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Re: てすと
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投稿者 初心に帰るお天道様に恥じない生き方 日時 2013 年 11 月 18 日 05:40:18: 4hA5hGpynEyZM
 

(回答先: Re: てすと 投稿者 初心に帰るお天道様に恥じない生き方 日時 2013 年 11 月 18 日 05:30:03)


藤原 本澤

   強権政治の病理とメディアの堕落  藤原肇氏の「宇宙巡礼」から 『月刊ザ・フナイ2013年10月号
         ―― 暴走する狂乱政治に盲従する”マスごみ”

藤原肇(ガイアドクター、構造地質学専攻、慧智研究所所長)
本澤 二郎 (政治評論家、[東京タイムス]元政治部長)

***堕落と腐敗を露呈する日本のメディア

藤原 今の日本のマスコミの堕落と腐敗は酷ひどいものですが、現役としてその世界に生きる本澤さんにとって、私の指摘は耳の痛い話かもしれません。
しかし現状を無批判に放置することは、「黙認は共犯」のフレーズを持ち出すまでもなく、次世代への犯罪行為になりますから、ここは声を大にして言わざるを得ません。

本澤 権力者が恐れ、警戒してきた藤原さんの鋭い指摘は、「江戸っ子」の持ち味であると同時にガイアドクターとしての診断でもあるわけですから、ワサビは効きすぎるくらいでちょうどいいと思います。
それに私自身も業界の堕落にはじっとしていられませんし、最近の反動路線の驀ばく進しんで日本の運命を狂わせかねない安倍政権にも強い危惧を感じていますので、徹底的で断固とした直言を期待します。国民の憤りも爆発点に近づいていることですしね。

藤原  現状の総括は、次の世代ひいては歴史に対する責務だし、それはきちんとやっておかなければならない。
日本の現状は真珠湾奇襲の直後にも似た国を挙げての興奮状態にあり、それが如何に異常か分からないまま異常が常態化しているといってもいいでしょう。
奇襲翌日の大手各紙は太字で「待望の日が到来した」とか、「今や枢軸国の日本は一億総勇士だ」という見出しを一面に仰々しく並べたものです。
それを著書に書いたので覚えていますが、誰もそれが亡国の始まりとは考えず、戦勝気分に陶酔していたわけです。

本澤  野党不在のまま自民党が選挙を制圧し、戦勝気分に包まれて陶酔しているという現状と同じですね。マスコミが実施した洗脳工作と不正選挙で野党が総崩れになって自民党が勝ったにすぎないのに、60 年前と同じ亡国に向けた大行進が始まっていると言ってもいいでしょう。
人気取りのための幻覚用プロパガンダに過ぎないアベノミクスに国民が誑たぶらかされているのだから、真珠湾の熱狂の再来そのものです。
国家主義しか頭にない安倍の戯言は、工業力の比較で30 倍の米国に戦争を仕掛けた当時の狂気と同じで、日本の財政破綻を救えるはずがない。

藤原  本澤さんは理性的でまともな判断力をお持ちだから、世界に通用する発言が出来る。
しかし今の日本のマスコミ界には、批判精神や歴史的な使命感という面で評価できるものはまったくない。
ロッキード事件があった1976年頃までは日本にも真の意味での言論界が存在していたけれど、中曽根内閣の売国政治によってそれがほぼ死滅し、マスコミの腐敗と堕落が本格化したのです。

本澤  それがいわゆる「マスごみ」化であり、その進行とともに日本の民主主義の空洞化が始まった。
バブル景気に陶酔した日本人が金儲け主義に毒されてしまい、売国政治が日本列島上に蔓延したのです。あの頃から既に30 年も経っているわけですが、日本はそのまま停滞し続けています。

藤原  私がマスコミと縁を切ってテレビや週刊誌に出ないようにしてから30 年になりますが、それでも1990年の湾岸戦争の時は、石油がらみの戦いでもあったので、プロの立場から『文藝春秋』に二回ほど記事を書きました。
ところがメディアの質の悪さに辟易させられ、執筆はそれを最後にして止めました。
あの頃は電通による支配が著しく、経済界の広告費や政府の機密費の影響もあって、まともな発言をする人がパージの憂き目に遭い、逆に御用評論家や売文学者の時代が本格化したわけです。

本澤 そういえば中曽根時代は転換期で、マスコミはロンヤス関係と囃はやし立て、日本の政治は中曽根が狙った国家主義路線に沿うように巧妙に操られましたね。首相による靖国神社参拝の問題も、中曽根政権の時に始まっていますしね。

***中曽根が狙ったファシスト革命の挫折

藤原  その通りです。若い頃フランスへ留学した時にファシズムとナチズムの勉強をしたお蔭で、私は政治宣伝の恐ろしさや国家主義の弊害の大きさはよく分かります。
だから1980年に出した『虚妄からの脱出』では、中曽根が権力に就いて国家主義革命を起こすのを懸念する立場から警鐘を鳴らし、『平成幕末のダイアグノシス』では、ホモ政治(※ 1)の病理分析をしたりしました。

本澤 松下政経塾政権はホモ政治だったともいわれますが、中曽根時代に源流があったのですね。
今にして思えば恥ずかしい限りですが、中曽根が政権を担当するまで、私はその応援記事を書いていました。
天皇制国家主義への回帰を狙って中曽根は国家主義を打ち出していましたが、当時は言論界が健在だったので、彼にはまだ正面突破をする勇気がなかった。

藤原  彼はナルシストで自己愛が強く、野望を実現するために命を賭けるほど軽率ではない打算主義者だった。
だから、マキャベリアンのように駆け引きと二枚舌で権謀術数を使いまくって長期政権を維持しただけでなく、最後にはダブル選挙という奇手まで使った。

