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米国の無人機による新たな軍事行動について
http://www.asyura2.com/12/warb10/msg/423.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 10 日 23:35:13: cT5Wxjlo3Xe3.
 

 
米国の無人機による新たな軍事行動について
矢野 哲也
はじめに
2001年 9月の米中枢同時テロ以降、米国は対テロ戦争という今までにない新たな種類の
戦争に直面し、それは既に10 年を超える長期戦の様相を呈するとともに、未だその出口す
ら見出せない状況にある。このような中で 2010 年 4月上旬に、ニューヨーク・タイムズや
ワシントン・ポストといった主要紙は、オバマ(Barack Obama)政権がイエメン国内に潜
伏中のイスラム過激派で米国人聖職者のアンワル・アル・アウラキ(Anwar al-Awlaki)容
疑者を標的殺害(targeted killing)の対象に認めたことを報じた1
。それによれば同容疑者
は、米国が捕獲又は殺害の対象とする国際テロ組織アルカイダに関係したテロリストとして、
米国籍を有するにもかかわらず今回初めて米中央情報局(Central Intelligence Agency,
CIA)及び軍の標的リストに新たに加えられたものである。そして政府関係者の見解によれ
ば、国家に差し迫った脅威を及ぼす個人又は組織に対する軍事力の行使は、国際法やアル
カイダに対する軍事力の行使を認めた議会の容認するところであり、標的リストに掲載され
た個人は米国の軍事上の敵対者であって、政府が禁じている政治的暗殺には当たらないと
される。また更に今回、米国籍の保有者を標的リストに加えたことが、国家安全保障会議
(National Security Council, NSC)の承認に基づくものであることも明らかとなっている2

この政府の措置に対し、国内で最も影響力を有するNGO 組織の一つである米国自由
人権協会(American Civil Liberties Union, ACLU)は、大統領あてに今回の政府の決
定に反対する内容の書簡を送付した。それによれば今回の政府決定は、国際法及び米国
憲法に抵触するとともに、国際人道法は個人が敵対行為に参加することを阻止する場合を
除いて標的殺害を禁じており、また米国が世界のいかなる場所でも疑わしい敵に対する無
人機又は他の手段による軍事力行使の正当性を主張するならば、他の国が米国内で同様の
行為を行うことも正当化されるであろうとしている3
。また更に ACLUは、その後同じ NGO
組織の憲法権利センター(Center for Constitutional Rights, CCR)と共同で同年 9月に、
1 “U.S. Approves Targeted Killing of American Cleric,”New York Times, April 6, 2010 <http://www.
nytimes.com/2010/04/07/world/middleeast/07yemen.html>;“Muslim Cleric Aulaki is 1st U.S. Citizen on
List of Those CIA is Allowed to Kill,”Washington Post, April 7, 2010 <http://www.washingtonpost.com/
wp-dyn/content/article/2010/04/06/AR2010040604121.html> いずれも2011年 4月28日アクセス。
2 “U.S. Approves Targeted Killing of American Cleric,”New York Times, April 6, 2010.
3 Anthony D. Romero, letter to President Obama, April 28, 2010 <http://www.aclu.org/files/assets/2010-4-
28-ACLULettertoPresidentObama.pdf> 2011年 4月28日アクセス。20
防衛研究所紀要第 15 巻第 1号(2012 年10月)
アウラキ容疑者の父親を原告に立てて大統領、CIA 長官及び国防長官を相手取り、超法
規的政策としての標的殺害が国際法及び米国憲法を脅かすものとする認定を求めて連邦裁
判所に提訴したが、裁判所は原告が法的地位を有さないこと及び標的殺害が裁判になじま
ない政治問題であることを理由に同年12月に訴えを却下した4
。そして2011年9月30日の
イエメン・米国両政府の発表によれば、アウラキ容疑者はアルカイダのインターネット誌編
集者である急進的米国人とともにイエメン国内で CIAによる無人機からのミサイル攻撃を
受けて殺害されるに至ったのである5

以上のように最近の対テロ戦争の一環として、CIAと軍が共同して行うようになってきた
標的殺害とはいかなるものであろうか。これに関して赤十字国際委員会のニルス・メルツァー
(Nils Melzer)法律顧問は、国際法の観点から標的殺害を考察した最近の著書の中で次
のように定義している。即ち、@殺害を目的とした武力の使用であること、A殺害のため
の企図、事前計画及び審議がなされること、B標的は個別に選定された個人であること、
C肉体的拘束(刑事手続き上の身体の勾留)は行わないこと、D国際法上の問題に起因
して実施されること、の以上 5つの構成要件を具備する行為が標的殺害であるとの考えを
示し、この考えは国連人権理事会が 2010 年5月に公表した標的殺害に関する調査研究報
告書(以下、同報告書を作成した特別報告官の名前に因んで「アルストン報告」と略)に
おいても引用されている6
。なお CIAの共同実行部隊である軍について見るならば、統合参
謀本部の軍事用語辞典(2011年1月31日改訂)、統合特殊作戦ドクトリン及び軍事目標選
定に関するマニュアルのいずれにおいても、標的殺害に関する定義付けはなされていない7

4 “Court Dismisses Targeted Killing Case on Procedural Grounds without Addressing Merits,”ACLU
Press Release, December 7, 2010 <http://www.aclu.org/national-security/court-dismisses-targeted-killingcase-procedural-grounds-without-addressing-merits> 2011年 4月28日アクセス。
5 “U.S.-Born Qaeda Leader Killed in Yemen,”New York Times, September 30, 2011 <http://www.nytimes.
com/2011/10/01/world/middleeast/Anwar-al-awlaki-is-killed-in-yemen.html> 2011年 10月1日アクセス。な
お同紙は、アウラキの殺害が、戦場から遠く離れた米国市民に対し、司法手続を排除するとともに国民や裁判所
から秘匿された基準や証拠に基づいて自国政府によって実行されたものとするACLU 法務部長代理の批判的声明
を紹介している。
6 Nils Melzer, Targeted Killing in International Law, Oxford University Press, 2008, pp. 3-5. メルツァーは、
国家による標的殺害行為(“state-sponsored”targeted killing)に焦点を置いて研究を行ってはいるものの、その
結論として導き出された規範は非国家主体をも拘束するものと述べている。またアルストン報告については次を参
照。“Study on Targeted Killings,”UN Doc. A/HRC/14/24/Add.6, May 28, 2010, p. 5 <http://www2.ohchr.
org/english/bodies/hrcouncil/docs/14session/A.HRC.14.24.Add6.pdf> 2011年 4月28日アクセス(以下、脚注
表記は A/HRC/14/24/Add.6と略)。
7 U.S. Joint Chiefs of Staff, Joint Publication 1-02 Department of Defense Dictionary of Military and
Associated Terms, November 8, 2010 (as amended through April 15, 2012) <http://www.dtic.mil/doctrine/
new_pubs/jp1_02.pdf>; U.S. Joint Chiefs of Staff, Joint Publication 3-05 Special Operations, April 18, 2011
<http://www.dtic.mil/doctrine/new_pubs/jp3_05.pdf>; U.S. Joint Chiefs of Staff, Joint Publication 3-60
Joint Targeting, April 13, 2007 <http://www.bits.de/NRANEU/others/jp-doctrine/jp3_60(07).pdf> いずれも米国の無人機による新たな軍事行動について
21
そして標的殺害において、その中心的な役割を果たし、無人機戦争(Predator drone
warfare)という米国流の新たな戦争様式を生み出す原動力となったのが、技術革新の著
しい無人機の存在である。アルストン報告は、主要国の新たな標的殺害政策に関する考察
の中で、米国のそれを無人機と空爆を主体とする行動様式と規定した上で、CIAによる無
人機プレデターによるミサイル攻撃が 2002 年以降、報告されているだけでも120 回以上
に上っていることを指摘している8
。また『フォーリン・アフェアーズ』誌(2011年 7・8月号)
に掲載されたピーター・ベルゲンとキャサリン・ティーデマンの共著論文によれば、2004 年
から2009 年までにブッシュ(George W. Bush)政権は、パキスタン領内で44回の攻撃を
承認し、40日に1回の割合で実施されたのに対し、オバマ政権になってわずか 2 年以内に、
それは 4日に1回の割合で行われるようになり、敵武装兵の殺害精度は 85%に向上するま
でになっているという9
。米国において標的殺害と無人機が二人三脚の関係で進展してきた
背景には、米中枢同時テロの教訓を踏まえて 2004 年12月に成立した情報改革及びテロ防
止法によって、CIAと国防総省(米中央軍及び米特殊作戦軍)との連携強化が図られてき
た経緯を見逃すことはできない10

