★阿修羅♪ > 経世済民78 > 680.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
実はランチタイムもなしで働いているのになぜ? ドイツ人以上に働くギリシャ人がなかなか稼げない理由
http://www.asyura2.com/12/hasan78/msg/680.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 29 日 02:05:02: cT5Wxjlo3Xe3.
 

【第37回】 2012年11月29日 まがぬまみえ [ライター]
実はランチタイムもなしで働いているのになぜ?
ドイツ人以上に働くギリシャ人がなかなか稼げない理由
 日本人観光客にギリシャを売り込む仕事は難しい。ギリシャ政府観光局の小玉久美さん(35歳)が言う。

「債務危機でもギリシャはこんなに元気ですよとアピールしたら、『もっと危機感を持て』と言われそうですし、かといって、こんなに大変な状況ですと説明すると、『じゃあ、やっぱり行くのをやめよう』と思われそうで……」

 まったくもって、ジレンマだ。それでも、PRしなければならない事情がある。ギリシャの主たる産業は海運業と観光である。ギリシャが債務危機から立ち直るためには、どうしたって経済を盛り上げなければならず、それには、より多くの観光客を引きつけなければならないのだ。

 微力ながら筆者もそれに一役買えないだろうかと思い、日本にあるギリシャ政府観光局を訪れることにした。

生活臭のしない美しいギリシャでは
なぜ人間よりも猫が多いのか 

 ギリシャ政府観光局は、JR四ッ谷駅から歩いて数分のところにある。以前は赤坂にあったが、コスト削減のため、四谷にある雑居ビルの7階に引っ越して来たという。こじんまりしたオフィスでは、3人の日本人ローカルスタッフが働いている。ギリシャへの留学経験もある小玉さんの入局は2007年で、メディア&PR担当である。

 まずは、机の上にギリシャ地図を広げていただき、その正確な位置を把握する。考えてみれば、ギリシャの地図をまじまじと眺めるのはこれが初めてだ。

「ギリシャって、こんなに島が多い国だったんですね……」

「そうなんですよ。島は本当に美しくて、観光に行った方は『どこがいったい経済危機なの?』っておっしゃる方もいるんですけれど」と、小玉さんが説明する。

 北側には、アルバニアやマケドニア、ブルガリアといった国が見える。東側は、ギリシャ人にとっての永遠のライバル、トルコである。

「じつは、ギリシャの観光案内を読んでいて気になったことがありまして。ギリシャをPRする写真には必ずと言っていいほど青い空と美しいエーゲ海、真っ白な建物が写っているのですが、なぜか人間の影が薄いですね。あまり生活臭がしないと言いますか……」

「そう言われれば、そうですね」

「それと、どうしてこんなに猫が多いんでしょうか?」

 参考までに、と見せていただいた雑誌のギリシャ特集もなぜか、猫の写真だらけである。

「それはおそらく、ギリシャ人は猫の尊厳を大事にするからだと思います」

「猫の尊厳?」

「つまり、猫は飼い主の猫である前に1個の猫である、と。ですから、日本のように家の中で飼われていることはなくて、割と自由に外をブラブラ歩いていることが多いんです」

 ギリシャでは、危機の影響で、ある島のレンタル権が売り出された。それをアラブの石油王が買ったという話もあれば、世界トップクラスの高級リゾートがこのタイミングでギリシャにホテルをオープンさせたという話もある。

 小玉さんの説明によると、中国やロシアからの観光客はむしろ増える傾向にあるそうだ。考えようによっては、「今がチャンス」と思う国民もいる、ということだろう。

ギリシャには一体いくつの島がある?
実は曖昧だった「島」の定義

「ところでこの島、全部でいくつあるんでしょうか?」

「それがですね、言う人によってまちまちではっきりしないんです……」

 試しに、市販されているギリシャの観光案内書などを開くと、決まって「国土面積のうち約2割が島」と書いてある。しかし、その具体的な数に関しては「大小2000を超える」とか「2500以上」とか本によってバラバラだ。

 島を数えるのはそんなに大変なことなのか思い、日本ではどうかと調べてみた。すると、小学校や中学校の教科書を作っている教育出版のホームページに、とても丁寧な解説が見つかったので、ここではそれを引用しながらかいつまんで説明する。

