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Re: 中流が消える 遠のく老後資金「1億円」 「希望年収」「未婚率」「共働き」 大富豪の「素敵なお金の使い方」
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/581.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 21 日 02:14:58: cT5Wxjlo3Xe3.
 

(回答先: 中流が消える 遠のく老後資金「1億円」 投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 21 日 02:00:40)

「ああ減収、どうする!老後のお金」
中流が消える

遠のく老後資金「1億円」

2012年11月21日(水)  野村 浩子
 現役世代の4割が老後資金を十分に用意できず、一生働き続ける「老後難民化」する恐れがある。日経マネー編集部が実施した1600人調査でこんな実態が見えてきた。

 それはなぜなのか。どのような対策を打てばよいのか。それをまとめたのが11月21日(水)に発売した「日経マネー」2013年1月号。

 その概要を日経ビジネスオンラインで紹介する。第1回は将来、老後難民化する恐れのある人たち。その人たちの収入、家族構成、暮らしの状況などを紹介しよう。 

「今日もカレーか」

 食卓についた山崎昇さん(51歳、仮名)は、3人の子供を前に言葉を飲み込んだ。家計を切り詰めるため、“外食”は「ほか弁」やコンビニ弁当に切り替わった。食材費が安く上がるカレーやシチューが度々夕飯の食卓に上るようになった。

 山崎家の世帯年収は約600万円。昇さんの年収500万円に妻のパート収入100万円。3人の子供の教育費と住宅ローンを払うと、家計はギリギリで老後資金を貯める余裕はない。60歳までに3000万円貯めることを目標としていたが、実際にはその半分くらいとなりそうだ。

4人に1人は「1000万円未満」しか貯められない

注:日経マネー老後資金アンケート。2012年10月インターネット上で実施。回答者1636人、平均年齢52歳。回答者の75%が現役世代
 老後の資金計画が狂った大きな要因は、勤務先が人件費削減のために導入した早期退職制度だ。50歳を迎えると、親会社を退職し子会社に再就職、給与は3割ほど減る。表向きは本社に残るか子会社への転籍かを選べるが、実際には拒むことはできない。山崎さんもまた同様だ。子会社への再就職により年収はこの1年で700万円台から500万円台へと一気に下がった。

 40代、50代と年功型賃金で収入が上がると見込んでいた山崎さんにとっては「想定外」のことだった。

 40歳の頃、給料右肩上がりを前提に35年の住宅ローンを組んだ。当初予定していた繰り上げ返済をする余裕もなくなり、ローンは75歳まで続く。「老後は夫婦で旅行したいと楽しみにしていたが、それどころではない。せめて孫に小遣いくらいあげたいけど・・」

 老後資金が十分に貯められず「非常に不安」――。山崎さんのような「老後難民」予備軍が現役世代の約4割を占めることが、「日経マネー」の老後資金1600人アンケートで明らかになった。老後難民予備軍の平均年齢は46歳、平均年収は554万円。自ら用意する老後資金の目標額は2700万円ほどだったが、実際にはせいぜい1600万円ほどしか貯められそうにない。約4割の人は月々の家計は赤字で、今の仕事を失う不安を感じている。

老後資金が「非常に不安」という人が約4割

 老後難民予備軍の大半は、ごく平均的なサラリーマン。老後の資金が「見込み違い」となる最大の要因は、中年期を迎えての思わぬ「収入減」だ。

 男性雇用者の給与は、1997年の577万円をピークに、この15年間下がり続けている。とりわけ2008年のリーマン・ショック後の下げ幅は大きかった。2009年は前年比マイナス6.2%の499.7万円と500万円を割り込んだ。

 なかでも中高年の家計は大きな打撃を受けている。90年代後半から、年功型賃金を支えきれなくなった企業は、中高年社員の給与を引き下げ始めた。定期昇給の見直しや、成果主義の導入などによるものだ。厚生労働省の労働白書をみると、1990年のバブル絶頂期からリーマン・ショックの2008年にかけて、中高年の給料は25%超下がっている。

年収1000万円の正社員から400万円の派遣社員に

 東京都に住む会社員、岡田敦さん(仮名、51歳)もまた、リーマン・ショックを境に歯車が狂い始めた。かつて年収1000万円を超えていた岡田さんの年収は、現在400万円台。

