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ユーロ圏債務危機、世界経済見通しにとって最大の脅威 スペイン緊縮策後退せず? 英GDP前期比1%増 アジア中銀の動向
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/662.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 27 日 20:49:52: cT5Wxjlo3Xe3.
 

(回答先: 報道されない首相の発言とアベノミクス  投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 27 日 20:27:38)

ユーロ圏債務危機、世界経済見通しにとって最大の脅威 
2012年 11月 27日 19:57 JST 
トップニュース
OECD経済見通し、13年世界GDP伸び率を3.4%に引き下げ
東芝、火力・水力など発電システム事業の国内拠点に新棟建設
ギリシャ首相、ユーロ圏とIMFの債務削減策合意を歓迎
ギリシャ債務削減で株価回復、上値追いには慎重な声

[パリ 27日 ロイター] 経済協力開発機構(OECD)は27日、ユーロ圏債務危機が世界経済にとって最大の脅威だとして、世界全体の経済成長率見通しを引き下げた。

OECDは各中央銀行に対し、政治家が債務危機に対して信用できる答えを見つけられなければ、一段の例外的な金融緩和に備えるように求めた。

世界全体の経済成長率見通しについて、OECDは2012年が2.9%、2013年が3.4%になると予想。5月時点の従来予想はそれぞれ3.4%、4.2%だったが、大幅に下方修正した。

ユーロ圏は2年連続のマイナス成長に直面しており、米国は実質増税と強制的な歳出削減が重なる「財政の崖」をめぐり、議会が合意できなければ景気後退のリスクがある。

合意に至ったと仮定した場合、OECDは米国の来年の国内総生産(GDP)伸び率は2.0%になると見込み、5月時点の2.6%から下方修正した。

ユーロ圏の域内総生産(GDP)伸び率見通しについても下方修正し、今年が0.4%のマイナス成長、来年も0.1%のマイナス成長を見込む。2014年には1.3%のプラス成長に転じる見通し。

OECDは、政策当局者が債務危機の対応を誤れば、欧州通貨同盟の内部におけるファイナンス条件の違いが同盟の崩壊を招く恐れがある、と警告した。

世界経済の見通しが弱いため、OECDは各政府に対し、緊縮策に熱心すぎることがないように求めたほか、一時的に景気を刺激するためにドイツや中国が財政出動を検討することを提唱した。
 

[パリ 27日 ロイター] 経済協力開発機構(OECD)は27日、最新の経済見通しを発表した。2013年の世界全体の国内総生産(GDP)伸び率について、5月時点の予想である4.2%から3.4%に下方修正した。


関連ニュース

9月のOECD景気先行指数は横ばい、米中の指数に安定化の兆し 2012年11月12日
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アジア経済に多くの下振れリスク、一段の金融緩和も=IMF報告 2012年10月12日
韓国中銀が政策金利を引き下げ、成長見通しを大幅下方修正 2012年10月11日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AQ05J20121127?sp=true

スペイン緊縮策、カタルーニャ州議会選も後退の可能性薄=アナリスト
2012年 11月 27日 19:43 JST
[マドリード 26日 ロイター] スペイン・カタルーニャ州議会選で、スペインからの独立を主張する政党が勝利したことは、ラホイ首相にとって政治的な頭痛の種だが、多額の債務を抱える同州にとって、中央政府からの支援が生命線となっているため、今回の選挙結果からスペイン政府の緊縮政策が頓挫する可能性は低い。

独立派で議会第1党の「カタルーニャ集中と統一(CiU)」は議席数を減らしたため、予算や法律の議会通過は他の政党との連携が必要となる。

第2党の独立派、左派共和党(ERC)は、CiUの党首も務めるマス・カタルーニャ州首相が計画している財政赤字削減に向けた歳出削減の阻止を試みることもできるが、スペイン政府による同州への支援が今年に入って既に2回実施されていることを踏まえると、難しいと考えられる。

ノムラのSilvio Peruzzo氏は、カタルーニャ州が中央政府から引き続き支援を受けていることをから、再度の交渉余地は小さいとの見方を示した。

また、独立へ向けた動きが完全になくなることは考えにくいが、CiUが議席数を減らしたことで、独立へ向けた機運は後退し、国民投票を求める声もしばらくは聞かれなくなるとした。

バークレイズのエコノミスト、フィリップ・グディン氏は「今回の州議会選は金融市場にとってそれほど悪い結果ではなく、財政緊縮策やスペインの全面支援の申請に再び注目が集まる」と述べ、投資家にとってはスペインの来年の財政状況が大きな材料になるとした。

カタルーニャ州はスペイン経済の5分の1を占めているが、スペイン17州のなかで財政赤字が最大となり、資本市場からの資金調達ができなくなっている。

ギリシャ銀行株が急落、国債買い戻し案を嫌気=欧州株式市場
2012年 11月 27日 20:00 JST
[アテネ 27日 ロイター] 27日のギリシャ株式市場で銀行株.FTATBNKが10%以上急落している。ユーロ圏財務相会合でギリシャの債務圧縮の一環としてギリシャ国債をディスカウント価格で買い戻す方針が決まったことが嫌気されている。

買い戻し価格は額面の35%前後と、市場の期待を下回る可能性がある。

ギリシャの銀行はギリシャ国債約150億ユーロを保有している。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AQ05H20121127

英7−9月GDP改定:前期比1%増、五輪効果で景気後退脱却 

  11月27日(ブルームバーグ):英経済 は7−9月(第3四半期)に2007年以来の高成長となった。個人消費と輸出が寄与した。ロンドン夏季五輪の効果に加え、英女王即位60周年記念の祝日に関連した落ち込みからの持ち直しで、家計支出は2年余りで最大の上げを記録した。
英政府統計局(ONS)が27日発表した第3四半期の国内総生産(GDP)改定値(季節調整済み)は前期比1%増と、10月25日公表の速報値と一致した。ブルームバーグが事前調査の対象としたエコノミスト33人の予想でも速報値から変わらずが見込まれていた。この結果、英経済はリセッション(景気後退)から脱却した。前年同期比では0.1%減と、速報値の横ばいから下方修正された。
原題:U.K. Trade, Consumer Spending Drive 1% Third-Quarter GDPGrowth(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Scott Hamilton shamilton8@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Craig Stirling cstirling1@bloomberg.net
更新日時: 2012/11/27 18:47 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-ME545G6TTDTW01.html

焦点:英中銀新総裁となるカーニー氏、金融政策では敏捷な動きに期待
2012年 11月 27日 20:25 JST
[トロント 27日 ロイター] イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のキング総裁の後任に任命されたカナダ銀行(中央銀行)のマーク・カーニー総裁は、銀行に対しては厳しい姿勢で臨むことが見込まれ、金融政策ではここ最近のタカ派的な発言が示唆するよりも敏捷な動きが期待できる。

