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<インタビュー>ルックイーストはいま マハティール・ビン・モハマドさん(朝日新聞)
http://www.asyura2.com/12/senkyo142/msg/641.html
投稿者 gataro 日時 2013 年 1 月 15 日 17:43:17: KbIx4LOvH6Ccw
 

<インタビュー>ルックイーストはいま マハティール・ビン・モハマドさん
朝日新聞 2013.01.15 東京朝刊 11頁 オピニオン1 

 マレーシアの首相を22年間務めたマハティール氏は1982年に「日本を見習え」と、ルックイースト(東方)政策を唱えた。それから30年余り。「いまや日本の過ちから教訓を得るときだ」「韓国により多く学ぶ点がある」と苦言を呈する。アジアを代表する知日のリーダーは、停滞が続く日本にいらだちを隠さない。


 ――ルックイースト政策は成果をあげたのでしょうか。


 「マレーシアの発展に寄与したことを疑う余地はない。労働に対する真摯(しんし)な姿勢、戦後復興への熱意と愛国心、独自の経営スタイル、職場での規律を日本から学んだ。貧しかったわれわれは、日本人の価値観や倫理観を見習い、民族(マレー系、中国系、インド系)間の協調を保つことで発展しようと考えた」


 ――多くの日本企業を誘致し、留学生を日本に送りました。


 「日本は素材を輸入し、加工して輸出していた。貿易立国をめざすマレーシアにとって、技術を通して世界市場に打って出るモデルだった」


 ――当時の日本は経済的に日の出の勢いでしたが、いま長い停滞のなかにいます。


 「日本が苦境にあるのは、経済大国への道を切り開いた自らの価値を捨て、欧米に迎合したからだ。例えば終身雇用制などに重きを置かなくなった。政府の指導や民間企業との協力関係はいまや犯罪視される」


 ――系列、行政指導、日本株式会社といった、欧米から批判されたシステムにあなたは肯定的でした。それらを捨てたことが間違いだと。


 「大きな誤りだった」


 「われわれが見習ったのは、現在の日本がやっていることではない。いまはあなたたちの犯した過ちを繰り返さないようにと学んでいる」


 ――しかし90年代以降のグローバリゼーションは、そうした日本のシステムの生き残りを許さなかったようにみえます。


 「確かにグローバリゼーションはやってきた。それは欧米のアイデアであり、彼らの利益のために考え出された。新たなシステムを採用すれば、混乱はつきものだ。日本は国内の状況を斟酌(しんしゃく)せずに受け入れた。それまでのやり方とグローバリゼーションを調和させることに失敗した」


 ――日本の短命政権についても常々批判されています。


 「日本の政治状況も悪影響を与えている。中曽根康弘首相や小泉純一郎首相は長くその座にあったが、首相があまりに短期間で交代する。政府は安定せず、政策を立案し、実行する時間的な余裕がない。民主党もその点は同じだった。党内の支持をまとめきれない首相が続き、問題を解決できなかった。日本が危機を乗り越えられない理由だ。ひとたび選んだら団結して応援する。首相個人の弱みは脇に置いて日本の復興に集中させることだ」


 ――「現時点では、古い社会システムと労働者倫理が残っている韓国のほうが(日本に比べ)学ぶ点が多い」と著書で指摘されています。


 「東方政策は当初から日本だけでなく韓国や台湾も視野に入れていた。いまなら中国も。もちろんほとんどは日本から学んだ。文化や倫理、日本を発展させた価値観。だがその多くはもう日本にはない」


 ――日本と韓国の違いは。


 「日本は明治時代から西洋化を始めたが、韓国は戦後のスタートだ。それでも速く発展している。常に日本を目標にし、科学技術とマーケティングを磨いてきた。韓国の大統領は5年間代わらない。私にとって5年は十分ではないが、日本よりはましだ。政治制度の違いは大きい」


