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現時点では円売りは、そろそろリスキーになっている

2013年 1月 08日 10:06 JST
日本企業トップ、今度は円安に警戒感−消費税率引き上げ延期への懸念の声も　
By PHRED DVORAK, KANA INAGAKI

　【東京】円安への措置を取るよう何カ月も政府に要求してきた日本企業トップの一部は今では、円が過度に急激に下落し、それが良くない理由によるものである場合、また、経済に打撃を与える燃料コスト高につながる場合、円安は行き過ぎたものになる可能性があると警戒している。

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Bloomberg
東芝の佐々木則夫社長

　3大経済団体の新年会に出席した日本企業の経営者らは、安倍晋三政権の景気浮揚と円高是正の提案を称賛した。円高によって日本の輸出利益は減少し、日本製品の海外での販売は難しくなるからだ。

　ただ、企業トップは景気が弱いままであったり、膨らんだ政府債務が放置されたままだと、投資家は日本に対する信認を失って日本から逃げ出し、円が暴落する恐れがあると警戒している。

　こうした慎重な見方は、日本が20年に及ぶ景気低迷とデフレから脱しようとしている時に、日本が直面する問題がいかに複雑であるかを示すものだ。円高はここ数年、輸出に依存する電子機器や自動車のメーカーを苦しめている。

　建設機器メーカー、コマツの坂根正弘会長は、日本売りの傾向が表れて円が暴落することを恐れていると述べた。同会長は、景気低迷によって政府が消費税引き上げ―格付け会社などが日本の財政安定化にとってカギになるとみている策―の実施を遅らせるのではないか、ということを特に懸念していると指摘した。日本の政府債務は先進国の中でトップで、経済規模の倍以上に達している。

　日産自動車の志賀俊之最高執行責任者（COO）は、同社も一段の円安を期待しているが、投資家の日本への信認が失われれば、「悪い円安」がもたらされる可能性があるとの見解を示した。

　東芝の佐々木則夫社長は、円安では2011年の原子力発電所事故後にほとんどの原発が運転停止となっていることから輸入が増えている燃料の価格が高くなり、経済を衰弱させる恐れがあると述べた。同社長は円安について、「円安は日本の全体の景気にとっては良いことだと思うが、一番心配なのはエネルギー価格。エネルギーと円安をどういう風にうまく調整した上で円安を実現するかということがとても大切」と述べた。

　昨年12月の総選挙で勝利した自民党の総裁である安倍首相は、公共事業の拡大や非常に積極的な金融緩和策など、景気を浮揚しデフレから脱却し、円高を是正するために強力な施策を取ると約束した。これを受けて円の対ドル相場は、安倍氏が選挙戦に乗り出した11月半ば以降、約11％下落した。同相場は4日には1ドル＝88円48銭と、10年7月以来の安値をつけた。7日は87円80銭だった。

　日産やトヨタ自動車など多くの製造業者は1ドル＝100円ないしそれ以上の円安を望んでいる。トヨタは、為替相場の1円の変動によって、年間の営業利益は350億円変動するとしている。日産ではこれが200億円、ホンダは160億円になるという。

　エコノミストは、高水準の政府債務がギリシャ型の財政危機につながらないということを投資家にあらためて保証するには、日本は財政を管理可能なものにし続けなければならない、と警告している。一部の市場ウォッチャーや企業は、輸入価格の上昇が問題になる水準にまで行けば、円安は日本経済を弱体化させる恐れがあるとしている。

　ローソンの新浪剛史社長は、同社のような輸入業者でも円安で利益を得られるとし、その理由として、円安で輸出業者が雇用を維持し、消費を刺激できるからだと指摘した。ただ、同社長も、景気浮揚策の中に消費税引き上げの延期を入れるべきではないとし、投資家は日本の債務管理能力への信認を失えば、日本国債売りに出る可能性があると述べた。