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最前線ルポ ニッポンの国境 尖閣問題:無遠慮な言葉と鋭い剣 隠された戦争〜アジアシフト。本音を漏らしたオバマ大統領   
http://www.asyura2.com/12/warb10/msg/438.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 13 日 06:51:49: cT5Wxjlo3Xe3.
 


最前線ルポ ニッポンの国境

2012年11月12日(月)  日経ビジネス特集取材班

 尖閣諸島問題による日中関係の悪化で中国各地に広がった大規模な反日デモ。その後も続く日本製品の不買が日本企業の中国ビジネスに大きな打撃を与え、国境問題も加熱させている。第1部では、中国の反日はどこまで深刻で、いつまで続くのかといった問題意識から、取材班が北京や湖南省長沙、四川省成都など中国の複数都市に入り、取材した。

 そこで感じたのは、日本での想像をはるかに上回る反日感情の強さだった。「日中間で戦争が起きたらトヨタはアフターサービスを継続できるのか」。北京のあるトヨタ自動車系販売店の中国人マネージャーは、来店客から頻繁に聞かれて答えに詰まると嘆いていた。同店舗の10月の販売は通常の4割に落ち込んでいる。

 今回出会った中国人の多くが「日中が戦争をするのでは」という危機感を強く感じていた。日本製品の不買は日本を懲らしめるためだけではない。日中関係の悪化が長期に及び、さらに深刻になる可能性も視野に、日本製品を購入することのリスクを中国の消費者がより強く感じるようになっている。不買の根は相当深い。

 反日デモが暴徒化し、日系企業の施設への破壊活動に発展、その後に日本製品の不買が広がる。2005年、2010年も同様の事態が発生した。このサイクルは日中関係が悪化するたびにこれからも繰り返す可能性が高い。中国で事業を続ける日本企業はこうした前提にたち、中国リスク対策を考え直す必要がありそうだ。

 第2部では北方領土などの国境問題も取り上げた。北方領土には本誌記者が入り、韓国企業が存在感を増している様子などを取材した。

 これらの島を守ることは、領有権やプライド、愛国心の問題にとどまらない。将来の日本経済、将来のわれわれのビジネスに直結する。「領土」問題は「経済」問題でもあるのだ。


特集の読みどころ

企業が直面する変化や課題に多角的に切り込む日経ビジネスの特集。その執筆の動機やきっかけ、誌面に込められたメッセージをお届けします。誌面と併せてお読みいただくことで、理解がより深まる連載です。

JBpress>海外>The Economist [The Economist]
尖閣諸島問題:無遠慮な言葉と鋭い剣
2012年11月13日(Tue) The Economist
(英エコノミスト誌 2012年11月10日号)

東シナ海での日中の対立で、中国が火に油を注いでいるように見える理由


尖閣諸島を巡る日中間の対立はエスカレートしているように見える〔AFPBB News〕

 11月第2週に入って通算3回目の会談を持ったにもかかわらず、中国では釣魚島、日本では尖閣諸島と呼ばれる小さな無人島群を巡る日中の対立には終わりが見えない。それどころか、対立は激しくなっているようだ。

 中国の報道官は、日本の恥ずべき帝国主義の過去を引き合いに出し、日本側に譲歩するよう警告している。島の近海では、毎日のように両国の船舶がにらみ合っている。

 このような状況では、11月5日から日米が共同統合演習「キーン・ソード(鋭い剣)」を始めたことがプラスになるわけもない。これは定期的に行われている海上演習で、今回は日本から3万4000人、米国から1万人が参加し、島の近海で実施されている。少なくとも、演習内容は変更され、侵略された島を奪還する訓練は中止された。

誰のためにもならない緊張状態

 現在の緊張状態はどの国のためにもならず、とりわけ中国にとっては何の利益にもならない。指導部の交代により国内で政治的な不確実性が生じているため、今は隣国にケンカを売るのに良いタイミングとはとても言えない。

 そして、日本も中国の消費者による不買運動や商取引での非公式な制裁に苦しんでいるが、日本の投資家や観光客がおびえていることで、中国も同じように損失を被っている。

 中国は好戦的だという認識は、その他の地域でも中国の国益を損ねている。南シナ海における領有権問題を巡る主張で中国と食い違いを見せている東南アジアの国々は、北方での中国の行動を注視し、軍事費を増強したり、米国との関係を強化したりしている。

