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北朝鮮「全面対決戦に突入した」と宣言 米韓合同軍事演習に反発 
http://www.asyura2.com/12/warb10/msg/768.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 3 月 12 日 01:28:01: igsppGRN/E9PQ
 

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130311/kor13031123270008-n1.htm
2013.3.11 23:26  産経新聞


 【ソウル=加藤達也】米韓両軍が11日、合同軍事演習「キー・リゾルブ」を開始したことに対し、北朝鮮は同日、朝鮮労働党機関紙、労働新聞などを通じて「今日から朝鮮戦争休戦協定が完全に白紙化された」と宣言し、「最高司令官(金正恩第1書記)が署名した作戦計画に基づいて全面対決戦に突入した」「砲身と戦略ロケットが発射を待っている」などと主張。同日、南北軍事境界線上にある板門店の南北直通電話を遮断した。

 同日付の韓国紙、文化日報は軍高官の話として、北朝鮮は東部・豊渓里の核実験場・南側坑道で、実験準備を完了したと報じた。

 キー・リゾルブは昨年並みに韓国軍約1万人、米軍約3500人が参加。ステルス戦闘機や戦略爆撃機、イージス艦も投入し、21日まで演習を実施する。

 韓国では、北朝鮮が近く東海岸の元山付近で大規模な軍事訓練を実施するとの見方がある。聯合ニュースによると、北朝鮮は日本海と黄海に船舶と航空機の航行禁止海域を設定しており、韓国など周辺国は短距離ミサイル発射への監視も強化。韓国軍は黄海の島しょ部への奇襲や船舶への攻撃などの可能性に備え、即応態勢を敷いている。

 ただ、聯合ニュースによると、韓国には北朝鮮について、「ほえる犬はかみつかない」と指摘する国防省高官もいる。別の高官も、北朝鮮が軍事攻撃に踏み切る可能性に関し、「軍事恫喝(どうかつ)をてこに緊張感を極限まで高め、国際的な劣勢を逆転しようとする戦術だ」と冷静に受け止めている。

 こうした中、北朝鮮は11日、板門店の南北直通電話を遮断したが、黄海側の最前線の回線では応答。南北が経済協力事業を行う開城工業団地でも通常通り韓国側からの入境を認めた。


 

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コメント
 
01. 2013年3月12日 05:22:36 : pvbRnSKIY2

キムジョンウン:「ほえる犬はかみつかない」だって?俺はブタだ。トンテジジョンウンと呼んでくれ。

「ブヒブヒ、ブーブー」


02. 2013年3月12日 19:31:20 : YxpFguEt7k
神浦元彰氏
「韓国企業が進出し、北の労働者5万4千人が働く開城工業団地は通常通り操業。年間9千万ドルも外貨を稼ぐドル箱。一切戦争の気配なしの不思議な光景。(韓国の朝鮮日報 3月12日 電子版)

 開城工団は労働党が管理するため。
 平城のバス運行は軍が管理するため迷彩網。北が一枚岩でないことの証明。」
https://twitter.com/kamiura_jp/statuses/311349196617830400

だそうです。


03. 2013年3月13日 00:13:10 : FfzzRIbxkp
2011年3月10日から予定していた「キー・リゾルブ」は、
太平洋沿岸で実施したわけでは、ないですよね。

ただし、空母やイージス艦は、太平洋東北沖に配置していたようですが。


04. 2013年3月13日 13:28:34 : xEBOc6ttRg

米国上院が日本の核武装を論じた

 北朝鮮の核兵器開発への対抗策として浮上


2013年03月13日(Wed) 古森 義久
 米国連邦議会の上院外交委員会で「日本の核武装」が主要な論題となった。熱っぽい討論が繰り広げられた。この展開はこれまでの日米関係の常識では想像もできなかった事態である。私自身、まったく驚かされた。

 米側での日本の核武装論については、つい2週間前の当コラムでも取り上げてはいた。ただし、その事例は前ブッシュ政権の国務次官だったジョン・ボルトン氏が大手新聞への個人としての寄稿論文で言及したことにとどまっていた。ところがその直後の3月7日、今度は立法府の最高機関の上院の、しかも外交委員会という国政の大舞台で複数の議員や新旧の政府高官たちが論議したのである。

 この舞台は上院外交委員会全体が開いた「米国の対北朝鮮政策」と題する公聴会だった。

 この種の外交課題についての公聴会は、同じ上院でも外交委員会の下部に複数ある小委員会の1つが主催することがほとんどである。だが重要なテーマについては母体の委員会全体が主催者となるのだ。ちなみに外交委員会には民主、共和両党の議員合計20人が加わっている。

 この公聴会はタイトル通り、長距離弾道ミサイルの発射や核兵器の爆発の実験を断行し続ける北朝鮮に米国はどう対処すべきかが討議の主題だった。その流れの中で「日本の核武装」というテーマが再三再四、論じられたのである。

北朝鮮の核兵器開発に米国が大きな危機感

 その論議の趣旨を最初に総括すると、以下のようになる。

 「米国は北朝鮮の核武装、特に核弾頭の長距離弾道ミサイルへの装備をなんとしてでも防ぐべきだ。だがこれまでの交渉も対話も圧力も制裁も効果がなかった。いまや北朝鮮の核武装を実際に非軍事的な手段で阻止できる力を持つのは中国だけである。

 その中国がいま最も恐れるのは日本の核武装だ。だから日本の核武装というシナリオを中国に提示すれば、中国は北朝鮮の核武装を真剣になって止めるだろう。

 その一方、北朝鮮が核兵器の保有国として国際的にも認知されるようになると、日本側で核武装への動きが起きかねない。米国政府は核拡散防止条約(NPT)の主唱者でもあり、日本の核兵器保有には反対だが、北の核武装が公然たる現実となった場合には、日本が核を持つ可能性も改めて米側で論議すべきだろう」

 どんな趣旨にせよ、日本の核武装などというシナリオ自体、日本で猛烈な反発が起きることは必至だ。世界で唯一の核兵器の犠牲国という歴史の重みは特記されるべきだろう。非核三原則も生きており、国民の多数派から支持されている。だから現実の国家安全保障という観点からでも、日本の核武装などという言葉には激しい非難が沸くであろう。仮説のまた仮説であっても、日本が核兵器を持つという想定は、それを表明するだけでも犯罪視されかねない。

 ところがその一方、北朝鮮というすぐ近くの無法国家が日本や米国への敵視政策を取りながら、核弾頭ミサイルの開発へと驀進している。米国の政府や議会がその核兵器の無法国家への拡散を必死で阻止しようとしながら思うにまかせず、その事態が深刻になる中で、北朝鮮の核武装への阻止の手段、あるいは抑止の手段として日本の核武装という想定を語る。これまた無視のできない現実なのである。

 北朝鮮の核武装という事態が米国にそれほどの危機感を生んでいることの証左でもある。米側のそうした現実は日本側でいくら反発を覚えるにしても、自国の安全保障政策に絡んで実際に起きている現象として知っておくべきだろう。北朝鮮の核兵器開発は米国にも東アジアにも、そして日米関係にもそれほど巨大なインパクトを投げ始めたということでもある。

東アジア地域で核保有国が続々と出てくる?

 さて、それでは実際に日本の核武装はこの上院公聴会でどのように論じられたのか。2時間半ほどにわたったこの公聴会の模様からその関連部分を拾い上げて報告しよう。

 まず公聴会の冒頭に近い部分で上院外交委員長のロバート・メネンデズ議員(民主党)が日本に言及した。

 「私たちは最近、政権指導者の交代があった日本についても、金正恩政権にどう対処するか、その効果的なアプローチをともに考える必要があります」

 メネンデズ委員長の冒頭発言の後に登場した最初の証人はオバマ政権国務省のグリン・デービース北朝鮮担当特別代表だった。そのデービース代表に委員会側のボブ・コーカー議員が質問する。

 「北朝鮮の核問題では、米国の同盟国である日本と韓国が米国の抑止への信頼を崩さないようにすることが重要ですが、あなたも承知のように、米国はいま核戦力の近代化を進めてはいません。だから日本などが米国の核抑止による保護への懸念を抱くとは思いませんか」

 デービース代表が答える。

 「私は国務省に勤務するので、その問題への十分な答えはできないかもしれませんが、私の知る限り、日本では米国の防衛誓約が危機に瀕したという深刻な心配は出ていないと思います。たぶんオバマ政権の『アジアへの旋回』戦略がその種の心配を抑えているのでしょう」

 この時点から他の議員たちが加わっての意見の表明や質疑応答がしばらく続き、マルコ・ルビオ議員(共和党)が意見を述べた。ルビオ議員は若手ながら共和党側で次期の大統領候補の1人とも目される気鋭の政治家である。

 「私がもし日本、あるいは韓国だとすれば、北朝鮮が核武装を進め、その核兵器保有が国際的に認知された場合、自国も核兵器を保有したいと考えるでしょう。だから北朝鮮の核武装による東アジア地域での核兵器エスカレーションへの恐れは極めて現実的だと思います」

 クリストファー・マーフィー議員(民主党)も日本に言及した。

 「北朝鮮の核武装が公然の現実となると、東アジア地域の力の均衡は劇的に変わるでしょう。10年、あるいは15年後には日本を含め、4カ国、または5カ国もの核兵器保有国が出てくるかもしれない。中国はそんな展望をどう見るでしょうか」

 デービース代表が答えた。

 「中国は日本と韓国での一部での核についての議論には細かな注意を払っています。私は日本でも韓国でも核兵器開発を支持するコンセンサスはまったくないと思います。しかし中国は気にしています」

日本の核武装を極度に恐れる中国

 やがてデービース氏が証言と質疑応答を終え、第2の証人グループとしてスティーブン・ボズワース元韓国駐在大使、ロバート・ジョセフ元国務次官、ジョセフ・デトラニ元6カ国協議担当特使の3人が登場した。

 委員長のメネンデズ議員が北朝鮮の核武装を防ぐ上での中国の重要性を改めて強調した。

 「2005年に北朝鮮がそれまでの強硬な態度を改めて、非核の目標をうたった共同声明に同意したのは、中国が援助の削減をちらつかせたことが大きな原因になったそうですが、これから中国にその種の北朝鮮への圧力を行使させるにはどんな方法があるでしょうか」

 この問いにはジョセフ氏が答えた。同氏は前ブッシュ政権の国務次官として軍備管理などを担当し、北朝鮮の核問題にも深く関わっていた。

 「私自身の体験では中国が北朝鮮に対する態度を大きく変えたのは、2006年10月に北朝鮮が最初の核実験を断行した直後でした。この実験は米国にも東アジア全体にも大きなショックを与えました。

 私は当時のライス国務長官に同行し、まず日本を訪れ、当時の安倍(晋三)首相や麻生(太郎)外相と会談しました。その時、安倍首相らは米国の日本に対する核抑止の誓約を再確認することを求めました。米側は応じました。しかしその後、すぐに北京を訪れると中国側はまず最初にその日本への核抑止の再確認に対する感謝の意を述べたのです。そして米側の要望に応じて、北朝鮮に強い態度を見せました。

 中国は日本の独自の核武装の可能性を心配していたのです。しかし米国が従来の日本への核のカサを再確認したことで、日本独自の核開発はないと判断し、それを喜んだのです。その時、中国は初めて北朝鮮への国連の制裁決議に同意しました。それほど中国は日本の核武装という展望を嫌っているのです」

 マーフィー議員がジョセフ氏に質問した。

 「日本が現在の政策を変え、米国の核のカサから離脱して、独自の核武装能力を開発するという可能性はあると思いますか」

 ジョセフ氏が答える。

 「はい、議員、私はあると思います。それはもし米国が北朝鮮の核の扱いに失敗し、同盟国への核抑止の誓約の明確な宣言を履行せず、ミサイル防衛も十分に構築しないというふうになれば、日本は長年の核アレルギーを乗り越えて、独自の核による防御策を取るだろう、ということです」

 以上が上院外交委員会の公聴会で出た「日本の核武装」についての言葉のほぼすべてである。そのやり取りには、北朝鮮の核武装に始まるいくつかの事態が起きれば、日本は独自でも核武装を真剣に考え、実際にそのための手段に着手する、という見解に集約できるだろう。日本自身が核武装をたとえ望まなくても、中国に対する外交カードとしては使ってほしい、という期待でもあろう。

 日本を取り囲む東アジアの核の現実はこんなところまで進んでしまったのである。


 


 


 

 


 

1銭も使わずに日本の防衛力を大幅増強する方法
いまこそ求められる「平時法制」の見直し
2013年03月13日(Wed) 織田 邦男
 北朝鮮は3月5日、朝鮮戦争の休戦協定を全面的に白紙化すると表明した。6日、北朝鮮労働党の機関紙、労働新聞は「米国が核兵器を振り回せば、我々は精密な核攻撃でソウルのみならずワシントンまで火の海にする」との軍幹部の発言を伝えた。8日には祖国平和統一委員会が「北南間の不可侵に関するすべての合意書を全面破棄する」との声明を出した。

金正恩初の瀬戸際外交


北朝鮮の金正恩第一書記〔AFPBB News〕

 またもや「瀬戸際外交」かと、溜息の一つも出そうだが、今回は要注意だ。経験の浅い金正恩が独裁者になって行う本格的な「瀬戸際外交」はこれが初めてである。

 「瀬戸際外交」には空手で言う「寸止め」が利かねばならない。政権基盤もいまだ固まっていない若い未熟な独裁者では「寸止め」に失敗することも十分にあり得る。いずれにしろ我が国の安全保障に暗い影を投げかけている。

