邊健、藤代健吾、高橋淳、高井栄輔)
海老原嗣生
株式会社ニッチモ代表取締役。株式会社リクルートエージェント ソーシャルエグゼクティブ、株式会社リクルートワークス研究所特別編集委員。大手メーカーを経て、リクルートエージェント入社。人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。著書に、『雇用の常識 決着版:「本当に見えるウソ」』、『女子のキャリア:〈男社会〉のしくみ、教えます』、『「若者はかわいそう」論のウソ』、『日本人はどのように仕事をしてきたか』、等がある。
「新卒一括採用が悪いので、若者が苦しんでいる」の嘘

金野:今回は雇用全般をテーマにさせていただいています。まずは入り口として、日本全体の雇用の現状分析から聞かせていただければと思います。

海老原:まず、なぜ地に足のついていない話ばかりが流れるのかというのが、一番の問題だと思っています。雇用の論客は、ほとんど専門にやっている人ではないわけです。濱口桂一郎さんや僕はニッチだと思います。

 例えば、新卒一括採用が悪いから若者が苦しんでいるという話は、雇用の現実からすると、逆なんですね。

金野:そうですか。

海老原:よく考えてほしいんです。まず1つ目は、ヨーロッパ型社会、欧米型社会だとどうなっているかというと、雇用というのはエリートとノンエリートの2つに完全に分かれています。日本人は欧米の働き方を語る時、多くは上位1割、若しくは数%のエリートたちを指して話をします。みな、グローバルエリート教育がされている、とかですね。

 一方で、階層化という概念がないから、同じように、ノンエリートのこともごっちゃまぜに語ります。例えば、向こうではワークライフバランスが整っていて、それで男性社員でも育児休暇をとって9時−5時で残業がない。これは明らかに、ノンエリートの話です。あちらを指して、「いいな」と言っているけれど、ノンエリートとエリートがごっちゃになって言っています。午餐(シェスタ)をとって5時即しているノンエリートに、グローバル教育なんてしてませんし、逆に、パイプライン任用で世界を飛び回るエリートが、育児休暇なんて取ってません。

若者採用、エリートしか新卒で採用してない事実

 さて、年功制の話です。欧米も日本も年齢別給与カーブを見ると、ほぼ同じ形をしています。ただし、この中身が全く違います。日本は階層分化されていないから、同じ企業に勤める限り、平均的なところの上下1〜2割にほとんどの人が入る。プラスマイナス1割5分の中にほぼ9割の人が入ります。ほぼみんながその形に沿って年功序列型企業になっているのが日本です。

 欧米はどうかというと、同じ会社の社員でもノンエリートとエリートに分かれていて、ノンエリートは年をとっても、例えば、初任給の1.5倍もいかない給与で働き続ける。例えばフランスだったら、職務階層は、一番上がカードル、その下がエタム、その次が職務限定ホワイトカラー、そしてブルーカラーとなっていますが、エタムクラスのかなりハイレベルのミドルワーカーでさえも、大体課長までしか行けません。

 その下の職務限定社員は─日本ではなぜか、スペシャリストと称揚されていますが―、係長(プロジェクトマネジャー)までしか行けない。だから、多くの人たちは、例えば、大企業に400万円で入ったとしても、500〜600万円ぐらいで生活を終えるわけです。

 ただ、カードルやLP(アメリカ)、ライテンデ・アンゲシュタルテ(ドイツ)などの、エリート階層が、超高給を稼ぐので、平均値で見れば熟年層は若年の2〜2.5倍ぐらいで日本と余り変わりません。が、中身はそういうふうに分かれている。このグラデーションだとどうなるでしょうか? 職務主義で、同一労働同一賃金に近い線で働いている人たち、せいぜい1.5倍ももらえないような人たちは、30年間、営業をやっていて、50歳過ぎても、年収は500〜600万円ぐらいです。新入社員と100万円か150万円しか違わなくて、教育の必要もない、管理の必要もない。そういう社会です。だから、若者を採る必要がないわけです。

 だから、向こうは若者の仕事が全然ない。逆に言うと、向こうの若年雇用はどういう形になっているかというと、エリート層のLPやカードルと言われている人たちは、猛烈なハイパフォーマーで、東大、京大クラスの人しか採用されない。そういう人は卒業時点で採らない限りほかの会社に採られてしまうから、大学の出口で待っていて、やはり新卒採用を行っています。キャンパスリクルーティングといって、大学の中に入っていって採用しているわけです。そういう人たちは新卒で楽々入れる。つまりあちらでも、エリート層は新卒採用なんです。

 一方で、ノンエリートの職務採用者は、基本、仕事ができない限り採用されません。なぜなら、熟年層が安いお金で働いてくれてるんだから。とすると、ノン・エリートは、卒業後、無給に近い形で丁稚奉公して仕事を覚えなければいけません。これが、インターンとかアソシエイトとか呼ばれる「若者の辛い」下積みですね。こんな感じ。つまり、企業は安くて仕事がこなせる熟年労働者が多数いるから、欧米はことのほか若年雇用に冷たい。向こうの若年失業率は大体日本の2〜3倍です。こんな感じだから、フランスでは「若年未経験者を採用した場合、2年間に限って、クビ切り放題」なんていうCPE法という名の法律が通りそうにもなりました。そうでもしないと、若年雇用をしないんですよ、企業は。

 翻って、日本ではどうか。

「誰もがエリート」の仕組み

 というと、年功序列型で、熟年層はアウトプット以上に給与をもらっている。欧米のように、仕事のできる一部のエリートの給与が高いのではなく、みんな一律に近い形で、若者の2倍以上も給与をもらっている。明らかに、払い過ぎだから企業にとっては厄介です。だから、定年によって大量に排出している。その前に役職定年があって、大幅に給与を下げている。

 一方で、そうした熟年層に比べると、若年は給与が半分以下と極めて安い。だから喜んで採用する。しかも、それだけ安いから、下働きをやりながら仕事を覚えるのも、社内でしてもらって構わない。というわけで、社外で低給の丁稚奉公するような、インターンなど経ずに採用される。こうした好循環があるわけです。

 この日本型雇用の仕組みは、若年に仕事を与えるというメリットだけでなく、もうひとう大きな長所があります。エリート・ノンエリートに分かれていないから、誰もが「昇進」を夢見て一生懸命頑張ることですね。欧米のように、社内の9割のノンエリートは、午餐だ!九時五時だ、と言わないわけです。企業経営的にみると、管理も育成もし易い。だから、この仕組みはなかなか壊れず連綿と続いています。「誰もがエリート」という夢を用意して、尻を叩く、その結果、社員全体が頑張る、という仕組みです。

データを見てみると、論理的でない

海老原:例えば、従業員数1000人以上の大卒の新卒採用が見られるマクロデータは、雇用動向調査しかありません。これは継続性のあるすばらしいデータです。このデータで見ると、従業員数1000人以上の─1000人というのは大した大企業ではないですが、1000人以上のくくりしかないので―大手企業の新卒採用数を見ると、直近5年間の平均が13万人強で、最多です。

 バブル期に当たる86〜90年でさえ11万人弱です。当時よりも1〜2割多い。80年代前半と比べると、1.8倍になっています。1970年代前半と比べると3倍になっています。景気のアップダウンがあるから短期的には循環がありますが、長期的トレンドで見れば、今は圧倒的にふえている。

 一括採用を壊せと言う人たちのロジックが僕はわからないのは、まず、1000人以上の大企業で見ると、今が13万人ぐらいです。1000人以上ではなくて、これを人気ランキング100位に置きかえて、もっとずっと狭くします。でも、世の中の学生は人気ランキング100位の企業しか知らないわけです。僕らだってそれ以外は余り知らない。

 その超有名企業に限ると、ここはここ10年の平均で1万8000人しか採用していない。リーマン・ショック前の多いときが2万6000人でした。一番少ないときが2001年のロスジェネ世代のときで1万2000〜3000人ぐらいだから、採らないときでも半分は採っている。平均が1万8000人なので、平均より3割増えるか、3割減るかというのが世の相場です。ゼロになってしまうようなことを言いますが、これは間違いですね。トータルで見ると、一番採っていない時と採っている時でも倍ぐらいの差に収まる。

トップレベルの大学を出ても「2人に1人の現実」

 でも、どちらにしろ、考えてほしいんです。ここに入れる人は、平均の2万人内外という現実を。東大と京大と旧帝大、早稲田と慶應と一橋と東工大と東京外語大学、いわゆるその筋のトップランクの大学を全部合わせると、卒業生はもう4万5000人近くいるわけです。つまり、このレベルの大学を出ても、2人に1人も入れない。そんな雇用吸収力の小さいのが、人気企業なのです。ここの雇用慣行をどうこうしろと騒いでも、それほど意味がないのではないでしょうか。

 ここを既卒3年OKにしたって、無名大学を出て、フリーターとなった人が救われるわけはないでしょう。救われる可能性があるのは、今名前を出した超上位大学の卒業生で、たまたま卒業年次が不況だった、若しくは、留学などをしていて遅れたという人ばかり。要は、「エリートの卵に、さらにチャンスを与える」だけだと思うのです。多くの、「就職できない」といっている普通の大学生には、チャンスはないでしょう。

頭を冷やして考えて欲しい

 そんなことより、頭を冷やして考えてほしいのです。

 新卒一括採用は、日本の多くの企業で行われていますが、「新卒一括採用しかしていない」企業は、超大手に限られます。一般的な大手は新卒だけでなく、第二新卒も中途も採用しています。例えば、雇用動向調査で、20代前半の転職市場(パート・バイト・学生ものぞく)は、新卒比8割の規模があることが分かります。この中には、従業員数1000名以上の大手企業が約8万人の採用をしています。新卒が13万人だから、大手に限っても6割以上の規模ですね。

 中小企業となると、既卒フリーターも多々採用しています。前期の雇用動向調査では、20代前半の既卒者からの一般社員登用が、9万人以上ある、とわかります。つまり、新卒でダメでも、こうした一般大手や中堅中小でやり直せることはいくらでもできるのです。それも、欧米のような、「インターン」だの「アソシエイト」だのといった厳しい丁稚奉公ではなくて。

金野:今言われたことは、大学生の雇用というテーマのお話だと思いますが、一方で、高卒というか、ブルーカラーの、製造業の仕事が減っていって、対人折衝能力が必要な、いわゆるサービス系の仕事がふえて、ミスマッチというお話をされていると思います。その部分についていかがでしょうか。

