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お金より、大事なものがあるのである。(おっさんひとり飯)
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投稿者 五月晴郎 日時 2014 年 7 月 22 日 21:45:49: ulZUCBWYQe7Lk
 

http://ossanhitorimeshi.net/?p=9994#more-9994

2014年7月20日

知り合いの女将から呼び出され、夜中の1時から先斗町と祇園のバーへ行った。

お金より、大事なものがあるのである。

「タイミングのよい人」というのがいるのである。ぼくがお世話になっている飲み屋の女将がまさにそれで、いつも絶妙のタイミングで声を掛けてくる。

きのうは珍しく、一日のすべての段取りが予定通りに進行し、午前1時、酒も飲み終わり、歯も磨き終わってホッと一息、「そろそろ寝ようか」と思っていた。あとはこのまま布団に入れば、完璧な一日だ。

電源をOFFにしようと、携帯電話に手を伸ばした。その瞬間、電話が鳴った。

女将である。

「常連のお客さんの息子さんが働くバーへ、行ってみようと思うのだけれど、おばはん一人では何だから、一緒につき合ってくれへん?」

すでにほろ酔い加減のようだ。

普通なら、断るところだ。こちらは寝る支度を、もう全て済ませている。

しかし、タイミングが、あまりに見事すぎるだろう。こちらがホッと一息、無防備になるそのタイミングを、まさに狙いすましたようだ。

それで答えてしまうのである。

「わかりました、それじゃ、10分くらいで伺います・・・」

ぼくは部屋着から外着に着替え、家を出た。

バーは先斗町にあった。

南から4軒目、東側にある「凛ト」(Rinto)という名前の店で、地下に降りるようになっている。

先斗町の東側地下だから、眼前には鴨川が流れている。

カウンターの正面には大きな窓が設えられ、鴨川の夜景を楽しみながら、酒を飲める趣向である。

調度は和風に整えられ、カウンターは幅1メートルはあろうかという、白木の一枚板。

入り口は背を屈めて入り、天井も低いから、「茶室」のような趣きもある。

女将が山崎のハイボールを頼んだから、ぼくも同じものにする。

すっきりとして飲みやすいのは、言うまでもないことだ。

メニューを見ると、バーボンなら、安いのは800円からある。チャージを1000円くらいは取られるだろうけれど、このあたりの店としては安いのではないだろうか。

店は4月1日のオープンだが、「息子さん」は、この7月から働きはじめ、まだ実質一週間とのことである。

「がんばって仕事を覚えたいと思います!」

いかにも育ちの良さそうな、イケメンの好青年だ。

店長とも話になった。オーナーが「川べりの物件」にこだわって、この場所は、ずいぶん前から目をつけていたそうだ。

もう何年か、空き物件になっていたとのことなのだが、ところが家主が、なかなか首を縦に振らない。

家主が経営する階上の飲食店へ、オーナーは半年以上にわたって通い詰め、ようやく貸してもらうことを承諾してもらったそうだ。

「京都は、そうなのよ・・・」

女将は言う。

「お金」のことだけ考えれば、物件は空けずに、貸した方がいいに決まっている。でも京都では、人間関係がきちんとできた人でなければ、貸さない家主が多いそうだ。

「その代わり、一旦親しくなってしまえば、その後は長いけどね。」

女将はニッコリとしながらつけ加えた。

ハイボールを2杯飲み、店を出ることになった。

「知ってるところがあるから、そこへ行こう。」

女将は先を、スタスタと歩いて行く。

目指す先はお好み屋だったのだが、着いてみたら、そこはもう閉まっていた。そこで仕方がないから、近くのバーに、飛び込みで入ることにした。

入った先は、本格バー。ぼくより少し年上らしいマスターが、一人でやっているようだ。

酒の品揃えは膨大で、マスターは、京都ホテルのバーに20年あまり勤めて、そのあと15年前、独立したとのことだった。

「おすすめ」のカクテルを作ってもらったら、出てきたのはモヒート。


カクテルはほとんど飲まないので、比較することはできないが、うまかった。

マスターも女将も、飲食業は長いから、どちらからともなく話は「お店」のことになる。ぼくは主に聞き役だったが、興味深いことが多かった。

「ぼくは、お客さんを断ることも多いんですよ。」

マスターは言う。言葉遣いや態度が乱暴だと、入り口を入ってきて、一目見て断ることもあるという。

「それは私も同じだわ・・・」

女将もうなずく。

「自分とは合わない」と思ったら、断ってしまうのだそうだ。

この「お客さんを断る」ことは、ぼくは京都へ来て初めて知った。東京などなら、お客さんが迷惑行為を働けば、出ていってもらうことはあるだろうが、来たお客さんを、その瞬間に断ることは、まずないのではないだろうか。

