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イラン米国大使館人質事件秘話 「アルゴ」が思い起こさせる米国の闇   環境問題解決し、夢は火星旅行
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投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 08 日 13:58:57: cT5Wxjlo3Xe3.
 


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イラン米国大使館人質事件秘話 「アルゴ」が思い起こさせる米国の闇

2012年11月08日(Thu) 竹野 敏貴
 米国大使館人質事件から33年、11月2日、イラン各地で大規模な反米デモがあった。

 その一方で、10月3日には、マフムード・アフマディネジャド政権に抗議するデモ隊と治安部隊が衝突している。核開発疑惑尽きないイランに対する経済制裁は強化されるばかり、いまや通貨リアルの暴落や物価高など社会不安が広がっているのだ。

イランの米大使館人質事件


イランの首都テヘランの顔アーザーディー・タワー
 そんな中、大使館人質事件を描いた米国映画が世界中で公開されている。日本では「CIA史上、最もあり得ない救出作戦 それはニセ映画作戦だった」と宣伝されている『アルゴ』(2012)である。

 映画でも、冒頭、事件に至る経緯が簡単に語られているので、ここでも軽く(とはいえ、もう少し細かく)おさらいしておこう。

 1951年、イランでは、民族主義的なモハンマド・モサデクが首相に選出され、英国にいいように支配されてきた石油利権の国有化に成功した。

 ところが、1953年、CIAがMI6と共謀してクーデターを起こし、モサデク政権は崩壊。事実上亡命状態にあったパーレビ国王が復権し、以後米国の強力なバックアップの下、上からの改革で経済成長を目指す開発独裁を進めていく。

 しかし、大胆かつ急速な近代化、すなわち西洋化を進めたことで、保守層は激怒。秘密警察SAVAKにより権威主義体制を強化したことも住民を苦しめ、広がり続ける格差のなか、左翼とイスラム主義者による反体制運動が激化することになる。

 そんな1979年1月、パーレビはイランの地から逃げ去り、米国への入国を希望する。時の大統領ジミー・カーターは、予測され得る対立を思い、入国を回避しようとするも、ヘンリー・キッシンジャーなどの働きかけもあり、ガンを患うパーレビへの「人道的見地」による入国をしぶしぶ認めたと言われている。

 そして、亡命していた宗教指導者ホメイニ師が入れ替わるように2月に15年ぶりに帰国しイスラム革命が成立、11月4日、米国大使館にパーレビの引き渡しを要求する国民が大挙押し寄せ、52人の外交官や海兵隊員などを人質としたのであった。

 こうして、ペルシャ湾における米国の重要な親米国家イラン、米国とイランとの特別な関係は消え去ったのである。

 ここまではよく知られた話だが、これにはちょっとした秘話もある。

 この時、6人が脱出に成功、カナダ大使の私邸に匿われていた。しかし、いずれその身元は割れるはず、と早急なる国外脱出作戦が遂行されたのである。

ありがとうカナダ!


Ksar Hedadaは「スターウォーズ・エピソード1・ファントムメナス」のロケ地であることを示す看板
 無事帰国を果たした時、至る所に「Thank you Canada」なる横断幕が掲げられ、カナダ大使ケン・テイラーは米国市民を救った英雄として米国議会から表彰された。

 この「秘話」は、米加の人にはお馴染みかもしれない。しかし、『アルゴ』が語るのはその脱出にCIAの極秘作戦が遂行されたというさらなる秘話。

 事件から18年経った1997年9月、機密扱いを解除されているのだが、世間に広く知れ渡ることがなかったものだ。

 もはや米国人が国内で大手を振って活動できない状況にあったイランで、考えついたシナリオは、6人をSF映画のロケハンで訪れたカナダ人スタッフになりすまさせ脱出させるというものだった。