カーニー総裁は収益性が損なわれてもなお、銀行のリスクを低下させるための取り組みを進めたことで知られる。規制に対するカーニー総裁の姿勢について、ピーターソン国際経済研究所でワシントンを拠点とするシニアフェロー、エドウィン・トルーマン氏は、自由裁量の全くない厳しい、もしくは単にもろい統制ではなく、ある程度の自由裁量を持たせた厳しい統制だと指摘した。

カーニー総裁は金融安定理事会(FSB)の議長として、銀行に対する新たな規制導入に向けた取り組みを率いた。英国では銀行業界の規制および監督権限は金融サービス機構(FSA)の解体に伴い、来年にはイングランド銀が引き継ぐことになる。

カーニー総裁といえば、米JPモルガン・チェース(JPM.N)のジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)との昨年のやり取りが、英国銀行業界の記憶に残っていくことになるだろう。

非公開で行われた会合の参加者の1人によると、ダイモンCEOは将来的な危機に対するバッファーとして追加資本を銀行が準備する要求について「ばかげている」と酷評。これに対してカーニー総裁は規制の変更は金融危機に対する「妥当な」対応だと述べ、明らかに憤った様子で部屋を後にしたという。

新たな銀行規制「バーゼルIII」導入の必要性について、これまでのところカーニー総裁のスタンスに揺らぎは見られない。つい先月にも、景気減速からの防衛策として世界的な銀行の改革の手を緩める、もしくは遅らせるべきとの考え方が「非現実的だ」と述べたことが引用されている。

TDバンク・ファイナンシャル・グループの副首席エコノミスト、Derek Burleton氏は「サブプライムローン問題で生じた被害を繰り返さないということを保証するためには変更が必要だということを明確にしてきた。その姿勢はロンドンに行っても貫くだろう」と述べた。

<金融政策での柔軟性>

金融政策をめぐっては、過去の実績を見る限り、カーニー総裁は緩和あるいは引き締めバイアスに傾倒するというよりは、柔軟に対応する可能性が高い。

今年のカーニー総裁発言は、タカ派色がにじんでいた。カナダ銀行は4月、7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の中で唯一利上げに言及。金融危機後も、引き締めをG7の中でいち早く実施した。2010年には政策金利を3度にわたって引き上げている。

ただしアナリストは、カーニー総裁の政策が総じて実際に則しており、状況が整えば方向性を巧みに転換すると指摘している。経済の世界的な逆風に直面する中、カーニー総裁は先月には中銀の引き締め姿勢を後退させ、利上げが比較的差し迫ったものではない、と述べていた。

BMOキャピタル・マーケッツの副首席エコノミスト、Doug Porter氏は「タカ派的な傾向が明らかだとは思えない。カナダ中銀がタカ派にバイアスがかかっているということはカーニー氏の見方というよりは、潜在的な経済の状況を反映している」と述べた。

イングランド銀とは異なり、カーニー総裁は量的緩和策を実施しないことを決めた。これはカナダの景気がそれを正当化するほどに減速しなかったことが背景にある。イングランド銀は3750億ポンド(6000億ドル)規模の資産買い入れプログラムを実施している。

カナダ中銀はカーニー総裁の下、長期的な低金利へのコミットメントを表明する時間軸政策の導入で先鞭をつけたが、イングランド銀はこの手法をこれまで拒否している。

カナダ中銀は2009年、条件付きながら政策金利を翌年半ばまで過去最低の0.25%で据え置く姿勢を示した。米連邦準備理事会(FRB)もそれ以降、この手法を用いるようになった。

英国の景気動向を踏まえると、カーニー総裁はそのような画期的な手法を導入する必要があるかもしれない。カナダのMDフィジシャン・サービスのウィリアム・ホートン最高投資責任者(CIO)はカーニー氏がこの職務で発揮できる強みは、タカ派かハト派かといった理論一辺倒にならず、状況を判断し、適宜順応できることだと述べた。

(Jeffrey Hodgson記者;翻訳 青山敦子;編集 関佐喜子)
英中銀総裁後任人事:識者はこうみる 2012年11月27日
英中銀次期総裁にカナダ中銀のカーニー総裁=オズボーン英財務相 2012年11月27日
英銀行規制改革構想、対象の高リスク取引明確に定義を=中銀総裁 2012年11月23日
英経済の行方、ユーロ圏情勢に左右される=キング中銀総裁 2012年9月21日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE8AQ05Z20121127?sp=true


2012年11月27日
第38回 相場を牽引した主役プレーヤーを探るA〜アジア中銀の動向

【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

先週、相場を牽引した主役プレーヤーを探ることで次の展開を予測することもできるとして、IMM通貨先物ポジションから投機筋のポジションがこの相場の主役となって円売りを仕掛けているのだとすれば、彼らが買戻しに動いた時がこの相場の一旦の終焉となる可能性もある、という内容のコラムを書きました。しかし、これもこの相場の主役が投機筋だったなら、です。他にこの相場を作り上げているプレーヤーがいるとするならば話はまた違ってきます。

仕事柄マーケット関係者の方とお話しする機会も度々あるのですが、先日耳にしたのが、この相場「アジアの中央銀行の円売り」も入っているのではないかという指摘。もしこれが事実ならば、ドル円相場は本格的に円安トレンドに入っているのかもしれません。というのはアジア中央銀行は投機筋のように短期的な値幅を取るようなポジションを取りません。積極的に利益を追求するために外貨買いするのではなく、どちらかというと価値の目減りを避けるためにシフトするといったオペレーションをするからです。