本澤  「風見鶏」と形容された中曽根は政界の寝業師として敬遠され、その結果、一匹狼的にならざるを得なかったけれども、最後には田中角栄まで裏切った。
角栄をスケープゴートにしてうまい具合に首相に指名された彼は、ロッキード事件の陰の主役だった。
田中曽根内閣と揶揄されたのはそのためです。私が中曽根番記者だった頃の彼は、殖産住宅事件や明電工事件を起こすなど、カネの問題では悪名が高かった。
でも核武装用の原発推進については、その危険性について知らなかったので、彼に同情して知恵をつけたりもしたんです。といっても当時の中曽根には、右翼の児玉誉士夫やナベツネが背後にいても、国家主義革命を起こすだけの力は備わっていなかったですね。

藤原  30 年ほど前の中曽根時代でファシスト革命が実現しなかったのは、一つの奇跡というか、仏の加護があったんです。
中曽根がレーガンを相手に東京サミットを演出し、それを選挙宣伝に使って人気取りを狙ったんだけれども、独裁の実現を目指した総選挙では過半数を取れずに躓つまずいた。
その結果、彼の野望は崩れたのです。

※1  ホモ政治:欧米の枢軸につらなるエリートの中には、「秘密を守る」「生涯変わらぬ絆を確かなものにする」などの理由で、男色を用いてお互いの信頼関係を強化する伝統があるといわれる。

本澤 そんなことがありましたか。おそらく秘話に属する話だと思いますが、どんな内容だったのか興味がありますね。

藤原  韓国での国際会議に招かれた私は、ソウルからサミットを観察してそれを見破り、中曽根の野望を壊す作戦を考えました。
そこで仏様の自動書記になって、選挙の二週間前に発売される『文藝春秋』に「天動説の国・日本よ」と題して発表し、阿弥陀如来に希望を託したのです。
その記事で50 万人くらいの選挙民が自民党に投票する気持ちを失って、中曽根は過半数を確保できなくなったというわけです。その顛末は、時効でもあるし、『さらば、暴政』に発表しました。

本澤 あの『さらば、暴政』にあった話なら、ブログで紹介したので記憶にありますが、安倍の実情が徹底的に論証されていて、その全体像を知る上で参考になりました。
その中曽根が果たせなかった野望を、マスコミの堕落を利用して実現しかけているのが安倍ですね。
あの本で指摘されている通り、かつて政権を投げ出したにもかかわらず、民主党の不甲斐なさに加えて腐敗したマスコミによって安倍政権が復活したのは、返す返すも残念です。
あれだけ強烈な内容ですから、民主党や批判勢力があの本を活用して自民党政治の欠陥を暴けば、自公体制の復活はなかったかもしれません。

***メディアを支配した電通と三宝会

藤原 でも長く続いた自公体制は想像を絶するほどの影響力を持っていて、メディアはそれに完全に支配されています。
だから新聞や雑誌は『さらば、暴政』を完全に黙殺し、書評は『サンデー毎日』に斎藤貴男が書いた一つが出ただけです。
しかもあれは1000部買い取り条件つきの出版で、鋭い指摘は表現を改められた上に、売れ残りの引き取りまで要求された。新聞広告も私が費用を全額負担して『日刊ゲンダイ』の下三段に出したんですが、それでも書評がなくて売れ残りました。

本澤  それは驚きですね。本の出版広告は、出版社 がするものだとばかり思っていました。著者が広告費を負担するなんてことがあるとは……。
しかも、著者買い取りが条件なら自費出版と変わらないし、そこまでやらないと活字にならないなら、自由社会での出版とは言えませんね。

藤原 権力に向かって正論を吐いて真剣勝負を挑むには、そこまでやらなければならないんです。個人名をはじめ役職や地位を名指せば、出版社は名誉棄損訴訟を懸念せざるを得ない。
したがって自主規制的に削除する。批判的な言辞が、骨抜き表現に改められることも多い。
今の日本は共産国よりも酷ひどい状態で、どうでもいいエログロや金儲けの本ならいくらでも出版できるけれども、権力を徹底的に批判した正義の本はそうじゃない。

本澤 最近の書店に並んでいるのは、雑誌やマンガ、ハウツゥもの、金儲け本の類たぐい。売れそうもない堅い本は姿を消した感があります。
そうでなければ出版社も生き残れないという面はあるにせよ、苦労を重ねて取材してまとめ上げても、出版社が出そうとしなければ、励みにならないから誰も書かなくなる。
その結果、人材が育たない。最近は新聞記者の世界にもそういう状況が拡がってきていて、真実報道への使命感に駆られた志の高い記者より、サラリーマン根性の記者が圧倒的多数を占めています。

藤原 中曽根時代に電通支配が確立したわけですが、中曽根が選んだ竹下政権の時代には、言論を抑える三宝会が生まれた。
これによって大手メディアと財界が一体化したことについては、平野貞夫元参議院議員と対談で論じたことがありますがね。
中曽根はCIAと結んで日本の核武装を狙い、財界と組んで原発建設を推進したわけですが、それに協力したのが大手メディアだったという背景があります。

本澤 平野さんが暴露した三宝会の実態は、ジャーナリストの私でも驚くほどのものでした。

藤原  カネの力で国民を洗脳するために電通が情報支配と操作を担当し、言論界を無力化したのです。御用評論家抜擢の成果もあって愚民化が着実に進み、翼賛体制が日本を包み込んだ。
私も酷いケースを体験していて、光文社で出した『小泉純一郎と日本の病理』は小泉政権が絶頂期だった関係で書評ゼロ、いろいろな形の圧力を加えられました。
ネットで話題になったことから四刷りまで版を重ね、結局五万部も売れたんですが、その出版事業部は閉鎖され、古本も買い占められ、燃やされています。

本澤本 小泉時代は言論弾圧と情報操作で民主主義の空洞化が進みましたが、そうした状況の裏には、三宝会の存在があったわけです。
批判的な人は紙面やテレビに出さず、政府に楯突くような記事を掲載すれば、広告を引き上げると通告する。電通が新聞や雑誌をそう脅かすことによって、言論活動の制圧が実現したんですね。ソフトなテロル(※2)であり、犠牲者の一人が石井紘基代議士でした。