 荒唐無稽にも思えるこの「イランでSF映画を撮る」という話が信じるに足り得たのも、SF映画に沸く時代の空気があったから。

チュニジアの観光名所となったロケ地


『007 リビング・デイライツ』のアフガニスタンのシーンは、チュニジア同様の北アフリカの国モロッコで撮られており、アイト・ベン・ハッドゥーは数々の映画のロケ地として知られ、観光客も数多く訪れる。
 遡ること2年、1977年にはSF映画ブームの起点となる『スター・ウォーズ』が公開されていた。そして、この映画で未知なる星の雰囲気を作り出したのがチュニジアの風景。

 シリーズを通じてロケ地となったこの地は、今や、チュニジアの観光名所となっている。

 同様に変化に富んだ風景に恵まれているイランは抜群のロケ地とも言え、雨後の筍の如くB級SF映画が製作され続けていた時代にはまことに自然なことだったのである。

 「この米国CIAの関与を公表すれば自分の点数稼ぎになったかもしれないが、安全第一と考えそうしなかった」旨、ジミー・カーターのコメントが最後に流され映画は終わる。

 そんな奥ゆかしい姿勢に、映画を見た者は感心させられたかもしれないが、6人の脱出劇が成功したとはいえ、52人は大使館に残されたままという現実を忘れてはならない。

イランと似た境遇の国、ニカラグア


スター・ウォーズのチュニジアのロケ地
 当然、脱出計画が練られ、4月、陸軍海軍空軍海兵隊総動員で「イーグルクロー作戦」なる人質奪還が試みられた。

 しかし、結果は不測の事故が相次いだこともあり、大失敗。そのことがさらなるイラン政府の態度の硬化を招き事件は長期化、カーター政権への風当たりも強くなる一方だった。

 1980年7月、パナマなどを経て亡命していたエジプト・カイロでパーレビが死去、81年1月20日、ようやく人質は解放されることになるのだが、それは、80年11月の大統領選に惨敗したジミー・カーターがホワイトハウスをロナルド・レーガンに明け渡した日という皮肉なものだった。


ニカラグア 高台に展示されている戦車
 中米にもイランとよく似た境遇の国があった。ニカラグアである。

 1936年から続くソモサ一族3代に渡る長期独裁に住民は苦しみ続けていたこの国は、米国の強力なバックアップの下、政権は安定していた。

 ところが、キューバ危機の頃から、「サンディニスタ運動」なる反政府運動が展開され、1979年、イラン同様にソモサ一族は追い出されてしまう。こうして革命政府は成立した。

 ところが、それから10年間にわたり、新たなる敵「コントラ」との戦いを強いられることになってしまうのである。


オアシスの伝統的住居Ksar Hedada
 そんな時代のニカラグアで内戦に巻き込まれていく英国人の物語『カルラの歌』(1996)でも語られているのが、「コントラ」の後ろ盾がまたもや米国という事実。

 そしてそこへの援助資金が、もう1つの反米革命政府イランへ武器を売却して稼いだ裏金だった、というあきれるばかりの政治の闇は「イラン・コントラ事件」として、レーガン政権を揺るがす大スキャンダルとなった。

 今ニカラグアは、かつて「コントラ」と戦った時代に大統領だったダニエル・オルテガが大統領に復帰、変わらぬ反米姿勢を示し続けている。

 米国は、中米ではニカラグアからの革命の伝染を恐れ、中東ではイラン革命の影響を心配した。しかし、革命の蔓延は米国のみならずイランの近隣諸国にとっても脅威だった。

 長い間、イランとの国境紛争があった西隣のイラクはスンナ派がシーア派を支配する構図もあって、シーア派によるイラン革命を機に、サダム・フセインはイランイラク戦争を始めてしまう。

 その脅威は、東隣のアフガニスタンに、1979年12月、ソ連が侵攻する要因の1つにもなった。そしてソ連軍が支援する共産勢力政府に対し、米国は反政府勢力ムジャヒディンを支援する様が『007リビング・デイライツ』(1987)にもあるのだが、そんななかにウサマ・ビンラディンがいたのである。