世界はこの景気後退局面で、自国通貨を安くすることで輸出競争力を高める政策を取っています。その最たる例が輸出倍増計画を掲げたアメリカですが、アメリカの取ってきたドル安政策に対抗して、ドル安のせいで自国通貨が高くなるのを防ぐためにアジア諸国の中央銀行は外為市場で自国通貨を売ってドル買い介入を実施しきました。日本も介入して円高を阻止する局面もありましたね。介入でドル買いし自国通貨を売るオペレーションを続けてきたことで中国、韓国、東南アジアなどの中銀はドルの持ち高が増加していきます。外貨準備にドルが増えていくのに、ドル安政策を取り続けてきたドルの価値は下がり続けていくわけですから、外貨準備は目減りしていってしまいます。そこで、中国、韓国、東南アジアなどのアジア中銀は、ドルから価値が下がらない円や豪ドルに持ち高をシフトしてきました。これが近年の豪ドル高、円高の大きな要因ともなっていたという側面もあります。「円はパーキング通貨」であった、というのは私の尊敬するディーラーの言葉ですが、ドルもユーロも信用できない中で、彼らは外貨準備高を取りあえずドルやユーロよりマシだとして円に換える作業を行ってきたのです。IMFによると、今年6月末時点で内訳が判明している外貨準備に占めるドルの割合は61.9%と、3月末の62.1%から縮小、一方で円の占める割合は3.8%で、3月末の3.6%から上昇しています。また世界最大の3兆2900億ドルの外貨準備を抱える中国は、円資産の保有を増加させており、8月に日本の短期債を過去最大となる8590億円買い越したほか、ロンドン経由でも対日証券投資を進めている。中国の対日証券投資残高は昨年1年間に7兆6873億円増加し、2011年末に21兆5233億円に達しました。

こうして円買いのポジションを積み上げてきたアジア中銀が、今回の野田・安倍ショック円安を機に、円にパーキングしていたポジションをひっくり返して売りに転じているというのです。つまり、円がこれまでのような安全資産ではなくなったと判断したということであり、また、これまで買っていたものを売ることで円安が進行しているのだとするならば、手仕舞いによる反転は起こらないということであり、今後考えられる円高圧力は極めて低いということになるのです。

これはまだ市場の噂にすぎず、この円安相場を作っている本当の主役が誰なのかは後になってみなければわかりません。短期筋による円売りの影響も大きいと思っています。しかし、短期筋が利食ってしまった後にも、相場が大きく水準を切り下げることがないのだとするならば、アジア中銀が円を信用できる資産として捉えていない、構造的に円は買われる通貨ではなくなったとみることができます。だとするならば、このドル円相場は本格的トレンドとなる可能性が高く、押し目を買って90円、100円を目指すことになるものと思っています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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@hirokoFR

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http://lounge.monex.co.jp/pro/special2/2012/11/27.html  

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01. 2012年12月17日 11:12:28 : Pj82T22SRI
モンティ辞任表明で見えた真実

2012年12月17日(月)  FINANCIAL TIMES

イタリアのモンティ首相が辞任を表明、欧州債務危機が再燃する懸念が浮上している。経済学者、実務家として評価が高かった首相だが、緊縮策でイタリア経済はむしろ疲弊。第2のギリシャにもなりかねない中、イタリアには抜本的解決策を示せる指導者が不可欠だ。

 マリオ・モンティ伊首相が12月8日、月内にも辞任する意向を表明*1したことで、2つの問題が浮き彫りになった。

*1=モンティ首相は、議会の最大勢力である自由国民(PDL、ベルルスコーニ前首相が党首)が7日、モンティ内閣への支持を撤回したことから安定的な政権運営をできないと判断、翌8日に年内に辞任するとナポリターノ大統領に伝えた。モンティ氏は昨年11月、相次ぐスキャンダルやイタリアの10年物国債の利回りが危険水域の7%を突破するなど信用不安への対応の遅れを厳しく批判され辞任に追い込まれたベルルスコーニ首相の後を受け、緊急事態として首相に指名された

 イタリアの(閣僚に政治家が1人もおらず、有識者や銀行経営者など経済分野の専門家からなる実務型内閣である)現政権の運営に政治という要素が入り込んできたこと、そして欧州の危機が再び悪化し始めたということだ。

変わったのは「経済の悪化」だけ

 筆者はモンティ氏に対して、欧州委員及び欧州の諸問題に関する賢明な批評家として常に尊敬の念を抱いてきた。だが、イタリア政府の最高指導者としての実績となると、一般に評価されているほどは評価していない。

 モンティ首相にはこれまで、ある種、手放しの称賛が送られてきた。それは、「イタリアが直面する問題は、政治を介在させずに改革を2〜3断行し、財政緊縮策を次々実行すれば解決できるはず」との見方が前提となっていた。選挙で選ばれた政治家ではなく、実務家からなる政府だけがこうした政策を実現できるというのが、イタリアのコンセンサスとなっていた。

 このモンティマジックは長く機能するかに見えた(筆者が予想するよりはずっと長く機能した)。好材料に飢えていた投資家が「魔法」を信じたがったおかげで、彼が昨年11月に首相に就任して以降、イタリアの10年物国債の利回りは2%ほど低下した。

 だが、モンティ政権はいわばバブルでしかなかった。バブルが続いている間は、投資家は楽観的でいられたが、バブルはしぼんでしまった。

 つまり、イタリア国民と外国人投資家は、この1年でイタリアは経済が深刻な不況に陥ったこと以外、ほぼ何も変わっていないことに早晩、気づくだろう。


 イタリアには今、解決すべき問題が2つある。いずれも極めて政治的な問題で、もはや実務型内閣で解決できる範疇の問題ではない。

 第1の問題は、緊縮財政路線を即刻、反転させることだ。これはモンティ首相がやってきたことをご破算にすることを意味する。

 公的債務を減らし、成長を鈍化させたことで債務のGDP(国内総生産)比率は短期間に上昇した。ただ、長期的に見てもこれが大幅に低下することはなさそうだ。

 次々に緊縮策を実施してきた結果、来年、その悲惨な影響が様々な統計上の指標として表れてくるに従い、イタリアの債務の持続可能性はむしろ悪化したことが鮮明になるはずだ。

 2013年度の予算が執行される前から、既にその影響は出てきている。

 今月、イタリアの家計の税負担は新たな固定資産税制の導入を受けてほぼ2倍に膨らみ、早くも小売売上高が冷え込むなど、クリスマス商戦の序盤から甚大な影響が出始めている。サービス業界の企業の団体である商業者連盟(Confcommercio)は、個人消費が13%落ち込むと予測している。

選挙を経ていない首相の限界

 第2の取り組むべき問題は、アンゲラ・メルケル独首相と対峙することだ。モンティ首相はこの点には消極的だったし、その意思があったとしても(選挙を経て首相に就任したわけではない)同氏には無理というものだ。

 6月の欧州連合(EU)首脳会議でモンティ氏は多少のスタンドプレーを見せた*2が、重要な一点においてメルケル首相と対立することはしなかった。

*2=同会議で、この会議の唯一の成果とされた「成長戦略」を採択する直前に、イタリア、スペインの国債利回りの高騰を止める緊急策を取らなければ成長戦略に署名しないという強硬手段に訴え、欧州安定メカニズム(ESM)を通じた銀行への直接資本注入を勝ち取った