 島の数を語る上でまず難しいのは「島」の定義である。すなわち、何を指して島と呼ぶのかは社会習慣によるものであり、明確な定義は存在しないというのである。たとえば、世界では一般にオーストラリアより大きい陸地を大陸、グリーンランドより小さい陸地を島と呼ぶ。これと同様に、日本では四国より大きな陸地を本土、択捉島より小さい陸地を島と呼んでいるというのだ。

 この非常に曖昧な島の定義にしたがうと、その数も当然のことながら曖昧になる。たとえば、国土地理院発行の5万分の1地形図(北方領土を含まず)では、日本の島の数は4345とされている。一方で、『第60回 日本統計年鑑(平成23年)』になると、島の数は6852に増える。

 教育出版のホームページには、調べた担当者の苦労がしのばれる以下のような文章も載っていた。

<結局、さまざまな機関に問い合わせをしてみましたが、日本においても「島の定義」は明確化されていないようで、それぞれ、ある一定の基準を定めて算出するにとどまっているのですね。しかしながら、「6852」 という数字は一つの基準とされているようで、「そのような質問にはこの数字で答えている」という解答もいくつかの機関でいただきました>

「ということで、ギリシャの公式見解としては島はいくつある、ということになるのでしょうか?」と、改めて小玉さんに質問する。

「一応、1500島ということにしておいていただけますか」

オープンでフランクなお年寄りによる
独特のおもてなし文化とは

 問題は、島の数ではない。重要なのは、いかにしてギリシャを救えるか、ということだ。ギリシャを救うことは欧州、ひいては世界経済全体を盛り上げることにもつながり、それは巡り巡って我々の家計にも影響するかも知れない。ここは1つ、広い視野とおおらかな心でギリシャと向き合うべきである。

 聞けば、世界有数の観光地であるギリシャには、独特のおもてなし文化もあるらしい。

「ギリシャ人はとても物怖じしないと言いますか、ある意味、最初からズケズケ入ってきます。横に座っていると、『ね、今、何時?』という感じで気軽にギリシャ語で話しかけてきますし、年配の人などは、たとえるならば、日本の田舎のおじいちゃん、おばあちゃんをもっとオープンにした感じでもありまして……」

 オープンでフランクなお年寄りがいる国・ギリシャ。うん、これはなかなかいいキャッチフレーズになりそうだ。ギリシャ語にはなにせ、「外国からの客人をもてなす」という意味の「フィロクセニア」という言葉もあるくらいなのだ。

 そう思ってギリシャのおもてなしについていろいろと調べていたら、「あれ?」と思う記述も見つかった。

<たとえばギリシャの食堂タベルナに入ったとしよう。たいていの場合、メニューが運ばれて来るのは席に着いてだいぶ経ってからだ。初めてならば、もしかしたら歓迎されていないのではないかと心配になるだろう。ようやくメニューを手にしても、今度はなかなかオーダーを取りに来てくれない。やっと注文をしても料理が出てくるのも遅い。待ちに待った料理を食べ、ゆっくりと皿を下げてもらい、さあ、あとは会計を済ませて店を出るだけと思っても、なかなか勘定書を持って来てくれない。速いサービスが当たり前の日本人からすると、すべてが遅くイライラさせられる>(『ギリシャを知る』荻野矢慶記著、PHPエル新書より)

(ん?)

 いやいや、モノは考えようである。日本人は元来、せっかちすぎるのだ。

ギリシャの恵みはオリーブオイルだけじゃない
「ガム」が新たな商機になるか!?