※2 テロル:「恐怖」の意。暴力行為や脅しによって威嚇すること。

***メディアの情報操作と不正選挙の席巻

藤原 新井将し敬( ※3)や中川一郎の死など代議士の不審な首吊り事件が続発し、小泉時代には何人もの新聞記者が奇妙な形で不審死をしています。
私はアメリカに住む地の利があったので大胆なことを記録に残しましたが、出版社や編集長に圧力が加えられたために、本の出版は不可能になった。
言論というものは、このようにして抹殺されるのだと実感しましたね。

※3  新井将敬(1948?1998):政治家。大蔵官僚。日本への帰化前の名は、朴景在。

本澤  国策逮捕が続発していたし、小沢一郎のような政治家までが政界から冤罪で葬られた状況からも、民主主義の空洞化は明白ですよ。
捏造された検察審査会の議決で小沢は民主党の代表を辞めさせられましたが、そんな謀略まで使われたということが、日本の政治の狂気を物語っていると思います。
その延長線上で不正選挙が行われ、自公体制が復活したわけですが、いまや日本は国家主義に雪な崩だれ込んでいるように感じますね。

藤原 新聞やテレビは検察審査会や不正選挙については報道も追及もせず、ウヤムヤのうちに時間が経過し、民主党は内紛でガタガタになった。
マスコミは小沢や鳩山のスキャンダルを叩き、ドサクサの中で菅直人が代表になり、マニフェスト放棄に等しい増税を主張したことによって、民主党への信用は雲散霧消してしまった。

本澤  その前に注目する必要があるのは、民主党の代表選挙のプロセスです。投票用紙の発送先が遠く離れた茨城県つくば市の郵便局、開票は東京、という奇妙な工作があった。

藤原  不正選挙問題について検索したら、総務省のサイトにある民主党の政治活動資金のリストに、ムサシ(※4)に支払った金額が公表されていました。
民主党の代表選挙は2010年9月であり、8月25 日に委託費として7170万円、10 月25 日には代表選関連費として8758万円が民主党からムサシに支払われている
この選挙で菅が民主党代表になり自動的に首相になったのだから、ムサシが不正選挙を手伝っていたとしたら、ムサシが日本の首相を決めたことになる

※4  ムサシ:株式会社ムサシのこと。選挙システムを請け負っている会社として知られる。本誌2013年3月号17?20ページに関連の記載がある。

本澤 かなり以前のことですが、その情報を私はネットで見ました。書いたのは確か植草一秀だったと記憶します。
つくば市で投票、東京で開票というのは選挙のやり方としておかしいとされ、それが小沢はずしだったともいわれています。
二度も無罪判決が出たのに、投票直前というタイミングで検察庁は、検察審査会による小沢の起訴を発表したのでした。
検察審査会の存在が架空のものではないかという疑惑が持ちあがった背景には、審査会の11 人全員が起訴に賛成したという、通常ならあり得ない事態があったからです。

藤原 小沢が情報コネクションをCIAから英国のMI ?6に移し、反米路線を鮮明にしたことに対する報復の格好で、小沢つぶしが激化したと聞いています。
その転機となったのが菅直人副首相の訪米だった。彼はアーリントン墓地に詣でた際に、首相になる“秘訣”を学んだ。
しかも次期首相としての任務を与えられ、密かに転向して党内の“トロイの木馬”と手を組み、民主党の乗っ取り工作を実行した。

本澤  ムサシは選挙銘柄として知られ、小遣い稼ぎにムサシ株を買っている政治家もいると聞く。だから日本の選挙は、選挙委員会ではなく、営利を目的とする私企業の利権になっているというわけです。
そして民主主義は“お題目”になり果て、不正が横行しました。ムサシは自民党のみならず、民主党をはじめ全政党に食い込んで不正選挙を推進してきたといわれ、違反選挙を誰も批判できない。

藤原 菅の首相就任が仕組まれたものなら、不正選挙を民主党が追及できずにウヤムヤになったのは当然です。
民主党にはアメリカで訓練されたネオコンの手先が“トロイの木馬”の形で分裂工作員として送り込まれ、菅が叛旗を翻すのを待っていた。その合図が消費税増税の宣言です。

本澤  増税という公約違反は奇襲であり、お蔭で民主党の信用は崩壊、これは自民党にとっては神風になりました。
しかも、不正選挙がまかり通り、選挙結果など信用できないのに、マスコミはそれを取り上げない。
だから国民は詐欺にあったも同然で、投票も民主主義も画に描いた餅にすぎない。こうなるとムサシが選挙を乗っ取ったようなものですけど、そのムサシの後ろには誰がいるのでしょうか。

***金融による財閥支配の復活

藤原  ムサシの背後には、ゴールドマンサックス(GS)がいます。選挙操作に関与していれば、これは謀略以上の政治操作です。
GSが米国の政治を操ったことはよく知られていて、ルービンポールソンは財務長官として辣腕を揮い、相当あくどいことをしたといわれています。
そのうえギリシャ政府には、ニセ情報を使って経済破綻の原因を作る仕掛けもしたとも。
破綻した長銀に8兆円の税金を注入し、10 億円でハゲタカファンドに売却した時に財務省のコンサルタントだったのがGSです。
日本を食い物にした凶状持ちと言っても過言ではないでしょう。

本澤 GSは金融相だった竹中平蔵と親しく、日本郵政公社が持つ預金を狙って民営化を小泉首相にやらせたけれど、その仕組みは未だ解明されていない。
この郵政民営化に関する政治工作は、おそらくロッキード事件以上の疑惑ですが、検察もジャーナリズムも何もしない。

藤原  GS会長から財務長官になって略奪財政を推進したポールソンは、竹中と何度も会って圧力工作を行い、特に緊密な関係にある住友の会長、辣腕の西川善文を郵政公社の総裁にしました。
彼は民営化後、日本郵政の初代社長になり、郵貯や簡保のカネを武器に日本の産業界の支配を目指しました。
そのために住友と三井を組み合わせたわけですが、その背後にGSとロスチャイルドがいた。