 そして、小さいながらも現実的なリスクが存在する。現在の対立が衝突に発展し、衝突が報復を引き起こし、さらなる報復の応酬から戦争に発展するリスクだ。

 しかもこれは、場合によっては、米国をも巻き込む可能性がある。1960年に締結された日米安保条約では、日本が万一攻撃を受けた場合、米国が防衛を援助すると定めている。米国は島の主権について特定の立場を取らないが、島は日本の施政下にあり、それゆえ安保条約の適用対象になると明言している。

 10月後半には米政府の元高官4人が日中両国を訪問し、この点について中国側にくぎを刺している。米国務長官のヒラリー・クリントン氏に対する非公開の報告の中でこの4人は、日中の双方が望んでいないとはいえ、島を巡る「誤解や誤算」が軍事衝突に発展する恐れを懸念していたと伝えられている。

 それでも、中国は紛争を収拾しようとするどころか、危険なまでにヒートアップさせている。対立のきっかけとなった行動――日本政府が9月に3島を民間の所有者から買い取ったこと――に関して、中国は日本側の理由付けを顧慮することさえ拒否した。

 野田佳彦首相の意図は、当時東京都知事を務めていた石原慎太郎氏による購入の動きを阻止することだった。右派の石原氏は日本の主権をより積極的に行使することを望んでいる。中国はこの行動を、日本の領有権を確固たるものとし、現状を変えることが狙いであると捉えた。

 大多数の中国のアナリストは、その後自らの党を立ち上げた石原氏と野田首相が共謀しているのではないかと疑いの目を向けている。

 中国は島の「国有化」に対抗するため、島周囲の「領海基線」に関する主張を申し立て、(軍ではなく)政府の巡視船をさらに頻繁に送り込んでいる。中国外交部は島を巡る状況が「根本的に変化」したと指摘し、日本の船舶を領海から「駆逐」したと主張している。

 つまり中国は、今や日本の主権の主張に異議を申し立てるだけでなく、日本政府による施政についても問題にしているのだ。

日本の軍国主義の復活?

 そんな中、中国軍幹部や外交官は、現在の対立を日本の軍国主義的な過去と結び付けている。中国人民解放軍の中将で軍事科学院の副院長を務める任海泉氏は10月29日、オーストラリアで開催された地域安全保障の会合で、かつてオーストラリアのダーウィンにも爆弾を落としたファシスト国家としての日本の過去に言及した。

 任氏はさらに、中国の影響力を弱めるとともに、中国を封じ込めるうえで日本により多くの責務を負わせるために、米国が緊張を煽っているとの恐れが中国側にあることもほのめかした。

 中国の政府高官や学識者は日本の政治の右傾化について苦々しく不満を述べている。駐英中国大使の劉曉明氏は英フィナンシャル・タイムズ紙(同紙は本誌=英エコノミスト=の株式の一部を所有している)への寄稿の中で、「反軍事ファシズム戦争の結果を否定しようとしている」と日本を非難した。

 日本による占領や戦時中の残虐行為の記憶は、中国ではいまだに鮮明だ。しかし、西側の人間の耳には、ファシズムへの言及は驚くほどの誤解に聞こえる。

 日本が戦争に敗れてから、もう70年近く経った。しばしば機能不全に陥るとはいえ、今では安定した民主主義国になっている。声が大きい右派の国家主義者もわずかながら存在するが、尖閣諸島に関する日本の政策が過去の帝国主義の復活を告げるものだという見解は、不合理に思える。

 中国の強硬路線の理由として、日本のアナリストは尖閣諸島の紛争そのものとは無関係ないくつかの要因に目を向けている。日本が衰退し、米国の関心がそれている今、中国は日米同盟の強さを試したいのだという。

 そして、何より大きな要素として日本のアナリストが指摘するのは、中国の指導部の交代だ。中国共産党中央政治局の関心がほかのことに向かっている機に乗じて、軍などの強硬派が政策を混乱させている、あるいは、このような時には、指導者を目指す者なら是が非でも国家主権を守るというイメージを保つしかないというのが、日本側の見方だ。

見せかけのゲーム

 しかし実際には、この対立を通して、中国側の発言や行動に混乱や分裂の兆候はほとんど見受けられない。その言動には一貫性があり、十分に調整されているように見える。日本にとっては受け入れ難いことだが、もしかしたら、中国の報道官たちの発言は真意そのままなのかもしれない。

 もしかしたら、島を巡る状況が変化した背景には日本の右派の存在があり、対峙しなければならないと本気で考えている可能性がある。中国側から見ても、指導部の交代は大きな意味を持つ。ただしそれは、中国の敵がこれを乗じるべきチャンスと見ているという意味でのことだ。中国は断固たる態度で臨まなくてはならないというわけだ。

