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第3回 太陽嵐で大規模停電が起きるわけ
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投稿者 MR 日時 2012 年 6 月 27 日 10:56:22: cT5Wxjlo3Xe3.
 

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第3回 太陽嵐で大規模停電が起きるわけ

情報通信研究機構・宇宙環境インフォマティクス研究室【3】

2012年6月27日 水曜日 川端 裕人

 長妻さんは、現在、「宇宙天気予報」を行う研究室の研究マネージャーであるわけだが、もともとは、大学で人工衛星を使ったオーロラの研究をしていたという。オーロラといえば、極域で見られる夜空の一大ページェントであり、地球上でもっとも幻想的な現象の一つだろう。

 しかし、長妻さんは、オーロラの研究の中で、太陽活動と宇宙環境の関係に関心を移していく。

「実はオーロラ現象のもとになっているのがやっぱり太陽活動なわけです。しかもその太陽活動によって電離層や磁気圏が乱れたりとか、実際に衛星が壊れたりするということがわかってきまして、その方面の研究に進みたいと思ったわけです」

 というわけで、オーロラ研究から発した長妻さんの研究領域は、今は地球の磁場に捉えられた高エネルギーの電子や陽子からなる帯状の構造、放射線帯(ヴァン・アレン帯)に移っているという。「宇宙天気予報」の中で、地上に直接影響を与える「磁気嵐」にも関係してくる分野だ。「磁気嵐」の後に放射線帯の電子が増加することがあり、それによって、前に見たプロトン現象とは別に、衛星の故障や誤動作が引き起こされることもあるらしい。


(写真:藤谷清美)
 前提として、高校の理科をちょっと復習。

 地球は(実は太陽も)大きな磁石であり、周囲には磁気圏と呼ばれる磁場の広がりがある。太陽風、つまり太陽から吹き付けてくるプラズマは帯電しているので、この磁気圏が楯になって大部分が地球から逸らされたり、捕捉されたりする。高エネルギーのプラズマが補足されている領域が放射線帯だ。特に強い太陽風が吹き付けてくると、地球の磁気圏そのものがじょう乱を受ける。大きなじょう乱は磁気嵐と呼ばれる。極地方ではオーロラが活発になり、非常に幻想的な光景が繰り広げられる。

 と、ここくらいまでは高校で地学を履修した人は知っているのではないか、という話。

ドーナツ状に地球を囲んでいる部分がヴァン・アレン帯(イメージ)(左)。そして、ヴァン・アレン帯は「内帯」と「外帯」の2重構造になっている。(右)(画像提供:NICT)
2012年6月号特集「太陽嵐の衝撃」
本誌では宇宙天気予報の対象である太陽嵐の最前線をレポートしています。フォトギャラリーもあるWebでの記事の紹介はこちら。ぜひあわせてご覧ください。

 ちなみに、強い太陽風は、CME現象が起源だ。加えて、これまでふれていなかったけれど、太陽を覆うプラズマ、コロナの中で、特別温度が低い部分、コロナホールと呼ばれる部分も強い太陽風の発生源となっていて、地球での磁気嵐の原因となる。

 そして、極端に大きな磁気嵐が来ると、地上にも様々な影響があるのだ。


(写真:藤谷清美)
「地磁気の大きな乱れ、磁気嵐は、地球の電離層や、それよりもちょっと外側の磁気圏に電流が流れることによって生じるんです。本当に大きなものになりますと、地上にも直接的な影響が出ます。送電線ですとかパイプラインなどに誘導電流が流れて、問題が起こることがあります」

 実際に1989年3月、カナダのケベック州で、地磁気の乱れによる誘導電流で大停電が起きた。600万世帯が影響を受け、完全復旧には何カ月もかかったというから相当な規模だ。

 またパイプラインに誘導電流が流れると、どうなるか。

 火花が散って、引火するのではないかと、ぼくは直観的に思ったのだが、それは今のところ報告はないという。

「むしろ、誘導電流が流れることによって、金属のパイプが腐食するんですね。要は耐久寿命が短くなることが、懸念されているそうです。太陽活動が活発な時期には、パイプの交換のサイクルをもう少し短めにするだとか、色々対策しなければならないようですよ」

 かくもはた迷惑な、磁気嵐なのだが、まさにそれが荒れ狂う時、高緯度地域でオーロラがとても綺麗に見えていることが多い。

「オーロラが非常に明るく見える状態というのは、極域で強い電流が流れている状態でもあります。オーロラだけを見ていると非常にきれいでいいなと思うんですけども、宇宙環境としては荒れている状態なわけです。特に地磁気の乱れが非常に大きくなって、例えば日本の北海道でもオーロラが見えるような状態になると、それはもうかなり大きな磁気嵐なんです」

 というわけで、美しいオーロラを伴いつつ、インフラにとっては非常に危険なのが地磁気のじょう乱というわけだ。そのことは、次第にはっきりと認識されるようになっており、アメリカでは、様々な検討が始まっているという。

「現状ですと、極めて大きな太陽の活動があった時、社会インフラにどれぐらいの影響が出そうか定量的に検討しはじめていますね。経済的な損失が何兆円という水準になるかもしれない、と。送電線でも、スマートグリッドですとか、情報技術を駆使したものはむしろ、宇宙環境のじょう乱の影響を強く受けるのではないかと言われていまして、すると、思わぬ所まで被害が波及するのではないかと……日本は、北米やヨーロッパよりも磁気的な緯度が低いので、送電線への影響は相対的に小さいと考えられていますが、万が一に備えて今後きちんと考えていこうという雰囲気になってきた段階です」

 なお、アメリカで近年、特にこの議論が活発になっているのは、来年5月に、太陽の活動が極大期を迎えるという予測があるからだ。これはそもそも、ぼくが太陽の活動を見つめ続ける「宇宙天気予報士」、長妻さんを訪ねようとしたきっかけでもあった。

つづく

長妻 努(ながつま・つとむ)
1967年、東京都生まれ。情報通信研究機構 電磁波計測研究所 宇宙環境インフォマティクス研究室研究マネージャー。博士(理学)。1995年、東北大学大学院理学研究科博士課程修了。大学でオーロラを研究したのち、太陽活動とその影響に興味を移す。現在は放射線帯の予報モデルや、人工衛星がいた場所の宇宙環境を再現する数値予報モデルをはじめ、宇宙天気予報の研究に従事している。『太陽からの光と風 -意外と知らない?太陽と地球の関係 (知りたい!サイエンス)』(技術評論社)、『総説 宇宙天気』(京都大学学術出版会)などの共著がある。
(このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版公式サイトに掲載した記事を再掲載したものです)


研究室に行ってみた

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川端 裕人(かわばた・ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)など。サッカー小説『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン──銀河のワールドカップ・ガールズ』(ともに集英社文庫)は、4月よりNHK総合で「銀河へキックオフ」としてアニメ化される。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider
以前連載していた『川端裕人のゆるゆるで回す「明日の学校」体験記』はこちら


http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120612/233244/?ST=print  

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