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日本より重い「日本病」に罹る韓国 中国8月に底を打ち、緩やかな回復
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/677.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 29 日 01:50:30: cT5Wxjlo3Xe3.
 

日本より重い「日本病」に罹る韓国
『老いてゆくアジア』の大泉啓一郎氏に聞く(上)
2012年11月29日(木)  鈴置 高史

韓国でも「日本病」が問題となり始めた。少子高齢化による低成長や要介護者の急増など、症状が一気に顕在化したからだ。『老いてゆくアジア』の著者、大泉啓一郎・日本総合研究所上席主任研究員と鈴置高史編集委員が、急速に進むアジアの高齢化を話し合った(司会は田中太郎)。
ようやく気がついた韓国

大泉啓一郎(おおいずみ・けいいちろう)
日本総合研究所上席主任研究員。1963年大阪府生まれ、88年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。三井銀総合研究所などを経て現職。研究分野は「アジアの人口変化と経済発展」と「アジアの都市化を巡る経済社会問題」。2007年に出版した『老いてゆくアジア』(中公新書、第29回発展途上国研究奨励賞受賞)で少子高齢化がアジアの成長に歯止めをかける可能性を指摘し、大きな反響を呼んだ。他に『消費するアジア』(中公新書)などの著書がある。講演で「新しい国づくりの契機だ」と呼び掛けるなど、高齢化対策を明るく前向きに語るので人気がある。論文一覧はこちら。(撮影:佐藤久)
大泉:鈴置さんの最近の記事「『日本病に罹った』とついに認めた韓国」はとても新鮮でした。「韓国社会が高齢化をようやく自分の問題として考え始めた」ということを報じた、実に象徴的な記事だったからです。さっそく講演などで紹介しました。
 日本は別として、アジア諸国では高齢化への危機感がなかなか生まれない。早く手を打つべきなのに、と気になっていました。ただ、記事の中にあった「日本病」というネーミングには奇妙な感じを受けましたが……。
鈴置:「日本病」と名付けたのは私ではありません。韓国における名付け親は、その記事で引用した、朝鮮日報という最大手紙の社会部長氏と思われます。
 韓国人は日本を、活力を失いどんどん沈滞していく哀れな国と見ています。半面、自画像は「日の出の勢いの国」。1人当たりGDP(国内総生産)で――購買力平価ベースですが――数年内に韓国が日本を追い抜く、との予測もあります。
まだ、南アジアは「他人ごと」
 「日本に勝った」と祝杯をあげていたところに韓国の高齢化が進んで(グラフ1参照)、その症状がどっと現れた。
 今、韓国人の間に「あの、どうしようもない日本になってしまうかもしれない」という恐怖感が首をもたげた。そんな気分が「日本病」という表現を生んだのでしょう。
グラフ1:日中韓の高齢化率の比較
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121126/240071/zu01.jpg
注:65歳以上の高齢者が7%以上を「高齢化社会」、14%以上を「高齢社会」といい、高齢化の進み具合を示す目安になっている
出所:国連「World Population Prospects:The 2010 Revision」から大泉啓一郎氏作成
普通の人はともかく、アジア各国の人口問題専門家が高齢化を研究したりしないのですか。
大泉:さすがに専門家の間では関心が高まっています。最近になってですが、人口問題の国際シンポジウムを開くから「人口動態が社会や経済に及ぼす影響」について講演してくれ、などと頼まれます。
 面白いのは、同じアジア人といっても反応に差があることです。講演すると、中国、韓国、台湾の専門家は真剣な顔で、高齢化の先進国たる日本の苦境を聞いてくれる。一方、南アジアや東南アジアの人の表情はまだ「世界にはそういう問題もあるのだな」といった感じです。
確かに65歳以上の高齢者が14%いる「高齢社会」を迎えるのはインドでは30年以上も先のことと予測されています。まだ、人ごとなのでしょうね。
「老い」に気づくのが遅れるのはなぜか
鈴置:でも、タイは大泉さんが2007年に出された『老いてゆくアジア』で警告を発したように、今から10年後には高齢社会に入ります。すでに2001年には、65歳以上の高齢者が7%いる「高齢化社会」に突入しています。日本もそうでしたが、タイにしろ、あるいは韓国にしろ、なぜ、自分の「老い」に気がつくのが遅れるのでしょうか。
大泉:いい質問です。それに答える前に、簡単に「人口ボーナス」と「人口オーナス」について説明します。まず、15歳から64歳までの人の数を「生産年齢人口」と定義します。
 ちょっと前まで、経済成長と人口との関係を考える時、人口全体の規模や増減のデータを使っていました。1990年代後半から、人口の内訳と言いますか構成を見ればより精密に分析できるだろう、という考え方が広まりました。
 そして経済活動できる人が何人いるかというデータに着目したのです。これが生産年齢人口です。一方、それ以外の人々――14歳以下と65歳以上の人々の合計数は「従属人口」と呼びます。