 消息通の中国のあるアナリストは、紛争は回避できると今でも考えている。公式に認められていない暗黙の「妥協」が実質的には既に存在し、中国は3島の「国有化」を、日本は中国がたびたび島付近を訪れることを認めざるを得ない状態に至ったというのだ。

 もしそうなら、戦争よりはるかに良いことだ。ただし、両国とも実行に移すことなく、自国が島々を支配しているというふりをしなければならない。これ以上誤解や誤算を招きやすい状況も想像しにくい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36523

アジア・シフト。本音を漏らしたオバマ大統領

第2次政権の外交課題を整理しよう

2012年11月13日(火)  菅原 出

 今回も、前回に引き続き第2期オバマ政権の外交・安全保障上の課題についてまとめていこう。前回は中東における新たなテロの潮流により、中東・北アフリカ地域が不安定化するというリスク。それからイランの核問題がオバマ第2期政権の大きな外交課題になる、という点について触れた。

イラン軍機が米無人機を攻撃

 その後、イランをめぐっては興味深い動きがいくつかあったので紹介しておきたい。一つは、イランの戦闘機が米国の無人機を撃ち落とすべく攻撃を行っていたという事件である。

 「11月1日にイランの領空に近い空域で偵察活動中の米軍の無人機に、イランの戦闘機Su-25が接近し発砲したものの、無人機が無傷で逃げ切る、という事件が起きていた」。11月9日になって米国防総省筋からこの情報が漏れて、欧米メディアの報じるところとなった。恐らく、国防総省は、大統領選挙前にはこの事件を発表することを控えたのではないかと思われる。

 最近、ヒズボラの運用する無人機をイスラエル空軍が撃沈したので、イランはその報復、もしくはそれと同じことをやろうとしたのかもしれない。米国の無人機が飛行していた正確な場所や、イラン戦闘機がどのような攻撃をしたのかなどの詳細についてはまだ明らかにされていない。

 第2期オバマ政権は、イラン核問題をめぐって再びイランとの外交交渉のテーブルにつく可能性が高い。だが、本格的な交渉のためのカードをつくるため、もしくはイスラエルによる空爆の可能性などもあり、イランと米国の間でも相当緊張が高まるような事件が発生する可能性が十分あることも注意すべきであろう。

2010年にイラン攻撃を命じたネタニヤフ

 ちなみに、最近、イスラエルのテレビ「チャンネル2」が、「2010年にネタニヤフ首相とバラク国防長官がイラン攻撃を軍に命じていたものの、当時のイスラエル軍参謀総長と情報機関モサドの長官が反対したことで攻撃が避けられた」というドキュメンタリーを発表して話題になっている。

 これは当時の軍参謀総長だったガビ・アシュケナジ氏やモサド長官だったメイール・ダガン氏、バラク長官やネタニヤフ首相のインタビューまで収録された本格的なドキュメンタリーだけに、世界の注目を集めている。

 それによれば、ネタニヤフ首相は、当時数名の安保チームだけを集めた会議で、軍に対して「set the systems for P-plus」と命じたという。

 これはイランに対する攻撃作戦を早々に開始するので、その準備に取り掛かるように命じたもの。アシュケナジ参謀総長とモサドの長官だったダガン氏は、「戦争を決定する権限は内閣にある。それを無視して首相と国防相で戦争をハイジャックする気か」と猛反発したという。

 バラク国防長官は「結局のところ軍から攻撃任務を遂行するだけの能力がないと伝えられて断念した」という驚くべき証言まで飛び出している。

 ここで注目されるのは、「ネタニヤフ首相が米国に事前に相談なしに攻撃命令を与えていた」という事実である。やはりイスラエルはやる時には米国にも言わずに攻撃をするのだ、という点が改めて確認されたことだろう。

 しかし、それでもイスラエル国内、しかもその安保エスタブリッシュメントの中に、軍事攻撃にこれだけ反発する向きが強いということも興味深い。もっともこの2年でイランの核能力も向上しており、さまざまな状況が変化しているため、イラン攻撃に対する賛否についても当時と現在ではかなり変化している可能性はある。

イスラエル軍公認のドキュメンタリーの意味

 もう1つ注目されるのは、「このドキュメンタリーがイスラエル軍の許可なしには放映されなかった」という点である。実際、軍の検閲により、この事件が起きたのが2010年の正確にいつの時点なのかという情報は明らかにされていない。ということは、「ネタニヤフ首相とバラク国防相が戦争を乗っ取ろうとしたこと。軍事攻撃を一方的に命じたこと、それに軍や情報機関が反対した」という事実を、イスラエル軍は公にしてよい、と許可したことを意味している。