 日本はえてして尻に火が点かなければ、なかなか動こうとしないが、この機に安全保障法制を総点検することを求めたい。

 朝鮮半島でことが起きると、米軍がまず実施するのがNEO(Non Combatant Operation)である。韓国に在住する22万人に及ぶ米国人の救出作戦である。

 我が国も3万人の在韓邦人をどう救出するかという切実な問題がある。国会で議論中の古くて新しい「邦人救出」問題であるが、この件は以前述べたのでここではあえて触れない。(「テロ多発の独裁政権末期、北朝鮮に備えよ」2010.7.20参照)

 米国は軍用機はもちろん、チャーター機、民間航空機など総力を挙げて至短時間に朝鮮半島から米国人を脱出させる計画を立てている。第1避難地は日本になっているので、日本と韓国との間をピストン輸送する形となろう。

 東日本大震災の際にも、放射能被害から逃れるため、関東一円の米軍人家族をハワイ以東に避難させた。在日米軍基地から婦女子があっという間に人っ子一人いなくなったことはあまり知られていない。

 日本海には婦女子を乗せたピストン輸送の航空機が数珠つなぎになっているのを航空自衛隊のレーダーでも確認できることだろう。

 朝鮮半島有事になれば当然、自衛隊も警戒態勢を上げる。日本海にミサイルを搭載した航空自衛隊のF15戦闘機が対領空侵犯態勢強化のため、空中哨戒を続けているに違いない。当然、F15のレーダーには数珠つなぎになったNEOの航空機が捉えられているはずだ。

 その時、F15のパイロットが米婦女子の搭乗する輸送機の後方に接近する北朝鮮のMIG-29を発見したとしよう。近くにいる航空自衛隊F15が当然、MIG-29を撃墜して輸送機を援護してくれると米国人は思っているに違いない。


MIG-29戦闘機(写真はインド空軍のもの)〔AFPBB News〕

 同盟国日本のF15であるし、ミサイルも搭載している。パイロットの技量もはるかに北朝鮮空軍を凌いでいる。MIG-29を撃墜するのは赤子の手を捻るようなものだ。

 結論から言おう。今の法制下では空自パイロットはMIG-29を撃墜することはできない。

 2つ理由がある。1つは撃墜する法的根拠がないこと。2つ目は禁じられている集団的自衛権の行使に抵触するからだ。

 切迫した状況の報告を受けた地上の司令官も「撃墜せよ」とは命令できない。命令すれば違法命令となる。

米国民間人を守った自衛隊のパイロットが裁判で弾劾される

 仮に刑法37条の「緊急避難」という違法性阻却事由を当てはめ、パイロット個人の判断で撃墜したとしよう。パイロットは着陸後、そのまま警察に拘束され裁判にかけられる。結果的には無罪となるかもしれないが、長い裁判が終わるまで休職処分が下され、家族を含め犠牲は大きい。

 このケースが厄介なのは、援護の対象が公海上空を飛行する米軍用機ということだ。まさに禁じられている集団的自衛権行使にも抵触する。パイロットは国のためよかれと思って撃墜しても、結果的には二重に掟を破ることになる。

 またぞろ「自衛官の独走」「シビリアンコントロールの逸脱」と朝野を挙げて大騒ぎとなることは間違いない。

 他方、根拠がないからといって、そのまま婦女子が撃墜されるのを、手をこまぬいて見ていたとしたらどうだろう。間違いなくその瞬間に日米同盟は崩壊する。進むも地獄、退くも地獄、筆者が現役パイロットだった頃、最も怖れていた地獄のシナリオである。

 これは決して荒唐無稽なシナリオではない。明日にでも起きる可能性がある。もし不幸にも予想が的中した時、政府は再び「想定外でした」とでも言うつもりだろうか。

 現役時代、幾度か有力政治家にこのシナリオを話し、法整備を訴えたことがある。いずれも「それは困りますなあ」で終わった。暗に現場パイロットの愛国心、使命感(つまり個人が犠牲になってでも禁を犯して撃墜する)に期待している節があったのを記憶している。

 国家の存亡にも関わるこんな重大な局面を、現場の自衛官の判断に任せていていいはずがない。まして自衛官個人の犠牲的精神に依存するような政治は、もはや政治とは言えない。

 だがこれが現状であり、これこそ「シビリアン・アンコントロール」なのだ。

 安倍晋三内閣はこのほど、集団的自衛権行使容認に向け、第1次安倍内閣で設けられた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を再招集した。この懇談会では以下の4類型について法的整理をして集団的自衛権行使を容認する方向である。

(1)公海における米艦の防護
(2)米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃
(3)国際的な平和活動における武器使用(いわゆる「駆けつけ警護」)
(4)同じ国連PKO等に参加している他国の活動に対する後方支援

絶妙のタイミングで日米同盟崩壊を待つ中国


南沙諸島に中国軍が建設したレーダー施設〔AFPBB News〕

 この4類型は代表的な事例であり、これが認められれば大きな進歩である。だがこの類型に属さない上記のような事例がほかにも多々ある。事態は多種多様であり、一つひとつの事例ごとに容認するのは決して現実的ではない。

 何らかの歯止めをかけたうえで包括的に集団的自衛権行使を容認するのが望ましい。だが、問題の行き着くところは憲法だろう。

 憲法改正を待つのは百年河清を俟つに等しい。だからといって河清を待てるほど、時代は悠長なことを許してくれない。だとしたら、次善の策として最も起こりう得る事例ごと、政治が容認していくしか日本の生きる道はない。

 日米同盟なくして日本の安全保障は成り立たないのは、残念であるが事実である。昨年の9月以降、尖閣周辺で中国の挑戦的活動が続く。

 南シナ海ではベトナムやフィリピンに対して、中国は軍事力を行使して領有権を奪取した。尖閣で中国が控えめなのは自衛隊の実力と共に日米同盟が大きな役割を果たしているのは確かである。

 中国の某高官は「中国にとって最良の日米同盟は絶妙の瞬間に崩壊することだ」と発言した。上記事例のように「絶妙の瞬間に崩壊」しないよう、リアリズムを追求した検討が望まれる。

 日米同盟緊密化のため、集団的自衛権行使容認の解釈変更がなされることを是とした時、次なる問題点が生じる。集団的自衛権が行使できるのに、個別的自衛権が行使できないとは明らかに論理矛盾という問題だ。

 平時において(防衛出動が下令されていない状況)、自衛隊は個別的自衛権さえも行使できない現状を知る人は意外に少ない。政治家でも大多数が知らないのではないか。今、本当に必要なのは「有事法制」ではなく「平時法制」の見直しである。

 尖閣諸島の事例で説明しよう。

 最近の中国海軍の活発化に対し、自衛隊幹部は「中国艦艇に一定の距離で海上自衛隊艦艇が張り付く態勢」を敷いているという。また「こちらから挑発しない一方、付け入るスキを与えない万全の警戒監視を続けることが大切」とも強調する。

 自衛隊幹部の言うことは全く正しい。だが「万全の警戒監視」は領有権を守る「万全の態勢」ではないのも事実である。「一定の距離で張り付く態勢」も必要だが、状況が悪化した時、何もできないのでは意味はない。

海上保安庁の巡視船が攻撃されても手出しできない自衛隊

 危機管理の要諦は危機を防止することはもちろんであるが、危機が生じた場合はそれ以上事態を悪化させないことである。そのためには事態に応じ、きめ細かくシームレスに対応し、事態拡大の抑止を図っていく必要がある。

 仮に尖閣諸島周辺で海上保安庁の巡視船が中国海軍艦艇から攻撃を受けたとしよう。放置すればさらなる海保巡視船への攻撃を招くことになる。そうなれば尖閣周辺の海保は全滅し、領有権は中国に奪取されてしまう。

 ここは「一定の距離で張り付く」海自護衛艦の出番である。中国海軍艦艇の攻撃には海自護衛艦で対処しなければ海保巡視船を防護することはできない。

 だが現行法制度では「海上警備行動」が下令されない限り、海自艦艇は動くことはできない。海自艦艇は巡視船とは距離をおいているので(海保は海自の管理下にはない)、刑法36条(正当防衛)を適用することも難しい。

 至短時間に「海上警備行動」が下令されるかという政治上の問題点もある。だが、根本的な問題は海上警備行動が下令されていたとしても、許容されるのは警察権の行使であり、個別的自衛権の行使はできないことだ。

 従って巡視船が攻撃される前に防衛行動は取れないし、巡視船が沈められた後であれば撃退することもできない。

 現行法の解釈では、防衛出動が下令されない限り自衛権行使はできない。従って、事実上、海自護衛艦がそこにいても巡視船を防護することはできないのだ。

 では空から航空自衛隊は海保巡視船を守れるのか。結論から言うとこれもできない。根拠となる法令はない。航空自衛隊はミサイルや機銃で武装し、全国いつでも5分で上がれる待機をしている。

 だが、これは隊法84条の領空侵犯対処のためである。

 海保巡視船が攻撃されるとの情報を得たとしても、領空侵犯措置ではないからスクランブル機を上げることすらできない。たまたまスクランブルで上がっている戦闘機が上空にいたとしても、海保を援護射撃する根拠法令はないからパイロットは上空で切歯扼腕するのみだ。

 仮に「海上警備行動」を拡大解釈し、航空自衛隊に適用したとしても自衛権の行使はできないという先述の問題は残る。

自衛隊を縛るポジティブリスト方式

 諸外国の軍隊は、禁止されていることを除いて、状況に応じ任務が必要の都度付与でき、その任務達成に必要な武力が行使できる。いわゆる「ネガティブリスト方式」というものである。

 だが自衛隊の場合、法令に規定されている任務しかできない「ポジティブリスト方式」を採っている。

 ドイツのように「ポジティブリスト方式」の軍隊もある。だがその場合、あらゆる可能性を考慮した極めて精緻な法体系が組まれなければならない。

 だが自衛隊の場合、「ポジティブリスト方式」を採りながらも、冷戦後の複雑な状況に対応するには「穴だらけ」なのである。時代の要請に法制度が追随できていないと言っていい。

 領土主権を守るため、陸海空自衛隊が海保、警察と協力してシームレスに活動できるようにと「領域警備法」の制定が叫ばれるのもこういう理由がある。ただし、領域警備法ができても、平時であれば個別的自衛権が行使できない問題は依然変わらない。

 北朝鮮の弾道ミサイル対処の時も同様な問題が生起した。海上自衛隊イージス艦が対処のため公海上に進出して警戒に入った。

 イージス艦は弾道ミサイル対応モードにレーダーを切り替えると、接近する航空機を発見する能力は低下する。そのため航空自衛隊は戦闘機を上げてイージス艦上空を警戒し援護することが必要となる。

 諸外国の軍隊であれば、「イージス艦を空から援護せよ」と命令するだけでいい。自衛隊の場合、このためにはどの法律を適用すればいいかを考えることから始めなければならない。

 対象がイージス艦の場合、海保の巡視船と違って自衛隊法95条「武器等防護」が適用できるかもしれない。だが、そのためにといってスクランブル機を上げるわけにはいかない。いずれにしろ六法全書を片手に作戦するような軍隊は必ず負ける。

 1998年のテポドン騒動の時、実際にそれは起こった。日本海に進出している米海軍のイージス艦に対し、ロシアの偵察機が大挙して接近してきた。ロシアにとってはイージス艦に関する情報収集のまたとないチャンスであり当然の行動である。

 この時、米軍から航空自衛隊に対し上空警戒の要請があったらしい。だが、防衛省は適用する法律条文探しから始まり、しかも集団的自衛権行使にも抵触する可能性もあり、法律論議で遅疑逡巡していたという。

万が一攻撃を受けたあとのヒステリックな反応も心配

 そのうちに米軍は痺れを切らし、三沢の米空軍F16を離陸させて自前で警戒したという。情けない話だが、これが現実の姿である。

 尖閣諸島に対する対中国の動きに対しては、筆者はこれまで日米同盟に頼らずとも、自衛隊単独でもこれを阻止できるといろいろなところで主張してきた。これには、政府が自衛隊に対し適時適切に任務を付与し、権限を与えるという前提がある。

 日本のことだから、仮に海保が撃沈され、尊い血が流されるような事態にもなれば、たちまち「自衛隊は何をやっている」と狂騒状態になり、政府もあわてて「自衛権行使」の容認、「ネガティブリスト」採用など、なし崩し的に解釈変更に動き、挙句の果てには現場に丸投げされる可能性はある。だがこういった状況は法治国家としては決してふさわしくない。

 戦前は「統帥権」という魔物によって、政府は軍をコントロールできなかった。現在は「軍事からの逃避」によって「シビリアン・アンコントロール」になっている。

 法制が不備なまま、仮に事態が発生すれば、対処に困るのは現場であり、失うのは国益である。普段から現場に実情を聞き、綿密な検討を加えて法制を整えておく必要がある。

 自衛隊発足の際、「軍からの安全」を重視して自衛隊法は策定された。旧軍が暴走したトラウマも手伝ってか、行動を幾重にも縛った法体系になっている。平時、有事の区別がシンプルな冷戦時代はそれでも問題は顕在化しなかった。

 だが、現代は何が起きても不思議ではないグレーな時代である。予想される多様な事態に対し、軍をきめ細かくコントロールして事態の拡大を防止するという「軍による安全」の発想が求められる時代なのだ。

