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オバマの外交:「捨てられる」恐怖と「巻き込まれる」恐怖 財政の崖に直面し防衛費削減は必至
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投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 14 日 07:34:12: cT5Wxjlo3Xe3.
 

オバマの外交:「捨てられる」恐怖と「巻き込まれる」恐怖

財政の崖に直面し防衛費削減は必至

2012年11月14日(水)  森 永輔

 オバマ大統領が接戦(得票率は51%対48%)を制し、さらに4年間、政権を率いることになった。オバマ政権を取り巻く外交・安全保障環境は課題が山積だ−−中国の台頭、イランと北朝鮮の核問題−−。これらの問題にどう臨むのか。さらに、民主党政権の誕生以来、一向に安定しない日米関係はどこに向かうのか。「アメリカ世界を読む」などの著書がある川上高司・拓殖大学教授に聞いた。

川上 高司(かわかみ・たかし)氏
拓殖大学教授
1955年熊本県生まれ。拓殖大学教授。
大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。この間、ジョージタウン大学大学院留学。
(写真:大槻純一、以下同)
オバマ大統領がもう4年間、政権を担当することになりました。米国の外交・安全保障政策はこれから、どの方向に向かうでしょう。

 まず2つの前提があると思います。1つは、2期目のオバマ政権のプライオリティは外交ではなく内政、具体的には「合衆国再生」にあることです。オバマ大統領は米国を、建国の父たちの時代のような、経済的に豊かで、規律正しく、世界の模範となる国にもう一度したいと考えているでしょう。そのためには時間がかかる。

 加えて、人口構造が変わってきています。現在の米国民3億3000万人のうち、およそ3分の1を有色人種が占めている。さらに、今年、生まれた赤ん坊の50%強が有色人種です。この傾向は今後も続くでしょう。そうなると、国民の宗教の構成比も変わってくる。現在は人口の80%が聖書に基づく宗派の信徒ですが、イスラム教や仏教、ヒンズー教などの信徒が増える。

 これらのことは、米国の国益を変化させます。大きな流れとして、米国を「孤立」の方向に向かわせるでしょう。

「合衆国再生」が最優先課題

 合衆国を再生させるためにオバマ大統領がまず取り組むのが「統一」です。今回の選挙で白人と有色人種、富める人と貧しい人が割れました。割れかけた合衆国を統一し、豊かになる−−これがオバマ新政権の第1優先目標だと思います。

 もう1つの前提は財政の崖です。米国の防衛費は、財政管理法に基づき今後10年間で5000億ドル削減されます。加えて行政府が打ち出した5年間で2570ドルのカットも実行しなければなりません。これまでのオバマ大統領のやり方から考えて、たいした交渉をすることもなく、防衛費を削減することになるでしょう。

 合衆国再生と防衛費削減という2つを前提に考えると、オバマ大統領は、外交・安全保障上の面倒な問題になるべく「巻き込まれない」ように行動すると思います。

 米国民も「巻き込まれない」ことを望んでいます。ブッシュ前大統領は中東で戦争を続けました。それを止めさせるために4年前にオバマ大統領を選んだ。そして、オバマ大統領のその政策が継続することを望んでいるのです。

オバマ大統領は2012年初頭に新国防戦略を打ち出し、国外の軍事的なプレゼンスを後退させる選択をしました。これをさらに後退させるわけでしょうか。

 事実上、そうなると思います。オバマ大統領はもともとは、冷戦後の米政権が一貫して採用してきた2正面戦略−−同時に生起する2つの大規模戦争に対処する−−を踏襲していました。しかし、新国防戦略でこれを撤回。「1正面プラス(ワンプラス)」戦略へと移行しました。「ある地域で起こる大規模戦争に対処するとともに、もう1つの地域で同時に生起する敵の意志と能力を粉砕する」というものです。例えば、イランと北朝鮮で同時に紛争が起こった場合に、同時に関与することはできないので、優先順位を付ける必要が生じていました。

 防衛費の削減により今後は、1正面の大規模戦争ですら対処が難しくなる可能性があります。従って、同盟国に相応の分担を求めていくことになるでしょう。

G2構想に戻る可能性

そうした前提で、対日政策についてどのような展望をお持ちですか。

 残念ながら、ロムニー候補が勝ってくれた方が日本にとってよかったと思います。防衛力を増やし、対中抑止力を高める方向に向かったのではないでしょうか。

 オバマ政権は、4年前の政権発足当初に言っていた「G2体制」−−米中2カ国が世界の覇権を握る体制−−に戻る可能性が否定できません。これは、日本にとって由々しき事態です。

 先程、米国は孤立化の方向に向かうとうかがいました。それとG2体制との兼ね合いはどう考えたよいでしょう。

 米中による共同覇権に進む可能性があるということです。米国にはもう力もお金もない。中国と仲良くすれば、米国の国益−−経済的権益や米国本土の平和−−は守れるわけですから。同盟国の平和ではなく、米国本土の平和です。オバマ再選でこの傾向が強まったと言えるでしょう。

 中国との関連で言うと、日本は「捨てられる恐怖」、米国は尖閣問題などに「巻き込まれる恐怖」に直面していると考えています。

尖閣問題について、米国は本気で取り組む姿勢を示し始めたように見えます。沖縄近海で実施中の合同演習において、離島奪還作戦の演習に日本以上に積極的でした。

 米国の対中政策と対日政策は別々に決まります。対中では、尖閣問題に巻き込まれたくない。尖閣問題は米国にとって頭痛のタネです。日中に、できるだけもめてほしくない。日米安全保障条約第5条を発動しなければならない事態は避けたい。

