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日本経済のボトルネックはデフレではない 構造改革とインフレ目標政策は両立する  所得格差と税制
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/664.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 28 日 00:02:13: cT5Wxjlo3Xe3.
 

日本経済のボトルネックはデフレではない 池田信夫 2012年11月27日 11:23

「リフレで日本経済の問題は解決しない」というと「じゃあどうすればいいんだ」という質問が必ずある。この答は簡単ではないが、きのうのアゴラ経済塾で使ったスライドで、あえて超簡単に説明してみよう。

keizaij33

日本経済が行き詰まっている最大の原因は、ゼロ金利で流動性の罠に陥って「意図せざる金融引き締め」が起こっていることだ。これは金融的な現象だが、その原因は金融市場にはない。ここがむずかしいところで、流動性の罠は自然利子率が実質金利より低いとき起こるものだが、自然利子率は以前の記事でも説明したように実体経済に中立な実質金利で、日銀のコントロールできない実物変数である。

では自然利子率は何で決まるのだろうか。ややこしい計算を省いて結論だけいうと、潜在成長率で決まる。したがって現在のように自然利子率が低い(マイナスになっている)状態を是正するには、日銀が通貨をばらまくのではなく、潜在成長率を引き上げる政策が政策が必要なのだ。

潜在成長率が下がっている2つの要因は、生産年齢人口の減少生産性上昇率の低下である。このうち人口要因を変えることは容易ではないので、生産性を上げることが重要だ。その要因は労働生産性と資本効率に分解できるが、労働生産性を低下させているのは日本の労働市場の硬直性であり、資本効率が悪い原因は持ち合いで企業買収を阻止する「資本鎖国」である。

金利低下のもう一つの原因は、深尾京司氏の指摘する貯蓄超過、特に企業が純貯蓄していることだ。この最大の原因は新興国との競争で国内の投資収益率が落ち、製造業が海外移転しているためだ。おまけに法人税が高く雇用規制がうるさいため、生産性の高い企業ほど国内から撤退して海外に移転する負の退出効果が日本経済の病である。

このようにGDPギャップがマイナスになっているため、デフレが続いている。右の図のように物価上昇率(内需デフレーター)はGDPギャップときれいな相関がある。リフレ派は「金融緩和でGDPギャップを埋めればデフレが止まる」というが、残念ながらゼロ金利制約でGDPギャップをこれ以上縮めることができない。

デフレは潜在成長率の低下と貯蓄超過によって金利が下がった結果であって、その逆ではないのだ。この因果関係を取り違えて「デフレ脱却で日本経済の問題が解決する」というのは「風邪を引いて熱が出ているから体温計を冷やせば風邪はなおる」というのと同じ錯覚である。

この流動性の罠が日本経済のボトルネックだが、これを打開するには自然利子率を上げるか実質金利を下げるしかない。実質金利を下げる方法としては、日銀が将来の利上げをしないことにコミットしてインフレ予想を醸成する時間軸政策があるが、その効果は限定的だ。日銀がリスク資産を買う「包括緩和」の効果も疑わしい。

したがって残る手段は、自然利子率=潜在成長率を引き上げる構造改革しかない。この点で安倍氏の側近である塩崎恭久氏が自然利子率に言及したのは大きな進歩だが、彼が「日銀が自然利子率を上げろ」というのは間違いだ。池尾和人氏もいうように「自然利子率の引き上げは政府の責任」であって日銀の責任ではない。それは潜在成長率すなわち日本経済の実力を上げることに他ならないからである。

構造改革とインフレ目標政策は両立する

uncorrelated 2012年11月27日 16:10

経済評論家の池田信夫氏が「日本経済のボトルネックはデフレではない」と主張している。生産年齢人口の減少と生産性上昇率の低下が、均衡実質金利、つまり自然利子率を低下させて流動性の罠にはまっていると言う主張だ。

この議論は概ね理解できるが、問題もある。

  1. 均衡実質金利の低下は、インフレ目標政策を否定しない。期待インフレ率が高くなれば、均衡実質金利がマイナスであったとしてもプラスにする事ができる。これは僅かでも経済に寄与する。
  2. 構造改革で、大きな生産性向上を望めない。2001年から2010年までの日本の一人あたりGDP成長率はEUや米国よりもよかった(Whose lost decade?)が、デフレのままだった。2000年以降、TFP成長率も上昇している(RIETI - 日本のTFP上昇率はなぜ回復したのか)。
  3. 生産年齢人口の減少と生産性上昇率の低下だけでは、均衡実質金利をマイナスにする事ができない。資本が前倒しで償却されているなどの想定が必要になる(平田(2012))。
  4. 貯蓄超過になっているのは、実質金利が高止まりしているからとも説明でき、流動性の罠との因果関係が明確ではない。