いずれにしても無人機による標的殺害をめぐっては、米国のみならず国連においても今や
重要な調査研究の対象とされるとともに、それに関する本格的な議論が関係国政府・研究
機関及びメディアの間で展開されるに至っている。このような国際安全保障環境における新
たな動きを踏まえ、本小論では軍事運用上、既にアフガニスタンやパキスタンにおける主要
な軍事作戦となっている米国の無人機による標的殺害という新たな軍事行動に焦点を当て、
その問題点を明らかにすることによって当該軍事行動の今後の動向を考察する資としたい。
2012 年 7月5日アクセス。
8 A/HRC/14/24/Add.6, p. 7. 米中枢同時テロ発生当時のテネットCIA 長官は、既に 2000 年には空軍とCIA
の間で無人機プレデターの武装化の試みが開始され、その後国防総省との間で指揮通信やミサイル発射権限等
に関する協議を経て、2001年10月7日にはアフガニスタンで最初の無人機による攻撃任務が実行されたとする
証言を同時テロに関する国家委員会の場で行っている(National Commission on Terrorist Attacks upon the
United States,“Written Statement for the Record of the Director of Central Intelligence Before the National
Commission on Terrorist Attacks Upon the United States,”March 24, 2004 <http://www.9-11commission.
gov/hearings/hearing8/tenet_statement.pdf> 2011年 4月28日アクセス)。なお米空軍資料によれば、現在プレ
デター等には射程 7,000 〜 9,000 mの対装甲ミサイル・ヘルファイアー2 機が搭載されている。また、最初の無人
機による攻撃の時期についてアルストン報告は、2002 年11月3日のイエメンにおけるアルカイダ指導者に対するも
のとしている(A/HRC/14/24/Add.6, p. 7)。
9 Peter Bergen and Katherine Tiedemann,“Washington's Phantom War: The Effects of the U.S. Drone
Program in Pakistan,”Foreign Affairs, July/August 2011, pp. 12-13.
10 Richard A. Best Jr. and Andrew Feickert, Special Operations Forces (SOF) and CIA Para-Military
Operations: Issues for Congress, CRS Report for Congress RS22017, December 6, 2006, pp. 3-4 www.fas.org/sgp/crs/intel/RS22017.pdf> 2011年 4月28日アクセス。また情報改革及びテロ防止法については
次を参照。The Intelligence Reform and Terrorism Prevention Act, P.L.108-458, Section 1013.22
防衛研究所紀要第 15 巻第 1号(2012 年10月)
1 無人機による攻撃の問題点
(1)一般市民の付随的被害(collateral damage)
アルストン報告は、標的殺害のための無人機の使用が必然的に標的とされた人物の近
傍に所在する一般市民の無差別殺傷を伴うことから、それが国際人道法上の重大な争点と
なっているとした上で、無人機の性能向上にもかかわらず標的から数千マイルも離隔した場
所に位置する操作チームの情報収集・識別能力には限界があることを指摘している11
。2009
年 8月5日にパキスタン国内で CIA が行った無人機によるタリバン指導者の殺害では、そ
の場にいた親族などを含む11人が死亡する事態をもたらしただけでなく、それに至るま
での 2008 年 6月から1年の間に9 回の未遂に終わった無人機のミサイル攻撃で、その都
度、数人から数十人に及ぶ一般市民の犠牲を生じ、その中には10人の子供と4人の部族
長も含まれていたとされる12
。しかも標的とされたタリバン指導者が、多くの現地住民の集ま
る葬式会場に姿を現すことがあったという不確かな情報だけで、その場にミサイルを撃ち込
むという行為が、イスラムの神聖な宗教儀式を破壊し、現地住民の反感を煽るだけでなく、
親米国家とされてきたパキスタンを反米勢力の側に追いやりかねない重大な結果をもたらす
ことは自明の理であり、専門家が指摘するように今や無人機の使用が紛争を終結させる手
段ではなく、新たな紛争を引き起こす原因となっていると言われても仕方がないのも事実で
ある13
。このような現実が、国際社会の支持を前提とする米国の対テロ戦争の完遂を危うく
しかねないことを、米軍部はどのように認識しているのであろうか。
統合参謀本部は、その軍事用語辞典の中で一般市民の付随的被害に関する定義を合法
的な軍事目標とされない人員又は目標物に対する故意によらない又は偶然の損害とした上
で、国際法の比例原則に基づき、そのような損害が当該攻撃から予想される全ての軍事的
効果に照らし、過度にならない限り違法ではないと規定している14
。つまり現在の米軍では、
軍事的効果との均衡が維持される限り、一般市民の付随的被害は合法的なものとみなされ、
このような考えは現行の攻撃目標決定のための統合ドクトリンと軌を一にしている。なお現
11 A/HRC/14/24/Add.6, pp. 24-25.
12 “The Predator War: What are the Risks of the C.I.A.'s Covert Drone Program?”New Yorker, October 26,
2009 <http://www.newyorker.com/reporting/2009/10/26/091026fa_fact_mayer> 2011年 4月28日アクセス。
13 Ibid. ベルゲンとティーデマンによれば、米国の無人機攻撃に対するパキスタン民衆の支持は極めて低く、2009
年のギャラップ調査ではわずか 9%が、また 2010 年のニューアメリカ財団の調査でも支持率は10%に止まっている
(Bergen and Tiedemann,“Washington's Phantom War,”p. 14.)。
14 U.S. Joint Chiefs of Staff, Department of Defense Dictionary of Military and Associated Terms, November
8, 2010 (as amended through July 15, 2011), p. 58 <http://www.dtic.mil/doctrine/new_ pubs/jp1_02.pdf>
2011年 8月11日アクセス。米国の無人機による新たな軍事行動について
23
行のドクトリンは、「攻撃目標決定における法的考慮事項」という項の中で、武力紛争法上
の軍事的必要性、不必要な苦痛の禁止、目標の識別と併せて上記の比例原則を取り上げ、
それについて次のように規定している。
比例原則は、司令官に対し軍事作戦に起因するものと合理的に考えられる一般
市民の人命損失や財産損害と、得られる軍事的効果とを比較考量することを求めて
いる15