 自衛隊に毎年5兆円近くかけながら、雁字搦めに縛って動けないようにしているのは論理矛盾以外の何物でもない。自衛隊は「縛る」のではなく、政治の判断で自信を持って「コントロール」すべきものである。

 戦後の怠慢のツケは今限界にきている。日本国家・国民の安全を確保し、主権を守り、独立を維持するための安全保障法制の見直しは喫緊の課題である。これは意思さえあれば明日にでもできる。一銭も防衛費を増額することなく防衛力を強化できるのだ。

 北朝鮮の3回目の核実験実施を受け、敵基地攻撃能力の保有について検討をすべきとの報道があった。それも結構だが、保有を決めても実現は4〜5年先の話だ。明日にでも必要となるのは、今そこにある危機に対応できる安全保障法制、つまり「平時法制」の整備なのである。


05. 2013年3月13日 13:41:45 : xEBOc6ttRg
混迷する朝鮮半島
「休戦協定を白紙化する」〜金正恩の強硬姿勢は内政危機の表れ

2013年3月13日(水)  森 永輔

 昨年12月のロケット発射以降、北朝鮮の動きが強硬になっている。このほど「朝鮮戦争の停戦協定を白紙にする」と明言した。拓殖大学の荒木和博教授は「金正恩氏は内部で見限られる恐れがあるから」と分析する。(聞き手=森 永輔)
昨年12月のロケット発射以降、北朝鮮の動きが強硬になっているように見えます。今年1月23日には外務省声明を出し、「(2005年に6か国協議で出した)共同声明は死滅し、朝鮮半島非核化は終末を告げた」と宣言しました。2月12日は第3回目の核実験を実施。3月8日には、祖国平和統一委員会が、南北不可侵に関する過去の合意をすべて破棄すると明言しました。さらに11日には、朝鮮戦争の停戦協定を白紙にする、とエスカレートしています。

 このように強硬な姿勢を取り続けると、北朝鮮は国際社会と妥協することが難しくなるのではないでしょうか。金正恩第1書記が「やっぱり非核化もあり得る」と前言を翻せば、北朝鮮の国内からの反発が強まります。

 そうしたリスクがあるにもかかわらず、交渉のハードルを引き上げた。ということは、今回の強硬姿勢はかなり本気だということなのでしょうか。


荒木 和博(あらき・かずひろ)
1956年東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。民社党本部で教育・広報・青年運動などを担当。1997年、拓殖大学海外事情研究所専任講師に就任。以後助教授を経て現職。この間、現代コリア研究所研究部長、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会事務局長を歴任。2003年、特定失踪者問題調査会設立 に伴い同会代表。現在予備役ブルーリボンの会代表・戦略情報研究所代表・国家基本問題研究所評議員・予備一等陸曹。著書に『なぜ北朝鮮は崩壊しなかったのか』(光人社NF文庫・2011年)、『日本が拉致問題を解決できない本当の理由』(草思社・2009年) など。
荒木:そこまで強硬なことを言わなければならないほど、国内がもたなくなっているということでしょう。何か1つ体制を揺るがす動きが起これば、破局にまで行ってしまうしかないのではないか、と懸念しています。

「破局」というのは具体的にはどういう状況ですか?

荒木:例えば金正恩第1書記に対するテロが起きて、政権の中枢が崩壊するかもしれません。最近、金正恩氏は、ほとんど視察をしなくなりました。地方にも足を運んでいない。恐らく、出にくい、あるいは出られない状態にあるのではないかと思います。

北朝鮮の朝鮮半島統一のシナリオは金正恩政権になっても生きているのでしょうか。核とミサイルを交渉の材料にして、アメリカと平和協定を結ぶ。平和協定を理由に、米軍に朝鮮半島からの撤退を求める。その後は核とミサイルをてこに半島統一を進める。

荒木:シナリオは生きています。「対南武力統一」の方針は一切放棄していません。「武力統一」ですから米軍を撤退させ、その後は地上軍による侵攻というのが本来のシナリオです。ただ、北朝鮮の人民軍が韓国を全面占領することは不可能ですから、韓国内の親北勢力を動かして宥和政策を拡大させ、実質的に朝鮮半島全体を自らの意のままに動かすということでしょう。この時、米国や日本に対しては核とミサイルで牽制する。韓国には「ソウルを火の海にする」と威嚇する。この方針自体が金正恩体制の生き残りの手段になっていると思います。

金正恩氏は権力基盤を確立できていないのでしょうか?

荒木:できていません。金正恩氏は、金正日氏が亡くなってしまったので、「ともかく体制を維持しなければならない」という、それだけの理由で立てられた人物です。自ら政権を率いるための準備は全くできていなかった。

金正恩氏は消去法で担がれた

 金正日氏の場合は、その父親である金日成氏が後ろ盾にいる状態で20年間、助走期間がありました。金正日氏は助走期間中に、金日成氏から権力を少しずつ奪い取っていった。情報も父親に直接上がらないようにしていった。それでも父親が死んでから3年間、最も重要な役職である労働党総書記に就任することができなかった。今の正恩氏はその20年分が全くないわけです。

 こんな状態が長く続くとは、政権の幹部たちも思っていない。子息を貿易会社などに入社させて、外国に出している者もいる。今、中国もちょっと似ているところがありますね。幹部たちはいつでも逃げられるように保険を掛けておいて、その上で、政権にしがみついている。

 だから、何かの理由で現在のバランスが崩れた場合にどうなるかと懸念しているのです。

外国が介入する可能性

「体制を揺るがす動き」にはどんな可能性があるでしょう。

荒木:例えば外国による介入です。中国かもしれないし、アメリカかもしれない。もしかしたら日本かもしれません。北朝鮮政権内の大勢が「中国に付いた方がいい」と考えた時に、それに金正恩氏が反対したとします。このため金正恩氏が邪魔、ということになれば、金政権は簡単にひっくり返ってしまうだろうと思います。

 かつて韓国で朴正煕大統領が側近の金載圭・中央情報部長に殺されました。あの時、金載圭氏は「アメリカが自分に味方する」と勘違いしていたようです。

 彼は情報機関のトップだから、当時の韓国の民情をよく理解していた。「朴正煕離れ」がかなり進んでいると。そんな時にカウンターパートである米CIAの人間がやってきて、いろいろ耳打ちしていった。それを受けて「自分が事を起こせばアメリカが支援してくれる」と思った。

 こういう歴史を考えると、例えば周囲の大国が金正恩氏以外の人物を支援すると意思表示をしたら、金正恩氏に向かっている求心力が一気に弱まる可能性があります。今は、消去法で彼を立てているだけですから。朝鮮半島の国は地政学的な事情で、周りの大国の意向を無視することが難しい。大国のどこかが、強い意向を示すと、それに引き寄せられていかざるを得ないのです。

北朝鮮は中国を怒らせた

外国が北朝鮮に介入するとしたら、どこの国が最も可能性が高いですか?

荒木:今のところ、やはり中国です。中国はかなり頭にきているでしょうから。

2月12日の核実験の前には、特に声を大きくして「やめろ」と言っていました。北朝鮮はそれでも強行し、中国のメンツをつぶしてしまった。

荒木:そうですね。

 実は北朝鮮が中国のメンツをつぶしたのは、これが初めてではありません。2000年に米国のオルブライト国務長官が平壌を訪れた時もそうでした。あの年はちょうど朝鮮戦争の開戦50周年で、中国の遅浩田・国防大臣が先に来ていたのです。にもかかわらず、金正日氏はオルブライト長官に先に会った。

 朝鮮戦争において、中国軍は北朝鮮を助けた味方です。アメリカ軍は敵です。なのに、中国の国防大臣をほったらかしにして、敵の国務長官を大歓迎した。中国側は、恐らく本当に頭にきたと思いますよ。

 あのとき北朝鮮は、アメリカとくっつけば中国にうるさいことを言われなくなると思っていたのだと思います。しかし、話はそううまくは進まなかった。大統領選挙でブッシュ氏が勝利し、政権が移りました。そのブッシュ政権は9.11テロの影響もあって、北朝鮮向けの政策をぱたっと転換してしまった。

 アメリカには見放された。いまさら中国にもいけない。それが、2002年の日朝首脳会談につながっているのです。

アメリカもだめ、中国もだめなら日本、ということだったんですね。

荒木:そう。アメリカは下手すると北朝鮮に爆弾を落とすかもしれない。でも、アメリカの同盟国である日本と仲良くしておけば、アメリカもそう簡単には手を出せないだろうと考えた。しかも日本からはカネも取れる、そうした考えがあったから拉致を認めたわけですよ。

小泉首相は利用されただけという感じですね。

荒木:そうですね。でも、北朝鮮に拉致を認めさせる、という進展はありました。

中国が北朝鮮に介入するとして、具体的にはどのような手段が考えられますか。

荒木:冒頭にお話ししたように、金正恩氏の周囲に働きかけてテロを起こさせることが1つ考えられます。

 さらに、事態が切迫していると認識すれば軍事侵攻をして、金正恩氏ではない勢力を傀儡政権にたてるケースもありえるでしょう。軍事侵攻は国際的にも国内的にも中国が勝手にやったというイメージを作らないようにするでしょう。ですから北朝鮮の中で何か不穏な事態が起きる。それを鎮圧するため、北朝鮮内の金正恩氏ではない勢力が中国に支援を求める。場合によっては金正恩氏が求めたことにしてしまうかもしれない。そして中国は依頼に応じて人民解放軍を進駐させる、というシナリオもあるかもしれない。

 北朝鮮は今、食料もエネルギーもすべて中国におんぶに抱っこになっています。だから、できればアメリカとの関係を改善したい。場合によっては、日本との関係も改善して中国依存のリスクをヘッジしたいと考えていると思います。

 そこで、「コミュニケーションを取りましょう」とアピールをする。それがミサイルや核の実験です。小学生のいたずらと同じです。クラスにかわいい女の子がいて、全然こちらを相手にしてくれない。それで消しゴムを投げるとか、上履きを隠すとか、しますよね。

 北朝鮮の内政、中国の内政、アメリカの状況、これらの要素がそれぞれに動いています。その中のどこでスイッチが入るのか――予想するのは難しいことです。


森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長。


 


 


 


 


全人代後が要注意?中国の尖閣上陸

海洋強国路線を着々と進める

2013年3月13日(水)  福島 香織

 3月の後半、全人代(全国人民代表大会=国会風の政治イベント)が終わった後を警戒しとけよ、と各方面の方々から、釘を刺されたので、全人代閉幕ごろに中国入りすることにした。

 何を警戒するかというと、中国の尖閣諸島上陸計画である。そんなまさか、と私も思うのだが、全人代と並行して開催されている全国政治協商会議(全人代の諮問機関、全国政協、全人代が衆議院なら全国政協は参議院のようなもの)で、全国政協委員でもある国家測絵局(測量局)副局長・李朋徳氏が8日、「目下釣魚島(尖閣諸島の中国の呼び名)の測量は正確にされていない。今後、適当な時期に測量局員を派遣して実際に測量する」と発言している。

 しかもフェニックステレビの報道によれば、国家海洋局、解放軍海軍もこの測量に同行するとか。適当な時期っていつだろう。ずっと未来のことかもしれないし、口で言っているだけかもしれない。だが3月下旬アクション、という噂が浮かんでは消えている。実行すれば、中国公務員の初の「釣魚島上陸」が実現する、という。全人代と全国政協の両会で尖閣諸島をめぐる問題について、どのような発言が出たかを見ながら中国の対「釣魚島」戦略について考えてみよう。

鉄道部解体よりも重要な国家海洋局強化

 今回の全人代で、日本が神経をとがらせて注目するべきことの1つは、海洋強国路線における国家海洋局の権力強化方針だ。海洋強国建設は昨年11月の第18回党大会でも打ち出されたが、両会でも主要なテーマの1つとなった。

 既に報じられているようにこの全人代で機構改革案が提出された。この機構改革では汚職の温床・鉄道部(鉄道省)の解体が注目されているが、日本にとっては国家海洋局改革の方が重要である。これによって、国家海洋局は公安部が受け持つ海上警察の権限と、農業部が受け持つ漁業監視権限と、税関総署が受け持つ海上密輸取り締まり警察権力を吸収し、「中国海警局」という名称で武装もし、公安部の指導のもと海上治安維持活動を行うようになる、という。

 一応「海洋覇権を追求するものでも、隣国を威嚇するようなものでもない。中国が海洋強国となることは世界の目標と一致している」「釣魚島を目標としたものではない」と関係する人民代表(国会議員に相当)たちは口では言っているのだが、中国海警局が日本の海上保安庁に対抗しうる武装海上治安維持組織になるのは間違いないだろう。

 2020年ごろまでには解放軍海軍と合同作戦を行えるようにする、と昨年12月30日に北京で開催された海洋権益と中国国家利益と安全をテーマにしたシンポジウムで国家海洋局海洋政策与管理研究室の王芳主任が発言していたが、おそらくは準軍事作戦も遂行できる武装レベルを想定している。

 このシンポジウムの席で軍事科学院の元院長でもある劉精松上将は「釣魚島問題を発端に、海上治安維持権力建設の強化と統合の必要性を認識した。釣魚島闘争強化が今後の任務である。持久戦ができる思想と行動準備をし、日本が誤りを正すまで気を緩めてはならない」と語っている。この発言を真に受ければ、国家海洋局に海洋警備機能を集中させることの当面の目標は尖閣諸島であるとも言えよう。

