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「副大統領候補のTV討論、オバマ陣営の挽回はならず」
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投稿者 MR 日時 2012 年 10 月 13 日 17:28:43: cT5Wxjlo3Xe3.
 

 『from 911/USAレポート』第594回

    「副大統領候補のTV討論、オバマ陣営の挽回はならず」

    ■ 冷泉彰彦:作家(米国ニュージャージー州在住)


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 ■ 『from 911/USAレポート』               第594回
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 アメリカの大統領選というのは「大統領と副大統領をセットで選ぶ」という制度に
なっています。合衆国憲法によれば、大統領に万が一のことがあった場合には副大統
領が昇格することになっているわけですが、これも「公選で選ばれた副大統領」の重
みが「即座に大統領就任」ということに正当性を与えているからです。従って、副大
統領候補というのは選挙の中で相当に役割が大きいわけです。単に「ナンバー2候補」
であるとか、「応援団長」ではダメであり、万が一の場合には大統領になれる資質が
あるのか、という観点から審判を受けるのです。

 そこで、近年の選挙ではこの「副大統領候補同士のTV討論」というのが設定され
ています。2000年の「チェイニー対リーバーマン」というあたりまでは、地味な
イベントであったこの「副大統領候補討論」ですが、2004年には「イラク戦争の
首謀者」という批判がリベラル側で強かったディック・チェイニー副大統領に対して、
当時は絶大な人気を誇っていたジョン・エドワーズ(その後スキャンダルで破滅しま
したが)が挑戦するということで話題を呼びました。

 更にその次の2008年は、共和党が当時アラスカ州知事で全国的には無名のサラ
・ペイリンを指名するという「奇策」に出た中で、そのペイリンをベテラン上院議員
のジョー・バイデンが「迎え撃つ」ということで更に注目を浴びたわけです。

 ここで現在の副大統領であるジョー・バイデンは「徹底的なディフェンス」を張っ
て見事に討論を成功させました。というのは、この時点ではそろそろ当初の「ペイリ
ン旋風」に翳りが出てきており、特に「基本的な知識に欠けるのでは」という疑いの
出てきていたペイリンなのですが、そのペイリンを面と向かって批判することは「徹
底的に封印」したのです。

 バイデンの戦法は単純でした。ペイリンに対してペイリンの批判は一切しない、そ
の一方で親分のジョン・マケインの批判は集中的に行ったのです。勿論、ペイリンは
これに反論し、バイデンは更に反論するわけですが、批判の対象は常にマケインにし
ておくということで一貫していました。

 これは、草の根保守に人気のあるペイリンを批判することでのマイナス効果を計算
したというより以前の問題で、自分よりずっと若く経験の浅い女性候補を「叩きのめ
す」ことは「格好悪い」というバイデン流のスタイルを徹底させるという戦術でした。
そして、この効果は十分にあったのです。

 とかく「失言癖」が指摘されることの多かったバイデンですが、この討論の「成功」
で一人前の「副大統領候補」として全米に認知されたのは間違いありません。ちなみ
に、バイデンは「オバマという存在」に対しても、自分が前に出過ぎないような気遣
いを見せ、それは就任後の4年間も一貫しています。

 さて、今回の2012年の選挙ですが、民主党の側は同じバイデンなのですが、前
回とは全く違うタスクを背負うことになりました。それは、10月3日の第一回大統
領候補討論でオバマが自他共に認める惨敗を喫していることから、挽回、つまり追う
立場になっているということです。しかも、相手は議会共和党の「財政規律派の権化」
であり「若手実力派」のポール・ライアンですから、前回のペイリンのように遠慮す
る必要はありません。

 反対に、議員時代のバイデンのように、多少の失言はあっても「ポイントを稼ぐ」
ことが求められる、そんな状況だったのです。下馬評も大変な盛り上がりでした。
「バイデンは選挙戦の遊説から6日間も離れてディベートの準備に専念していた」と
か「バイデンはボクシングで言う『ロープ・ザ・ドゥープ作戦』、つまり相手に打た
せるだけ打たせて消耗させる作戦だ」などと、様々な事前の報道が飛び交ったのです。

 実際の討論ですが、69歳のバイデンと42歳のライアンという親子ほど年齢の離
れた同士の「対決」でありながら、どちらも堂々として一歩も譲らず見応えのある討
論になりました。勿論、大統領候補の討論と同じで、これは政治のゲームであって勝
敗だけが問題であり、この討論で何かしら「真実が追求される」とか「意思決定への
合意が形成される」というような「本質的な討議」がされるわけではありません。あ
くまで勝敗を競うゲームです。

 その意味で、両者のエネルギーは十分であり、「話の噛み合い具合」つまり相手の
発言に対して見過ごさずに「ツッコミ」を入れるリズム感も、「話の噛みあわなさ具
合」つまり原点となるイデオロギーが異なるために、絶対に結論が反対になるという
点でも「双方の支持者には満足が行く」ものであったと思われます。全体として討論
の精度が高かったのは、司会進行を務めたABCテレビのマーサ・ラダッツ記者が非
常に沈着冷静かつナチュラルであったということもあるでしょう。