 すっかり忘れていたが、ギリシャには世界に誇れるオリーブオイルもある。生産量こそ地中海で第3位だが、エクストラバージンオイルの消費量ではトップを走っている。量より質、がギリシャの精神なのである。

「たしかに、ギリシャ人のオリーブオイルへのこだわりは並々ならぬものがあります」と、小玉さんが解説する。

 オリーブオイルの産地と言えばイタリアを思い浮かべる日本人も多いが、じつは、そのイタリアにオリーブの木を持ち込んだのは古代ギリシャの開拓者たちだ。タレントの速水もこみち氏が「追いオリーブ」を流行らせるずっと以前から、ギリシャ人は贅沢なエクストラバージンのオリーブオイルをパンにつけ、魚にもふりかけ、皿の上に脂が浮くほどその味を堪能してきたのである。

 したがって、ギリシャ人にとってのオリーブの木は、たとえるならば、青森県人にとってのリンゴの木以上と言えるだろう。

「アクロポリスの丘で女神アテナと海神ポセイドンがアッティカの丘の主神を巡って争った際、勝敗の決め手となったのが、アテナが槍の一突きで出現させたと言われるオリーブの木だと言われています」

 その誇りの源は、ギリシャ神話にまで遡るのである。

「ところでほかに、ギリシャをアピールするとっておきのものってありますか?」と勢いに乗って質問をする筆者。すると、「ちょっと待て下さいね」と小玉さんが席を立ち、ギリシャの「マスティックガム」を持って来た。じつは、このガムに含まれるマスティハこそ、ギリシャ再生の鍵を握る健康食品だというのである。


ギリシャのヒオス島でのみ採れると言われる樹液、マスティハを使ったガム。手前はマスティハの結晶。ギリシャでは、ケーキやパン、ウゾのような酒に風味をつけるにもこの結晶を使う
 マスティハは、ギリシャのヒオス島でしか栽培できないという樹木から採れる貴重な樹液だ。ギリシャ国内では古くから殺菌作用があると言われ、胃薬代わりにも用いられてきた。そんな天然成分を含むガムを噛めばすなわち、歯茎にも良い。言うなれば、このヒオス・マスティックはギリシャ版「キシリトール」ということになる。

「どうですか?」と、小玉さんがマスティックガムの感想を求めてくる。

 噛みながら、筆者はしばし考えた。

 日本のガムはこのごろとても柔らかく、噛むと潤いが増すことを強調したタイプが多い。それに対し、ギリシャで非常にポピュラーなこのガムは?みごたえがあり、甘味はすぐになくなる。代わって、口の中で支配的になっていくのが、ヒノキにも似た樹木の香りである。

「なんかこう、森の中で木の皮を噛んでいるみたいな……」

 言うなれば、森林浴にも近い感じだ。

「天然ですよね」

「そうそう、その天然です。カブトムシになったような気持ちがします」

 カブトムシ気分になったついでに、ある妙案が浮かんだ。

「この成分を抽出して分析し、化学合成して大量生産すれば、ひょっとして儲かるんじゃないでしょうか?」

 我ながらセコい考えだとは思ったが、ギリシャは今、なんとしても稼がなければならないのである。しかしながら、小玉さんの反応は今ひとつ。

「なにか、問題があるんでしょうか?」

「それがですね……」

 小玉さんが言うには、ギリシャ人は大量生産があまり好きではないらしい。「できない」というよりも、「したくない」のである。

「化学的に合成したものは天然じゃないし、それはマスティハとは違うよね、って言うんです」

平均労働時間は日本人、ドイツ人より長いのになぜ?
働いても稼げないギリシャを救うPR活動とは

 おっしゃる通り、オリーブオイルもマスティハも自然によってもたらされたかけがえのない恵みである。化学合成するなど、もってのほか。よこしまな考えを起こした筆者が浅はかであった、と恥じ入るほかはない。

 が、しかし、とも思う。経済は非情である。哲学があっても、稼がなくては生きていけないのだ。

「ギリシャ人は怠けている訳ではないんです。けっこう、働いてはいるんです」と、小玉さんが説明を続ける。

 ご存じのように、ギリシャには「シエスタ」と呼ばれる昼寝の習慣がある。昼も夜もなくコツコツ働くアリたちからは「だから経済成長しないのだ」と後ろ指さされる要因にもなっているのだが、経済協力開発機構(OECD)の統計(2011年度版)を見ると、ギリシャ人1人あたりの平均労働時間は2032時間と、日本の1728時間やドイツの1411時間と比べても格段に長い。