本澤  最後のバンカーと呼ばれる西川善文の海外コネクションは強力ですから、民主党政権は西川社長を更迭しました。
でも自民党が勝って誕生した安倍内閣の下では、驚いたことに、東芝の社長だった西室泰三が日本郵政の社長に就任しています。しかも、民主党色を一掃するために、取締役18 人のうち17 人を解任しました。
東芝は三井の中心的な存在だから、財閥による経済支配が進んでいることの危険性が論じられないのはおかしなことです。
GHQによる財閥解体の成果か、戦後日本では「財閥」は「大企業」と称されるようになっているわけですが、戦前も戦後も、実質的には財閥がカネで政治を動かし、日本を支配し続けているのです。

藤原  戦前の財閥は経済と軍部を動かして侵略主義を実行していましたが、戦後は経済とともに官僚を操って政治を支配する方法まで使い、国家資本主義を復活させようとしています。
安倍が唱える「戦後政治の総決算」とは、麻生が礼賛するナチス型の路線や昭和初期にも共通する相似象としての国家主義と軍国主義であり、その推進は亡国への突進に他ならないのです。

本澤  主権が国民の側に存在せず、大手町に君臨する財閥のカネに操られた政治家や官僚が力を持つ。その背後には国際資本が控えているという構図ですね。
さらに役人の天下りと公団の蔓延によって、日本は官民癒着の白アリ天国になった。初期の民主党はそれを変えようとしたけれど、政治家やマスコミがカネに釣られて売国行為に終始しているうちにメガバンクが中心軸を握り、財閥が不死鳥の如く復活したんです。

藤原 過去30 年にわたる日本の政治は、金融を巡る不祥事の連続であり、それに注意を奪われていたら、危機の中で金融の再編成が進み、ほとんどの銀行が弱肉強食で消えた。
その結果が三井住友銀行の誕生です。
全く歴史が違う旧財閥が合体したのは不思議な縁組みであるにしても、なんでこんな組み合わせが出来たのか、その意味が分かる日本人はいない。

本澤  確かにその通りです。三井と住友が一緒になることで国民にどんな利益があるか、誰も説明できないままに独占禁止法違反が強行され、日本に超財閥が復活したというわけです。また海外派兵できるように憲法を改め、自衛隊に海兵隊を作ることで、専守防衛から脱却しようとしているのです。

***ゴールドマンサックス(GS)と住友

藤原  その源流は中曽根時代にあります。30 年前に彼がまいた種が発芽して現代のファシスト革命になることは、『平成幕末のダイアグノシス』に書きました。
中曽根が作ったバブルの好況時に住友銀行はGSに資本参加して、闇金融である平和相互銀行を吸収した。
しかも、イトマン事件との絡みで裏社会と結ぶ金融機関に変貌を遂げた。

本澤  そういえばイトマン事件や平和相互銀行事件などが続き、「向う傷は問わない」の名言で知られる住銀の磯田天皇が問題を起こした。
また1985年のプラザ合意で円高が始まったので、日本経済は大激動に見舞われましたが、あれも中曽根政治が残したツケだし、今にして思えば“懐かしい”事件です。

藤原  日本人が国内のバブルに浮かれて株や土地転がしに熱狂した時期に、国際金融の舞台では様々な興味深い事件が起きた。
バチカンの闇資金を扱う銀行だったアンブロジア銀行のカルビ頭取が、ロンドンで首を吊って死んだ事件もあった。
この銀行がスイスに作った子会社が、イタリアに近いルガノのゴッタルド銀行です。
破産後に住銀が買収したために、住銀には裏世界の血が資金として流れ込み、表に出せない問題が激増したんです。

本澤  そんな事件は日本では報道されませんから、誰も知らないと思います。秘密に包まれた金融界のことなのに、なぜ藤原さんは知っているのですか?

藤原  イタリアの大疑獄、フリーメーソンのP2事件として話題になりましたよ。
松本清張も『霧の会議』に書いたし、国際的にはよく知られた事件です。
私の留学時代の知人が関係していたので、調べたことを自著で触れたら、ゲラまで出来ていたのに出版中止の憂き目に遭いました。だからこの事件には、苦い思い出があります。

本澤  イタリアの疑獄事件だったのに、どうして出版中止になったのか、とても興味を掻き立てられます。その裏話をぜひ伺いたいものですね。

藤原 その本は、『経世済民の新時代』というタイトルで徳間書店から出る予定でした。当時の徳間康快社長が最後の段階で読んだところ、激怒して出版が中止になったんです。
「スイスの子会社のゴッタルド銀行を住友が買い、竹下が蔵相として住友に近かった」という一行が社長の鋭い記者感覚を刺激して、本が葬られる原因になったというわけです。
しかも当時の私は余計な勇み足まで冒した。「住友と竹下の接点でイトマン事件をはじめ、佐川急便事件を導火線にして暗殺事件が続き、最後の砦の大蔵省や金融界にまで達している。現に、日本で最初に8000億円の償却を行い、事実上のモラトリアムをしたのは住友銀行だった」と、無用な解説までしたんです。
実は徳間書店は住銀に1150億円の借金があり、したがって住銀の話はタブーなのに、うっかり地雷を踏んでしまった。読者にとって分かり難にくくても、無用な解説は慎むべきだという教訓を私は学んだわけですが、この体験は実に貴重でしたね。

本澤  徳間康快社長は切れ者で知られていますが、 カネを借りる名人としても有名でした。私がいた『東京タイムズ』の社主でもあり、もの凄い辣腕経営者でもありました。
「カネはいくらでもある」と大見えを切り、それに期待して待っていたら、カネがあるのは銀行だったという話があるほど、豪快な経営者でした。

藤原  警察官僚で読売の社主だった正力松太郎は「ポダム」の暗号名を持つCIAの代理人でした。
だから読売新聞は、CIAの東京窓口、対日工作の拠点として活動していたんですね。
その読売の記者のうち、渡邉恒雄(政治部)、氏家齊一郎(経済部)、徳間康快(社会部)、竹井博友(社会部)の四人は四天王と呼ばれていたわけですが、彼らは読売が育てた“ 紅烏”の巨人として日本の反動路線の作戦本部を請け負い、日テレがボイス・オブ・ジャパン役を果たしていました。
もう少し四天王の話をすると、戦後に発生した読売争議の時に、共産党の影響を受けた活動家の扇動で読売新聞は経営危機に陥ったんだけれども、その際に活躍したのが四天王だった。
その頃公職追放中だった正力松太郎は争議後に復活してCIAに雇われ、原子力行政を推進しながら、日本を黒い霧で包み込んでいったわけです。
四天王は正力の忠犬ハチ公でしたが、本心は烏のように黒くても、時に応じて紅軍の色をまとうという意味で紅烏なんです。赤から黒へ転色自在の紅烏は、彼ら四天王のイメージにぴったりでしょう。

