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置き去りにされる、“40代非正規“の貧困と孤立“
http://www.asyura2.com/12/social9/msg/494.html
投稿者 てんさい(い) 日時 2014 年 5 月 23 日 21:36:38: KqrEdYmDwf7cM
 

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kawaikaoru/20140522-00035507/

河合薫 | 健康社会学者
2014年5月22日 15時21分

著者:PhoTones_TAKUMA

「助けて」と言えずに孤独死する、“就職氷河期世代”の存在が、以前、問題視されたことがある。

そんな彼らも、40代。

正社員化や、賃金アップなど、“非正規社員に光”があたり始めたような報道が、最近、増えつつあるが、ミドルの非正規社員を取り巻く環境の厳しさは、あまり知られていない。

先日、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「壮年非正規労働者の仕事と生活に関する研究」の結果が、公表された。

「若年非正規労働者(25〜34歳)の相対的貧困率が、23.3%と5人に1人であるのに対し、壮年男性(35歳〜44歳)では3人に1人(31.5%)。つまり、40代に突入した“氷河期世代”は、若い人たちより貧困率が高い」

こんな厳しすぎる状況が明らかになったのである。

なぜ、壮年男性のほうが、若手よりも貧困なのか?

その理由は、「誰が家計を支えているのか?」にある。

若年層の7割が、「親」が家計維持者であるのに対し、壮年層では58.2%が「自分」。親のすねをかじれる若手と、一家の主として支えなければならない40歳前後とでは、生活に苦しさが異なる。

また、壮年非正規の身体的な不健康の割合は、若年層より高く、壮年非正規の15.9%は、「過去にお金がなくて病院にいくのを我慢したことがある」と答えているのである。

以前、フィールインタビューに協力してくれた、非正規で働く40代の男性が、次のようにこぼしたことがあった。

「今はまだ、母の面倒を見なきゃならないんで、なんとかなってますけど。自分1人になったら……ヤバいなぁって思うんです。生きてる意味あるのかなぁ?って」

氷河期世代のこの男性は、二度のリストラを経験し、現在は、製造業関連会社の非正規社員だ。

最初の会社は、業務縮小で、大幅なリストラを慣行。彼の所属部署は消滅し、必然的に彼はターゲットになった。

二つ目の会社は、外資系に買収された。日本社員の約半数がリストラされ、彼もその一人だった。

「やっぱり正社員になりたいですよ。でも、『あきらめるしかない』かなって。うん、あきらめるしかないなと思っています。40過ぎを正社員で雇ってくれる会社は、ありません。連敗が続くと、まるで底なし沼にいるようで。あがけばあがくほど、沈んでいく。そういう自分しかイメージできなくなってくるんです」

「世の中、なんやかんやいっても仕事。40過ぎて、母親と2人暮らしで非正規だと、世間はまともな職につけない、どうしようもない『パラサイト中年』だっていう目で見ます。『しっかりしなさいよ』とか、『お母さんも心配してるぞ』とか周りから言われると、相当キツイ」

「すると、だんだんと人と関わりたくなくなるんです。同級生にも会いたくないし、昔の会社の同僚とも連絡はとらない。人と会えば会うだけ、他人が妬ましくなる。だから会わない。今は、母の面倒を見なければならないんで、なんとかなってますけど、1人になったらヤバいです。さびしいとか、そういうんじゃなくて。孤独感というより、疎外感に近いかな。すみません。暗い話で。ネガティブ過ぎて自分が怖いです」

彼は苦笑いしながら、そう話した。そして、「でも、なんか自分の話、聞いてもらったら、少し楽になりました。ありがとうございました」と、頭を深く下げたのである。

経験した人でしかわらかない重い言葉の数々に、私は、どう返していいのかわからなかった。情けない話だ。ただ、そのあと、彼が、

「河合さんは、毎日が楽しいですか?」と聞いてきたので、「そんなことはないです。特に、最近は自信喪失してて………」とモヤモヤしている出来事を話した。そしたら、「そっか……。河合さんも戦ってるんですね。応援してますよ」と言ってくれた。