「老い始め」が最も活力あふれる時
 全体の人口に占める生産年齢人口の比率が上昇すれば経済成長にプラスの影響があるはずです。そこで、この効果を「人口ボーナス」と呼びます。反対に従属人口の比率が高まればマイナスの影響があるわけで「人口オーナス」と呼びます。
確かに、生産に参加できる人の数が増えれば「プラスになることが多い」と言えるでしょうね。でも、生産年齢人口比率が上がっても、実際に職が増えなければ成長には寄与しないと思います。
大泉:ええ、人口構成の変化が経済成長のすべてを決めるわけではありません。ご指摘のようなケースもありえます。でも、「生産年齢人口」など絞り込んだデータを通じて経済社会を分析すると、とても重要な問題点が浮かび上がってくるのです。
 ご質問の「なぜ、人々は社会の老いに気づくのが遅れるか」に戻ります。ある社会で人口構成が経済成長にマイナスに働く「人口オーナス」の時期の始まり――「始点」は、生産年齢人口比率が一番高い時点――つまり社会に最も活気がある時です。その時点で、高齢化や経済の減速を想像するのは困難です。
 それに生産年齢人口比率が高ければ、国内貯蓄も高まります。この高貯蓄――つまりは豊かな資本がしばらくは成長を支えることになります。時には経済がバルブ化します。
バブル期に「今」を想像できたか
 日本を例にとれば、1980年後半から1990年前半のバブル期に当たります。当時、誰がその後の停滞を予想できたでしょうか。
 なお、グラフ2では、従属人口比率が上昇に転じる時点を人口オーナスの「始点」としています。生産年齢人口比率でいえば、それがピークになった時点です。日本が1993年、韓国は2014年、中国が2015年です(注)。
グラフ2:日中韓の従属人口比率の推移(中位推計)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121126/240071/zu02.jpg
注:従属人口比率は0〜14歳と65歳以上の人口の比率
出所:国連「World Population Prospects:The 2010 Revision」から大泉啓一郎氏作成
なるほど、日本はバブルが崩壊した直後の1993年が「オーナス」の始まりだったのですね。韓国の「オーナス」開始は2014年で中国が2015年。中韓も、もう目前ですね。
大泉:「老いに気づくのが遅れる理由」はもう一つあります。政策決定に携わる政治家や官僚は若者が集まる都市に住んでいることが多い。すると、どうしても高齢化を実感しにくくなり、対策が遅れます。
 私がインタビューしたタイの官僚も、最近まで自国の高齢化を正確に把握していなかった。バンコクに住んでいれば高齢化を感じることは難しい。
高齢化速度が世界一の韓国
 日本だってそうでしょう、渋谷の交差点に立っている限りは「失われた20年」や「高齢化ニッポン」を想像できない。しかし田舎では、高齢化は1980年代から深刻な問題になっていた。街の風景が30年以上も変わっていない地方だってあります。ここに高齢化への対処の難しさがあります。
鈴置:韓国の少子高齢化は「日本を追う」と見ていいのでしょうか。
(注)韓国では「生産年齢人口比率がピークを迎えるのは2012年」と言われることが多い。今後の人口の推移をどう見るかで若干の差があると思われる。
大泉:そんなに単純ではありません。高齢化の速度がもっと速いうえ、年金など対策が十分になされていない。韓国は日本より重い「日本病」に罹る可能性が高いのです。
 高齢化が高速なのは、韓国では出生率がそもそも低水準にあるところに、それが急速に低下しているからです。グラフ1は全人口に占める65歳以上の人口の比率――高齢化率――を示したものです。
グラフ1:日中韓の高齢化率の比較
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121126/240071/zu03.jpg
注:65歳以上の高齢者が7%以上を「高齢化社会」、14%以上を「高齢社会」といい、高齢化の進み具合を示す目安になっている
出所:国連「World Population Prospects:The 2010 Revision」から大泉啓一郎氏作成
 韓国の高齢化率は、2010年11.1%。これが2020年には15.7%、2030年には23.3%と急速に上がって、日本との差は縮小する見込みです。つまり韓国の高齢化のスピードは日本より速い。
 「高齢化社会」から「高齢社会」になる――高齢化率が7%から14%になる――のに、日本は24年かかりました。韓国はそれが18年。おそらく世界一のスピードでしょう。
韓国が日本の反面教師に
 今後、世界が経験したことがない速度で高齢化が進む韓国では何が起こるか予測もつきません。これまでの他国の経験も役に立ちません。
 韓国はどのように高齢化に立ち向かい、高齢社会を構築するのか――。現在は「反面」も含め、日本が韓国の教師ですが、近いうちに韓国が日本の先生になるでしょう。
 日韓がともに直面する高齢化問題を共有し、協力して打開策を見出すことが必要です。韓国で注目しているのは日本以上に都市化率が高いことです(グラフ3)。
グラフ3:都市化率の比較