「ただし、効率的に働いているかと言われると、そこはちょっとアレなんですけれども……」

 予算獲得が厳しい折、ギリシャ政府観光局内では日本人スタッフ3人が話し合い、お金のかからないPR方法も練っていた。

「ホームページでギリシャ旅行体験記を募集したら?」

「あ、それいい、やろう、やろう」

 ということになり、現在、2008年以降にギリシャを旅行したことのある日本人を対象にホームページ上で体験記を募集している。採用のあかつきには、2013年のカレンダーがもらえるそうである。

「ところでそのカレンダー、政府が作ったんですか?」

「いいえ。写真家のご厚意で寄付していただきました。せっかくだから、体験記を寄せていただいた方に差し上げようかと思いまして」

ギリシャ危機の元凶は
「ながら食い」にあった!?


ある日の小玉さんのランチ。中身はお弁当に詰めて持って来て、仕事の合間にドレッシングをかけて食べた。レタスや水菜などの上にギリシャ人こだわりのフェタチーズを乗せ、そこにナッツ類などを振りかけてある。写真だと小さく見えるが、「じつはけっこうボリュームがある」そう。小玉さんはヨーグルトを食べる時にも、森永乳業から首都圏限定で販売されている「濃密ギリシャヨーグルト」を買うことにしている。森永乳業のホームページによると、ギリシャの伝統製法で作られたこのヨーグルトは通常の3倍濃縮で、スプーンを逆さにしても落ちないそうだ
 日本人にギリシャをPRし続ける小玉さんのランチはやはり、ギリシャ食材満載のサラダであった。

「中身はレタスと水菜、フェタチーズ、あとナッツとかアーモンドとか、できるだけギリシャの食材を使って、日本にいながらもギリシャ支援しようかと思いまして」

 自然を愛するギリシャ人は、このフェタチーズもこよなく愛している。小玉さんからいただいた「ギリシャ流おもてなし」の小冊子には、こうも書いてあった。

<ギリシャ人はフェタについてはとてもうるさいのです。柔らかくしっとりとしてマイルドなのを好む人もいれば、できるだけ固くて砕けやすいものがいいという人もいます。独特なヤギ乳の風味を求める人もいます。また、レモンのような風味があってほしいという人もいます>

 あくまでも量より質、人工よりも天然。オリーブオイルとフェタチーズにも並々ならぬこだわりを見せるのが、ギリシャ人なのだ。

「ところで、政府観光局のみなさんは、どれくらいランチタイムがとれるのでしょうか?」

「じつは、ギリシャにはランチタイムという概念がそもそもないんです」

「ええーっ!? じゃ、お昼はどうしているんですか?」 

「仕事の合間に時間を見つけて、ながら食いをしています」

 よくよく聞けば、シエスタの習慣が残っているのは地方のごく一部で、都市部の官公庁や民間企業にそうした習慣はないそう。公務員の場合、午前7時に出社したかと思えば、ランチタイムもなしに夕方まで働き、家に帰るとお茶を飲み、軽くお菓子を頬張って、夜は午後9時頃から食事をするのが一般的なのだそうだ。

 事ここに至り、筆者はようやく理解した。危機の元凶は、この「ながら食い」にあったのだ。ギリシャ本来の気候・風土と都市化がもたらすワークスタイルのミスマッチが、危機を引き起こしていたのである。

 ギリシャはおそらく、どこまで行ってもギリシャであり続ける。ドイツ人や日本人にはなれないし、きっと、ならない方がいいのである。
http://diamond.jp/articles/print/28608  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2012年12月27日 10:49:17 : WaxXbB3YAI
ユーロの運命:すべての希望が絶たれたわけではない
2012年12月27日(Thu) The Economist
(英エコノミスト誌 2012年12月22・29日合併号)

ユーロは2012年を生き延びたが、完治するまでにはまだまだ時間がかかるだろう。


ユーロは一体性を保ったまま2012年を生き延びた〔AFPBB News〕

 終末論者たちが発言を撤回している。ギリシャはユーロから離脱していない。ユーロは崩壊しなかった。離脱と崩壊は2013年も起きないだろう。

 シティグループのウィレム・ブイター氏は、「Grexit(グリグジット)」の確率を90%から60%に引き下げた。格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は先日、ギリシャの信用格付けを6段階引き上げてBマイナスとした。