ムハンマドを侮辱したとされる映像から反米デモが広がった


ルーカス・フィルムでは、『レイダース 失われた聖櫃』のエジプトのシーンも、チュニジアで撮っている
 こうして、イラン革命のあと、隣国でサダムとオサマという難敵を自ら養成してしまった米国。

 11年後の湾岸危機に始まるイラクとの対立、そのさらに11年後に発生した9.11同時多発テロに続くアルカイダとの戦い、そんな泥沼の戦いも自ら招いたもの。そして、今に至るまでイラク、アフガニスタンの地に平穏な時は訪れていない。

 事件から11年、今年の9月11日を迎えるに当たって、バラク・オバマ大統領は対テロ戦争の成果を訴えるだけで、それ以上踏み込んだ発言はしなかった。

 しかし、その直後、エジプト、リビア、イエメン、スーダン、チュニジア、インドネシア、パキスタン、アフガニスタン・・・、預言者ムハンマドを侮辱したとされる映像をめぐり、反米デモが世界各地に広がっていった。

 それでも、大統領選の討論会で「イラク戦争を終結させ9.11をもたらした者たちに再び焦点を当てた」と、同じようにイラク戦争終結とビンラディン殺害の意義を強調するばかりだったオバマ大統領。

 そんなオバマ大統領と友人関係にあるというハリウッド・リベラルの代表ジョージ・クルーニーが製作した『アルゴ』では、初めわずか2分ほどだが、米国の介入がイランに独裁政権を呼び込んだ経緯について触れてはいる。

 しかし、本筋に入ってからは米国人目線に終始しているから、映画を筋だけで追う人々のイランへの印象はよくないはずだ。

 特に若年層には敵国としてのイメージしかないわけだから、これでは米国に非の一因があるのでは、と自省することなど望めそうにない。

 9月にはカナダが外交凍結を発表するなど、イランと西欧諸国の間の緊張が高まりつつあるなか、政治への関心高まる大統領選直前というタイミングで公開されただけに、ちょっと残念・・・。

(本文おわり、次ページ以降は本文で紹介した映画についての紹介。映画の番号は第1回からの通し番号)

(643)アルゴ (222)(再)スター・ウォーズ (190)(再)007リビング・デイライツ
(644)カルラの歌
643.アルゴ Argo 2012年米国映画


アルゴ
(監督・主演)ベン・アフレック
(出演)アラン・アーキン、ジョン・グッドマン

 1979年、テヘランの米国大使館がイラン国民に占拠され52人が人質となった。

 その混乱のなか、6人が逃亡に成功、カナダ大使の私邸に潜んでいることは、まだイラン当局には知られていなかった。

 それでもいずれは分かること。その前に国外に逃げなければ命が危ない。そこで呼び出されたのが人質奪還のプロであるCIAのトニー・メンデス。

 トニーはハリウッドの大物プロデューサーと特殊メイクの第一人者の協力を得、6人を架空のSF映画のスタッフに仕立て逃亡させるというシナリオを思いつく。

 そしてイランへと向かったトニー・・・。

 本作での描き方はCIAの活躍ばかりが目立ち、カナダの果たした役割が無視されているとの批判がカナダでは少なからず起きた。

 この脱出劇が露見した1980年、カナダはイランと国交を絶った。しかし、米国とは違い1990年代には国交は正常化していたのだが、今年9月、核開発を続けるイランは世界の脅威として、外交関係を凍結すると発表している。

222. (再)スター・ウォーズ Star wars 1977年米国映画


「スター・ウォーズ」
(監督)ジョージ・ルーカス
(出演)マーク・ハミル、ハリソン・フォード
(音楽)ジョン・ウィリアムス

 1970年代後半、一部のパニック映画(ディザスタームービー)を除外すると、規模も人気も落ちる一方だったハリウッド映画に再び活気を取り戻させる契機となった記念碑的SF大作。

