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対米・対中外交と世界経済への新たな貢献の形 国力が弱まった今こそ情報発信力 米中日関係は東アジアの運命を変える
http://www.asyura2.com/12/senkyo139/msg/352.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 21 日 02:28:49: cT5Wxjlo3Xe3.
 


JBpress>日本再生>世界の中の日本 [世界の中の日本]
対米・対中外交と世界経済への新たな貢献の形

インテリジェンス、防衛力バランス、歴史教育に注力を
2012年11月21日(Wed) 瀬口 清之
 野田佳彦総理が解散を決断した。選挙はやってみなければ分からないが、現在の支持率の低さから見て、民主党が従来通り衆議院で過半数の議席を確保するのは極めて難しいと考えられる。民主党単独過半数の時代は終わり、新たな時代に移行する可能性が高い。

民主党の3人の総理はいずれも外交で躓いた


衆議院が解散された11月16日、本会議場で頭を下げる野田佳彦首相〔AFPBB News〕

 民主党政権は2009年9月から3年余りの間に、鳩山由紀夫総理(2009年9月〜2010年6月)、菅直人総理(2010年6月〜2011年9月)、野田総理(2011年9月〜現在)の3人が総理大臣に就任したが、3人とも任期中に外交で躓いた。

 鳩山総理は米軍の普天間基地移設問題について、少なくとも県外に移設すると発言したが、結局移転先が見つからず、問題は宙に浮いたままになっている。これがネックとなり、日米協力関係は長期間にわたって膠着した。

 菅内閣は中国の漁船が日本の海上保安庁の巡視艇に衝突した事件に際して、中途半端な対応を取り、内外から批判を浴びた。中国は対抗措置としてレアアースの対日輸出を厳しく制限し、通関手続きも止め、多くの日本企業が苦しめられた。

 そして野田内閣は尖閣諸島を国有化したため、同島の領有権問題が表面化。日中関係は国交正常化後40年の歴史の中で、最悪の状況に陥った。

外交関係の悪化が経済に与えるダメージはますます拡大

 このように3人の総理は、いずれも日米関係、日中関係に深刻なダメージを与え、外交・防衛、経済面において日本の国益に大きな損失をもたらした。

 もし日米関係が良好であれば、この3年余りの間に日米両国がアジアを舞台に政治経済両面で幅広い協力プロジェクトを展開できていたはずである。普天間問題はそのチャンスを奪った。

 日中関係の悪化が与える影響はさらに大きい。中国における日本企業の製品・サービスへの信頼は高く、中国人の所得水準の上昇に伴い、根強い需要は引き続き拡大していくと考えられる。

 中国事業から得られる利益が年間1000億円を超える企業も増えつつあり、企業経営全体にとって中国市場の重要性はますます高まっている。来年以降も、中国事業の収益が増加し続ける可能性は高く、将来再び日中間の深刻な摩擦が生じれば、日本企業のダメージは今回以上に大きくなる。

 言うまでもないが、対米・対中外交関係が日本の国益に与える影響は非常に大きい。

東アジアが世界経済をリードする時代の到来

 ここで中長期的視点から日本経済の進路を考えてみたい。

 欧州は財政金融不安問題に苦しみ長期停滞が続くほか、米国も「財政の崖」の問題に直面するなど、順調な景気回復は望めない。日本として頼りにすべきはアジアである。

 ちょうど来年は、日中韓3国のGDPの合計が四半期ベースで初めて米国を上回る年になりそうである。再来年になれば通年ベースでも米国を大きく上回る見通しである。この東アジアの発展こそが日本にとって最大のチャンスである。

 東アジア経済発展の軸は日中両国のウィン・ウィン関係である。日中関係が安定を保ち、中国が改革開放政策を堅持し、日本企業が中国各地に進出して地域の税収と雇用の増大に貢献すれば、中国は安定的に経済発展を続け、日本企業は中国市場での収益を拡大する。

 数年前までこうした姿は遠い将来の夢物語と思われていたが、今やそれが現実のものとなっている。このため日中関係が過去最悪の状況にあるにもかかわらず、中国の地方政府は日本企業誘致に対して非常に積極的である。

