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国際学会でも“独島はわが領土”とアピール! 科学技術団 「慰安婦」で韓国との親交もお断り 「反日国家に工場を出すな」
http://www.asyura2.com/12/warb10/msg/377.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 02 日 07:03:55: cT5Wxjlo3Xe3.
 

【第300回】 2012年11月2日 みわよしこ [フリーランス・ライター]
国際学会でも“独島はわが領土”とアピール!

科学技術団体までが繰り広げる韓国のしたたかな外交

竹島・尖閣諸島をめぐる韓国・中国と日本の緊張関係は、今後長い期間にわたって、日本の課題であり続けそうだ。

日本の存在感と国益を守りつつ、近隣諸国との紛争を最小限に抑えるためにも、しばしば指摘される日本の「外交下手」は、克服する必要があるだろう。

たとえば韓国は、竹島問題に関して、数多くの外交の場で、多面的・多層的なアピールを粘り強く続けている。対して日本の現状はどうだろうか? これからの日本には、何ができるだろうか?

本記事では、ある大規模国際学会の舞台の表と裏を通じて、「文化(広報)外交」(Public Diplomacy)のさまざまな側面を紹介する。
大人から子どもまで
すべての人々に開かれる国際学会にて
AAASは日本に対して、概して好意的だ。ジャパンパビリオンの様子が、2013年年会の広報ページに掲載されている Photo by Yoshiko Miwa
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 ここ数年、毎年2月、私はアメリカかカナダに、1週間ほど滞在している。AAAS(アメリカ科学振興協会)の年会に参加し、取材を行うためだ。

 AAASは、科学雑誌「Science」(注1)の発行元として知られている。年間約1億ドルの予算規模を持ち、多数のスタッフを擁する世界最大のNPOでもある。活動範囲は科学そのものだけでなく、社会問題の解決・国際協力など、社会と科学に関連する広い分野にまたがる。アメリカの組織ではあるが、影響力は世界中に及んでいる。

 AAASの年会は、5日間にわたって開催され、すでに180回近い開催実績がある。世界中からやってくる8000人以上の来場者には、研究者・科学政策に関わる人々・科学を伝えることに関係する人々が目立つけれども、一般の科学愛好家も多い。参加資格は特にない。必要な条件は、参加費を支払うことだけだ。

 年会のプログラムは、多数の講演と会議、さらに展示から構成されている。

(注1)
研究者たちが「論文を載せられたら」と憧れる3大科学雑誌「Cell」「Nature」「Science」は、頭文字を取って「CNS」と呼ばれている。「CNS」は、「いつかはCNS」「目指せCNS」のように使用される。
2012年2月のAAAS年会では、東日本大震災と福島第一原発事故を中心に、社会と科学の関わりを考える講演が多かった。Michael Hanlon氏は、「コミュニケーション・メルトダウン!」と題し、東日本大震災直後のメディア報道分析について発表。写真は、2011年3月15日の英国「METRO」紙。「核の悪夢」というタイトルで、福島第一原発事故が報道されている Photo by Yoshiko Miwa
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 講演は、5日間で200件以上に及ぶ。内容に関しては、分かりやすさのために正確さが犠牲にされている場面は皆無だが、発表者は概してプレゼンが非常に上手で、分かりやすい。テーマも、地球温暖化などの環境問題・福島原発事故などのシビアアクシデント・最先端研究・科学をどう伝えるか……と多岐にわたる。誰もが自分の関心にフィットする何かを見つけ、有意義な何かを持ち帰れるように、プログラムが構成されている。

 会議は、さまざまなテーマで開催されている。多くの会議には、誰でも参加できる。会議の場で話し合われたことは、何らかの形でAAASの運営方針に反映される。参加者が「聞くだけ」「見るだけ」でなく、文字通り「参加者」であることは、この年会の大きな特徴の1つだ。
AAAS年会の会期中の土曜日・日曜日に開催される子ども向け企画「Family Science Days」。簡単な実験を楽しめる小さなブースが100個前後並び(ブース数は年によって異なる)、多数の親子連れで賑わう Photo by Yoshiko Miwa

 展示会場では、さまざまな機関・企業・団体が展示を行う。展示会場だけなら無料で入場できるので、ここだけを見て帰っていく近隣住民も多い。

 5日間の会期は、必ず土曜日・日曜日を含むように設定されている。土曜日・日曜日には、展示会場で「Family Science Days」が開催される。子どもたち多数が親などの大人ととも(注2)に訪れ、楽しい実験やゲームの数々に歓声を上げる。

 さて、日本は、この年会の会場で、どのように存在感を示しているだろうか?

