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地中海で相次ぐ難民船の沈没事故とEUの責任 もっと受け入れたい気持ちはあっても空回り
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投稿者 SRI 日時 2013 年 10 月 16 日 10:33:00: rUXLhToetCnYE
 

JBpress>海外>欧州 [欧州]

地中海で相次ぐ難民船の沈没事故とEUの責任
もっと受け入れたい気持ちはあっても空回り

2013年10月16日(Wed) 川口マーン 惠美

 イタリア地中海に浮かぶランペドゥーサ島から目と鼻の先で、10月3日、アフリカの難民500人余りを乗せた船が沈没した。ランペドゥーサ島はシチリアよりもチュニジアに近い(138キロ)ため、アフリカ難民の格好の目的地だ。

 島にかなり近づいたとき、船がエンジントラブルを起こしたため、助けを求めようと、難民の誰かが毛布に火を点けた。その火がたちまち火災を引き起こし、船が沈没したという。

300人を超える死者を出した難民船

イタリアの難民船沈没、当局が救助活動の不手際を否定
イタリア・ランペドゥーザ島の空港の格納庫に安置されたアフリカ難民船沈没事故犠牲者のひつぎ〔AFPBB News〕

 難民のほとんどはソマリア人とエリトリア人だったが、アフリカやアラブの人たちは、泳げない人がほとんどなので、船もろとも、大半が暗い海に沈んでしまった。どうにか浮かんでいて救助されたのは、たった155人だ。

 その当日のニュースの映像では、引き揚げられた何百もの遺体がビニールにくるまれて、港に並べられていた。

 そこへ、さらにどんどん運ばれてくる溺死体。あまりの惨状に、泣きながら死体を運んでいる人の姿もあり、見ているだけで胸が詰まった。難民ボートの事故としては、今までで最大であるという。

 しかし、真の悲劇は、今回の被害の大きさではなく、地中海ではこれと同じことが常に起こっているということだ。

 アフリカ大陸の、貧困、内乱、干ばつなどで絶望した人たちは、藁にもすがる気持ちでヨーロッパの地を目指して、おんぼろボートに乗り込む。2011年は「アラブの春」の影響もあり、人口4500人のランペドゥーサ島に、4万8000人の難民が流れ着いた。

 しかし、流れ着かなかった人も少なくないはずだ。今回の遭難も、遠いところで起こっていたら、誰も知らないままに500の命が海の藻屑と消えていた可能性は高い。そう言えば、スペインのカナリア諸島には、ツーリストのいる美しい砂浜に、ちょくちょく溺死体が漂着するのである。

 船の沈没から4日過ぎた7日の日、沿岸警備隊の潜水夫は、海底に沈んでいる船の中で折り重なっている死体を、休む間もなく引き揚げ続けていた。9日にはその数は300体を超えた。しかし、まだ全部ではない。

 9日には、イタリアの首相と共に、EUの委員長バローゾが視察に飛んできたが、島の住人はバローゾ委員長に罵声を浴びせかけた。EUの難民政策に対する非難は、今、EU全体で急速に膨れ上がっている。

必死でEUに入ろうとする難民、何とか阻止しようとするEU

 EUの難民対策とは何か。それは、難民が不法にEUに入ってこないように国境を防衛すること、そして、難民の一時保護と審査だ。審査の後、合格しなかった難民は強制送還、合格した難民だけを受け入れることになる。

 つまり、不法に国境を越えてEUに入ってきた人間は、まだ難民ではなく、難民希望者、あるいは不法入国者である。だから、現在のEUの法律では、漂流している難民を救助すると、不法入国ほう助で罪になる。

 そこで、漁師たちも、ほとんど遭難に近いような難民ボートを発見しても、救助を躊躇する。後で、罰金を取られたり、漁船が没収されたりということが、実際に起こっているからだ。とにかく、難民が1人でも増えないようにと、EUは必死だ。

イタリアの難民船沈没、当局が救助活動の不手際を否定
ランペドゥーザ島の空港近くを歩くエリトリアからの難民たち(2013年10月5日撮影)〔AFPBB News〕

 難民の押し寄せてくるルートは、ランペドゥーサ島のほかにもいくつかある。一番数が多いのがトルコからギリシャへの陸路を利用する難民。

 EU内では国境での旅券審査はない。だから、ギリシャに到達すればどうにかなると、皆が考える。このルートで2012年に、3万7220人が不法にEUに入った。もっとも、これは把握されている人数であり、実際はもっと多いと思われる。

 次が、モロッコからジブラルタル海峡を越えてスペインに入るルート。あるいは、モロッコには、セウタとメリリャというスペインの小さな飛地領が2カ所あるので、ここへの侵入を試みるものもいる。

 この飛地領は、今では何メートルもの高さのフェンスと鉄条網で、要塞のような厳戒体制を敷いているが、それでも夜陰に乗じて突撃する難民がいる。その様子を映した赤外線カメラの映像を見たが、彼らの決死の姿には胸を打たれた。ふと、EUはいったい何を守ろうとしているのかという思いが、頭をよぎる。

 そのほか、ウクライナや旧ユーゴ地域から、陸路でスロバキアやルーマニアに入るルート、そして、西アフリカから船でカナリア諸島という方法も使われる。

 今やEUの塀の外と内では、富の格差があまりにも大きい。貧しい国からEUへと、あたかも水が高いところから低いところに流れるように、人間が流れてくる。不法に侵入しようとする人間に対して、EU各国は独自に対応しなければならない。