 しかし、悲観論者は、ユーロの問題を過大評価したというよりは、むしろ、ユーロ解体を食い止めるだけのことをする政治的意思を過小評価していた。その意思がユーロの構造的な欠陥を是正するのには力不足だとしても、だ。

 欧州連合(EU)のマーストリヒト条約は、単一国家を持たない単一通貨を生み出した。各国は、過剰債務を積み上げることを防ぐための規則(概して無視された)を設けたうえで、自国の予算と経済政策に対する責任を負うことになっていた。救済は、(加盟国による)表立ったものも(欧州中央銀行=ECB=による)裏からのものも禁止されていた。

神の救いはまだ遠いが・・・

 しかし、財政的混乱の解決は徐々に、全員で取り組む試練になった。もしダンテの「神曲地獄篇」だったら、ユーロは、追従者が糞尿の海に沈められる第8圏(最後から2番目の圏)から、大食漢に泥の雨が降る第3圏へ移ったことになる。神の救いはまだ遠い。

 ギリシャ、アイルランド、ポルトガルを救済するために使われた一時的な救済基金が、欧州安定メカニズム(ESM)という形で恒久化されたことは助けになる。また、ユーロ圏が再び、最初に罪を犯したギリシャを救う決意を固めたことも役に立つ。延び延びになっていた救済金の支払いは再開され、財政目標は緩和された。

 ギリシャに対する融資の条件も緩和された。時機が来れば(ドイツの選挙後)、このソフトな債務再編は恐らく、ハードな債務減免に発展するだろう。

 スペインとイタリアの問題も、銀行に対する責任(およびリスク)の共有を促した。ユーロ圏の首脳たちが「銀行と政府の悪循環」を断つことを約束してからわずか半年後の12月12日、各国財務相は(ECBを軸とした)銀行監督の一元化に向けた法的枠組みを承認した。これが動き出すと、ESMは銀行に直接資本注入できるようになるかもしれない。

 次の措置は、(共同の預金保証制度はまだないにせよ)特定の基金を共有し、経営難に陥った銀行を整理したり再編したりする共通の破綻処理メカニズムの創設だ。批判的な向きからすると、銀行同盟の創設に向けた取り組みは時間がかかっているように見えるかもしれないが、欧州連合(EU)の標準からすると、電光石火の速さで形成されつつある。

 またユーロ圏は、厳しい財政規則に対するこだわりを捨てつつある。ユーロ圏の首脳は来年6月、各国が構造改革の実施を誓う「契約」を取り交わすという提案について議論する予定になっている。困窮している国は、痛みを伴う改革の影響を和らげるために資金の供給を受けられる仕組みだ。


ECBのマリオ・ドラギ総裁〔AFPBB News〕

 しかし2012年に実施された施策の中で圧倒的に重要だったのは、ECBのマリオ・ドラギ総裁が、ユーロ解体を阻止するためには「どんな措置も講じる」と宣誓したことだ。

 ECBは、当該国が改革を受け入れ、ESMも債券購入に参加するのであれば、苦境にある国の短期国債を「無制限」に購入する用意があると述べた。以来、イタリアとスペインの借り入れコストは急低下した。

慢心の危険

 これらは皆歓迎すべきことだが、慢心の危険がある。まずECBから見ていこう。ECBのコミットメントはまだ試されていない。スペインは救済を要請するだろうか? ドイツは同意するだろうか? ECBの介入には、隠れた制約があるのではないか? ユーロ圏がECBの大型バズーカ砲を使うことを渋るように見えたら、市場は再び反転するかもしれない。

 今のところ、安定性の向上は経済の支えとなるだろう。しかしECBによると、ユーロ圏は2012年終盤にかけて景気後退期に入り、2013年後半になって回復するものの、その速度は遅い見込みだ。

 苦境にあるユーロ圏周縁国では景気後退がより深刻で、失業率はまだ上昇している(スペインとギリシャでは、労働者の25%以上、若年層の半数が失業している)。経済成長が戻ってこない限り、財政赤字を埋めることは難しくなり、債務負担は重くなり、銀行は脆弱なままだろう。