海老原:そうですね。そこが私の一番の関心事でもあるから、その話をしたいのですが、若者かわいそう論に入る前に、海外空洞化によってなくなったのはブルーカラーであり、不景気になってなくなったのは建設業であり、自由化によって競争力がなくなったのは農業だと、そこに気づいてほしいのです。

 これらの領域で雇用が失われ、かつて働いていた人があぶれた。非正規問題とは、この延長線上にあると思います。例えば、町工場で働いていた人たちが、工場が潰れて50歳で、工員しかやったことのない人を、どこで雇ってくれますか。実際に、非正規のデータを見ればわかりますが、40歳以上が59%、39歳以下は41%しかいません。40歳未満には学生もいますから彼らを除くと、その比率は37%にまで減ります。39歳というのは別に若者ではないですが、39歳まで含めても、学生を除くと37%しかいない。これを、35歳以下に絞ると、学生を含めても24%、学生を抜いたら、18%になります。これでも非正規は、若者の問題と言えるでしょうか。

 海外進出で確かに雇用がなくなっている。言ったように、建設業、工業、自営業、農業がなくなっている。そこのあおりを食ったのは、まずそこで働いていた人たちです。彼らは路頭に迷うか、さもなくば、非正規になるしかない。この構造をまず1つ目に僕は言っておきたい。若者かわいそう論に対して言いたいことは、現実の数字から発していない話だということです。

(後編に続く)

注釈:マトリックス表、論点表における有識者、政党の見解、ポジションについては、各有識者・政党の公表されている資料や著作物、発言等を参考に、著者と日本政策学校専門チームが、独自のフレームワークで分析・推察したものです。

金野 索一(こんの・さくいち)

日本政策学校 代表理事
コロンビア大学国際公共政策大学院修士課程修了。
政策・政治家養成学校、起業家養成学校等の経営、ベンチャーキャピタル会社、教育関連会社、コンサルティング会社等の取締役、公共政策シンクタンク研究員を歴任。
このほか、「公益財団法人東京コミュニティ財団」評議員など。
《主な著作物》
・『ネットビジネス勝者の条件ーNYシリコンアレーと東京ビットバレーに学ぶ』(単著:ダイヤモンド社)
・『Eコミュニティが変える日本の未来〜地域活性化とNPO』(共著:NTT出版)
・『普通の君でも起業できる』(共著:ダイヤモンド社)

13の論点

2012年の日本において国民的議論となっている13の政策テーマを抽出し、そのテーマごとに、ステレオタイプの既成常識にこだわらず、客観的なデータ・事実に基づきロジカルな持論を唱えている専門家と対談していきます。政策本位の議論を提起するために、1つのテーマごとに日本全体の議論が俯瞰できるよう、対談者の論以外に主要政党や主な有識者の論もマトリックス表に明示します。さらに、読者向けの政策質問シートを用意し、読者自身が持論を整理・明確化し、日本の選択を進められるものとしています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20121031/238856/?ST=print


2000人の保護者が押しかけた就活説明会で感じた“違和感”

日経ウーマン発行人が考えるシューカツ問題の本質(第1回)

2012年11月7日(水)  麓 幸子

 「文系の保護者の方はこちらですよー」
 「理系はこちらです!」
 「今、順番にご案内いたしますので、列にお並びになってお待ちください!」

 今年10月のある晴れた土曜日、私は娘の通う大学に足を運んだ。娘はある私立大学の3年生。そう、現役の就活生である。その日は大学で就活生の保護者のための就職懇談会が開催されたのだ。行ってみて驚いた。

 会場までは保護者で長蛇の列ができており、1000人以上を収容するホールは、2階席までぎっしり埋まっていた。その模様をライブ中継し、別会場で見ている保護者もいるとのこと。主催者側が冒頭の挨拶で、その説明会には2000人もの保護者が参加していると説明した。就職指導が熱心なことで有名なその大学でも、過去最高の人数だという。

 今、大学生の就活が本格的にスタートするのは、学部生であれば、3年(大学院の場合は1年)の12月である。2014年の春に卒業予定の今の3年生の就活も、あと3週間ほどでいよいよ開始となる。首都圏では、11月の第1週目に多くの大学が学園祭を開催しているが、大きな祝祭が終わり、キャンパスはこれから日一日と就活ムードが色濃くなるだろう。

「親バカ・バイアス」が働く就活初期

 就活が本格化する前に開催された、保護者向けの説明会。子供のシューカツがどうも大変らしい、じゃあ行ってみるか――。そんな思いから、参加したに違いない保護者で会場はあふれていた。が、母親同士、夫婦連れで来た人たちからは、講演の途中で時折、笑い声や私語も聞こえて、そんなに会場はピリピリしてはいなかった。子供の就活への関心は高いものの、就活に強い大学だから大丈夫と思っているのかもしれない。筆者は、「ああ、ちょっとノンビリムードだな、今の就活の厳しさを分かってないのかもしれないな」と思った。

 そして、マズイなと思った。

 なぜ、そう思ったのか? それは、筆者は既に「就活生の親」を経験済みだったからである。

 筆者には、娘より3歳年上の息子がいる。彼は、2011年4月に社会人として働き始めた。同年3月には東日本大震災が起こり、息子の大学の卒業式は中止となった。日本中に、いや世界中にとてつもない大きな衝撃が走る中、彼は慌ただしく社会人デビューし、今2年目を迎えている。

 その息子の就活が、予想以上に大変だったのである。当時の就活は3年次の10月1日から始まっていた(2011年から2カ月遅くなり、12月となった)。だから息子の時は、もう今時分、就活の真っ最中だった。ほぼ毎日のように、リクルートスーツを着てどこかに出かけていたのを思い出す。

 当時、私は日経ウーマン編集長で、女子学生を対象とした就活用の別冊も作っていた。企業の人事関係や雇用問題の取材もしていた。新卒採用時の面接官の経験もある。つまり、就活に関しては、普通の親御さんよりも多少は詳しいと思っていた。しかし、事態は全く違っていた。本当のところは何も分かっていなかった。いや客観的な状況は把握していたとしても、それが腑に落ちるまでには至っていなかった。

 3年前、初めて就活生の親になった時に、「うちの子に限って…」という心理が働いてしまったのである。

 「シューカツは大変だって聞くけど、うちの子に限って大丈夫よね」

 「上位大学ではないけれど、それなりの有名私大だし、成績も悪くないし、サークル活動もバイトも熱心にやっているし、ルックスもまあまあだし、結構要領もいいから、サッとどこかいいところに決まるんじゃないかしら」と。

 つまり親バカなのである。そんな根拠のない自信が、就活初期の頃にはあった。しかし、それは大いなる誤算だった。息子の就職先が決まったのは、何と、それから444日後、大学4年の12月18日だったのである。もうすぐ卒論の締め切りで、さらに3カ月後には卒業というそんなギリギリのタイミングだった。

 「就活生の親」になって経験したことは、まさに想定外のことだった。今の学生の就活が大変だ、大変だと聞いていたが、まさか、ここまでとは思わなかった。

 だから、今回、娘の保護者会での多少のノンビリムードを見た時に、3年前の親バカ・バイアスのかかった就活初期の自分を思い出し、「マズイな」と思ったのだ。だからこそ、就活が始まるこの時期に、この連載で、保護者の方向けに、既に就活生の親を1回経験している身として、また就活問題を取材してきた一記者として、今の就活事情をお伝えしたいと思った次第である。

就活で孤独になる子供をさらに追い詰める親たち

 ちなみに、筆者は1962年生まれで、今年50歳。1980年に大学に入学し、1984年に社会人になった。たぶん、就活生の親御さんとは、ほぼ同世代であろう。

 そして、皆さんと一緒に、就活における親の適切な支援のあり方を考えたいと思う。

 「え、就活まで親がしゃしゃり出るの? なんと過保護な…」と思うなかれ。私も就活生の親になるまではそう考えていた。でも今は違う。

 取材を通して、子供の就活の邪魔をする親のパターンを多く見聞きした。

 「○○大学ならいい会社に行って当たり前だろ」
 「何でまだ決まらないんだ」と無用なプレッシャーをかける親。
 「男子なら銀行か商社、女子なら航空会社のCA(客室乗務員)」。
 そんなブランド就活にこだわって子供を振り回す親。

 せっかく内定をもらっても「お母さん(お父さん)、こんな会社知らないから、もっといいところにしなさい」とさらに就活を続けさせる親。

 「どこでもいいから内定をもらってきて」と焦らせる親。

 あまりに就活が決まらないため、「もう、大学院進学(または留年や海外留学)したら」と安易に先送りをすすめる親。

 これでは、子供自身が満足のいく就活はできない。なぜなら親世代の就活と今は全く違う構造になっているからだ。

 高度経済成長期の名残があり、大学から企業への移行がスムーズだった我々親の世代の就活とは、平成の「シューカツ」は全く違う。就職大困難時代を子供たちは迎えている。それを正しく理解せずに、親が昭和そのままの価値観や常識を押し付ければ、子供たちは混乱してしまう。

 就活が始まれば、子供はたくさんの情報の渦の中に巻き込まれてしまう。友達同士もライバルにもなってしまう。1人ひとり状況が違うため、相談したり、情報をシェアし合うこともできにくくなる。ツイッターで何人フォロワーがいようが、フェイスブックで承認した友達が何人いようが、就活時期は、子供は孤独になる。不安になる。

 ある大学のキャリアセンターの職員は言う。

「就職相談の時に、ワッと泣き出してしまう学生さんが多いですよ。内定が1社も決まらないと、自分の将来がどうなるか分からず不安なんでしょうね。そのうえに親御さんからもプレッシャーをかけられているようで、かわいそうになります」

 就活の主役はもちろん子供である。子供たちが主体的に進めるべきものである。しかし、親の関わり方で、子供の気持ちが楽になったり、逆にさらに苦しんだりと、様相は180度違ってくる。

 2011年、私は初めて「就活生の親」となり、そこで経験した今の就活事情や日本の若年層の雇用問題をまとめた書籍『就活生の親が今、知っておくべきこと(日経プレミアシリーズ)』(日本経済新聞出版社)を出版した。444日もかかった息子の就活の経緯に触れているため、彼自身からは評判が悪いのだが、それでも本を出版したかったのは、当時、気になるある数字を見たからである。