 つまり、何らかの形で債務の共通化を図る、すなわち「ユーロ共同債」を創設しない限り、債務のGDP比が130%に達し、実質的にゼロ成長の国が、ユーロ圏にとどまって永久に債務の借り換えを続けることなど不可能だという点について、メルケル首相と対立することを避けたのだ。

 選挙を経て国民に選ばれた指導者でなければドイツに選択を迫ることはできない。ドイツが「ノー」と回答してきた時に、実務家の首相では「ならばユーロを脱退する」と啖呵を切ることもできなければ、その発言に信頼性を持たせることも難しい。

 「ユーロ共同債の創設か、イタリアのユーロ圏離脱かとの選択を迫られたら、ドイツはどうすると思うか」とよく聞かれる。筆者は、その選択に迫られたらドイツが先に譲歩すると見ている。

 モンティ首相がドイツで支持が高かったのは、モンティバブルとモンティ氏が敷く緊縮路線が、債務処理と複数の構造的な制度改革に関する難しい決断は来年9月のドイツの総選挙以降に先延ばししたいという、メルケル首相の思惑には都合がよかったからだ。

誰が次の首相になるべきか

 ではイタリアに必要とされる指導者は存在するのだろうか。12月2日に民主党党首に選出されたピエルルイジ・ベルサニ氏は、明らかにその器ではない。彼はモンティ首相の緊縮路線を支持する一方で、構造改革には消極的な中道左派勢力の保守派。緊縮路線と構造改革反対は最悪の組み合わせだ。

 首相候補を決める予備選挙で決選投票の結果、ベルサニ氏に敗れたフィレンツェ市の若き市長マッテオ・レンツィ氏は、イタリア政界に自信を取り戻すことができる最有力候補だったかもしれない。

 だがベルサニ氏が勝利し、同氏が所属する民主党が世論調査で2位以下を引き離して最も高い支持を集めている以上、既得権益層はモンティ氏の次に間違いのない堅実な人物で、バブルを再び膨らませられる(=イタリアの状況をよく見せる)期待の人物としてベルサニ氏を盛り立てるに違いない。

 もう1つの可能性は、中道勢力を結集するための選挙の顔としてモンティ氏を担ぎ上げ、続投させることだ。

 (立候補の意思を示した)シルビオ・ベルルスコーニ前首相はどうか。ベルルスコーニ氏が政治の表舞台に帰ってきたことが、そもそもモンティ氏の辞意を早めた原因だ*3。だが、ベルルスコーニ氏が首相になるとは考えにくい。右派の間でこそ依然としてある程度の支持を握るものの、イタリアの国民はベルルスコーニ氏にはもはやうんざりしているからだ。

*3=ベルルスコーニ氏は一時、モンティ首相の続投に理解を示していたが、10月下旬に脱税で有罪判決を受けた後は態度を変え、緊縮策を進めるモンティ政権を批判、8日には来春の総選挙にPDLの首相候補として立候補する考えを示した

 ベルルスコーニ氏は最後の任期中は全く役に立たず、笑い者になっていたが、首相辞任後に示したイタリアの問題に関する分析は的を射ている。

 ベルルスコーニ氏は、イタリアはユーロ圏の中で新たな協定を結ぶ必要があり、ユーロ圏からの離脱すらタブー視すべきではないと訴えている。緊縮策は機能していないとも何度も発言している。ベルルスコーニ氏は在任中にこそこう発言すべきだった。

 選挙結果を一層複雑にするのが、反ユーロを旗印に掲げるコメディアンのベッペ・グリッロ氏が率いる「5つ星運動」の存在だ。「5つ星運動」は世論調査で2位を堅持している。

 イタリアにとって最善の帰結は、ユーロ圏とイタリアがどんな選択をすべきか明確な図を描いたうえで、イタリアの未来という問題を前面に押し出すことのできる政治主導者が現れることだ。でなければ、イタリアはギリシャと同じ命運をたどるリスクがある。ギリシャは似た政策を追求し、その結果、選択肢を失ったのだから。

Wolfagang Münchau
(©Financial Times, Ltd. 2012 Dec. 9)

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欧州の再生可能エネルギー政策、岐路に 「デザーテック」にも暗雲
2012年12月17日(月)  大竹 剛


 温暖化対策で世界をリードしてきた欧州が、再生可能エネルギー政策で岐路に立たされている。
 今年4月、太陽光パネル大手だった独Qセルズが破綻、風力発電機で世界最大のヴェスタス・ウィンド・システムズ(デンマーク)も経営難に陥り、10月には独シーメンスも太陽光・熱事業からの撤退を発表した。
 欧州メーカーが相次ぎ苦境に直面しているのは、補助金バブルが弾けたからだ。スペインでは、フィード・イン・タリフ(FIT)と呼ばれる電力買い取り制度などの補助金で急増した損失が全政府債務の約3%に相当する240億ユーロ(約2兆4000億円)に達した。そのため同政府は今年1月から、FITによる新規プロジェクトの受け付けを一時中止している。
 スペインで補助金が増えた背景としては、ガス火力発電所などの建設に対する財政支援も無視できない。ピレネー山脈に阻まれて欧州大陸に広がる送電網に十分に接続されていないため、風が止まり太陽も陰った時に備えて、国内に再生エネルギーの発電容量とほぼ同規模のバックアップ電源を確保する必要があった。
 脱原発を宣言したドイツも困難に直面している。ドイツは既に、再生エネルギーで電力供給の約25%を賄っており、2050年までにその比率を8割に引き上げる目標を掲げている。
 この“再生エネの優等生”であるドイツが、皮肉にも欧州全体の電力の安定供給を脅かしている。独国内の南北を結ぶ送電設備が不十分なために、ポーランドやチェコなど周辺国を経由して電力を送る事態に陥っているのだ。天候の変化で突然、ドイツの発電量が増えて大量の電力が周辺国に送り出されると、周辺国では送電網が不安定となり、最悪の場合、停電の危険すらある。
「砂漠のソーラー」にも悪影響及ぶ

