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欧州は中国に寛容すぎる  ギュンター・フェアホイゲン・前欧州委員会副委員長に聞く
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投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 22 日 05:17:47: cT5Wxjlo3Xe3.
 

欧州は中国に寛容すぎる

ギュンター・フェアホイゲン・前欧州委員会副委員長に聞く

2012年11月22日(木)  渡辺 康仁

 欧州が債務危機に揺れる中、EU(欧州連合)がノーベル平和賞を受賞した。危機があぶりだしたのは根深い南北対立や統合の矛盾。欧州経済の行方や中韓との対立を抱える日本のアジア戦略について、ドイツ出身で前欧州委員会副委員長のギュンター・フェアホイゲン氏に聞いた。

(聞き手は渡辺康仁)
EU(欧州連合)が今年のノーベル平和賞を受賞しました。この時期に受賞する歴史的な意味をどう考えますか。


ギュンター・フェアホイゲン
前欧州委員会副委員長。1944年4月生まれ。大学卒業後にドイツ連邦政府に勤務。82年にドイツ社会民主党(SPD)に入党し、83年の連邦議会選挙で初当選。98年まで連邦外交委員会に所属。99年に欧州委員会のEU拡大担当委員に就任。2004年から産業・企業担当委員を務めるとともに、副委員長に選任。10年2月に退任し、現在はドイツ東部のヴィアドリナ欧州大学の名誉教授。(撮影:清水盟貴)
フェアホイゲン:もらうべき組織が受賞したと思います。EUは各地域で何百年も続いた衝突や暴力を乗り越えることができるという素晴らしいロールモデルを世界に示すことができました。EUの前身の共同体ができたのは、2つの悲惨な戦争の後です。苦しい経験から学んで新しい共同体を生み出したのです。

 欧州に平和がもたらされただけでなく、欧州とほかの地域の国々との平和も構築されました。旧東欧の国々も長年続いた共産主義による独裁体制から平和的に近代国家に移行することができました。弾丸が一つも発射されずに国家体制が変わり、旧東欧の国々もEUのメンバーになることができたのです。これはもはや後戻りはできません。

 ノーベル賞委員会がEUを選んだのは喜ばしいことです。最近のEUはローンや保証などお金の話ばかりになっていますが、本来の平和や人間を基盤とした概念であることを人々に思い起こさせることができたのではないでしょうか。

平和賞受賞を意外感を持って受け止めた人もいるのではないですか。政治的な思惑が裏にあると見ている人もいるようです。

フェアホイゲン:政治的な動きが裏にあったことなどあり得ません。しかし、このような決定は政治的な要素も含むものです。1973年にキッシンジャー元米国務長官に平和賞が与えられた時、私は非常に懐疑的に思いましたし、オバマ米大統領が受賞すべきだったのかという声もあります。

 平和賞に異論は避けられないとも言えるでしょう。しかし、平和賞はある組織や人が何かを成し遂げたことだけで与えられるのではなく、今後、素晴らしいことをしてくれるという期待感もあるのではないでしょうか。

 ノーベル平和賞委員会は何を言いたかったのか。EUは素晴らしい組織であることを認め、同時に壊れやすいものだから大事にしてもらいたいというメッセージが込められていたのでしょう。EUは危機だけでなく希望に満ちたものなのです。

 金融危機が続く中で色々な嫌な面も出てきました。EUの中でも弱い立場にいる加盟国に対して政策決定者やより大きな国々の世論が厳しい目を向けたわけです。残念ながら私の国であるドイツの人々も弱い国を悪く言いました。

米国発の批判は受け入れない

 率直に申し上げます。我々は危機を抱えていますが、この危機は欧州の政治システムの危機ではありません。欧州のいくつかの大手銀行が無責任な行動を取り、彼らの貸し出しが十分にコントロールできなかったために危機的な状況が生まれたのです。いくつかの弱い国の予算に関する危機は確かにあります。しかし、ウォール街やロンドンのシティが言っているような欧州全体の危機ではないのです。