ところが、これを5 年前の旧ドクトリンと比較するならば、そこに興味深い改訂がなされ
ていることに気付く。即ち旧ドクトリンでは、その表題が「攻撃目標決定における国際法と
法的考慮事項」とされて「国際法」という文言が「法的考慮事項」とともに明記されるとと
もに、同項の配列が現行ドクトリンの附則第 E 項ではなく冒頭の第 A項とされ、更には比
例原則に関して、得られる軍事的効果に比べて一般市民の付随的な被害が過大となること
を禁じる旨の一文が明記されていたのである16

つまり旧ドクトリンは、比例原則が司令官の判断を拘束する規範であることを明言してい
たといっても過言ではない。また旧ドクトリンの翌年1月に制定された攻撃目標決定のため
の情報支援に関する統合ドクトリンも、「攻撃目標決定における武力紛争法と交戦規則の考
慮事項」という項において、一般市民の財産の意図的な破壊は軍事的必要性の求めるとこ
ろではなく、敵対行為に参加していない一般市民に対する直接かつ意図的な攻撃を禁じる
旨を明らかにしており、このような考えが当時の国際法に対する軍の共通の認識であったこ
とを示している17
。この意味からするならば、現行ドクトリンが比例原則を司令官の努力規定
に止めたことは、軍の国際法に対する考えの明らかな後退を示す以外の何物でもないであ
ろう。因みに米軍とは対照的に国連のアルストン報告は、その勧告意見の中で個々の攻撃
行動においても比例原則の順守状況の検証が確実に行われ、また軍事作戦が進行中であっ
ても一般市民の付随的被害が過大となることが明らかとなった場合には、作戦の中止又は
延期を可能とする手だてを確立すべきであるとの考えを明らかにしている18

15 U.S. Joint Chiefs of Staff, Joint Publication 3-60 Joint Targeting, April 13, 2007, E-1 <http://www.bits.de/
NRANEU/others/jp3_60(07).pdf> 2011年 4月28日アクセス。
16 U.S. Joint Chiefs of Staff, Joint Publication 3-60 Joint Doctrine for Targeting, January 17, 2002, A-1
<http://www.bits.de/NRANEU/others/jp3_60(02).pdf> 2011年 4月28日アクセス。
17 U.S. Joint Chiefs of Staff, Joint Publication 2-01.1 Joint Tactics, Techniques, and Procedures for
Intelligence Support to Targeting, January 9, 2003, F-2 <http://www.fas.org/irp/doddir/dod/jp2_01_1.pdf>
2011年 4月28日アクセス。
18 A/HRC/14/24/Add.6, p. 29.24
防衛研究所紀要第 15 巻第 1号(2012 年10月)
そして、このような軍の国際法に対する考えは依然として変化の兆しを見せてはいない。
2005 年に国防総省が策定した無人機システムに関するロードマップは、対テロ戦争におけ
る無人機を使った軍事作戦の問題点として、過大な作戦要求に起因する無人機運用上の部
隊間の対立や天候・気象が無人機に及ぼす影響などを取り上げてはいるものの、攻撃に伴
う一般市民の付随的被害については全く触れていない19
。また陸海空の各種無人システムに
関する2009 年のロードマップにおいても、国防総省は無人機システムによる兵器運用には
多くの問題があることを認めながら、それがもたらす一般市民の付随的被害による影響に
ついては全く言及していない20
。はたしてアルストン報告に代表されるように、無人機の攻撃
に伴う一般市民の付随的被害が今や国際問題化するに至っているにもかかわらず、対テロ
戦争の完遂という理由から、それを過小評価することは結果として作戦上の利益を追求す
るあまり、戦略上の不利益を被る事態を招くことにならないであろうか。
(2)友軍に対する誤射(friendly fire)
タリバンの武装勢力との戦いが繰り広げられているアフガニスタン南部のヘルマンド州に
おいて、2011年 4月6日米軍で初めて無人機の友軍に対する誤射事件が生起し、海兵隊
兵士 2 名の死亡が明らかにされた。報道によれば、死亡した 2 名は軽装甲車による巡回パ
トロール中に、それをタリバンの武装勢力と誤認した空軍の無人機によるミサイル攻撃を受
けたものであり、現地の国際治安支援部隊によれば今後正式な事故調査が行われる予定
という21
。米軍は、友軍に対する誤射を次のように規定している。
人員損耗報告のうち、敵と交戦する味方部隊の過失又は偶然の行為によって死亡
又は負傷した兵士に適用される損耗状況であり、当該兵士は敵部隊に対する射撃を
受けるか又は敵部隊と認識されていたものである22

なお湾岸戦争時の友軍に対する誤射を研究したチャールズ・シュレーダー(Charles R.
19 U.S. Department of Defense, Unmanned Aircraft System (UAS) Roadmap 2005-2030, August 4, 2005,
pp. 68-69 <http://www.fas.org/irp/program/collect/uav_roadmap2005.pdf> 2011年 4月28日アクセス。
20 U.S. Department of Defense, FY2009-2034 Unmanned System Integrated Roadmap, April 6, 2009, p. 10
<http://www.acq.osd.mil/psa/docs/UMSIntegratedRoadmap2009.pdf> 2011年 4月28日アクセス。
21 “Predator May Have Killed Marine and Sailor,”Air Force Times, April 12, 2011 <http://www.
airforcetimes.com/news/2011/04/ap-predator-Friendly-fire-deaths-afghanistan-041211/>;“Report:
Drone Missile Killed Marine, Sailor,”Air Force Times, April 11, 2011 <http://www.airforcetimes.com/
news/2011/04/marine-casualties-investigation-friendly-fire-041111w/> いずれも2011年 5月10日アクセス。
22 U.S. Joint Chiefs of Staff, Department of Defense Dictionary of Military and Associated Terms, p. 149.米国の無人機による新たな軍事行動について
25
Shrader)退役陸軍中佐によれば、航空機による地上部隊への誤射が最も一般的かつ甚
大な被害をもたらすものとされ、湾岸戦争においては総数 28 件中 9 件がそれにより、被
害は死亡 11名(総数 35 名)、負傷15 名(同 72 名)という結果をもたらすに至ったとされ
る23
。そして同中佐によれば、友軍に対する誤射の原因は攻撃目標の誤認によるものの、そ
れ以外に地形・気象、視界、作戦の規模、進化した技術といった物理的影響や兵士の不
注意、戦闘ストレス、訓練不足、火力統制・調整の欠如といった人為的なミスが複合的に
関係しているとされる24
。それでは今回、米軍で初めて起きた無人機による誤射事件に関し、
軍は今までその危険性をどの程度認識していたのであろうか。この点については、前掲の
2005 年に策定された無人機システムに関するロードマップにおいて指摘された問題点が参
考になるものと思われ、その概略については次の通りである。
• 限られた部隊と過大な作戦要求が、無人機の主要な役割である偵察と射撃のいずれ
を優先させるかという対立を招いている。
• 気象(特に強風)が、軽量な無人機の作戦の制約となっている。アフガニスタン南西
部の 70ノット(時速約130km、秒速 36m)の風は、ほとんどの無人機の機能低下を
もたらし、砂嵐はグローバル・ホークを除く無人機のセンサー機能に障害を与えている。
• 多種多様な無人機を同時にシステムとして運用する能力を有する反面、利用できる周波
数には制限がある。
• アフガニスタン、イラクにおける無人機システムを使った統合作戦を通じ、無人機によ
る情報収集を優先した一元的な指揮統制が必要である。
• 無人機システムの統合とその相互運用性の向上に向けた取り組みが必要である。
• 頻繁な通信干渉とそれによる無人機との連絡交信の喪失という事態は、敵よりも味方
からもたらされている。
• 市街戦では短距離間の通信能力にも制約を受け、目視による偵察すら困難となる。ま
た状況が急変するため常にデータ情報を更新しない限り、戦場における状況認識は役
立たない25