英国で建設が進む世界最大の洋上風力発電所「ロンドンアレイ」
 ドイツは今後、天候に応じて国内の各地域間で電力を柔軟に融通できる送電網を構築すべく投資を拡大しなければならない。それは電力料金の上昇を招く。実際、送電事業者は、再生エネルギーで作られた電力に対する賦課金の値上げを決めた。既に欧州連合(EU)で最も高い水準にあるドイツの電力料金は、来年から平均世帯で年間で約60ユーロ(約6000円)も上昇する。
 太陽光関連メーカーの不振や各国の財政難は、欧州が主導してきた巨大プロジェクト「デザーテック」の先行きも危うくしている。デザーテックは、サハラ砂漠に巨大太陽光発電所を建設し、地中海を越えて欧州に電力を供給するというもの。ソフトバンクの孫正義社長が、「アジアスーパーグリッド構想」を進めるに当たり参考にしているプロジェクトでもある。
 主要メンバーだったシーメンスは太陽光事業撤退に伴いデザーテックからも身を引き、その決断に独ボッシュが続いた。11月にはスペイン政府が関係各国との会合を欠席、計画に暗雲が垂れ込める。
 欧州では、再生エネルギーの普及と周辺国との送電網の接続は、電力の安定確保というエネルギー安全保障の観点からも重視されている。今後10年で発電所の寿命により総発電容量の約5分の1が失われる英国は先月、再生エネルギーへの投資促進のために電力料金に上乗せされている課徴金を、2020年までに現在の約3倍、年間76億ポンド(約1兆円)に引き上げるエネルギー法案を発表。今年9月には、アイルランドとの間で初となる送電網が開通するなど、電力の安定確保に向けて包括的に取り組んでいる。
 補助金政策の失敗や送電網拡充の遅れ、デザーテックの課題、エネルギー安全保障の視点など、欧州の教訓は、今までのように原発に頼れなくなった日本の電力体制を考えるうえで、貴重なヒントを与えてくれている。

大竹 剛(おおたけ つよし)
1998年、デジタルカメラやDVDなどの黎明期に月刊誌「日経マルチメディア」の記者となる。同誌はインターネット・ブームを追い風に「日経ネットビジネス」へと雑誌名を変更し、ネット関連企業の取材に重点をシフトするも、ITバブル崩壊であえなく“休刊”。その後は「日経ビジネス」の記者として、主に家電業界を担当しながら企業経営を中心に取材。2008年9月から、ロンドン支局特派員として欧州・アフリカ・中東・ロシアを活動範囲に業種・業界を問わず取材中。日経ビジネスオンラインでコラム「ロンドン万華鏡」を執筆している。



大竹剛のロンドン万華鏡
ギリシア危機を発端に、一時はユーロ崩壊まで囁かれた欧州ですが、ここにあるのは暗い話ばかりではありません。ミクロの視点で見れば、ベンチャーから大企業まで急成長中の事業は数多くあるし、マクロで見ても欧州統合という壮大な実験はまだ終わっていません。このコラムでは、ロンドンを拠点に欧州各地、時にはその周辺まで足を延ばして、万華鏡をのぞくように色々な角度から現地ならではの話に光を当てていきます。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121213/240955/?ST=print 


02. 2012年12月17日 11:41:31 : Pj82T22SRI
欧州危機が「日本化」より深刻な4つの理由
勤勉なアリはなぜキリギリスを助けるべきなのか
2012年12月17日(月)  池田 琢磨


 先日、イタリアのシチリアで、「欧州危機と対応」というテーマで話をする機会を得た。聴衆は政策当局者も含む日伊ビジネスグループ(IJBG)参加者の方々で、彼らを前に日本人の私が何を話すのか戸惑いもしたが、今回はその時ご紹介した話を基に進めたい。
 欧州危機は、発生から3年を経過してもなお解決していない。日本人からするといささか不名誉な表現だが、日本における1990年代の大規模な銀行危機の経験から、欧州の「日本化」を指摘する向きもある。
欧州は「日本化」するのか?
 日本では1980年代後半に大幅に上昇した株価と不動産価格が1990年代の初頭に暴落に転じ、かなりの時間を経て銀行危機に発展した。バブル崩壊後、最初の金融機関の破綻は5年後の1995年で、大手金融機関の破綻が相次いだのは97年から98年にかけてであった。日本経済が現在まで低迷を続けていることは、銀行危機だけではなく、特に最近10年間では生産年齢人口の減少などほかの要因も大きく関与している。しかし、日本が銀行危機の克服に長い時間を要したことは事実である。
 その主な理由は、第1に、問題解決に必要な不良債権処理、バランスシートの修復を先送りする強いインセンティブが銀行経営者や政策当局にあったことだ。第2は、大規模な銀行危機への対処は、通常の法的整理に任せてしまえば金融システム全体の機能不全や国民経済に重大な悪影響を与える可能性があったために、公的介入を必要としたことである。しかし、ルールに基づかない裁量的な公的資金投入は、国民の理解を得ることが難しかったことが指摘できる。損失先送りのインセンティブの存在や、公的介入に対する国民の理解を得ることの難しさは、欧州においても同様であろう。
欧州危機は日本のバブル崩壊よりも解決が困難な4つの理由
 筆者は、これに加えて、欧州危機を解決には、日本の銀行危機にはなかった困難が少なくとも4つあると考えている。すなわち、(1)ユーロ圏内の経常収支黒字国の有権者の支持の下で資金移転が必要であること、(2)財政緊縮政策をとっていること、(3)金融規制強化を同時に進めていること、(4)今回の危機が過去10年ほどで生じた世界的な信用ブームの反動で生じており、外需に景気下支え役を期待しがたいこと、である。
 その中でも特に困難なのが、債務危機に陥った国が、ほかのユーロ加盟国の有権者の理解を得ることである。欧州危機はある国の大規模な銀行危機という側面に加えて、ユーロ圏域内の競争力格差を背景とした経常収支の不均衡問題という側面もある。為替レートで域内格差を調整できないユーロ圏の場合、国内でのデフレ的な調整が大きくならざるを得ず、緊縮・構造改革政策に対する国民の負担は重く、不満も高まりやすい。
 さらに、政府が同時に市場の信任を失ってしまったために、金融セクターの不良債権の償却原資や資本注入に国外の資金を導入しなければならない。これには他のユーロ加盟国の市民、特にドイツなど経常収支黒字国の有権者からの理解と支持を得る必要があり、国外からの公的介入を決断するまで、欧州が日本以上に政治的合意に時間を要したとしても、極めて自然なことのように思われる。統一通貨ユーロを維持することの意義をこれまで以上に各国市民、特に経常収支黒字国側の市民に訴えねばならないだろう。
アリとキリギリスの寓話と合成の誤謬
 経常収支の不均衡問題はありふれた話だが、多くの場合は赤字国側の借りすぎの問題として捉えられている。イソップのアリとキリギリスの寓話は、キリギリスの自業自得の物語として理解されるのが普通で、冷酷なアリのお話と理解する人は少ない。しかし、赤字国側(キリギリス)に緊縮政策を強いると、国民所得の低下に伴って、債務の返済可能性(ソルベンシー)が悪化し、金融危機はますます解決が困難になる。
 もちろんキリギリスがアリ(経常収支黒字国)に生まれ変わるための努力、すなわち赤字国側の構造改革は重要だが、短期的には成長を下支えする政策が同時に必要であろう。問題を抱える国では、成長刺激策や金融システムの不良債権処理に充てる資金が国内では調達できないのであるから、何らかの国外からの資金流入が必要となる。ところが欧州では財政資金の移転を禁じ、共通債などの発行にドイツは反対している。これでは、不安定な状態が長引くのは必然であろう。
 一方、黒字国側が景気刺激策を採用すれば、赤字国側は輸出を通じてソルベンシーを改善できるチャンスが高まる。確かにアリの立場は、寓話を持ち出すまでもなく説得力がある。しかし、この問題を「合成の誤謬」問題としてとらえる視点が重要ではないだろうか。寓話のアリとは異なり、ユーロ圏内のアリはキリギリスが発行した債券をため込んでいるのに過ぎない。食べ物はそれ自体に価値があるが、債券はそれを発行したものが支払い能力を失えばその価値が大きく損なわれてしまう。キリギリスが飢えれば(支払い困難に陥れば)、アリもまた困難に陥ってしまうわけだ。
わざわざ問題解決を困難にしている欧州
 (2)(3)の困難も深刻である。問題を単純化して、銀行の不良債権を誰のコストで償却するか、と考えてみよう。もっとも望ましいのは、景気が回復して債権者が元利払いを再開することであるが、それが望めない場合でも不良債権を抱える銀行が多くの収益を上げて、その中から償却原資を捻出できれば、そもそもルールになじまない、従って有権者の理解を得にくい公的資金を投入する必要性を回避できる。これを容易にするためには、銀行の収益を大きくする、すなわち景気を拡大させ、利ざやを厚くすれば良い。
 ところが、ユーロ圏各国は緊縮政策を実行することで景気を後退させ、金融制度規制強化を同時に進めることでマージンを圧縮し、問題解決に必要な公的資金への依存をわざわざ大きくしている。前述のように、自国内での公的資金投入でさえ、政治的な支持を取り付けることは容易ではなく、ましてや国外に公的資金を求めざるを得なければ、その困難は倍加する。
 財政緊縮、構造改革や金融規制強化は、将来同じ問題を引き起こさないためには、必要な政策である。しかし、長期的には正しい政策も、足下で景気後退の悪循環に陥ってしまえば、失業の増大を通じて問題解決のために必要な国民の支持を失うことにつながりやすい。ギリシャやスペインでは、失業率はすでに25%を超え、有権者の1/4が失業している有様である。ユーロ圏加盟17カ国はすべて民主主義を標榜するが、民主主義国家においては、「正しい政策」も有権者の支持を欠いては実行が困難である。景気後退に伴う悪循環を断ち切るためにも、長期の構造改革政策(競争促進や不良債権切り離し)と短期の景気刺激政策の組み合わせが必要と考える。