 2010年の自殺者3万1690人のうち、就職の失敗が原因となった自殺者は424人で、前年より19.8%増えているというデータである(警察庁・2011年)。年間の自殺者総数は減少している中にあって、2割近い増加は目立つ。もちろんそれが若年層だけとは限らないが、その数字を見た時に、どんな事情があるにせよ、親が手塩にかけて育てた子供を、就職の失敗ごときで、自ら追い詰めるようなことがあってはならないと思った。それが執筆の大きな理由だった。

日本では生涯にもわたる初職の影響

 筆者は、この春に大学院(経営学研究科)に入学した。今、修士1年でもある(だから自分自身も就活の年次なのだが)。現在、大学院で、人的資源管理やキャリア開発、企業の女性活用などを研究している。そこでますます今の若者の就活の難しさを知る。

 就活を考える前に、日本の雇用システムをおさらいしよう。

 日本型雇用システムの大きな特徴は、「終身雇用制度(長期雇用制度)」「年功序列賃金制度」「企業内労働組合」である。これは「三種の神器」とも呼ばれてきた。このシステムは高度経済成長期に基礎が形成され、1980年代に確立したと言われる。1980年代、そう我々親世代が就職した時期である。

 このシステムの「入り口」が、新卒一括採用である。一度にある程度の人数を一括採用し、長期雇用を前提として年齢別・階層別に研修を実施し、OJT(職場内訓練)やOff-JT(社外での研修など)で人材を育成する。ランク・ヒエラルキーを昇進してキャリアを形成し、管理職ポストに就き、それに見合った賃金で処遇される。そして、一般的には、60歳を定年年齢とし会社を退職する定年制が、このシステムの「出口」となる。

 経営者が、他の会社勤務の経験のない新卒者を何色にも染めやすい「白い布」に例え、それを選好する「白い布仮説」という説があるのだが、その白い布の段階で、新卒一括採用のルートに乗り、正規採用されないと、外部流動性が低く内部労働市場が発達した日本では、リカバリーが難しくなる。

 最初に就いた職業(初職)が非正規雇用だった場合は、その後の職業遍歴や総収入や年金見込み額も低い傾向にある。これは「バッドスタート・バッドフィニッシュ(Bad Start,Bad Finish)問題」と呼ばれ、欧州各国で関心が高まりつつあるのだという(出所:日本経済新聞2012年10月26日付け朝刊「経済教室」の記事)。30歳代の男性の正規就業者の未婚割合は30.7%だが、非正規就業者は75.6%というデータもある(厚生労働省・2010年)。

 つまり、就活で得た初職が生涯にわたって公私ともに大きな影響を与えることになる。だからこそ、就活が大事になる。

大卒者の5人に1人以上が安定雇用を獲得できず

 この8月、文部科学省は、平成24年度(2012年3月)の大学(学部)の卒業者55万9000人のうち、就職者は35万7000人であり、就職者のうちの「正規の職員等でない者」と、「一時的な仕事に就いた者」「進学も就職もしていない者」の合算が12万8000人となると発表した(このデータについては、日経ビジネスオンラインの上西充子氏の連載コラム「その数値にダマされるな!」の2012年8月31日の記事を参照)。


(出所:文部科学省「学校基本調査-平成24年度(速報)結果の概要‐」)
 この調査では、その12万8000人は、大学を卒業しても「安定的な雇用に就いていない者」と定義され、卒業者に占めるその割合が22.9%となったと報告された。つまり、大学まで出ても5人に1人以上が安定した雇用を獲得できていないことになる。それをこの連載では「就職難民」という言葉で呼ぶことにする。

 就職が大変だというときに、「学生が大企業をえり好みするから」「学生がしっかりしないから」「日本の学生は海外の学生に比べてキャリア意識が低いから」と、学生にだけその責任を押し付ける向きもあるようだが、筆者はその説には与しない。

 若者が大学から初職にスムーズに移行できず5人に1人以上が「就職難民」となる事実。誰が若者を就職難民にしているのか、その原因は何か、その解決策はあるのかということも一緒に考えていきたいと思っている。

 長い前置きになって恐縮だが、今回は、保護者の方に理解していただきたい4つのポイントを以下に記す。

 第1のポイントは、就活と受験は全く違うということだ。

 たぶん皆さんのお子さんは、これまで受験戦争を勝ち抜いてある程度の大学に入っているであろう(と想定する)。そうすると、その延長戦上に就活があると思いがちだが、それは間違いである。

 受験であれば、経済変動で毎年そうそう合格定員が変わるということはないし、子供が一生懸命に勉強すれば(親も塾代など経済的に支援すれば)、第一志望の大学受かることはそう難しくはないだろう。学校の指導のみならず、塾や予備校など受験のための学校外の支援システムが整っている。自分の強みや弱み、どこを伸ばしたらいいか、どこをどう補ったらいいかも分かる。合格までにやるべきことが明確である。

 しかし、就活は違う。景気変動で毎年採用人数が変わってくる。

 リクルートワークス研究所の「ワークス大卒求人倍率調査」で分かるように、2009年3月卒業の時には、求人総数が94万8000人だったが、リーマンショックの影響で、翌2010年には72万5300人まで減り、さらに2011年には58万1900人と50万人台となった(息子が就活したのはまさにこの時だった)。

大卒者を対象とした求人総数の推移

(出所:「第29回 ワークス大卒求人倍率調査(2013年卒)」 リクルートホールディングス リクルートワークス研究所)
 2012年55万9700人、2013年55万3800人で、2009年に比べると39万4200人も求人総数が減ってしまっている。それだけ就活は熾烈になっている。

受験とは違って頑張っても報われるとは限らない

 実際、受験と違って就活には頑張っても報われないことが多々ある。

 就職は、マッチングとタイミングが重要だと言われる。企業が欲しい人材の条件が、その学生とマッチしなければ、その学生がどんなに優秀でも採用とはならない。例えば、ネイティブ並みの英語力があっても、企業が中国語の堪能な学生が欲しい場合などはその学生は採用されない。そして企業が求めている条件とその学生がマッチングしていても、同じような能力やスキルを持つ学生に既に内定を出した後だったら、それも採用には結びつかない。

 また、就活はとても不透明である。受験の場合は、試験の点数という基準があるので、なぜ不合格だったかある程度自分で分かるだろう。しかし、就活の場合は、なぜ落ちたのか分からない。選考基準や選考過程がとても曖昧なのだ。

 ある上位大学の女子学生がため息をついていた。エントリーシート(ES)を30社に送ったが、そのうちの10社はエントリーシートも通らなかったという。

 「正直言ってうちの大学名があれば就活は大丈夫だろうと思っていた。まさか、ペーパーの段階で落とされるとは思ってもみませんでした」。こうした経験は、優秀な学生にとっては初めての挫折であろう。

 うちの息子は、大学4年の春に「ああ、またサイレントお祈りされているな」とつぶやいた。「サイレントお祈り」とは、筆者がこの時に初めて聞いた言葉だったのだが、企業から学生に送られる不採用通知の最後に「益々のご健闘をお祈り申し上げます」と結ばれていることから生まれた、平成のシューカツ用語である。つまり、「お祈り」とは「不採用」の意味なのである。サイレントとは、通知は来ないものの、既に不採用が決まっている状態を指す。

 面接の感触がとっても好感触に終わり、「これは面接には通った」と確信したのにNGだったという話もよく聞く。今、学生たちは、面接が終わったらすぐにその内容をSNSや就職関係のサイトに書き込む。もし、面接で学生たちに嫌な思いをさせてネットに悪口を書き込まれでもしたら企業イメージに響くことを警戒してか、見込みのない学生には優しく、上層部の面接に上げる学生には厳しく…ということもあるようだ。

 つまり、学生にしてみたら、なぜ落とされたのかさっぱり分からないということだ。そこで混乱が生じる。学生たちは人格が全否定されたような経験を何度もすることになる。前述の女子学生のように、優秀な学生ほどショックも大きいだろう。

就活は落ちるのが当たり前、その後が勝負

 第2のポイントは、就活で落ちるのは当たり前と思った方がいいということだ。

 我々親世代の頃の就活は、いろいろなところでフィルタリングがあった。大学、学部、専攻、ゼミ、性別などで、ふるいにかけられていた。志望する企業の採用試験を受けたいと思っても、自由に受けられなかった。その企業が採用しないグループに自分が属していれば、門前払いされていた。

 でも、今は違う。

 どんな学生でも志望する企業にエントリーできる。だから学生に人気のある企業には何万人もの単位でエントリーが集まる。ある人気企業では、エントリー数は4万人を超え、ES提出が1万2000人、そこから筆記試験や適性検査まで進めるのが8000人で、その後グループ選考に3500人が進み、そこから個別面接を何度か繰り返し、内定が出るのはたったの100人ほどだという。つまりエントリーからすると競争率は400倍なのである。

 人気企業はだいたいこのパターンではないだろうか。あなたは、自分の子供が400倍の競争を勝ち抜けるという確信を持てるだろうか。しかも、その選考基準は、明示されていないのだ。

 だから、就活は落とされて当たり前、第一志望に受かる方が奇跡と思った方がいいだろう。

 でも、今のこの時期、学生自身は「もしかしたら○○社に受かるかも」と思い、かつての私がそうだったように、親も「うちの子は案外いいところにいくかもしれない」と思いがちだ。この妄想段階から早めに抜け出して、一刻も早く現実を見た方がいい。

 3番目のポイントとして、就活には自分なりの戦略を持つべきだということを伝えたい。たくさんエントリーして、何社も何十社も落とされ続け疲弊して、「自分はダメだ」「どうせなにやっても無理」という負のスパイラルに陥るのは避けたい。

 もっと効果的に、戦略を持って就活を進めることが大事だと思う。就活は情報戦だと思う。イメージに振り回されず、自分なりの軸を定めて、正しい情報を集めて分析してそれを活用した方が、満足のいく就活ができる。これは次回以降に書きたいと思う。

 筆者の息子は、「音楽とお笑いと子供が好きだから」という理由で、テレビ局などマスコミやエンタメ企業にエントリーした。そして、4年の4月に第一志望である出版社の最終面接まで行くものの、そこで落とされてしまった。

 最終面接には4人が残り、そのうち2人に内定が出たという。4年次のゴールデンウイーク前に、多くの人気企業の採用活動はほぼ終わってしまう。息子はその段階で、エントリーした会社が1社もなくなった。いわゆる「持ち駒」がなくなった状態になったのである。