今回の事件にいかなるミスが影響しているかという点については、今後の事故調査の結
果を待たなければならないが、上記のような問題点は既にシュレーダー元中佐が指摘して
23 Charles R. Shrader,“Friendly Fire: The Inevitable Price,”Parameters, Vol. 22, No. 3, Autumn 1992,
pp. 29-32.
24 Ibid., pp. 38-40.
25 U.S. Department of Defense, Unmanned Aircraft System (UAS) Roadmap 2005-2030, pp. 68-69.26
防衛研究所紀要第 15 巻第 1号(2012 年10月)
いた物理的影響や人為的ミスの延長線上に位置するものといっても過言ではないように思
われる。即ち偵察と射撃の優先順位をめぐる対立は、前者に時間をかければ敵に察知さ
れ、逃走の機会を与えてしまうことから、発見から射撃までの所要時間を短縮するために
は、偵察に万全を期する余地はなくなり、必然的に敵味方の識別が疎かにならざるを得な
い。また気象の影響は、味方部隊の識別標記を見えにくくするであろうし、周波数の制限
は多種多様な無人機の同時運用を困難にするに違いない。さらに味方からの頻繁な通信干
渉は、無人機の操作員に誤った射撃判断をもたらす原因となるかもしれない。そして、恐ら
くこれらの要因が複合的に作用し、いつの間にか海兵隊員をタリバン兵と誤認したまま射撃
が実施されてしまったのであり、シュレーダー元中佐の指摘は19 年間も生かされることはな
かったと言わざるを得ない。
しかも、今回の事件が空軍と海兵隊という異なる軍種間で起きたことを考えるならば、
友軍に対する誤射について軍の認識は必ずしも十分とは言えないように思われる。イラク、
アフガニスタンにおいて、陸海空軍及び海兵隊からなる統合作戦を行ってきた米軍にとって、
指揮通信が交錯する作戦地域の実相を踏まえるとき、各軍が保有する無人機システムの統
合一元化は喫緊の課題と言える。国防総省が、2005年の無人機システムに関するロードマッ
プに続いて 2007年及び 2009 年に相次いで陸海空の各種無人システムに関するロードマッ
プを策定し、その統合一元化に向けた将来構想を確立したのは当然の結果と言える。そし
て、このことが無人機による誤射事件の防止に資することは疑う余地がない。しかし、上
記いずれのロードマップのどこにも、友軍に対する誤射についての記述が見当たらないのは
なぜか。しかも誤射を未然に防ぐ前提となる目標識別選定能力が、わずかに各種偵察監
視能力と同じものとして取り上げられているにすぎないのはいかがなものであろうか26
。また、
2007年のロードマップでは無人システムにおける操作員の役割の重要性が強調されてはい
るものの、それはあくまでシステム能力の最大発揮のためとされ、誤射をいかに防ぐかといっ
た観点によるものではない27
。以上のことから誤射に対する軍の認識の低さが、結果として
今回の事件発生の一因をなしているのではないかという疑念を拭い去ることはできず、万が
一それが否定されるならば、今後さらなる同様の事件の発生を防ぐことは容易ではないで
あろう。
26 U.S. Department of Defense, Unmanned Systems Roadmap (2007-2032), December 10, 2007, p. 23
<http://www.fas.org/irp/program/collect/usroadmap2007.pdf>; U.S. Department of Defense, FY2009-2034
Unmanned System Integrated Roadmap, April 20, 2009, pp. xiii-xiv <http://www.acq.osd.mil/psa/docs/
UMSIntegratedRoadmap2009.pdf>いずれも2011年 4月28日アクセス。
27 U.S. Department of Defense, Unmanned System Roadmap (2007-2032), p. 52.米国の無人機による新たな軍事行動について
27
2 新たな軍事行動の問題点
(1)標的殺害の不透明性
本論考の冒頭でも紹介したとおり、オバマ政権が標的殺害を対テロ戦争の正式な軍事
的手段と位置付けていることは疑う余地がないにもかかわらず、米政府はその定義や軍事
行動の準拠となる教義を一切定めておらず、統合参謀本部をはじめとする軍の用語辞典、
ドクトリン及び作戦マニュアルの中に標的殺害という語句を見出すことはできない。標的
殺害に関する政府関係者の公式見解は、国務省のハロルド・クー(Harold Hongju Koh)
法律顧問が 2010 年 3月に行われた米国国際法学会において初めて明らかにしている28

その席で同法律顧問は、無人機を使用した米国の標的殺害行為が、戦争法を含むすべ
ての適用法規に則って行われていると述べた後、それが不法な超法規的殺害(unlawful
extrajudicial killing)に該当するのではないかとの指摘に対し、武力紛争又は自衛権の行
使において攻撃目標は司法手続きに従って付与される必要がないこと、また暗殺を禁じた
国内法規に反するとの批判に対し、武力紛争又は自衛権の行使において敵の上級指導者を
狙った兵器システムの使用は、戦争法に従うことによって暗殺とは見なされないとした上で、
現政権が関与している標的殺害は合法と結論付けている29