 さらに、(4)の困難がこれに加わる。日本がバブル崩壊の後遺症に苦しんだ時期は、海外に目を向ければ景気は活況であり、日本は輸出を伸ばすことで償却原資を捻出することもできた。しかし、今回の欧州危機は2000年代初頭から世界各地で広がっていた信用ブームと、それを背景にした歴史的にもまれに見る経常収支不均衡が累積した反動の一部として生じている。このため、米国も含め世界の主要経済主体は同時多発的にバランスシート調整を進めており、欧州は輸出にも期待しがたい状況である。
新たな国債買い取り策(OMT)は何を解決できないのか?
 欧州中央銀行(ECB)が8月に打ち出した新たな国債買い取り策(OMT)の発表は、周辺国の国債利回りを押し下げ(価格は上昇)、それを保有していた金融機関の破綻リスクを軽減することで、信用収縮から景気後退に至る悪循環の一部を和らげることに成功した。しかし、債務の重みにあえぐ周辺国に景気後退をもたらしている力は、国債利回り上昇に伴う信用収縮だけではない。それは、緊縮財政圧力であり、国内不良債権問題の調整圧力であり、海外経済の低迷でもある。従って、OMTの発表や、近い将来それが発動された場合でも、それのみで周辺国の景気が回復するとは期待できない。
 景気後退の持続は、不動産関連融資の焦げつき増大などを通じて信用収縮を引き起こしやすい。さらに、前述のように失業の増大に伴う有権者の不満は、OMT発動の必要条件である緊縮・構造改革政策への政府の関与を弱めることにつながりやすい。国民の不満が高まってしまえば、そもそもOMTは発動できなくなる可能性を高めるのだ。ギリシャの総選挙や、イタリアのモンティ首相の突然の辞意表明で明らかになったのは、こうしたリスクである。欧州は、OMT発表後も構造的に不安定なままであるというのが筆者の評価である。

来年のドイツ総選挙までは、大きな進展は望めない
 では、欧州危機を形作る悪循環はいかに断ち切ることができるのかだろうか。筆者は、(1)周辺国における景気回復、(2)不良債権の切り離し、(3)それによって生じる資本不足を補う資本注入であると考える。しかし、かつての日本のケースと異なり、欧州周辺国政府にはこれらを可能にする資金調達手段が失われてしまっている。従って、危機時に民間資金流入が期待しがたい以上は、問題解決には必ず国外からの公的資金の投入が不可欠となる。ユーロ圏内で公的資金を投入しようとすれば、経常収支黒字国であるドイツなどが、これに同意する必要がある。
 これまで国際通貨基金(IMF)は、緊縮・構造改革路線の総本山であるように見られてきた。そのIMFまでが、10月に発表された世界経済見通しにおいて、緊縮政策を採用した戦間期の英国が財政再建に失敗した事例や、景気後退期における財政緊縮の景気押し下げ効果が従来考えられてきたよりも大きいという見解を示したのは、興味深い変化である。12月に発表された「真の経済通貨統合(EMU)に向けて」というレポートでファンロンパイ欧州理事会議長が示した工程表でも、「経済危機などによるショックを和らげる限定的財政機能」の提案が盛り込まれた。しかし、その実施は2014年からという目標にとどまる。