 しかし、対日及び他の同盟国向けの政策としては、中国に対して力を見せつけておく必要があります。仮に、尖閣諸島を奪還しなければならない事態が生じて、奪還できなかった場合、米国は韓国や台湾などの信頼を失ってしまいます。そのような事態は避けなければならなりません。

しかし、「中国を刺激しすぎる」との理由で、日本側が離島奪還作戦の演習中止を要請しました。

 日本の姿勢に対して、米国の関係者は怒っています。オバマ政権内で日本やアジアの動向に最も注意を払っているカート・キャンベル国務次官補も非常に怒っていました。前回の日米首脳会談で野田佳彦首相はオバマ大統領に対して「同盟深化」を約束しました。これに対してオバマ大統領も「日本をカウントする」と応じていました。官邸が、この野田=オバマのやりとりをひっくり返してしまったわけです。これは日本にとって非常に憂慮すべき事態です。後々、尾を引くことになるでしょう。

吉田ドクトリンは崩壊した

日本は、オバマ政権に対してどういう方針で臨むべきでしょう。

 尖閣諸島の問題に関して言えば、米国の力なくして、日本が自力で守ることは非常に難しい。米国から捨てられないための努力をしなければなりません。具体的には、いざという時に、米国が安保条約5条を発動しなければならないようなメカニズムを構築する必要があるでしょう。

 どんな政策を取るにせよ、日本の防衛費の拡大は避けられない。それなのに、今は反対の方向に向いています。国を守らなければいけない時に、自衛隊の予算を減らし、人件費も下げている。これでは守れません。

日米でガイドラインを改定する話が進んでいます。

 これは進まないのではないでしょうか。米国は、日本の現政権と議論してもしかたないですから。

11月中に首脳会談を行う調整もしているようですが。

 米国はやりたくないのではないでしょうか。

オバマ政権の対日戦略は、短期的には、総選挙が終わるまで様子見ということになりますね。

 そうですね。今回の総選挙は日米関係をどうするかという点も大きな争点になるかもしれません。日米同盟を強化するのか、それとも、空洞化させるのか。安倍自民党政権が誕生すれば、同盟強化の方向に向かうと考えています。

 日本は、日本の国益に従って戦略を立てる体制を築く必要があります。吉田ドクトリンは既に崩壊しています。戦後まもなくの米国は非常に強く、日本にある基地を使わせてくれるならば、日本を守ることを保証できました。しかし今の米国は財政力も軍事力も相対的に弱くなっています。米国の軍事力に依存した状態で日本の経済を発展させる体制はもう夢でしかありません。これを見直す必要があります。

 具体的には日米同盟を対等なものに持っていくべきでしょう。かつての日英同盟のようなイメージです。

中国がA2AD戦略(注:A2ADは、中国の防衛戦略。中国にとって「聖域」である大陸から約1500マイルまでの海域から、米軍を遠ざけることが狙い。主として、弾道ミサイルや巡航ミサイル、潜水艦の能力を向上させることで実現する意向)を進めているため、沖縄などにある在日米軍基地の性格が変わってきています。日本は、これらの基地を担保にして安全保障を確保するのが難しくなってきているわけですね。かつては成立していた取引が成立しなくなっている。

 その通りです。

日本やアジアに理解のあったクリントン国務長官とキャンベル国務次官補が退任すると言われています。これは日本にどのような影響があるでしょう。

 非常に重大です。後任候補としてライス国連大使、ケリー上院外交委員長、ドニロン国家安全保障担当大統領補佐官などの名前が挙がっています。いずれも欧州に目を向けてきた人ばかりです。対中政策で融和的に出る可能性が高いでしょう。人事の面でも、日本は捨てられることを心配しなければなりません。

核なき世界を改めて目指し、北朝鮮と融和も

中東問題への対応はどうなるでしょう。

 中東問題では、イランの問題にもシリアの問題にも本格的な介入はしないでしょう。

 例えばイランについては、イスラエルと共同歩調を取るでしょう。これは介入するためではなく、イスラエルがイランを単独で攻撃しないように抑えるためです。

 仮にイスラエルがイランの核施設を攻撃して本格的な武力紛争になった場合、米国は、イスラエル軍を本格的にバックアップするために、陸軍を展開して地域戦を戦う、といったことはできないでしょう。バックアップするとしても、リビアで行ったように空爆だけしてすぐに引く、イランの工場や兵器庫をサイバー攻撃する、特殊部隊を派遣してイランのリーダーを殺害する、といった形に留まると思います。

オバマ大統領の核問題への取り組みに注目しておられます。オバマ大統領はプラハ演説で「核なき世界」を提唱し、ノーベル平和賞を受賞しました。もう選挙はないわけですから、歴史に名を残すことに意識を向けるわけですね。


 そう思います。ノーベル平和賞を受賞してからこれまで、大きな進展はありませんし。

 例えば、北朝鮮と融和する可能性があると思います。北朝鮮は米大陸まで届く弾道ミサイル、これに搭載可能な小型の核弾頭を開発しつつあります。アジア情勢に詳しいマイケル・グリーン氏は北朝鮮を既に核保有国とみなしており、従来のやり方で核を廃棄させるのは無理という立場に立っています。オバマ政権もこうした見方に立ち、国交回復に向かうかもしれません。北朝鮮の究極の目的は米朝国交回復ですから、米国は北朝鮮の要求を飲んで、その代わりに核の廃絶を求める。これによってオバマ大統領はポイントを稼ぐことができます。

 これに韓国の大統領選挙がからみます。無所属の安哲秀候補は北朝鮮に対して融和的な姿勢を示しています。仮に同氏が当選すれば、米韓のベクトルが重なることになります。日本にも影響する問題です。


森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長。


キーパーソンに聞く

日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
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