過去10年間の経験から言えば、構造改革で生産性を向上させるにしても、流動性の罠から脱出できる見込みは薄い。池田氏の主張では「人口要因を変えることは容易ではないので、生産性を上げることが重要」とあるが、どちらかと言えば、移民を受け入れる*1なりして、生産年齢人口を増加させる方が容易な方法であろう。

池田信夫氏はインフレ目標政策に否定的だ。

実質金利を下げる方法としては、日銀が将来の利上げをしないことにコミットしてインフレ予想を醸成する時間軸政策があるが、その効果は限定的だ

その時間軸政策がクルッグマンの言うインフレ目標政策*2で、例え効果が限定的であっても、無制限の量的緩和は必要は無いのだから弊害も少ない。日銀がインフレ目標政策を導入しても、政府が構造改革を阻害するわけでも無いのだから。

*1もちろん、社会的軋轢などが予想されるため、望ましい政策とは限らない。

*2クルッグマン論文を使って、池田信夫を応援する

所得格差と税制

厚生労働省は3年毎に所得再分配調査を実施しています。
この調査は、昭和37年度以降概ね3年毎の周期で実施されているので、来年秋頃になれば平成23年版が発表されることになりますが、せめて1年遅れ程度で発表されないものかと思います。
と言っても仕方がないので、平成20年版所得再分配調査を基に考察することにします。

平成20年版の所得調査対象年である平成19年の平均所得額は445.1万円(年額)で、前回調査時(平成17年)より4.4%減少しています。23年版が発表されれば、昨今の経済状況、非正規雇用の増加、高齢化等の影響により更に所得が減少し、格差も拡大していることは容易に想像できると思います。

以下のグラフは、平成20年版の報告書から抜粋した、「所得再分配によるジニ係数の変化」というグラフで、所得格差がどのような状況になっているかを表しています。

所得再分配によるジニ係数の変化


これを見ると、年々当初所得の格差が拡大する一方であることが判ると思います。また、再分配機能により、当初所得より再分配所得の格差が相当改善されているように見えますが、65歳以上の改善度が大幅に良いため、全体ではこのような結果として表されてしまいます。実際には、若年層や母(父)子家庭の改善度が低く、相対的貧困度も上昇していますから、年齢階級別や世帯類型別に検証する必要があることは当然でしょう。

しかし、一番の問題は、改善が専ら社会保障に頼っていることです。
国として社会保障でこれだけ改善されているとするのは結構ですが、本来の税の目的から目を逸らしてしていると言わざるを得ないと思います。

税による所得分配(そしてそれによる所得格差の改善)は、まず、個人が収める直接税の多寡による再配分がここでの対象である点に気をつけておく必要があります。法人税や消費税による再配分は対象外です。
税による改善度は、昭和62年までは4〜5%ありましたが、昭和62〜平成元年の抜本的税制改革による累進緩和(個人所得課税最高税率70%→50%:下図参照「累進課税推移図」)、平成7年の累進緩和(50%課税2000万円以上から3000万円以上へ)、平成11年の最高税率引き下げといった「累進性の低下」、及び平成6年〜8年の特別減税や平成11年以降の定率減税による「税の全般的な所得再配分機能の低下」により、有効性を低下させてきています。

累進課税推移


政府は格差拡大が問題であると認識しながらも、全く逆の政策を実施してきました。その結果が、デフレ・スパイラルやGDP低下を作り出す状況の一因になっていることは十分に考えられると思います。
社会的な公平性担保や貧困対策という面だけでなく社会の活力を維持する見地からも所得再分配は重要であり、逆進性の強い消費税増税、大企業優遇の法人税減税は中止すべきです。
アメリカでさえ「財政の崖」回避のため富裕層増税を選択した
米「財政の崖」回避、富裕層増税に異議なし
のですから、日本でも所得税の累進性強化こそが求められる健全な税制の姿であると言えるでしょう。

【toripy】


・参考過去エントリ
今必要なのは中流層の復活だ!

・参考資料
財務省によると、2007年(平成19年)現在の申告者の実際の所得税負担率は、所得が1〜2億円の納税者(26.5%)がピークになっている。それ以上の高額納税者は逆に下がり、所得100億円以上では14.2%となっている
所得税負担率
申告納税者の所得税負担率(平成19年分)

[編集部より]
記事へのご意見ご感想をコメント欄にお寄せ下さい。このエントリはmixiの「鍋党コミュ」のtoripyさんの投稿です。
当Nabe Party では mixi「鍋党コミュ」ないで税政に関するさまざまな議論を活発に行っております。その成果結果(OUTPUT)を当ブログに掲載しています。ぜひあなたもmixi「鍋党コミュ」に参加して、一緒に議論に参加してみませんか?小さな政府論はおかしいと思う人は、ぜひご参加ください。そして現在の「強者への逆再分配税制」を改めていきませんか?お待ちしております。

 

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コメント
 
01. 2012年11月29日 01:41:54 : 2uOv2R3MRs
65歳以上の社会保障に税金つぎ込んでも生産性は改善しないって言及すれば評価できたけどなあ

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