 それは日本企業の対中直接投資のプレゼンスが先進国の中で群を抜いており、地方の税収と雇用を支える外資の中核的存在が日本企業となっているからである。

日本が果たすべき新たな形の世界経済への貢献

 以上を前提に、今後日本が担うべき2つの役割が考えられる。

 第1に、アジア経済発展のリード役である。当面、米国経済も欧州経済も自力での回復は難しい。もちろん日本1国の力ではどうにもならない。

 しかし、日中韓3国が協調発展し、それがアジア全体の発展をリードすれば、欧米諸国にもプラスのインパクトを与えることができる。その展開の中で日本の果たす役割は重要である。

 第2に、米国と東アジアの橋渡し役である。米国とのTPP交渉に参加して日本の貿易投資に関する障壁を低くすれば、日中韓FTA交渉においても、TPPの成果を前提として、より柔軟かつ積極的に貿易投資促進の枠組み作りに取り組むことができる。

 日米関係から生まれた新たな成果を東アジアの経済発展のために生かすことが可能となる。その橋渡し役こそ日本が果たすべき役割であり、世界経済への新たな貢献の形である。

次期政権への期待:インテリジェンス、防衛力、歴史教育

 そうした日本の外交政策と経済発展の両立を図るために、次期政権に期待したいことが3つある。

 第1に、インテリジェンス(情報収集力)の強化である。過去3年余りの民主党政権において、対米・対中外交において適切な対応を取れなかった3つの出来事に共通の問題がある。

 それは相手国の受け止め方に対する認識不足である。日本政府が外交上の措置を取る際、相手国がそれをどのように受け止め、日本に対してどのような反応を示すのかについて、予め的確な認識を持っていれば、3つの出来事はいずれも対応の仕方が違ったはずである。

 それができなかった理由は、相手国の政治状況や国内事情に関する情報不足、あるいは総理および閣僚の高度な外交判断能力の不足である。

 日常的に国家安全保障会議のような場において総理、外相、防衛相、財務相、官房長官らが、専門家を交えて主要相手国に関するインテリジェンス情報をタイムリーに共有し、外交・経済政策を総合的に判断する場があれば、判断力は自然に研ぎ澄まされる。

 また、日米、日中間においてどんな状況下でも信頼し合ってフランクな意見交換ができる有力政治家間の個人的な太いパイプの構築も極めて重要である。


海軍力の増強を図る中国〔AFPBB News〕

 第2に、防衛力バランスの保持である。米国は今後、厳しい財政事情により防衛予算の大幅削減を余儀なくされる可能性が高い。アジア回帰政策の下でアジア関連予算の比重が相対的に引き上げられるしとても、予算規模全体の削減幅が大きければ、アジア関連予算も減少する。

 一方、中国は2020年前後までは高度成長が続く可能性が高く、経済成長に応じて軍事予算の拡大、軍事力の強化が続く見通しである。

 ここで日本が何もしなければ、西太平洋の防衛力バランスは徐々に崩れていく。これを放置すれば、東アジアの安全保障上の緊張は高まる。日本としては少なくとも防衛力バランスが崩れないようにする努力が必要である。

 もちろん日本だけの力では無理である。日米同盟を軸に韓国、豪州、フィリピン等との連携を強化し、防衛予算の増加を最小限に抑えながら、防衛力バランスを保つ努力を継続することが求められる。

 第3に、歴史教育の見直しである。日本人の多くはアジア諸国との歴史問題に無関心である。その主な原因は小中学校の歴史教育の不備にある。

 学校で日本史を学ぶ際に、江戸時代以前の歴史に多くの時間が割かれ、日本がグローバルな世界の中で大きく変化をしていく明治維新から第2次大戦に至るまでの歴史が軽視されている。これが日本人の世界史的な視点の欠如、国際社会、とくにアジアに対する無関心の根源的理由である。

 学校での歴史教育を抜本的に改め、1学期に江戸時代以前を終え、2学期は明治維新から敗戦まで、3学期は戦後を教えるようカリキュラムと教科書の抜本的見直しが必要である。

 以上の3点の取り組みを通じて、日米・日中外交関係の緊密化と東アジアの安定確保を土台とする経済発展に対して、日本政府が積極的な役割を果たしていくことを期待したい。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36577


