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ゲリラ豪雨、竜巻、ひょう、雷は予報可能?
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投稿者 MR 日時 2012 年 9 月 19 日 01:10:02: cT5Wxjlo3Xe3.
 

ゲリラ豪雨、竜巻、ひょう、雷は予報可能?

防災科学技術研究所観測・予測研究領域(1)

2012年9月19日(水)  川端 裕人

ゲリラ豪雨、竜巻、落雷、ひょうなど、大きな被害をもたらす突発的な悪天候が増えている。このように狭いエリアで起こる激しい天気は、“雲の王”とも呼ばれる積乱雲が原因だ。「気候変動に伴う極端気象に強い都市創り」という研究プロジェクトをリードしつつ、主にゲリラ豪雨や竜巻の予報技術の確立に取り組む真木雅之先生の研究室に行ってみた!

 今年7月に、気象をテーマにした伝奇的ファンタジー的科学小説(ややこしくてすみません)、『雲の王』を上梓した。ここで言う「王」とは、様々な雲の中でとりわけ空高く成長し激しい雨を降らせる積乱雲のことだ。

 積乱雲は、豪雨や雷、竜巻などを引き起こし、時には人が亡くなるような事故をもたらす。しかし、勇壮で雄大で力強く、荘厳さすら感じさせ、人を惹きつけてやまない。その両義性を、小説の中では表現したつもりだ。

 ぼく自身、積乱雲に魅せられた者の一人である。特に空の広い旅先などで(東京の空は狭すぎる)、成長中の積乱雲を見つけると、そいつがどんどん高くなり最後は崩壊するまで観察したくなる。雲のてっぺんをほんの数10秒見ていれば、まさに「見る見るうちに」変化していく本当にダイナミック(動的)な気象現象なのだ。


左から右のようにあっという間に形を変えた積乱雲。『雲の王』特設サイトより。(撮影:川端裕人)
 最近、観測技術のブレイクスルーもあって、積乱雲についての知見が日進月歩で深まっている。積乱雲がもたらす「極端気象」のメカニズムがかなりのところ解明され、監視・予報システムも開発整備されつつあるそうだ。観測面での鍵となる最新の気象レーダでは、雲の中で雨粒が成長した「降水コア」が形成されて、地表に落ちてくるところまでリアルタイムに分かるというから凄い。


「降水コア」がわかるゲリラ豪雨の5分間間隔3次元アニメーション。2008年8月5日に東京都豊島区雑司が谷で発生したゲリラ豪雨だ。3つの段に分かれた上段は、雨量の3次元分布表示(単位はグラム毎立方メートルで等値面を半透明に処理)。赤い色ほど強い雨が降っているところ。矢印で示したように、上空にできた「降水コア」が下方へ落下する様子が見られる。中段は高度1kmでの5分間の雨量(mm)で、「降水コア」が落下してくると同時に強い雨が観測されている。下段はやはり高度1kmでの積算雨量(mm)の分布だが、中段に見られる5分間の雨量が強いところで必ずしも大きくならないことに注意。つまり、積算雨量が大きくなるには、同じ場所にいくつかの降水コアが繰り返して落下することが必要。ご覧のとおり、上空の降水コアが検出できれば、ゲリラ豪雨を5〜10分前に予測できることをこのアニメーションは示している(データは神奈川県海老名市に設置した防災科学技術研究所のXバンドマルチパラメータ(MP)レーダ観測による)
(動画提供:真木雅之)
 こういった研究で、中核的な役割りを果たしている防災科学技術研究所をたずねた。茨城県つくば市にあり、前述の作品中でも舞台となった気象庁の気象研究所も近い。木々の多いゆったりとした敷地の中にある建物のひとつで、観測・予測研究領域の真木雅之領域長(筑波大学連携大学院教授を兼務)が語ってくださった。

 話題の中心は、科学技術戦略推進費による「気候変動に伴う極端気象に強い都市創り」(2010〜2014年)という研究プロジェクト。多くの研究機関が参加し、防災科学技術研究所がとりまとめる。真木さんは、「観測・予測研究領域」という所属の通り、観測方法の開発や、観測結果をもとにしたメカニズムの解明、さらには予測のための研究を手がけている。


(写真:藤谷清美)
 さて、ここでいう「極端気象」とは何を指すのか。


真木 雅之(まき まさゆき)
1954年、愛媛県生まれ。理学博士。防災科学技術研究所観測・予測研究領域長。筑波大学連携大学院教授。1983年、北海道大学大学院理学研究科修士課程を修了。北海道大学理学部を経て、85年に国立防災科学研究所に入所して以来、気象レーダの開発および気象レーダによる自然災害の研究に携わる。2000年よりマルチパラメータレーダによる降雨量推定の研究を開始。現在は文部科学省科学技術振興調整費プロジェクト「気候変動に伴う極端気象に強い都市創り」研究代表者を務め、首都圏Xバンドレーダネットワーク「X-NET」による豪雨・強風監視技術の構築に向けた研究プロジェクトを進めている。
(写真:藤谷清美)
「厳密な定義があるわけではないんですが、私たちが扱っているのは、ゲリラ豪雨、竜巻、ひょう、落雷などです」と真木さんは、すっぱりと対象を限定した。