(出所)欧州理事会2012年12月5日付文書よりNIPlc作成
 決定的に重要なカギを握るのは、ドイツなどユーロ圏内の経常収支黒字国、すなわちアリの国々である。例えば、問題解決に重要なカギを握る(3)海外資金による資本注入とは、銀行監督の一元化(SSM)が動き出すことを条件に可能になるとされている欧州安定メカニズム(ESM)による直接資本注入に他ならない(現行の間接注入では危機に陥った国の政府債務が増えてしまう)。しかし、9月25日にドイツ、オランダ、フィンランド(いずれも経常収支が黒字であるアリの国)の財務大臣は共同で、SSM発足前から存在していた問題に対しては、ESMによる直接資本注入はするべきではないと表明した。アリの立場から考えれば、至極もっともな主張なのだが、これでは問題解決は展望できないのである。
 ドイツは、来年9月に総選挙を控えており、メルケル政権としても選挙前に大胆な譲歩は難しいだろう。ドイツがその政策を転換するチャンスは、早くても来年9月の総選挙までは訪れそうもない。
 プレゼンテーション後、他のパネラーを含め何人かのイタリア人が、わざわざ握手を求めに来てくれた。筆者はうれしく思ったが、その場にドイツ人の聴衆がいたらどのような反応が返ってきただろうか。

池田 琢磨(いけだ・たくま)
ノムラ・インターナショナル シニアエコノミスト
1990年東京工業大学工学修士課程修了、96年東京大学経済学修士課程修了。野村総合研究所、郵政研究所、野村総合研究所アメリカ、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルを経て、2007年より現職。Institutional Investor Magazine誌の2010年欧州経済調査部門で2位にランク された。



Money Globe ― from London
環境、会計など様々な分野で影響力を誇示する欧州の経済情勢を、現地の専門家がマクロ、為替、金融政策、M&A(合併・買収)など様々な観点から分析する。
欧州危機が「日本化」より深刻な4つの理由
勤勉なアリはなぜキリギリスを助けるべきなのか
2012年12月17日(月)  池田 琢磨


 先日、イタリアのシチリアで、「欧州危機と対応」というテーマで話をする機会を得た。聴衆は政策当局者も含む日伊ビジネスグループ(IJBG)参加者の方々で、彼らを前に日本人の私が何を話すのか戸惑いもしたが、今回はその時ご紹介した話を基に進めたい。
 欧州危機は、発生から3年を経過してもなお解決していない。日本人からするといささか不名誉な表現だが、日本における1990年代の大規模な銀行危機の経験から、欧州の「日本化」を指摘する向きもある。
欧州は「日本化」するのか?
 日本では1980年代後半に大幅に上昇した株価と不動産価格が1990年代の初頭に暴落に転じ、かなりの時間を経て銀行危機に発展した。バブル崩壊後、最初の金融機関の破綻は5年後の1995年で、大手金融機関の破綻が相次いだのは97年から98年にかけてであった。日本経済が現在まで低迷を続けていることは、銀行危機だけではなく、特に最近10年間では生産年齢人口の減少などほかの要因も大きく関与している。しかし、日本が銀行危機の克服に長い時間を要したことは事実である。
 その主な理由は、第1に、問題解決に必要な不良債権処理、バランスシートの修復を先送りする強いインセンティブが銀行経営者や政策当局にあったことだ。第2は、大規模な銀行危機への対処は、通常の法的整理に任せてしまえば金融システム全体の機能不全や国民経済に重大な悪影響を与える可能性があったために、公的介入を必要としたことである。しかし、ルールに基づかない裁量的な公的資金投入は、国民の理解を得ることが難しかったことが指摘できる。損失先送りのインセンティブの存在や、公的介入に対する国民の理解を得ることの難しさは、欧州においても同様であろう。
欧州危機は日本のバブル崩壊よりも解決が困難な4つの理由
 筆者は、これに加えて、欧州危機を解決には、日本の銀行危機にはなかった困難が少なくとも4つあると考えている。すなわち、(1)ユーロ圏内の経常収支黒字国の有権者の支持の下で資金移転が必要であること、(2)財政緊縮政策をとっていること、(3)金融規制強化を同時に進めていること、(4)今回の危機が過去10年ほどで生じた世界的な信用ブームの反動で生じており、外需に景気下支え役を期待しがたいこと、である。
 その中でも特に困難なのが、債務危機に陥った国が、ほかのユーロ加盟国の有権者の理解を得ることである。欧州危機はある国の大規模な銀行危機という側面に加えて、ユーロ圏域内の競争力格差を背景とした経常収支の不均衡問題という側面もある。為替レートで域内格差を調整できないユーロ圏の場合、国内でのデフレ的な調整が大きくならざるを得ず、緊縮・構造改革政策に対する国民の負担は重く、不満も高まりやすい。
 さらに、政府が同時に市場の信任を失ってしまったために、金融セクターの不良債権の償却原資や資本注入に国外の資金を導入しなければならない。これには他のユーロ加盟国の市民、特にドイツなど経常収支黒字国の有権者からの理解と支持を得る必要があり、国外からの公的介入を決断するまで、欧州が日本以上に政治的合意に時間を要したとしても、極めて自然なことのように思われる。統一通貨ユーロを維持することの意義をこれまで以上に各国市民、特に経常収支黒字国側の市民に訴えねばならないだろう。
アリとキリギリスの寓話と合成の誤謬
 経常収支の不均衡問題はありふれた話だが、多くの場合は赤字国側の借りすぎの問題として捉えられている。イソップのアリとキリギリスの寓話は、キリギリスの自業自得の物語として理解されるのが普通で、冷酷なアリのお話と理解する人は少ない。しかし、赤字国側(キリギリス)に緊縮政策を強いると、国民所得の低下に伴って、債務の返済可能性(ソルベンシー)が悪化し、金融危機はますます解決が困難になる。
 もちろんキリギリスがアリ(経常収支黒字国)に生まれ変わるための努力、すなわち赤字国側の構造改革は重要だが、短期的には成長を下支えする政策が同時に必要であろう。問題を抱える国では、成長刺激策や金融システムの不良債権処理に充てる資金が国内では調達できないのであるから、何らかの国外からの資金流入が必要となる。ところが欧州では財政資金の移転を禁じ、共通債などの発行にドイツは反対している。これでは、不安定な状態が長引くのは必然であろう。
 一方、黒字国側が景気刺激策を採用すれば、赤字国側は輸出を通じてソルベンシーを改善できるチャンスが高まる。確かにアリの立場は、寓話を持ち出すまでもなく説得力がある。しかし、この問題を「合成の誤謬」問題としてとらえる視点が重要ではないだろうか。寓話のアリとは異なり、ユーロ圏内のアリはキリギリスが発行した債券をため込んでいるのに過ぎない。食べ物はそれ自体に価値があるが、債券はそれを発行したものが支払い能力を失えばその価値が大きく損なわれてしまう。キリギリスが飢えれば(支払い困難に陥れば)、アリもまた困難に陥ってしまうわけだ。
わざわざ問題解決を困難にしている欧州
 (2)(3)の困難も深刻である。問題を単純化して、銀行の不良債権を誰のコストで償却するか、と考えてみよう。もっとも望ましいのは、景気が回復して債権者が元利払いを再開することであるが、それが望めない場合でも不良債権を抱える銀行が多くの収益を上げて、その中から償却原資を捻出できれば、そもそもルールになじまない、従って有権者の理解を得にくい公的資金を投入する必要性を回避できる。これを容易にするためには、銀行の収益を大きくする、すなわち景気を拡大させ、利ざやを厚くすれば良い。
 ところが、ユーロ圏各国は緊縮政策を実行することで景気を後退させ、金融制度規制強化を同時に進めることでマージンを圧縮し、問題解決に必要な公的資金への依存をわざわざ大きくしている。前述のように、自国内での公的資金投入でさえ、政治的な支持を取り付けることは容易ではなく、ましてや国外に公的資金を求めざるを得なければ、その困難は倍加する。
 財政緊縮、構造改革や金融規制強化は、将来同じ問題を引き起こさないためには、必要な政策である。しかし、長期的には正しい政策も、足下で景気後退の悪循環に陥ってしまえば、失業の増大を通じて問題解決のために必要な国民の支持を失うことにつながりやすい。ギリシャやスペインでは、失業率はすでに25%を超え、有権者の1/4が失業している有様である。ユーロ圏加盟17カ国はすべて民主主義を標榜するが、民主主義国家においては、「正しい政策」も有権者の支持を欠いては実行が困難である。景気後退に伴う悪循環を断ち切るためにも、長期の構造改革政策(競争促進や不良債権切り離し)と短期の景気刺激政策の組み合わせが必要と考える。