本澤  それで読売の役割がはっきりしました。しかし、そういった情報はあまり知られていないと思うんですが、どうやって藤原さんは知ったのですか。

藤原  外国人記者が私のニュースソースです。帰国した時に特派員協会に行って、彼らから取材するんですよ。
『朝日と読売の火ダルマ時代』とか『夜明け前の朝日』にヒントを断片的な形で書いたので、鋭い新聞記者なら読んでいるはずです。
ただ、読み抜かれたら命が危ないから、知っていることの3分の1で抑え、情報を分散するようにしましたね。
そのお蔭で74 歳の今日まで無事に生きて来られたわけ ですが、油断すれば、事故死か暗殺の対象になっていたでしょう。だから、正攻法で巨悪に挑戦している本澤さんは、くれぐれも油断せずにご用心を……。

本澤  そうですか。どうも有難うございます。充分に用心することにしますが、調子に乗っていろいろな雑誌で藤原さんと対談してきましたから、もう手遅れかもしれません(笑)。
とはいえ、言論活動に命を賭けるのはジャーナリストとして当然ですから、これからもビクビクしないで真相に迫っていきたいと思います。ところで住銀とGSにまつわるバチカンの件は、その後どうなったのでしょうか。

藤原  ゴッタルド銀行の買収は西川案件だし、取り仕切ったのは西川善文の右腕、その功績で後にトップになった三井住友銀行の奥正之頭取です。
彼は住銀にGSの資本を受け入れたんですが、住友・三井合併の狙いは、日本トラスティ・サービス(JT SB)などの信託業務にあります。細かいことについては言えませんが、JTSBを掘り下げて分析すれば、その答えが見つかるはずです。
JTSBは日本の大企業の主要大株主だし、日本郵政の債権管理までやって基幹産業を抑えていますから、これを通してGSの長期戦略を遠望することは可能です。

本澤  GSの長期戦略の内容を知ることで、国際金融機関が狙っているものがいったい何であるかが分かるのですか。

藤原  評論家たちが雑誌や新聞の記事をツギハギして書いた二次情報は、表層に過ぎませんから、いくら読んでもダメですね。
でも、行間を読み抜けば役立つのは、GSのスパイ役だったともいえる鈴木啓功が書いた、『ゴールドマン・サックスが解れば世界経済を操る大謀略が見えてくる』という本です。
また、GSに長年勤務した末に裏切られて辞めた神谷秀樹の『ゴールドマン・サックス研究』などの著作を分析すれば、内部情報の一部が透けて見えてきます。

本澤  情報の核心のガードがそれほど固くて真相に迫るのが困難なら、GSの正体は尻尾も掴めないですね。

藤原  だって、ムサシの不正選挙も発覚しないし、民主党政権が雲散霧消して自公体制が復活した理由も何十年かしないと真相は分からないでしょうからね。
ただ、三宝会があるし、市民派と称した菅直人の裏切りが女性コネクションか何かに関係していたというヒントはあります。といっても、それ以上のことは「藪の中」の物語です。

本澤  その「藪の中」の物語というのは、どんな内容のストーリーなのですか。

藤原  それはピーター・ドラッカーを追悼した他誌の対談でも触れたことですが、最近のさばって日本を食い物にしているコロンビア大学のジェラルド・カーティス教授の翠(みどり)夫人は、菅直人の伸子夫人と津田塾大学の同窓なんです。
小泉進次郎の育ての親でもあるカーティスはジャパンハンドラーズの三流政治学者ですが、夫人の力で菅直人を米国の傀儡にし、クーデターで鳩山内閣を乗っ取った
その陰にはC IAの転覆作戦がありましたが、世界中に似たような例はいくらでもあります。

本澤  そんな謀略があれば恐ろしいことです。あれだけ権勢欲が強い菅直人なら、首相を餌にして釣りあげることは、それほど難しいことではない……。

藤原  ユノカル石油のカルザイを引き出してアフガニスタンの大統領に仕立て上げた、あのCIAにとってみれば、それくらいは朝飯前でしょう。
こうして急きょ発足した菅内閣ですが、マグニチュード9の大地震、そして福島原発の事故のために、前代未聞の大混乱に陥った。

本澤  原発事故への取り組みの失態に尖閣ビデオの不始末が加わって、菅内閣への不信が高まりました。
結局菅内閣は野垂れ死にしたようなものですが、そのドサクサに紛れて誕生した野田内閣も、松下政経塾出のモヤシ政治家ばかりで全く役に立たなかった。

***日米合作・野党壊滅作戦の発動

本澤  メディアは結局、フクシマ関連で事実の報道をしなかった。しかも御用学者を動員した安全神話で、原発の再稼働までしようと足掻いたものです。
だから国民は、繰り返される大本営発表がデマだと見抜いた。民主党のウソにイヤ気がさしたんですね。
それを絶好のチャンスと捉えた自民党は、マスコミを動員して野党を分断し、不正選挙で国会を制圧しました。

藤原 米国や中南米で実験済みだから、処女地である日本での不正選挙などはお茶の子さいさいで、追及されることなく大成功でした。
米国でノウハウを習得した世耕弘成が、自民党の“広報部長”としてマスコミを完全に統括したんです。
だから民主党も野党も惨敗し、安倍の突撃隊が大量に現れた。でも連中のほとんどはタレントや世襲議員だから、新顔に何を期待してもムダです。