出所:国連「World Population Prospects:The 2010 Revision」から大泉啓一郎氏作成
鈴置:このデータはソウルへの一極集中を反映しているわけで、韓国社会の欠点として指摘されることが多いのですが……。
大泉:高齢化の時代にはそれが負担の軽減につながる可能性があります。医療サービスひとつとっても、高齢者が広い範囲に点在するよりも一カ所に集中して住んでいた方が、はるかに低いコストで済むからです。 これをうまく活用し、韓国独自の高齢社会を作る手があるのかもしれません。
「政府に頼らぬ」が裏目に
韓国の年金制度はどうなっていますか。
鈴置:まず、公的年金ですが、給付額は日本円換算で数万円といわれています。保険料も少ないし税金もあてられない半面、給付水準も低い「低負担・低給付」方式だからです。
 88年に制度が始まり、国民皆保険となったのが99年であるなど「制度が若い」という理由もあります。
 一般に、企業の退職金を足しても生活できる水準にはないとされています。そこで収入があるうちにマンションを複数購入し、それを貸して老後の生活費に充てる人が相当にいます。
 でも、今やこの、政府に頼らぬ自己防衛方式が裏目に出ています。少子高齢化に連れ、不動産価格は下がるものです。韓国にはすでにその症状が現れています。
 自己資金だけでマンションを買った人はまだいいけれど、そんな人は少ない。利殖が主目的ですから借金して買い、それを担保にしてまた買う人が多い。こういう人は借金が返せなくて困ります。
 韓国には「チョンセ」という、賃貸料を毎月受け取るのではなく、マンション価格の数割を保証料として預かるシステムが普通です。金利が高かった韓国では家主はこのおカネを運用して収入を得ました。ですから「チョンセ」と銀行の不動産担保融資を利用して不動産をどんどん買い増すことも可能だったのです。
日本の不気味な先例を研究はするが……
右肩上がりの時期ならともかく、今や危ないですね。
鈴置:極めて危険です。まず、社会問題化します。収入のない高齢者が借金を返せなくなる。持ち家をすべて売り払って住む場所もなくなる人が出てくる――と韓国紙は警告しています。
 もうひとつは経済問題。この個人の不良債権問題はとても根深いので、金融システム全体を揺さぶる可能性が出ています。借金を返すために高齢者が不動産を売りに出すため、さらに地価が下がるという悪循環も始まっていますし。
大泉:急増する高齢者に向け、日本のような手厚い年金や医療制度を構築すれば、近い将来、韓国の財政が破たんすることは確実です。これは韓国政府もよく分かっています。
鈴置:韓国の財政当局は日本の不気味な先例を非常によく研究しています。今年春の総選挙では各党が競って「ばらまき」を約束しました(「『韓国も低成長期に』韓銀総裁が直言、2012年が転換点?」参照)。
 それに危機感を深めた財政当局は、各党の公約に警告を発したため、選挙違反として告発されました。もちろん、覚悟の上だったと思います。一方、政治家は選挙で票を貰わなくてはいけません。12月投票の大統領選挙に向け、各候補はしっかりと「ばらまき」を約束しています。
大泉:韓国でも、決して十分ではない年金や医療サービスしか提供できないことを、国民にどう納得させるかという政治的な課題が今後、必ず浮上します。
中国人の大量受け入れで韓国はしのぐ?
鈴置:韓国では最近になってようやく「日本病に罹った」と騒ぎ始めました。でもまだ、成長率を上げれば乗り切れるとの発想が圧倒的に多数派です。日本風に言えば「上げ潮派」ばかりなのです。「国民への説得」に至るには相当な時間がかかると思います。
 私は結局、韓国は中国などからヒトを大量に導入することで「人口オーナス」の乗り切りを図ると睨んでいます。高齢化に伴う労働力の不足に関して韓国人に対策を聞くと「北朝鮮の人間や中国人を活用すればいい」という答えが返って来ることが多いのです。

