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労働需要はどこで生まれているか〜複雑に二極化している労働需要 非正規化一辺倒ではない
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/647.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 26 日 21:48:50: cT5Wxjlo3Xe3.
 

 
Economic Trends 経済関連レポート
労働需要はどこで生まれているか 発表日:2012年11月21日(水)
〜複雑に二極化している労働需要〜
第一生命経済研究所 経済調査部
担当 熊野英生(пF03-5221-5223)

有効求人数の推移をみると、必ずしも非正規労働だけではなく、職業別にみて医療・福祉・介護を中心にして「専門的・技術的な職業」の求人数が増えていることがわかる。しかし、こうした職種には、スキルの壁などの問題があり、ミスマッチが起こっている。もうひとつ、労働需要の変化にはIT化などの技術的要因で事務職などの中間的職種の需要が減退する特徴もある。これらの労働需要の変化を念頭に置くと、学卒者・非熟練者のスキル形成を助けないと、スキル獲得による賃金上昇は進みにくい。

必ずしも非正規化一辺倒ではない

デフレ克服のためには、国民の購買力が増えなくてはいけない。それがデフレ解消の本筋だ。国民の購買力を増やすには、就業者の賃金が上昇する前提条件として労働需要が強まる必要がある。職業安定所統計のデータを確認すると、有効求人数は2004〜2007年にかけて盛り上がり、リーマンショックを経て、再び回復する流れにある(図表1)。ここではリーマンショック後も、求人自体は増えていることに注目したい。
筆者が興味深く感じるのは、名目GDPの水準に比して、労働需要を反映した求人数が相対的に増え続けているということである(図表2)。この変化を読み解くと、1人当たり給与水準の低い仕事が増えていることを反映しているのかもしれない。本来、労働生産性は1人当たりの就業者が稼ぎ出す生産物(数量概念)で測るのが常識的手法であるが、そうではない理解ができる。名目GDPが増えずに労働需要が増えるのは、むしろ1人当たり報酬が絞られて、仕事のやり方をユニット化して大人数に分割されるのではないかと考える。つまり、非正規化の進行である。

そうした仮説の下、有効求人数の内訳を調べてみると、労働需要の非正規化が進んでいることは確かだが、必ずしもそうではない動きもあった。すなわち、必ずしも労働コストの単価が低くない職種でも需要が高まっている現象である。そのことを詳しく知るために、2001年から2011年にかけて、どういった職種の労働需要が増えたのかを確認してみると、求人増の大部分が「専門的・技術的職業」であった(図表3)。過去10年間の有効求人数の増加は、+306万人である。この内訳で顕著に伸びているのは、「専門的・技術的職業」の+273万人(全体の約9割)であった。この有効求人数を、パートを除く分類で確認すると、正社員を中心とする常用雇用者(除くパート)の10年間の増加数+138万人に対して、パート以外の「専門的・技術的職業」は+171万人である。正社員では、製造業の求人減が大きく▲51万人、小売など販売の職業が▲19万人となる一方で、サービスの職業+29万人、専門的・技術的職業が+138万人も増えているのである。労働需要の変化は、非正規に労働需要が流れて労働単価が切り下がるだけではなく、技能・スキルを必要とする別の労働需要増加の流れもあることが確認できた。

需給がタイト化しても賃金が上がらない

スキルのある労働需要が増えるということで、ひとつの疑問が浮かんでくる。なぜ、就業者たちは、賃金の高い専門的・技術的職業の方に労働シフトをしないのだろうかという疑問である。直感的に、給料の高い仕事に人々が移動していけば、結果的に平均賃金は上昇することになる。デフレ解消策として、賃金の高い仕事を次々に生み出せば、労働移動が起こって、国民の購買力も高まるという考え方もできる。
しかし、話がそううまくは運ばない。これは、スキルの壁があるからだ。例えば、自分が求人広告の内容をみて、高賃金の仕事に就こうとしても、それが可能ではないことを想定すればよい。求人広告の職種が要求しているスキルを自分が満たしていなければ、転職・再就職して高賃金を得ることはできない。これは、労働市場の供給サイドの要因によって、ミスマッチが生じている現象である。
専門的・技術的職業の有効求人(除くパート)の内訳をみると、10年間で最も増えているのは、「保健師、助産師、看護師」、「社会福祉専門の職業」、「その他の保健医療の職業」、「医療技師」が目立つ。ここで分かるのは、専門的・技術的職業と言っても、医療・福祉・介護に関連する労働であり、日本の高齢化に伴って高まっている労働需要であるという理解ができる。