 スケール感たっぷりの宇宙を舞台にして、ヒーロー、ヒロインが大活躍するというまさに娯楽映画の原点へと回帰した作品である。

 スティーブン・スピルバーグ監督作『未知との遭遇』とともに、映画界にSFブームを巻き起こした。

 予算の関係もあり小編成の曲に頼っていた映画音楽にも、ジョン・ウィリアムスの手によるドラマチックなスコアにロンドン交響楽団という超一流オーケストラの堂々たるフルオーケストラ演奏を配し、今では誰もが知る映画音楽の「クラシック」となっている。

 スピルバーグやルーカスの細部にまでこだわる姿勢から、2人はいわゆる「オタク文化」の雄ともされ、社会の裏側に潜伏していた「オタク」たちが市民権を得ていく礎ともなった。

189. (再)007/リビング・デイライツ The living daylights 1987年英国映画


「007 リビング・デイライツ」
(監督)ジョン・グレン
(出演)ティモシー・ダルトン、ジョー・ドン・ベイカー
(音楽)ジョン・バリー (主題歌)アーハ

 シリーズ第15作で、4代目ジェームズ・ボンド、ティモシー・ダルトン登場作。前作まで続いた荒唐無稽さが目立ったロジャー・ムーアのボンドと対照的に、醸し出すシリアスなムードがスパイの世界をリアルに感じさせると評判となった。

 物語後半になって、ボンドはアフガニスタンのソ連軍基地へと連行されることになる。そこには、武器商人や麻薬を資金源にしているソ連軍将校がいるのだが、ボンドはムジャヒディン幹部の協力を得て脱出に成功する。

 本作が製作された1987年は、ソ連アフガン戦争末期の頃。

 1978年に成立したアフガニスタンの共産政権に反抗する勢力だったムジャヒディンが、79年に侵攻してきたソ連に対しても抗戦したことから、米国もCIAを通じて支援を続けていた。

 この組織に、ウサマ・ビンラディンがいたことは今では有名な話である。

644.カルラの歌 Carla’s song 1996年英国映画


カルラの歌
(監督)ケン・ローチ
(出演)ロバート・カーライル、オヤンカ・カベザス

 1987年の英国グラスゴー。バス運転手のジョージはニカラグア人女性カルラと知り合い心惹かれていく。

 そんなある日、ジョージはカルラの自殺未遂の場に遭遇。カルラの心のうちにあるかつての恋人のことを知ることになったジョージは、ともにその故郷ニカラグアに向かうことを決意する。

 しかし、その地でジョージが目にした現実は・・・。

 サンディニスタとコントラの間で内戦が続くニカラグアを舞台に愛する者のかつての恋人を探す旅に、顧みられることの少ないニカラグアの現実と切ない恋物語をオーバーラップさせている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36493


環境問題解決し、夢は火星旅行

2012年11月8日(木)  Bloomberg Businessweek

NASAの委託で今年、国際宇宙ステーションに無人宇宙船で物資を運ぶことに成功した。民間宇宙旅行の実現を間近にする一方、EV事業や太陽光発電事業も展開するマスク氏。人間を炭素と地球から解放するとの目標を掲げる異色の起業家の素顔に迫る。
 イーロン・マスク氏(41歳)は毎週金曜日、同氏が創業したEV(電気自動車)ベンチャー、米テスラ・モーターズのエンジニアを、ロサンゼルスにある古い格納庫に集めて会議を開く。この建物は現在、同社の研究開発拠点だ。

 会議でマスク氏は、開発チームの進捗状況を確認し、デザインについて率直、というより往々にして辛辣な批評をする。7月の会議もそうだった。格納庫には、次に発売予定のSUV(多目的スポーツ車)「モデルX」のパワートレイン(駆動システム)の試作品と車内の実物大模型が置かれていた。

