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新帝国主義時代の日本の進路(後篇) 作家・元外務省主任分析官 佐藤 優(月刊日本)
http://www.asyura2.com/12/senkyo126/msg/599.html
投稿者 大塩 日時 2012 年 2 月 22 日 02:08:43: .cSQld2Pk8LuA
 

新帝国主義時代の日本の進路(後篇)
作家・元外務省主任分析官 佐藤 優
http://gekkan-nippon.com/?p=1808
『月刊日本』1月号


日米豪の三国軍事同盟時代
―― 前回は、2012年に日本を取り巻く厳しい国際情勢の分析と、その中で日本が取りうる立場について伺った。記事には大変な反響があり、いくつか質問も寄せられているので、それらも踏まえながら、今回は、12年の激動に日本政治がどう立ち向かうべきかをお伺いしたい。
佐藤 まず、政治家、官僚の能力というものは、その国の国力と大きく乖離するということはありません。諸外国にも箸にも棒にもかからないようなレベルの低い政治家は無数にいますが、わが日本の平均的政治家と外国の平均的政治家を比べた場合、日本が格段に劣るということはない。むしろ、日本の政治家には和歌を詠み、古典を読む人もいるという点では、文化的なレベルはかなり高いと言えます。
 大事なことは、国際政治において、わが国の国力を過小評価せず、同時に、過大評価もせず、冷静に等身大に見ることです。
 その点で、今の野田政権というものは巷間言われているほどひどい水準ではない。野田政権の各閣僚は、個別の事象に対する理解度は十分に高い。無意識レベルでは、国際政治が大きく動いており、それに対応すべく政治が動かなければならないことを理解しています。
 前回も指摘しましたが、日本を取り巻く国際政治の焦点は、20年後の日米中の彼我の力関係はどうなるか、ということです。
 日本は人口減少、少子高齢化が進んでいきます。それに伴い、いやおうなく、経済は縮小せざるをえない。すなわち、国力は落ちていかざるをえない。そうなってくると、現在抱えている領土問題はおろか、本来はわが国にとって領土問題ではない尖閣諸島をめぐる状況も厳しくなっていくでしょう。
 一方で、アメリカも相対的には世界一の軍事国家であることには変わりはありませんが、中国が軍事的経済的にも成長し続けた場合、その優位は脅かされることになります。20年後には中国のGDPは日本の四倍に達し、人口は20億に迫る可能性もあるのです。
 こうした、日米の相対的地位の低下、中国の台頭という状況において、日米二国間だけでアジア太平洋地域の安全保障を維持できるか、というのが問題の中心です。
 そのための現実的選択肢として、TPP(環太平洋経済連携協定)を自由貿易対保護貿易という枠組みで捉えるのではなく、日米ブロック経済圏の創出、ひいては日米軍事同盟の深化という文脈で理解すること、その枠組の中でさらなる長期戦略として、日本の自主独立の道筋をつけていく、というのが前回の結論でした。
―― TPP圏内で、アメリカからは収奪されるが、日本はその他の地域から収奪する立場を目指すとのお話が前回あったが、日米でTPP参加国GDPの91%を占めており、オーストラリアが5%、すると残る収奪すべき地域はわずか4%しかない。
佐藤 そのGDPで4%の地域に、どれだけ多くの国土と資源、人口があることでしょう。資本主義経済に未だ組み込まれていない未開の処女地、貨幣化されていない社会が広がっているのです。満州を思い出しましょう。わが国がかつて満州に進出した時、満州は文字通り未開の荒野でした。そこをわが国が開発した結果、わが国にとって満州は生命線と言われるまでの重要な地域になったのです。
 現在のGDPで見れば4%に過ぎない土地も、その土地、資源、人口を考えれば、広大な満州が広がっていると言えます。今後行われるのは、この未開のフロンティア、「21世紀の満州」を日米豪で分割していくという政治駆け引きなのです。
 その上で、日本がまず行うべきは、資源帝国主義的政策です。現在の日本にとっては悪い円高を利用して、世界中から買えるだけの資源を買い漁るべきです。結局のところ、FXのような、実体の裏付けがない金融資本主義は、急激な経済縮小に耐えられません。結局、最終的にはモノを持っている経済が強いのです。だから今のうちに資源を買い漁っておいて、円安になったらそれらを切り売りして利ざやを稼ぐのです。
 世界経済が収縮して危機を迎えていく中では、円安誘導などという金融政策的対応では対処しきれません。資源を買い漁ることで必然的に円安になる方向へ舵を切るべきです。
 いずれにせよ、いかなる状況下であっても日本国家全体の利益をいかに極大化できるか、この視点を忘れないことです。
―― 震災復興もままならない中、海外を開拓する体力はあるのか。
