あなたがそうして人に憐れみや悲哀を感じてしまって居る間は、あなたは、あなたと誰かを二分して、他方の側面としてのものを差別して、自分だけは「普通である」ことを決め込もうとしているだけです。

あなたがもし他者の悪事と思える行為に恐れを感じとり、自分にもそうした側面が内在するのではないかという疑いを抱けば、ますますそうした人格を自分の中から遠ざけようとし、そうすればする程、そうした人格を責めたてるようになり、その反対側では、「自分はそうではない」と言い聞かせたりすることでしょう。それではあなたは、ますます、そのように嫌悪する人格に食いつくようになっていき、そうした人を批判し攻撃し続ける様になるでしょうし、それはその事に気づく迄、あなた以外誰にも止められなくなるでしょう。あなた方の手にした正義や道徳といった価値観は、その思い上がりによって現在では、自らの正当性のみを論ずる基となって、悪用されているとも言えるものです。そこに正義など在りません。

同様に悲哀や憐れみと云ったもので人を分け隔てて視る「思いやり」といった事も同様の差別となります。そうすることで、あなたの視野からまったく、苦しむ人々は減らない様に感じるでしょうし、実際そうなるでしょう。
あなたがそうして誰かに人として望まない「側面」を感じ取り、それを悲観し憐れむというのなら、それは自分にも同様の想いを持っている証拠です。自身ではそれを気づかない様にしているだけで、隠された部分としてあなたの中に存在し続けています。物事全般、悲観に根ざした現実感が漂い、それが消え去らないと云う事になります。そして、その問題の原因を自分の外に探し出し、みつけては、それを攻撃し排除する事で解決出来ると思い込んでしまうようになります。

大抵の人間の関係性の悪化は大方その通りの事が原因です。本質的な源泉としての自分と神の一体的な繋がりについて気づけない為に理解できていません。というより、神という言葉に人間的な感性を付与して認識できるのは人間だけで、人の作り上げた想像上の神と、実際的な存在自体としての神という区別すらついて居ないと云うのが現状です。自身の存在の全貌すら掴めない存在が、その部分を統括する上位意識の把握する概念的理解を追い越す事など到底起こりえません。故にあなたは例えれば、人体の各臓器を形成する一個の細胞であり、神の全体を形成する一部分の中の更に一部を為しています。それぞれが個別の意識を有し、人類としての記憶の全体部分、そして全細胞の記憶に担当する部分に属し、知識の源泉はそれらあなたの意識が根付く、根幹としての上位意識の部分に頼るほか在りません。つまり、それがあなた方の言うもうひとつの自分、本当の自分、善の意識、愛の意識、本心と云ったものです。
あなたが、他者を嫌悪するなどして、そこに望まないとする神の側面を見出そうとするのなら、それは人類、そして自分の中にある本当の人間的役割の価値を見出す為の努力不足と、考え方の誤りに気づくべきなのです。それを示してくれる存在が、あなた方の言う悲哀、又は嫌悪する存在です。そうした一人一人が全体と共に在るということの気付きの為に、街頭に立つ彼らが彷徨い歩く姿であなた方をそうした気づきに向かって導いているともいえるのです。彼らに投影されたものとは、現在の社会全般に対する人々の抱く怖れと悲観、そして嫌悪心です。

故に神の働きとは、あなた方全体の意識の働き如何で方向性はいくらでも変化するものです。
悪魔とあなた方が呼ぶ働きもまた、あなた方の差別意識の生み出した働きでもあり、更には、そのことに対する認識の無さ、無自覚さと無責任さでもあります。
人の作りあげた善悪の概念により創造された神と悪魔、正と邪、そこに分け隔てられるものは何一つとしてありません。あるのは、人の差別的眼差しだけです。

あなた方の大きな思い上がりと思い違いが、本来のエネルギーの歪みを大きくし、本来の自然と人間の関わり、そして全体の生命たるものの繋がりとして、共生の意味すべく事柄への認識を悉く誤らせてきました。そうした意識の働かせ方に問題と原因が在るのです。あなた方がそうした理解を持って、エネルギーの転換を決めて、対等にすべてを見やり、つまり何をも臆せず、服従もせず、ただし、手助けをするというようにして、嫌悪や悲哀、つまり憐れみや思いやりなどの一切の差別を止める反面、ただの愛情を注ぐという様に働けばよいのです。それで世界は変わります。

キリスト律法、キリスト契約は愛の律法、愛の契約だと言われます。
生けるもの全てを愛せるようになったらどんなに楽だろう。
汝の敵、汝の嫌いな者、汝を憎む者、汝に実害を与える者をも愛せよですからね。