JBpress>日本再生>世界の中の日本 [世界の中の日本]
国力が弱まった今こそ情報発信力を高めよ
日系社会との連携が1つのポイント
2012年11月21日(Wed) 川井 龍介
 あまり一般には知られていないが、毎年秋、海外日系人大会(主催:公益財団法人海外日系人協会)が都心で開かれている。各国の実情を報告し合い、国際交流、国際理解を深めることを目的に世界各地の日系人が集まる。

 その大会に関連して海外における日本語新聞など日本語メディアの関係者が集まる海外日系新聞放送大会も毎年開かれている。

 海外にあってその国に在住する日本人に向けて日本語で情報を発信するというユニークなこれらのメディアは、東京に本社を置く大メディアとは違った視点や目的から情報を発信している。

 このなかには戦前の移民社会のなかから生まれた古いメディアもあれば、生活情報などに主眼を置いたメディアもあり、紙という媒体から電波、ウエブとその形態も多様化している。

 もともとは現地の読者、視聴者に対象を特化していたこうしたメディアもインターネットの普及によって、世界中の日本語を解する人に向けて、ローカルなニュースをグローバルに発信することが可能になった。

 一方、これらは日本の情報をさまざまな地域で広めるという役割を果たしている。また、言葉は日本語だが、現地の日系社会などをを通して現地の人々、とりわけ日本に親しみを寄せる外国人に役立っている。

 昨年の大震災のときには、海外の日系社会、日本人社会から多くの激励や援助が届いたが、こうしたメディアが情報や支援の窓口になったこともある。結果として、改めて海外の日系社会の広がりを認識することになった。

在米日本人留学生は激減するなど国力が衰退

 こうした海外での日系の力に反して、残念ながら日本の国力が衰退していることは否めない。ならばいまこそ「日系社会との連携を図ること」を通して日本のよさを世界に発信する必要がある、という講演が、海外日系新聞放送協会で行われた。

 講演したのは、公益財団法人フォーリン・プレス・センター(FPCJ)理事長、赤阪清孝氏。FPCJは、日本新聞協会と経団連の共同出資により1976年に設立。外国メディアの日本取材や、日本から外国へのメディアを通じた情報発信を支援を使命としてきた。赤阪氏自身はブラジル、サンパウロで日本国総領事の職歴をもつ。

 講演では、国の置かれた厳しい状況を確認したうえで、本来の自国の強みを十分外に向かって発揮できていないという観点から「日本からもっと世界に向けた情報発信を」というテーマで赤阪氏が訴えた。

 以下、同氏の講演内容を提供された資料をもとに、若干の説明を加えながら紹介したい。

 まず、「国力の勢い」について、人口、国内総生産(GDP)、政府開発援助(ODA)予算、国連への分担金、海外留学生の数などを例にとって、主要国と比較したときの低下を説明する。

 海外留学生については、さきごろアメリカ国際教育研究所(IIE)による報告書から日本のメディアが紹介している。それによると、2011年秋から12年春までの学期でアメリカの大学・大学院で学ぶ日本人学生は前年から6%減って約1万9900人で、1990年代後半と比べると半分以下になった。一方、中国留学生の数は約19万人にのぼるという。

 「過去十数年間で日本のアメリカにおける留学生の数はずっと下がっている。若者の内向きな面の表れかもしれない」と赤阪氏は言う。

外国のメディアは去り、日本のメディアは閉鎖的

 つぎに政府広報予算については、2006年度は100億円だったのが12年度は43億円と半分以下になっている。さらに「日本への関心」という点でいくつかデータを挙げている。

 外国人から見た日本への関心が減少していると推測される事例だ。例えば、在日外国記者登録証の保持者と機関の数を見ると、1991年は保持者515人、機関337だったのが、2012年はそれぞれ309人、189とかなり減少している。

 これは国際的にみて、ビジネスとしてのメディア界の力の衰えもあるだろうが、北京在住メディアの数を見ると、2004年は210社だったのが11年には356社と急増している。