 長引く景気後退と高失業率により、政治に対する反発の不安も高まる。ギリシャは常に揺らいでいる。イタリアは再び不確実になっている。実務家のマリオ・モンティ首相は近く辞任し、次の選挙が2月に行われる見込みだ。モンティ氏の前任者であるシルビオ・ベルルスコーニ氏は議論の渦中に戻ってきて、歳出削減と「ドイツの覇権」を非難している。

 2013年初めに最終的にまとまるキプロスの救済も油断ならない。支援総額は小さいが、キプロスが返済するには大きすぎる額かもしれない。EU加盟国には、キプロスの低税率やロシアとの怪しい関係を嫌う国も多い。

もっと良い行程表はないものか?

 ユーロの運命は債務国のみならず、債権国、中でもドイツの選択にも大きくかかってくる。2013年秋に選挙が近づいてきていることから、アンゲラ・メルケル首相はドイツの拠出金を増やすことに一段と慎重になっていくだろう。

 フランスによるユーロ共同債構想は何カ月も前に却下された。フランスは代案として経済的ショックに対抗するためにユーロ圏共通の中央予算の構築を提案したが、12月13〜14日に開かれたEU首脳会議で否決された。

 フランスの案やその他の提案は、(条約改定も含む)長期改革に向けた欧州委員会の「青写真」の一環であり、EU大統領のヘルマン・ファンロンパイ氏が立案した、それと似てはいるがもっと限定的な「行程表」の一部でもあった。

 危機がピークに達していた時は、EUの首脳たちは市場を安心させるために長期ビジョンを打ち出す必要があると感じていた。市場の圧力が消えた今、そのビジョンも消えてしまった。

 「(構想は)死んだのではない。冬眠しているだけだ」と、フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ欧州・貿易相は言う。しかし、ユーロの再設計に向けた大規模な条約改定の見通しが後退していることは同氏も認めている。

 先を見通せる限りにおいては、ユーロ圏は真の財政連邦主義よりも、むしろ規則を厳格化し、非常時の資金を増やし、より積極的な中央銀行を備えた修正版マーストリヒト体制が土台になる。

 ユーロが生き残るにはこれで十分かもしれないが、繁栄するには不十分だ。徹底的な改革を行ったとしても、周縁国の景気回復は、よくて時間がかかる。最悪の場合、長期計画の欠如から、市場が再びユーロを金融地獄の階段から突き落とすことになるかもしれない。


 

終末の日を無事に越えることができた世界
明るい明日に向かってリセットしよう
2012年12月27日(Thu) 竹野 敏貴
 どうやら我々は生きのびることができたようだ。「世界終末の日」は訪れなかったのだ。

 5000年以上続く古代マヤの長期暦がこの12月21日をもって途切れてしまうということから取り沙汰されてきた終末論は、現実のものとはならなかった。

 そんなマヤ暦のことが広く知られるようになったのは、1987年、「The Mayan Factor」(ホゼ・アグエイラス著)が米国で出版されてからだった。

ハリウッド映画が引き金になった世界終末論


グアテマラ アティトラン湖
 しかし、今回、これほどまでに騒ぎたてられるようになったのは、それを終末論としてとらえた2009年公開のハリウッド映画『2012』が、世界中でヒットしたからと言えるだろう。

 その内容は、終末に向かう世界から「選ばれし者」がノアの方舟の如き巨大脱出船に乗り込んで人類存続を図るというSF映画の古典『地球最後の日』(1951)あたりから続く米国らしいもの。

 そして、ディザスタームービーにつきもののパニック状態に陥った人々の描写のなかには、大勢の人がマヤ遺跡で自殺したことを伝えるニュース映像がある。

 しかし、その映像の地となった現実のティカル遺跡(グアテマラ)では、21日、「新たな時代」に入ることが祝われる式典が無事行われた。

 そのティカルのピラミッドが映し出され、地下にある秘密基地から宇宙へと飛び出していく『007/ムーンレイカー』(1979)のボンドの敵役は、毒ガスによるテロ行為で人類を殲滅に至らしめ、自らが選民の主となり新帝国をつくろうとする。