 ■   ■


 ――中国はいまやルックイーストの対象であり、脅威ではないと発言されています。日本や他の近隣国の指導者とは見方が違うようです。


 「過去2千年、中国がマレーシアを侵略したことはない。ベトナムに拡張を試みたが、あきらめた。日本に攻め込もうとしたのは、モンゴル高原に発する『元』だ。われわれを植民地にした西欧に比べれば中国が過去、好戦的だったとは言えない。市場経済の時代に、中国が日本をはじめ、周辺国を侵略する意図を持つとは思えない」


 ――中国は東シナ海や南シナ海で領有権を強く主張しています。


 「中国は豊かになり、さらなる富を得るため海に手を伸ばしている。中国が国内総生産の1%を軍備にあてるだけで巨額だ。かといって中国が戦争を欲しているわけではない。交渉によって解決するほかない」


 ――対話を通じて解決をめざす意図が中国にあるのでしょうか。


 「日本に米軍基地があれば、中国はそれを脅威に感じる。日本から米軍の兵器が発射されたら、と軍備を増強する。相手の立場から状況を考えてみることも時には必要だ」


 ――日本では自民党が選挙中、自衛隊の国防軍化や尖閣諸島への公務員常駐などの政策を掲げました。


 「実行すれば、中国はこれまで以上に軍備を増強し、対抗しようとするだろう。お互いの挑発がエスカレートし、ついには戦闘に至るかもしれない。賢明ではない」


 「マレーシアは隣国すべてと争いを抱えているが、タイとは協定を結び、インドネシア、シンガポールとは国際司法裁判所で決着。負けても受け入れた。フィリピン、ブルネイとも交渉し、現状を維持している」


 ――日本は経済的に自信を喪失し、その反動として右傾化が進んでいるとの指摘があります。


 「危険なことだ。日本が自信を取り戻すのは軍事ではなく、経済力を回復させるしかない」


 ■   ■


 ――97年のアジア通貨危機でマレーシアは周辺国と違って国際通貨基金(IMF)の支援を求めず、通貨の変動相場を固定相場制にして、しのぎました。


 「IMFを頼らなかったのは、自国のことは自国で決めるためだ」


 ――10年以上たって、リーマン・ショックがあり、続いて欧州危機が起きました。


 「欧米では、市場が自律的に需給を調整するといって、政府の規制を嫌う。だが金融市場はシステムを乱用して回復不能に陥った。ヘッジファンドが錬金し、銀行は無理な住宅ローンを貸し付ける。借り手は払えなくなり、銀行は債務超過で危機に陥る。強欲の結末だ。穴埋めに中央銀行が札を刷り、倒産企業を政府が支援している。かつて批判してきたことをそのままやっているのだ」


 「戦後、日本や韓国など東洋の国々が安く良質な製品をつくるようになった。欧米は製造業の分野でかなわなくなり、金融市場に活路を求めた。サブプライムローン、レバレッジ……。製品も雇用も生まない。商いとはいえない、ギャンブルだ」


 ――米国のいいなりになる日本政府に何度も不満を表明しました。米国の意向をくんで、あなたが唱えた東アジア経済会議(EAEC)構想に反対した時やイラク戦争を支持した時です。そんな日本に学べと号令をかけたことを後悔はしませんか。


 「われわれが見習ったのは、高い職業倫理で戦後の復興を果たした日本だ。米国の影響下にある日本ではない。米国はEAECに中国を含めたから反対した。環太平洋経済連携協定(TPP)でも中国を除外しようとする。われわれは東洋の人間だ。敵をつくるのでなく、自分たちの問題は自分たちで解決すべきだ」



首都クアラルンプールを象徴するペトロナスツインタワー最上階の執務室=古田大輔撮影


 ■   ■


 ――マレーシアの与党は57年の独立以来、政権にとどまっています。


 「三つの民族を代表する党で連立を組み、政局より経済発展に力を注いできた結果だ」


 ――政権交代がないと民主主義とはいえない、という見方もあります。


 「与党がうまくやっている時に代える必要はあるのか。変化を望むというだけで? 交代には必ず混乱が伴う。日本は政権交代で何を得たのか。よりよき政府を持てたのか。オバマ米大統領は『チェンジ』と言ったが、4年たっても、グアンタナモさえ閉鎖できないではないか」