(注2)
アメリカ・カナダでは、子どもだけで外出をさせると、虐待の1つ「ネグレクト」とみなされ、親が処罰の対象となる。このため、子どもたちを対象とした催しは、自動的に家族連れ向けの催しとなる。
華やかで人目を引く「Japan Pavilion」と
広報担当者たちの苦労
AAAS年会・展示会場に設けられたジャパンパビリオン。遠くからでも目立つ華やかなブースである Photo by Yoshiko Miwa

 2012年、年会の展示会場で、ひときわ目立っていたのが、大きな「Japan Pavilion」だ。遠くから見て目立つ高い位置に、華やかな「Japan Pavilion」のサインがある。近寄ってみると、巨大な液晶ディスプレイの中で、日本を代表する研究者が自分の研究を紹介している。周辺では、広報担当者たちが、来場者の呼び込みに奮戦している。

「Japan Pavilion」は、(独)科学技術振興機構、(独)日本学術振興会、(独)理化学研究所、筑波大学、WPI(注3)の合同展示である。多数の来場者が訪れ、一言、二言の会話をしては、展示を少し見て、名刺交換をして、ノベルティをもらって帰っていく。たまに、日本への留学を考えている高校生や大学生が、大学関係者と少し話し込んでいったりもする。たぶん、出展の効果は、出展する機関にとっては多大なのであろう。

(注3)
文部科学省による、世界トップレベル研究拠点プログラム。2011年度は、東京大学・京都大学・東北大学・大阪大学・九州大学・(独)物質・材料研究機構から編成されていた。
ジャパンパビリオンの内部。広々としたブース内部に、各機関の充実した説明が掲示されている Photo by Yoshiko Miwa

 AAAS年会で展示を行うために必要な費用は、それほど高額というわけではない。約3メートル四方の1小間あたり、2250ドル〜2500ドルである。Japan Pavilionは6小間を使用していたので、多く見積もって1万5000ドル。現在の為替レートでは、約120万円となる。日本から来る広報担当者たちの旅費等も必要だ。少なくとも8名の広報担当者が日本から来ていたので、1人あたりの出張旅費を20万円とすると、旅費は160万円ということになる。展示物の制作等に必要な費用を考慮すると、この展示に必要な経費の総額は500万円程度というところだろうか。

 私はこの時、展示のために来ていた広報担当者の何人かと、直接、会話する機会を持つことができた。研究機関・大学などの予算が大幅に削減されてゆく流れの中での海外出張は、それは大変なものらしい。嫉妬はぶつけられるし、スケジュールも「不適切ではないか」という視点から厳しくチェックされる。広報担当者たちは、現地で展示・重要な講演の聴講・人によっては発表……と、数多くの役割を担っている。寝る時間も食事の時間も削っての大活躍は、「仕事だから」で理解できる範囲のことではない。しかも彼ら彼女らは、特に恵まれた待遇を受けているわけではない。多くは任期付き雇用の身分で、得ている報酬も多くはない。

 広報担当者たちは、公式的に求められる役割を果たすだけで、精一杯だ。
韓国ブースで見つけたDVD
「The Island of Life, Dokdo(生命の地、独島)」
韓国科学創意財団(KOFAC)のブース。目立つ仕掛けは何もなく、小じんまりしているPhoto by Yoshiko Miwa