 これは来年1月のイスラエルでの選挙を前にして、軍のエスタブリッシュメントによるネタニヤフなどの強硬派政治家に対する牽制、もしくはメッセージと取ることもできるのではないか。イスラエル国内での、イラン核問題をめぐる内部抗争もますます激化しているわけである。

 いずれにしても、こうしたイスラエル国内の事情も含めて、イラン・イスラエル関係は今後、相当緊張して行くことが確実である。第2期オバマ政権はイランの核開発問題に相当深くコミットして行かざるを得なくなるであろう。

難航必至の米・アフガニスタン安保条約をめぐる交渉

 次にアフガニスタン情勢である。米国は2014年末までにアフガニスタンでの戦闘ミッションを完了し、治安権限を全てアフガニスタン側に移譲する計画を進めている。すでに第1期オバマ政権下で増派された3万3000人の兵力は9月末で撤収を完了。第2期オバマ政権では、残りの6万8000人をどのようなペースで撤収させていくのか、について早々に決定されることになろう。

 また2014年以降、少なくとも10年間は、「戦略的パートナーシップ協定」で合意されているように、米軍はアフガニスタンでの駐留を続ける予定だ。だが、それがどの程度の規模になり、またどんな役割になるかは、今後のアフガニスタン政府との交渉で決定されることになっている。第2期オバマ政権の課題の1つは、「米・アフガン安保条約」をどのような内容にするのか、であろう。

 ここで大きな問題となるのは、米兵の待遇を定める、いわゆる「地位協定」である。日米安保条約でもそうだが、米兵がホスト国の法律で訴追の対象にならないようにするのが米国政府の基本方針である。そうでなければ、米兵がアフガニスタン政府にあらぬ容疑をかけられて同国で裁判にかけられる、という事態を防ぐことはできない。イラクでもこの問題で交渉がまとまらず、結局、米軍は全面的にイラクから撤退することになった。

 本来はあれだけ資金を注ぎ込んで整備した軍事基地を維持し、小規模でもいいので米軍の駐留を続け、イランに対する牽制をしたいところであったが、米国はこの地位協定で満足のいく条件をイラク側に飲ますことができなかったのである。

 当然オバマ政権としては、このイラクでの失敗を繰り返さずに、米国の条件でアフガンでの小規模駐留を続けていくのがベストである。だが、すでにカルザイ政権は「米兵がアフガニスタンの法律の枠外に置かれるのは許されない」と述べており、交渉は難航することが予想されている。

 一方、アフガニスタンの治安は確実に悪化しており、「2014年までにアフガン治安部隊を一人前に育成する」という現在の計画も修正を余儀なくされるだろう。アフガン国軍や警察内部に潜入したタリバンの同調者やさまざまな別の理由から米軍やNATO軍に対して牙をむくいわゆる「インサイダー攻撃」が後を絶たない。今年になってからアフガン軍や警察に殺害されたNATO軍関係者の数はすでに60人に上っている。

 治安が悪化する中で、米軍をどのように撤退させ、アルカイダなどのテロ勢力を押さえ込みながら、この地域でのプレゼンスを維持するか。これだけ一つとっても相当の政治的資源を必要とする大きな課題である。

シリア反体制派の組織化に乗り出したオバマ政権

 シリア情勢も日に日に悪化しており、第2期オバマ政権はさらにこの問題でリーダーシップを発揮することが望まれるだろう。

 最近オバマ政権は、シリア反体制派の支援に関して、さまざまな勢力が反アサド連合に合流し、ますます反体制派の足並みがそろわなくなっていることから、より積極的に反体制派勢力の組織化に乗り出す構えを見せている。

 10月31日にクリントン国務長官が、それまで米国が支援してきた反体制派の1つ「シリア国民評議会(SNC)」への支援を停止することを表明。クリントン長官は、パリに拠点を置くSNCはがシリアの反体制派の利害を代表しているとは言えない、と支援停止の理由を説明した。

 代わりにクリントン長官は、最近各国政府に対し、シリア反体制派の新しい組織の中核を担うべき組織と個人の名前を記したリストを配布したことも明らかにした。要するにイスラム過激派組織の影響力の強い団体を排除して、「アメリカのお気に入り」の団体や個人を特定し、「こいつらを支援してそれ以外のところには支援をしないように」と各国に通達したのである。

 このように米国はより積極的にシリア反体制派内の組織化に一歩踏み込み始めた。オバマ大統領は軍事介入を避ける方針だが、このように政治的に深入りすればするほど、政治的・外交的な資源を投入せざるを得なくなる。シリア情勢はイランの孤立化作戦ともリンクしているだけに、第2期オバマ政権にとって、「イラン核」と「シリア内戦」はセットで対応せざるを得なくなるだろう。