 大手自動車メーカーを早期退職制度という名のもとにリストラされ、出向先の部品メーカーに転籍することになった。その部品メーカーも、リーマン・ショックの余波を受けて経営が悪化。岡田さんは再び早期退職を余儀なくされた。転職先を探したものの、年齢も理由となりなかなかみつからない。結局、派遣会社の契約社員となり、大手自動車会社の設計部門で働き始めた。

 離婚して、子供がひとり。教育費もまだまだかかる。「老後は悠々自適に暮らそうなどと考えていましたが」と苦笑する岡田さん。「60歳以降も働いて生計を立てないといけない。もはや選択の余地はありません」

中流の貧困化が始まっている

 「男性不況」――。第一生命経済研究所主席エコノミストの永濱利廣さんは、90年代後半以降の男性社員の給料ダウンを、こう表現する。男性比率の高かった製造業・建設業はいま急速に雇用を減らしている。2011年までの9年間でこの2つの業界で約350万人の雇用が失われたが、その6割を男性が占める。一方、雇用を伸ばすのは医療・福祉分野。女性中心で給与水準が低めの産業である。国内で仕事を失う男性社員。男性の給与水準の低下には、こうした構造的な変化があるという。給料が上がりにくいなかで、食糧やエネルギーといった生活必需品の価格はじわじわと上がっていく。「中間層の貧困化が静かに進んでいる」(永濱さん)。

 雇用制度に詳しいリクルートキャリアのフェロー、海老原嗣生さんもまた、「中高年の収入ダウンをみると、中流の崩壊が始まっていることが見て取れる」と言う。給与引き下げはここ5年ほど加速しており、今後さらに動きが強まると予測する。2013年4月以降の「60歳以降の継続雇用」義務化により、総人件費が膨らむ。これを中高年社員の給料引き下げで調整するというのだ。

 収入が減る、老後資金造りの思惑が狂う。ふと気づいたときには「老後難民」予備軍に――。その背景には、こんな構造変化があったのだ。

年収500万円台が最も多い

注:日経マネー老後資金アンケート
 ところで「中流」とは、どんな人たちなのか。「一億総中流」という言葉が登場したのは、1970年代のこと。内閣府の「国民生活に関する世論調査」では、自らの生活程度を『中流』(中の上、中の中、中の下)と答えた人の割合が、70年代半ばに約9割に達した。2012年の調査でも9割超が自らを「中流」だと答えている。

 その一方で、同調査で「去年と比べた生活の向上感」を問われ「低下している」と答えた人は、97年以降は上昇傾向にあり2割を超える。「三丁目の夕日」の時代、明日は今日よりよい生活となると信じることができた頃は、平均的な収入を得られれば、明るく前を向いて「私は中流です」と答えたことだろう。

 しかし、今は違う。

 所得水準を見ると平均的ながら、「下流に近い」と感じる人が出てきている。社会人となった20代の頃には想像もしなかった、大幅な収入ダウン。「落ちていく」感覚、どこで「下げ止まるか見えない」不安――。これが、日本人の「中流」層の足元を脅かしている。

「お金のない期間が死ぬまで続く」

 中流から下流へと落ちていく。平均的なサラリーマンがそんな感覚を持ち始めている。

 「私は、もはや下流に近い」とため息をつくのは、富山県に住む会社員の鈴木博之さん(仮名、56歳)。リーマン・ショックを受けて勤務先の業績が悪化、800万円近くあった年収は600万円台へと約2割ダウンした。年収水準は全国平均を上回るものの、老後資金を自力で1000万円用意するのは難しい。晩婚で授かった子供3人の教育費負担も重い。

「県立高校へ転校してくれないか」。ある日鈴木さんは、中高一貫の私立高に通う子供にこう切り出した。

 勤務先では、あの手この手による給与削減が続いた。通勤手当のカットに始まり、扶養手当の廃止、賞与の業績連動型移行による削減、この秋からは月2万円の職務手当もなくなった。むろん管理職になってからは、残業代は1円も出ていない。

 生活費の削減は、考えられる限り手を尽くした。マイカーを2台から1台に減らし、携帯電話も保険も解約した。新聞・雑誌の定期購読もやめた。万策尽きて、子供に転校を切り出したのだ。