「Japan Pavilion」の近くに、韓国科学創意財団(KOFAC)のブースがあった。日本の科学技術振興機構(JST)と同様に、科学技術振興をリードする公的な財団だ。使用している小間数は2つ。「Japan Pavilion」の3分の1だ。地味で小じんまりしたこのブースを訪れる来場者は、それほど多くはない。しかし、担当者と落ち着いて会話を交わし、少し踏み込んだ質問をし、互いに情報交換を行ったりしている。最後に、必要であれば名刺を交換し、満足した様子でブースを出ていく。
KOFACブース内の最も目立つ展示は、韓国の理科教科書だった。日本の検定教科書よりは厚く、内容も充実しているように見えた 
Photo by Yoshiko Miwa

 私も近づき、ブースの中に入ってみた。展示内容は主に、韓国の理科教育に絞りこまれていた。ガラスケースの中に、韓国の小学校・中学校の理科の教科書が展示されている。ハングルは一文字も読めない私だが、内容の概略は、図・イラスト・写真・グラフ・数式で分かる。

 なぜ、展示の中心が理科教育なのだろうか。担当者に聞いてみると、即座に

「韓国の理科教育に、関心が集まっていますからね」

 という返事が返ってきた。

 ここに来る人々ならば、興隆著しい韓国の科学研究や技術開発について、たいていは良く知っている。だから、その点ではなく、科学・技術の基盤である理科教育を静かにアピールしているわけだ。
KOFACブースで、さりげなく配布されていたDVD「生命の地・独島」。韓国・慶尚北道が制作
Photo by Yoshiko Miwa

 対応にお礼を言い、最小限持ち帰りたい資料を頂いてブースを去ろうとした私は、パンフレットのラックの最下部、大人の膝より低いくらいの高さの位置に、「The Island of Life, Dokdo(生命の地、独島)」と書かれたDVDを発見した。目立たない場所に置いたつもりなのだろうが、車椅子に乗っている私にとっては「目の前」というべき高さだ。手にとって裏面を見ると、「独島は韓国の領土です」と書いてある。親切に対応してくれた担当者の顔を見上げると、表情が引きつっている。

「これも頂いていいですか?」

 と聞くと、

「もちろんですよ」

 と言う。私は、精一杯の渋面を作り、

「まだ決着してない問題について、一方的に広報するのは、やめてくれませんか?」

 と言った。相手は、何も言わずに下を向いた。
DVD「生命の地・独島」には、6ヵ国語バージョンが含まれている。いかに国際広報を意識しているかが分かる
Photo by Yoshiko Miwa

 国際学会などの場で、韓国の出展者が、時に露骨に、時に目立たないように、竹島問題などの国家間問題に関するアピールをしていることは少なくない。しかし、日本の出展者が同様のアピールをしている場面には、私は出くわしたことがない。特に、そこがアメリカやカナダであるとしたら、そのようなアピールは、逆効果である可能性もある。日本の戦争責任に関する議論の火種となる懸念があるからだ。第二次世界大戦で醸成された「日本人は狡猾な人種」という偏見も、まだ欧米圏に根強く残っている。まことにやりにくい。

 日本の戦争責任に関しては、私にも、さまざまな思いがある。しかし、韓国の出展者が竹島問題に関してアピールをしている場面では、個人として一言、釘をさすことにしている。日本の戦争責任について突っ込まれたら、「私は戦後に生まれて民主主義教育を受けた世代だ、言われても困る」と反撃する。相手の反応は、さまざまだ。たまに「自分としては、こんなところで未解決の国際問題について主張するのは、ちょっとどうかと思ってるんだけど」という返事が得られることもある。

 では、韓国は外交のルールに違反しているのだろうか? 「友好的に振る舞いつつ、主張できる場面では主張すべきことを主張する」が外交のルールであると考えるならば、そのルールに忠実なのは、むしろ韓国の方であるかもしれない。

 そんなことを考えながら、私はプレスルームに戻り、無料で提供されるコーヒーを飲む。そこもまた重要な外交の場である。インフォーマルな外交の。
コアラも参戦する“国際広報大会”
プレスルームの談話コーナー。交流・売り込み・宣伝・休憩など、数多くの役割を持つ場所
Photo by Yoshiko Miwa