とんでもなくしんどいはずなのに、「応援してます」だなんて。うれしい気持ちと申し訳ない気持ちが入り乱れ、インタビューを終えたのである。

いったんつまずくと、どんなに頑張ったところで、力を発揮する機会が激減し、負のスパイラルに入り込む。そんな厳しい状況に、彼は生きてる力までをも、失いかけていたのである。

40を過ぎると、両親や家族の問題も加わり、じっくりと就職活動する時間的余裕も、スキルや資格取得に費やす時間も金銭的余裕も制限される。

厳しい。とんでもなく厳しい。だからこそ、彼は、

「もう、あきらめるしかない」――。そんな気持ちになってしまうのだろう。

件の労働政策研究の調査結果によれば、同じ壮年層でも、正社員の場合の収入は、500〜700万が最も多い(26.15%)。一方、非正規では、100〜150万が20.7%で、その格差は年齢とともに広がっていく。

また、担当職務に、「部下やスタッフの管理」「会社の事業などの企画」「意思決定・判断」「専門知識・スキル」「部下や後輩の指導」が含まれるかどうかを尋ねたところ、若年より壮年層のほうが、すべての項目で「まったく含まれない」と回答する人が多かった。

さらに、「悩みを相談したり、助けを求めたりできる人」の人数を、「家族・親族」「地域・近隣の人」「仕事関係の人」「学校時代の友人」「趣味・社会活動などを通じた知り合い」「その他の人」に分けて尋ねた結果……、若年層よりも、壮年非層の方が少なく、孤立している状況が示されたのである。

生活が苦しくて、身体的にも精神的にもしんどくて、孤独な彼らの生活を、いったいいかほどの人たちがイメージできただろうか?

正直に言うと、私には彼らの“日常”を、具体的にイメージできなかった。頭では理解できる。が、彼らがどんな気持ちで、日々を送っているのか? そのリアリティを持てなかったのだ。

ただ、前述した男性が、「河合さんは、毎日が楽しいですか?」と聞いてきたのを思い出すと、おそらく彼らの日常には、一つも楽しみがないのかもしれないと思ったりもする。いや、実際は、あるのかもしれない。でも、それを楽しいとか、うれしいとか、感じ取るセンサーが機能しない。

ホントは、彼だって学生時代の友人や同僚たちと会いたいのかもしれない。でも、世間の無責任な言葉を浴びて、自尊心が傷つくのが怖い。

俺の努力が足りないのか?

俺は能力が低いのか?

そんな風に思いたくないから、人付き合いを避け、自分の世界に籠る。孤立することでしか、自分を守れなくなる。

しかしながら、“人間付き合いのシャッター”を下ろすと、ポジティブな感情を抱く瞬間は、果てしなく激減する。その結果、ますますネガティブ思考が高まり、孤立し、人嫌いになり、生きる力が失せていくのである。

一旦失職すると、まるで“前科人”のように、厳しいまなざしが向けられ、這い上がるチャンスが奪われていく。それが、今の日本社会の実態なのだ。実に、悲しい現実だが、おそらく厳しいまなざしをむけていることにすら、気が付いていない人たちのほうが多いんじゃないかと、思ったりもする。

ただ、件のこの調査では、少しだけ“光”を感じる、興味深い結果が認められている。

仕事上の悩みがある時や、経済的に困っている時に、仕事関係の人と相談したり助けを求めたりできる非正規労働者の年収は高く、賃金が増加する傾向が認められたのだ。

かつては、単なる調整弁として扱っていた企業が多かったのだが、最近は、専門知識や特殊なスキルが求められる業務を、非正規社員に任せる企業も増えた。それらが一般化出来ないスキルであればあるほど、職場に精通した人材からのサポートが不可欠となる。

そんなとき、相談や助けに丁寧に応じるサポート体制のある職場では、それがスキルの習得につながるだけでなく、仕事を超えた人と人との関係構築にも役立つ。

この必然的に生まれた“人間関係”があれば、経済的に困っている時にも相談できたり、助けを求めたりすることができ、ほんの少しだけホッとできる。すると、非正規労働者の生産性向上につながり、“人との関わり”がある職場を作れば、非正規社員でも、賃金の増加につながっている可能性が示されたのである。