医療・福祉・介護に関して言えば、以前から、それらの労働需要が高まったときに、なかなか賃金上昇に結びつかないという問題もある。しかも、介護分野のように新しく制度ができた分野ほど、賃金上昇が抑制的になっているという問題もある。

他の職種を含めて、労働需要(求人数)が増加した職種の平均年収を調べてみると、医療・福祉・介護以外の「接客・給仕の職業」、「保安の職業」でもあまり高い給与が提示されていない(図表4)。人々は、労働需要が高まり応じて、別の職場に移ったとしても、多くの就業者は次の仕事で得られた給与水準をなかなか高められないのだろう。接客・給仕・保安などの職業では、労働条件が定型化されていて、賃金水準が低く抑えられている。さらに、賃金水準が低いから職場に労働力が定着しにくく、離職者が多くなって労働力不足が生じやすいから、企業側も求人を増やすという事情も働く。
まとめると、労働需要が高まっても平均賃金が上昇しない理由は、(1)スキルの壁があって労働供給に制約がある、(2)賃金水準が低く抑えられた職種だから、人が集めにくいという因果が働き、労働力不足が強まって労働需要が増えるようにみえる、という2つがあると考えられる。
隠れた構造変化
労働需要の構造変化をみて、賃金が上がらない背景を探ると、技術的な要因もあると考えられる。「専門的、技術的職業」が相対的に労働需要を底上げしていく中で、「生産工程・労務の職業」や「販売の職業」、「事務職」、「管理職」の求人が減退していることである(図表5、6)。
これらは、@製造業の省力化・空洞化、A消費デフレ、Bホワイトカラー不況、によってもたらされているとみられる。@の製造業の労働需要が減退していることには説明を要しないであろう。A消費デフレとは、小売の販売単価が低下するとともに、小売業での働き手も人件費削減の要請が強まるという作用である。

例えば、小売・サービス業は非正規雇用者の比率が高い。販売数量が減ってくると、企業は固定費負担を軽減するために、労働単価を引き下げなくてはならなくなる。
Bのホワイトカラー不況は、IT化も関係していて、事務サポーターの削減、あるいは事務職を管理する職業の削減につながっている。過去10〜20年間にホワイトカラーの働き方が激変していることは、中高年の誰もが口にする変化である。IT化には、中長期的には労働投入量の削減効果が働き、事業者にはそれが恩恵になる。逆説的に言えば、医療・福祉・介護分野は、こうしたITによる労働代替がこれまでのところは働きにくかったために、依然として高齢化による労働需要の底上げ効果が色濃く表れていると言える。
ここ数年で起こっている労働の質の変化について考えると、大雑把に熟練労働と非熟練労働に分けて考えた場合、熟練労働では、
(1)IT化によって節約される労働需要(↓)、
(2)IT化されずに増える労働需要(↑)、
(3)ITを使いこなすことで増える労働(↑)、の3つが存在する。
一方、非熟練労働では、(1)体力的に消耗する重労働の仕事と、(2)単純化されて代替が利きやすい軽作業の仕事に分けられる。両者には、
(1) 前者の重労働の労働需要は減る(↓)
(2) 後者の軽作業は仕事のユニット化、人件費削減のニーズと相まって需要が増える(↑)、
動きがあるとみられる。ただし、後者の仕事は、労働需給が緩和して、1人当たりの短時間化、賃金抑制の作用が働くことになる。これらの変化をひとまとめにすると、中間の労働需要が技術変化によって薄くなっていくかたちの二極化という見方ができる(図表7)。
賃金上昇のためには
最後に、賃金上昇のためには何が必要なのだろうか。ひとつは、医療・福祉・介護の分野で、事業者の事業収益を増やすようにして、「専門的・技術的な職業」の人々のスキルが差別化されて、スキルの度合いによって報酬が増えるようにすることが必要であろう。医療の分野では、診療報酬制度の下で、価格競争が制約されているが、仔細にみてみると、健康保険制度が適用されないエリアに成長分野が存在する。健康食品、サプリメント、美容、ダイエットなどでは、様々なビジネスチャンスが開花している。
もうひとつは、非熟練者が、スキルを身につける場が少ないことである。通説では、日本企業は新卒一括採用で学卒者に限定して、企業特殊的なスキルを長い期間をかけて修得させて、熟練労働需要を満たすとされる。こうしたスキル形成のあり方では、新卒一括採用枠に入れなかったり、途中退出した人は、良質の教育を受けられないことになる。大学や専門学校が、企業のスキル形成を代替するような人材を雇用する方法や、若年労働者の技能修得をビジネスにする事業者が勃興するという方法もある。おそらく、スキルを必要とする労働需要で、人手不足が起こっていることは、マーケット・メカニズムだけに任せておくと日本経済の建て直しに間に合わない可能性がある。そうした部分にはある程度の政策的介入が許されるはずである。