 AAAS年会のプレスルームは、ワーキングスペースと談話スペースに分かれている。ワーキングスペースは、今、原稿を書いてメディアに掲載しようとしている人たちのための場で、談話スペースは交流の場である。赤ちゃんをバギーに載せた男性ライターが、さすがに赤ちゃんを連れてワーキングスペースに入るわけには行かず、談話スペースで仕事をしていたりもする。

 この談話スペースにやってくる人々は、報道関係者だけではない。大学・研究機関などの広報担当者も含まれている。報道関係者に接触し、自分の所属する大学や研究機関の魅力をアピールするためである。もちろん、フリーランス・ライターにとっては重要な売り込みの場でもあるのだが、残念ながら、私には英文媒体に執筆するほどの英語力はない。拙い英語で情報交換と交流をするのが精一杯だ。

 アメリカからやってきた女性ライターと、雑談と情報交換をしていると、見知らぬ男性がやってきて、にこやかに「ここに座っていい?」と聞く。もちろんですとも。簡単な自己紹介をしあったあと、男性は自分が広報担当者として所属する大学の話をする。オーストラリアはメルボルンの風光明媚な地域にあり、研究実績も相当なものであると。男性は、大学のパンフレットを私たちに手渡し「ぜひ来てね」と微笑む。男性はさらに、パンフレットにコアラの縫いぐるみ型のペーパークリップをつけてくれる。女性ライター2人は「Cute!」「Cool!」と大喜び。

 プレスルームには、専用のパンフレット置き場が設けられており、所狭しとパンフレットが並べられている。日本の大学・研究機関のパンフレットも少しは見当たるけれども、初日に置かれて、それっきりらしい。5日間の会期の間に、隅に追いやられてしまっている。この談話スペースには、自分以外に日本人の姿はない。日本からやって来た広報担当者は忙しすぎて、コーヒー片手にゆっくり話し込んでなどいられないのだ。

 日本は、政府に限らず、外交がやりやすい立場には置かれていない。その上、あらゆる分野・あらゆるレベルの外交の場で、日本人は、機会があっても適切に存在感を示せないことが少なくない。それは、外国の人々にどういう印象を与えているだろうか? そんなことを考えながら、私は、隅に追いやられた上に積み上げが崩れてしまった日本の機関のパンフレットを積み直し、少し目立つ場所に動かす。一民間人には、そんなことしかできない。
日本の一市民も外交の担い手になれるか?
第一歩は、個人レベルでの“ソフトパワー”の発揮から
オーストラリアの大学広報担当者より頂戴したコアラ型のペーパークリップを、渡辺靖「文化と外交」(中公新書)に抱きつかせてみた。文化外交・広報外交を考えるために、必読の1冊
Photo by Yoshiko Miwa

 文化外交の目的は、「相手国の国民の心と精神を勝ち取る」ことである。文化と交流によって、軍事力ではなく、ソフトパワーを発揮できるようになることである。そうすることにより、軍事的な衝突などの決定的な事態を回避しつつ、自国の国益を守り、必要な主張を行うことが可能になる。

 日本のマンガやアニメは、世界に根強いファンを持っている。世界から注目されるクリエータが、日本には数多く存在する。たぶん、日本がソフトパワーを発揮するための材料は充分なのだ。でも、充分に発揮されているだろうか? そこは大いに疑問である。

 外交官でない一市民であっても、文化外交の担い手にはなれる。最初の一歩は、さまざまなレベルと性格の外交の場に、日本人が出ていくことだろう。といっても、日本人どうしで群れて人数をパワーとしたり、組織の看板をパワーとしては逆効果だ。何か公的な役割や肩書きを持っているとしても、あくまでも魅力的な個人として、同じように魅力的な個人である相手を尊重して相対することだ。

 大きな資金力や強い組織力がない個人でも、相手の心の琴線に触れる何かを提供しあうことは可能だ。そんなふうにして、日本人である自分自身と日本の理解者を少しずつ増やしていくことなら、個人レベルでできる。