 欧州への批判は米国から来ています。そもそも問題が発生したのは米国であり、私は米国のルールによる批判を受け入れません。

ユーロ圏について言えば、金融や通貨政策は1つになりましたが、財政政策はばらばらです。この構造が危機を招いたのではないですか。

フェアホイゲン:EUの危機管理体制は説得力のあるものではありません。そこにはEUの構造的な問題もあるでしょう。しかし、EUは国家ではなく、あくまで独立した主権のある国が物事を決めるのですから避けられない構造的な問題があります。それに加えて、残念ながら政治的なリーダーシップの問題もあり、各国が国益を優先してしまったという側面もあります。

 苦しい経験でしたが教訓も得られました。それは、EUは苦境にあっても壊れることはないということです。市場が何を言っても加盟国を追い出すことはできない。加盟国の予算をより強くコントロールができるようになり、ECB(欧州中央銀行)も積極的に関与しています。我々は状況を把握し、コントロールしていると、市場に明確なメッセージを出していると思います。すぐに危機を克服できるとは思っていませんが、私は非常に楽観的です。

 依然として残っているのは政治的な問題です。我々はより密接につながる欧州が必要なのか、ばらばらな欧州がいいのか。つまり、統合をより深化させるべきなのか、各国の多くの権限を超国家的な機関に移行させるべきかどうかということです。

 ドイツの政府関係者の多くはより密接につながった欧州を志向しています。これに対し、英国などのように緩やかなつながりを主張する国もあります。私は個人的には英国もより統合された欧州の一員になるべきだと思いますが、ほかの国々は英国を置いていっても統合へ向かうかもしれません。

ドイツ政府は誤りに気づいた

危機に対して楽観的とのお話でしたが、ギリシャなどでは国民生活へのしわ寄せに強い反発が出ています。メルケル独首相への反発もあります。本当に楽観視できるのですか。

フェアホイゲン:ギリシャに対する救済パッケージは初めから厳しすぎたのです。様々な前提条件が間違っていたことを私は分かっていました。残念ながらドイツ政府が間違いに気づくのに2年間もかかってしまったのです。非常に不幸なことです。

 これを是正するには違う措置が必要ですが、ドイツではあまりにもお金がかかると懸念の声が出ています。しかし、今ギリシャを救済しないと最終的にはより多くのお金がドイツにもかかってしまいます。ですから今、動くべきです。私はメルケル首相を最も強く非難した者の1人です。

 多くの人のイメージは、ギリシャの一般国民が欧州危機を作った張本人ということでしょう。一般の納税者や年金受給者が欧州危機を作ったと見られています。もちろん、ギリシャの中にも問題があり、予算編成のコントロールが効かなかったのも事実です。

 ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドの人々と比べてもっと大きな責任を持つべきなのは、いくつかのドイツの大きな銀行です。ドイツの銀行が作り上げた問題をギリシャの国民が作ったと、誤った情報が多くのドイツ国民に伝わっています。これは間違ったことです。

 銀行の問題に対しては、より速い対処が必要です。今でも銀行は「too big to fail(大き過ぎて潰せない)」と言われていますが、これはいかがなものかと思います。銀行の監督を欧州で一元化する動きが出ています。これによって銀行を規制する体制ができるはずです。

アジアと欧州は出発点が違う

日本は領土問題で中国・韓国との関係が非常に厳しくなっています。欧州が統合された過程は今後のアジアの参考になりますか。

フェアホイゲン:欧州の統合は同じ価値観を共有していた人々の統合から始まったのです。同じ政治的な信念を共有していた人々でした。それぞれの国は法の原則、人権に関する考え、民主主義などが根強く開花していた国でした。基本的な条件が整っていない地域でこのようなシステムをコピーするのは難しいのではないかと思います。人権や法の原則を尊重しない国がいれば、欧州のような統合は難しいでしょう。

 そもそも欧州とアジアでは出発点が違います。欧州は初めから経済的な統合を考えていたわけではありません。1957年のローマ条約から統合が始まったわけですが、初めから欧州の人を深く統一しようという考えがあったのです。

 アジアでは経済的、政治的な利害関係をうまくバランスするシステムを構築すべきです。貿易だけでなく、貿易を超えるような地域的な協力関係を築けるのではないでしょうか。ただ、EUのような組織をすぐに作り上げることは困難があります。