戦争ができて勝てる解放軍に

 もう1つは解放軍の強軍化路線だ。海洋強国建設とも関係あるのだが、習近平氏は年初から「戦争ができて、しかも勝てる軍」を国防建設の主眼として訴えてきた。全人代には現役軍人代表も参加する「解放軍代表団」があり、その全体会議では、もっぱら海洋強国建設、強軍化路線、そして習近平氏が昨年以来繰り返して訴えている「中国夢(チャイナ・ドリーム)」路線がテーマだった。

 「戦争ができて勝てる(能打仗打勝仗)」国防建設を言い出した背景には、「もう何十年も戦争せず、腐敗の温床と化している堕落した解放軍は、戦争などできない、やっても勝てない」という民衆からの痛烈な批判が背景にある。一昨年、解放軍空軍落下傘部隊内で禁酒令を出したら、軍の接待費が45.4%減少したという統計が出て、軍人がいかに公費で酒を飲んでいるかということが明らかになった。昨年暮れには中央軍事委が全軍で禁酒令を出した当日、貴州省の高級白酒ブランド茅台酒の株価が5.5%暴落したと、ニュースになったほどだ。

 春節休暇には、軍用ナンバーをつけたマセラッティやBMWなどの高級車が観光地、リゾート地で多数目撃され、ネットにその写真をアップされ、軍の腐敗を批判する書き込みが殺到した。軍用ナンバーをつけた軍用車が不必要なまでの高級車であり、しかも明らかに軍人家族が私物化していることが、暴露されたわけだ。こういう軍の浮ついた雰囲気を昨年からにわかに引き締める動きが出ている。

 「中国夢」というフレーズも、習氏が昨年11月以来、繰り返してきた。中国夢とは「中華民族の偉大なる復興を実現すること」である。その実現の基礎は3つの部分からなり、(1)経済(生活改善、物質進歩、環境改善など)、(2)文化(公平正義の追及、民主法制、公民の成長、科学創新、教育進歩、文化繁栄)、(3)富国強兵(民族の尊厳、主権の完全化、国家統一、世界平和)が挙げられている。キーワードは強国と富民。ちなみに「中国夢」という言葉が使われ出したのは国防大学の劉明福教授が2010年に出版した著書のタイトルが最初で、そこには中国が富国強兵を実現し、ポスト米国時代を築くという壮大な夢が描かれている。

 全人代の解放軍代表団分科会では、中央軍事委員でもある呉勝利海軍司令がこう発言していた。

 「周到な戦略と準備をもって、海上治安維持闘争の主導権をしっかり握ろう。海軍建設と兵力運用を強化し、さらに大海軍建設の共通認識を強化しよう。島礁海域の管理開発・基礎建設を強化し続け、海洋経済産業を積極的に発展させることで、強国の夢を実現する力になろう」「海上安全脅威の緊迫感、責任感が切実に増す中、たゆまず軍事闘争準備を展開、深化をしていき、国土領土主権および海洋権益を守る神聖なる使命をしっかり履行しよう。党の指揮のもと、戦いに勝てる、紀律のある部隊の全面的建設によって、多様な軍事任務をこなし、海洋強国建設において新たなる手柄をたてよう」

 海軍トップの呉勝利上将はもともと好戦的な発言が目立つ人物で、かつてキーティング米太平洋軍司令官に、ハワイを起点に東西を分けて米中が管理する「太平洋分割管理」を提案して米側を驚かせたと言われているが、念願の初の空母「遼寧」を保有し、さらに2隻が建設中という海軍内部が今かなりイケイケムードにあることは想像に難くない。護衛艦への火器管制レーダー照射事件については、中国外交部のスポークスマンは「日本側の煽動、ねつ造」ということで強引に幕を引いたが、この事件もこういうムードの中で起きたといえる。

 今年の国防予算に関しても、気になる点がある。前年比10.7%増で、二ケタ成長なのは大方の予想の範囲内だが、意外だったのは、全人代開幕前日の記者会見で傅瑩外務次官が国防予算に関する質問に対し回答を拒否し、「中国はまるで国防費をなぜ増加させるかを毎年、外国に説明しなくてはならないようだ」と嫌味を言ったことだった。国防費に関してはこの会見で全人代前に公表することが恒例になっていた。国防予算は秘密ではない、質問されれば答えるという姿勢をとり、国際社会の中国軍拡懸念を払しょくする努力をこれまでは行っていたことを考えると、今回の傅次官の強硬な姿勢と発言の背景に、強軍化路線が感じられる。

米国は尖閣問題には無関係と主張

 話はややずれるが、この会見で共同通信の記者が「中国はいかに日本など周辺国との摩擦を緩和させるのか。これからも中国は外国に対して怒鳴り散らして気勢激しく人に迫る(咄咄逼人)のか」と質問したとき、傅次官はたぶん、この言い回しにカチンときたのだろう、「記者を含む多くの中国人は中国がもっと強硬姿勢になることを望んでいる」「中国には『片手では拍手はできない』(一人だけその気になっても対話はできない)という言葉がある。相手が強硬に出てきたなら『お返ししなければ失礼だ』との言葉もある。共同通信にはこのことを、政界のトップレベルや有識者に伝えてほしい。日本の人民、指導者が中国人の考えを理解できるかどうかを知りたい」と微笑みを崩さないまま恫喝した。

 咄咄逼人というのは、相手の傲慢・横柄さを非難するニュアンスがあり、会見の場で相手に面と向かって言うのは少々はばかられる。だが中国メディアも安倍晋三首相に対する形容詞として使っているし、ネットで中継もされる記者会見でこう言った刺激的な発言を引き出すためにあえて「無礼」な言い回しをすることはよくあることで、私はむしろ傅次官からこれだけの発言を引き出した記者を評価したいぐらいだ。残念なのは、会見の後で記者が「成句辞書をひきながら質問を作ったので、咄咄逼人の意味を正確に分かっていなかった」と中国記者に言い訳して、それが報道されてしまったことだろう。

 全人代期間中に行われた楊潔篪外相の記者会見で注目すべき発言は米中関係についてである。「米国は特に台湾など敏感な問題について穏当に対応すべきである」「大いなる智慧と勇気を出して共通点を見出し、異なる点はおいておき、前人未到、後世の手本となる新型大国関係を作ろう」と呼びかけた。そして日本記者が日中関係について質問したとき「釣魚島の目下の状況は日本ひとりが作り出したものであり、現実を正視して誤りを正し、事態がエスカレートして制御力を失うことを防止すべきだ」とけん制した。

 尖閣をめぐる問題については、中国側の主張の本来のポイントはサンフランシスコ平和条約が無効であるということで、当然米国もかかわるという認識だった。だが、楊外相はこれを「日本(の挑発的態度)だけが作り出した状況」と範囲を限定し、米国を無関係とする姿勢を強調した。

手強い王毅・次期外相

 さらに注目したいのは、楊外相の後任とされている駐日大使経験もある王毅・国務院台湾事務弁公室主任だ。知日派外相の登場に日本側の日中関係改善の期待は高まっているが、私はこの人事は日本にとってむしろ、手ごわい相手が来たと覚悟した方がいいと考えている。個人的には、外務次官時代の王毅氏のソフトで丁寧な記者の対応ぶりや、開明派らしいものの考え方には好感を持っている。一方で、私心なく任務に忠実な官僚という印象もある。

 王氏は日本を知りつくした人物であり、この5年近く、対台湾工作で確実に成果を上げてきた。彼が外相ポストで期待されているのは、日中関係改善よりも尖閣における中台共闘工作を進め、それを契機に中台統一機運を高めること、その時に想定される日本の妨害を封じ込めることと考えた方が周辺の動きと合致する。王氏は全人代の台湾省分科会で「釣魚島の主権を守ることは両岸(中台)同胞の共同責任である。両岸は各自の方法があるが、目標は一致している。でなければ祖先や子孫に対して申し訳ないではないか」と、対釣魚島共闘を呼びかけている。

 こうして見てみると、全人代閉幕後に正式スタートする習近平政権が対釣魚島戦略をレベルアップさせる可能性はやはり高い。中国経済の失速傾向を理由に、中国の大国化はあり得ない、無謀な行動は起こさないだろうという楽観はこの際捨てた方がいい。経済や社会状況の悪いときほど、国民の関心を外に向けようとするのは中国のみならず国家運営ではよくあることなのだ。

 楊外相は会見で「私は小さいころから囲碁が好きで。これは大局を見ないといけない。同時に形勢を見ないといけない。流れを、遠くを見ないといけない」と語った。測量計画、国家海洋局の権力強化、台湾との共闘工作、米中関係、強軍化路線など、中国はいずれも尖閣を獲ることを目標にした布石をしっかり打ちこんでいるのではないか。


福島香織さんの新刊が出ました!
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福島 香織(ふくしま・かおり)
ジャーナリスト

 大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002〜08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。著書に『潜入ルポ 中国の女―エイズ売春婦から大富豪まで』(文藝春秋)、『中国のマスゴミ―ジャーナリズムの挫折と目覚め』(扶桑社新書)、『危ない中国 点撃!』(産経新聞出版刊)、『中国のマスゴミ』(扶桑社新書)、『中国「反日デモ」の深層』(同)など。


 


06. 2013年3月13日 13:42:53 : xEBOc6ttRg
韓国がトービン税の導入を検討

投機への規制は両刃の剣、取引の縮小を招く懸念

2013年3月13日(水)  毎経エコノミー


 韓国型トービン税の導が注目を集めている。企画財政部(部は省)と韓国金融研究院が1月末に開催した「国外資本流出入変動性拡大、このままでいいのか」というタイトルの公聴会がきっかけとなった。

 企画財政部のチェ・ジョング次官補佐官は、為替レートの変動を緩和するための対策について、現在検討中の案を公開した。外国為替の取引と債権の取引に課税する必要があり、韓国型トービン税の導入を検討しているという話だった。政府関係者がトービン税について公式に発言したのは、これが初めてである。トービン税は国際投機資本を規制するために、短期為替取引に賦課する税金のこと。ノーベル経済学賞を受賞したジェームス・トービン氏が1972年提案したことから、トービン税という名前がついた。

 政府が導入を検討しているのは「外国為替取引税」と「債権取引税」である。外国為替取引税は、※1外国資本が韓国金融市場に投資する際に賦課する通貨取引税である。債権取引税は、債権の売買代金に課税する税金だ。

 政府は、トービン税を導入することで、海外から入ってくる、また海外へ出て行く資金の規模を調節できると見ている。政府は特に、海外に資金が出て行くのを防ぐためトービン税に注目している(訳者注:外国為替取引税は、韓国から出て行く資金だけでなく、海外から韓国に入る資金も課税対象)。トービン税は外国通貨とウォンを両替する際に税金を賦課するので、急激に莫大な資金が動く変動を食い止められる、と考えられている。

為替取引市場を中国に奪われるかもしれない

 トービン税の導入を必要とする意見がある一方で、トービン税の導入を心配する声もある。トービン税は為替取引そのものを萎縮させる可能性があるからだ。イ・ジンウ農協先物取引リサーチセンター長は、「トービン税を導入した場合、韓国内で国際通貨取引が急減し、為替取引市場を中国にすべて奪われるのではないか」と懸念する。

 専門家らは、トービン税は国際資金の投機といった急激な変動がもたらす副作用を緩和できる方案ではあるが、一方でトービン税によって市場が受ける打撃を減らすための対策が必要だという。

 大信経済研究所のパク・チュンソプ研究員は、「韓国市場だけがトービン税を賦課すると、外国人の投資が急減する恐れがある。ヨーロッパ11カ国が同時に金融取引税を導入したように、韓国も似たような境遇にあるアジア途上国と一緒にトービン税を投入することで、市場への衝撃を減らすべきである」と忠告した。

 金融取引税を一時的に課すことも代案になりえる。サムスン経済研究所のチョン・ヨンシク研究専門委員は、「各国が量的金融緩和政策を始めてから、資本の動きがとても速くなった。韓国は通貨危機のとき、莫大な資本が入ったり出たりしたことで危機に陥った。資本の流入がもたらす衝撃を吸収する制度が必要である。トービン税もその一つである。普段は課税しないで、海外からの資本流入が一定水準を超えた場合に、段階的に税率を上げることができる一時的金融取引税を導入すべきである」と話した。

 専門家らは、トービン税の税率を決めるのは難しいと考える。トービン税に似た税金を賦課している国々の税率はみなばらばらである。ドイツ、フランスなどのユーロ圏は株・債権の取引に0.1%、派生商品取引に0.01%の税金を課している。ブラジルは債権取引税として6%、イスラエルは外国為替派生取引税として10%を賦課する。

「毎経エコノミー」

韓国の毎日経済新聞社が発行する「毎経エコノミー」は、企業の幹部や専門職、個人投資家などを対象とする週刊ビジネス誌。発行部数12万部はこの分野では最大規模だ。

韓国発 毎経エコノミー

韓国の毎日経済新聞社が発行する「毎経エコノミー」は、企業の幹部や専門職、個人投資家などを対象とする週刊ビジネス誌。発行部数12万部はこの分野では最大規模だ。

 


 


 


国民総背番号制の国、韓国から見た日本のマイナンバー制度

2013年3月13日(水)  趙 章恩

 3月の初め、ポータルサイトの検索キーワード・ランキング1位に「日本マイナンバー」が登場した。韓国の新聞やテレビが「日本が韓国の住民登録番号のような番号制度を導入しようとしている」と報道したことから、「日本のマイナンバー制度とは何か」と検索する人が急増した。