 韓国紙の不動産専門記者が日本に関し、こんな記事を書いたことがあります。「日本は衰退の一途をたどるだろう。地価が下がって困っているくせに、仙台や新潟、名古屋などで中国の政府や資本が大規模の土地を買おうとすると反対運動が起きる。韓国の済州道などが、中国人に不動産を積極的に分譲しているのと全く反対だ。日本のように閉鎖的な国には未来がない」。
 韓国は、外国人に対し土地を積極的に買わせているうえ、定住外国人には地方参政権も与えています。産業振興や国際化が目的ですが、いずれ「人口オーナス」解消のための外国人誘致策や地価対策として活用されていくでしょう(「『7番目の強国』と胸を張る韓国のアキレス腱」参照)。
大泉:「オーナス」の負担軽減を安易に国外に求めるのは、あまり感心しません。外国からヒトを連れてくることを考えるなら、まず、自国の女性や高齢者が働きやすい環境整備を進めるべきと思います。
異なる道を歩む日韓
鈴置:たぶん、多くの日本人も大泉さんのように考えるでしょう。人口問題に関しても日本と韓国は異なる道を歩むのだろうなと思います。
 韓国人は生き残るためには中国に従う覚悟を固めた(「“体育館の裏”で軍事協定を提案した韓国」参照)。すると移民問題に関しても「どのみち中国の属国状態に戻るのだから、中国人にどんどん来て貰い経済の衰退を防ごう、あるいは経済規模を拡大しよう」という空気になるわけです。
 一方、日本人。中国の支配下で生きたことのない人たちですから「中国に従う」ことは到底受け入れられない。日本の国体を揺さぶりかねない大量の中国人の受け入れには、どこかで歯止めをかけるでしょう。そのために「オーナス」の負担が少々大きくなったとしても。
(明日に続く)
鈴置高史氏編集委員の書いたシミュレーション小説『朝鮮半島201Z年』には、少子化対策で受け入れた大量の中国の若者が在韓米軍基地の都市で反米市長を誕生させる。それが伏線となって米韓同盟が破棄されるというくだりがあります。

鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)
 日本経済新聞社編集委員。
 1954年、愛知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。
 77年、日本経済新聞社に入社、産業部に配属。大阪経済部、東大阪分室を経てソウル特派員(87〜92年)、香港特派員(99〜03年と06〜08年)。04年から05年まで経済解説部長。
 95〜96年にハーバード大学日米関係プログラム研究員、06年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。
 論文・著書は「From Flying Geese to Round Robin: The Emergence of Powerful Asian Companies and the Collapse of Japan’s Keiretsu (Harvard University, 1996) 」、「韓国経済何が問題か」(韓国生産性本部、92年、韓国語)、小説「朝鮮半島201Z年」(日本経済新聞出版社、2010年)。
 「中国の工場現場を歩き中国経済のぼっ興を描いた」として02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。



早読み 深読み 朝鮮半島
朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は日本経済新聞の編集委員。朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121126/240071/?ST=print

8月に底を打ち、緩やかな回復へ 金融緩和と財政出動が投資を刺激
2012年11月29日(木)  瀬口 清之


 中国経済は2012年8月をボトムに緩やかな回復局面に入った。第3四半期(7〜9月)の実質成長率は7.4%。2010年第4四半期(同9.8%)以降、7四半期連続で低下しており、一見したところ厳しい状況に見える。しかし、月次データの変化を見ると、工業生産、固定資産投資、輸出、小売総額といった主要経済指標が、いずれも9月以降反転または上昇している(図表1)。
図表1 生産・輸出・投資・消費の月次推移(前年比%)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121126/240034/zu01_s.jpg
(資料 CEIC)
 こうしたマクロ経済指標の推移から見て、景気は8月で底を打ち、9月以降、回復軌道に入ったと見られる。多くの専門家が、2012年の成長率は通年で7.0〜7.6%に着地、2013年は8.0〜8.2%成長と予測する。
3つの景気押し上げ要因
 今後の景気押し上げ要因は、3つある。第1に、金融緩和を背景とする地方インフラ投資の増大である。2012年4月以降、中国の金融政策は引き締めから緩和に転じ、6月と7月に2か月連続で利下げを実施した。金融機関による貸出も、3月下旬以降、前年を上回る大幅な伸びを示している。貸出増加額の1〜9月累計は前年同期比18.3%増となった。
 中国では多くの場合、地方政府が管轄するインフラ建設の財源は、地方政府が自ら金融機関から調達するケースが多い。日本と異なり、中央からの財政交付金には頼らない。このため、金融引き締めが続くと、金融機関が貸出に応じないため、インフラ建設に必要な資金の調達が難しい。4月以降の金融緩和によって資金調達が容易になった。
 加えて、中央政府が4月以降、地方のインフラ――地下鉄、高速道路、ダムなど――建設プロジェクトの着工を続々と認め始めた。これまで認めていなかったものだ。
 金融緩和と政府の許可という2つの追い風を受けて、インフラ建設工事の準備が各地で着々と進んでいる。これが今後の投資を押し上げる牽引車になると考えられる。
 加えて、2012年第4四半期以降、鉄道建設工事も徐々に再開されると言われている。2011年7月の高速鉄道の衝突脱線事故以来、実施が止まっていた。さらに、2013年は習近平政権発足の初年度となるため、国家プロジェクトとしての大規模なインフラ建設工事の着工が集中する。