就活では想定外のことが連続して起きる

 さて、そこからどうなったか――。詳細は拙著を読んでいただくとして、いろいろな紆余曲折があり、今は、息子は学校で教師をしている。

 彼に言わせると「将来のホケンとして」取っておいた教員資格を生かして働いている。しかし、就活が始まった頃には、そのような結末は、親である筆者は想像できなかった。彼自身もそうだろう。

 最後のポイントは、就活はかように想定外の連続であるということだ。思いもがけないことが起こり、いろいろな気づきがあり、子供は成長していく。

 「就活は子育ての総決算なのかもしません」とある人が言った。

 大学3年である就活生は、成人式を済ませた大人ではある。しかし、就活が難しい時代、何度も挫折を経験する子供に対して、親にしかできない支援もある。そのために、親自身も正しい知識と情報を持つことが必要であろう。

■変更履歴
本文中で「CA(客室常務員)」「日本の雇用システムのおさらいしよう」とそれぞれしていましたが,「CA(客室乗務員)」「日本の雇用システムをおさらいしよう」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2012/11/07 10:44]

麓 幸子(ふもと・さちこ)

1962年秋田県生まれ。1984年筑波大学卒業。同年日経BP社入社。2011年12月まで5年間日経ウーマン編集長。2012年よりビズライフ局長に就任、日経ウーマンや日経ヘルスなどの媒体の発行人となる。日経BPヒット総合研究所副所長。筑波大学非常勤講師を務める。法政大学大学院経営学研究科在学中。著書に『就活生の親が今、知っておくべきこと(日経プレミアシリーズ)』(日本経済新聞出版社)。


我が子を就職難民にしないために

親世代とは全く異なる、今どきの「シューカツ」。取材ではなかなか分からなかったその実態を息子の就職活動を通じて痛切に思い知った日経ウーマン発行人が、就活生の親が知っておくべきことと就職大困難時代の乗り切り方を伝える。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121102/238969/?ST=print

【第2回】 2012年11月7日 辻太一朗 [大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会(DSS)代表]
日本の学生、大学、企業を骨抜きにした
就職活動における「負のスパイラル」の正体
 みなさんは就職活動の際、大学の「成績証明書」を企業に提出されたでしょうか?

 恐らくされていない方が大半なのではないかと思います。今の就職活動も同じで、特に文系に言えることですが、一部を除くほとんどの企業で大学の成績を採用の参考にはしていません。なぜなら、成績が学生の能力を表す信頼できる指標となっていないため、企業側も学校の成績では学生を評価することができないという現状があるからです。

 つまり、この成績を採用の参考にできない状態が、今の就職活動と大学教育のねじれを生んでいるのです。

 そこで今回は、そのねじれを生んだ就職活動における「負のスパイラル」について、順を追って説明していきます。

企業は成績をあてにせず、面接で合否判断
「勉強より課外活動重視」の学生が増加

 現在、多くの企業の採用活動では大学の成績を参考にしないので、市販のテストや、エントリーシートで足切りをして、その後は面接で合否を判断します。

 面接は少ない企業で3回程度、多い企業では10回以上の企業もあります。

 面接での質問は、

「学生時代にチームで何かを成し遂げたことはありますか?」
「アルバイトは何をやっていたのですか?その中でどんなことを学びましたか」
「大学時代に一番力入れたことを教えてください。そこで身についたことを教えてください」
「友人からはどのような人だと思われていますか。それを表すようなエピソードを教えて下さい」
「自分の長所は何ですか?それを表す具体的なエピソードを教えて下さい」

 というようなものです。

 企業は面接で人物像を判断する必要があるため、具体的なエピソードや、例を話すように学生に求めます。学生は、具体的なエピソードを話しやすいサークル活動やアルバイト等の課外活動の経験を話すことになります。

 面接の会話内容で合否が決定するので、学生側もそれに対応するために様々な課外活動に力をいれます。留学経験者や学生起業家、世界一周旅行者などを面接の会場では多く見かけます。

 また、就職活動で希望の企業から内定を得るためには「勉強より課外活動が大事」という話は、入学したらすぐにサークルの先輩が教えてくれます。

 実際、大学生に、就職と授業に関連してどのような話を先輩から聞いたことがあるかを尋ねたところ、

「就活で成績って見られないらしいよ。ほとんど可の先輩が大企業に内定をもらった」
「勉強するより課外活動で変わったことやった方が受かりやすい」
「自分の経験をうまく盛って話すことが重要」
「○○先生は、簡単に単位くれるからとっておくほうがいいよ」

 というような回答が返ってきました。

 ある大学の学生によると、先輩に「どんな授業をとったらいいですか?」聞くと、「楽に単位がとれる授業がいいよ。あとは課外活動やったほうが就活に有利だよ」という答えが返ってきたそうです。

 事実、ある有名大学では、楽に単位がとれることで有名な授業に、毎年定員の5倍もの受講希望者がいるそうです。

 このように、大学生は、楽に単位をくれる授業を選択して、できるだけ課外活動に力を入れるようになります。学生にとっては、授業よりも課外活動に力を入れている方が楽しいし、就職活動を考えるとその方が有利になります。

熱心に授業をするほど嫌われる先生たち
学生はつまらない授業に居眠り、私語

 そうなれば、大学の先生の考え方も変わってきます。

 学生の教育や育成に力を入れようとすると、必然的に事前の課題も出すでしょうし、授業中には学生を指名して質問もするでしょう。また宿題やレポート等を出す必要もあります。それに定期試験も、きっちりした厳正なものになるはずです。中学や高校の授業は一般的にそういうものです。しかし、大学では学生が自分で授業を選択するので、このような先生の授業を学生は選択しない傾向があります。

 このような先生は「厳しい先生」「面倒な授業」などと言われ、選択する学生が減ります。一方で、教育に力を入れれば入れるほど、自分の研究に使える時間が減ります。自分が頑張れば頑張るほど、学生も研究時間も減るのです。

 しかし、毎年同じ講義を一方的に話し、課題も出さず、ある程度出席さえしていれば単位を自動的に出す先生は、自分の授業をとる学生も多く、適当に教育をしているだけなので研究にかけることのできる時間も多いのです。

 これは、ビジネスマンでいえば、仕事に力をいれたら、顧客からは逆に評価は下がってしまい顧客は離れていくようなものです。

 今の大学の授業風景を学生に聞いてみると、授業をまともに聞いているのは前の一列に座っている学生だけだそうです。残りの学生はほとんどがスマートフォンをいじっているか、机に突っ伏して寝ているみたいです。中には先生の声が聞こえないほど、私語の多い授業もあるそうです。それでも先生は何事もないように授業をすすめています

 また試験では、普段は教室内にまばらに人がいる程度なのに、試験のヒントがもらえる可能性の高い最後の授業と当日の試験の時だけ、人が入りきらないほどの学生が出席するようです。

 試験の内容も、毎年同じテストをし、テストは記述の中に一定の語句があれば合格という先生もいます。そういう先生の試験は毎年過去問と答えが出回っていて、それを覚えれば誰でもいい成績がとれる状態だったりします。

「ねえねえ、あの授業のノート見せて!ごはんおごるから」
「先輩、○○論の去年の過去問もっていませんか?」

 というやりとりが頻繁にされているのが現状です。

 この結果、学生はますます勉強しなくなります。

「いい成績なんて何の意味もないんです。学校の授業もつまらないし、毎授業寝て、テスト前になったらとりあえず友達のノートをコピーして暗記することの繰り返しです」

 と、都内の有名大学に通うある学生は言います。

学生、大学、企業が個々のメリットを求めることで
「負のスパイラル」が起こる

 今、大学はこんな状態ですから、もちろん企業は学生の成績を採用の参考にすることができません。成績を参考にできないので、面接や自社の実施するテスト等で合否を判断する必要があります。

 そうなると、企業にとってはいつから選考を始めても同じです。4年生でも3年生でも場合によっては2年生で選考しても、結局は自社の面接等で判断する必要があるからです。そうなると、企業はいい人材を採用するためには、早くから多くの人と会う方にメリットがあります。

 また面接で判断する比重が大きいので、詳しい話、具体的な話を学生に聞くようになります。そうなれば学生はさらに勉強しなくなり、課外活動によって面接に対応できるエピソードを作ることに力を入れるようになります。

 これは、学生・大学・企業がそれぞれの状況に合わせて最もメリットがある行動をすることが、結局は他者に影響し、自分の首を絞めるような行動になっているスパイラルの構造です。

 私はこれを就活と教育の「負のスパイラル」と呼んでいます。


 このスパイラルを繰り返していくことにより、日本の大学生の学力はどんどん下がります。ただでさえ日本の経済が停滞し、大学進学率上昇に伴い大学生の希少価値は低くなりつつあります。国内に限らず、アジア各国でも大学生の数は急上昇しています。

 そんな中で諸外国の学生は目の色を変えて勉強しているにもかかわらず、日本の学生は授業に出てもスマートフォンをいじっている状態です。こうして海外と日本の知的能力差はますます広がっていきます。

 では、なぜこのスパイラルはなくならないのでしょうか。

 デフレスパイラルとは、「モノが売れないから値段を下げる」「値下げが企業利益を圧迫し、従業員の給与が下がる」「給与が下がるからモノを買わない」というものです。もともと当事者は自らの置かれた状況に対応して、メリットのある行動をしています。それが回りまわって自らの首をしめているので、なかなか解消しにくいものです。

 それに加えて就活と教育の「負のスパイラル」は、より解消されにくい要素を持っています。それは「当事者がなんとなく楽で幸せ」な状態だということです。学生にすれば、勉強するより課外活動にいそしんでいた方が面白いはずです。それが就職活動において役に立つのならなおさらです。

 学校の先生からしても、時間を割いて学生の指導に尽力するより、毎年なんとなく同じ授業をしていた方が楽です。ましてやその方が自分の研究に時間を割くことができます。企業の採用担当者側からしても、既に確立している採用方法に則ったほうが安心して採用活動にとりくむことができます。

 つまり、当事者である3者(特に学生と先生)にとっては、今がぬるま湯のような状態になっているのです。

 だからこそ、こうした状態が何十年も続いてきました。しかし、アジア近隣諸国が圧倒的成長を誇る現在、日本の学力が低下している状態は非常に危険な事態です。

 これまでの説明で、就職活動の開始時期を変えても、学生が勉強をするようにはならないことはおわかりいただけたでしょうか。日本の大学生(特に文系学生)が勉強するようになるためには、「負のスパイラル」を解消することが重要なのです。
http://diamond.jp/articles/print/27491