「ゲリラ豪雨は特に力を入れています。竜巻は時々話題になりますが、日本ではひょうの被害はあまり目立たないかもしれませんね。でも、アメリカなんかですと、農作物だけでなく、自動車までやられたりします。さらに、落雷。これは毎年、日本で何人かの方が亡くなられています。こういう現象がなぜ起きるかというと、発達した積乱雲によるものなんですね」

 というわけで、やはり、ぼくの興味のど真ん中である雲の王、積乱雲にかかわるものが、ここでいう「極端気象」なのだ。なお、極端気象と異常気象はどう違うのか、という疑問も生まれるのだが、「異常気象」は気象庁の定義で30年に1度以下のかなり希な現象とされるのに対して、「極端気象」は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書で使われる表現で、降水量100ミリの大雨など、比較的頻繁に起こるものまで含まれているようだ。

 さて、ゲリラ豪雨に象徴される極端気象が、きわめて局所的なスケールで起き、人命を含む大きな被害をもたらすことがある。しかし、これまでの天気予報の観測網では正しく検知できないほど局所的すぎて、対応できずにきた。


(写真:藤谷清美)
 そこで、真木さんたちは、都心にできる積乱雲を集中的に見る稠密(ちゅうみつ)観測なるものを敢行している。

「今、わからないのは、個々の積乱雲のふるまいや、いつ発生するのかという部分なんですね。そこがプロジェクトの中でメインターゲットになっています」とのこと。

 では、そのターゲットになっている積乱雲そのものについて、まずは既知の部分を押さえておくべきだ。真木さんに解説していただいた。

「まず積乱雲というのは、簡単に言えば、強い上昇流があって、そこで雲が成長する条件が整った時にでき、さらに強い雨が降る現象だと言えます。ただ、いろいろな形態があります。大きく分けて3つくらい。ひとつの積乱雲だけのシングルセル。それがいくつも集まった、マルチセル。そして、巨大なひとつの積乱雲、スーパーセル……」

 真木さんは、ひとつひとつ図を示しながら語った。シングルセルやマルチセルは、被害をもたらす激しいものと、それほどでもないものがある。一方、スーパーセルは竜巻や強烈なひょうを伴う激しいものだ(それが定義の一部にもなっているようだ)。

 日本ではスーパーセルはそれほど多くなく、むしろ、シングルセルやマルチセルでの被害がしばしば起きる。

「普通のシングルセルの積乱雲で、一番よく見られる標準的な積乱雲は、寿命が20分くらい。シングルセルでも、それよりも長い時間、30分以上持続し降ひょうや突風を伴うものをパルス型と呼んでいまして、これが被害をもたらします。一方、マルチセルにはクラスター(かたまり)になったものと、ライン状になったものがありまして、ライン状のものは激しい雨が降るスコールラインをつくる場合があります。今年の7月中旬に九州北部で被害をもたらした豪雨は、バックビルディング型という進行方向の後方に次々と新しい降水セルを発生させるスコールラインによるものでした」


(写真:藤谷清美)
 シングルセルとマルチセルの比較で言えば、後者の方が被害をもたらしやすい。ライン状になるマルチセルは世代交代をしながら長く持続するので、単体の積乱雲がもたらすよりもはるかに大量の雨を降らせる。特に、進行方向の後方に次々と新しい積乱雲を作る場合(バックビルディング型)、同じ場所を繰り返し新しい降雨が襲うことになりやすく、恐ろしいほどの総雨量になる。

 もっとも、ここまでくるとかなりの大きさの気象現象なので、現状での天気予報で対応できる。7月に起きた九州での豪雨も、メディアでは繰り返し注意喚起されていた。それでも、人命を奪う激烈な被害になってしまったわけだが。

 一方、シングルセルや、マルチセルでも小さくまとまったものは、現状の天気予報では小さすぎて予報が難しいので、真木さんたちの研究の領分になる。2008年の神戸市や豊島区雑司が谷、2010年の板橋区など、人命を奪った局所的なゲリラ豪雨は、まさに予測不能なものとして、積乱雲がいきなりの降水を地上にたたき付けた。

 真木さんたちの研究は、自身が開発に関わった観測技術のブレイクスルーに支えられている。

 その中核的な観測のハードウェアが、MP(マルチパラメータ)レーダだ。


国交省のMPレーダのデータ。観測網を全国展開する契機となったのが真木さんの研究だった。(写真:藤谷清美)
つづく

(このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版公式サイトに掲載した記事を再掲載したものです。『ナショナル ジオグラフィック日本版』2012年9月号の特集「脅威を振るう異常気象」でも、世界の異常気象についてレポートしています。フォトギャラリーもあるWebでの記事の紹介はこちらでお読みいただけます)


川端 裕人(かわばた・ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)は、4月よりNHK総合でアニメ「銀河へキックオフ」として放送中。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider


研究室に行ってみた

世界の環境、文化、動植物を見守り、「地球のいま」を伝えるナショナル ジオグラフィック。そのウェブ版である「Webナショジオ」の名物連載をビジネスパーソンにもお届けします。ナショナル ジオグラフィック日本版公式サイトはこちらです。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120911/236640/?ST=print  

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