注:日経マネー老後資金アンケート
 老後の生活は? 鈴木さんに尋ねたところ「時間だけがあり、お金がない期間が死ぬまで続く、というイメージでしょうか」。静かな声で答えが返ってきた。

 では世帯年収が高ければ老後は安泰かというと、そうとも限らない。世帯年収が1000万円を超えながら「老後は不安でいっぱいだ」という30代もいる。

 子供のいない共働きで、世帯年収1300万円の本田雄介さん(仮名、34歳)。東証一部上場の大手企業の会社員だ。老後資金として3000万円は用意したいと考えていたが、1000万円未満になることもあり得ると思い始めた。3500万円で住宅を購入し、ローン残高は2800万円、60歳で完済予定だ。万全に見える家計なのに、なぜ「老後が非常に不安」なのか。

世帯年収1300万円あっても「老後は不安」

 「子供が生まれても共働きを続けられるか」「今の時代、教育費がかかる」「数十年後には年金も退職金もどうなっているかわからない」。さらに「30代半ばにして早くも給料頭うちだし」。不安を挙げ始めると、止まらない。

 中央大学の山田昌弘教授によると、日本では「中流以上」の人でも老後不安が高いのには、2つ大きな理由があるという。ひとつは、「介護・医療など、『いざ』というときに満足できるサービスを受けるにはおカネがかかる」こと。

 もう一つは、子供の教育費の自己負担額が大きいことだ。大学生の子を持つ親の家計をみると、教育費が約4分の1を占める。子供が2人、3人と私立大学に進み、さらには就職浪人したり、パラサイトになったりすると、親の負担はさらに膨らむ。「(介護・医療など)いざというときの費用、そして子供の高等教育費。これを欧州のように社会で負担する仕組みにすれば、老後不安も和らぐのではないか」(山田さん)。

 では、個人としては老後に向けて家計をどう守ればいいのか。不安をいかに乗り越えたらいいのか。

年金額や必要額がわからないことが大きな不安に

注:日経マネー老後資金アンケート
 まずは、不安の中身の「見える化」だ。日経マネーのアンケートでは「老後資金について何が心配か」を尋ねると、2人に1人が「年金支給額が減りそうだ」「いくら必要か分からない」と答えた。

 二大不安にズバリ、ここで答えてしまおう。

 まずは公的年金の支給額。「今後は3割減もありうる」と社会保障制度に詳しい明治大学の加藤久和教授。消費税アップや医療費の自己負担増も想定されるため、社会保険料負担分を含めると、これからさらに手取りは減る。

年金支給額は2〜3割の減額が見込まれる

注:夫が会社員、妻が専業主婦の場合の政策試算。
「老後資金1億円」が必要な理由

 もうひとつの不安、老後資金はいくら必要か。寿命が延びたいま、夫婦二人で「1億円」と考えたい。総務省の家計調査に基づき、60歳から平均寿命までの基本生活費を積み上げると約7200万円。これに介護や医療、自宅の改修費など年100万円ほどの余裕資金を足すと、約1億円となる。ただし、全額自力で用意する必要はない。このうち6割強は、公的年金と退職金で賄うことができる。では残りをいかに自力で用意するか。日経マネー編集部では60歳までにおよそ「3000万円」の老後資金を自ら用意することを提案したい。

 とはいえ、冒頭に登場した老後難民予備軍たちは、公的年金に自力で上乗せできる額は1000万円未満、せいぜい2000万円弱。打つ手はないのか。

 やはり、老後の収支を改善する最大の源は「稼ぎ力」だ。永濱さんは、男性不況を生き抜くには「共働きを続ける、あるいは男性も女性中心のサービス産業に参入する」ことを勧める。またリクルートキャリアの海老原さんは、中高年のポスト不足のなかでは「管理職にならなくても、現場でしっかり実務を続ければ60歳以降も職場に居場所を確保できる」と説く。

 もしも持ち家なら、「住み替え」も選択肢となる。都心から郊外へ、地方都市へ。住み替えにより1000万〜2000万円の老後生活資金を獲得した例もある。売ることに抵抗があれば、貸した後により家賃の安いところで暮らす方法もある。

 高まる「老後難民」の足音――。まずは不安の正体を突き止めて、現実を知ることから始めたい。目標が定まれば知恵も出る。家計管理、投資運用、自宅資産の活用、さらには稼ぎ力のキープ。自分なりに老後の家計戦略を描くか否かで、老後の明暗が分かれる時代を迎えている。