【第3回】 2012年11月7日 横山信弘 [アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長、米国NLP協会認定トレーナーアソシエイト]
【第3回】
「自分探し」をする前に
「目の前のこと」をやれ!
『絶対達成マインドのつくり方』を発刊した横山信弘氏は、「自信をつけるのに、モチベーションは100%必要ない!」と言い切る。年間100回以上のセミナー、講演会で5000人以上を変える現場コンサルタントが「科学的に自信をつける方法」を紹介する5回連載の3回目。
今回のテーマは、「自分探し」と「夢」について。ふわふわした考え方がはびこるなか、目の前の仕事をやりきる「絶対達成マインド」の根っこを紹介する。

ワークライフバランスは、強固な「ラポール」から

コラム第1回では、「自信をつけるのに、モチベーションは100%必要ない!」という話をした。

第2回では、困難なことでも「思考を『あたりまえ化』する4つのステップ」について触れた。

今回は「自分が何をしたいのかわからない」、だから「自分探し」の旅に出ている、という人に向けたメッセージを書きたいと思う。

近年、「ワークライフバランス」という言葉をよく耳にするようになった。
ワークライフバランスとは、仕事と生活との調和のことで、やりがいのある仕事と充実した私生活を両立させようという考え方だ。
しかし、ワークライフバランスという言葉が使われるようになってから、自分の余暇活動を充実させたい、「やりがい」や「働きがい」を求める人が増えているように感じる。
それは私だけだろうか。

もちろん、ワークライフバランスの考え方は間違っていない。
私自身も、毎年100回以上のセミナー、講演を実施し、コラム連載や取材対応をしながらも、できるかぎり子どもたちが寝る前に家へ戻るようにしているし、20年以上続けている、知的障がい者のボランティア活動には毎月欠かさず参加している。

充実した余暇をすごす人が増えるのはいいことだ。
仕事に「やりがい」を求めるべきだし、そのように工夫したらいい。
しかし、なによりもまず、ワークライフバランスを整えようという風潮には疑問を感じずにはいられない。

マズロー「欲求段階説」の「自己実現」から満たそうとする人たち

アメリカの心理学者であるアブラハム・マズローは、「欲求段階説」の中で、人間の欲求を5段階のピラミッドに分類し、人は下の階層の欲求が満たされるとその上の欲求の充足を目指すと提唱した。
その欲求とは、下から順に、生理的欲求、安全欲求、社会的(親和)欲求、承認欲求、自己実現欲求だ。

下位の生理的欲求や安全欲求とは、人間が生存するために必要な衣食住に対する欲求である。
必要最低限の食事が与えられ、雨風を防げる住居で誰にも脅かされることなく安心して生活できれば、これらの欲求は満たされる。

もしも生理的欲求が満たされなければ、病気になるだけでなく、生命すら維持できないだろう。
また、暴力などで生存を脅かされたり、不安定な収入でその日暮らしをしていて安全の欲求が満たされなければ、いかに危険を回避するか、どうやって安定した暮らしを手に入れるか、ということに必死になる。

要するに、生理的欲求や安全欲求が満たされて初めて、上位の社会的(親和)欲求、承認欲求、自己実現の欲求を満たす余裕ができるのだ。
自分の生命すら危ういときに「自分はこうありたい」という意志を持つことは、普通の人には難しいだろう。
ピラミッドは、下から積み上げていかなければ完成しないからだ。

ところが、ワークバランスという言葉がもてはやされるようになったことで、多くの人が下位の欲求を完全に満たすことのないまま、上位の欲求を満たそうとしている気がする。

ワークライフバランスを整えたいという、いちばん上位の自己実現の欲求から満たそうとしているように感じるのだ。
多くのサラリーマンは、毎月会社から給料をもらっていることで、「自分は生理的欲求も安全の欲求も満たされている」と勘違いしているのではないか。

しかし会社からすると、目標予算を達成していないかぎり、安全の欲求を満たしていることにはならない。

しかも時代は変わり、年功序列制や終身雇用の保障もなくなった。
いま、受け取っている給料が3年後も5年後ももらえるかどうかはわからない。
客観的に考えれば、自分のやるべきことをやって会社の経営を安定させないかぎり、社員一人ひとりの安全の欲求も満たされないのだ。

そんな状態でワークライフバランスを求め、「やりたい仕事をやらせてほしい」「余暇活動を楽しむ時間が十分ほしい」と要求するのは、順序が違う。
まずは、目標を「あたりまえ」のように達成するのだ。
なにもかも、そこから始まると言っていい。

夢をあきらめるのは、挫折ではない

夢を叶えたいというのも、「欲求段階説」の最上位の欲求の一つにほかならない。
自分の夢を持ち、それに向かって努力するのはすばらしいことだが、その前に下位の欲求を満たす必要があるのではないか。

以前、私にはどうしても叶えたい夢があった。
そして夢を語ると、多くの夢を持つ人との出会いがあった。朝まで飲んで語り合い、夢が実現したときのすばらしさを共有した。

しかし、なかなか私の夢は実現しなかった。
苦しい時期が何年も続いた。
私の周りにいる友人たちも同じだったと思う。夢を語る分だけ、愚痴も多くなり、世の中に対する不平・不満も募らせていった。
些細なことで苛立ち、同じように夢を持っているのにもかかわらず、子どもじみたケンカをした。
30歳をすぎても、「棘」ばかりが増え、自分を見失うことが多々あったようだ。

私はいろいろなものを犠牲にした。お金も、時間も、友人も、支えてくれた恩師さえも浪費した。
いまだからよくわかる。

下位の欲求が満たされないまま自分の夢を追い続けるのは、非常に難しいということを。

それができるのはごく一部の天才だけではないか、と。

自己実現欲求をあまりに求めすぎて、目の前の仕事に身が入らず、家族との関係も悪くし、体調もおかしくなって入院したりと……、心も体も、周囲からの視線さえも不健全になっていた私は、目指していた夢に近づくどころか、ドンドン怠惰になっていき、当然のことながら夢から遠ざかっていった。

あげくのはてに自己啓発セミナーの講師から、「あなたが本当にやりたいことをやりなさい。そうすれば夢は叶う」と言われ、その言葉を真に受けて実践したところ、多くの人から失望された。
取り返しがきかないほど信頼を失ってしまった。
あたりまえのことが、まるであたりまえのようにできなくなっていったからだ。

いまの仕事ができることに感謝

私は以前、「夢」のない人生なんて意味がないと思い込んでいた。
私の周囲にもそういう人ばかりいた。

しかし、いまはこう考えている。

普通の仕事に就いて普通の生活ができること、衣食住が満たされて経済的にも健康的にも困らずに生きていけること、その生活に夢がないと言ったら、とんでもない話だ、と。

それに、現在その「あたりまえのように思える生活」が満たされていない人が大勢いる。

「夢のない人生なんて意味がない」などと言ってしまったら、その人たちに対して失礼だ。

その人たちにとっては、毎日きちんと食事ができて、健康にすごせるだけでものすごく夢のある生活だからだ。
よく「本当は○○になりたかったけれど、挫折してサラリーマンになった」という人がいるが、一般企業に入って一所懸命に仕事をし、家族との生活を守っているのなら、それはそれですばらしいことであり、決して挫折でも失敗体験でもない。消去法によって選択した生き方でもない。

もちろん、夢を持つことを否定しているわけではない。
夢を叶えたいという気持ちが原動力となって、目の前の仕事に一所懸命取り組める人もいるからだ。
過去の私のように大きな夢にだけ焦点を合わせ、脳に巨大な空白をつくっておきながら、その埋め方もわからないまま、人生をすごすことだけはしてほしくないということだ。

目の前の仕事をやりきる「絶対達成マインド」

壮大な夢を持つのはいい。
だが、その夢を叶えるためにはどうしたらいいか具体的に考えられないまま、「いつか夢を叶えたい」と息巻いているだけでは夢には近づかない。

それならば、とりあえず目の前の仕事をやりきるという目標を持って、小さな空白をつくり、それを埋めていってはいかがだろうか。

空白を埋める回数が増えていけば、自信がつき、マインドが鍛えられていく。
そうして鍛えられた「絶対達成マインド」があれば、大きな空白も埋められるようになっていくはずだ。
そのほうが夢を叶えるにも近道なのだ。

それに目の前の仕事を一所懸命やり続けることにより、その仕事が好きになり、天職になるかもしれない。
それがやりたかった仕事かどうかなんて関係なく、人には自分が過去から現時点までやり続けたことを一貫して正当化したくなる「一貫性の法則」があるからだ。

もしも「ミュージシャンになりたい」という漠然とした夢を持っているなら、いつまでに、どんなミュージシャンになりたいのか、臨場感を持って具体的にイメージしてみればいい。
オリコンで何位以内に入れば満足するのか、どのくらいの人にコンサートにきてもらいたいのか、目指すミュージシャンの姿は人それぞれだから、自分の目指すミュージシャンの姿を明確にするのである。

「山登りの人生」と「川下りの人生」

登山をするとき、いきなり山に登り始めることはない。
山について詳しく調べるのはもちろん、登山ルートや登頂予定日などの登山計画を立ててから登山を開始する。
登頂に成功するためには登山計画をつくることが必須なのだ。
夢を実現させるときも同じだ。
実現すべき夢がよくわからないまま闇雲に突き進んでも、夢は叶えられない。
夢を実現させたいなら、できるだけ具体的な計画を立てるべきだ。

そうして夢を叶えるための計画が立てられたら、頂上に向かって一歩一歩前進していく。自分のあるべき姿に近づいていることを実感しながら山を登り続ければ、充実した毎日をすごせる。

困難を乗り越えて登頂したときには、これ以上ない達成感を得られるはずだ。それはそれでとてもすばらしい人生と言えよう。

しかし、そうした夢を持っている人はどのくらいいるのか。
世の中には「夢があるのが当たり前」「夢を持たずに生きるなんてありえない」という風潮があるが、本当に叶えたい夢を持っているのは一部の人だ。
自分が本当に何をやりたいのか、自分の夢は何なのかよくわからなくて悩んだり、迷ったりしている人のほうが多いはずである。