 さて、その結果ですが、CNNが直後に行った簡易世論調査では「バイデン44%、
ライアン48%」という数字が出ています。同局のアンダーソン・クーパー記者によ
れば「統計的な誤差が5%あるので、勝敗という意味ではイーブン」だというのです
が、それでも4%の差があるという辺りに、今回の討論を受けての「ニュアンス」が
あるように思われます。以下、少し箇条書き風に整理してみます。

(1)とにかく、どっちも言いたいことを言い合ったということで、「双方の支持者
は十分に満足しただろう」というのは、多くの識者が一致しています。

(2)但し、バイデンの態度に問題があったという声がかなりあります。若いライア
ンが必死で喋っている時に「せせら笑い」を何度もしたとか、オーバーなジェスチャ
ーで相手を威嚇しようとしたなど「品の無さ」が4%の差になったという見方もあな
がち否定できないと思います。

(3)一方で、バイデンの「なりふり構わない」姿勢は、オバマが前回見せることの
できなかった「エネルギー」を感じさせ、民主党陣営を改めて戦闘モードに戻すため
の計算であったという「擁護論」もあります。

(4)ライアンですが、討論としての破綻は全くありませんでした。それどころか、
テレビカメラのアングルを熟知していて目線もバッチリ決め、必要なところは声を落
として丁寧な説明を心がけるなど、政治家のコミュニケーションスタイルとしては百
戦錬磨という印象を与えたと思います。これで「副大統領候補」として全米に認知さ
れたのは間違いないでしょう。

(5)ただ、ライアンは巧妙に自分のポジションを「隠し」ていたという見方もでき
ます。例えば、彼がライフワークにしている財政規律の問題についても、「自分は1
6歳の時に父を失い、福祉の給付で育ったので、制度の重要性は身にしみて感じてい
る。だからこそ、破綻に向かう制度ではなく、存続可能な制度を」というような言い
方で、オブラートに包むのです。そこからは、苛烈なまでに「歳出カット」の鬼に徹
して「ねじれ議会」を「ねじれにねじれさせた」素顔は見えません。こうしたアプロ
ーチは中道票には効果的と思われますが、政治家として本当に誠実なものかは別問題
だと思います。

(6)討論の全体として、ハッキリと「財政規律問題」に向きあったのかというと、
その誠実度という意味では前回の「オバマ対ロムニー」の方が真剣であったように思
います。今ひとつ、今回の議論は空回りしていました。

(7)対中国ということでは、ほとんど話題にはならなかったのですが、ライアンが
財政規律の問題に触れながら「オバマ政権はカネがないのにカネを使い、こともあろ
うに中国のような国からカネを借りている」という批判をした部分がありました。こ
の「中国のような国」という言い方("a country like China")には明らかに侮蔑感
あるいは嫌悪感が感じられたのですが、そうしたレトリックが具体的にどのような対
中政策になっていくのかは、全く不明です。同じことはロムニーにも言え、中国は嫌
いというニュアンスの表現は沢山出てくるのですが、具体性はないわけで、依然とし
て「ブッシュの8年にわたる中国への甘やかし」と似たような展開になる可能性は残
っていると思います。

(8)面白かったのはシリア情勢を巡るやり取りでした。数日前にロムニーが「シリ
アは静観できない。反政府勢力に武器供与をすることも考慮すべき」と述べている、
その点を踏まえての議論を皆が期待していたのです。バイデンは「この難しい土地で
軍事行動に巻き込まれたら地域全体が混沌とした状況になる」として、オバマ政権の
慎重姿勢を説明しました。これに対してライアンは「米兵の派遣とか地上戦への関与
などということは毛頭考えていない」と猛然と反論したのです。結果的にロムニーの
「反政府勢力への武器供与案」の話はウヤムヤになりました。ライアンとしては「政
策のフリーハンド」確保という意味からも、また「武器供与」が無理筋であることか
らもウヤムヤにしたかったのでしょうが、その点では見事に成功したと言えます。

(9)軍事外交に関しては、どれも似たような議論でした。ライアンが現政権の方針
を批判する、バイデンが現行政策を丁寧に説明し理解を求める、ライアンが突っ込む、
バイデンが共和党の方針は無責任だと怒る、ライアンは「自分たちの本意はそうでは
ない」と再反論する、というようなパターンです。上記のシリアだけでなく、アフガ
ンやリビアに関する議論も似たような展開でした。