『日経マネー』2013年1月号では、「目指せ!老後資金」と題して、老後資金の試算法、家計管理、投資運用、自宅をお金に変える方法、退職金の殖やし方、60歳以降の働き方など、老後資金づくりのさまざまな方法を紹介しています。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20121119/239586/?ST=print

【第2回】 2012年11月21日 岡村聡 [投資アドバイザー]
結婚を考えたら知っておきたい「3つの数字」

前回の連載では、「年収300万でも大丈夫!貯金習慣が身につく2つのコツ」についてお話をしました。本日のテーマは「結婚」。近年、未婚率の上昇や晩婚化などが進んでおりますが、その実態に踏み込んでいきます。ポイントは「希望年収」「未婚率」「共働き」です。

みんなそんなに
稼いでない!

「結婚に関するお金」について調べていくと、興味深いデータを見つけることができました。「結婚するタイミングとして最も多い30代前半の、男性の年収分布」と「女性が結婚相手の男性に求める希望年収」です。

【30代前半の男性の年収分布】

・300万円未満:29%
・300〜500万円:47%
・500〜700万円:19%
・700万円以上:5%

【女性が結婚相手の男性に求める希望年収】

・300万円未満:3%
・300〜500万円:32%
・500〜700万円:40%
・700万円以上:25%

 ※出典「民間給与実態統計調査」「ORICON career」

 7割近い未婚女性が、「年収500万円以上の男性」を結婚相手に希望していますが、該当する人は30代前半で4人に1人しか存在しません。さらに4人に1人の未婚女性は年収700万円以上を希望していますが、30代前半の該当者はわずか5%です。

女性の未婚率は、
この20年で2.5倍!

 こうした状況を反映するかのように、未婚率も右肩上がりで上昇しております。具体的には下記のような数値です。

【30代前半の男性の未婚率】

・1990年:33%
・2000年:43%
・2010年:47%

【30代前半の女性の未婚率】

・1990年:14%
・2000年:27%
・2010年:35%

 ※出典「国勢調査」

 2010年時点では、30代前半の男性の約2人に1人、女性の約3人に1人が未婚となっています。特に女性の未婚率は、この20年で約2.5倍に増えました。

 男女ともに未婚率が上がっているこの傾向には、もちろんお金以外のことも影響しているでしょうが、「結婚相手に求める条件が高すぎる」ことも主因の1つと考えていいでしょう。

夫婦2人の協力が
欠かせない!

 少し視点を変えて、実際に結婚した人たちを見てみましょう。ここにも面白いデータがあります。「専業主婦世帯数」と「共働き世帯数」の推移です。

【共働き世帯数】
・2001年:951万世帯
・2005年:988万世帯
・2010年:1012万世帯

【専業主婦世帯数】
・2001年:890万世帯
・2005年:863万世帯
・2010年:797万世帯

 ※出典「男女共同参画白書」

 まず言えるのは、「共働き世帯」が増え、「専業主婦世帯」が減ったことです。これもさまざまな要因があると思いますが、一番は「夫婦2人で協力して、お互いの目標とする生活を目指した」ということだと思います。

 以上、「希望年収」「未婚率」「共働き世帯」という3つの数字を見てきました。今後、結婚を考える際には、これらを参考にして下さい。

 女性であれば、「結婚適齢期の男性のリアルな年収を認識した上で、自分の望む生活を実現するための現実的な施策を考える」必要があるかと思います。

 男性であれば、「女性の希望年収を認識した上で、その年収を達成する方法を考える。もしできないときは、共働きを視野に入れて、夫婦2人で理想に近づける方法を考える」必要があるかと思います。

(次回は11月27日の予定です)

『「29歳貯金ゼロ!年収300万!このままで大丈夫か?」と思ったら読む本』刊行記念
〜ダイヤモンド著者セミナーのお知らせ〜
日 時 : 2013年1月23日(水)
時 刻 : 19時開演(18時30分開場) 20時30分終了予定
会 場 : 東京 ダイヤモンド社 本社ビル9階セミナールーム
住 所 : 東京都渋谷区神宮前6−12−17
料 金 : 入場無料(事前登録制)
講 師 : 岡村聡氏(著者)
定 員 : 60名(先着順)
主 催 : ダイヤモンド社
お問い合わせ先: ダイヤモンド社書籍編集局
TEL :03-5778-7294(担当中島)
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『「29歳貯金ゼロ!年収300万!このままで大丈夫か?」
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 スタートは29歳の誕生日。そこから定年の65歳を超え、退職後の生活までを追います。本の構成としては、「32歳、子どもが生まれる!」のような、人生の一大イベントごとに章をもうけ、そのときどきにやるべきことを詳しく解説する形をとります。