 ――マレーシアの民主主義は、それ以外の国々とは違うのですか。


 「民主主義にはいろんな解釈がある。だが基本は選挙を通じて政府を選ぶ権利があるということだ。マレーシアでは国民が与党を選んできたが、08年の選挙では大きく議席を減らした。だから今は弱い政府だ。それはこの国にとって良くない。国民は野党に投票することができる。だがその対価は支払う必要がある」


 ――あなたは独裁者のように支配し、言論の自由を制限し、メディアを規制したとも批判されます。


 「われわれには民族問題があり、対立をあおる報道は、国の安定を損なう。報道の自由は、絶対的なものではない。限界がある。英国さえ報道規制を検討しているではないか」


   *


 Mahathir bin Mohamad 1925年生まれ。マラヤ大学医学部卒。医学博士。開業医をへて、81年から03年まで首相を務めた。


 <取材を終えて>


 「日本を見習え」「日本は戦争について繰り返し謝る必要はない」。そんな発言をしてきたマハティール氏だが、米国を頼りに隣国に強硬姿勢で臨もうとする安倍政権の対外政策には批判的だ。「戦後復興を果たした勤勉さや倫理こそが愛国心」。退任後、日本風パン屋を日本人と共同経営する親日家の叱咤(しった)であり激励だ。


 (機動特派員・柴田直治)


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<参照>


1485 ・日本の過ちは、自らの価値を捨て欧米に迎合したことだ」と、マレーシアの元首相
http://blog.goo.ne.jp/ikiikimt/e/b1de1b6b341ed5da0b3bd0005ac4b5c8
 

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コメント
 
01. 2013年1月15日 19:46:10 : Pj82T22SRI

> 「日本が苦境にあるのは、経済大国への道を切り開いた自らの価値を捨て、欧米に迎合したからだ。例えば終身雇用制などに重きを置かなくなった。政府の指導や民間企業との協力関係はいまや犯罪視される」

工業化が終了して先進国になり、一人当たりの賃金が途上国の10倍以上になった場合、重商主義的、国家資本主義的政策を放棄するのは避けられないことだ

本来は、産業構造を転換して内需産業の効率を高め、北欧のように、規制を徹底的に排除して大企業を増やし、正規と非正規の差を無くして、再分配を強化し、効率的な社会を作る一方で、

米国のように技術革新を絶えず起こして、世界をリードする新規産業を拡大させていく必要があったということだ

日本の場合、どちらも不十分だったために少子高齢化の中で潜在成長率が欧米以下になってしまい、輸出産業もキャッチアップされて貧困化していった

その意味ではアベノミクスは、時間を逆行する政策と言えるから、旧来の産業は延命できも、日本人がさらに豊かになることはない


02. 2013年1月15日 19:47:07 : w18f1GkoJs
良い記事でした。私も切り抜いて取っておこうと思っていました。
転載、ありがとうございます。

03. 2013年1月15日 19:56:42 : Pj82T22SRI
>97年のアジア通貨危機でマレーシアは周辺国と違って国際通貨基金(IMF)の支援を求めず、通貨の変動相場を固定相場制にして、しのぎました

これは富裕層の資産を凍結して「金融鎖国状態」を作り出し、途上国に戻ったということだ

実質的には富裕層増税を行ったことに等しいが、副作用として将来的に投資不足による深刻な不況に陥るリスクもあった

国内に十分競争力のある産業が存在し、危機後に日本などから投資を呼び込めたから成功したと言える


http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/ir/college/bulletin/g-vol1/kondo.pdf