 道は遠いけれども、たとえば尖閣諸島や竹島に関する問題について、日本を理解して味方となってくれる国々の協力のもと、中国や韓国と日本が冷静な話し合いをできる近未来を期待して、そんな地道な努力を積み重ねよう。

http://diamond.jp/articles/-/27275


「慰安婦」で韓国との親交もお断り
「反日国家に工場を出すな」と言い続けてきた伊藤澄夫社長に聞く(下)
2012年11月2日(金)  鈴置 高史

 「金型だって中韓と戦う日本の武器だ」――。伊藤製作所(三重県四日市市)の伊藤澄夫社長は言う。前回に続き、鈴置高史氏と対立が深まるアジアを「金型やバナナの視点」から論じた(司会は田中太郎)。
「モノづくり力」を外交の武器に

鈴置:伊藤社長の主張は(1)「反日国」中国への経済的な依存度を減らし、政治的な介入を防ぐべきだ(2)一方、親日的な東南アジアに投資をシフトし共存共栄の体制を深めよう(3)日本の「モノ作り力」を中韓に対する政治的武器として活用すべきだ――ということですね。

 3番目の「モノづくりを武器に」の具体例として話された金型に関し、もう少し詳しく説明して下さい。

伊藤:では、もう一度、しっかり説明します。ここに、2つの金属部品があります(下の写真)。いずれも同じプレス機械で打ち抜いて作った部品で、同じ形です。でも、よく見るとギザギザの歯の部分が微妙に異なります。
従来の製法でプレス加工した部品(左)に比べ、伊藤製作所の新技術で製造した部品(右)の切断面は刃物ですぱっと切ったように鋭い(撮影:森田直希、以下も)
大根を名刀で切ったように

 右の部品は、名刀で大根をすぱっと切ったように、歯の部分がシャープです。左の方は業界用語で「ダレる」というのですが、歯がぼやっとした形です。

 普通のプレス機械を使って右のような部品を作れるのは、アジアでは日本だけでしょう。中国や韓国だとまず、プレス機械で左の「ダレた」部品を作った後に、削ったり磨いたりして、ようやく右のような鋭角的な形に整えます。時間と手間が恐ろしくかかります。

鈴置:プレス機械で打ち抜くだけで1〜2秒で加工できる。新技術によって、人件費の安い中韓の同業者に勝つというわけですね。

伊藤:我が社だけではありません。今、日本のプレス金型各社は、金属の切削やロストワックス、研磨という手間のかかる工程を、プレス加工に置き換えるという技術革新に取り組んでいます。加工費を極端に安くすることで中韓との競争に生き残ろうと必死なのです。

鈴置:なぜ、日本しかできないのでしょうか。

伊藤:理由は2つあります。まず、金型の設計力です。日本には長年、蓄積したノウハウがあります。加えて、我々は新しく開発された技術を日々、注ぎ込んでいます。日本から技術移転しない限り、そう簡単に真似できません。
「近道探し」では切り拓く力がつかない

鈴置:しかし、中国にも腕のいい職人はいます。
伊藤澄夫(いとう・すみお)
金型・プレス加工の伊藤製作所代表取締役社長。1942年、四日市市生まれ。65年に立命館大学経営学部を卒業、同社に入社。86年に社長に就任、高度の金型技術とユニークな生産体制で高収益企業を作り上げた。96年にフィリピン、2012年にインドネシアに進出。中京大学大学院MBAコースなどで教鞭をとる。日本金型工業会の副会長や国際委員長など歴任。著書に『モノづくりこそニッポンの砦 中小企業の体験的アジア戦略』がある。

伊藤:金型が職人芸の世界だった時代は終わりました。組織人が集団戦法で戦う時代です。個人の能力が高いのは当たり前。その上にチームワークや愛社精神、こだわりが要るのです。

 経験者が喜んで若い人を教える、という風土がないと強い会社はできません。中韓にそうした風土は希薄です。日本と近隣諸国とはそこが決定的に異なるのです。

鈴置:“追う者”は近道を選べます。

伊藤:“近道”ばかりを探していると、自ら道を切り開く能力は身に付きません。真似は出来ますが、新しいモノを作り出すという意味で、近隣諸国が10年や20年で日本に追いつけるとは思えないのです。