しかし、いくらこのように国務省の法律顧問が標的殺害の正当性を主張したところで、そ
の定義や行動の準拠が明らかにされない限り、標的殺害という新たな軍事行動に対する内
外の世論の支持を得ることは難しいのではないだろうか。ましてや無人機の攻撃に起因す
28 Harold Hongju Koh,“The Obama Administration and International Law,”speech at Annual Meeting
of American Society of International Law, Washington, DC, March 25, 2010 <http://www.state.gov/s/l/
releases/remarks/139119.htm> 2011年 5月10日アクセス。またジョン・ブレナン(John O. Brennan)国土安
全保障・対テロ担当大統領補佐官も、2012 年 4月に行った講演で、標的殺害が合法的かつ倫理的であり、ま
たアルカイダ幹部が軍事的価値を有することから標的殺害は軍事的必要性、軍事識別及び比例原則に適うもの
であり、延いてはそれが人道の原則にも沿うものと断言している(John O. Brennan,“The Ethics and Efficacy
of the President's Counterterrorism Strategy,”prepared remarks at Woodrow Wilson International Center
for Scholars, Washington, DC, April 30, 2012 <http://www.lawfareblog.com/wp-content/uploads/2012/04/
WilsonCenterFinalPrepared1.pdf> 2012 年 6月4日アクセス)。
29 暗殺を禁じた国内法規とは、1981年に当時のレーガン大統領によって発出された情報活動に関する行政命令
第 12333 号(Executive Order 12333)を指し、その第 2.11項は暗殺の禁止という表題で、何人も暗殺に関与
し、又はその謀議をしようとする政府のために雇用され、又は行動してはならない旨が規定されている(Executive
Order 12333, U.S. Federal Register, December 4, 1981 <http://www.archives.gov/federal-register/
codification/executive-order/12333.html> 2011年 5月10日アクセス)。しかしながら、暗殺について上記命令は
定義付けをしておらず、米議会調査局の報告資料によれば、それは一般に政治目的のために標的となった個人の
意図的な殺害とされ、平時又は戦時に実行されるかによって解釈が異なるものとされている(Elizabeth B. Bazan,
Assassination Ban and E.O.12333: A Brief Summary, CRS Report for Congress RS20137, January 4, 2002,
pp. 2-4 <http://www.fas.org/irp/crs/RS21037.pdf> 2011年 5月10日アクセス)。28
防衛研究所紀要第 15 巻第 1号(2012 年10月)
る一般市民の付随的被害や友軍に対する誤射事件のもたらす影響は、当該軍事行動によっ
て得られる成果を無にするだけでなく、現地住民や国際世論を敵に回すとともに、部隊同
士の信頼関係に亀裂を生じさせる危険性を含んでいる。そして、このような事態を危惧する
軍関係者の中から、標的殺害のためのガイドライン策定の必要を説く意見が現われてきて
いることは注目に値するものといえるであろう。その一つが、米陸軍空挺師団所属の法務官
であるピーター・カレン(Peter M. Cullen)陸軍大佐による5 項目からなる審査基準の考え
であり、その要点は次のとおりである。
@ 誰を標的の対象とするか
通常、政治指導者は標的とすべきではない。政治指導者を標的とした場合、それ
は政治的暗殺に接近し、米国又は友邦の政治指導者に対する報復攻撃を助長する。
また標的殺害は、米国市民又は米国領内の人物に対して実施すべきではない。
A 作戦はいかなる状況において正当化されるか
標的殺害は、逮捕が不可能又はそれを行うことが米軍兵士等の死傷のリスクを伴う
時の最後の手段とすべきである。
B 誰が作戦を指揮すべきか
多くの米国の標的殺害作戦は CIAによって指揮され、その要員は非戦闘員であり、
彼らのような準軍事要員(paramilitary personnel)を使用することは、その組織が
過去に不法な暗殺に関与していることから法的に問題がある。このことから作戦は、
軍事要員のみによって実施されるべきである
C 標的殺害作戦をどのように実行するか
標的殺害は、常に戦争法に従わなければならない。それは一般市民の付随的被害
を最小限にするために、必要かつそれに比例する軍事力の使用でなければならない。
また特に、背信行為などは禁止される。
D 誰が標的殺害を承認するか
作戦の機密性から、その承認権者は最高位の人物、可能ならば大統領が望ましい。
また標的殺害のプロセスに対するチェック機能及び標的殺害政策に対する国民の支持
を確保するために議会への通告は重要である30

そして最後にカレン論文は、すべての努力が一般市民の付随的被害を局限することに傾
30 Peter M. Cullen,“The Role of Targeted Killing in the Campaign against Terror,”Joint Force Quarterly,
Issue 48, 1st quarter 2008, pp. 26-27.米国の無人機による新たな軍事行動について
29
注され、もしそのような事件が生起した場合、市民の生活の場で活動するテロリストに責任
があることを明確に示さなければならないと述べるとともに、国民が信頼するより一層透明
性の高い標的殺害政策が求められているとの指摘をもって、その結言としている31

なお標的殺害政策の透明性に関して言うならば、米中枢同時テロを計画、実行又は支援
した国家や組織等に対する武力行使の権限を大統領に与えた 2001年 9月14日の上下両
院合同決議をもって、現政権が標的殺害という新たな軍事行動を正当化する根拠としてい
ることは、前掲の国務省法律顧問も明言しているとおりである32
。しかし、このことをもって
標的殺害に関する大統領への白紙委任と見なし、軍事作戦の機密保持の理由を盾に議会
及び国民に対する説明は不要と考えるならば、今まで官民が一体となり国家一丸となって取
り組んできた米国にとって、対テロ戦争の意義を政府自ら否定することにならないであろう
か33
。この意味から、前掲のカレン論文が標的殺害に関する議会への通告の重要性を審査
基準の末項で指摘したことは、透明性の確保という観点から不可欠と言えるであろう。また、
併せて標的殺害を捕獲不能な場合等における最後の手段とすることや戦争法を遵守し、一
般市民の付随的被害の局限に努めるとしていることも標的殺害の正当性の確保につながる
のみならず、当該政策の透明性の向上に資するに違いない。
一方、同論文は CIA要員を除外した軍事作戦を提唱することで、暗殺を禁じた国内法
に抵触するとの疑義を払拭し、その法的正当性の向上を図ることを提言している。しかし、
その実行可能性については疑問の余地が残らざるを得ない。なぜなら米中枢同時テロを契
機に、対テロ戦争という共通目標の下に緊密な連携関係を構築してきた軍とCIAにとって、
標的殺害作戦はそれを象徴する最たるものと言っても過言ではないからである。そして、こ
のような両者の関係は、最近になって一層その緊密度を増してきている。2010 年1月27日
付のワシントン・ポスト紙は、政府の情報として軍の統合特殊作戦司令部(Joint Special
Operations Command, JSOC)とCIA が共同で、イエメン軍と実施した過去 6 週間にわ
たる秘密作戦によって、アルカイダの地域指導者15 名のうち 6 名を殺害したことを伝える
とともに、JSOCとCIA が殺害又は捕獲すべき最重要標的(high value targets)の個人リ
ストを共に整備し、オバマ大統領が承認したイエメン在住の米国人聖職者を含む3 名の米
31 Ibid., p. 28.
32 Koh,“The Obama Administration and International Law.”
33 軍部内からも最近、同様の意見が現われている。それを代表するものとして米陸軍法務官のマックスウェル大佐
は、標的殺害の適法性を担保するため議会は武力行使の権限を大統領に付与した上下両院合同決議を修正し、大
統領は標的殺害を命じる前に明確なガイドラインによる決定に基づき議会に事前通報すべきであり、そうすること
で標的殺害は国民の完璧な信頼を得られるとしている(Colonel Mark David Maxwell,“Targeted Killing, The
Law, and Terrorists: Feeling safe?”Joint Force Quarterly, Issue 64, 1st quarter 2012, p. 129)。30
防衛研究所紀要第 15 巻第 1号(2012 年10月)
国人が CIAの数か月後には JSOCにおいてもリスト・アップされていたことを伝えている34

このように両者の間で緊密に情報が共有され、同一人物が軍とCIAの共通の標的とされて
いる現実を踏まえるならば、カレン論文がその審査基準の第 1項で政治指導者を殺害対
象に加えないとしたことについても、それがいかに実行不可能な要求であるかが理解され
るであろう。まして 2011年 7月に、それまで CIA 長官を務めたレオン・パネッタ(Leon E.
Panetta)氏が国防長官へ、更に同年 9月には国際治安支援部隊(International Security
Assistance Force, ISAF)司令官兼アフガニスタン駐留米軍司令官を務めるデヴィッド・ペ
トレアス(David H. Petraeus)陸軍大将が後任の CIA 長官に就任したことは、そのような
軍とCIAのさらなる関係強化を意味する以外の何物でもない。そして、これらの点からす
るならば、むしろ軍よりもCIAにこそ、議会及び国民に対して大統領の行政命令が禁じた
政治的暗殺と標的殺害との相違を説明する責任があると考えるのは筆者だけであろうか35