 マスク氏は前方座席上にある「サンバイザー(日よけ)」に目を留めた。気に入らなかったらしく、縫い方が悪いために布地が盛り上がっているのを発見すると、「魚の口みたいだ」と痛烈な一言を発した。そして、世界一のサンバイザーを見つけてきて、それよりいい物を作れ、と命じた。

自社より大手のクルマも一刀両断

 会議の場はその後、ライバルのクルマが何台も置かれている駐車場に移った。マスク氏は190cm近い長身を曲げて、現代自動車の高級セダンやホンダの高級ブランド「アキュラ」のSUVに乗り込んだ。アキュラの窮屈な3列目の座席に座ると、「小人の洞窟みたいだな。ほかのクルマのひどさを知ることも重要だ」と言った。

 ちなみにホンダが昨年販売したハイブリッド車は20万台、トヨタ自動車のそれは62万9000台だ。これに対し、テスラが2003年の創業以来、9年の間に生産した台数は2450台だ。

 自動車業界は厳しい状況が続いている。テスラも開発の遅れや品質問題に悩まされ、財務面で倒産の危機にも直面した。にもかかわらず、恥ずかしげもなく自社より圧倒的に大きいライバルの努力の結晶を一刀両断にする。だが、そんなマスク氏を友人も同僚も驚かない。彼らによるとマスク氏は、スティーブ・ジョブズ氏と米石油王ジョン・D・ロックフェラー氏と実業家ハワード・ヒューズ氏*1を足したような人物だ。

*1=1905年12月24日〜1976年4月5日。父親が開発した石油・ガスの掘削機の特許から莫大な資産を手にし、それを元手に映画製作や飛行家活動を展開、米国を代表する実業家として知られる

無人宇宙船のドッキングにも成功

 マスク氏と米電子決済大手ペイパルを創業し、エンジェル投資家としても知られるピーター・ティール氏は、「彼が始めた会社は、数年先ではなく、何十年も先になって評価されるような構想を実行している」と話す。

 マスク氏のこの1年は、映画にでもなりそうだ。5月には2002年に創業した宇宙ベンチャー、スペースXが、フロリダ州ケープカナベラル米空軍基地から高さ69mのロケットを打ち上げ、民間企業としては初めて、地球から350km離れた軌道を回っている国際宇宙ステーションに無人宇宙船「ドラゴン」をドッキングさせることに成功した*2。

*2=同社は10月7日にもドラゴンを打ち上げ、国際宇宙ステーションに食料や実験機器などの物資を輸送、同28日無事地球への帰還を果たしている

 同社に物資の輸送を委託した米航空宇宙局(NASA)もこの快挙に、「文句なしの偉業だ」との賛辞を贈っている。

 一方、2010年に株式公開したテスラは、6月に新型セダン「モデルS」の出荷を開始、近く全米に築いた充電ステーション網も発表する予定だ。

 マスク氏が会長を務める米ソーラーシティは、住宅向け及び商業用太陽光発電ベンチャーで、既に2万8000強の顧客を持つ。間もなくIPO(新規株式公開)する予定*3で、時価総額は約15億ドル(約1200億円)に達するという。

*3=同社は米ナスダック市場に上場すべく、10月6日に株式公開の申請をした

 マスク氏はテスラとスペースXのCEO(最高経営責任者)も務め、この3社の最大株主でもある。彼の資産は、ソーラーシティIPO後には軽く30億ドル(約2400億円)を超えるとされる。

 3社がうまくいけば、今後もあり得ないことを実現し、人々に夢を与え続けるだろう。


スペースXは今年5月、無人宇宙船「ドラゴン」を打ち上げ、民間企業としては初めて国際ステーションへのドッキングに成功、NASAからも絶賛された(写真:ロイター/アフロ)
「問うべきを考え出せば後は簡単」

 マスク氏は、「今後半年がテスラにとって正念場となる。年間2万台以上生産し、25%以上の粗利益率を達成したい。実現すれば自動車業界では最高に近い水準となる」と話す。