オバマ新政権はどこまで政治的資源をアジアに振り向けられるか

 こうした中で、第2期オバマ政権は中国やアジア太平洋地域への政策も展開しなければならない。すでに第1期オバマ政権はアジア太平洋へのシフトを表明し、第2期政権では本格的にそのリバランシングに向けて資源をアジア太平洋方面に振り向けたいところだ。

 しかし、これまで見てきたように、中東ではリビア、北アフリカから中東にかけて新たなテロ勢力の台頭により治安情勢が悪化している。シリアもさまざまな政治的介入を余儀なくされそうである。アフガンも状況はガタガタだ。そしてイランとイスラエル関係もますます緊張していく。こうした中で、現実的にどれだけ対中政策に政治的資源を振り向けられるか、この点はオバマ第2期政権の大きな課題になるであろう。

 一つ注目したいのは、オバマ大統領がロムニー氏との外交政策をめぐる直接討論の際、「中国の軍事力の増強を懸念しており、オバマ政権がアジア方面へ軍事力をシフトしているのは、この中国の台頭に対するリアクションである」と述べたことである。これは、それまでオバマ政権が「対外的には隠そうと努めてきた」ことである。つい最近もパネッタ国防長官が北京訪問時に、「中国に対抗するために我々はアジア・太平洋に軍事的なプレゼンスを強化しようとしているのではない」と何度も強調していた。

 最近の大統領選挙では、中国に対して強硬姿勢をとることがどの候補者にも重要な要素となっている。そんな「反中比べ」で負けまいとしたためか、これまで「米軍のアジア・シフトは中国を念頭に入れたものではない」と散々説明してきたのをかなぐり捨てて、オバマ大統領は本音を言ってしまったのである。

 いずれにしても、第2期オバマ政権の下で、こうした米軍によるアジア太平洋へのシフトは進むことになり、貿易面では米中摩擦は加熱することになるだろう。しかし、現時点でどこまで軍事的に中国との緊張関係を高める用意があるのか、となると軍事的なエスカレーションは望んでいないというのが本音であろう。中東で政治的な資源がとられれば取られるほど、ホワイトハウスとしては中国に対して厳しい対応は取りにくくなる。このジレンマの構図は基本的に近年ずっと変化していない。

 今後、第2期政権で国務長官に誰が任命されるかも重要になってくるだろう。クリントン国務長官は比較的中国に対しては厳しい態度で臨み、アジア太平洋への米国のプレゼンスを回復する上で重要な外交を展開してきた。今後もこの路線を引き継ぐ国務長官が任命されるかどうかが注目である。

 第2期オバマ政権の下でも、米国が抱える外交課題は盛りだくさんである。日本がどのように思おうが、米国の国家としての優先順位、脅威の認識は日本とは異なる。こうした第2期オバマ政権の現状をしっかりと認識しつつ、どのように米国の限られた戦略資源を、アジアの平和に有利なように使ってもらうか、使わせるかを考えるのが日本の外交当局の役目になるであろう。


菅原 出(すがわら・いずる)


1969年、東京生まれ。中央大学法学部政治学科卒。平成6年よりオランダ留学。同9年アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。国際関係学修士。在蘭日系企業勤務、フリーのジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英危機管理会社役員などを経て、現在は国際政治アナリスト。会員制ニュースレター『ドキュメント・レポート』を毎週発行。著書に『外注される戦争』(草思社)、『戦争詐欺師』(講談社)、『ウィキリークスの衝撃』(日経BP社)などがある。


隠された戦争

この10年は、まさに「対テロ戦争の時代」だったと言って間違いないだろう。そして今、この大規模戦争の時代が「終わり」を迎えようとしている。6月22日、オバマ大統領がホワイトハウスで演説し、アフガニスタンから米軍を撤退させる計画を発表したのである。
米国は一つの時代に区切りをつける決断を下したが、イラクもアフガニスタンも安定の兆しを見せておらず、紛争とテロ、混乱と無秩序は、世界のあらゆる地域に広がっている。そして東アジアでは、中国という大国が着実に力を蓄え、米国の覇権に挑戦し始めたかに見える。
無秩序と混乱、そしてテロの脅威が拡大し、しかも新興国・中国の挑戦を受ける米国は、これから限られた資源を使ってどのような安全保障政策をとっていくのだろうか。ポスト「対テロ戦争時代」の米国の新しい戦争をレポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20121112/239295/?ST=print

 

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