(2)新たな戦闘ストレス(whiplash transition)
無人機によるミサイル攻撃を行う米空軍において、その操作を担当する兵士は今までに
経験したことのない無人機操作に特有の新たな戦闘ストレスの脅威に直面していると言われ
ている。米国本土に位置する空軍基地のコントロール・ステーションに居ながらにして、数
千キロも離れたアフガニスタンやイラクで飛翔する無人機を操作してミサイル攻撃を行い、ス
クリーンに映し出された血なまぐさい戦場の光景を目の当たりにした兵士が、操作任務を終
34 “U.S. Military Teams, Intelligence Deeply Involved in Aiding Yemen on Strikes,”Washington Post,
January 27, 2010 <http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/ 01/26/AR2010012604239.
html> 2011年 4月28日アクセス。
35 米国・パキスタン両政府は、2011年 8月27日アルカイダ No. 2の指導者のアテイリャ・アル・ラーマン(Atiyah
Abd al-Rahman)容疑者を 5日前の 8月22日にパキスタン領内で CIAの無人機によるミサイル攻撃で殺害した
事実を公表したが、その細部は明らかにしていない(“U.S. Says al-Qaida No.2 Killed in Pakistan,”Military
Times, August 27, 2011 <http://www.militarytimes.com/news/2011/08/ap-military-al-qaida-no-2-killed-inpakistan-082711/> 2011年 9月2日アクセス)。なおワシントン・ポスト紙(電子版)は、アル・ラーマン容疑者
が既に 2010 年、無人機攻撃で殺害されているにもかかわらず、米政府及びアルカイダ双方とも、それを認めてい
ないとするAP 通信記事を紹介している(“As US Hopes for Defeat of al-Qaida, Officials Say Group's No. 2
Leader Killed in Pakistan,”Washington Post, August 28, 2010 <http://www.washingtonpost.com/politics/
us-official-says-al-qaidas-second-ranking-leader-has-been-killed-in-pakistan/2011/08/27/gIQAEUDgiJ_
story.html> 2011年 9月 5日アクセス)。実際、2010 年 10 月 9 日付のインド英字紙は、同月初旬にアル・
ラーマン容疑者が他のアルカイダ幹部とともに米国の無人機のミサイル攻撃によって殺害されたことを報じてい
る(“Million Dollar Al Qaeda Leader Killed in Drone Attack in Pakistan,”Hindustan Times, October 9,
2010 <http://www.hindustantimes.com/Million-dollar-Al-Qaeda-leader-killed-in-drone-attack-in-Pakistan/
Article-610619.aspx> 2011年 8月28日アクセス)。またベルゲンとティーデマンは、攻撃を記録したビデオテープ
を公開する等より一層透明性を高めることが米国の主張を裏付け、米国を支援するパキスタン政府への民衆の支持
も得られるとした上で、米政府はパキスタンでの無人機作戦の管理責任を CIA から軍に移管すべきであると結論
付けている(Bergen and Tiedemann,“Washington's Phantom War,”pp. 17-18)。米国の無人機による新たな軍事行動について
31
えて帰宅し、今しがた目にした悲惨な光景とは無縁の平和な家庭環境に戻った途端、その
あまりにもかけ離れた環境の激変に精神的ショックを受け、このことが今まで経験したこと
のない新たな戦闘ストレスをもたらすとともに、心的外傷(トラウマ)となって兵士の精神を
むしばんでいるとされる36
。AP 通信のスコット・リンドロウ(Scott Lindlaw)特派員によれ
ば、その原因として、@無人機の操作員が現地の戦闘機パイロットよりも長期の勤務環境
に置かれていること、A殺人兵器の操作員という一面と家庭でのよき父親という二つの相
反する人格の間における激変が日常化していること、Bスクリーンを通じてミサイル攻撃に
よる凄惨な現場の一部始終を余すところなく視認できることとされている37
。また無人機に
よる戦争様相の激変に着目する米ブルッキングス研究所のピーター・シンガー(Peter W.
Singer)上級研究員も、それまでの戦争において兵士は家に帰ることも許されず、家族と
再会することもままならなかったのに比べて、無人機を操作する兵士は1時間の勤務で戦
争に従事し、それが済めば帰宅して食卓で家族と団らんするようになった反面、むしろアフ
ガニスタン駐留部隊よりも戦闘ストレスが高く、肉体的かつ精神的な疲労や虚脱感の増幅及
び家族関係の破たんに悩まされているとの問題点を指摘している38

それでは米軍は、このような兵士が直面している新たな問題をどのように考えているので
あろうか。無人機部隊司令官を務め、自らも大学で心理学を専攻した経験を有する米空軍
大佐は、無人機の操作が戦闘機パイロットに比べて、攻撃による凄惨な情景の一部始終を
視認し得る事実は認めるものの、操作員にもたらされるストレスについては、家庭内の問題
が原因であると断言する。そして、その他の幹部もそれ以上詳細に語らないとされる39
。ま
た F-16 戦闘機パイロットの経験を有する別の無人機部隊司令官によれば、攻撃任務を終
えた操作員には軍聖職者(chaplain、キリスト教、イスラム教、仏教等の僧職を有する軍人
が所属する正規の兵科)のカウンセリング等を受ける機会が与えられているものの、カウン
セリングを希望する操作員は極めて少ないことを強調している40
。このような現状を踏まえる
ならば、新たな戦闘ストレスに対する軍の認識は否定的と言わざるを得ない。しかし、それ
36 “Ghosts in the Machine: Do Remote-Control War Pilots Get Combat Stress?”Slate, August 11, 2008
<http://www.slate.com/articles/health_and_science/human_nature/2008/08/ghosts_in_the_machine.
html> 2011年 5月2日アクセス。これに関連して、『Air Force Technology』誌掲載記事(“Come in Ground
Control: UAVs From the Ground Up,”November 17, 2010 <http://www.airforce-technology.com/features/
feature101998/> 2011年 5月2日アクセス)を参照。
37 “Ghosts in the Machine,”Slate.
38 “Interview with Defense Expert P. W. Singer,”Spiegel Online, March 12, 2010 <http://Spiegel.de/
international/world/interview-with-defense-expert-p-w-singer-the-soldiers-call-it-war-porn-a-682852.html>
2011年 4月23日アクセス。
39 “UAV Operations Suffer War Stress,”Air Force Times, August 7, 2008 <http://www.airforcetimes.com/
news/2008/08/ap_remote_stress_080708/> 2011年 4月29日アクセス。
40 Ibid.32
防衛研究所紀要第 15 巻第 1号(2012 年10月)
は果たして操作員個人の問題として片付けられるべきものなのであろうか。
前記シンガー上級研究員は、米 CNNのインタビューにおいて無人機の操作員に特有の
戦闘ストレスであるPTSD(post-traumatic stress disorder)問題が、軍内部で全く注目さ
れていないとする女性下士官の訴えを紹介している 41
。前掲の無人機部隊司令官も、その操
作員が置かれた特異な勤務環境については承知し、部隊として軍聖職者のカウンセリング
等の対策を講じている事実は否定していない。また自らも心理学を専攻した経験を有する
前記空軍大佐は、操作員のストレスを緩和するため、常勤の軍聖職者や心理・精神科関連
要員を部隊に招請したと語るとともに、それと併せて軍聖職者がテキサス、アリゾナ及びネ
バダ州の無人機部隊が駐屯する基地に派遣されたことも明らかにしている42
。これらの事実
を踏まえるならば、かつてコリー・コーナム(Kory Cornum)米空軍大佐が述べたように、
我々は現実の世界で戦争するための数千年に及ぶデータは持ち合わせているものの、仮想
の世界で戦争するためのそれはわずか数年分しか持ち合わせていないことから、新たな戦
闘ストレスはいまだに軍にとって仮想の問題にすぎないのかもしれない 43