 スペースXは、2017年までの宇宙旅行代として既に約30億ドル分の予約を抱えている。とはいえ、まだ有人の打ち上げも成功させていないし、その機材の開発も終えていない。

 マスク氏が狙うのは事業としての成功だけではない。「我々はまだ持続可能なエネルギー生産という課題を解決していないし、複数の惑星で生活することも実現していない」と同氏は言う。

 マスク氏は南アフリカ共和国のプレトリアで、アパルトヘイト(人種隔離)が残る最後の時期*4に、3人兄弟の長男として育った。父親は建設会社を経営し、母親は栄養士だった。

*4=アパルトヘイトは1991年にフレデリック・デクラーク大統領が廃止を打ち出し、94年に全人種による初の総選挙が行われ、完全に撤廃された

 両親は彼が9歳の頃に離婚、考えられないほどの自由を謳歌した。自家製爆弾やロケットを作るのが好きで、「指が全部残っているのは幸運だ」と話す。

 一方、10代前半で「自分はなぜ存在しているのか」という問題に直面し、哲学書から宗教関係まで本をむさぼるように読んだ。弟のキンバルによると、「彼は1日に2冊読んでいた」という。そうした中で、「尋ねるべき質問が何かを考え出すことが大変なわけで、一度それができたら、残りは本当に簡単だということを学んだ」とマスク氏は語る。そしてこう続けた。

 「我々がどんな問いをすべきかをより深く理解するには、人間の意識の範囲や規模を増やしたいと熱望すべきだという結論に達した。唯一道理にかなうと思えるのは、より大きな共有できる啓発を得ようと努力することだ」

 15歳で、自己実現すべく米国に行くことを決断。母親がカナダ人だったので、まずカナダのパスポートを入手し、航空券を買って、ほとんどカネを持たずにモントリオールに降り立った。

 その年、マスク氏は事前に連絡もせず、カナダにいる遠い親戚の家々を突然訪ねては、農場で働かせてもらい、野菜畑の面倒を見たり、穀物をシャベルで掘ったりして過ごした。

 結局、カナダのクイーンズ大学に進学し、2年学んだ後、米ペンシルベニア大学で経済学と物理学の学士号を取得。その間、書籍を電子スキャンするサービスとウルトラキャパシターを使ってエネルギーを蓄えるというベンチャー事業の計画も立てた。当時、デートの相手にEVの素晴らしさを滔々と語り、退屈させていたらしい。

スタンフォード大学院退学し創業

 ただ、自らの壮大な事業計画を実行に移すには資金が必要だった。そこで1995年、スタンフォード大学の大学院で応用物理学を学んでいたマスク氏は大学院を辞め、弟のキンバルとZip2というネット上で地図や住所録を提供する会社を創業。2人は4年後、この会社を米コンパック・コンピューターに3億ドル(約240億円)強で売却した。

 マスク氏はこれを原資に、オンライン金融サービスを展開するX・ドット・コムを立ち上げた。後にペイパルとなる会社だ。マスク氏は、同社の最大株主で、2002年に米イーベイに15億ドル(約1200億ドル)で売却するまでCEOを務めた。

 この売却で1億8000万ドル(約144億円)を手にすると、その資金をスペースXとテスラ、ソーラーシティ、そしてデータセンター向けソフト会社のエバードリームなどに投じた。

 だが、テスラが2008年に開発の遅れとそのコスト増から倒産の危機に瀕すると、「素人の遊び」に天罰が下ったのだと批判され、自動車業界のブログ「クルマの真実*5」は、「テスラが死ぬのを見よう(Tesla Death Watch)」と題した特集まで展開した。

*5=The Truth About Cars

 そうした中、マスク氏は自分の最後の資金300万ドル(約2億4000万円)を投じ、友人から借金も始めた。既に大学時代の恋人だった妻との結婚生活は破綻しており、当時世界で最も高価なクルマだった愛車「マクラーレンF1」も売り払った。「最悪だ。『俺は一体、どうすればいいんだ』という感じだった」と、マスク氏は当時を振り返る。