 設計力に加え、もうひとつは、日本にしかない特殊な加工機械の存在です。プレスとは金型という“刃物”で金属をたち切る加工方法です。

 先ほど「名刀で大根をすぱっと切ったよう」と言いました。金型という“刃物”を研ぎ澄まして名刀を作ることで、部品の切り口もシャープな断面となるのです。
「名刀」を作る研削盤は日本にしかない

 では、どうやって「名刀を作る」のか。金型の表面を徹底的に平らに研削して「超鏡面」――つまり、鏡のように磨きあげるのです。そうすると金型が金属の部材をすぱっと切れるようになります。その結果、このように歯車の形がきれいに抜けるのです。

 この金型をご覧ください(下の写真)。手をかざすと指や手のひらが金型の表面に映るでしょう。これが超鏡面です。この、ぴかぴかに磨きあげた金型を使って初めて、あの鋭角的な形状を作れるのです。
まるで鏡のように磨き上げた金型が、断面の鋭い部品をつくる(写真提供:伊藤製作所)

鈴置:要は「超鏡面」に磨ける高精度の研削盤がミソ、ということですね。

伊藤:その通りです。この金型を作るため、我が社が最近購入した超精密研削盤の価格は普通の研削盤の4倍以上です。でも、先ほど申し上げたように部品の製造コストが大幅に落ちるので、十分元がとれると判断し、買いました。

 この研削盤を含め、こうした金型を作る技術は中国や韓国にはありません。彼らも追って来ます。しかし我々も、これまで手がけていなかった領域の技術も導入し、追い上げをかわしているのです。
レアアース同様、金型でも報復できる

2010年に尖閣で中国と日本が衝突した際、中国はレアアース(希土類)の対日輸出を止めました。日本は輸入先を多角化したほか、レアアースが不要になる技術を相次ぎ開発しました。市況も下がり、中国のレアアース最大手が操業を停止するに至りました。

伊藤:それがいい例です。金型もそうですが、日本は技術を武器にできるのです。日本の高度な技術や製品、日本でないと生産できない多くの特殊材料の輸出を止めれば、中国や韓国の経済は冷え上がってしまいます。それはレアアースが止まったことによる日本の困惑と比べ、はるかに深刻なものです。一方、中韓から購入しなければならない特殊材料は1種類もありません。

中国や韓国の金型メーカーが、その超精密研削盤を買い入れないでしょうか。

鈴置:これだけ精密な加工ができる機械は、ワッセナー・アレンジメント――昔のココム規制ですが――により、中国は日本から輸入できないでしょうね。

伊藤:その通りです。

鈴置:韓国も、これからは日本製の精密機械の輸入が難しくなるでしょう。最近、新日鉄がPOSCOを訴えたように、日本の技術が韓国企業経由で中国に流れるケースが目立つようになっています。

 韓国相手だとつい脇が甘くなる日本人の癖を中国が利用していると見る向きもあります。いずれにせよ、韓国への技術移転や素材・機械の輸出も厳しく規制されていくと思われます。

「韓国にはウチの精密機械は売らない」

伊藤:政府が規制する前に、民間企業が韓国への精密機械の輸出や技術移転を自粛するケースが出始めました。もちろん、商売にはマイナスですが「日本に害をなす国家を利してはいけない」との強い思いからでしょう。

鈴置:私も同じような話――「日本を侮辱する韓国に対し、日本にしかない機械は売らないことにした」という話をあちこちで聞きました。面白いことに私が知る限り、いずれもオーナー社長の会社です。

伊藤:実は、私も最近、韓国とのお付き合いを断りました。長い間続けてきた韓国の大学での特別講義や、韓国の同業者との集まりでの講演はやめたのです。韓国の学生のインターンシップ受け入れも、韓国の同業者の工場見学も、すべてお断りしています。

鈴置:先ほどから、その点を伺いたかったのです。伊藤社長は中国とは関係を持たないようにしていました。しかし、同じ「反日国家」でも韓国とは深い人間関係を築いて来られました。

