http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20121110/frn1211101735006-n1.htm
2012.11.10　夕刊フジ

　台湾で１０月末、軍事機密をめぐる中国のスパイ工作が新たに発覚した。台湾では昨年２月にも現役の陸軍少将が機密漏洩（ろうえい）で逮捕されたばかり。中国は過去１０年の中台関係を「平和的発展の新局面を切り開いた」と称賛し、沖縄県・尖閣諸島問題では台湾に「対日共闘」を呼びかけている。その裏側で行われていた情報工作は、宥和姿勢の一方で武力行使の準備を片時も怠らない中国当局の冷徹さを改めて印象付けた。（田中靖人）

　■あわや重大情報が

　台湾の国防部（国防省に相当）は１０月２９日、海軍大気海洋局の政治作戦処元処長の退役海軍中佐（４５）ら退役将校３人を中国への情報漏洩の疑いで９月に逮捕し、起訴していたことを明らかにした。大衆紙、蘋果（リンゴ）日報の報道を受けての公表だった。

　大気海洋局は海軍司令部の直轄機関で、潜水艦の行動に不可欠な台湾周辺海域の海底地形や潮流、塩分濃度など機密度の高い情報の収集を担当する。同紙は、これらの情報が中国側に渡った場合、「開戦すれば台湾の潜水艦は確実に撃沈される」とする海軍関係者の証言を紹介していた。直接の交戦に至らない場合でも、潜水艦や機雷による海上封鎖を容易にするため、輸出入の９９％以上を海上輸送に頼る台湾にとっては重大な脅威となる。国防部は直ちに記者会見を開き、「機密の漏洩はない」と強調した。

　■処遇に不満？

　地元紙などの報道を総合すると、元中佐は同処長時代の２０１０年末にマレーシアに旅行した際、知人の元大尉を通じて中国当局の要員と接触。今年５月に退役し、６月にベトナム、８月には中国の福建省アモイや福州を旅行したことが確認されている。

　仲介役の元大尉は、台北市内で飲食店を経営する関係で中国に出かけることが多く、アモイの国家安全部門の工作で中国側のスパイとなっていた。台湾当局は３月に情報を入手して監視を強め、８月の訪中で元中佐が中国側に寝返った確証を得て、逮捕に踏み切った。

　元中佐は自信家タイプとされ、中国側の工作員となったのは、金銭目的だけではなく、在任中に昇任の機会がなく軍に不満を持っていたことが原因とみられている。５月の退役も、中佐として務められる年限の満期を迎えたためだった。

　国防部の説明によると、元中佐は機密に触れる立場になく、漏洩した情報は、アフリカ・ソマリア沖で海賊から漁船を守るための艦艇派遣計画案（未実施）だけだったという。元中佐が処長を務めた政治作戦処の役割は中国人民解放軍の政治部に類似しており、現在は部隊内の監査などが主な任務だ。中国側の狙いは、元中佐を通じてさらに機密情報に近い人物を籠絡することだったとみられる。国防部の羅紹和報道官は「事案が発展中の段階で秘密保護の対策を取ることができた」と摘発の成果を強調した。

　■軍紀の緩み

　だが、相次ぐ軍関係者の不祥事に、野党・民進党は軍と当局の対応を批判。特に、元中佐が退役直後に中国に旅行していたことを問題視した。台湾では法令で、退役後３年未満の元軍人は、訪中の際に内政部（内務省）などの審査を受けなければならず、現役中に機密情報に接した者は１年間から３年間、訪中が認められない。元中佐はこの「管制名簿」に名前がなく訪中が認められたといい、民進党の立法委員（国会議員）は、審査の形骸化や秘密区分に問題があると指摘している。

　台湾の退役軍人の訪中をめぐっては１１年６月、副参謀総長経験者を含む元高級将校２１人が北京で開かれた「第２回黄埔フォーラム」に出席。その際、中国軍高官とのゴルフコンペに参加した上、交流会の席で一人が「国軍（台湾軍）も共軍（人民解放軍）もみな中国の軍隊だ」と発言したと伝えられた。これに対し、馬英九総統が「台湾の人々に対する裏切りだ」と批判するなど、軍紀の緩みが問題になった経緯がある。

　新たな不祥事の発覚を受け、軍当局は信頼回復を迫られている。高華柱国防部長は５日、立法院での質疑で、昨年の現役少将の事件発覚後、海外の駐在武官計５０人を台湾に呼び戻し「嘘発見器」による検査を実施したことを明らかにした。

コメント
01. 2012年11月11日 17:22:12 : aT9tG7aYrY 中共は1949年の大陸占拠以来、国民党が亡命した台湾に侵攻することを国是としてきた。中華民国台湾は蒋介石総統が、逆に大陸光復を目標としてきた。中共は台湾解放を目指し、1954年に金門島に砲撃を開始した。これにより大陳島の維持が難しくなり、1955年2月、中華民国台湾は浙江省大陳島の住民28,000人の撤退作戦を遂行した。これが「大陳島撤退作戦」である。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%99%B3%E5%B3%B6%E6%92%A4%E9%80%80%E4%BD%9C%E6%88%A6 1958年8月、中共は金門島に激烈な砲撃を加えてきた。中華民国国軍の犠牲が大きく、アメリカは緊急軍事援助を実施した。これにより中華民国国軍は金門・馬祖島の防衛に成功した。中共の砲撃は1979年まで続いた。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E9%96%80%E7%A0%B2%E6%88%A6 中華民国台湾では1987年に戒厳令が解除され、1996年に総統選挙が実施され、李登輝が当選した。2000年の総統選挙では民主進歩党の陳水扁が当選し、中国国民党が初めて野党となった。このような中、これまで対立してきた中共と徐々に雪解けが進んだが、中共の「平和ムード」外交工作に騙されたといえる。日本も同じ手で騙されたのである。 中華民国台湾は、これまで中共とか共匪とか呼んできた共産勢力のことを最近では「中国大陸」と呼び、決して「中華人民共和国」とは呼ばないが、以前よりは緊張が緩和されつつある。そこに心のスキが生まれたといえる。中共は「友好ムード」を巧みに演出し、敵を寝返りさせる。まさに権謀術数の本場だけのことはある。中華民国台湾も最近では経済が発展せず、経済界が大陸に進出して活路を開こうと躍起になっているが、ここにつけ込まれる隙が生まれる。 日本も同じだが、巨大市場として魅力的に見える中国大陸。そこに経済人が次々と訪問する。まるで朝貢外交ではないか。日本人も台湾人も誇りを失ったか。目先の利益に捉われず、誘惑に負けることなく現状打破を知恵を持ち寄って実現すべきである。
02. カノープスへの旅人 2012年11月11日 20:09:55 : kvo3oMLuYPpmI : ObnzX9gnP6 尖閣に於ける「日中」間での対立は、台湾と中国の急速な接近をもたらしたが、中国にとって尖閣を武力や強引な手法で領有するよりも、台湾を合法的（国民投票等）な形で併合した方が遥かに危険度も少ない事は間違い無い。 　尖閣問題の影で中国が狙う真の目的こそ、世界不況に喘ぐ「台湾併合」であると考えれば、この板に書かれた周辺海域の軍事機密は台湾侵攻に際し、必要不可欠な情報と言えるだろう。これは大変な事態となりかねないスパイ事件だ。 　親中派の「馬総統」にとって、一つ間違えれば「反日」どころではない、危険な売国行為に繋がる重大問題でもある。 　経済交流や貿易拡大に伴う「付け込まれる隙」、その意味でも01番氏の見解は、私も全く同感であり強く支持する者だ。

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