 韓国人が日本のマイナンバー制度に関心を持つのは、韓国では今「住民登録番号制度」を再検討すべきだという議論が熱くなっているからだ。日本のマイナンバーに関する記事のコメント欄には、様々な意見が並んだ。

 「社会保障や行政サービスを効率よく提供するためには、番号で個人を識別する必要がある。行政機関だけが使う番号であれば問題ない」

 「韓国も日本のように、社会保障にだけ個人の識別番号を使うべきだ」

 「国民総背番号制度だなんて、地獄へようこそ!」

 「これで日本人も中国ハッカーに狙われる」

 「個人の番号があれば徴兵もしやすくなる。日本には、軍事的目的があるのではないか」

3500万人分の住民登録番号が盗まれる

 韓国で2011年7月、中国のハッカーが大量の住民登録番号を盗み出す事件が発生した。人口5000万人の韓国で、全国民の7割に近い3500万人の個人情報を盗まれるという大事件だった。

 中国のハッカーは、SKコミュニケーションズが運営する韓国の大手ポータルサイト「NATE」と、同社が運営するSNS「Cyworld」をハックし、3495万4887人分の会員ID、パスワード、氏名、電話番号、住所などの個人情報を盗んだ。この中に住民登録番号も含まれていた。

 この事件の被害者らが集まり、個人情報の管理をしっかりしていなかったサイトの責任を問う裁判を起こして勝訴した。裁判所は2013年2月15日、NATEとCyworldの責任を認めて被害者1人当たり日本円で2万円ほどの賠償金を支払うように命じた。SKコミュニケーションズは控訴した。

 被害者らはさらに2月28日、憲法を改訂するよう憲法裁判所に求める訴訟を起こした。盗まれた住民登録番号がなりすましや詐欺などの犯罪に使われる危険性がある。にもかかわらず、憲法は、これを理由に住民登録番号を変更することを認めていないからだ。

効率よく透明な電子政府を実現

 韓国の住民登録番号は、出生届けを出すと同時に政府が発行する13ケタの個人識別番号だ。13ケタのうち6ケタは生年月日。これに性別、生まれた地域などを表す7ケタを加えてつくる。住民登録証には写真、氏名、住所、住民登録番号が書いてある。

 住民登録番号は、戸籍や住所の変更、医療、保険、年金、金融商品や不動産、自動車の取引、税金、教育、徴兵、出入国などすべての行政サービスについて回る。国民が生まれてから死ぬまで、すべての個人情報を一つの番号で政府が管理する。

 引っ越しをした時は、電子政府G4Cサイト(政府が個人向けに情報提供するサイト)に新居の住所を登録するだけで転出入手続きが完了する。各種行政書類もこのサイトで申請できる。自宅でプリントしたものが正式書類として使える。就職活動に必要な卒業証明書や成績証明書も、学校ではなく、この電子政府サイトが発行する。手数料はクレジットカードで決済できる。

 確定申告も必要ない。政府が個人の収入と源泉徴収、使った医療費や教育費などを計算して自動的に税金の払い戻し金額を教えてくれる。病院に行く時も保険証は必要なく、住民登録証があればいい。保険証を忘れた時、その場は個人負担して後で払い戻す、といった面倒な手続きも必要ない。病院が住民登録番号を使って、その患者が医療保険に加入しているのかを確認できる。

 パスポートを申請する際も、申請書と住民登録証だけを区役所に持っていくだけで済む。戸籍や兵役など必要な情報は、区役所が行政データベースで照会する。申請者は戸籍などの書類を事前に準備する必要がないので、その分の手数料と時間を節約できる。パスポートの発行にかかる時間は10日前後から2〜3日に短縮した。さらに便利にするため、外交通商部は、申請書は紙から電子に、写真はデジタル画像に変えようとしている。

 年金や保険も住民登録番号で管理している。次のようなやりとりは発生しない――保健福祉部が個人に確認書を送付。個人は、本人であることを証明するために書類をそろえて返信。保健福祉部や年金管理公団はその受給者がもらえる年金額を自動計算して毎年告知し、該当年齢になればあらかじめ登録した口座に振り込む。

 韓国は住民登録番号を導入することで、電子政府サービスを実現。行政をより正確で、効率の良い、透明なものにした(各種行政情報を公開。手続き状況をいつでも確認することが可能)。国連は2010年、2012年と2年連続で、電子政府評価1位を韓国に授与した。

スマートフォンが乗っ取られる

 国民を番号で管理する住民登録番号制度は、便利な一方で危険もある。犯罪を予防するために本人確認をする――という名目で、民間企業も住民登録番号を要求するようになった。WEBサイトの会員登録、携帯電話やインターネットの申し込み、ポイントカードやメンバーシップ登録、塾登録など、その分野は多岐にわたる。

 放送通信委員会の調査によると、約32万のWEBサイトが、会員登録の際に住民登録番号と氏名を本人認証のために要求していた。本人認証をすればネットで悪質な書き込みをしなくなる、本人名義の携帯電話やインターネット回線を使って違法なことはしないだろう、という狙いだった。しかし、結果は「ネット移民」を増やすだけに終わった。ネット移民とは、登録時に住民登録番号を要求しない欧米サイト――Facebook, Google+、Twitter――を利用する人々のことだ。

 住民登録番号の利用が広まるにつれて、「カネになる情報」として中国ハッカーが狙うようになった。代表的な被害事例はオンラインゲームである。ハッカーは盗んだ個人情報を使ってオンラインゲームサイトに加入する。そしてゲームの中で、武器や魔法のアイテムを獲得。それを仲介サイトで売って現金化する。

 金融監督院の調査によると、NATEで住民登録番号ハッキング事件が起きた後、犯罪者が、住民登録番号と氏名を使ってクレジットカードの会員になりすましてクレジットカードの追加発行を要求する詐欺事件が頻発するようになった。カード会社が正規の会員に確認の電話したことで、この要求が詐欺であることが判明した。同様の事件が2011年8月だけで559件発生した。通常の3倍の数だった。

 最近はスマートフォンがターゲットになっている。知人または会社を装って、被害者にショートメッセージを送る。被害者が中身を読もうとしてURLをクリックすると悪性コードが端末にインストールされる。これでスマートフォンが乗っ取られてしまう。

 ハッカーは被害者のスマートフォンを自由に操作し、通話を盗聴したりショートメッセージを盗み読みしたりする。さらに、被害者の個人情報を使ってサイバーマネーを購入し、ポイント換金サイトを経由して現金化する。本人確認のためスマートフォンに送られてくる暗証番号もハッカーが横取りして決済画面に入力する。サイバーマネーサイトは、被害者が本人のスマートフォンを使って正常な取引をした、とみなして決済してしまう。被害者はキャリアから請求書が届くまで被害に気付かない。

 民間サイトの会員情報をハックしてIDと住民登録番号をひもづければ、その人がサイト上にどのような書き込みをして何を検索したのかが分かる。

 スマートフォンを使った盗聴、位置追跡まで勝手にできれば、政府要人の動きも把握できてしまうかもしれない。

 ハッキングが頻繁に起きていることから、自分の住民登録番号がどのサイトの会員登録に使われたかチェックできる信用管理サービスの利用者も急増している。住民登録番号盗用防止サービスは、アンチウィルスと並んでネットユーザーが必ず利用すべきインターネットセキュリティサービスになっている。

 I-PINで個人認証を行う方法も広がりつつある。第3の機関が住民登録番号と個人情報を預かり、代わりにI-PINという名前の番号を発行する。

住民登録番号の変更は原則不可

 住民登録番号が盗まれ、色々な被害が起こるようになったにもかかわらず、住民登録番号を変更するのは容易ではない。行政の間違いで複数の人が同一の住民登録番号を取得した、性転換手術をして性が変わった、という特殊な場合に限られている。

 もう一つ特例として、北朝鮮から韓国に逃げてきた脱北者は住民登録番号を変更することができる。脱北者の住民登録番号の後ろの7ケタは、男性が「125」、女性が「225」で始まる。これに気づいた中国大使館が、これらの住民登録番号を持つ人に対して中国訪問ビザを発行しないという問題が起こった。このため、下7ケタが「125」「225」で始まる住民登録番号を持つ人の番号変更を許した。

 だが、ハッキングによる被害は住民登録番号を変更する理由とみなしていない。

 国民の7割が住民登録番号を盗まれ、いつどんな被害に遭うか分からない状態なのに、番号の変更を認めない憲法は間違いだという訴訟が起きた。さらに、民間企業がWEBサイトの会員管理用に住民登録番号を使うことを禁じるよう、住民登録法が改訂された。そんな矢先、日本がマイナンバー制度を導入しようとしているという報道があった。

日本は韓国の事例を学んで議論を

 問題の多い番号制度をなぜ日本は導入するのか? 日本の番号制度は韓国と何が違うのか? 韓国での関心はいやが上にも高まっている。

 今のところ、日本のマイナンバー制度は、韓国の住民登録番号制度より米国の社会保障番号制度に似ているように見える。米国の社会保障番号の用途は年金や福祉、金融取引などに限られている。

 それでも韓国のマスコミは、「日本が韓国の住民登録番号のような番号制度を導入しようとしている」「韓国より45年遅れで日本も国民番号制度導入」と報道している。そうすることで、「韓国の住民登録番号制度は先進的だ」「番号で国民を管理するのは間違いではない」と主張している印象を受ける。日本はマイナンバー制度についてどのような議論をしているのか――韓国の住民登録番号の問題点を改善するために色々な側面から検証する記事が登場してもいいものだ。だが残念なことにそうした記事は見当たらない。

 韓国の住民登録番号は、朴正煕元大統領が北朝鮮からのスパイを見分けるために導入した。北朝鮮のスパイが1968年に朴正煕元大統領の令夫人を狙撃した事件が契機となった。朴槿恵大統領の父親が導入した制度だから厳しく追及できないのだろうか。

 一方、日本はマイナンバー制度を、複数の機関に存在する個人情報を名寄せし、社会保障と徴税の効率性と透明性を高め、公平公正な社会を実現するための社会基盤として導入するという。韓国とは出発点が違う。

 住民登録番号もマイナンバー制度も、国民により便利な行政サービスを提供するという目的は同じだ――行政業務の効率を良くする、番号にひもづけられた個人情報を行政機関が分析し、国民の1人ひとりに最適な情報を的確に提供する。ところが韓国では、民間企業までが当たり前のように住民登録番号を要求して会員管理に使ったことから、予想しなかったハッキングや犯罪が多発した。余計な心配だとは思うが、日本には韓国の事例を参考にして、マイナンバーの利用範囲を議論してもらいたいものだ。国民のために導入するマイナンバー制度が、意図しなかった方向へ進み、国民の心配の種になってはいけない。


趙 章恩(チョウ・チャンウン)

 研究者、ジャーナリスト。ソウルで生まれ小学校から高校卒業まで東京で育つ。韓国ソウルの梨花女子大学卒業。現在は東京大学社会情報学修士。ソウル在住。日本経済新聞「ネット時評」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどにコラムを連載。著書に「韓国インターネットの技を盗め」(アスキー)、「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)がある。
 「講演などで日韓を行き交う楽しい日々を送っています。日韓両国で生活した経験を生かし、日韓の社会事情を比較解説する講師として、また韓国のさまざまな情報を分りやすく伝えるジャーナリストとしてもっともっと活躍したいです」。
 「韓国はいつも活気に溢れ、競争が激しい社会。なので変化も速く、2〜3カ月もすると街の表情ががらっと変わってしまいます。こんな話をすると『なんだかきつそうな国〜』と思われがちですが、世話好きな人が多い。電車やバスでは席を譲り合い、かばんを持ってくれる人も多いのです。マンションに住んでいても、おいしいものが手に入れば『おすそ分けするのが当たり前』の人情の国です。みなさん、遊びに来てください!」。


日本と韓国の交差点

 韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。
 趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。
 中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか?