2008年に、経済学者の玄田有史先生が行った調査でも、上司を除く正社員、リーダー(非正社員)、非正社員(リーダーを除く)などの相談者がいると年収や賃金増加し、正社員と、業務終了後の宴会・懇親会・食事等や職場のレクリエーションなど、仕事を越えた関係があることも、年収や賃金を増加させる効果のあることを見出している。

つまり、正社員化が難しくとも、上司部下関係、同僚との関係、正社員との関係など、ありとあらゆる人間関係の壁のない、「シャッターが全開」の職場があれば、ミドルの非正規社員の人たちに、ポジティブスパイラルに引き込むチャンスができる。

人が前向きに生きていくのに、信頼できる他人の力は欠かせない。ストレスの雨が降っても、信頼できる人がたった1人いれば、どうにかなる。私がこれまで行った調査でもそうだった。たった1人、何か困った時に、傘を貸してくれる人がいれば、なんとか雨をしのぎ、前向きのエネルギーを充電できる。

どんな大企業に勤める正社員であっても、40を過ぎると、一歩前に踏み出す勇気を持てなくなるもの。

「ホントにがんばっているのか?」とか、「もっとできることからやってみなよ!」と彼等を責める前に、

「自分1人になったら……やばいなぁって思うんです」――。

そう語る男性のような人がいるということも、どうか忘れないでいてほしいです。
河合薫

健康社会学者

健康社会学者(Ph.D.,保健学)。 千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。 気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。 2004年東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了(Ph.D)。 産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究。 フィールドワークとして行っている働く人々へのインタビュー数は600人に迫る。 医療・健康に関する様々な学会に所属し、東京大学や早稲田大学で教鞭を取る。  

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コメント
 
01. 2014年6月05日 01:44:36 : TGgfYEbPRU
体験しないと判らないことって多いよね・・・。
想像したより実態はものすごく悪いって場合の方が多い・・・。
求人倍率なんかも年齢別に見たらとんでもない結果になるんだろね・・・。

02. 2014年7月04日 20:27:34 : nJF6kGWndY

これは参考になる

http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/future/%E5%AD%A4%E7%AB%8B%E7%84%A1%E6%A5%AD_%E7%89%B9%E5%88%A5%E9%9B%86%E8%A8%88.pdf
孤立無業者(SNEP)の現状と課題 - 東京大学社会科学研究所
web.iss.u-tokyo.ac.jp/future/孤立無業_特別集計.pdf
孤立無業者(SNEP)の現状と課題. 玄田 有史. (東京大学社会科学研究所). 2013 年 1 月. 文部科学省・日本学術振興会委託事業. 「近未来の課題解決を目指した実証的社会科学研究推進事業」 ...
 


03. 2014年8月05日 11:15:50 : nJF6kGWndY

その一方で、中高年も悩んでいる

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20140801/269533/?ST=print
「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」
「私にも言い分がある!」 “お荷物オヤジ社員“の遠吠え

“使えないミドル”を増殖させる「ステレオタイプ脅威」

2014年8月5日(火)  河合 薫

 「よっし! 新天地で、心機一転、がんばろう!」

 不本意な異動であっても、“それはそれ”と受け止め、前向きに捉える。

「どうせ、片道切符だから」
「どうせ、ラインはずされちゃったから」

 とグレるのではなく、もうひと踏ん張りがんばろうと、自らを奮い立たせ、いざ出陣!

 ところが………。その新天地にいる人たちが、全員、まったくやる気のない人だらけ―――。

 「最初は、どうにかしようって、あれこれ試してみたんですが、ダメですね。そんなわけで、私…、心療内科に通ってます」

 こう切り出したのは、某大手企業に勤めていた50代の男性である。
 彼は昨年、系列会社に出向になった。役職定年して、1年後の出来事だった。

 え? 心療内科に、“ダレ”が通っているって?
 はい。「がんばろう!」とやる気満々だった、ご本人、です。

 「自分が心療内科にお世話になるなんて、想像したこともなかった」と、肩を落とす彼を疲弊させた、ストレス豪雨の正体は?