 記者数の減少とともに日本関連報道の件数も長期低落傾向を示している。

 欧米主要4メディア(ニューヨークタイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナル、ロイター通信)の報道数をみると、昨年は東北大震災の関係で日本関連が前年から急増したが、過去十年ほどを見ると、中国関連が増加しているのに対して、日本関連は、横ばいあるいは減少傾向にある。

 こうした現状を踏まえて、赤阪氏はつぎに「日本からの情報発信」について触れ、まず「政治、経済、社会、文化などに関する海外向け報道のための日本の努力は、米、英、仏、独、中国などに比べて十分でない」と結論。「受信能力には優れているが、発信能力には必ずしも強くない多くの日本人」という榊原英資氏の言葉を引き合いに出す。

 日本のメディア自体のあり方についても、マーティン・ファクラー(ニューヨーク・タイムズ東京支局長)の言葉を紹介し、その閉鎖性を示唆している。

 「日本の記者クラブからは、これまで幾度となく取材の“ジャマ”をされてきた」、「記者会見を密室に閉じ込めようとした当事者が、体制側でなく日本のジャーナリスト本人だったというのだから暗澹たる気分になる。いったい日本の記者クラブメディアは、だれのために存在しているのか」・・・。

アニメ、ドラマは健闘しているが・・・

 日本からの発信力が高まっている例としては、アニメやドラマなどのテレビ放送を挙げる。日本のテレビ番組の輸出額は2010年度62.5億円で、内容別に見ると、最も多いのはアニメ(47%)で、次いでバラエティー、ドラマ、スポーツなどとなっている。

 輸出先は、アジアが50%で、ついで北米(25%)、ヨーロッパ(20%)となっている。日本におけるテレビ番組の輸出入バランス(時間)は、「輸入:輸出」の割合が、1980〜81年は「1:2」だったのが、92〜93年は「1:8」、さらに2001〜02年は「1:14」と大幅に輸出超過だ。

 ただし、韓国の場合は、2012年前半のポップカルチャー(映画、TV、ラジオ番組、音楽)の輸出額は1億4000万ドル(約110億円)と、日本の2倍以上という(KBS Worldより)。

 アニメ以外にももちろん日本が世界に胸を張って発信できるものはあるが、その発信力がいま問われているというのが赤阪氏の主張だ。FPCJとしては、ジャパン・ブランドをはじめとした日本の魅力や強みについての素材を外国のプレスに提供。彼らに対するプレス・ブリーフィングやプレス・ツアーといった取材への協力を行っている。

 しかし、もっと国を挙げての対策が必要だという。そのための具体的な提言としては、1つは、メディアから海外に向けた言語の多角化。海外向けでは、FPCJやNHKWorld、JapanPortal(共同)といったメディアがあり、ニッポンドットコムのように多言語で発信しているものもあるが、より多くのメディアの多言語化を進める必要がある。

 このほか、「日本再生戦略の具体的実施−予算の配備」、「外国特派員へのアクセス改善−記者クラブの開放化」、「新聞大会のテーマとして『ニュースの海外発信の強化策』」、「日系報道関係者を含む『海外情報発信者会議』の開催」、「情報省」のような機関の設置の検討を挙げている。

軽んじていた日系社会の影響力


日系社会との連携の必要性を説く赤阪清隆氏
 このなかで、日系報道関係者に協力を得る点については、これまでの日系社会に対する姿勢への反省がある。

 「従来から、日本においては、海外の日系社会を日本情報の重要な発信者と見る認識は薄かったのではないか。日系社会の影響力を正当に評価してこなかったのではないか。日系社会に日本を発信する役割をになってもらったらどうだろう」と、赤阪氏は考える。

 今日のように、これだけ海外に日本人が進出し、日系のコミュニティーができあがっていても、日本から駐在などで海外にいる期間限定滞在の日本人が日系社会とあまり交流を持たないというのはよく聞く話だ。

 以前、本誌で紹介した全米で最も成功した日系スーパー、宇和島屋のトミオ・モリグチ会長(日系2世)が、「日本の会社の人は日系人にもっとアドバイスを求めたらいいのに」というように、日系社会は積極的に“活用”されていないようだ。

 一般に日本社会は同族意識がつよく、それは国家単位だけでなく企業や学校といった組織やグループ単位でも、構成員個人の帰属意識が強い。反対に、組織やグループを離れたものに対しては、差別的な扱いをすることが少なくない。