http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1022127/www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/tyousa/1703malay_7.pdf
第2 章
固定相場制と資本規制
1 . 資本規制策導入に至る経緯
1997年7月2日のタイ・バーツの実質的な切り下げに伴うアジア通貨危機の発生
で、右肩上がりで伸びてきた東アジア経済が一気に奈落の底に落ちることになった。各
国の通貨は、タイ・バーツにつられるように売り込まれ、通貨危機は経済危機を招き、
インドネシアでは政権が転覆、韓国では政権交代が起こった。
国際通貨基金(IMF)は、タイに172 億ドルの救済策を97 年8月に打ち出し、同年
11 月には、インドネシアが、IMF 主導で300 億ドルを上回る融資を受け入れることを
決め、韓国も同年12 月にIMF 支援の受け入れを決めた。各国がIMF 依存の経済改革
を遵守する中で、マレーシアだけは、IMF に対峙した独自の資本規制策を導入、当時
首相を務めていたマハティール氏の強いリーダーシップに基づいた改革を進めていく。
マハティール氏は、「われわれはIMF の内政干渉の奴隷にはならない。植民地に戻る
わけにはいかない」と強気の発言を繰り返した。とりわけ97 年9月に香港で行われた
IMF 世銀総会で、投機家のジョージ・ソロス氏と真っ向から対峙し、「投機は犯罪だ」
と攻撃し、ソロス氏は「私はマレーシア・リンギットを通貨危機2 ヶ月前から売った覚
えはない。マハティール氏は自分の失敗を私のせいにしようとしている」と激しく反論
した。
マレーシアの中央銀行にあたるバンク・ネガラ(Bank Negara)は、97 年7月8日
以降、外国為替市場に介入し、リンギットの買い支えと金利の高め誘導を行い、投機筋
のリンギット売りを防衛した。しかし、その後、リンギットは安値を更新し、7 月下旬
には、防衛策をやめ、完全自由フロート制にする。通貨防衛をしたために、株式市場で
も株価が軟調な展開となり、リンギット安や株安を招いていく。
他のアジア諸国同様、通貨が売り込まれ、金融システムの維持が危ぶまれていく。株
価の急落で企業業績が急速に悪化、倒産する企業が増え、金融機関の資産が悪化してい
く。バンク・ネガラは当時、不良債権の比率を6−7%と発表していたが、実際には、
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その倍以上はあるとの見方が市場では広がっていった。マハティール氏が米国主導の
IMF 型改革を批判すればするほど、通貨は売り込まれ、国内でもマハティール批判が
噴出しかねない状況になっていった。
マハティール氏は、98 年1月から経済・金融担当の閣僚、中央銀行総裁とアドバイ
ザーら数人のメンバーから国家経済行動評議会を招集、ほぼ毎日午前中、数時間に渡っ
て、経済の立て直し策を協議した。マハティール氏はその後、この時期について「私が
首相就任中、最も厳しい時期だった」と語っている。IMF と全く違う金融政策として、
固定相場制導入を思いついたマハティール氏に同評議会すべてのメンバーが反対した。
これ以上、国際社会から阻害されることや、ヤミ市場ができ、公務員の汚職が発生する
危険性のあることが懸念の材料だった。しかし、マハティール氏は、自身が内科医とし
ての経歴からもわかるように一つ一つ自らがわからないことを人に確かめ、外堀を埋め
ていった。
「内科医は、患者の状態を問診という形で把握した上で診断する。経済政策も同じで、
一つ一つ状況を把握して適切に対処していくことが肝要だ」とマハティール氏。ヤミ市
場ができないかどうかという懸念に対しては、中国でビジネスを行う華人を呼び、ヤミ
市場の実態を調査した。完璧とも言える事前調査の上で、固定相場制を採用する方向に
傾いていく。
2 . 資 本 取 引 規 制 策
銀行の流動性を確保し、融資拡大を銀行に求めていた政府の狙いとは裏腹に、経営健
全化のために金融機関は資産を圧縮、貸し渋りを行った。また、中央銀行が狙っていた
銀行の集約も行われず、当時商業銀行は36 行、総預金量は日本円に換算して10 兆円
