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自分あてに差別はがきを送る
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投稿者 sengoku83 日時 2012 年 6 月 18 日 01:42:56: 2b5SdFoA4TQcY
 


どん底―部落差別自作自演事件 [著]高山文彦

[評者]上丸洋一(本社編集委員)  [掲載]2012年06月10日   [ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝 


■自分あてに差別はがきを送る

 最初のはがきが届いたのは2003年12月初旬だった。
 ――被差別部落出身の町役場の職員を辞めさせよ。
 はがきには、そうした趣旨のことが書かれていた。
 その後、5年にわたって計44通の差別はがきが職員の自宅や勤め先に届いた。
 この間、職員は、各地の集会や研修会で差別への怒りと悲しみを訴えた。
 「みなさんのこの怒りが、うねりとなって、犯人に届くことを願っています。ハガキの差出人は、自分の行為がどんなに醜く、恥ずかしく、あなた自身の心や家族を不幸にしているのか考えてみてください」「不合理な差別をともになくしていきましょう」
 涙を流して職員は訴えた。「悲劇のヒーロー」に向けて拍手と声援がわきあがった。それは、職員の人生において、最も高揚した時だったのではなかろうか。
 09年夏、「偽計業務妨害」の疑いで当の職員(52)が逮捕された。職員は自分にあてて差別はがきを送り続けてきたのだった。
 職員は役場を解雇され、懲役1年6カ月執行猶予4年の一審判決が確定した。部落解放同盟の糾弾学習会で心境を語ったが、人々を納得させる言葉はなかった――。
 重いノンフィクションだ。自分にあてて差別はがきを出し続けるという行為の意味を、どう考えればいいのか。
 事実として言えるのは、職員が自分を「被害者」の位置に据えることを自ら選択したということだ。そのためには自分で差別はがきを出すのが手っ取り早い。そう考えての自作自演ではなかったか。
 部落差別をめぐっては多様な見解がある。本書が問うものについて、所属や立場を超えて語り合う場が広がるなら本書の意義はより深まろう。藤田敬一『同和はこわい考』『「部落民」とは何か』(阿吽〈あうん〉社)、山下力『被差別部落のわが半生』(平凡社新書)も併せてお勧めしたい。
    ◇
小学館・1995円/たかやま・ふみひこ 58年生まれ。作家。『火花 北条民雄の生涯』『水平記』など。

http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2012061100007.html?ref=book  

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