 しかし、当然のことながら、EUの外側の境界に位置する国は歩が悪く、常に国境が侵されている状態だ。特にイタリアは前述のように、運が良ければボロ船でも行ける距離だし、ギリシャは、トルコとの国境が延々と続く。

 一方、スペインはここ数年、ものすごく警備を強めたので、難民の数は減っている。ジブラルタル海峡は14キロほどしかないため監視しやすいということもあり、ハイテク機器や航空機を総動員し、海上で難民船を発見し、速やかに追い返すという方法を取っている。

 一方、EUへの侵入に成功した難民も、その後、難民として認められる確率は少ない。例えば、今、ランベドゥーサに命からがら辿り着いた人たちも、ほとんどは、遅かれ早かれ祖国に戻される運命なのである。その後の彼らの生活は、以前よりもさらに過酷なものとなるだろう。

EU諸国の「人道」と「エゴ」のギャップをあぶり出す難民問題

 今回の事件で、今まで燻っていた難民政策が注目を浴び、その改革が叫ばれ始めたことは前述した。例えば、緑の党は30年も前から、ドイツはもっと多くの難民を受け入れるべきだと一貫して主張している。

 急に高まった圧力もあり、7日には、EUの内務大臣が集まって話し合いを持ったが、しかし、皆、自分たちにお鉢が回ってくると困るので、あくまでも逃げ腰だ。結局、どの政府も決定権を自分たちの手から離そうとはしない。

 ドイツ政府も、これ以上難民の受け入れの数を増やすつもりはない。2012年、ドイツは6万4540人の難民を受け入れた。フランスが5万4940人、スウェーデンが4万3890人、英国が2万7410。人口比から見ればスウェーデンが一番多いが、ドイツの受け入れ人数も、決して少なくない。

 ドイツの場合、国連のUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)との折衝で、難民を引き受けている。例えば、現在はシリアの状況が緊迫しているので、UNHCRの要請で、今年中にまず5000人のシリア難民を追加として引き受けることになっている。そのために政府は、慌てて4億ユーロの緊急予算を取った。

 ただ、引き受けたあとも問題は山積みだ。難民は就業はできないので、当面の間(たいていの場合はほとんど永久に)、衣食住を与えなければならない。しかし、住居1つとっても、いざとなると、住民の反対や、難民自身の抵抗などで、あっちでもこっちでも暗礁に乗り上げる。

 ドイツ国民は、難民は気の毒なのでもっと受け入れろと言いながら、自分の目に触れそうなほど近くに来られるのは嫌なのだ。では、難民はどこへ行けばいいのか? 森の中に隠しておくわけにはいかない。

 一方、難民受け入れが比較的少ないのはイタリアで、2012年は1万5710人。しかも、海からやって来る難民の対応費として、EUから年間1億3000万ユーロ以上を受け取っている。そのお金でイタリアは仮設収容所を拡張したり、難民を強制送還したりしているわけだ。つまり、イタリアだけが難民の問題を押し付けられているというのは正しくない。

 もっとも、イタリアに行ってみるとよく分かるが、すでにこの国には、ものすごい数のアフリカ人が入っている。

 海岸などで、帽子やらココナツを売っている人たちは、警察が来ると一目散に逃げる。だから、イタリア人が、これ以上、難民が増えては困ると思う気持ちもよく分かる。ちなみに日本の去年の難民受け入れは18人だった。

 ドイツ政府は8日のEU内務大臣会議で、これ以上多くの難民をEUに連れてくることは無理だという見解を明らかにした。より大切なのは、難民を出さなくてすむよう、彼らの祖国への援助をすること。そして、難民の全財産を奪い、ボロ船に乗せて海に送り出しては大儲けしている悪徳業者の取り締まりだ。

 もちろんどちらも正しいが、実行に移すのは難しいし、すぐに効果が上がるわけでもない。今のところ、絵に描いた餅に等しい。

 EUは、美しい理念で始まったが、それが見るも無残に崩れていく。ヨーロッパは1つという夢、アメリカやアジアに対抗する強い経済圏を形成するという夢、そして、皆が豊かになれるはずのグローバル構想という夢は破れ、EUは今や要塞だ。

 自分たちの富を囲い込み、貧しい国の人々を寄せ付けないための要塞である。しかも今では、EU内でもしょっちゅうナショナリズムがぶつかり合っている。

 EUがこれほどの排他主義と利己主義の集団になってしまうことを、20年前に誰が考えただろう。富を他国と共有するというのは、限りなく不可能に近い夢なのかもしれない。

 だから、日本もTPPには多大な期待をかけない方がいい。経済協力はいいとしても、あまり理想を広げすぎると、あっという間にEUの二の舞いになり、周りの国々とことごとく争わなくてはならなくなる。協調(連合)と主権(独立)のさじ加減は大変難しい。

 なお、11日には、再びランペドゥーサとマルタの間の水域で難民ボートが沈没し、大がかりな救援活動が繰り広げられた。救助されたのは200人余りで、死者が35人。また、13日の夜中には、ランペドゥーサにさらに137人の難民が漂着。地中海ではアラームが鳴り続いている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38911  

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