 故郷を離れたものに「故郷を捨てた」とか、会社を辞めたものに「会社にケチをつけた」などということもある。同様に、移民などのように海外に出た日本人に対しても、これまで偏見がなかったといえば嘘になるだろう。

日本の底力を海外の日本語メディアが伝えている

 海外の日系メディアをみると、戦前からの移民社会から生まれた邦人紙のなかには、世代の移り変わりの中で役目を終え、廃刊したものもいくつかある。が、その一方で、情報誌の形をとって、新たにインターネットと紙媒体で展開しているメディアが各地で誕生している。

 いずれにしても、扱うニュースととらえ方に違いこそあれ、現地と日本の情報を日本語で伝えることは、現地の日本人にとって有用であるのはもちろん、日本の日本人にとっても有用である。

 東京を本拠地とする大手の日本のメディアが東京からの視点で、国内の読者だけを意識して送る海外の情報とはちがった、現地の日本人の視点によってより細かな情報が提供される。これら海外における日本が関わることへの理解が進むことによって、海外でいまなにが求められているかがわかる。

 一例をあげれば、ブラジル、サンパウロを拠点とするニッケイ新聞に、先日日本でネイル・デザインを学んだ日系人女性がブラジルで高い評価を受けてビジネスとしても成功しているというニュースがあった。

 これらは改めて日本人のもつ繊細さや美意識が国際的に評価されるということを教えてくれた例だろう。

 仕事や作品における高品質な技術、経営におけるマネジメント能力など“よき日本”はしばしばこうしたメディアからうかがうことができる。

 また、こうしたメディアはほとんどが日本語だが、日本に関心をもつ現地の人や日系人を通じて日本の情報が現地に伝わっているほか、アメリカでは英語記事も併用している新聞もあり日本への理解に貢献している。

 これまでは日系社会、日系メディアに対する認識が低く、これらと連携を図ることができなかった。赤阪氏は、「伝統的な価値観、美徳、文化」など日本の持つ底力を発信するためにも日系社会との連携の重要性を強調する。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36588

【第14回】 2012年11月21日 田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
米中日関係は東アジアの運命を変える
歴史的転換点で日本がとるべき“イニシアティブ”

米、中、日で同時期に新体制が発足
日本の運命を決める東アジアの歴史的転換点

 米国でオバマ大統領が再選された。中国では第18回共産党大会が終わり、共産党の最高意思決定機関である政治局常務委員会に、習近平総書記の他計7名の委員が決定された。そして日本では衆議院が解散され、12月16日の総選挙で新たな政治体制が選択されることとなる。

 米国、中国、日本の3ヵ国の相対的な力関係は、この20年の間に大きく変化し、新体制の下での各国の対外政策の変化と相まって、東アジアは歴史的な転換点にさしかかった。これは、日本の将来を決定づけることにもなるのかもしれない。

 近代史を振り返ってみれば、日本、中国、米国の三者の関係が東アジア地域の、そして日本の運命を決めてきた。1853年、大国中国への進出を図るべく新興国米国はペリー提督の黒船を日本に送り、補給基地としての開国を迫る。米国のアジアへの参入の始まりである。

 開国し、明治維新を経た日本は富国強兵を追求し、日清・日露戦争に勝利し、韓国併合・満州国立国、さらには中国大陸に派兵し、戦争を拡大した。中国大陸に本格的に進出した日本は米国に阻止される。

 戦後1951年、日本はサンフランシスコ講和条約により主権を回復、吉田茂首相は米国に安全保障を依存し、経済再建にまい進するという選択をする。

 1969年に世界第二の経済規模を保有することとなった日本は、西側の一員として順調に大国化の道を歩む。そして冷戦が崩壊した1990年頃が、日本のピークであったのだろう。

 しかし、1990年から2010年にかけての日本は「失われた20年」と呼ばれる停滞が続き、一方で中国は改革開放路線の下、目覚ましい台頭を続け、日中のGDPは逆転する。

 米国との関係を見ても、1990年時点で米国総貿易量に占める日中の貿易量は大きく逆転し、財務省証券の外国保有残高でも1990年時点では日本が圧倒的シェアを占めていたが、2010年には中国が最大の保有国となっている。