07. 2013年3月13日 13:46:53 : xEBOc6ttRg
米国は「クリントン・ドクトリン」の継続を

中国の勢力拡大は東・南シナ海だけではない

2013年3月13日(水)  森 永輔

 第2期オバマ政権がスタートし、ジョン・ケリー氏が国務長官に就任した。前任のヒラリー・クリントン氏が積極的に展開していたアジア回帰政策が変わる可能性がある。JETROアジア経済研究所の塩田光喜氏はこれを強く危惧する。
(聞き手は森 永輔)
第2期オバマ政権が始まり、国務長官がヒラリー・クリントン氏からジョン・ケリー氏に代わりました。オバマ政権の対アジア政策に変化はあるでしょうか。


塩田 光喜(しおた・みつき)
日本貿易振興機構アジア経済研究所 貧困削減・社会開発研究グループ主任研究員。 1979年、東京大学教養学科文化人類学課程卒。 1979年、アジア経済研究所調査研究部に入所。 1985年、海外派遣員としてパプアニューギニアへ。 2003年、海外調査員としてオーストラリアへ。 2005年から現職。 近著に『知の大洋へ、大洋の知へ!−−太平洋島嶼国の近代と知的ビックバン』(彩流社 2010年)
塩田:私は、まさにその変化を危惧しています。

 第1期オバマ政権は、アジア太平洋へのピボット(旋回)を宣言しました。ブッシュ政権下の8年間、アメリカはイラク戦争とアフガニスタン戦争に力を集中させました。この間、アジア太平洋地域におけるプレゼンスが低下。この間に中国が台頭し、米中のパワー・バランスが大変動しました。

 これに危機感を抱いたクリントン前長官が「クリントン・ドクトリン」を唱え、アジア太平洋地域へのピボットを始めたのです。ケリー長官がこれを継承するのか、注目していく必要があります。

クリントン・ドクトリンとはどういうものですか。

塩田:クリントン前長官が2010年10月28日に行った演説にその主旨が凝縮されています。同氏が東南アジア・オセアニア6カ国――ベトナム、カンボジア、マレーシア、パプアニューギニア、オーストラリア、ニュージーランド――訪問に旅立つ際、そのスタート地点のハワイで行ったものです。アメリカはアジア太平洋地域におけるヘゲモニーとリーダーシップを手放すつもりはない、と宣言しました。

「米国はアジア太平洋地域のリーダーであり続ける」

 クリントン前長官はまず「21世紀の歴史はアジアで書かれる」と予言しました。「この地域は、世界で最も飛躍的な経済成長を経験するでしょう」。

 そして、アジア太平洋地域においてアメリカのプレゼンスが衰えている、という見方を全面的に否定しました。「米国のアジア太平洋地域におけるリーダーシップが終わろうとしている、と言う人たちがいます。アメリカはアジアにとどまらない、と言うのです。しかし、米国の実績を見てください。実情は全く違います」

 続けて、米国が21世紀においてもこの地域に関与しリーダーシップを発揮していく考えを明らかにしたのです。

 「私たちは共に、これから何十年も先の遠い未来に目を向けています」

 「今後、すべてのアジア諸国が米国のリーダーシップとともに達成できることについても、楽観し自信を持っています」

クリントン前長官のこの宣言は、中国のアジア太平洋に向けての海洋進出、および政治・軍事的膨張に対する反撃の煙火であったと言えます。

何とも力強い宣言ですね。

塩田:そうです。クリントン前長官はこの時、「こうした訪問や、その他の様々な方法によって、私たちは前方展開とも呼べる外交を実践します」とも述べました。私はこの「前方展開」という表現に驚きました。実際には「フォワード・ディベロップメント(Forward Development)」という表現でした。これは、軍を前線に進めるという意味の軍事用語です。

 米国は、アジア太平洋地域におけるシーパワーとして再び立つ考えを示したと言えるでしょう。

太平洋島嶼地域で影響力を拡大する中国

米国が中東に専念している間に、中国はアジア太平洋地域においてどのような動きをしていたのでしょう。南シナ海や尖閣諸島で起きていることは、よく知られています。塩田さんは、太平洋島嶼諸国における中国の動きに警鐘を鳴らしています(関連記事「日本だけが知らない〜太平洋資源外交の現実」)。

塩田:太平洋島嶼諸国における中国の動きは、中国とパプアニューギニアとの関係が象徴的です。中国は2012年9月24日、中国輸出入銀行を通じて、パプアニューギニアに60億キナ(約2400億円)の借款(Soft Loan)を供与すると発表しました。パプアニューギニア政府の歳入は年100億キナです。この借款は実に国家予算の6割に及びます。

 パプアニューギニアのピーター・オニール首相はこの借款について、ラジオ・オーストラリアのインタビューに次のように答えました。「わが国は来たるハイデスガス田採掘開始に備えて、ガス田に通ずるインフラ――ハイランズ・ハイウェイの整備、ヨンキ水力発電所の増強、液化天然ガス(LNG)輸出のための港湾整備――の整備を進める資金を必要としています。ハイデスガス田からのLNG輸出が始まれば、我が国のGDP(国内総生産)を2014年までに倍増します」と答えました。

国家予算の6割に相当する援助ですか。これは、パプアニューギニアにとっては巨額ですね。

塩田:驚くべきは金額の多寡だけではありません。中国のこの援助は、日本とオーストラリアにも大きな意味を持つのです。

え、パプアニューギニアへの援助が日本と関係するのですか。

塩田:この借款を行う直前の9月11日、ロシアのウラジオストックで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議に出席したパプアニューギニアのオニール首相は、その帰途に中国を訪問し、李克強副首相と会談しました。

 李克強副首相はこの場で「第二次世界大戦中、中国とパプアニューギニア(注:パプアニューギニアの独立は1975年)はともに日本に侵略された」「日本が釣魚島(尖閣諸島)問題に対して取っている立場は世界反ファシズム戦争の成果に対する否定であり、戦後の国際秩序に対する挑発である。平和を愛し、正義を守る国と人民は日本の行動を認めることができない」と発言しました。中国共産党はどうやら、尖閣諸島の問題を反ファシズム闘争と規定したようです。

 オニール首相は李克強氏の発言に「パプアニューギニアは中国と似た歴史的体験をした。魚釣島問題における中国の立場を理解している。日本のやり方は国際社会に認められない」と答えたといいます。60億キナの援助は、オニール首相のこの発言に対する返礼でしょう。

なるほど。中国は戦略的ですね。オーストラリアにはどのような影響を及ぼすのでしょう。

中国とパプアニューギニアにマナが宿った

塩田:この援助は、オーストラリアの、地域の盟主としての座と安全保障を揺るがすものなのです。これまで、オーストラリアがパプアニューギニアを含むメラネシアの島々に、ニュージーランドがポリネシアの島々に援助と投資を行い、これらの国々を勢力下に置いてきました。

 しかし、この援助によって、中国から太平洋島嶼諸国への援助はそれまでの年間2億米ドル(約192億円)から1けたくり上がりました。最大のドナー国であるオーストラリアの年10億米ドル(約965億円)を抜いたことになります。

 この援助に関する報道を目にして太平洋島嶼諸国の国民は、「マナ」がANZUS(オーストラリア、ニュージーランド、米国)から中国へ移った、と考えるようになりました。「マナ」というのは超越的な力のこと。マナが宿った人間は超越的権力・権威を授かると伝統的に考えられています。

 “マナが宿った”のは、中国だけではありません。その支援を受けたパプアニューギニアも同様です。

 パプアニューギニアはハイデスガス田の開発をてこに、10年以内に、オーストラリアに次ぐ域内第2の経済大国になると予測されています。現在2位のニュージーランドを陵駕する。中国からの援助がこれを後押しするわけです。さらにパプアニューギニアは10年以内に、防衛軍の規模を5倍の1万5000人にする予定です。

 そして、力を付けるパプアニューギニアには、オーストラリア離れの意図を隠していません。オニール首相は2012年12月、インタビューに次のように答えました。「パプアニューギニアは、域内でより大きな指導力を発揮する能力と意思を持っています。これからの対豪関係はオーストラリアから何を得るかではなく、パプアニューギニアが何をしたいかに焦点が移るのです」。

 そして、太平洋におけるパプアニューギニアの役割と、同国とアジアとの関係についてこう語りました。

パプアニューギニアは中国やインドをはじめとする、アジアの他の急成長諸国に対して一層オープンに関与してゆく。
パプアニューギニアは域内の繁栄と安全保障を促進するため、他の太平洋島嶼諸国に投資し、交通手段を開き、開発援助を提供する。
 60年前まで石器時代が残っていたパプアニューギニアが援助ドナー国になる――昔を知る私のような研究者には天地が覆るような驚きです。

 より巨視的に見れば、パプアニューギニアの急激な台頭は、これまでの白人国家による南太平洋のコントロールを根底から揺さぶることになるのです。

 さらに中国の援助はオーストラリアの政治的地位だけでなく安全保障まで脅かすものになりつつあります。中国は2013年に入って、400万キナ(1.6億円)の防衛援助をパプアニューギニアに供与すると表明したのです。この動きが、中国に対するオーストラリアの軍事的警戒心を何段階も押し上げたであろうことは想像に難くありません。オーストラリアとパプアニューギニアは文字通り一衣帯水の位置にありますから。

 パプアニューギニアはオーストラリアにとって、アジアからの脅威に対する防壁の役割を果たしてきました。太平洋戦争のココダ・トレイルの戦いで、米豪連合軍は、オーウェン・スタンレー山脈を越えて攻めこんできた日本軍と半年にわたって死闘を繰り広げ、日本軍を撃退しました。パプアニューギニアの首邑、ポート・モレスビーを奪われれば、豪大陸の制空権を奪われることになるからです。オーストラリアから見ると、その重要な地に中国が触手を伸ばしているのです。

 パプアニューギニアを例に中国がアジア・太平洋地域で勢力を拡大する様子をお話ししました。もちろん、中国が影響力を強めようとしているのはパプアニューギニアに対してだけではありません。2012年9月には、中国共産党序列2位の呉邦国・中国全人代議長がミャンマーやフィジーを訪問しています。

中国の勢力拡大に対応するため、米国は具体的にはどのような行動を取ってきたのでしょう?

塩田:クリントン前国務長官がアジア太平洋行脚を始めました。第1弾は、2010年1月のパプアニューギニア訪問でした。ただし、この訪問はハイチ大地震のためキャンセルになりました。

 次が2010年9月の“第1次尖閣紛争”への対応です。中国政府は、日本の海上保安庁の船に衝突して拘束された中国船船長の釈放を求めて、強攻策を次々と打ち出しました。

 この時、レアアースの事実上の禁輸まで行いました。これは中国政府の大失態だったと言えるでしょう。アメリカ政府は中国に対する警戒感を何段階も高めたのです。そしてクリントン前長官は「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲である」と声明しました。

「日本の無人島のために米国人の血を流す覚悟がある」という重いメッセージでした。

塩田:次に、先ほどお話しした、クリントン前長官による2010年10月の東南アジア・オセアニア6カ国訪問があります。

 2011年12月には、中国の同盟国ミャンマーに飛び、軟禁中のアウンサン・スーチー女史と並んで座り、会話を交わしました。その後、スーチー女史は軟禁を解かれた。ミャンマー政府は開放政策へと姿勢を変え、中国とは微妙に距離を取り始めました。

オバマ大統領もアジア訪問を行いました。

塩田:そうです。オバマ大統領は2011年11月にオーストラリアを訪問、その足で、インドネシアのバリ島で開かれた東アジアサミットに参加しました。

 豪連邦議会で、オバマ大統領は重要な演説を行いました。ポイントは次の5つです。

アジア太平洋地域における米国のプレゼンスと任務の拡大を最優先するよう、国家安全保障チームに指示した
米国は太平洋国家として、日本などの同盟国や友好国と連携しながら、より大きく長期的な役割を果たす決意だ
オーストラリア北部ダーウィンに2500人規模の米海兵隊を駐留させる
「通商・航行の自由」と「中国国民の人権」の尊重を強調
日米同盟は「地域の安全保障の礎石」であり続ける
(産経、2011.11.18)

 1、2、4項はクリントン前長官のハワイでの演説の繰り返しです。

 重大な追加項目はダーウィンに海兵隊基地を作ると表明したことです。ダーウィンはかつて、マッカーサー元帥が「アイ・シャル・リターン」の言葉を残した土地です。日本のフィリピン攻略を受けた同元帥はここに逃れ、対日反攻策を練りました。ダーウィンを選んだことには、単に南シナ海に近いというだけでなく、象徴的意味が込められているのです。

 オバマ大統領はクリントン前長官とともにバリ島に移動。11月19日、東アジアサミットにアメリカ首脳として初めて参加しました。当時の新聞記事を追うと、会議での様子をうかがうことができます。

 オバマ大統領は「初参加の東アジアサミットで『圧倒的な存在感』(国際会議筋)を示した」(産経、2011.11.20)

 これに、「日本、オーストラリア、インドなどの同盟国や友好国が同調し、南シナ海の航行の自由をめぐって中国の温家宝首相と対峙する構図はオバマ氏が終始主導権を握った」(日経、2011.11.20)

会議を事実上、主宰する「ASEANは一連の会合で東アジアサミットに初めて参加した米国を後ろ盾にしながら、海洋安全保障分野で中国に圧力をかけた」(日経、2011.11.20)

 「参加18カ国のうち、約9割が海洋安全保障に言及。このうちオーストラリア、インド、シンガポール、ベトナムなど半数近い国が南シナ海の名称を使って同地域を巡る問題の重要性を指摘した」(日経、2011.11.20)

 「米国主導で東アジアサミットが進む中、同会議の場で南シナ海の領有権問題を取り上げることを拒んでいた中国の温家宝首相は、各国の相次ぐ発言に『みるみる顔をこわばらせた』」(日経、2011.11.20)

 かくて、アメリカのアジア太平洋回帰作戦は大成功を収めました。

第1期オバマ政権は、いまお話いただいたように、クリントン前長官を司令塔として、アジア回帰を進めてきました。しかし、新たに国務長官に就任したジョン・ケリー氏はアジア戦略を明示していません。最初の外遊には欧州と中東――エジプト、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、カタール――を選びました。

塩田:そうですね。とても危惧するところです。ジョン・ケリー氏が21世紀のネヴィル・チェンバレンにならないことを祈っています。チェンバレンは、第2次世界大戦の時、チェコのズデーデン地方を求めるナチ・ドイツに妥協して、その要求を飲みました。しかし、ヒトラーの拡大欲はこれで止まることはありませんでした。アメリカがクリントン・ドクトリンを今後も継続することを望んでやみません。