絶体絶命の事態に救いの神登場

 ところが、そこに救いの神が現れたのだ。米デルがエバードリームを買収、最大株主だったマスク氏の手元に2009年初め、1億2000万ドル(約96億円)が転がり込んだ。

 トヨタが2010年、カリフォルニア州フレモントにある工場を閉鎖すると、マスク氏はこれを4200万ドル(約34億円)で購入。同工場はトヨタが「カローラ」「タコマ」などを1日に1452台生産していたが、今ではテスラがモデルSを1日に6台作っている。

 巨大なアルミ板が切り分けられ、大型プレス機でモデルSのシャーシとボディーに作り込まれていく。別の場所では従業員がリチウムイオン電池パックを組み立て、ロボットが微妙なタッチで部品を取りつけていく。

 完成車は厳しい検査を受ける。出荷前にはマスク氏も自ら1台1台を確認する。生産担当の副社長ギルバート・パシン氏は、「年末までに日産100台になる見込みだ」と言う。テスラやスペースXの多くの社員と同様、パシン氏も大手ライバル(彼の場合はトヨタ)から引き抜かれた。

 モデルSの価格は約5万ドル(約400万円)から。7人乗りで、4.4秒で時速約100kmに加速、1回の充電で300マイル(約480km)走行できる。モーターがスイカくらいの大きさしかないので、車内スペースは大きい。後方のトランクに加えて、前方にはエンジンを置く代わりに同社が「フランク」と呼ぶ荷物を置くスペースもある。

 テスラは、従来のようなディーラー網は展開していない。小さな店をサンノゼの高級ショッピングモールのような場所に出店しているだけだ。同店がアップルストアに似ているのは偶然ではない。マスク氏が2010年に、アップルの小売り戦略を考案したジョージ・ブランケンシップ氏を雇ったのだ。

 サンノゼ店の中央には、赤のモデルSが置かれている。隣には車体を外し、電池パックとモーター、パワートレインだけを載せたフレーム部分だけを見せている。壁のタッチパネルでは、EVを買うと燃料代をどれだけ節約できるか計算したり、自分で好きなデザインのクルマを決めて中央の大型スクリーンに映し出したりもできる。

 販売員は歩合制ではない。「ディーラーは在庫をなくそうと自分が抱えるクルマを売りたがるが、我々のゴールは、顧客とテスラやEVとの間に関係を築くことだ」とブランケンシップ氏。

 つまりテスラは、米アップルの「iPod」や「iPhone」と同じように、クルマを「道具」であると同時に「主張の手段」としても位置づけたいと考えている。「モデルSは(試乗なしで)、既に数千件の予約を抱えている」(ブランケンシップ氏)。テスラの店舗は今、世界に24店あるが、年内に10店以上増やす計画だ。

3年以内に宇宙旅行を実現

 スペースXの本社は、テスラのR&Dセンターの隣にある。米ボーイングが以前、機体を生産していた場所で、現在同社から借り受けている。スペースX本社の入り口近くの様子はまさにハイテク企業で、オープンフロアには何列も机が並ぶが、30mも進むと様相が一変する。そこには、約8340坪もの組み立てスペースが広がるのだ。

 ここで同社のカプセル型の宇宙船ドラゴンの部品の80%が作られる。圧搾空気の音や金属ドリルの騒音の中、数百人がフロアを歩き回ってカスタムメードの機械を扱っている。床にはロケットのエンジンと高さ約4.3mのドラゴンが点在する。

 ドラゴンは、約5.9トンの物資を運べるよう設計されており、マスク氏は近い将来、このドラゴンに毎回7人を乗せて宇宙に運びたいと考えている。

 スペースXは来年8回、再来年には16回の打ち上げを目指している。この目標を達成すれば、同社は世界の商用宇宙飛行の大半を担うことになる*6。同社は、宇宙ステーションに1人送るのに現在は6300万ドル(約50億円)かかるが、3年以内に2000万ドル(約16億円)に引き下げることを目標にしている。