夢がないからと、自分を責める必要はまったくない

しかし、夢を持っていないことで、「どうして夢くらい持てないのだろう」「夢がないなんてダメな人間だ」などと自己否定する必要はまったくない。

なぜなら、山登りだけが人生ではないからだ。
自分のあるべき姿を見つめ、それに一歩一歩近づいていく山登りの人生も素敵だが、どこに向かって進むのかわからないけれど、目の前のことを一所懸命にやって乗り越えていく「川下りの人生」もすばらしい生き方ではないかと私は思っている。

私は山登りの経験も豊かにあるが、青年海外協力隊でコスタリカにいたときにやったラフティングも刺激的な体験だった。
舟で激流を下っていくと、目の前に巨大な岩が立ちふさがったり、対流で渦を巻いていたり、小さな滝になっていたりする。それに巻き込まれないように一所懸命漕いで避けて通ったり、乗り越えたり、飛び越えたりしていくわけだ。

もちろん、流されてはいけない。
自分でコントロールできなければ、いずれ岩にぶち当たったり、渦に巻き込まれたりして溺れてしまう。
しかし自分で舟をあやつり、目の前に現れた障害物を乗り越えたときは最高の気分が味わえる。

このコラムを読んでいる人の中にも、将来どんな会社に就職したいのか、どんな職業に就きたいのか、どのように大成したいのか、自分が何をしたいのか、わからなくて悩んでいる人もいるだろう。

だが、わからないまま就職しようが、進学しようが、いまの職場で働き続けようが一向にかまわない。

やりきった「自信」が、思考をさらに「あたりまえ化」する

どんな道に進むにせよ、目の前の仕事や勉強に真剣に取り組み、やりきればいい。
目標を達成させればいいのだ。目の前にやるべきことがある。それをやるのだ。
そうして目の前の目標を一つひとつ達成していくことで、間違いなく「自信」が芽生えていく。

第1回のコラムで書いた「逆算思考」で考えよう。

自信がつくから結果が出るのではなく、結果を出すから自信が芽生えていく、のだと。

目の前にやるべきことがある。会社から与えられた目標があるのなら、まずはそれを「絶対達成」させる。
どんな目標であろうが、それを達成させるのは「あたりまえ」だという思考を手に入れるのだ。
そうすることで「マインドチャージ」され、たとえ現時点で「自分のやりたいこと」が見つからなくても、いずれ夢が見つかったときに、培ってきた「自信」が必ずや成功への階段へと導いてくれるだろう。

だから、大きな夢があっても、まったく夢がなくても、どちらでもいい。
目の前にやるべきことがあるなら、それは後回しにせずやるのだ。やりきるのだ。

拙著新刊『絶対達成マインドのつくり方』には、どのようにすれば目標達成を「あたりまえ」にできるのか。その手順をNLP理論の「学習の4段階」をもとに解説している。ぜひ参考にしてほしい。

(次回は11月8日更新予定です。)

【横山信弘著『絶対達成マインドのつくり方』出版記念講演会のお知らせ】

<名古屋会場>
・日時:11月30日(金)19:00〜20:15(開場18:30)
・場所:ミッドランドホール会議室A
※要整理券。三省堂書店名古屋島屋店にて、書籍『絶対達成マインドのつくり方』をお買い上げの先着80名様に、整理券をお渡ししております。(お電話でのご予約も承っております。整理券がなくなり次第、配布終了となります)。
・お問合せ:三省堂書店名古屋島屋店(052-566-8877)

<東京会場>
・日時:12月5日(水)19:00〜20:30(開場18:30)
・場所:丸善・丸の内本店 3階日経セミナールーム
※要整理券。丸善丸の内本店にて、書籍『絶対達成マインドのつくり方』をお買い上げの先着100名様に、和書売場各カウンターにて整理券をお渡ししております(お電話でのご予約も承っております。整理券がなくなり次第、配布終了となりますので、お急ぎください)。
・お問合せ:丸善丸の内本店(03-5288-8881)


【新刊のご案内】
『絶対達成マインドのつくり方』〜科学的に自信をつける4つのステップ〜


「自信をつけるのに、モチベーションは100%必要ない!」「仕事の意味など、考える必要はない!」
年間100回以上のセミナー、講演で、5000人を変える現場コンサルタントが、「科学的に自信をつける4つのステップ」をはじめて公開!「あたりまえ化」4ステップで、必ず自信が芽生えるプログラム。先送り習慣を治療する絶対達成仕事術「倍速管理」を初公開!著者が35歳から大きく人生を変えた話と、メガバンクから小さな会社まで、再現性のある事例満載。心構えや訓示とは大きく異なります。ぜひご一読ください。

ご購入はこちらから!→ [Amazon.co.jp] [紀伊國屋書店BookWeb] [楽天ブックス]


横山信弘(よこやま・のぶひろ)
アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。1969年、名古屋市生まれ。年間100回以上のセミナーは5000名超の経営者/マネジャーを集め、常に満員御礼。企業研修は基本的に価格がつけられず、「時価」。それでも研修依頼はあとを絶たず、向こう8ヵ月先まで予約は埋まっている。ポリシーとして、コンサルティングは質を保つため、年間7〜8社しか請け負わない。著書に、第9刷突破の『絶対達成する部下の育て方』(ダイヤモンド社)と、『脱会議』(日経BP社)がある。
http://diamond.jp/articles/print/27062

大学で実感した米国の競争の厳しさと挑戦を促す風土

バブル期の日本が別世界に感じられた勉強漬けの毎日

2012年11月8日(木)  上阪 徹

 グーグルジャパンの最高幹部の1人、徳生健太郎は1986年に日本の有名進学校を退学、アメリカの高校に編入し、異端ともいえるそのキャリアをスタートさせることになる。そして高校を卒業後、徳生が進学先として選んだのが、コンピューターサイエンスではアイビーリーグで高く評されていたコーネル大学だった。

 だが、実はこの進学先は、徳生にとって第1希望ではなかった。ただ、この結果に対して、不思議な感覚を持ったことを徳生は覚えているという。

 「もし、ずっと日本にいてどうしても行きたい大学に落ちてしまったら、ものすごいショックだったと思ったんです。これぞと決めていた大学にいけなかったら、どうすればいいんだろうとか。でも、この時は、そういうショックはなかったんですよね。そうか、難しくてダメなのか、くらいの感覚で」

 それが何であるのか、徳生は後になって理解する。アメリカの持つ“失敗”に対する感覚だ。

勝利へのこだわりの裏にある失敗への寛容

 「アメリカはWinとLoseがすべてだ、と言われることがあるんですが、確かにそれが顕著だと思います。Winner takes allという言葉もあるし、勝つための技術をスポーツでも教え込まれる。2番でも3番でも、勝って1番になるのとでは、成果に対する評価に格段の違いがありますしね」

 だから、勝つために貪欲になるし、そのための準備も徹底的に考え抜かれて、実行されていく。

 「でも、結果として負けてしまったとしても、これですべておしまいだ、ということにはならないんです。日本では、勝ち組、負け組みたいな言葉もありますが、そこには、いずれの組に入ってしまうとそれで固定されてしまうニュアンスがありますよね。でも、これはアメリカにはない。一回負けたらすべて終わり、というコンセプトはアメリカにはないからです。負けるのもレッスンであり、悔しいけれど、ほかの競ったり挑戦する場に向けての糧になる、という意識がある」

 勝ち負けの捉え方が、実は日本とアメリカでは大きく違うということだ。アメリカでの勝ち負けのニュアンスは、日本の資格取得に似ているのではないか、と徳生は言う。

 「資格にも何級とかいろいろとランクがあって、努力をし続けることで進化していくわけですが、1度の資格試験に落ちたら何もかもおしまいだ、という人はいないでしょう。次のチャンスでまた頑張ればいいし、実際にチャンスはやってくる。アメリカの勝負で負けた時には、そういう感覚が持てるような気がするんです」

 もちろん勝ちにはこだわるが、負けや失敗も怖いものにはならない。だから、思い切ったチャレンジができる。それは、次の勝ちや成功のためのバネにできる、という意識があるからである。

 わずか数年のアメリカ暮らしで、徳生はこの感覚をいつの間にか持つようになっていた、というのだ。そしてこれが、後のキャリア形成をはじめ、思い切った選択、大胆な人生を可能にしていくのである。

 結果的にコーネル大学に入学したことは、大きな意味を持ったと徳生は語る。後に大学院でスタンフォード大学に行くが、東海岸と西海岸の両方を経験することができたからだ。

 「実際、東海岸って、美しい季節の遷移があったり、文化的な資産が豊富で、実はいいよね、ということでアメリカ人と盛り上がったりすることも多いんです。両方を経験してきたという自負というか、自信もあります。そして何と言っても、世界で一番と今でも思えるほどの美しいキャンパスで4年間を過ごせた経験は貴重でした」

 コーネル大学はニューヨーク州のど真ん中、壮大な自然に囲まれたイサカ市の一角にある。徳生の第一印象は、やはりキャンパスの美しさと巨大さにあったらしい。

徳生健太郎氏が進学した米コーネル大学の美しいキャンパス
cCornell University Photography, 312 College Ave, Ithaca, NY 14853; 607-255-7675; photo@cornell.edu; http://photo.cornell.edu
 「本当にきれいなんです。渓谷が2つくらいあるところに大学が建っていますからね。ホテル経営学科も有名ですが、キャンパス内にホテルもある。吊り橋もたくさんあって、景色も素晴らしいんです。特に冬の美しさは、本当に印象的でした」

コーネル大学の寮で受けた洗礼と新たな気づき

 徳生は2年まで大学内の寮に入ったが、ここで1つの洗礼を浴びせられている。

 「立派な寮でした。一年生は同じフロアなんですが、驚くべきことに男女に分かれていないんですよね。もちろん男性のルームメートは男性ですが、その部屋の隣が女性の部屋、というのも普通でした。子供扱いはされない、ということですね。この時は、ほぼ全員が初めての出会いですから、まずは自己紹介から始まりました。ワクワク感があって面白かったですね。ただ、僕はルームメートがとんでもないアメリカ人になってしまって(笑)」

 そのルームメートは生活がすこぶるルーズだった。部屋の掃除をしないので汚い。宿題を放置たり、単位取得のかかる期末試験の勉強もする気配もなく、州の法律に抵触するのではないかという行動も見受けられる。高校時代、育ちのいい仲間たちと一緒に過ごしてきた徳生にとっては、「アイビーリーグにもこのような生徒がいるのか」と驚きだった。