本澤  公共放送NHKの会長までが元国鉄の労務対策の専門家だし、安倍は番組に圧力を掛けた前科持ちでもあります。だから日本版のNSC(国家安全保障会議)を設置して、情報統制を狙っています。そうなれば、国民は完璧に監視されてしまう。
また、松下、トヨタ、電力会社の広告御三家が電通を通じて巨大な宣伝費を使い、国家主義のプロパガンダを進めれば、金で動く「マスごみ」はイチコロです。
皇国史観を信奉するように国民を仕向け、ナチス政治に移行させたいという野望は、麻生の改憲発言に現れているように、安倍の執念になっていますね。

藤原  「ある日気が付いたら憲法が変わっていて、誰も気づかないうちに改憲していた、あのナチスの手口に学んだらどうか」という麻生発言は、ハイパーコラム(※5)のない単細胞発想で、姑息な考えです。
そんなワイマール憲法潰つぶしに学ベという麻生は、ヒトラー崇拝者を副首相に持つ「日本」のネオナチ政権の正体を曝し、日本の政治の後進性を印象づけた

※5  ハイパーコラム:多様性を内包して、あらゆる状況に柔軟に対応できる、普遍的な能力を持つ主体のこと。「生命知としての場の理論」で清水博教授が展開した概念。

本澤  それにしても、歴史の教訓を学べない男が、閣僚の上に君臨する副首相でもあるのに、罷免できない安倍の無責任さは、情けない限りです。
もっとも、麻生より前に退場すべきは安倍なんですけどね……。

藤原 いまや自民党は、国家主義の亡霊に憑依されたカルト集団に成り果ててしまいました。
「平和憲法をヒトラー流に封じ込めよ」と叫び、その実行に夢中になっていますが、政権に多大な影響を及ぼしているものに創価学会と統一教会があると言っても、けっして過言ではないでしょう。
麻生や安倍はもとより、ジャーナリズムの歴史認識、特にナチス理解はお粗末なものです。
ナチスが選挙で三割しか議席がない状況で、ヒトラーは首相に任命されている。
そこで議会解散で総選挙に出て、次に国会議事堂に放火してから、犯人は共産党員だったとデッチ上げて逮捕した。
しかも共産党の当選議員を無効にし、ナチス党員を当選させるという策を弄し、3分の2の数を確保、全権委任法で独裁を確立している。
自民圧勝の手口とよく似ていませんか。その本質は謀略によるおぞましい強奪主義で、まさにアベジェクシオン(※6)の実現です。

※6 アベジェクシオン;フランス語のアブジェクシオン Abjection (「おぞましい」の意)から来ている。本誌2013年5月号25ページ参照。

本澤  自由と民主を掲げる自由民主党が、おぞましくもカルトに憑とりつかれたというわけですね。その点で安倍と小泉は写し鏡とも言えますが、それよりも、昭和初期のファシズム時代によく似た現象だから恐ろしいのです。

***ヒトラーの亡霊が迷い出る危険

藤原  中曽根が首相だった26年前も、演技政治が国民を陶酔させていました。
そんな熱狂は周期的に出現するのか、小泉時代にも現れました。
そこで『小泉純一郎と日本の病理』に所見を書き込んだら、ヒントに注目して調べる読者が現れた。

本澤  小泉が芸者を絞め殺したという噂や婦女暴行をもみ消したという話は、週刊誌や夕刊紙で話題になっていました。もし、そうした行為が現実にあって隠蔽されていたなら、小泉の演技政治の興奮は狂気だったともいえます

藤原  あの本は、狂気が支配する日本を海外から見て、歴史の証言を残す必要があると感じたのでカルテとして書いたのに、肝心の病理診断の部分が5分の1も削除された状態で出版になった。
だが、世界の読者のために出た英語版『Japan's Zombie Politics』には、日本語版では削除になった病理学的な診断部分が復活しています。
この本に触発されたジャーナリストの何人かが真相の解明に調査報道を試みたのに、妨害と弾圧で活字にならなかった。中には冤罪で臭いメシを食わされたという話があります。
本人が著者の私に打ち明けてくれましたよ。もう時効だから言いますが、それは『月刊日本』の南丘喜八郎編集主幹です。日本の言論統制は、民族派の彼にさえ弾圧を加えるほど酷い状態だったということです。

本澤  自由な国と一般に思われている日本にしては、信じられないような言論弾圧ですね。当時のマスコミは小泉を改革者だと見て熱烈な声援を送り続けたため、亀井静香代議士は国賊扱いだったし、とても小泉を批判できる状況ではなかった。
あの頃は国策逮捕が猛威を揮ったし、郵政民営化問題では自民党が分裂しました。亀井静香たちは踏み絵による処刑を受けたようなものですが、郵政選挙に圧勝した小泉は、得意満面で織田信長を気取っていました。

藤原  信長でなくヒトラーでしょう。国民が熱狂したので、小泉は「大衆は騙されたがる」と内心で思ったに違いない。

本澤  いえ、小泉は実際、信長を尊敬していました。それに、劇場政治の手口は学んだにしても、ヒトラーほどの演技力はなかった。

藤原 演技力で劣っていたにしろ、深層心理を支配していたのはサイコパス(※7)に伴う独裁者のイメージで、それは彼の行動に現れています。訪欧三国の旅でドイツを訪れた時に、小泉はシュレーダー首相に案内させて行ったバイロイト音楽祭でワグナーを聞き、敬愛するヒトラーを追想している。また、日米サミットの時にもメンフィスに行き、プレスリーの館でロカビリーを踊るという醜態を曝け出しています。

※7 サイコパス (Psychopath):反社会的人格の一種を意味する心理学用語。

本澤  この前の麻生のナチス発言で分かりますが、国内向けの幼稚で軽率な発言でも、今では瞬時に世界に伝わってしまう。
そういう時代に、恥も外聞も なく愚劣な発言や行動をする人でも、当選すれば議員や大臣になるので、「悪事千里を走る」が現実のものになります。

藤原  そうです。選挙という言葉の意味論としては、「選ぶ」ことと「取り立てる」こと。
「選ぶ」という行為は質の良いものを識別することに他ならないし、「取り立てる」とは、然るべき役割を与え、能力を発揮させるための営みです。
だから昔は代議士を指して「選良」と呼んだものですが、今は選ぶ者も選ばれる者も、質や能力は無関係の人気投票だと思っている。たんなる好き嫌い、気分に基づくものでしかない。