しかし、2011年 4月に米軍初の無人機による友軍誤射事件が発生したことは、仮想の
世界の人為的ミスが、現実の世界と無関係ではありえないことを立証するものであり、もは
や軍は、新たな戦闘ストレスを仮想の問題に止めておくことは許されないという現実を認識
すべき時に来ていると言っても過言ではない。今回の誤射事件が起きる7年前の 2004 年
12月に、米連邦航空局に属する民間航空医学研究所は、当時の陸海空軍で運用されてい
た各種無人機の事故を調査し、その中で人為的要因が及ぼす影響について興味ある分析
を行っている。その中で注目すべきは、今回の誤射事件の発生を予言するかのような指摘
が既に行われていたことである。それは、陸軍や海軍の無人機の事故に占める人為的要
因が 21〜 47%に止まっていたのに対し、空軍の無人機プレデターのそれが 67%と他に比
べて高く、しかもその人為的要因の 75%が操作員のエラーに関係していたというものであ
る 44
。つまり、現在行われているプレデターによるミサイル攻撃は、操作員の精神状態の影
響を受ける割合が高く、このことは新たな戦闘ストレスが操作員の正常な判断を妨げる危険
41 CNN,“Remote Warfare Ushers New Kind of Stress,”July 24, 2009 <http://edition.cnn.com/2009/
WORLD/Americas/07/23/wus.warfare.pilots.uav/index.html> 2011年 5月2日アクセス。
42 “UAV Operations Suffer War Stress,”Air Force Times.
43 CNN,“Remote Warfare Ushers New Kind of Stress.”
44 Kevin W. Williams, A Summary of Unmanned Aircraft Accident/Incident Data: Human Factors
Implications, Civil Aerospace Medical Institute, Federal Aviation Administration, December 2004, p. 10
<http://www.uavm.com/images/Accident_DATA_FAA_on_UAVs.pdf> 2011年 5月2日アクセス。なお、分
析の対象となった無人機の機種は、陸軍がハンターとシャドー、海軍がパイオニア、空軍がプレデターとグローバル・
ホークで、プレデターのみがミサイル攻撃機能を搭載し、その他はいずれも偵察機能のみの装備となっている。米国の無人機による新たな軍事行動について
33
要因となり得ることを意味している。そして、このことは取りも直さず、新たな戦闘ストレスと
無人機による作戦行動の関連を否定する現在の軍の認識に再考を促すものと言えるであろう。
軍機関紙である『星条旗』は、2010 年 2月21日にアフガニスタンで発生した無人機等
による民間車両に対する誤射事件に関し、その時の状況として操作員は敵味方の識別情報
の確認に努めたものの、プレデター搭載カメラの性能の限界等によって、識別困難な中で
一方的な思い込みが独り歩きをした結果、タリバンの車両部隊との明確な証拠が得られな
いまま攻撃するに至ったことを伝えている45
。その中で空軍は、事故の原因を攻撃決定の際
に子供が現存していたか否かという点で混乱が生じたこと、及び操作員が今まで戦闘員と
その疑わしい人物とを見分ける訓練がなされてこなかったこととするとともに、新たな事故防
止策として操作員相互によるダブル・チェック体制への移行と、誤解を招く敵味方識別用語
の使用を禁じる旨を明らかにしているものの、そこからは今まで取り上げてきた新たな戦闘
ストレスの影響についての記述を見出すことはできない。
おわりに
無人機による標的殺害の今後の動向を示す事件が、2011年 4月及び 5月に相次いで発
生した。それは、体制転換を目的としたリビアへの軍事介入に米国が武装無人機を投入し
たこと、そして米軍特殊部隊が標的殺害の最優先目標とされてきたアルカイダの最高指導
者オサマ・ビン・ラディン(Osama bin Laden)容疑者を殺害するに至ったことである。
前者について、当時のロバート・ゲーツ(Robert M. Gates)国防長官は、記者会見の席
上、米国が NATO の一員として軍事介入している対リビア作戦への武装無人機プレデター
2 機の投入を大統領が認可したことを明らかにするとともに、同席したジェームズ・カートラ
イト(James E. Cartwright)統合参謀本部副議長は、悪天候を理由に武装無人機が途中
で帰還した事実を公表した46
。そして、今回の決定をめぐる度重なる記者団からの質問に対
し、カートライト副議長が一般市民の付随的被害を念頭に敵味方の識別困難な状況の中で、
45 “Predator Drones: High-Tech Tools and Human Errors,”Stars and Stripes, April 11, 2011 <http://www.
stripes.com/news/predator-drones-high-tech-tools-and-human-errors-1.140744>;“Report Faults Drone
Crews in Attack That Killed Afghan Civilians,”Stars and Stripes, April 11, 2011 <http://www.stripes.com/
news/middle-East/report-faults-drone-crews-in-attack-that-killed-afghan-civilians-1.104815> いずれも 2011
年 5月11日アクセス。なお後者の記事は、民間人が車両に乗車していた兆候を操作員が無視又は軽視したと指摘
している。また前者の記事によれば、軍は今回の誤射事件に関わった操作員に対する処罰や軍法会議については
考えていないとされる。
46 U.S. Department of Defense,“DOD News Briefing with Secretary Gates and General Cartwright from the
Pentagon,”April 21, 2011 <http://www.defense.gov/transcripts/transcript.aspx?transcriptid=4815> 2011年 5
月12日アクセス。34
防衛研究所紀要第 15 巻第 1号(2012 年10月)
より低空から人員を識別できる能力がプレデターに備わっていると説明した後、ゲーツ長官
は次のように述べた。
私は、空爆の主任務が我々の同盟国や友邦に移ったことを大統領が明らかにした
ものと考えている。
そして米国は、これらの武装したプレデターによって控えめな貢献ができるならば、
それを行う積りである。しかし我々は、このことが任務のなし崩し的な拡大につな
がるものとは考えていない 47

つまり、今回の武装無人機の投入を米国は「控えめな貢献」と位置づけ、それが決して
米軍による軍事介入の拡大を意味するものではないことを強調している。しかし果たして、
それは国防長官が述べたような意味しかないのであろうか。むしろ、今まで考察してきた米
国の無人機による新たな軍事行動という観点から見るとき、今回の決定がその重要な転換
点を示す事件と思われてならない。なぜなら、今までの無人機による標的殺害が、対テロ
戦争の一環としてアルカイダ等の指導者を対象としてきたのとは異なり、今回のリビアへの
軍事介入では、それまで有人戦闘機が行ってきたカダフィ政権側の地上部隊や飛行禁止空
域における同政権側の戦闘機、対空戦闘施設等といった正規部隊を攻撃目標としたからで
ある。このことは、それまで行われてきた無人機による標的殺害が、CIAとの共同による
軍の特殊作戦という秘密性、暗殺を禁じる国内法令の抵触の有無や、テロリストに対する
司法手続きの要否等をめぐって論争となってきた、これまでの経緯を踏まえるならば、カダ
フィ独裁体制の転換という大義名分を掲げるリビアへの軍事介入における武装無人機の投
入が、内外に与えた印象は自ずと異なっていたに相違ない。記者会見の席上、ゲーツ長官
が武装無人機の投入はリビア市民の保護という人道上の理由であることを強調していたこと
は、これを裏付けるものと思われる 48