 「でも、いいヤツなんですよ。嫌いになったわけでもなかった。秋休みには彼の故郷に遊びに行ったりもして。思ったのは、自分と正反対のスタイルを持っていたということです。ものすごくいい加減にやっているのに、ちゃんと結果は出していて。思えば、そんな彼に対して、自分にはないものがあるという羨望感の裏返しもあったのかもしれない」

 徳生は、彼から高校時代には見えなかったアメリカ人の別の面を知る。

 「勉強になりましたね。すべて何から何までをきっちりきっちりやらなくてもいいんだ、適当に力を抜いてもやるべきことはできる。こういう生き方もあるんだな、と。彼も僕のことを悪く思っていなかったし、卒業以来音信不通になってしまいましたが、今でも声を掛けられれば友達にすぐ戻れると思います」

 コンピューターサイエンスを専攻した徳生は、入学時に大学から分厚いカタログを手渡された。そこに記されていたのは、必須科目や選択科目だった。日本との違いは、1年からかなりの選択科目があるということだ。しかも、専攻内のコースにもいろいろな選択肢があって、基本的に自分で4年間のコースを組み立てなければならない。

 「要するに、各自の責任で、ということなんです。もちろん見本のようなものはあるんですが、時間のぶつかってしまうものが出てきたり、毎学期出てこないコースもあったりして、これをどうオプティマイズして4年間で終わらせるかを考えるのは、なかなか大変です。何か1つ間違えると、4年間では卒業できない、なんてことにもなりかねない」

 しかも、授業についていくのは、それなりの大変さが伴う。「日本の大学は、入るまでは大変で、出るのは難しくない。逆に、アメリカの大学は、出るのは大変だ」という話を聞くことがあるが、まさにそうだった。

高校でオールAでも授業についていけないことも

 「授業の出席を取ったりはしません。休むのも自由。でも、出席していないと困るのは自分なんです。だから、みんな真面目に出てきます。これは理系も文系も同じです。宿題もたくさん出ます。自分で実験をして結果を出す、みたいな宿題もあった。すべての授業が、というわけではありませんが、やっぱり大変でしたね」

 特に理系は、できる、できないが白黒はっきりする。それだけ「A」も取りやすいが、真面目にやらないと、やはり良い成績は取れない。

 中には、授業についてこられない学生もいたという。日本の入試のように一律の学力を問う形での入試が行われるわけではないため、入学後に困るリスクもあるのがアメリカなのだ。

 「出身した高校でオールAを取っていたとしても、大学で授業が分かるとは限らないんです。学科によっては、いきなり厳しい評価をつけられてしまうこともある。そうなると、やっぱりショックだし、優等生だったのにどうしたんだ、なんて親が非難してしまったりすると、余計落ち込んでしまうわけですね。これはコーネルに限ったことではないと思いますが、プライドを傷つけられたり、プレッシャーが重なったりして、精神的に追い込まれる学生が出ていたのも事実です」

 順風満帆で来た学生ほど、この落とし穴にはまりやすい。とにかく大学に入ってしまえば、という感覚もある日本では、留年や就職留年も珍しいことではないが、アメリカの一流大学は学費もばかにならないので、就職はもちろん卒業にもかなり真剣に取り組む必要がある(莫大な学費ローンを抱えて卒業する生徒も多い)。その意味では、プレッシャーは、日本とはまた違うようである。もっとも前述したように、これで人生はおしまい、という感覚は、あまりないようではあるが。

 ちなみに授業の評価は、セメスター(学期)の末に行われる試験のみならず、総合評価で行われる。

 「特に理系は、即戦力養成キャンプみたいな雰囲気がありました。だから、暗記が問われるようなものはまずない。数学であれば、問題をその場で解いたり、コンピューターサイエンスであれば、試験だけではなくて試験の日までにプロジェクトを自分で推し進めたりすることが求められたり」

 だが、「成績は納得のいくものだった」と徳生は語る。アメリカの高校でもそうだったが、どうすれば「A」を取れるのか、そのコツも分かってくるというのだ。

 「それこそ高校時代は、歴史なんて最初の試験はDマイナスでしたよ。基礎的なことがほとんど分かっていなかったですから。日本にいる時、年号とか覚えるのが大嫌いで、『こんなの覚えて、いったい何の役に立つのか』と思ってまるっきり興味を失ってて。ところが、アメリカは違うわけです。当時の人の考え方や、それがどう歴史に反映されたか、考えたりする。あるいは自分で試験問題を作れと言われたり」

次第に分かったアメリカの大学における授業の面白さ

 自分で答えを作って授業をしろ、と言われたこともあった。

 「これは面白かった。しかも、勉強して理解が深まれば、DマイナスがちゃんとAになったりするわけです。評価を正しく行ってくれるんですね」

 大学では、試験も含めた総合評価となったわけだが、ではどうやって普段の授業で評価が行われていたのか。これが、面白い仕組みになっていた。

 「授業を担当する先生だけが、一人で全部見るわけではないんです。ティーチング・アシスタント(TA)と呼ばれているアルバイトの上級生が見るんです。これには、僕も最初はびっくりしました」

 例えば、週に3回、授業があるとすれば、担当の先生が教えるのは、1回だけ。大きなレクチャーホールで教える。そして残りの2回はTAセッションと呼ばれる、少ない人数のプログラムが組まれる。

 「TAセッションで授業がフォローされるんです。解き方やプログラムソリューションが教えられたりする。これは、学生にもありがたかった。ただ、教えるTAは、実は大学の上級生で同じ学生なんです。だから、TAのクオリティー次第で成績は大きく左右されたかもしれないですね」

 それだけに、フィードバックシステムも用意されていた。教授たちはもちろん、TAについても学生たちが評価できる仕組みだ。

 「時々、ものすごく優秀なTAがいたりするんです。しかも、稀ですが、同級生のTAもいたりする。まさに教えるのが天職と思えるような、教え上手のTAがいたり。3 、4 年生の学生か大学院生のアルバイトでしたが、教える側にも利点が大きな仕組みだと思いました」

 もう1つ興味深かったのが、体育の授業だった。なんと、徳生が選択したのは、ウィンドサーフィンだった。

 「大学から車で5分くらいのところに湖があるんですよ。谷もあるのでけっこう、いい風が吹くんです。そこで夏はウィンドサーフィンをして、冬はまた近くのスキー場でスキー、というカリキュラムで。無料ではありませんが、破格に安い。週1回、土曜にスキー場や湖までバスで連れていってくれて。かなり本格的で、僕は大学院で行ったスタンフォードで、生徒にウィンドサーフィンを教えていた時期もあるんです。無償の趣味でしたけど(笑)」

 冬のスキーは、セントラルニューヨークで夜間スキーをした。これも、バスのお迎えが来る。

 「スキーは大学から始めたんですが、楽しかった。基本レッスンが終われば、自由に滑っていいんです。一度、楽しみすぎて帰りのバスを乗り遅れてしまって、ヒッチハイクしたこともあります」

 コーネル大学のあるイサカは、田舎町だった。治安は良かったが、遊びに行く盛り場もなかった。徳生は3年からアパート暮らしをしたが、基本的に朝、起きたらすぐに授業に向かうのが、日常だったという。授業の合間は図書館などで勉強。夕方、授業が終わるとクラスメートや友達とスポーツをしたり、しゃべったり。その後はまた勉強して6時くらいに夕食。その後はまた勉強する。

 「だから、ウィークデーは遊ぶという感覚は全くなかったですね。高校もそうでしたけど、部活以外は勉強。それこそ、遊ぶ場所もないですから」

夏休みに日本に帰ってきた時に感じた違和感

 週末になると、あちこちでパーティーが開かれ、よく参加した。

 「そういうところでは、バカ騒ぎになりますね、やっぱり。アメリカでは未成年の飲酒にものすごく厳しいんですが、その分、21歳を過ぎたら反動でみんなものすごく飲むんですよ。しかも、地方都市から出てきた自由さも手伝って、いつも賑やかでした」

 パーティーも飲食店で行われるわけではない。卒業生などがパーティーを支援することも多く、ほとんどお金はかからなかった。

 「あまりお金をかける遊びはしないんです。するとしても、ささやかです。春休みに、車を十数時間飛ばして、男女5人でサウスカロライナの(リゾート地として有名な)ヒルトン・ヘッドに行ったのを覚えています。お金を出し合って短期アパートを借りて1週間くらいビーチで過ごして。途中は日帰りでフロリダ州のディズニーワールドまで片道5時間、車を飛ばしたり。ガソリン代を割り勘して、当地ではスーパーで買い物して自炊したり。みんな20歳前後でしたから、1年に1回の春休みを低予算でどうやって楽しむかというのが基本的な考えでした」

 それだけに、夏休みに日本に帰ってきた時には違和感を持った。当時の日本はまさにバブル絶頂期だった。

 「友達に横浜の巨大なディスコ、西麻布のバーやクラブに連れて行ってもらって、びっくりしたのを覚えています。学生もたくさんいましたが、学生なのに、どうしてみんなこんな羽振りがいいんだろう、と思いましたね。日本の大学生ってこんなにお金使えるんだ、と。」

 「帰国した時は翻訳のバイトやインターンシップをしていたんですが、ずうっと同じペースで遊んでいたら収支マイナスになっていたと思います。お金のないアメリカの大学生が、ニューヨーク州の田舎から迷い込んでしまった、みたいな感覚もありました。」

 それこそアメリカでは、外食することも滅多になかったという。

 「普段は大学の寮で食べられるわけです。まとめてお金を払ってありますから。おいしいとは言えませんが、ちゃんと栄養は取れる。だから、大学の中にいれば、お金はかからないんですよ。まともな外食なんて、月に1回ぐらいだったでしょうか。友人と楽しみにするごちそうでした」

 日本でありがたかったといえば、アルバイトだった。長い夏休みを利用して、徳生は日本で翻訳のアルバイトをしていた。

 「日本でお金を稼いで、それをお小遣いにしようとアメリカに持って帰る。そんな感じでしたね。思えば、出稼ぎみたいなもので(笑)」

 ただ、翻訳ばかりでは変化がない、と、翌年は単発で別のアルバイトもしてみようとジャパンタイムズの小さな広告で見つけたのが、子供のための3泊4日の教室キャンプだった。