本澤  民主主義が堕落しているということですね。

藤原 本来は適格者だけが座る地位に、教養や使命感において引けを取る人間が紛れ込めば、維持されている秩序を乱し、健全なシステムを狂わせてしまう。
言うならば、社会が健全に機能しない病的な状況になってしまうということです。だから今の日本は、もはや危篤状態に陥っていると言ってもいい。

***多様性の消失

本澤  日本の政治が証明しているように、組織がまともに機能していないし、生命力が衰えているのは明白です。
収入はそのままで税金や社会保険料は増え、原発事故で放射能を撒き散らし、国民はストレスで不安に陥っている。政府は戦争の準備に熱中しており、近隣諸国とは紛争や対立が続くので、人々は未来に対して希望が持てません。
こうした閉塞状態に国民が包まれているのに、メディアはまるで無関心です。国民の多くは打開策を模索していますが、社会のレベルでは何も変わろうとしない。こうした行き詰まり状態に陥っているのに、国民は反抗さえしない。
一方の政治は、自らの異常を異常と感じる能力さえ失っている。この有機体としての日本社会の生命力が衰えていく状況は、ガイアドクターとしての藤原さんの診断だと、どんな病理現象なのでしょうか。

藤原  生命知のレベルで生理が狂って、病理現象が発現しているようなものですから、典型的な末期症状です。
社会の脳機能である政治が狂ったのは、病理学的には病原性突然変異です。生命力が衰退しきっている証拠でもありますね。

本澤  衰退していることは分かるし、狂っていることも明白ですが、なぜこんな状態になってしまったか、その辺に関しての説明はできませんか。

藤原  説明は大学の先生がすることで、私の仕事じゃありませんからね(笑)。といっても自分の頭で考えることは大事だから、参考になるヒントを提供しましょう。
最近の遺伝子学の成果にボトルネック効果(※ 8)というものがありますから、調べたらいいと思います。これはヨーロッパではバカロレア(高卒資格試験)にも出るテーマですが、日本では大学生でも知らない人が多い。
そんな実態は、原発事故への無策ぶりを見て日本の衰退を危惧する人が欧米には大勢いるけれど、日本人がほとんど脳天気なのと同じですね。

※8  ボトルネック効果:生物集団の個体数が減り、その子孫が再び繁殖した時に、DNAに多様性のない均一集団として異常遺伝が発生することを指す。

本澤  日本人にも原発の恐ろしさを感じて即時廃止を主張する人は多いのですが、マスコミが報道しないだけでなく、政治家や財閥が原発賛成だから、せいぜい稼働中止くらいしか出来ない状況です。
特に酷いのが政治家の危機意識で、与党も野党も原発推進の立場であり、外国にまで輸出したいと考えている。

藤原  まさにそんな、思想や意見の多様性が失われた結果としての絶滅の危機やご臨終を指す概念が、ボトルネック効果と呼ばれているんです。
これは遺伝子学や人類学に有効であり、社会病理学で絶大な成果を上げているので、自民党政治の病理解析にも最適でしょう。
昔の自民党には多様性があり、自由派や保守派の他に無派閥も大勢いて、共存を容認する寛容性もあった。
ところが、密室の闇取引で誕生した森政権以降は清和会が権力を独占し、異なる意見を排除してきた。
その結果、独裁者に従う茶坊主で身内を固め、一枚岩の団結力を誇示するようになってきているというわけです。

本澤  昔は宏池会や田中派などの他に、いろいろな考えを持つ政治家や宇都宮徳馬のような一匹狼もいるなど、自民党も百家争鳴で賑やかでした。
しかしスターリン的な粛清傾向が排他主義を生み、お友達や世襲議員が群がったり、身内だけで徒党を組んだりという状況が常態化しています。結果的に、いい意味で個性的な人は誰もいなくなりましたね。

藤原  それが多様性喪失の原因です。
生態学的には、身内本位になったので、行き着くところは近親相姦の日常化、劣性遺伝子の発症というわけです。
近親相姦の禁忌化はヒト科が獲得した重要な知恵の一つです。健全な生命の伝達法ですからね。
民主制が独裁制に勝っているのは、多様性を保持する選択に基づいているからに他なりません。
だから劣性遺伝の卓越を上手に避けることで、突然変異によって悪魔が出現するのを回避できる。独裁はスターリンやヒトラーを生み、類族絶滅の危機を招き寄せます。
今まさにその危険性を感じさせるのが、安倍や麻生の自民党といえる。

本澤 今の説明を聞いて納得できたのは、多様性を保つことの重要性です。多様性の確保は、独裁制を回避するためにも大切だということですね。
民主党が壊滅した最大の原因も、菅直人に始まった排他主義の蔓延でしたからね。まるで学生運動のゲバルトのように、反対意見の存在を認めず、それを圧殺したわけです。
鳩山や小沢を異端として排除した純化方針の結果が、今日の民主党の姿ですからね。
ところで現状の独裁志向は、日本だけでなく世界をとんでもない状況へと導きかねません。安倍が政府専用機を使って日本製原発の売り込みに奔走する姿は、地獄の使者そのものですからね。

藤原  しかも、フクシマの放射性廃棄物は日本列島や太平洋を汚染するだけでなく、地球上の全生命に悪影響を及ぼしかねない。
ガイアが死の惑星になるかもしれないという危機的な状況を前にして、次の世代の幸せどころか、愚劣な戦争ごっこの白昼夢を見ている。
リーダーとして失格と言わざるを得ません。 仮に殺されても、日本人であれば、言わずにいられないことは言うべきだと私は思います。
治安維持法や白色テロ(※9)が横行し、憲兵や特高警察が国民を睥睨した、あの東条英機が君臨していた時代でも、「朝日新聞」は「戦時宰相論」を活字にしています。

※9  白色テロ:君主国家の為政者、あるいは保守派などの反革命側によって、政治的敵対勢力に対して行われるテロ行為や暴力的弾圧のこと。例えば、言論統制や不当逮捕、投獄、拷問、処刑、拉致、誘拐、暗殺など。