弱にしかならなかった。98 年5月の不良債権比率は8.5%で、97 年末に比べて3割も
急増していた。このため、財務省は98 年6月末に不良債権買取機構(AMC)であるダ
ナハルタ・ナショナル(Danaharta Nasional Berhad)を設立。また、中央銀行が15
億リンギットを出資し、経営の悪化した銀行に資金を投入し、再編を促すためのダナモ
ダル・ナショナル(Danamodal Nasional Berhad)を98 年8月末に設立した。金融機
関の不良債権を減らし、新規資本を注入して自己資本比率の国際基準を維持し、金融危
難の再編をすることが狙いだった。
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ダナハルタの必要資金額は、不良債権の定義が3ヶ月の延滞となったため、150 億リ
ンギット、ダナモダルの必要資金額は資本注入による自己資本比率9%の目標達成から
160 億リンギットが必要だった。両方で310 億リンギットが必要だったわけで、98 年
のマレーシア政府の歳入が567 億リンギットだったことから、いかに困難だったかが
わかる。
政府は、海外での国債発行や国際金融機関からの借入れでこの資金をまかなう予定だ
ったが、米国の格付け機関が長期債務の格付けを引き下げ、98 年7月に予定していた
外債発行による資金調達(20 億ドル)が中止となった。そこで、政府は法定預金準備
率を6%から4%に引き下げ、103 億リンギットの資金で国内発行の債券を購入する。
つまり、ダナハルタ・ナショナルの資金調達では、金融機関の抱える不良債権が政府保
証のダナハルタ債に置き換わっただけのことで、バランスシート上で数字が動いただけ
だった。また、ダナモダル・ナショナルの資金調達のうち、債券発行による100 億リ
ンギットも、もともと銀行が法定準備預金として持っていた資金がダナモダル債の購入
資金となり、金融機関に資本注入されたに過ぎない。
外資の導入による金融機関の再編という方法もあったが、国内だけでの再生を至上命
題にしていたマハティール氏が取れる方策には、限りがあった。
バンク・ネガラは、98 年9 月1 日、「金融の独立性を再生するための方策」(Measures
to Regain Monetary Independence)と題する記者発表を行い、事実上の資本規制策を
発表する。海外からのマレーシア・リンギットへの投機を規制し、通貨を安定させて経
済回復を図ることが目的だった。順調な経済成長をしてきた国が、マネーゲームの餌食
となり、為替が乱高下して、経済が疲弊したと、アジア通貨危機の現状を総括。その上
で新しい外国為替規制を導入し、海外投資家によるリンギットの取引の規制を行い、流
動性を制限し、国内金融市場を海外から隔離する究極の政策をとるに至った。
バンク・ネガラが発表した外為規制の概要は以下のようなものだった。
@ 非居住者口座
・非居住者口座間の資金移動はいかなる金額でも事前認可が必要。
・マレーシア国内の居住者口座への資金移動は98 年9月末までは認めるが、以後は事
前認可が必要。
・非居住者口座の資金源泉は、リンギット建商品、マレーシア国内に登録された証券、
給与、報酬、手数料、利子及び配当などで、口座内の資金の使途は、マレーシア国内
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のリンギット資産購入に限定される。
A 一般支払い
・居住者による非居住者宛支払いは輸入品とサービスに対する支払いを除き、その目的
に関わらず1 万リンギットかその相当額外貨を限度として自由。
・1 万リンギットを超える場合は外貨による支払いのみ自由。
B 輸出取引
・輸出に関する取引は外貨で行う。
C 非居住者向け信用供与
・国内銀行による非居住者である銀行並びに証券会社向け信用供与は禁止。
D 海外投資
・国内借入れのない居住者は、海外投資を目的として1件あたり1万リンギットまたは
相当額の外貨までの非居住者向け支払いを行うことができる。
・1 万リンギット相当額超の外貨については、すべての居住者は海外投資を目的とした
非居住者向け支払いに関して事前認可を必要とする。