 「英語がちゃんと話せる日本人の大学生を募集していたんです。電話で突然に申し込んで、自分のバックグラウンドを説明したら、もう10分もしないくらいの会話で、本決まりになっていました。内心こんなのでいいのかな、と思いましたが(笑)」

 当時21歳。実はこのキャンプのアルバイトで、徳生はある女性と出会っている。彼女は、カナダへの留学が決まっていた。徳生が通っていたコーネル大学からも車で4時間半。遠くはなかった。2人は意気投合する。彼女こそ、後に妻となる女性である。

やがて日本よりもアメリカをホームと感じるようになった

 日本を離れてから3年、4年と経過すると、日本よりもアメリカに馴染んでいる自分がいたことに、徳生は気がついていく。アメリカに戻ると、ホッとするのだ。

 もちろん懐かしい日本の同級生たちと会えるのは、喜びだった。アメリカ人の友人たちとは、また違う楽しさがあった。友人たちは、アメリカで徳生がどんな暮らしをしていたか、細かく問うたりもしなかった。昔話に花を咲かせ、懐かしい再会を喜んだ。

 将来についての話が出てくることもあった。友達たちも、自分たちなりに将来のことをしっかり考えていることを知った。意外に、日本の伝統的なエリートコースを歩もうとしている仲間が自分の周りには少ないことにも気がついた。そして誰一人として、「日本に戻ってこいよ」とは言わなかった。

 「僕自身ももうこの頃は、大学を卒業してから、日本に(長期的に)帰ってこようという気は起こらなかったです。大学でコンピューターサイエンスを専攻として勉強しながら、当時その業界のメッカとなりつつあるシリコンバレーが刻々と進化しているのを見ていると、いつかはあの場所で力を試してみたいと思うようになりました。また、そうした道へ進むのが、いわゆる日本で言う『エリートコース』が漠然とそこにあったのと同じように、自分にとって、しかるべき道みたいに見えてくるんですよ」

 「人間って、やっぱり周りの人に染められちゃうものですよね。その意味では、アメリカで仕事をして生活していく、という考えが、その数年前に日本を飛び出した時に感じたような“冒険”というものではなく、僕の中で新しいベースラインになっていったのだと思う」

 そしてもう1つ、日本では就職しないことを徳生に決定づけた出来事が起こる。それは、日本の大企業でのインターンシップだった。徳生は何を見たのか、次回、お届けする。

(文中敬称略)


上阪 徹(うえさか とおる)

1966年、兵庫県生まれ。89年、早稲田大学商学部卒。リクルート・グループなどを経て、95年よりフリー。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍などで幅広く執筆やインタビューを手がける。インタビュー集に累計40万部を超えるベストセラーとなった『プロ論。』(B-ing編集部編/徳間書店)シリーズ、『外資系トップの仕事力』(ISSコンサルティング編/ダイヤモンド社)、『我らクレイジー★エンジニア主義』(リクナビNEXT Tech総研編/講談社BIZ)がある。著書に『新しい成功のかたち 楽天物語』(講談社)、『六〇〇万人の女性が支持するクックパッドというビジネス』(角川SSコミュニケーションズ)、『リブセンス<生きる意味>25歳の最年少上場社長 村上太一の人を幸せにする仕事』(日経BP社)など。


グーグルで最も活躍する日本人の軌跡

 検索エンジンからスタートし、サービスを徐々に拡充して、今や世界に冠たるIT(情報技術)の巨人に成長した米グーグル。同社の草創期から共に歩み、グーグルジャパンの「顔」としてメディアに登場する徳生健太郎・製品開発本部長──。
 日本がプラザ合意を経てバブル経済による空前の好景気を謳歌し始めた1986年、東大合格者数ランキングで全国トップテンに入る名門高校を3年の半ばに中退し、当時不況のどん底にあった米国に渡るという異例の決断を下した同氏の半生を、ノンフィクション作家がたどる。渾身のドキュメンタリー。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121104/239009/?ST=print


10月豪就業者数は予想外に増加、12月利下げ観測後退
2012年 11月 8日 12:12
[シドニー 8日 ロイター] オーストラリア連邦統計局が8日発表した10月の雇用統計によると、就業者数は季節調整済みで前月比1万0700人増加し、失業率は5.4%となった。

ロイターがまとめた市場予想では、就業者数は変わらずで、失業率は5.5%と見込まれていた。

フルタイム雇用者は季節調整済みで1万8700人増加、パートタイム雇用者は同8000人減少した。

予想外の就業者数増加を受けて、豪ドルは対米ドルで若干上昇。オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)が12月に利下げするとの見方は弱まっている。インターバンク先物をみると、来月利下げの確率は48%織り込まれており、雇用統計発表前の60%から低下した。

中銀は今週、一部の利下げ予想に反して政策金利を3.25%に据え置いた。

RBCキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、Su-Lin Ong氏は「フルタイム雇用者数が4カ月連続で増加している。この点に少し驚いた」と発言。「おそらく、RBAはもう少し長く様子見姿勢を取る方向に傾く。RBAは労働市場は軟化しているが依然悪くはない状態との見解を維持するだろう。われわれは来年第1・四半期に(政策金利の)動きがあると予想する」と述べた。

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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8A701J20121108


7−9月GDPは大幅マイナス成長へ−業績悪化、景気後退の公算も 
  11月8日(ブルームバーグ):海外経済の減速を受けて、7−9月の実質国内総生産(GDP )成長率は大幅なマイナスになったと見込まれている。企業業績の悪化で設備投資など国内経済への波及も懸念されており、日本経済は既に景気後退局面に突入したとの見方も出ている。
内閣府は12日に7−9月の実質GDP成長率を公表する。ブルームバーグ・ニュースの事前調査では、前期比年率3.4%減と、昨年4−6月以来5期ぶりのマイナス成長になると予想されている。予想通りなら、東日本大震災で大きく落ち込んだ昨年1−3月以来の大幅なマイナス成長となる。
輸出企業は長引く円高や世界経済の減速の長期化で苦境に陥っている。ブルームバーグが集計したデータによると、日経平均株価を構成する225社中、既に公表された171社の7−9月期純利益は累計で前年同期比34%減少した。シャープ は今期(2013年3月期)連結純損失予想を4500億円に下方修正。パナソニック も今期純損益予想を7650億円の赤字に下方修正した。ファナックも今期は3期ぶりの減益見通しで、資生堂 は来期以降のコスト削減目標を発表した。
伊藤忠商事の丸山義正主任研究員は「世界経済の減速や日中間の問題により輸出が落ち込んでしまった。企業は業績悪化により先行き不透明感から設備投資を絞っており、国内の景気にも悪影響を及ぼしている」と指摘。「日本経済は7−9月期から景気後退に陥っている」と語る。内閣府が6日発表した9月の景気動向指数は、景気の現状を示す一致指数が6カ月連続で悪化。内閣府は「下方への局面変化を示している」として、日本経済が景気後退局面に入った可能性を示唆した。
2期連続のマイナス成長も
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「輸出減少により収益が悪化し、先行きに関しても海外経済に対する不確実性が極めて高い中、製造業を中心に2012年度設備投資計画の実行を先送りする企業が増えていると見られる」と指摘。個人消費についても「生産活動の減速に伴い所定外給与も減少するなど、家計の所得環境が限界的に悪化に向かい始めている」という。
第一生命経済研究所の新家義貴主任エコノミストは「10−12月期も状況は厳しい。輸出の回復が見込み難いこと、自動車販売の悪化が続くこと、といった悪材料があるため、2四半期連続マイナス成長となる可能性も否定できない」としている。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 氏兼敬子 kujikane@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2012/11/08 00:01 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MD3XVR6K50YS01.html
ECB、新債券購入策で国債市場への上限ない介入可能に=総裁
2012年 11月 7日 23:55 JST 記

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ロシアのプーチン大統領、オバマ米大統領の再選歓迎=報道官
東電が政府に支援策見直し訴え、巨額負担への懸念表明
オバマ米大統領が再選確定受け勝利演説、共和党との協力表明
アングル:オバマ氏勝利でドル安路線のあおり受ける日本

[フランクフルト 7日 ロイター] ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は7日、新たな債券買い入れプログラム(OMT)によりECBは国債市場に対し上限のない介入を実施できるようになり、これによりユーロ圏崩壊に関する市場の懸念を払しょくすることができると述べた。

ドラギ総裁は銀行関連の会議に出席し、債券買い入れ策は、最悪のシナリオに対する信頼ある安全装置として機能するとの考えを示し、「OMTにより債券市場に上限のない介入が可能になり、こうした安全措置を提供することができる」と述べた。

ただ、「市場がどのように機能するか理解する必要がある。ECBはこの措置を通して、ユーロ圏に関する懸念には根拠がないという明確なメッセージを市場に送る必要がある」とし、ユーロ圏の各国政府が一段と緊密な金融、財政、政治上の同盟の構築に向け努力を続ける必要があるとの見方を示した。

そのうえで「ECBの措置により短期的にはユーロ圏の信頼を構築することができる。ただ、ユーロ圏における長期的な信頼を確保するには、政府の行動以外の手段はない」と述べた。

ユーロ圏経済については、ECBは「短期的に」弱い状態が続くとみていると述べた。インフレ率は「非常に抑制されている」とし、「来年は2%を下回る水準に低下する」との見通しを示した。

ECBは8日の理事会で金融政策を据え置くとみられている。

また、ユーロ圏は安定化しているとの見方を示し、「投資家はユーロ圏に再び投資し始めている」と述べた。


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ECB、主要政策金利を0.75%に据え置き 2012年10月4日

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8A608C20121107

 

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コメント
 
01. 2012年11月08日 19:41:36 : 88smlvdHTU
長い。どうやって、アップするの?こんなに。 国民の生活が第一は、読みたいんだけど、どこにあるの?

02. 2012年11月09日 03:30:23 : Z4wGFHpMZ6
上の海老原の言う事は一理あるが全てではない。
だいたいリクルートの回し者でこれが日経の記事では
正社員特権、派遣労働者を食い物にし奴隷状況の放置に対する結論は変わりなし。
そもそも労働法形を骸化させたリクルートがいうとはマッチポンプ。


国民生活は雇用状況、派遣制度、大企業に対する政策スタンスを知りたい。


03. 2013年8月24日 23:34:29 : Un6heX4IUI

ハズレの新入社員入れた無能な人事部の奴らがここでも叩かれていない時点で
その記事投稿もガス抜きの一部でしかないことをいい加減に気づけや 笑


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