 30年近く前に伊藤製作所で半年間も修行し、韓国の製造業で活躍している韓国人に会ったことがあります。伊藤社長にとても感謝していました。伊藤さんは韓国の金型業界や様々な大学との交流にも尽くし、韓国人の間でも「歯に衣着せない、率直な日本人」と人気があったのに……。
慰安婦の像がある限り韓国と交わらない

伊藤:従軍慰安婦の像からです。韓国政府は、ソウルの日本大使館の前に作ることを認めました。そのうえ李明博大統領は「謝らなければもっとできるぞ」と日韓首脳会談の席上、日本を脅しました。

 過去のように一部の反日分子の活動ではなく、大統領の言動です。次元が全く異なります。実際、その後、「慰安婦の像」を米国でも設置させるなど韓国は世界に宣伝を始めました。

 自民党の高村正彦副総裁は「旧日本軍が直接強制連行した事実はない」と明らかにしています。また、高村さんが外相だった1998年に日韓共同宣言をまとめた際、当時の金大中大統領から「一度謝れば韓国は二度と従軍慰安婦のことを言わない」と言われ、「痛切な反省と心からのお詫び」を明記した、とも語っています。

 日本人は、物事を丸く収めるために何でも謝ってしまう。これは海外では絶対にやってはいけないことです。当社の社員が海外に赴任する前にも、私はこの点を厳しく教えます。

 90%は相手に責任がある交通事故でも、うっかり謝れば、100%こちらが悪者にされてしまいます。これは海外での常識です。日本の常識は世界の非常識なのです。

 「慰安婦の像がある限り、私は韓国との協力や交流はしない」と韓国の大学や金型関係者、教育機関などに一斉にメールを送りました。あの親韓のイトウサンが?と、大騒ぎしているようです。ところが、この最中に韓国の会社から「技術協力か合弁会社設立を検討してくれ」という連絡が来ました。

日本を叩く時は中国が助けてくれる

 私は「反日国家の会社との協力はうまくいかないと思う」とお断りしました。鈴置さん、こう言う時にこういう申し入れをして来る韓国人とは、どういう神経をしているのでしょうか。

鈴置:多くの韓国人、ことに戦争中のことを知らない世代は「慰安婦は強制連行だった」と教え込まれ、信じ込んでいますから「慰安婦の像に怒るなんて、日本人は反省が足りない」と考えるでしょう。

 「日本人に対しては何をやっても大丈夫。報復して来ないから」という空気もあります。さらに「日本叩きをする際には、中国がバックアップしてくれる」との自信も持ち始めました(「『尖閣で中国完勝』と読んだ韓国の誤算」参照)。

伊藤:韓国だって、このまま行けば中国に飲み込まれてしまいます。4年前に韓国の金型工業会での講演で「中国に併呑されないよう、日韓が技術面でも協力すべきだ」と訴えたのですが、反応が今一つでした。

鈴置:韓国人は中国に併呑される覚悟を固めたと思います。「中国が天下をとる。だったら、米国や日本とは距離を置き、昔のように中国の傘下に戻るのが得策だ」という判断からです(「日韓関係はこれからどんどん悪くなる」参照)。
はた迷惑な「日韓共闘論」

 そんな時、日本と協力して中国に対抗するなんて中国に見なされたら大変です。伊藤さんの呼びかけは、韓国にとってさぞ、はた迷惑なものだったでしょう。

伊藤:鈴置さんの本(『朝鮮半島201Z年』)や日経ビジネスオンラインの一連の記事(「早読み 深読み 朝鮮半島」)を読んだ今では「強いものに従っておかないと国を失う」という韓国人の恐怖感が少しは分かります。

 でも、韓国には期待していたのです。「反日国家だけれど中国とは異なる。誠心誠意、協力すれば、いつかはきっといい関係が築ける」と信じていました。

鈴置:伊藤社長もそうですが、関係改善を願って地道に韓国に協力していた日本人がいました。でも、李明博大統領の「日王への謝罪要求」や「竹島上陸」でついに、というべきか、彼らが一斉に韓国から離れました。