46判並製、264頁、定価(本体1300円+税)
http://diamond.jp/articles/print/28003

大富豪の「素敵なお金の使い方」教えます

『鳥学の100年 鳥に魅せられた人々』/『トマス・グラバーの生涯 大英帝国の周縁にて』

2012年11月21日(水)  ザ・絶賛エディターズ

【私が編集した本読んで下さい!】
『鳥学の100年 鳥に魅せられた人々』
担当:平凡社編集1部 大石範子
けっして学会用の本ではありません!


『鳥学の100年 鳥に魅せられた人々』
井田徹治著、日本鳥学会・山階鳥類研究所協力、平凡社
 ふつう、学会の100年史というような本は、企業の社史のように限定した人々に頒布する私家本に近いものが多いのですが、あえて一般の方に読んでいただけるようなものを出したい、というのが鳥学会の意向でした。

 そこで、通常考えられるように、学会員の専門家による分担執筆ではなく、一人の筆者を立てて全体を執筆してもらおうということになり、生物と環境問題に関して鋭い視点で執筆活動をされている著者にお願いすることにしました。さすがに新聞記者。インタビューにしても資料収集にしても手際のよいものでした。しかも鳥学そのものに関心のない人にとっても、面白く読めるようにうまくまとめていただきました。

日本の貴族学者はすごかった

 ここでの「面白く読める」ことの大きな要素に、鳥学会に集う人々の「変人ぶり」があると思われます。

 他の分野とは異なり、近代科学としての鳥学を率いたのは、ほとんどが当時の貴族階級の人々でした。変人といってもネガティブな意味ではなく、そこまでやるか!という感嘆のため息と称賛の意味が込められているのですが。

 鷹司公爵の家には大きな禽舎が何棟もあって、外国産の鳥を含め多くの鳥が飼われていました。小さな籠ではなく、大きなケージで飛びまわる鳥を観察することで、本当の姿がわかるからです。松平頼孝子爵も2000点を超える鳥の剥製標本を収集し、自宅内に標本館を建てました。そのためについに破産したということです。

 広大な邸内に鴨場があった黒田侯爵家では、さらに4200坪という大きな池のある鴨場を新たに羽田近くに建設し、ガンカモ類を1日に200羽も捕えていたとか。黒田長禮・長久父子の集めた鳥の標本は1万5000点にのぼるといいます。

 長久は著書の中で、「家庭もまあ鳥中心のようなもので、母も鳥の名をよく知っていて着物の図柄とし、私が描いた鳥の絵を一歳上の姉が刺繍するという具合で、鳥が家庭の中での共通の主題でした」と言っています。禽舎の鳥を襲うからといって、犬猫のようなペットは禁止されていたそうです。すごいご家庭です。

山階の鳥の王国

 山階芳麿王も、6000坪もの邸内で鳥を撃って標本にし、子供のころから誕生日プレゼントはいつも鳥の剥製と決まっていたとか。さらに興味深いことに、汽船を貸し切って小笠原諸島に旅した山階夫妻の写真を見ると、テーブルの上にアホウドリなどの標本が所狭しと並んでいて驚かされます。

 このとき、鳥島にいた2000羽ものアホウドリの姿を撮影した16ミリフィルムは、きわめて貴重なものになっています。そして山階邸内に、いまでいえば何億円もの費用をかけて鳥類標本館を作りあげ、大きな禽舎が30棟もあったといいます。

 「ブッシュにすむ鳥のためにはブッシュを生やし、林にすむ鳥のためにはそれと同じ環境を作って観察した」といいますから、やることが徹底しています。あつめた標本は3万点以上。それらと邸内の土地、数千点の書籍、有価証券などを寄付して山階鳥類研究所を作ったのです。