 今後もこのような傾向は、基本的には変わるまい。経済力だけではなく、軍事的能力の差も拡大していくのであろう。果たして米国、中国、日本は新しい体制の下でどのような政策を展開していくのだろうか。今後の米、中、日の相互関係をどのように展望するべきなのだろうか。

単独行動の米国はもはや過去?
今後4年間は国際協調路線が続くか

 米国の大統領選挙を決定づけた要因は、米国の有権者人口構成の変化であった。ヒスパニック、アジア系、黒人の人口は増え、少数民族の人々は白人人口に比べれば貧困であり、税制や社会保障の面で貧困者を優遇する民主党への支持は強い。

 民主党全国大会と共和党全国大会の雰囲気を比べれば、一目瞭然である。共和党大会は白人層の多さに、そして民主党大会は米国が多民族国家であることに印象づけられる。

 もちろん、今回の大統領選挙はオバマ大統領の信任投票という色彩が強く、よほどのことがない限り現職有利であったこと、選挙を左右する最大の要因と見られる経済状況についても選挙直前に失業率が8%を切り込んだこと、さらには8州と言われる接戦州でオバマ大統領の支持率はロムニー候補を常に凌駕していたことなどを見れば、オバマ大統領の勝利は予想されたことであった。

 しかし将来の選挙についても、よほど傑出した大統領候補を立てない限り、人口構成の変化から見れば、共和党大統領の誕生は難しいのではなかろうか。

 上院議員選挙についても同様である。州という広い選挙区では、人口構成の変化が敏感に反映される。共和党が勝利し得るのは選挙区が細分化された下院議員選挙だけではないか、という見方もできよう。

 2年前の中間選挙で、下院は「小さな政府」に基づく徹底的な財政赤字削減を標榜する原理主義的保守の茶会党(ティーパーティー)勢力が躍進したが、この躍進の背景には黒人大統領や少数民族の台頭を嫌う白人保守主義の考え方があったとも言われる。

 民主党政権の対外政策も、共和党政権とは大きく異なる。特にオバマ政権は、ネオコン勢力の影響も強かったブッシュ政権の反動という面も強い。オバマ政権は、米軍のイラク及びアフガニスタンからの撤退を実現していくだけではなく、リビアのカダフィ政権への軍事的措置においては後方からの支援に徹した。

 その際オバマ大統領は、米国の軍事行動は正当性が確保され、パートナーと共に行動する場合に限られると表明した。ブッシュ時代のように、必要な場合は単独でも行動をとるという米国は、もはや過去となったのかもしれない。

 現在の米国の最大の課題は財政赤字の削減であり、国防予算の大幅な削減も既定路線である。強い米国を標榜した共和党ロムニー候補が勝利していれば、異なる政策がとられたのであろうが、少なくとも今後4年の間米国は国際協調を旨とする政策を重視していくのだろう。

気になる習近平書記の演説の中身
「中華民族の偉大さ」が外に向く?

 一方、中国の新体制の方向性はどうであろうか。政治局常務委員7名の決定には激しい権力闘争があったと報じられているが、透明性を持つ選挙で選ばれるわけではない以上、舞台裏では厳しい闘争があったのは想像に難くない。

 共青団と太子党の争いや、既得権益を擁護する勢力と改革を志向する勢力の対立があったことも事実であろう。さらに、胡錦濤国家主席が軍事委員会委員長のポストを手放したこと、一方では政治局常務委員に任命された人々の何人かは5年後の党大会時には定年を超えているところから、5年後にはもう一度人事が行なわれること、政治局には多くの若い指導者が含まれることなどは、特記すべき点であろう。

 今回の指導部交代も、どちらかと言えば既得権益擁護派が勝利したという見方が一般的であるが、最も重要であるのは習近平総書記の演説に盛られている政策方向であろう。

 汚職の撲滅や今後10年間での1人当たり所得の倍増といった社会正義を実現するという決意と並び、「中華民族の偉大さ」を前面に出す演説を行なった。もちろん、これは国内向けの演説ではあるが、一方では成長の鈍化が予想され、低成長の下での所得再配分、社会正義の実現は、よほど思い切った国内制度改革を行なわない限り困難な課題であろう。