佐藤 むしろ、震災復興のためにこそTPP圏内での収奪構造を確立すべきです。かつてわが国は、関東大震災、そして昭和恐慌という苦境を脱するために満洲を目指したのでした。歴史は繰り返されるのです。ただし、同じ過ちを犯す訳にはいかない。前回、われわれは少々無理をしすぎて、それが大東亜戦争の敗北につながった面は否めない。今回は反省を踏まえて、節度と礼儀を守って収奪構造を確立すべきです。それが品格ある21世紀型の帝国主義というものです。
 そこで参考になるのは、帝国主義の大先輩であるイギリスの政治手法です。戦後日本は復興のためにイギリスから援助を受けましたが、これはソフトカレンシーでした。通貨にはハードカレンシーとソフトカレンシーがありますが、ソフトカレンシーとして貸与されたカネ、この場合、英ポンドは、ポンドとしてしか決済できません。つまり、イギリスが貸与してくれたカネは、イギリスからモノを買うためにしか使えません。イギリスにとっては援助という恩を与え、さらに、貸与したカネで自国の経済が回るのだから、一石二鳥というわけです。日本人の多くはこうしたことを知らずに、イギリスに感謝さえする。支配され、利用されていることさえ気づかせないこと、これが品格ある帝国主義です。
 また、ダブルスタンダード、トリプルスタンダードも帝国主義の特徴です。イギリスは自国ではアヘンを禁止しておきながら、対中国においてはアヘンを大量に輸出し、アヘン戦争を引き起こす原因となった。これは現在の日本の原発政策と同じ位相にあります。日本国内では、世論の高まりから必然的に、原発への電力依存は退行していかざるを得ません。しかしその一方で、国産原発を輸出している。国内での論理と外交における論理は異なるものです。つまるところ、国家は自国の国民の生命、財産を守るものであり、他国の事はそれぞれの国の政府が考えることなのです。これが帝国主義の基本方法です。
―― 食料自給率の問題、俗に言う「食の安全保障」についてはどう考えるか。
佐藤 「安全保障」という言葉に「食の」という限定を加えること自体がナンセンスです。安全保障とはを含む総合的概念です。日本以外の国で、食料がなくなったらどうするか。それは隣の国に食料を奪いに行くのです。いくら日本が食料自給率を高めたとしても、他国が食料を奪いに来た場合、どうしようもありません。他国から食料を守るというのが安全保障ということです。そして他国から、極めて上品な形で食料を収奪し、そのルートを武力を背景に確保するのも安全保障です。人間は食料がなければ生きていけませんが、国家は資源がなければ生きていけません。食料も資源も、生存に必要なものです。それらを安定的に確保することが安全保障です。食料を他国から収奪するというと非常に野蛮に聞こえるかもしれませんが、資源については、わが国はずっと他国から収奪し続けているのです。だから、中東情勢についてわが国は無関係でいられないし、自国の資源の安定的供給ルートを確保する必要があるのです。食料もその意味では、問題は全く同じなのです。
 ここに、われわれの長期的戦略が重要になってきます。今後20年ほどは、日米同盟という形でわれわれは安全保障を考えざるを得ません。しかしその中でも、新兵器開発や軍事演習を通じて、自主防衛への道筋をつけなければならないというのは、このような理由なのです。
 もっと正確に言うと、日米軍事同盟の深化とは、オーストラリアを巻き込んだ形で進められる帝国主義化する中国との新たなゲームのルールを確立するための通過点に過ぎません。中国が超大国化すると、日米二国間軍事同盟、米豪二国間軍事同盟などを発展的に解消し、アジア太平洋地域に集団的安全保障メカニズムを形成する流れができるかもしれません。日米豪によるTPP圏の分割統治です。これには、かつて日英同盟がロンドン軍縮会議、ワシントン会議を経て、アメリカを含む多国間協議の中で発展的に解消していった歴史を踏まえる必要があります。同じように、日米同盟が発展的に解消していく可能性を完全に否定することはできません。
 実際、オバマ大統領は11月17日、オーストラリアの首都キャンベラでの演説で、「アジア・太平洋地域で存在感を示し続ける」と演説を行いました。これは、イラク・アフガンからは撤退はするものの、米豪軍事同盟は維持し続けるという決意表明です。そして、アジア・太平洋地域での安全保障を優先するのならば、必然的に日米、米豪というそれぞれの軍事同盟は、今後、日米豪という三国間の軍事同盟へと深化してゆくでしょう。(以下略)


*本稿は編集部の許可を得て投稿しています。
http://gekkan-nippon.com  

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コメント
 
01. 2012年2月22日 07:21:29 : JLbNHB3IeM
 日本州を取り巻く国際情勢、、、、

日本は独立してないと思いますが?


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