 とまぁ、ずいぶんともったいぶった書き出しになってしまったのだが、この男性のケースはいろんな意味で考えさせられたし、私自身も反省させられたので、今回は、彼とのやり取りを紹介しようと思う。

出向は「リセットできるチャンス」と思ったけれど…

 テーマは――。とにかく、お聞きください。

 「辞令が出た時には、やはりショックでした。ただ、役職定年になってからというもの、私には明確な仕事がなかった。そんなときに人事から呼ばれ、“営業を強化したいので、これまでの経験を生かしてください” と、関連会社に異動になりました」

 「おそらく実際には、“もう、うちの会社にはアナタの居場所はありません”ということを伝えるための人事だったんだとは思います。だから、正直、遂に来たか、って思いました」

 「ショックだったのは、居場所がないことが、限りなくグレーに近い黒から真っ黒になったことですか? それとも誰もが知ってる一流企業から、無名の関連会社に行かされたことですか?」(河合)

 「両方です。一流ではありませんけど、少なくとも誰もが知ってる会社の社員ではなくなった時、世間は今と同じように自分を見てくれるかって不安はありました。多分、サラリーマンなら誰でも、そういう不安ってあるんじゃないでしょうか。でも、こういう時が来るというのは、役職定年になったときに覚悟していたので、むしろ、前向きに思えたことのほうが大きかった」

 「なんだかんだいっても、ラインを外れた50代に仕事はありません。ただ、1つだけ言わせてもらいたいのは、世間は働いてもないのに高い給料もらってるって非難しますけど、当事者たちにも葛藤はある。多くの50代は、まだ子どもの学費が必要だったり、娘がいれば結婚式もある。それぞれいろんな事情があるんです。私も、転職を考えたこともありました。でも、現実はそんなに単純ではない。その葛藤を抱えながら、“お荷物”と揶揄される役職定年を受け入れるんです」

 「つまり、出向は、リセットできるチャンスだと思えたんですね?」(河合)

 「はい。自分が長年やってきた仕事への自負もあるので、“よっし、やってやろう!”って思った。入社以来、ずっと営業畑でしたから、その経験を新天地で最大限に生かそうって思いました。ところが異動してみると、現実はそんなに甘くなくて。営業強化って言われていたのに、実際は事業を縮小させるのが自分の役目。負債部門をなくして、人員も減らす。1つも前向きな仕事がない。要するに、会社を閉じるために私は行かされたんです」

 「それでも前向きに、できることをやろうと動きました。でも、その関連会社の社員は役職定年になった人や、グループ会社から追いやられた人もいて、ほぼ全員やる気がない。50過ぎた人たちは、そう簡単には変わりません。誰1人、やる気を出さない。働かない。動かない」

 「で、ふと思った。あれ? ひょっとすると、私も、彼らと同じような、働かないお荷物オヤジなのか? って。上手く言えないんですけど、世間は自分をそう見ているんじゃないかと。自分ではアレコレやってるつもりでも、客観的にみると、私は何もしていないんじゃないかって。世間からどう見られているかなんて気にする必要もないと思う一方で、モヤモヤする。私がここにいること自体が、お荷物なのか?って。で、気が付いたら、心療内科のドアを叩いていたんです。サラリーマン人生の最終章で、お医者さんのお世話になるなんて、想像したこともありませんでした」

 以上が男性とのやりとりである。

「使えない」と言い続けると、ホントに使えなくなる

 お荷物ミドル、お荷物エルダー、働かないおじさん、使えないバブル世代……。

 「追い出し部屋」という言葉が、世間に知られるようになってからだろうか。組織のイス取りゲームから外れた40代以上の人たちに対して、ネガティブなネーミングがされるようになった。

 「高い給料だけもらって、何もやらない給料泥棒!」
 「組織にしがみついて、逃げ切ろうとして。いい加減にしてほしい」
 「あの人たちがいるおかげで、若い世代がしんどい思いをするんだよ。どうにかしてくれよ」