E 非居住者による外貨及びリンギットによる信用供与
・居住者は非居住者からリンギット建の信用供与を受けることができない。
F 証券
・リンギット建証券はAuthorized Depositories に預け入れなければならない。
・非居住者によるマレーシアで登録された証券の支払いは外貨または非居住者口座のリ
ンギットで行う。
・非居住者によるあらゆる国内証券の売却により得たリンギットは、非居住者口座に入
金しなければならない。ただし、リンギット建証券を1年以上保有した場合、売却代
金は外貨に交換するか非居住者口座に入金する。
・マレーシア国外で登録された証券に関して非居住者から居住者あてに支払われるもの
は外貨でなければならない。
G 外国通貨などのマレーシアへの持ち込みと持ち出し
・居住者である旅行者1000 リンギットを上限とするリンギット、外貨を持ち込むこと
ができる。
・居住者である旅行者は1000 リンギットを上限とするリンギット、10000 リンギット
相当額の外貨を持ち出すことができる。
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・非居住者である旅行者は1000 リンギットを上限とするリンギットと外貨を持ち込む
ことができる。
・非居住者である旅行者は1000 リンギットを上点とするリンギットとマレーシアに持
ち込んだ額に相当する金額を外貨を持ち出すことができる。
・上記で認められる以外のリンギットの持ち込みや持ち出し及び、外貨の持ち出しは事
前認可が必要。
Hラブアン(Labuan)国際オフショア金融センター
・公認オフショア銀行は、リンギット取引を行うことはできない。
3 . 金 融 緩 和 政 策
資本規制と間髪をいれずに中央銀行は9 月3 日、3 ヶ月間銀行間レートを9.5%から
8%に引き下げを発表した。固定相場制導入で金利低下によるリンギット相場下落の懸
念がなくなり、金融緩和政策をとることができる素地ができた。また、9月16 日には
預金準備率を6%から4%に引き下げた。
政府は、資本規制をして、外国投資家を国内市場から事実上締め出した。通貨が売り
込まれるという心配から他国では、緊縮財政と高金利政策をとらなくてはならず、高金
利政策をとればその負担からクレジット・クランチが加わって倒産する企業が増えると
いう悪循環に陥る。企業が倒産すれば、銀行の資産に対する不良債権の比率は高まる。
しかし、低金利政策をとれるようになれば、企業の再生を行う余地が出てくることにな
るわけだ。
しかし、資本規制策は一つ間違えれば、外国資本を逃がすことになりかねない。また、
短期間のうちに国内経済を回復させないといけない。このため、金融改革が至上命題と
なったわけである。
4 . 金 融 再 編
中央銀行のバンク・ネガラは、99 年7 月29 日に、商業銀行、ファイナンス・カンパ
ニー、マーチャント・バンクすべての金融機関を6つのグループに集約・統合する方針
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を発表した。政府主導で6つのグループが決定し、2 ヶ月以内のMOU(Memorandum
of Understanding)締結や2000 年3 月末までの再編が発表された。しかし、中核銀行
からはずされた商業銀行4行が反発。結局、中央銀行は、@金融機関は自主的に合併な
どの再編計画を立て、主要株主の原則同意を得て2000 年1月末までにその内容を中央
銀行に報告する、A再編計画は2000 年12 月末までに完了する、ことを決めた。そし
て、10 グループによる再編計画が2000 年2 月14 日に承認された。これにより、10
グループ、10 行の商業銀行、10 行のファイナンス・カンパニー、9行のマーチャント・
バンクに再編された。国際競争力を持つという観点から、中央銀行は、合併プログラム
完了後、株式資本20 億リンギット(約5 億2600 万米ドル)以上、資産規模250 億リ
ンギット(約65 億7900 米ドル)以上を有することを条件とした。
図表2−1 再編後の金融グループの資産規模(当初計画)
Malayan Banking 1418億5147 万リンギット