http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/kuma/pdf/k_1211g.pdf  

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コメント
 
01. 2012年11月28日 05:14:13 : B5offegeiY
阿修羅さんへ

権利と義務のお話
昨今の「声のでかい人々」は権利ばかり主張するけど、権利には義務が、義務には権利が付随するって解っていないようです。
例えば、国民には「納税の義務」があります。
当然、その反対側にいる人たち(まあ、政府や自治体ね)は、「徴税権」があると言えます。
しかし、これだけではないのです。
というのも、税金を奪る権利には、国民に対して「税金を収められるようにする義務」があるのです。
逆に国民には、「税金を収められるようにさせる権利=雇用などを要求する権利」があるわけです。
これはすべて、真・偽・裏・対偶の関係です。
世の「権利権利」と言う人々は、ほとんどが「義務を果たして」いません。
政府などが「義務義務」と言いますが、反対にある「権利を保護して」はいません。
ここから見てみると、生存権に保証される「生活保護」は、それに付随する「雇用を保証する義務」や「雇用を求める権利」、
「生活を保護する義務」が蔑ろにされているのです。
生活保護を切り下げる前にしなければならないのは、「雇用を保証する」ことです。
現在、有効求人倍率はすべての人に職が割り当てられる1(100%)を下回っています。
(※さらには、この有効求人倍率は「騙し」が入っています。)
この状況を改善して職を与えられる状況でない限り、生活保護を切り下げる権限は「ありません」。
で、雇用を創出するためにはどうするか?ですけど、景気が悪いので雇用がない、
売るものは余っているのに買う金がない、買う金がない人は職もなく物も持っていない、ので、
最初に「消費を増やせるようにする」必要があります。
そのためには「バラ撒き」(ただし金持ちには回らないようにする)が非常に有効です。
消費が増えれば景気が改善され、雇用も徐々に増えていきます。
……ってこれぐらい、ちょっと考えただけでも解るよね。
これが解らない経済学者って「アホ」でしょ。

※:
まず職を探すのを諦めてしまった人は「求職者」から外されます。
あまりに景気が悪く、「続けられない仕事」ばかりで、諦めてしまう人が非常に多いのです。
また、求人を出す企業も、そのポーズだけで、実際には雇いません。
雇っても「続かけられない仕事」を出すので、当たり前ですが、研修期間で辞めてしまうように仕向けているのです。
職安が求人があるように見せるために「企業に頼んで求人を出してもらっている」のです。
このような「嘘」の数字ですら、「求人1.0」を達成できていない現実があります。


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