*6=英ヴァージン・グループのリチャード・ブランソン会長が創業したヴァージン・ギャラクティックといった企業も宇宙旅行の予約を既に受け付けている

 スペースXは、マスク氏が今、手がけている事業の中で最も堅実で、多数の予約も抱えていることから利益も確保されている。

 スペースXの役員スティーブ・ジャーベットソン氏は、マスク氏が宇宙で動くものについて並外れた直観を持っていると言う。同氏によると、最大積載量に応じてエンジン仕様を適合できるモジュールデザインを考案したのはマスク氏で、これにより過去にない安全で、コスト効率の高い宇宙船を開発することができたのだという。そして、このことが同社を米国で唯一、宇宙ステーションへの人や物の往来を担える企業にしたのだ。

新たな移動手段も開発中

 マスク氏は一緒に働きやすい人間ではない。元従業員は皆、オフレコで彼が独裁的で他人の感情を害しても気づかない人物だと言う。だが、そばを離れない社員は彼を愛しているようだ。

 スペースXの社員は、宇宙ステーションにカプセルを飛ばしている間、ずっと徹夜が続いたが、工場には常に誰かいた。生産ラインから完成したモデルSが出てくるのを見たテスラの社員は、星条旗を振って涙を流していた。

 マスク氏は毎週数日ずつ、それぞれの工場で過ごす。地球の足かせはもちろん、人類を炭素の被害から解放する挑戦は同氏の私生活に打撃を与えている。8月には、2番目の妻とも離婚した。

 過去4年間に1回しか休暇を取らなかったマスク氏はこの夏、双子と三つ子の息子5人を連れてマウイ島へ行った。 「仕事と子供たちとの時間はうまく割り振れているが、デートにもう少し時間が取れたらと思う。でも、女性には週にどれくらい時間を割けばいいのか、10時間くらいか」とマスク氏。

 人類はもうしばし地球で暮らすと仮定して、マスク氏は「ハイパーループ」という新たな移動手段も開発中だ。詳細は語らないが、チューブのようなもので、サンフランシスコとロサンゼルス間を30分で運べる。

 「今望まれているのは、絶対衝突しなくて、飛行機より倍速く、動力源は太陽エネルギーで、駅に着いたらすぐに出発できる移動手段だ」(マスク氏)

 友人によればこの夏、技術的ブレークスルーがあったようだ。「知事や大統領と話したい。カリフォルニア州で計画中の600億ドル(約4兆8000億円)の新幹線はコストが高すぎるしスピードも遅い」(マスク氏)。両都市間でハイパーループを建設すると約60億ドル(約4800億円)程度で済むという。

 マスク氏は新しいタイプの飛行機も開発を計画中だ。「ボーイングは200億ドル(約1兆6000億円)と10年の歳月をかけて、飛行機の効率性を10%向上させた。私は垂直に上昇する超音速ジェット機を考えている。これなら飛躍的な改善となるだろう」。

 マスク氏と数時間過ごしたら、超音速チューブもジェット機も実現が目前に迫っているような気になる。だが惑星間旅行はどうだろうか。

 彼は10〜15年以内に、宇宙船で火星に行けるようになると言う。その宇宙船には多分彼も乗っているだろう。何しろ、「火星で死にたい。衝突事故ではなく」と語っているのだから。

Ashlee Vance

Bloomberg Businessweekは米ブルームバーグ社が発行するビジネス雑誌である。1929年、大恐慌の年に創刊されて以来、世界中に読者を拡大してきた。現在の読者数は約470万人を誇る。本コラムではBloomberg Businessweek誌およびBusinessWeek.comから厳選した記事を日本語でお届けします。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121101/238902/?ST=print

 

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