注:以上は塩田氏の独自の情報分析に基づいた個人的見解です。

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長。


08. 2013年3月13日 13:53:41 : xEBOc6ttRg
韓国に対する攻撃懸念=北朝鮮、移動式ICBM配備も−米情報長官
 【ワシントン時事】クラッパー米国家情報長官は12日、上院情報特別委員会の公聴会で証言し、休戦協定の白紙化など好戦的言動を繰り返している北朝鮮について「韓国に対する挑発行為に着手することもあり得ると強く懸念している」と述べた。
 長官は委員会に提出した報告書でも、北朝鮮軍は、2010年の哨戒艦沈没事件や延坪島砲撃に似た限定的な対韓国攻撃を「兆候なしに実施できる態勢にある」と指摘した。国防総省は「好戦的言辞を改め、頭を冷やす必要がある」(リトル報道官)と北朝鮮へのけん制を強めている。
 クラッパー長官は公聴会でまた、12年4月に存在が明らかになった大陸間弾道ミサイル(ICBM)級のミサイル「KN−08」に触れ、「北朝鮮はこうした武器システムの配備に向けた最初の措置を講じた」との見方を示した。(2013/03/13-11:44)

09. 2013年3月13日 17:45:38 : xEBOc6ttRg
infinity>国際>岡崎研究所 [世界潮流を読む 岡崎研究所論評集]
レーダー照射で新たな段階に? 
尖閣危機と習近平の指導力
2013年03月13日(水)岡崎研究所
 2月8日付ウェッブ米The Diplomat誌で、Linda Jakobson豪ローウィ国際政策研究所東アジア部長は、尖閣問題は、自衛艦への照射レーダーによって新たな段階に入ったが、習近平がどの位軍を掌握しているかは知る由もなく、中国の対日強硬路線は、国内政治問題もあり、続くだろう、と論じています。

 すなわち、自衛艦へのレーダー照射によって、尖閣問題は新たな危険な段階に入った。中国外務部は当初、本件について曖昧な対応を行ない、政策決定に関与していないことを暴露した。 ただ、より重要な問題は、習近平がレーダー照射を事前に了承していたのか、あるいは人民解放軍は共産党指導部から独立して行動をとっているのか、ということである。それは、わからない。習近平は党中央軍事委員会主席だが、この委員会がいつどのようなことを議論しているのかは、一切公表されていない。

 昨年、日本が尖閣諸島を国有化した後、中国は「魚釣島危機対応オフィス」を設置した、習近平がこれを率い、戴秉国副総理、軍幹部達が、数段階にわたる計画を作り上げた。中国は、尖閣の主権は日中間で係争中であることを日本に認めさせることを最小限の目標とし、日本がそれを認めれば、日中が交代で島海域を巡視すること、島周辺領海での漁業権についての交渉を推進することを狙っている。

 レーダー照射は、計画に基づいた次の段階だと言えるかもしれない。しかし、習近平がレーダー照射自体に許可を与えていたのかはわからない。レーダー照射は、おそらく北方艦隊司令部が命令したものであろう。

 中国政府筋によれば、習近平は党総書記に選出されて以来、「魚釣島危機対応オフィス」の会合には出席していないようだ。現在の中国指導部は、国内問題に忙殺されて、対外関係はおろそかになっている。そのため、外交面の監督と調整が不十分になる。こういう状況下では、偶発事件が収拾不能の事態を招くこともある。

 習近平は、尖閣問題が包含する危険性を認識していないわけではない。しかし、彼は、対日強硬姿勢を標榜する者達から、意図的に誇張された状況分析を受けることがままある。中国では、とりわけ日本となると、習近平に強硬な姿勢を要望するエリート集団が幾つもあるのである、と述べています。

                   ◆         ◆          ◆

 上記Jacobsonの「レーダー照射は、中国側が『計画』に基づいて仕掛けてきた新たな一歩ではないか」という点については、疑問があります。日本の報道では、レーダー照射は民主党時代にも行われていたとあるからです。もっとも、日本政府が今回これを世界に公表したことは、中国に対して圧力となっているでしょう。

 より基本的な問題は、中国共産党指導部は、本件について、どこまで軍部を掌握しているのかということです。習近平は胡錦濤と異なり、党総書記就任と同時に党中央軍事委員会主席にもなりました。習近平は、かつて党中央軍事委員会弁公庁秘書や党中央軍事委員会副主席を歴任し、習近平の軍掌握度は高いと一般には言われています。党総書記就任後初の地方視察でも、軍施設を3か所訪問しています。そこでは、三軍司令員を従えて駆逐艦に乗り、戦車に上ったと報道されています。

 しかし、Jacobsonも指摘するように、偶発的事件が収拾のつかない事態を呼ぶ可能性は常にあります。そうなれば、首脳間のホットラインがあったとしても役には立ちません。そのためにも、日米同盟を強化し、抑止力を高めておくことが重要でしょう。


infinity>国際>中国はいま某国で [中国はいま某国で]
【最終回】建てたビルが1年で壊れても
中国を賞賛し続ける産油国・アンゴラ政府
2013年03月06日(水)谷口智彦
 西アフリカの産油国アンゴラは、中国にとって巨大な石油輸入元である。

西アフリカのアンゴラ
空き住宅林立のワケ

 2010年、中国はアンゴラから日量78万8000バレルの石油を輸入した。同89万3000バレルを買ったサウジアラビアに次ぎ、輸入元として世界第2位に当たる。3位のイランに対して大きく水をあけた(Statistaによる)。

 アンゴラの意義を知る北京は多額の資金を注ぎ込み、住宅、病院を建てるなど同国での影響力強化に勤しむ。しかし、つくった病院はすぐさま欠陥を露呈し、住宅は借り手不足でゴーストタウン化した。それが、少なくとも12年央までの状況だった。アンゴラでの中国ソフトパワー外交は、投じるカネの割に不首尾であるかにみえる。

 中国人民解放軍の上級将校訓練課程に加え、中国商務省中央学校も履修・卒業したアフリカ人のロロ・ホルタという書き手は、中国への親密ぶりを想像させる経歴とは裏腹に、アンゴラに対する中国の関与を厳しく批判する記事を著した。文中、アンゴラ人土木専門家の引用がある。

 「ポルトガルがつくったビルは50年経ってもびくともしない。中国人が建てたビルは、1年もすると壊れだす。建てるのは安いし速いが、中国がつくるものは壊れるのも速い」

 12年4月、在北京アンゴラ大使は、中国人へのビザ発給件数が連日200を超えると明らかにした。大挙流入する中国人労働者や小商店主はアンゴラ社会との間で紛争を生んでおり、アンゴラ人の幼児を中国人が性的に虐待したとか、果ては「食べた」といった、事実か噂か分からない話まで地元紙に載る始末らしい。

 それでもアンゴラ政府は中国を批判せず、賞賛をもっぱらとする。中国も悪印象を拭いたいのだろう、新手の利益誘導策をやめようとしない。

 アンゴラの首都ルアンダ郊外に林立する真新しい集合住宅群について、英公共放送BBCが報じたのは12年7月のことだった。

 同国で長年政権の座にあるジョゼ・エドゥアルド・ドス・サントス大統領は、国民に十分な住宅を与えることを政策の目玉とする。問題のアパート群は中国のCITIC(政府系大手金融グループ、中国中信集団)が建てた。習近平・中国国家主席が現職就任前にアンゴラを訪れた際、大統領の案内で見学に出向いた先でもある。ところがBBCによると、借り手が現れず、これが空き家だらけだというのだった。

 流れは変わらなかった。報道の2カ月後、同じCITICがアンゴラ内10県で10万戸の住宅をつくる計画が明らかにされた。中国の鉄道会社は貨物線を敷き、アンゴラ内戦で破壊されたマブバス水力発電ダムは、2170万ドルの経費を負担し中国企業が再建した。

 こんな関係を指して、アンゴラ外務省高官のフランシスコ・ダ・クルス氏は「内戦の終結が02年。まさにインフラ再建が必要となるその時に、中国マネーが入ってきた。実に時宜を得ていた」と12年11月に北京で語り、ありがたがっていることを隠さなかった。最近は軍・軍関係も深まりつつある。

 もちろん中国は、すべてをタダで提供しているのではない。経費はアンゴラが中国に売る石油代金から差し引く形という。どこまでがそのように物々交換的に決済され、贈与はどれだけなのか、実態は知るべくもない。

 アンゴラは旧宗主国がポルトガル。中国に、同じ言葉が通じる地がある。香港同様の地位にあるマカオだ。アンゴラとの関係拡大のため、マカオは12年の6月、首都ルアンダに大使館的事務所を設けた。中国にしてみれば、欧州帝国主義の置き土産を活用した形だ。底流で多々問題が生じ、アンゴラ国民の対中感情は複雑なのだとしても、北京・ルアンダ関係の深化は続く。

 (本連載は今号で終了です。ご愛読ありがとうございました。筆者)


10. 2013年3月14日 00:39:34 : xEBOc6ttRg
背水の陣で核賭博に出た金正恩

クールに受けて立つ剛気の朴槿恵大統領

2013年3月14日(木)  鈴置 高史

 北朝鮮が先制核攻撃を公言した。米国に対しては「核保有国の認定」を、韓国や日本には“みかじめ料”を要求する布石と思われる。ただ、韓国の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は原則を曲げない剛気の人だ。北の核威嚇を受けっぱなしとも思えない。朝鮮半島は当分の間、緊張が続くだろう。

ソウルとワシントンを火の海に

 北朝鮮は3月6日以降、米国と韓国に対し核攻撃すると威嚇に乗り出した。同日付の労働新聞は1面で「米帝が核兵器を振り回せば、我々は精密核打撃手段でソウルだけではなくワシントンまで火の海にする」との北朝鮮軍将官の談話を伝えた。

 翌7日には国連安全保障理事会が核実験に関連した対北制裁を論議したことに関連し、北朝鮮外務省は「侵略者らの本拠地に対する先制核攻撃の権利行使を早める」との報道官声明を発表した。

 ニューヨークの国連本部では7日午前(日本・北朝鮮時間8日未明)に、これまでにない厳しい対北制裁決議が採択された。北朝鮮の言い分によれば「米韓への先制核攻撃の権利」を十分に得たことになる。

 北朝鮮は11日には朝鮮戦争の休戦協定を白紙化したと宣言した。さらに、板門店の北側代表部は南側の電話に出なくなった。5日、朝鮮人民軍最高司令部は報道官声明の形で、米韓合同軍事演習「キーリゾルブ」が11日に本格的に開始されたら「形式的に維持してきた休戦協定も全面的に白紙化する」と通告していた。

 北の白紙化はこの通告を実行に移したもので、米国や韓国に先制核攻撃などの威嚇は「本気」であると見せつけるのが狙いだろう。北朝鮮は国連制裁や米韓合同演習を名分に核戦争の危機を煽っている。

「核保有国との戦争」には逡巡

 北朝鮮の狙いは明白だ。世界に核保有国と認めてもらうことだ。北朝鮮の2月の「核実験」では広島級の3分の1程度の爆発が起きた、と見る西側の研究機関が多い。ただ、日米中韓ロなどの関係国で、この実験が成功し北が核保有国となったと認める国はない。

 まず、技術的理由だ。米日韓などの観測では核実験に付きものの放射性物質が検出されなかった、あるいは「検出されなかった」ことになっている。通常の爆発物を大量に起爆させて核実験を装った可能性もわずかながら残っている。

 本質的な理由は政治的な理由だ。もし、北朝鮮を核保有国と認めてしまうと核不拡散条約(NPT)が破たんしたとの認識が世界で一般化し、核保有を目指す国がさらに増えかねないからだ。ちなみに、国連の対北制裁は北朝鮮が核を持ったことに対してではなく、核実験したことを問題にしている。

 しかし、北朝鮮が自らの安全を増すためには――米韓による攻撃の危険性を減らすには――核による報復力を持ったと米国などに認めてもらうしかない。「核保有国との戦争」は米国や韓国の内側から自制がかかるとの読みだ。この判断に立って核報復力を持ったことを示すべく「先制核攻撃」を唱え始めたのだろう。

 ただ、唐突にそれだけを言うと、それこそ米韓の先制攻撃の名分にされかねない。そこで、国連決議や米韓演習に“言いがかり”をつける形をとったと思われる。

北東アジアのインドに

 暗に、ということなら米国が北朝鮮を核保有国として認める可能性は結構ある。韓国紙、朝鮮日報の李ハウォン政治部次長は2月25日付のコラム「(韓国大統領の)就任式に来なかった米国務長官」の中で、「米国のケリー新国務長官は北の核保有そのものよりも核不拡散に重点を置いている」と米国の譲歩への懸念を率直に表明した。

 北朝鮮に核を放棄させるために戦争を始める覚悟は米国には薄い。一方、北が核を持っても直ちに米韓は不利にはならない。米国の圧倒的な核戦力をもとにした報復を恐れ、北朝鮮は韓国や米国への核攻撃を容易には実行できないからだ。以上がテロ組織に対し北朝鮮が核を渡さない限り、米国が北の核保有を黙認する、という推測の根拠である。

 北にとって「暗に」だろうが、米国に核保有国と認めてもらえば十分な成果だ。米韓からの攻撃の危険性はこれまでと比べ大きく減る。さらに米国は北朝鮮と良好な関係を持とうとして、北が長年望んできた国交も結んでくれるかも知れない。

 なぜならインドが核を保有した際、米国は当初は非難したものの結局はそれまで以上に良好な関係を持つに至った。インドは米国の潜在的な敵国である中国と敵対しているからだ。米国にとって北東アジアでは中国が主敵であって北朝鮮ではない。

北の狙いは南と日本のカネ

 今回の北の「先制核攻撃による威嚇」で目を引くのは米国だけでなく韓国もはっきりと目標に据えたことだ。これまでは「北の核兵器は同族の我々には使われない」という安心感を韓国人に与えるため、北は南を核で威嚇することを避けてきた。