本澤 真に勇気ある発言が姿を消しているというジャーナリズムの現状は、堕落としか言いようがありません。それに対しては、私としても実に心苦しいですね。

藤原 DNAはミクロの世界の問題ですが、より大きな宇宙次元の事柄として核エネルギーを考えるなら、そこに突破口があると私は思う。なにしろ核エネルギーは太陽系のもので、地球にとっては悪魔の熱源だから、原発は即時廃棄を決定すべきであり、それが世界への貢献になる。

本澤 人間に核のコントロールは出来ないし、日本が最初の被爆国であると同時にフクシマの問題を抱えているわけですから、その責任は非常に大きいと思います。

***日本から世界に発信するメッセージ

藤原  その点で8月9日の長崎市長の発言は、世界に誇るべきメッセージでした。「被爆国の原点に返れ」という精神は、日本人全員が発信すべき声でもあったと思います。1億2000万人の日本人を代表する立場を意識した、あれだけ内容のあるメッセージを日本の首相が発信し得なかったことは、惨めな日本の立場を象徴しています。
しかしそれを長崎市長の勇気が克服したとも言えるでしょう。

本澤  私も「長崎平和宣言」を読んで、誇るべき内容であると思ったし、全世界に実況で伝えられた田上市長は、その誠実さと責任感を強く放射することによって、素晴らしい体験を人々に与えたと感じました。それに対して安倍の憮然とした表情は、恥ずかしい限りでした。

藤原  最も印象的だった長崎市長の発言は、「核兵器の非人道性を訴える共同声明に、日本政府は署名せず、世界の期待を裏切りました」から以下の部分です。
英語のbetraying(裏切る、だます)という言葉は、安倍にピッタリだと思われても致し方ありません。
世界基準で認められた放射能の被爆限度は一年僅か1ミリシーベルだというのに、日本政府はそれを20 倍に引き上げて、子供たちの未来を二の次にしました
しかも、太平洋に流れ出た汚染水は、ストロンチウムとセシウムによる汚染が30 兆ベクレルの数字を記録している。
だから太平洋の魚は食べるなというニュースがテレビで流れたと、米国の友人が知らせてきました。

本澤  オリンピック招致の席で欧米のジャーナリストは福島の放射能事件を取り上げて執拗に質問しました。最後のプレゼンテーションの場でも、駄目押しの質問が出て安倍が答弁、安倍は日本語ではっきりと「汚染水は、福島原発の0・3平方q内に完全にブロックされている。全く問題はない」と胸を張った。
イギリス人コンサルタントの智恵だったのかどうか不明だが、安倍はとんでもない嘘をついて、2020東京五輪という利権を獲得した。 要するに、安倍は国際社会に向けて日本人の代表として、とんでもない嘘をついたのです。
嘘に騙されたIOC委員にも責任はあるが、大嘘をついた安倍は一人の人間として、また新たな汚点をつけたことになります。
さらに問題なのは、これを大嘘だと報道しない日本の新聞テレビでしょう。

藤原  安倍は連日のようにマスコミ幹部と会食し、マスコミ対策に躍起となっている。これでは、緘口令が敷かれていると言われても仕方ないでしょう。

本澤  東電福島の1号機、2号機、3号機は炉心が溶け落ちて、地下水脈に達している。そこから放射能は、2年以上も海洋に垂れ流されてきていた。最近になって汚染水の無数の陸上タンクからも、海に漏れていることを認め、ようやく対策をするという政府方針が決まった。
その経費470億円に対して、オリンピック招致には、その10 倍の5000億円をかけたと言われている。
五輪利権は財閥利権です。五輪推進スポンサーを分析するだけで、それは十分に分析可能ですよ。建設・不動産の財閥企業へと、主に税金は流れ、政界には5000億円の3%が流れるというのが一般常識になっています。五輪腐敗に目を光らせるジャーナリスト養成が急務ですね。

藤原  現在の日本から出ている情報は、ほとんどがネガティブなものです。そんななかでひときわ輝いていたのが、長崎市長が発した平和宣言と、オリバー・ストーン監督の講演でした。
オリバーの講演は日本政府の欺瞞に対して一矢を報いるものであったと同時に、誠実なメッセージでもありました。
私は各国語に訳した平和宣言の記事とオリバーの講演ビデオをまとめて、全世界で活躍するジャーナリストの友人たちに、インターネットを使って送信しましたよ。

本澤  藤原さんの言論活動の舞台は地球規模で広がっているから、われわれから見ると実に羨ましい限りです。
しかし日本にも、次の世代のことを真剣に考え、美しい環境と平和を求めることに生き甲斐を感じている仲間がたくさんいます。私は国内のそういう人たちに向けて、日本を破滅させないことを目指しながら、言論活動を続けていくつもりです。

藤原  明治時代の日本人の中には、岡倉天心や新渡戸稲造のように、世界に向かって発信した人がいて、それを契機に友情の連帯が拡大したという歴史があります。
その中で私が一番好きなメッセージは、
西洋人は、日本が平和のおだやかな技芸に耽っていたとき、日本を野蛮国とみなしていたものである。だが、日本が満州の戦場で大殺戮を犯し始めて以来、文明国と呼んでいる」という、真摯だが皮肉を湛たたえた岡倉天心の言葉です。
首相の安倍が英語で読むべき本は岡倉天心の『茶の本』でしょう。しかもこの本が伝えるメッセージは、一億人が日本語訳で読む価値があると私は思います。
天心のメッセージに私が感じるのは、熱狂して戦いに勇み立つのではなく、落ち着きと礼節に満ちた環境に身を置き、均衡の取れた多様性を満喫し、遺伝子と同じ連環の意味を味わうことの大切さです。
これらはつまり、華道や茶道を通じて心を浄化してきた文化の精髄に他ならないと私は思いますね。


藤原、本澤対談:強権政治の病理とメディアの堕落 もうすぐ北風が強くなる
http://bator.blog14.fc2.com/blog-entry-2008.html
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