京都に「一見お断り」の店があるのは、よく知られているだろう。でもこのバーや、女将の飲み屋は、一見さんを全て断っているのではなく、「不適切だ」とマスターなり、女将なりが判断した人についてのみ、断るのである。

ぼくも一度、よく行くバーで、お客さんを断っているのを見たことがある。ヘベレケの、そのバーにはいかにも場違いな、年配のサラリーマンがドアを開けた。

するとバーのマスターは、その瞬間、

「ゴメンナサイ!」

一撃のもとに追い返してしまう。

サラリーマンも、別に文句を言うでもなく、そのまま大人しくドアを閉める。

「場を壊し、他のお客さんに迷惑をかけるからなんですよ。」

マスターは言う。

「仮にそのとき、他にお客さんがいなくても、後からお客さんが、もし来れば、やっぱり迷惑になるしね。」

女将も同意する。

「どんな人だって来てくれれば、その方が儲けになるじゃないかと言う人もいるけれど、それではいい店はできないですよ」

と、マスター。女将も続けて、

「本当は入れる席があるのに、それでも良くないお客さんを断れるかどうかが、この商売をやっていくには大事だと思うわ・・・」

うなずきながら、呟くのである。

ぼくは話を聞きながら、

「京都は、いい場所だ・・・」

つくづく思った。さっきの、なかなか空き物件を貸さない家主にしても、このお客さんを断る話にしても、こういう考え方が広く行き渡っているからこそ、人が人らしく、いられる空間ができるのだろう。

今の日本は、「金がすべて」の世の中に、どんどんなっているように思える。金が儲かり、企業が繁栄することが「善」で、「そのためなら何をしてもかまわない」とすら、言えるようになりつつあるのではないだろうか。

電力会社を救済するため、原発事故の責任を追求せず、事故処理も十分行わない。安全が確認されていない原発を再稼働し、さらに輸出までしようとする。

非正規雇用を認めることで、人件費を節約させ、さらに残業代も払わずに済むようにする。

挙句の果てに、兵器まで、輸出を始めようとしている。

トップがそうなら、人心も腐っていくだろう。人を差別することで、自己を満足させることが当り前に横行し、本も雑誌も、差別を煽るようなことを書くことで、よく売れるそうである。

そのような風潮に、歯止めをかけるためには、様々な活動が必要だろう。きょうも大阪で、差別反対のデモが行われ、大宮からも大勢の若者が参加している。

しかし日本が、ほんとうの意味で変わるためには、「お金よりも大事なものがある」ことを、一人ひとりが自覚するしかないのではないだろうか。

お金が十分入らなくなることは、もちろん誰でも不安である。でもその不安ときちんと闘い、それよりも大事なことを優先しようとすることで、初めて、人は人らしく、生きられるのではないか。

ぼくはきのう、そのためのまさに手本を、見たような思いがしたのである。

2軒目のバーも、お酒を2杯飲んで出た。

女将と別れ、家に帰ったらもう4時で、あり金も残らずなくなった。

しかし、いや何、かまわないのだ。

お金は使い切るからこそ、また入ってくるものである。  

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コメント
 
01. 2014年8月01日 21:01:58 : n9qOtsAPCA
いい話でした、有難うございます。

02. 2014年8月13日 13:31:01 : tTLn95xfrE
普通の話がいい話になる現代。
金より大切なものがあるとかあたりまあえだろw

03. 五月晴郎 2014年8月15日 04:15:31 : ulZUCBWYQe7Lk : r2hkpE6I9E
>普通の話がいい話になる現代

こういう紋切り言葉、それも三昔くらい前の、が多いのが、ある時期からの阿修羅コメント欄の特徴。
マジレスすっと筆者は「今」「現在」「プレゼント」な状況に関し語っているんだろが。
それを、こんな(「普通の話がいい話になる現代」なんて)つまんねえ30年前の田舎の駅の駅前に貼ってあった由美かおるや水原弘のキンチョーの看板みたいなの貼り付けて。
だいいち、あーた、現在以前から生きてきたのか?んなわけねーだろ。
反省しなさいよ。


04. 五月晴郎 2014年8月15日 04:17:18 : ulZUCBWYQe7Lk : r2hkpE6I9E
× 現在以前から生きてきたのか?んなわけねーだろ。

○ 現代以前から生きてきたのか?んなわけねーだろ。


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