 もちろん、日本にとって一番大きな課題は近隣諸国とこれから数十年間どういう関係を構築していくかということです。しかし、今まで重要なパートナーだった欧州や米国を忘れないでもらいたいですね。特にEUと日本の関係はまだまだ色々な可能性があると思います。

中国との付き合い方が難しいところです。欧州は中国とどう向き合っていくべきだと考えますか。

フェアホイゲン:率直に申し上げると、中国がEUに対してとっている態度には許せない部分があります。中国に寛容すぎるとも言えるでしょう。EUはもっと強い態度を中国に示すべきです。中国の人権についてもっと強い声を出さなければいけませんし、経済力を政治的な結果を出すために使うべきではないという明確なメッセージも出すべきです。

 グローバルな競争はますます激しくなると思いますが、忘れてはいけないことは、日米欧の先進諸国がグローバル化の流れを作り出したことです。グローバル化は逆戻りすることはできません。

 我々ができるのは競争力を高めることしかありません。それが将来へのカギになります。先進諸国は中国とはコストの面での競争はできません。中国は安い賃金を確保できますし、環境などのコストも考えなくてもいい。中国は競争力を高めるためにコストをどんどんカットしますが、我々はそのような道をたどるわけにはいきません。

 我々は国民の生活をより豊かにしたいと考えています。つまり労働賃金を上げたいのです。スキルを身につけてより良い賃金をもらって、より良い生活をしてもらいたい。コスト競争で我々は負けてしまいますので、ほかの分野で競争力を身につけないといけないと思います。先進国の労働者がより多くのスキルを身につけるには、日本でも欧州でも政治的な枠組みがしっかり構築されなければいけません。

日EUのEPAは双方にメリット

日本とEUはEPA(経済連携協定)の締結が課題です。

フェアホイゲン:日本側が長年、躊躇していましたが、ようやくEUと日本の間にEPAを締結する動きが始まったことは望ましいことです。私は欧州委員会でビジネスを担当していましたので、日欧の実体経済をよく理解しています。EPAが締結されることは双方にとって大きなメリットがあります。すでにEUは韓国とFTA(自由貿易協定)を締結していますので、日本もアグレッシブになってもらいたいと思います。

日本には、フランスやイタリアなど欧州側にEPAへの慎重論があるという見方もあります。

フェアホイゲン:おっしゃる通りです。EUの中には積極的な国も躊躇する国もあるのは事実だと思います。加盟国が多いため、こうした問題はどうしても避けられないのです。すべての加盟国が合意しないとEPAは締結できませんが、絶対に妥協案ができると思います。フランスとイタリアが懸念しているのは自動車でしょう。しかし、両国の私の友人は競争力を高めるしかないと思っています。保護主義は競争力を高めることにはつながりません。


渡辺 康仁(わたなべ・やすひと)

日経ビジネス副編集長


キーパーソンに聞く

日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
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コメント
 
01. 2012年11月24日 22:42:31 : aT9tG7aYrY
欧州諸国はイランの核開発問題については敏感だが、中共問題について鈍感である。日本や台湾、東南アジアはこれとは逆で、中共問題について敏感だが、イランの核開発について無関心だ。やはり欧州から見て、こちらは「極東」と言うだけのことはある。

中国大陸の人権弾圧、頻繁な死刑の執行は人類に対する挑戦であり、重大な問題である。ところが欧州諸国は、自らが経済的に苦しいためか、とにかく商談を進めて自らの工業製品を買ってもらうことしか考えていない節がある。例えばフランスの大手防衛機器・重電メーカーのタレス・グループが、中国大陸に妨害電波送信機を輸出している。これらの送信機は、西側諸国からの短波放送を妨害するために使用されている。フランスは経済が苦しい。このため、目先の利益を得ることばかり優先して政府要人が行動しているのである。

イタリアにしても、中国大陸からの移民が増えている。同国に限らないが、中国大陸からの移民に対し資産の持込を条件に受け入れている。経済力をつけた中国大陸の富豪達が、子供のために惜しむことなく資産をつけて送り出している。これに欧州各国政府が、目先の資産欲しさに次々と受け入れている。この結果、イタリアの都市部は中国大陸の移民が増加し、困ったことになっている。どこでもゴミを捨てて街の景観は台無し。とにかく支那人の評判は現地では悪い。


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