 しかし、第2次大戦がすべてを変えました。

 鷹司家の標本や資料はすべて失われ、黒田家のものも東京大空襲で一夜にして灰燼に帰したのです。山階邸では、禽舎は焼け落ちたものの、幸運にも標本館内部は無事で、それが今日につながる山階鳥類研究所の基本的な財産になっています。

 唯一の資産が研究所だけとなってしまった山階は、長い間、所長室のソファーに寝起きし、農作業をして自活し、ニワトリの卵を売ったりしながらも、けっして標本や書籍を手放すことはなかったといいます。

 特権階級の趣味といってしまえばそれまでですが、鷹司も黒田も山階も、豊かな財産があったからたまたまそれを鳥学に費やしたというのではなく、戦後の窮乏期も、そのあとも、同じ情熱で鳥学に邁進したところが、単なる金持ちの道楽ではないことを示しています。

狩猟の腕前

 それから気付いたことが一つあります。当時は、鳥類の標本を集めることと狩猟は密接につながっていたんですね。狩猟が上手でないと、よい標本採集ができなかったのです。

 今考えるととんでもないことのようですが、私が長期間、編集に関わった『世界大博物図鑑』は、標本をもとにして描かれた博物画を数多く扱った本で、もとの標本は当然、狩られたものだったわけです。そういう時代は大昔の話だと思っていましたが、ついこのあいだまで続けられていたわけです。

 狩猟がいけないというのではなく、そういう感覚が失われた今の時代のヤワな感じにあらためて向き合わされた気がしました。

冒険王、ハチスカ

 さらに、蜂須賀正氏侯爵がいます。以前、彼の著作『南の探検』の復刻版を手がけたことがあるので、蜂須賀の破天荒ぶりは承知していましたが、やはり鳥学研究において、それがいっそう強い光を放っているのを再発見した思いです。

 戦前、日本のお金持ちでは十指に入るといわれた莫大な財産のほとんどを、自らの探検・冒険に費やしたあげく、スキャンダルにまみれてついに爵位を返上し、50歳の若さで急死する彼の人生は、あまりに密度が濃くて、頭がくらくらする思いです。

 政治・経済学を学びに行ったケンブリッジ大学の卒業論文のテーマが「鳳凰」で、鳳凰をカンムリセイランだと指摘しているのは序の口としても、同じ鳥好きで同好の士であるロスチャイルド家当主には、中国産のシフゾウを譲ってくれればパンダを生け捕りにしてあげると持ちかけたり、日本で初めて個人所有の飛行機を操縦して首都の上空を飛んだため軍部にひどく睨まれたり……。

 フィリピン、アイスランド、エジプトなど世界各地に探検と標本収集の旅に出て、完璧なキングスイングリッシュを話す「ハチスカ」は欧米にもよく知られていたのです。絶滅鳥ドードーの研究でも世界的に知られた学者なのでした。

 熱海に築いた蜂須賀ヴィラといわれる別邸のプールには温泉が引かれ、大きな熱帯魚が泳いでいたと、蜂須賀の弟子としてその謦咳に接した中村司さんから伺ったこともあります。もしも蜂須賀があと10年寿命を保っていたら、もっと途轍もない成果を見せてくれたのではないでしょうか。彼の生涯は、その死も含めて謎に満ちている気がしてなりません。

他人に語れるエピソード満載

 本書は、以上のように全体の三分の一が「日本の鳥学の黎明期」について書かれているため、通常の歴史には語られないようなエピソードが満載です。

 それにつづいて、やはり鳥学の本ですから、ヤンバルクイナの発見当時のようす、アホウドリの繁殖地の復活、トキやコウノトリなどの保護増殖の現場など、時折新聞などでニュースになる話題についても、直接携わった人々に取材しています。日本の自然環境の問題が、空疎なありきたりの言い方ではなく、人の言葉として生き生きと語られています。

 さらに、ぜひお読みいただきたいのは、鳥の繁殖戦略の一つである「托卵」の話題です。托卵は学校の理科でも習うような誰でも知っている事柄ですが、その謎は深いです。子孫を増やし、生きのびることが生物の目的だとしても、その目的のためのあまりの技巧に驚倒することでしょう。