(10)興味深かったのはアフガン問題です。ライアンは「2014年の撤兵という
方針を杓子定規に実施するのは敗北主義」という批判を行い、これに対してバイデン
は「軍の現場の方針を尊重して決めたし、NATOの枠組みで正式に決定している。
更にアフガン軍の訓練を進めて自主防衛の動機づけをするためにも撤兵時期は変更で
きない」と反論しました。そこでライアンは「そのアフガン軍が米兵に銃を向けてい
る」ことをほんの少し「突っ込んだ」のですが、議論の中ではこの問題をウヤムヤに
しています。共和党としても「タカ派的な勝利へのこだわり」というレトリックだけ
でなく「戦費もカットしたい」とか「本土防衛と関係のない戦争は終わらせたい」と
いう気分があることを反映しているのだと思いますが、シリア問題同様に「ウヤムヤ」
にする技術はなかなかのものでした。

(11)最後に司会のラダッツ記者が提起した「双方のカトリックの信仰に基いて妊
娠中絶問題についての個人的な見解を聞きたい」という質問は興味深いものでした。
まずライアンからは「ロムニーとライアンの陣営としては、レイプ被害者ならびに母
体に危険が迫っている場合を除いた妊娠中絶には反対」というコメントが出ています。
これは共和党候補の正式な宣言としては「精一杯頑張って中道に振っているので、無
党派の皆さん理解してください。今回の我々は宗教保守派とは違いますよ」というメ
ッセージになったと思います。一方でバイデンからは「共和党政権になったらこの問
題で保守的な最高裁判事を任命するに決まっているから大変に危険」というイデオロ
ギー的攻勢がありましたが、ライアンは上手くかわしていました。

 というわけで、CNNの48%対44%で「互角」という言い方は、恐らくはそん
なことろだと思います。ですが、一つ言えるのは、前回にオバマが犯したミスを、今
回のバイデンが挽回することはできなかったということです。先週以来、各州の世論
調査は少しずつロムニー側に寄ってきていますが、その傾向がストップすることもな
さそうです。

 その「オバマ対ロムニー」の再対決ですが、これも来週の火曜日、16日に迫って
います。このタウン・ホール・ミーティング形式のディベートでオバマが再び「弱さ」
を見せるようですと、もうダメということになるかもしれません。

 ただ、ロムニーにはいくつかの難関が待ち構えているようにも思います。一つは外
交です。シリア問題にしても、ライアンのように「ウヤムヤ」にはできない中、大統
領候補としてしっかりした理解を表現しなくてはならないからです。特に外交で大き
く失点すると、最終回の第三回のTV討論は「外交」に絞って行われるので、勝負は
そこまでもつれ込み、そこでオバマが一気に形勢逆転ということも可能性としてはあ
ると思います。

 もう一つは宗教です。今回の副大統領討論でラダッツ記者が「双方のカトリックの
信仰に基いて」などと「おどろおどろしい」聞き方をした背景には、モルモンという
信仰を持つロムニーの素顔を聞き出すための「布石」という面があるように思います。
これまで避けられていたロムニーの信仰問題に関して、恐らく次回のディベートでは
取り上げられることになると思いますが、そこでどんな答え方をするのかは注目点だ
と思われます。

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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家(米国ニュージャージー州在住)
1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院(修士)卒。
著書に『911 セプテンバーイレブンス』『メジャーリーグの愛され方』『「関係の空
気」「場の空気」』『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』。訳書に『チャター』
がある。 またNHKBS『クールジャパン』の準レギュラーを務める。

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【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍
【発行部数】101,417部
【WEB】   ( http://ryumurakami.jmm.co.jp/ )  

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コメント
 
01. 2012年10月16日 16:05:03 : aT9tG7aYrY
支配階級は共和党のロムニー候補を当選させたくて、マスゴミはロムニー有利な報道をしているが、アメリカの現地では貧困層やヒスパニック、アフリカ系などを中心にオバマ優位は揺るがない様だ。このため投票に行く気をなくす為の報道に力を入れ、投票率を低下させてロムニー候補を当選させようと躍起になっている様だ。

マスゴミの報道は作為的である。


02. 2012年10月20日 06:07:55 : YxpFguEt7k
そんななか

デモクラシー・ナウ
「緑の党の候補者逮捕 ホフストラ大での討論会へ入場を試みて 手錠をかけられ8時間拘束」
https://twitter.com/democracynowjp/status/258763359275581441

草の根の運動には厳しいアメリカ合衆国。


03. 2012年10月21日 00:36:20 : CTj7jx56XU
北米に住むフランス系友人から聞いた話だが、ブシュ(古い方)が大統領の時に導入した投票システムには重大な詐欺があるそうだ。それは犯罪歴のある人と同じ苗字、名前を持つ人は、その場で本人確認ができないので自動的に投票拒否されるらしい。
つまりアメリカ全土にいる犯罪者と同じ名前の人々はすべて投票ができない。
故に犯罪の多いヒスパニック系の人々は投票に行っても。多くの人が拒否されるらしい。前から問題になっているらしいが政府はシステムを変えようとしない。

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