Bumiputra Commerce Bank 820 億4580 万リンギット
RHB Bank 570 億1222 万リンギット
Public Bank 509 億3789 万リンギット
Arab-Malaysian Bank 490 億528 万リンギット
Multi-Purpose Bank 382 億7937 万リンギット
Perwira Affin Bank 331 億3439 万リンギット
Hong Leong Bank 302 億2147 万リンギット
Southern Bank 250 億6826 万リンギット
EON Bank 235 億9035 万リンギット
5 . 固 定 相 場 制 の 行 方 と 資 本 規制による円の国際化への障害
マレーシア・リンギットの対ドル固定相場制に対する切り上げ観測は昨年末から市場
で何度もされ、大きな話題となった。その後の米ドル安の一服感に加え、中国の人民元
切り上げ観測の沈静化で、切り上げ観測は、小休止した格好となっている。現状、固定
相場制維持により、国際競争力が十分に発揮されており、早期の修正はないものと見ら
れる。
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しかし、デメリットとしては、消費者物価が2.4%(今年1月現在)と上昇している
ことや、外貨準備高が過去最高を記録していることなどが挙げられる。
アブドラ首相も、ゼティ中央銀行総裁も、他通貨との乖離が20%にならない限りは、
現状の水準を維持することを何度も言明している。今後、人民元の切り上げがいつ行わ
れるかが一つの判断基準になっていくことは間違いない。
固定相場制の導入でマレーシアに進出している日系企業、とりわけ輸出関連企業は、
対ドルでリンギットが固定されているため、為替リスクがないので安定したオペレーシ
ョンができる、と答える企業がほとんどだ。輸出関連企業の場合、日本から部材を輸入
してマレーシアで製品をつくり、日本に輸出する企業より、東南アジアや対米、対ヨー
ロッパ向けに輸出している企業のほうが多い。このため、決済通貨として、米ドルを使
用することが多く、逆に固定相場制の維持が収益性安定化する一助になっているという。
しかし、マレーシア進出の日系企業の中には設備投資の際に円で投資した企業が多く、
「円をマレーシア国内取引で使えるようになれば使いたい」という意見をもっている企
業も少なくない。
今後、マレーシア中央銀行とは、資本取引規制されている外貨としての円での取引を
マレーシア国内でも取引できるような特別措置を働きかけていくことで円の使用頻度
を上げることが可能となる。
http://jams92.org/pdf/NL38/38(02)_onozawa.pdf
JAMS News No.38 (2007.7)
2
〔巻頭言〕
アジア通貨危機から10 年:
マレーシア政府の現実主義
小野沢 純
1997 年のアジア通貨・経済危機から10 年、当時のマレーシア政府の現実主義
的対応のダイナミズムがあらためて想起される。
通貨危機に襲われたマレーシア経済は、これまでの高度成長が内包するバブル
的要素によってさらに増幅され、文字通り経済危機の局面を迎えた。経済危機を
克服するために、マレーシアは他のアジア諸国と同様に当初は通貨防衛と経常収
支の赤字削減をねらいとした財政・金融の緊縮政策を導入した。マレーシアはI
MF支援に依存しなかったが、初期の対策は、“IMFなきIMF政策”といわれる
ほど緊縮政策をほぼ踏襲した。しかし、その結果、実体経済が逆にますます悪化
したという現実を見据えて、マハティール政権は緊縮政策に見切りをつけて、国
内景気対策を優先する景気刺激策と金融緩和に方向転換した。
98 年9月1日、マレーシア政府は、@為替の固定相場制への移行、A資本取引
の規制を断行して、世界を驚かせた。これはIMF型処方箋と異なるばかりか、
新古典派経済の定説に堂々と挑戦するもの。これには、国内経済を撹乱する短期
資本の投機的な流出入をひとまず遮断した上で、効果のある金融緩和策を自主的
に発動し得るというマハティール首相の現実主義が背景にあった(99 年に資本規