 ぜひ、タイトルの地味さにまどわされず、本書をお読みいただきたいと思います。ほかの人に語って聞かせたいような話題が満載ですから。

【そんな私が「やられた!」の1冊】
『トマス・グラバーの生涯 大英帝国の周縁にて』
マイケル・ガーデナー著、村里好俊、杉浦裕子訳、岩波書店
博物学の周縁


『トマス・グラバーの生涯 大英帝国の周縁にて』
マイケル・ガーデナー著、村里好俊、杉浦裕子訳、岩波書店
 日本鳥学会が発足したのは100年前の1912年ですが、こちらの本の主人公トマス・グラバーが日本で没したのはその前年、1911年のことでした。つまり鳥学会草創期の人々は、グラバーが東京で三菱財閥のために働いていた晩年と同じ時代を生き、おそらく青年期にはグラバーの名前くらいは聞いていたのかもしれません。

 トマス・グラバーは、幕末の日本にやってきたスコットランド人の貿易商、武器商人で、いまでは長崎の観光名所グラバー園や幕末の志士との関係で知られているくらいですが、私は「大英帝国の周縁にて」という副題にとても引かれました。それは「西洋博物学の周縁」のようにも受け取れます。

 あの世紀の前半、帝国の周縁で覇権を得ていたのは、なんといってもイギリス東インド会社でした。アジアや太平洋諸島などに進出し、資源の調査、開発、貿易を担っていた東インド会社には、必然的に大勢の生物学者や収集家が職を求めて集まり、彼らの調査研究の一端が博物学として結実したというのも事実ですから。

フォーチュンとグラバーは出会ったかも

 そして資源といえば植物や動物だった時代です。茶もアヘンも植物です。

 アヘン戦争のあと、縮小された東インド会社のあとを継いだ会社ジャーディン・マセソンに職を得たグラバーは、生物学には大して関心がなかったと思いますが、同時代のやはりスコットランド出身の大プラント・ハンター、ロバート・フォーチュンもほとんど同時期に日本に来ています。

 グラバーのほうが一世代若いですし、彼らが互いに面識があったとは聞きません。しかし、中国から決死の覚悟でチャノキを持ちだしてインドに移植したフォーチュンについての本を読んだばかりだったこともあり、私には、このもう一人のスコットランド人の日本での半生もまた、個人の枠を超えて、帝国の一翼を担う運命から逃れられないのだと思われました。

 倒幕派の亀山社中に武器を売り、薩摩や長州の青年をイギリスに密航させ、造船所を作り、高島炭鉱にかかわり、キリンビールを立ち上げ、三菱の顧問におさまり……、半世紀もの間、日本に生きたグラバーの数々の業績やエピソードをあげていけばきりがありません。本書は、その個々のエピソードを丹念に拾い集め並べただけでなく(それ自体、たまらなく面白いのですが)、大英帝国のまさに周縁に位置した日本の、世界史的な位置をも見せてくれるものでした。

蝶々夫人についても

 また、本書の著者がスコットランド人であるためか、『宝島』の作家ロバート・L.スチーブンソンについても言及されています。この人も、日本に行くことを願いながら、結局サモアで生涯を終えたスコットランド人です。

 さらに興味深いことに、本書はオペラ「蝶々夫人」についても1章を割いています。私自身、何度観てもストーリーに違和感を感じてしまうオペラですが、この物語のモデルをグラバーの日本女性との結婚になぞらえるという俗説を、著者はきっぱりと否定しています。その細部にわたるこだわりかたに、むしろ戸惑うほどです。なんと、オペラ好きにも読ませどころがある本でした。

大石 範子(おおいし・のりこ)
静岡県生まれ。東北大学、東京芸術大学卒業。製薬会社勤務の後、平凡社「アニマ」編集部で雑誌と『世界大博物図鑑』全7巻を担当。アニマ休刊後も荒俣宏氏の著作や生物関係の図鑑、写真集などの編集に携わる。『食材魚貝大百科』『ハワイアン・ガーデン』『日本のハゼ』『日本の外来生物』『日本の生物多様性』『東京湾の魚類』など。

ザ・絶賛エディターズ

版元の規模やジャンルを問わず、ビジネスパーソンにいろいろな意味で役に立つ本を作っている編集者の任意団体。参加希望の方はぜひ、日経ビジネスオンライン編集部までお電話、お手紙、メール、ツィッター、コメント欄などでご連絡ください。熱い絶賛の原稿とそれに値する本、お待ちしております。(本欄担当:Y&Y)


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