 さらに、(4)の困難がこれに加わる。日本がバブル崩壊の後遺症に苦しんだ時期は、海外に目を向ければ景気は活況であり、日本は輸出を伸ばすことで償却原資を捻出することもできた。しかし、今回の欧州危機は2000年代初頭から世界各地で広がっていた信用ブームと、それを背景にした歴史的にもまれに見る経常収支不均衡が累積した反動の一部として生じている。このため、米国も含め世界の主要経済主体は同時多発的にバランスシート調整を進めており、欧州は輸出にも期待しがたい状況である。
新たな国債買い取り策(OMT)は何を解決できないのか?
 欧州中央銀行(ECB)が8月に打ち出した新たな国債買い取り策(OMT)の発表は、周辺国の国債利回りを押し下げ(価格は上昇)、それを保有していた金融機関の破綻リスクを軽減することで、信用収縮から景気後退に至る悪循環の一部を和らげることに成功した。しかし、債務の重みにあえぐ周辺国に景気後退をもたらしている力は、国債利回り上昇に伴う信用収縮だけではない。それは、緊縮財政圧力であり、国内不良債権問題の調整圧力であり、海外経済の低迷でもある。従って、OMTの発表や、近い将来それが発動された場合でも、それのみで周辺国の景気が回復するとは期待できない。
 景気後退の持続は、不動産関連融資の焦げつき増大などを通じて信用収縮を引き起こしやすい。さらに、前述のように失業の増大に伴う有権者の不満は、OMT発動の必要条件である緊縮・構造改革政策への政府の関与を弱めることにつながりやすい。国民の不満が高まってしまえば、そもそもOMTは発動できなくなる可能性を高めるのだ。ギリシャの総選挙や、イタリアのモンティ首相の突然の辞意表明で明らかになったのは、こうしたリスクである。欧州は、OMT発表後も構造的に不安定なままであるというのが筆者の評価である。

来年のドイツ総選挙までは、大きな進展は望めない
 では、欧州危機を形作る悪循環はいかに断ち切ることができるのかだろうか。筆者は、(1)周辺国における景気回復、(2)不良債権の切り離し、(3)それによって生じる資本不足を補う資本注入であると考える。しかし、かつての日本のケースと異なり、欧州周辺国政府にはこれらを可能にする資金調達手段が失われてしまっている。従って、危機時に民間資金流入が期待しがたい以上は、問題解決には必ず国外からの公的資金の投入が不可欠となる。ユーロ圏内で公的資金を投入しようとすれば、経常収支黒字国であるドイツなどが、これに同意する必要がある。
 これまで国際通貨基金(IMF)は、緊縮・構造改革路線の総本山であるように見られてきた。そのIMFまでが、10月に発表された世界経済見通しにおいて、緊縮政策を採用した戦間期の英国が財政再建に失敗した事例や、景気後退期における財政緊縮の景気押し下げ効果が従来考えられてきたよりも大きいという見解を示したのは、興味深い変化である。12月に発表された「真の経済通貨統合(EMU)に向けて」というレポートでファンロンパイ欧州理事会議長が示した工程表でも、「経済危機などによるショックを和らげる限定的財政機能」の提案が盛り込まれた。しかし、その実施は2014年からという目標にとどまる。

(出所)欧州理事会2012年12月5日付文書よりNIPlc作成
 決定的に重要なカギを握るのは、ドイツなどユーロ圏内の経常収支黒字国、すなわちアリの国々である。例えば、問題解決に重要なカギを握る(3)海外資金による資本注入とは、銀行監督の一元化(SSM)が動き出すことを条件に可能になるとされている欧州安定メカニズム(ESM)による直接資本注入に他ならない(現行の間接注入では危機に陥った国の政府債務が増えてしまう)。しかし、9月25日にドイツ、オランダ、フィンランド(いずれも経常収支が黒字であるアリの国)の財務大臣は共同で、SSM発足前から存在していた問題に対しては、ESMによる直接資本注入はするべきではないと表明した。アリの立場から考えれば、至極もっともな主張なのだが、これでは問題解決は展望できないのである。
 ドイツは、来年9月に総選挙を控えており、メルケル政権としても選挙前に大胆な譲歩は難しいだろう。ドイツがその政策を転換するチャンスは、早くても来年9月の総選挙までは訪れそうもない。
 プレゼンテーション後、他のパネラーを含め何人かのイタリア人が、わざわざ握手を求めに来てくれた。筆者はうれしく思ったが、その場にドイツ人の聴衆がいたらどのような反応が返ってきただろうか。

池田 琢磨(いけだ・たくま)
ノムラ・インターナショナル シニアエコノミスト
1990年東京工業大学工学修士課程修了、96年東京大学経済学修士課程修了。野村総合研究所、郵政研究所、野村総合研究所アメリカ、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルを経て、2007年より現職。Institutional Investor Magazine誌の2010年欧州経済調査部門で2位にランク された。



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環境、会計など様々な分野で影響力を誇示する欧州の経済情勢を、現地の専門家がマクロ、為替、金融政策、M&A(合併・買収)など様々な観点から分析する。


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