 世間は、彼らに冷たい視線を投げかけ、「しわ寄せを受ける若者が可哀そう」と批判する。

 実際、高い給料だけもらって働かない人がいるから、キャッチーなネーミングが生まれたのだとは思う。

 だが、当たり前の話ではあるが、“お荷物”と揶揄されるオジサンの中には、「もう一仕事、がんばろう!」とモチベーションを高めている人はいるし、ラインを外れようとも、役職を取り上げられようとも、頑張っている人たちはいる。ところが、カテゴライズ化されたキャッチーなネーミングの存在が、彼らの“気持ち”を揺るがせる。

 「自分も働かない、お荷物オヤジと思われているんじゃないか」と。

 直接ダレかに言われたわけでもなければ、陰口をたたかれたわけでもない。なのに、自分が批判されているような、自分もその1人に入っているような気分になり、気が滅入るのだ。

 そう。前述の男性を苦しめたストレス豪雨の正体とは、“お荷物オジサン社員”という、レッテル張りだった。

 彼は、「ステレオタイプ脅威(Stereotype Threat)」の雨に、びしょ濡れになっていたのである。

 ステレオタイプ脅威は、「自分と関連した集団や属性が、世間からネガティブなステレオタイプを持たれているときに、個人が直面するプレッシャー」と定義され、その脅威にさらされた人は、不安を感じ、やる気が失せ、パフォーマンスが低下する。

 大抵の場合、この心の動きは、無意識に起きる。

 例えば、「女性は数学が不得意」というステレオタイプが存在した場合、その“世間のまなざし”を意識した女性は、本当に数字が不得意になる。「老人は物忘れがひどい」というステレオタイプは、本当に老人の記憶力を低下させる。

 「ウチの部下は使えない」と上司が、あっちこっちで言い続けていると、ホントに部下が「使えなく」なってしまうように、だ。

 つまり、「自分ではアレコレやってるつもりなんですけど、客観的にみると、私は何もしていないんじゃないか」と、彼は心配していたが、その不安がパフォーマンスを低下させ、本当に“お荷物オジサン社員”と化す、ステレオタイプの負のスパイラルに彼は引き込まれつつあったのである。

ステレオタイプ、恐るべし!

 「でも、それって、周りの視線とか気にする人の場合だけでは?」

 答えは、ノー。

 その当人が、「女性は数学が不得意なんてあり得ない。男性とか、女性とか性別によるもんじゃない」とステレオタイプに否定的であろうとも、世間から「女の人って、数学苦手だよね〜」と言われ続けると、まるで魔法にかかったように、「数学が苦手」になるケースが度々観察されているのである。

 しかも、彼のようにステレオタイプどおりの行動をとる、「働かない、やる気のないおじさん」に囲まれると、ストレスタイプ脅威は威力を増す。行動が伝染するのだ。ストレスタイプ脅威は威力を増し、その集団が孤立した状況に置かれているほど、“伝染力”は強まるとされている。

 もちろん、侮蔑的なステレオタイプだけが、パフォーマンス低下の原因ではない。が、世間のまなざし=ステレオタイプは、個人の行動をも左右する、実に厄介な代物。

 たかがステレオタイプ、されどステレオタイプ。ステレオタイプ、恐るべし! なのだ。

 そもそもいったい、いつから、特定の年齢や性別などの属性に対し、“笑えない” キャッチーなネーミングが横行するようになったのだろう?

 オヤジギャル、オバタリアンは笑えたし、プー太郎なんていうのも、なんとなく愛嬌があった。「はい、ここから!」と線引きできるものではないけれど、個人的には “負け犬“のあたりから、ちょっと変わってきたような気がしている。

 30歳以上、未婚、子なし女性を“負け犬”とレッテル張りしたエッセイストの酒井順子さんは、逆説的にエールを送ったものだったが、侮蔑的と批判した人たちも少なくなかった。

 「はい! 私は『30歳以上、未婚、子なし』の大負け犬です! ワオ〜〜〜ン」、
と、大笑いしている女性(私もそのひとり)がいた一方で、
「どうせ私は30過ぎても結婚もできない、負け犬よ!」
と、傷ついている“負け犬”もいた。