また武装無人機が、有人戦闘機に代わって飛行禁止空域の監視という第一線任務を担う
に至ったことは、もはや対テロ戦争に止まらず、今後あらゆる武力紛争において無人機によ
る戦闘様相が常態化する道筋を切り開いたと言えるのではないだろうか。そして、それを不
可避ならしめた背景には、国防予算の削減を見越した戦争の低燃費化への必然的な動きを
考慮せざるを得ない。即ちオバマ大統領は、既に国防総省に対して今後 10 年間で 4,000
億ドルに上る大規模な予算削減の努力を迫り、それを実現するための方策に取り組むこと
47 Ibid.
48 Ibid.米国の無人機による新たな軍事行動について
35
が、国防総省にとって喫緊の課題であることをゲーツ長官も認めていたのである 49
。国防総
省によれば、3月28日までのリビアにおける軍事作戦の経費は既に 5 億 5,000万ドルに
達し、これに万が一、F-15 戦闘機の損失という不測事態が生起したならば、新たに戦闘
機 1機の補充に7,500万ドルと行方不明となったパイロットの捜索救難(search and rescue
support)に 270万ドルの経費が必要となることから、それよりもコストのかからない無人
機がいかに使い勝手の良い兵器であるかは明らかであり、今回の決定は既に無人機グロー
バル・ホークを偵察任務に投入してきた軍の削減努力のさらなる試みであったと言えるだ
ろう50

そして、リビアにおける武装無人機の投入から10日後の 5月1日深夜、オバマ大統領は
国民に対し、米中枢同時テロの首謀者とされたビン・ラディン容疑者に対する軍事作戦が
パキスタン領内で実行され、銃撃戦の末に同容疑者が殺害されたことを発表した。大統領
は、その中で米国の対テロ戦争がイスラムとの戦いではないこと、また同容疑者の死が対
テロ戦争の終結を意味するものではないことを強調している51
。即ち大統領によれば、米中
枢同時テロに関わった全ての国家、組織又は個人に対する軍事力の行使を議会が承認した
ことをもって、その対テロ戦争の方針は変わらないものとされたのである52

しかし大統領が自ら明らかにしたように、ビン・ラディンに対する作戦は国防長官ではなく、
CIA 長官に対して命じていたのも事実である53
。ビン・ラディン殺害が、米特殊作戦軍司令
部に所属する海軍特殊作戦部隊(SEALs)によって実行されたことは紛れもない事実であ
り、その軍事力の行使が、CIA/military command arrangementというプロセスを経て実
行された点を議会が問題視したのも当然と言える54
。そして、米国による無人機を使った標
的殺害が、CIAと米特殊作戦軍司令部の連携の下に推進されてきたことを振り返るならば、
議会が指摘したように今後も上記のようなプロセスが将来の作戦の手本となっていくことは
間違いないであろう。
またオバマ大統領が、ビン・ラディン殺害後も対テロ戦争は継続されると明言したことは、
裏を返すならばテロ勢力が地球上から一掃されるまで、無人機による標的殺害は終わらな
49 Ibid.
50 Jeremiah Gertler, Operation Odyssey Dawn (Libya): Background and Issues for Congress, CRS Report
for Congress R41725, March 30, 2011, pp. 23-26 <http://www.fas.org/sgp/crs/natsec/R41725.pdf> 2011年 5
月11日アクセス。
51 White House,“Remarks by the President on Osama Bin Laden,”May 2, 2011 <http://www.whitehouse.
gov/the-press-office/2011/05/02/remarks-president-Osama-bin-laden> 2011年 5月6日アクセス。
52 John Rollins, Osama bin Laden’s Death: Implications and Considerations, CRS Report for Congress
R41809, May 5, 2001, pp. 2-3 <http://www.fas.org/sgp/crs/terror/R41809.pdf> 2011年 9月29日アクセス。
53 White House,“Remarks by the President on Osama Bin Laden.”
54 Rollins, Osama bin Laden’s Death, p. 4.36
防衛研究所紀要第 15 巻第 1号(2012 年10月)
いことを意味する。つまり大統領が、イスラムとの戦いであることを否定したところで、そこ
には米国が今まで進めてきたソフト・パワーを具現したストラテジック・コミュニケーション
政策の入り込む余地はない。果たして最新の軍事技術をもって、イスラム世界における反米
主義という思潮を消滅させることは可能だろうか。かつて未来学者のトフラー(Alvin and
Heidi Toffler)夫妻は、その著書の中で流血無き戦争を実現するための有効な手段として
の非致死性兵器(non-lethal weapon, NLW)を紹介し、敵の殲滅を目的としたクラウゼ
ヴィッツに代表される西洋思想から、敵を保全したまま勝利することこそ戦争本来の目標と
する孫子に象徴される東洋思想への発想の転換を提唱している55
。当時の国防総省は、こ
の斬新な考えに注目し、1996 年には NLWを冷戦後の地域紛争に対処するための軍の正
式な政策として採用するに至っている56

生きて捕獲されたテロ指導者は、敵に関する有力な情報源あるいは敵を懐柔するための
手段となる可能性を秘めているにもかかわらず、彼らを一人残らず殺害することは反って報
復をエスカレートさせるだけでなく、標的殺害作戦に伴う付随的被害を被った一般市民の
反米感情をさらに悪化させる危険性を有している。そして今後も米国が対テロ戦争を継続し
ていくことは、本来その終着点となるべきはずの標的殺害が、いつのまにか対テロ戦争を
継続するための新たな出発点となってしまう悪循環をもたらしかねない。そのような対テロ
戦争の迷路に踏み込まないためにも、NLWに関する政策の有効性や将来性に対する更な
る新たな取り組みが、今の米国には必要とされているように思われてならない。
(やのてつや 2 等陸佐 陸上自衛隊第 3 師団司令部法務官、前防衛研究所所員)
(謝辞:本論文の執筆にあたり防衛研究所研究部所員の方々より貴重な御教示を賜りました
ことに対し厚く御礼申し上げます。)
55 Alvin Toffler and Heidi Toffler, War and Anti-War: Survival at the Dawn of the Twenty-First Century,
Little, Brown and Company, 1993, p. 126.
56 U.S. Department of Defense Directive No.3000.3, July 9, 1996 (certified current as of November 21, 2003)
<http://www.dtic.mil/whs/directives/corres/pdf/300003p.pdf> 2011年 5月11日アクセス。なお同指示によ
れば、国防総省は敵を殺さないための非致死性兵器、ドクトリン及び作戦概念が、紛争を抑止し司令官の取
るべき選択肢の幅を広げる政策であると規定している。現在、米軍は、暴徒の接近を阻止するための音響装置
(acoustic hailing devices)や閃光手投げ弾(flash bang grenades)、相手を殺傷しないためのプラスティック
弾(MK19 non-lethal munition)やゴム製粒子手投げ弾(stingball grenade)、車両の突入阻止のためのタイヤ
破壊鋲(caltrops, spike strip)、港湾防衛のための小型船舶侵入阻止索(small vessel stopping entanglement)
等多様な装置をNLWとして実用化している(Joint Non-Lethal Weapons Directorate (JNLWD), Non-Lethal
Weapons (NLW) Reference Book, June 2011, pp. 1-15 <http://jnlwp.defense.gov/pdf/2011%20Public%20%20
Release%20%20NLW%20Reference%20Book%20V1.pdf> 2012 年 6月15日アクセス)。  

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