 国内課題の改善が見通せないとき、国内求心力を高めるための「中華民族の偉大さ」という概念が外に向き、排外的なナショナリズムに形を変えていく危険があることも認識するべきなのだろう。

 過去10年間の軌跡を見ても、WTOに加入し、高い経済成長を実現した中国が自信をつけ、2010年を境に南シナ海や尖閣問題をはじめ対外的にも傲慢な態度をとるようになったことも、銘記する必要がある。

 経済成長が順調に達成されても、あるいは成長が鈍化し国内の不満が蓄積し続けた場合でも、ケ小平が唱えたような「角をため低姿勢で事にあたる」という対外姿勢は、もはや過去の遺物となったのかもしれない。

米中関係は対決回避の方向へ?
日本の右傾化は孤立を招きかねない

 オバマの米国と習近平の中国は、どういう関係を構築していくのだろう。米国の否定にかかわらず、オバマ政権が掲げた「アジアへの回帰」政策は、中国には中国囲い込み政策と映っている。米中の猜疑心が簡単に解消していくとは考えられないが、対決は避けようとする力が働くのだろう。

 国内経済運営をしていく上で、米中は投資や貿易面でお互いを必要としている。特にオバマ大統領の第2期目の課題は、財政赤字の縮小や社会保障改革といった国内課題であり、中東が再び混乱の兆しを見せているときにアジアでの緊張は回避したいと考えるのだろう。

 中国は東アジア地域では引き続き攻勢を強めていくのだろうが、一方、国内経済成長の担保が引き続き最大の優先課題であり、米国との決定的対立は経済成長至上主義路線に支障をきたすと考えるのであろう。

 日本はどうだろうか。最近欧米の新聞では、日本は右傾化していく、特に領土問題や歴史問題を中心としてナショナリズムが高揚し、対外強硬論が強くなっていくという記事が目につく。

 確かに自民党総裁選の候補者が対外強硬論を語っていたことは事実であろうし、日本維新の会の代表に就任した石原前都知事がタカ派であることは周知のことである。総選挙ではたしてどのような審判が下るのか、選挙後の政権の形がどうなるのか。いずれにせよ中国や韓国などと対決し、この地域がさらに緊張していくことは避けなければならない。

 日本のナショナリズムを前面に出した強硬姿勢は、東アジア地域での日本の孤立を招きかねず、同盟国米国も好むところではない。中国の自己主張が強まり、東アジアではさらに傲慢となっていく可能性があること、米国が基本的には協調的態度を前面に出すであろうことを考えた場合に、日本はどういう戦略で臨むべきなのであろうか。

東アジアで戦略的外交を進めるために
将来を変える総選挙後の政治体制

 融和的態度が良いわけではない。しかし、単に強く出ればよいというものではない。安全保障面では十全の備えが必要であるが、一方、中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、多くの分野での相互依存関係が存在する。日本の成長戦略にとっても、中国さらには中国を含む東アジア全体のマーケットが必須である。

 冷戦下のソ連とは異なり、中国と対決しつつ中国を孤立させるという政策はもはや現実的ではあり得ない。日本の戦略の根本には、「国際社会の中でより建設的な中国」に変えていくという目標がなければならない。

「中国を変えていく」という作業は簡単ではないし、日本だけでできるものでもない。しかし、東アジアに位置する最大の先進民主主義国である日本にしか、イニシアティブはとれない。

 将来が不透明な中国に対する抑止力は、強い日米同盟関係で担保するとともに、日米中の信頼醸成枠組みを創設し、韓、豪、印、インドネシア、ベトナムなどとの戦略的関係を強化し、ルール作りのため東アジア経済連携協定とTPPを同時並行的に走らせ、東アジアサミットの枠組みを使って本格的なエネルギー協力を実現するといった、重層的で多面的な戦略を構築していくべきなのであろう。

 日本の総選挙後にどういう体制ができるのか、勢いだけが前面に出たポピュリズム的傾向に陥ることなく、戦略的外交を行なうことができるのか。東アジアの歴史的転換点にあって、日本の将来を大きく変える選挙が近づいている。
http://diamond.jp/articles/print/28240  

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