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リベラル２１（http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-2085.html）から転載。 ⇒
2012.08.22 橋下新党は果たして「第３極政党」といえるのか、「近いうち」の衆院解散・総選挙を考える（１）、（ハシズムの分析、その２９）
〜関西から（７２）〜
広原盛明 （都市計画・まちづくり研究者）
８月１０日の消費税増税法案の参院可決・成立以来、国会は「近いうち」の衆院解散・総選挙一色に染まりつつある。法案成立の翌日１１日、早くも「道州制型統治機構研究会」と称する民主・自民・みんな３党の衆参議員５人が、大阪で維新の会の橋下・松井両氏に接触して“勉強会”を開いたのだという（各紙、8月14日）。
「道州制型統治機構研究会」という名称が与える印象は意味深長だ。維新の会が道州制を通して統治構造の改革を唱えていることからすれば、維新の会への「お近づきの印」として、このような名称の集団を立ち上げたことは十分想像できる。だが問題は、その政治的意図だろう。
各紙の共通した見解は、（１）維新の会が次期総選挙に国政進出し、「第３極政党」として政治活動を本格化させる、（２）国政に進出するには公職選挙法上の「政党」要件を確保することが選挙運動にとって必須条件であり、そのなかで「所属国会議員５人以上」という手段が一番手っ取り早い、（３）民主党議員をはじめ、次期総選挙の「落選確実組」のなかから維新の会への「鞍替え希望組」が多数出てきている、（４）上記の研究会集団はその先鋒隊であり、かつ所属政党と維新の会との橋渡し役を兼ねる中核グループとして動くだろう、というものだ。
これまでもそうであったように、最近の政治報道は政局報道に矮小化され、その時々の政党や政治勢力の「組み合わせ」が主たる関心事となっている。床屋談義としては面白いのかもしれないが、しかし「組合せ」や「数合わせ」の意図・背景が同時に掘り下げられなければ、業界紙や週刊誌レベルの記事になってしまう。いったい橋下新党は国政においてどのような政治的ポジションを占めようとするのか、また橋下新党は果たして「第３極政党」といえるのか。
「第三」という言葉は、政治や歴史の世界では特別の意味を有している。政治学事典をひも解くと、「第三身分」「第三階級」「第三世界」「第三党運動」「第三国」「第三勢力」など、この言葉を冠にした用語が多い。最も古くかつ最も意味が明確なのは、「第三身分・第三階級」だろう。フランス革命前の絶対君主制社会では、人口１％弱の僧侶と貴族が支配階級としての第一身分、第二身分を形成し、残りの人民はすべて第三身分だった。第三身分は「被支配階級」を意味し、全ての権利を剥奪された「無」の存在だった。この人たちに「なにもの」かの存在意義を与え、社会を“解放”しようとしたのがフランス革命だったのである。
フランス革命時の第三身分になぞらえてつくられた言葉が、戦後冷戦時代の「第三世界」だ。米ソ両大国を第一世界、先進国を第二世界、その他途上国を第三世界とみなして、列強諸国に支配された国際政治・経済社会のなかで途上国が一致団結して影響力を広げようとした。そこには東西対決の渦中にある第一世界・第二世界の間に「非同盟」運動を持ちこみ、国際社会で途上国の政治的影響力を広げようとする“抵抗”の意味が込められていた。
ならば、「第３極政党」と位置づけられる橋下新党はいったい何を目指そうとするのか。これまでの橋下氏の言動や維新の会の政策をみる限り、そこには「社会の解放」や「権力への抵抗」といった要素は微塵もみられない。また、橋下新党は一見似ているような感じがする「第三勢力」でもない。第三勢力は、対立する二つの勢力の外に立つ“中立的勢力”というのが通常の解釈だから、国家権力のおこぼれにあずかろうとする橋下新党の名称にはふさわしくないのである。
結局のところ、橋下新党は既成政党のなかに割って入り、あわよくば主導権を取ろうとねらう“新興勢力”そのものであって、それ以外の何物でもない。このような新興勢力すなわち「新党」は、かっての自民党長期政権の下では「党内派閥集団」と呼ばれ、政局が流動化して多党化した状況の下では浮かんでは消える「泡沫政党」の代名詞となった。なのに、橋下新党だけがなぜマスメディアで「第３極政党」として持ち上げられるのか。
誰でもわかる理屈は、「第１極」「第２極」に位置するはずの民主党・自民党の「中身」（政策）の区別がつかなくなり、なおかつ組織解体までが進んでもはや「外面」（政党組織）の区別さえつかなくなってきたことだ。普天間基地移転やオスプレイ配備問題に象徴されるようにアメリカの外交・軍事政策には一切口出しできず、消費税増税や原発再稼働など財界の指示通りにしか動けないようでは、政党存立の基盤が消滅しているとさえ言っても過言ではない。
民主党はもはや政党の体をなしていないし、このままでいけば解党・消滅の可能性すら否定できない。また自民党は「民自公３党合意」を隠れ蓑にして民主党の解体を煽ってきたものの、自らが政権党として自立できるだけの政策も能力も持ち合わせていない。いわば第１極・第２極の２大政党が溶解して渾然一体となり、それに代替する体制内勢力が見えなくなった政治情勢の下で、橋下新党が突如「第３極政党」としてクローズアップ（フレームアップ）されることになったのである。
橋下氏が政治舞台に華やかに登場した「大阪ダブル選挙」では、有権者が訳もわからないうちに「大阪都構想」が政治改革のシンボルに祭り上げられた。来る総選挙では、橋下新党が訳も分からないうちに「第３極政党」としてイメージアップされ、さしたる政策の検討もなしに「新しい時代を切り開く政党」として演出されることになるのではないか。今後、「第３極政党」の行方を詳しく追っていきたい。
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