制を撤廃、US$1=RM3.8 の固定相場は2005 年7 月まで継続)。
通貨危機への対応策について当初IMF などから“異端児”扱いをされていたマレ
ーシアが、アジア諸国の中で最初に急速なV 字回復に成功したことにより、マレ
ーシアの処方箋の有効性をIMF も認めざるをえなくなったのである。(なお、マ
ハティール首相がIMFに頼らなかったのは、IMF処方箋によってブミプトラ
政策・2020 年ビジョンを支えるマレーシア固有の開発政策の基本が捻じ曲げられ
ることを最も懸念していたからでもある。マハティール首相とIMF型回復策を
主張したアンワール副首相との路線対立が権力抗争として浮上したことも否定で
きない。新政策の発表と同時にアンワール氏は失脚)。
一般に、固定為替レートと資本の自由な移動、自主的な金融政策の三つは同時
に成立しない、というのが定説になっている。マレーシアの経済再建策はこれに
従っていない。これは、貿易の自由化、規制緩和、自由な資本移動の推進をかか
げるIMF・世銀・アメリカ政府のいわゆる「ワシントン・コンセンサス」、新古
JAMS News No.38 (2007.7)
3
典派経済の考えである。IMF処方箋もここから出ている。ところが、ケインズ
経済学は、こうした処方箋の有効性に疑問を持ち、次のように考える;
「調整可能な固定的な為替レートの採用、つまり固定為替レートは状況に応じて
変更することが可能である。ある程度の期間は固定的であり、それが適応できな
くなった時は動かしてよい」「ある程度の資本取引の制限は行ったほうがいい」(伊
東光晴『「経済政策」はこれでよいのか―現代経済と金融危機』岩波書店1999 年)。
通貨危機に立ち向かったマハティール首相やそのブレーンがケインズ経済の考
えを意識したのかどうかは分からない。ただ、巨額の短期資本の流出入に何らか
の規制をせずに自らを守ることがむずかしいマレーシアのような金融規模の小さ
い国では、こうした自主的な政策選択に整合性があるといえる。
インドネシアやタイ政府のエコノミストたちはアメリカ留学組が多く、市場主
義(新古典派経済学)を受け入れるのに対して、マレーシア政府の中には、市場
経済万能主義に疑義を呈するエコノミストが少なくないことにも留意したい。新
古典派経済学では、「人間はどうにもならない存在である、良いことを言っても、
悪いことをする。だから、市場に委ねる方がよい」(ハイエク)という考えが底流
にある。自由(市場)や規制緩和が目的になる。これに対して、経済とは「自由」
と「効率」、「公正」を追求することだが、目的ではない、という考え方がケイン
ズ経済学にある。自由はあくまでも「手段」。したがって、手段であるから制限し
てもかまわない。「公正」や「効率」のためには、「自由」を制限してもよろしい。
また、「公正」のために「自由」を制限してもいいし、「公正」のために「効率」
を制限することもありうる。状況に応じて次善の策を提示すればよいことになる。
新経済政策を一部棚上げしてまで導入した投資奨励策(1986 年)、「バンサ・マ
レーシア」概念(1991 年)、私立大学の解禁(1996 年)、民族別大学入学枠の撤
廃(2003 年)など、マハティール時代の開発主義にみられた一連の現実主義的ア
プローチを、このよう文脈から読むと、アジア通貨危機に対する政府の対応もあ
る意味で必然的な成り行きといえる。だが、最近のアブドラ政権下では、アジア
通貨危機によって経営破綻に陥ったUMNO 系ブミプトラ企業群の再国有化政策
によって台頭してきたGLC(政府系企業)を掌握する「プロムダ」と呼ばれる有
能な若手ブミプトラ経営陣に対してマレー人社会から非難・嫉妬の声が聞かれる
ようになり、またブミプトラ資本30%保有比率の達成など殊更“マレー・アジェン
ダ”をかかげてマレー人の支持を得ようとするUMNO 青年部には古典的なコミュ
ナリズムへ復帰する政治手法が顕著化している。多民族社会の柔軟で現実主義的
アプローチはどうなるのだろうか。


04. 2013年1月16日 04:51:21 : 7oSKGju5kA
マハティールさんに首相になって貰えんかなー

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