 うまく考えられたプロットにも思えるのだが、実は、この映画、マヤの終末論を意識して作られたわけではなく、それどころか、その地はアマゾンの奥地との設定。マヤ遺跡が映し出されることさえ必然性ゼロなのである。

 単に、世界の未知なる風景を見せたい、との作り手の狙いあっての選択だったらしい。

 今回の騒動を醒めた目で見ていると、マヤの人々は非科学的であるかのごとく思えたことだろう。しかし、事実は正反対。

天体の動きに合わせて緻密に設計された遺跡


グアテマラ・ティカル
 彼らは星々を丹念に記録してきた天文学に秀でた民族。巨大ピラミッドも天体の動きに合わせるように実に緻密に設計され建造されたものなのだ。

 記録もしっかり残されていたらしいのだが、あとからやって来たスペイン人たちにすっかり焼き尽くされてしまい、現存しているものはごく僅か。

 もっと多くが残されていれば、マヤ文明のみならず天文学的資料としても貴重なものとなったはずだけに残念である。

 こんなところにも旧世界が新世界に残した負の遺産が見受けられるが、そんな旧世界で、アイルランドの司教ジェームズ・アッシャーが聖書を根拠としておよそ4000年という地球の年齢を初めて示したのは17世紀になってからのこと。

 それ以後、進歩を続ける自然科学による推測でも、伸び縮みを繰り返し、なかなか確定しなかった。

 それが、20世紀に入ったばかりのセントルイス万博でアーネスト・ラザフォードが、そしてアルベルト・アインシュタインをはじめとした天才・俊英たちが理論立てと実験を繰り返していくことで、いまでは宇宙は134億年、地球は46億年というのが平均的数字として受け入れられるようになっている。

 こうして過去を探るにあたり、時間と空間との関係は大切な要素となるが、そんなことを世に認識させるのに一役買ったのが1968年に始まる「猿の惑星」シリーズの5作品。

 はるか遠方の宇宙探索という空間的に離れた地に行ったはずの宇宙飛行士が、実際には空間的には同一だが時間的遠方であるはるか未来の地球に着いてしまったことから始まる物語である。

 いまとなっては何と言うこともないプロットとも言えそうだが、当時はこれが受けに受け、次々と生み出されていく続編は、時空を超えた旅をしながら、隙間を埋めるように話が展開していくものだった。

 こうした映画の作り手の努力は、より良き未来を作り出すため、隙間となっている未知なる事象を解明しようとする科学者の立場とも似たものかもしれない。

安全宣言を出した科学者が求刑以上の実刑判決


メキシコ・チチェンイッツァのマヤ遺跡でロケされた映画『太陽の帝王』
 そんな科学者たちにとって衝撃的な1つの判決が、今年、イタリアで下された。

 2009年4月6日、イタリア中部の古都ラクイラを襲ったM6.3の直下型大地震では、300人以上の市民が犠牲となった。

 ところが、以前から小さな地震が頻発していたこの地では、その6日前、科学者と行政担当者が災害対策委員会を開き、大地震の予兆ではないとの「安全宣言」を出したばかりだったのである。

 そして、委員会メンバーの科学者5人と国の担当者2人は過失致死で刑事告訴され、今年10月、禁錮4年という求刑を上回る6年の実刑判決が出されたのである。

 日本では、その判決に先立つ8月末、南海トラフの巨大地震の被害想定が出されているし、原発の活断層問題も現在進行形で紛糾している。

科学の限界と本質を深く考えるとき

 国民の生死を分けかねない重要な災害対策に、科学の力がこれまで以上に必要とされているいま、このイタリアの判決はとても他人事で済まされるものではないだろう。

 一連のディザスタームービーには、必ずと言っていいほど、危険を予知をした科学者の必死の訴えが徒労に終わる姿が描かれている。

 災害対策というもの、科学というものの限界そして本質、そういったことについて、科学者や行政担当者のみならず、国民自身がより深く考えなければならないときが来ているのではないだろうか。