 30歳以上、未婚、子なし=負け犬、とカテゴリー化したことが、刃になったのである。

“おひとり様”だけは受け入れられなかった

 そんな負け犬には笑えた私も、“おひとり様”からアウトとなった。

 例えば、日曜日。1人でブラブラ買い物をしていると、

 「うわぁ、あの人、“おひとり様”なのね。日曜日なのに、1人で可哀そう〜」

 なんて思われるかも、なんて気持ちになる。

 1人でブラブラしてるんだから、正真正銘の“おひとり様”だし、「で、何か?」って思いとは裏腹に、「あ〜、なんかイヤだなぁ〜」とモヤがかかる。

 好き勝手に人生を生き、やりたい放題にやっているにもかかわらず、“おひとり様”という言葉が醸し出す空気感が、好きになれなかった。

 恋もしてれば(ということにしておきます 笑)、連れて歩く男の1人や2人いるし(ということに、これもしておきます)、友だちは、確かに超少なくて、3人? いや2人? くらいしかいないけど……。それ以上に、「買い物は1人に限る!」って思っているにもかかわらず、“おひとり様”というカテゴリーに入れられてしまうことに、ものすごい抵抗感を抱いてしまうのである。

 どんなに「私は、世間なんか関係ありません! どんな風に思われても、全く気にしません!」と豪語していても、ふとした瞬間に、レッテル張りが心の隙間に突き刺さる。

オジサンたちはお荷物ではない

 実際には、自分が気にするほど周りは、「自分のことなど」見ていないし、気にもしていないはずだ。

 でも、100%完全に、世間のまなざしをシャットアウトするのは無理。なので、ネガティブなステレオタイプを生むようなネーミングは十分気を付けなくてはならない。うん、気を付けよう。彼の話を聞き、自戒も込めてつくづく思った次第だ。

 だいたいオジサンたちは、ホントにお荷物なのだろうか?

 50代以上の半分が管理職になれないこのご時世で、お荷物だの、使えないだの、しがみ付いているだの批判するけど、ホントにお荷物になっているのか?

 労働政策研究・研修機構が、昨年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法を受け、企業の対応状況(高年齢者雇用確保措置の整備状況等)や人事労務管理制度等への影響について調査した結果、雇用延長をポジティブに受け止めている企業も結構あった。

 「総額人件費が増える」といった否定的な意見と同程度の割合で、「ベテラン社員の残留で現場力が高まる」などの好意的な意見が、上位を占めたのである。

 さらに、インタビュー調査では、
「人手不足の状況の中で、経験もあり技能も高いベテラン社員を確保できるので、再雇用社員が増えることは、むしろプラス面の方が大きい」
「わが社では、再雇用社員の賃金水準を引き上げた。その代わり、年齢にかかわらず現役同様に働いて欲しいというのが会社の考えであり、勤務形態はフルタイムしか認めない。また、役職を継続するケースもある。賃上げによって、再雇用社員だけでみれば人件費増となったが、同社は若年社員が多く、会社全体でみれば賃金の内転が起きたような状況であり、大きな影響ではないとしている」
と、会社側が「もっと働いててください!」とメッセージを送っているケースも存在した。

 いずれにしても、「使えない」とか、「お荷物」とか、「働かない」というシンプルでキャッチーな言葉では表現できないほど、現実は複雑で、ゴチャゴチャに入り組んでいる。

 「しわ寄せを受ける」とされる若い世代だって、「定年まで働きたい」と望む人が多いわけで。男性の平均寿命が80歳を超えたこのご時世では、「ラインは外れたし、役職もなくなったけど、65歳の最後の日まで元気に務めあげよう!」と、誰もが、笑顔でいれるような社会を模索したほうがいい。同じステレオタイプでも、ポジティブなモノは、パフォーマンスを向上させるとの研究もある。

 さて、どんなネーミングが広がれば、今回の男性のようなやる気ある社員が悲鳴をあげなくなるのだろう。私も……、考えてみます。うん、考えよう。

 だって、会社でどんな立場の人であれ、家に変えれば尊敬される父親であり、大切な夫なのだから。

このコラムについて
河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。


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