伊藤:私は今でも韓国が大好きです。親しい仲にも互いに礼儀を持って、手を取り合っていけるとまだ、期待したいのですが……。

鈴置:伊藤さんの愛した韓国――米国との同盟を重視し、反日を看板に掲げるけど実態面では日本とはうまくやる韓国――ではなくなったと思います。

フィリピンバナナを食べよう

韓国のビジネスマンは日本人に対し「『日王への謝罪要求』などは、退任後の逮捕を避けるための李明博大統領のパフォーマンス。政権が変われば日韓関係はよくなる」と言います。

鈴置:それは言い訳に終わるでしょう。韓国の変化は「強大化する隣国の言うことを聞かざるを得ない」という地政学的な要因からきています。今後、大統領がだれになろうと韓国は中国接近を続ける半面、米国とは疎遠になり、日本とは敵対していくことでしょう。

伊藤:中国側につくとしても、日本と敵対する必要もないでしょうに。

鈴置:そうしないと中国に睨まれるからです。中国は「日本か中国か」あるいは「米国か中国か」という踏み絵を韓国に突きつけ始めています。

伊藤:そうですか。やはり、日本は東南アジアとしっかり手を結ぶしかないのですね。今、知り合いに「フィリピンバナナを食べよう」と呼び掛けています。

 フィリピンは中国の激しい威嚇にめげず、領海や領土を死守する姿勢を打ち出しています。その報復に中国がフィリピンのバナナの輸入を事実上、止めているのです。
菅直人内閣が失った東南アジアからの信頼

 海軍力がないに等しいフィリピンが頑張っているのです。我々ができることは、フィリピンを支援する意志をフィリピン人と世界の人々に示すことです。中国でボイコットされている、フィリピンバナナを日本人が食べる運動を起こせば、最高のメッセージになります。

鈴置:2010年に菅直人内閣が「尖閣」で中国にひれ伏した。あれを見た韓国人は「じゃあ、我が国も日本にもっと強く出て大丈夫」と思って「竹島上陸」や「慰安婦の像」、あるいは「日王への謝罪要求」など日本叩きに転じました。

 一方、中国と領土問題を抱える東南アジアの人々は「日本は頼りにならないな」とがっかりしました。

伊藤:本当にそうなのです。絶対に安易に中国に妥協してはなりません。何度も申し上げたように、日本人へのさらなる暴行を誘発するし、東南アジアの人々の日本への敬意を裏切るからです。

伊藤澄夫社長は2004年に出版した著書『モノづくりこそニッポンの砦 中小企業の体験的アジア戦略』でアジアや企業経営、日本の政治に関するユニークな意見を縦横無尽に語っています。購入希望者は伊藤製作所のホームページをご覧下さい。
著者プロフィール

鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)

鈴置 高史 日本経済新聞社編集委員。
 1954年、愛知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。
 77年、日本経済新聞社に入社、産業部に配属。大阪経済部、東大阪分室を経てソウル特派員(87〜92年)、香港特派員(99〜03年と06〜08年)。04年から05年まで経済解説部長。
 95〜96年にハーバード大学日米関係プログラム研究員、06年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。
 論文・著書は「From Flying Geese to Round Robin: The Emergence of Powerful Asian Companies and the Collapse of Japan’s Keiretsu (Harvard University, 1996) 」、「韓国経済何が問題か」(韓国生産性本部、92年、韓国語)、小説「朝鮮半島201Z年」(日本経済新聞出版社、2010年)。
 「中国の工場現場を歩き中国経済のぼっ興を描いた」として02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。


このコラムについて
早読み 深読み 朝鮮半島

朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は日本経済新聞の編集委員。朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121030/238815/?ST=print  

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コメント
 
01. 2012年11月03日 13:59:12 : 6kuobrWeYc
この伊藤とか言うウヨ社長だが、
過去にあったインドネシアやタイの反日暴動を知ってるのかね(笑)

フィリピンは日本と同様従米国家だが、従米は従米を好むということかな。
類は友を呼ぶ?


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