 今回幸運にも(?)終末の日はやって来なかった。とはいえ、世に不安は蔓延している。

 昨年日本を襲った東日本大震災と原発事故という大災禍の後遺症に苦しむなか、今年も世界中で深刻な天災人災が続発した。

 米国大統領選直前に東海岸を襲ったハリケーン・サンディは、世界の中心を自負するニューヨークの都市機能をも麻痺させた。

地球も太陽もいずれ最後の日を迎える


猿の惑星シリーズ第2弾「続猿の惑星」
 穀倉地帯の旱魃は食糧問題を引き起こし、頻発する洪水は人々の生活を破壊する。地震や火山噴火も相変わらず各地で繰り返され、次なる被害への心配は尽きない。

 人間が作り出した武器による戦争は言うまでもなく、通貨による経済崩壊やネット社会におけるサイバーテロも問題は大きくなっていくばかりだ。

 昨年の第1回目のコラムで、「それ(マヤの終末論)よりも起こる可能性が極めて高い『2012年問題』がある。日本を地理的にそして政治経済的に取り巻く多くの国のトップが交代することである。米国、ロシア、中国、台湾、フランスそして金日成生誕100年となる北朝鮮もその可能性が高い」と展望した今年は、そこに我が日本自身も、自公政権への揺り戻しという大きな動きが加わった1年となった。

 そんななか、復帰したロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、今回の終末論争に関してこんなことを言っている。

 「世界がいつ終わるかは分かっている。45億年先だ」

 つまり太陽の寿命が尽きるときということ。そうなれば、生命体はすでに死滅しているわけだ。

 人類には必ず終末の日がやって来る。地球にも、そして太陽にも。

 そんなこと思い悩まず、一日一日をしっかり生きていこうということだ。

 今年も1年間、ありがとうございました。新たなる年が、皆様にとって素晴らしきものになるよう、お祈りしております。

(本文おわり、次ページ以降は本文で紹介した映画についての紹介。映画の番号は第1回からの通し番号)

(284)再 2012 (664)地球最後の日 (665)007/ムーンレイカー
285. (再) 2012 2009年米国映画


2012
(監督)ローランド・エメリッヒ
(出演)ジョン・キューザック、オリヴァー・プラット

 天文学に秀でたマヤ文明の暦が2012年12月21日で途切れていることから、その日に地球に天変地異が発生するという説は以前からよく取り上げられていた。

 それを、地球全体を襲う大災害ととらえ、選ばれた人々が生き残るべく造られたのが現代のノアの方舟たる巨大船。

 そんな大災害を超人的行動で逃げ切った主人公一家が、その巨大船に乗って生き延びるまでを描いたディザスタームービー。

 人類そのものに対する指針やマヤ文明の示した教訓といった要素は全くと言っていいほど含まれておらず、迫力満点の災害シーンだけが見物の作品となっている。

664.地球最後の日 When worlds collide 1951年米国映画

(監督)ルドルフ・マテ
(出演)リチャード・デア、バーバラ・ラッシュ

 見つかったばかりの新星ベラスは、衛星とともに地球に異常接近しつつあった。研究を重ねた結果では、地球に衝突するようだ。

 国連で危機は発表されたが、権威の反対で対策は練られずじまい。

 そこで、億万長者に資金を提供してもらうことで、脱出ロケット建造が始まるが・・・。

 1950年代から60年代にかけて、数々のSF映画の古典を製作したジョージ・パルによる傑作。

665.007/ムーンレイカー Moonraker 1979年英国映画


007 ムーンレイカー
(監督)ルイス・ギルバート
(出演)ロジャー・ムーア、ロイス・チャイルズ
(主題歌)シャーリー・バッシー

 英国へと輸送中のスペースシャトル「ムーンレイカー」が上空でハイジャックされ、どこかへ消えてしまった。

 捜査線上に浮かんだ独自に宇宙センターを持つ大物科学者を追って、ジェームズ・ボンドは、米国カリフォルニア、イタリアのベネチア、ブラジルのリオ、アマゾンと世界各地をかけ巡る。

 ロジャー・ムーアのコミカルでマンガチックなボンドが、ついに宇宙にまで飛び出していった作品。

 イアン・フレミングの原作では核ミサイルがロンドンを狙うが、ちょうどスペースシャトル計画が進行中だったことから、ストーリーは書き換えられた。


  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民78掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民78掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