 以上のように、金融緩和と財政の積極化を背景に、当面は、投資主導型の景気拡大が続くと予想される。足元の消費者物価が前年比2%増と安定しているのも、こうした景気拡大政策の実施にとってプラス材料である。
 第2の景気押し上げ要因は、不動産投資の拡大である。中央政府による不動産取引規制が依然として続いているが、5月以降、住宅販売価格が徐々に上昇しつつある。商品住宅販売価格を見ると、9月の成約価格は3月に比べて全国ベースで4.6%上昇した。他地域に比べて特に厳しい規制が早くから実施されていた北京、上海の上昇幅は大きく、それぞれ23.2%、18.1%上昇した。値上がり前に不動産を購入しようとする人が増えることから、不動産投資も徐々に回復に向かいつつある。
 第3は、良好な雇用情勢を背景とする消費の拡大だ。都市部新規雇用者の1〜9月累計は1024万人(前年比3.0%増)と、2011年を上回る伸びを示している。この間、賃金上昇率は1〜9月累計前年比12.0%増と、2011年(通年ベース前年比13.3%増)に比べて若干の低下にとどまっている。
サービス産業へのシフトが進む
 成長率が低下しているにもかかわらず、雇用が維持されているのは、経済のサービス化が進んでいるからだ。サービス産業は製造業に比べて設備投資額が小さいが、雇用創出効果は大きい。このため、経済全体に占めるサービス産業のウェイトが増大すると、設備投資の伸びが低下し、成長率への寄与は縮小するが、雇用は創出される。
 経済のサービス化は今後も持続すると見られる。中長期的には、徐々に成長率が低下しても、比較的安定的に雇用が確保される可能性が高い。これが消費の伸びを支える。GDPの構成比に占める投資の割合が徐々に低下する一方、消費の割合が増加していくと考えられる。
景気回復のテンポは緩やか
 今後、景気は回復の道をたどると考えられる。しかし、回復のテンポは緩やかだろう。以下の理由が挙げられる。第1に、欧州向けを中心とする輸出の伸び悩みである。7〜9月に経験した最悪の状況は脱したと見られるが、急回復は望めない。
 第2に、不動産取引規制の持続である。この政策は温家宝総理肝入りの政策であるため、習近平政権もしばらくは継続すると見られる。不動産取引規制が続けば、鉄鋼、石油化学、セメント、銅、アルミなどの素材産業、および家電、家具などの耐久消費財の回復にマイナスの影響が及ぶ。
 第3は、不良債権処理の増大に苦しむ金融機関が、融資に慎重になることだ。2013年は、地方政府がインフラ整備などに必要な資金を調達するために設立した金融会社に絡む不良債権処理がピークを迎える。この金融会社は、地方政府の保証を背景に金融機関からの融資を受け、これを工業用地造成、不動産開発などのインフラ整備に振り向けていた。2010年には、この金融会社を通じた地方関連投資が急増。不動産投資を中心に不良債権が拡大した。同年以降、人民銀行が管理を強化し始め、不良債権の処理を進めている。このためバランスシートの内容が悪化する金融会社は、融資姿勢を慎重にするとみられる。
 以上の要因を背景に、景気は回復に向かうものの、2013年の回復テンポは緩やかなものにとどまるだろう。
 第2回は、中国経済の長期的な展望を考える。

牽引役の不在で不透明感を増す世界と日本の未来を大胆に予測

瀬口 清之(せぐち・きよゆき)
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
1982年、東京大学経済学部を卒業して日本銀行に入行。
2004年、米国ランド研究所に派遣(International Visiting Fellow)。
2006年、北京事務所長。2008年、国際局企画役。
2009年4月から現職。



中国経済展望〜2013年&その先
中国経済は2012年8月で底を打った。今後は緩やかな回復に向かう。中長期で見た中国市場は、日本企業にとって依然として魅力的だ。1人当たりGDPが1万ドルを超える都市が続々と増える。これはすなわち日本製品を求める市場の拡大を意味する。尖閣諸島をめぐる問題は長期化せざるを得ないが、その一方で、両国民の相互理解も一段と進んでいる。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121126/240034/?ST=print

 

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