 南で反北感情が膨らむのを抑え、韓国内部の親北勢力をバックアップするためだった。だが「核保有国になった」と宣言すると同時にそうした配慮はかなぐり捨てた。

 むしろ「北の核兵器は南にも向けられているぞ」と脅せば韓国の中で「北朝鮮と話し合おう」という声が起きることを期待したのだろう。実際、統合進歩党や韓国大学生連合など親北勢力は10日から「韓国と米国が戦争の危機を生んだ。北と話し合おう」と国民に呼びかけ始めた。

 「話し合い」で北が狙うのは南のカネだ。韓国紙にはしばしば「国連が対北経済制裁を決めても中国が実質的には履行しないため無意味だ」との指摘が載る。それは事実だが、韓国もまた事実上の対北援助を続けている。

 北朝鮮の開城工業団地を通じた外貨だ。韓国企業は従業員の給与相当分と団地の運営費をドルで北朝鮮に渡している。5万3500人の従業員は多額のサヤを抜かれた後、北朝鮮の通貨で給与をもらう。これだけで年間、9000万ドルが南から北に渡る。今となっては北朝鮮のほぼ唯一ともいえる外貨の吸引パイプである。

 この工業団地は北朝鮮人民軍が運営しており、これまでも韓国に対し給与などの引き上げを要求してきた。このパイプを太くするだけで、北朝鮮は韓国から「核のみかじめ料」を容易に巻き上げることができる。

 韓国の北朝鮮専門メディア、デイリーNKは3月6日「北、『核の影戦略』を本格化」という見出しの記事を掲載した。この記事は「北は核保有を宣言し韓国を威嚇することでその心理を萎縮させ、主従関係を作って主導権を握るのが狙い」と指摘した。韓国の次は日本を核威嚇の対象とする可能性がある。

朴大統領の初めての試練

 朴槿恵大統領は北朝鮮の核威嚇についても、韓国内の親北勢力の扇動にも冷静に対応している。11日初めて開いた閣議で「北の挑発に対しては強力に対応せねばならない。しかし(公約である)韓半島信頼プロセスが作動すべく努力する」と述べた。

 韓国のこうした冷静な対応が続けば、北朝鮮は立つ瀬がない。せっかくの威嚇が無駄になるからだ。そこで全面戦争にならない程度の衝突を起こすか、起こす振りをして米国や韓国を対話に誘い出そうとする可能性がある。

 しかし、そうなれば今度は韓国が困惑することになる。米国は韓国の意向を無視して「テロ組織に渡さなければ」と暗に北の核を認めてしまいかねないからだ。いくら米国が「自分の核で安全を担保する」と韓国に約束しても、その約束が確実かは分からない。それに、核を持つことを米国に“許された”北は南に対しますます尊大な態度をとるだろう。

 では、北朝鮮が「核兵器を放棄」とはいかないまでも「核の威嚇をやめる」可能性はあるのだろうか。これも極めて薄い。なぜなら金正恩第一書記は、ここで米国から暗黙裏にでも核保有の承認を取り付けたうえ、韓国からカネを巻き上げなければ北のリーダーとしての信任を保てないからだ。

 父親の故・金正日総書記は国民を飢えさせながら核開発に邁進した。目的はまさに米国からの国家承認と韓国からのカネだった。莫大な犠牲を払っての投資の回収期がようやく来たのだ。息子がそれを取りはぐれたら、国民と指導層からの信を失うのは確実だ。

 金正恩第一書記の最後の核博打と、朴槿恵大統領の初めての巨大な試練。南北ともリーダーが一歩も譲れないだけに緊張は溶けそうにない。


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鈴置 高史(すずおき・たかぶみ)

 日本経済新聞社編集委員。
 1954年、愛知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。
 77年、日本経済新聞社に入社、産業部に配属。大阪経済部、東大阪分室を経てソウル特派員(87〜92年)、香港特派員(99〜03年と06〜08年)。04年から05年まで経済解説部長。
 95〜96年にハーバード大学日米関係プログラム研究員、06年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。
 論文・著書は「From Flying Geese to Round Robin: The Emergence of Powerful Asian Companies and the Collapse of Japan’s Keiretsu (Harvard University, 1996) 」、「韓国経済何が問題か」(韓国生産性本部、92年、韓国語)、小説「朝鮮半島201Z年」(日本経済新聞出版社、2010年)。
 「中国の工場現場を歩き中国経済のぼっ興を描いた」として02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。

  

 


 

「第三国移転」の管理を米国に委ねた〜F35をめぐる菅談話

「事前同意」の敷居を下げた

2013年3月14日(木)  森 永輔

 菅義偉官房長官が3月1日に談話を発表。次期主力戦闘機「F35」の部品等製造に日本企業が参加することを容認するとした。日本の武器輸出は「解禁」されたのか? 安全保障論(軍備管理)の専門家、佐藤丙午・拓殖大学教授に聞いた。(聞き手=森 永輔)
菅義偉官房長官が3月1日に談話を出し、航空自衛隊が調達を決めた次期主力戦闘機「F35」の機体及び部品(部品等)製造に日本企業が参加することを容認すると発表しました。これは武器輸出三原則等を形骸化するものと考えてよいのでしょうか?

佐藤:そこは厳密に議論する必要があります。武器輸出三原則等は元々、完全な武器禁輸を規定したものではありません。


佐藤 丙午(さとう・へいご)
拓殖大学海外事情研究所教授。前防衛庁防衛研究所主任研究官。一橋大学大学院修了(博士)。専門は、国際関係論、安全保障論、アメリカ政治外交。
 武器輸出三原則等は、佐藤内閣が表明した「武器輸出三原則」と、三木内閣が政府統一見解として出した「等」の2つの部分からなります。「武器輸出三原則」は共産圏諸国、国連決議で武器の輸出を禁止された国、国際紛争当事国またはその恐れのある国への武器輸出を禁止しています。

 「等」は、この3分類に当てはまる国以外の国に対して「武器の輸出を慎む」としています。「慎む」は政治的な用語で明確な定義はありません。その時の政治的環境に応じて、意味が変化してきました。1976年の政府答弁は「武器禁輸を意味しない」となっています。

なるほど。そもそも武器の全面禁輸を決めたものではなかったんですね。

佐藤:とは言え、武器輸出三原則等は武器や装備品、関連技術の輸出や海外移転について一定の制約を課す役割を果たしてきました。

 そのタガを緩め、日本の防衛産業に対して武器の共同開発・生産に道を開いたのは藤村談話です。2012年に12月に、野田政権の藤村修官房長官が発表しました。今回の菅官房長官の談話は藤村談話を一歩先に進めるものと位置づけられるでしょう。

藤村談話の時にも解説していただきました。キーワードは「平和協力」「国際共同開発」「目的外使用」「第三国移転」「事前同意」の5つでした。すなわち、「平和協力」と「国際共同開発」を目的とする場合に限って、武器や関連技術の海外移転を認める。その際、「事前同意」のない「目的外使用」と「第三国移転」は禁止を求める。

「目的外使用」と「第三国移転」の管理を米国に委ねた

佐藤:その通りです。今回の菅談話には特に注目すべき点があります。「事前同意」に触れていないのです。このことは、国際共同開発・生産に参加する際の条件だった「事前同意」について従来とは違うアプローチを採用したことを意味します。

 米国はF35の部品等の製造について「事前同意は与えない」と主張していました。日本は、F35の後方支援システム(ALGS:Autonomic Logistics Global Sustainment)に参加するために、「目的外使用」と「第三国移転」の厳格な管理を米国に委ねた、と言えます。

後方支援システムというのは、F35を導入する各国が部品などを分担して生産し、米国が一元管理する仕組みですね。

 今後、ほかの敷居もどんどん低くなっていくのでしょうか?

佐藤:そうとは言えないと思います。まず、現時点で日本が単独で開発した武器を輸出することを、政府は考えていないと思います。それから、自衛隊が使用しない武器を輸出することもないでしょう。防衛省は「日本の平和と安全に貢献するなら共同生産も可能」と言っています。「日本の平和と安全に貢献する」というのは、自衛隊が使用するという意味です。

 さらに共同生産のパートナー国の範囲についても限定されていると思います。現時点ではNATO(北大西洋条約)加盟国とオーストラリア、イスラエルが想定されており、今後も無原則に拡大していくとは考えられません。

F35以外でも検討が進む共同開発・生産

シーレーンの防衛を考えると、インドとの防衛協力が視野に入ってくると思います。インドとの共同開発・生産の可能性はありますか。

佐藤:インドには核の問題があります。核不拡散条約(NPT)に加入していません。日本とインドが2カ国で共同開発・生産するのは難しいとインドも理解しているでしょう。米国や英国を含めた多国間のプロジェクトはありえるかもしれません。

英国と化学防護服を共同開発・生産する話があります。これは国際共同開発の分野において、防衛装備品の海外移転の実績となるものでしょうか。

佐藤:化学防護服は軍だけでなく、政府の他部門や民間でも使えるものです。軍以外の機関が使用するなら「武器」とは言えないとする解釈も成り立ちます。

 また、この案件は武器輸出三原則等との関係よりも、F35の導入を決める過程で起きた事態の収集策という意味が強いようです。日本はこの過程で、イギリスも開発に加わったユーロファイターも検討対象にしました。新聞報道によると、この時に英国側にかなり気を持たせたもののF35を選んだので、当て馬にされたと感じた英国が強い不快感を持ったと言われています。化学防護服の件は、この関係を改善する意味があるようです。

オーストラリアが、日本の「そうりゅう」型潜水艦のディーゼルエンジン技術を求めています。

佐藤:これは完全に軍用ですね。これが実現すれば、海外移転の実績となるでしょう。

第6世代の戦闘機開発をにらむ

菅談話の中に「我が国の防衛生産及び技術基盤の維持・育成・高度化に資する」とあります。F35の部品等を日本企業が生産したとして、日本の防衛産業の維持や育成に役立つものなのでしょうか?

佐藤:決定打になるようなものではないと思います。

 ただし、F35の次、第6世代と呼ばれる戦闘機の開発を念頭に置いた時に、最先端の技術や情報に接するチャネルを維持しておく必要があります。

 第6世代の戦闘機は性能が高すぎて「人間では操縦できなくなるかもしれない」「無人機になる可能性がある」と言われています。その価格も非常に高くなり、日本の防衛予算1年分でようやく数機購入できるだけ、という話も耳に入ってきます。このような大きな飛躍が生じるかもしれない時に、技術と情報の面で後れを取るのは危険です。

武器輸出三原則等は現在の国際環境にマッチしているのでしょうか? 冷戦が終わり「共産圏諸国」は事実上、存在しなくなりました。国連決議で武器の輸出を禁止された国と、国際紛争当事国またはその恐れのある国に武器を輸出しないのは、国際社会の一員として当然のことで、武器輸出三原則等を振りかざすほどのことではないと思います。この原則がなくても事実上、不便がないとも考えられます。三木内閣が加えた「等」の部分は、もともと武器の禁輸を定めたものではないわけですし。もちろん、中国が「日本は軍国主義を復活させた」とプロパガンダに使用する可能性はありますが。

佐藤:武器輸出三原則等が存在することで日本は国際社会から「武器の禁輸国」と見なされています。このことにメリットはありません。国際社会では安全保障上の関与の信頼性が低い、すなわち「武器の禁輸国=頼りない国」となるためです。

 ただ、おっしゃる通り、中国と韓国が“日本の右傾化”を国際世論に訴えるネタにする可能性があります。これらのバランスを見て考える必要があるでしょう。もう一つ、日本の内政上の問題があります。国会答弁をはじめとする様々なものが「武器輸出三原則等を掲げる平和国家・日本」を前提に構築されてきました。この体系を崩すことは容易ではありません。


森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長。

 

「防衛特需」にかける造船業界

2013年3月14日(木)  熊野 信一郎

民間受注が低迷する造船業界で、防衛特需への期待が高まる。日中関係緊迫で、防衛省向け艦船建造が増える見込みなため。国策で強化が進む資源探査船も追い風だ。官需依存が深まる。

 円高是正で製造業に追い風が吹く中、日本の造船業界でも中国、韓国勢への反転攻勢の機運が膨らむ。ただ、世界的な供給過剰と船価低迷は続き、実際の受注回復には時間がかかると見られる。国内で造る船がなくなる「2014年問題」も、解決のメドが立たない。

 円高是正に続き、安倍政権に対する期待が高いのが、官需拡大だ。そこには2つの牽引役がある。

 1つが、海洋安全保障を強化する政策だ。政府は1月、自衛隊の設備増強、造船業界で言えば新艦船の建造や補修などの方針を定める「中期防衛力整備計画」の廃止を決めた。2011年から2015年までの従来計画は、民主党政権時代に策定した。尖閣問題や北朝鮮の核実験などを受け、米軍やアジア各国との連携も含めて防衛体制を強化する必要が生まれたため、抜本的に見直す。

 2013年度の防衛費は11年ぶりに増える。予算案(契約ベース)では護衛艦と潜水艦、掃海艇それぞれ1隻、計3隻を建造する予定だ。2012年度の補正予算では海上保安庁の「我が国領土・領海の堅守等の海上保安体制の強化」のために142億円が計上、巡視船6隻の建造が決まった。1980年代から艦船建造数の減少が続いており、「尖閣」特需への期待が高まっている。

 もう1つが、領土問題とも深くかかわる海洋資源。原子力発電所の停止を受け、メタンハイドレート、天然ガスなどエネルギー資源のほか、レアメタル(希少金属)など鉱物資源への注目度が高まっている。それらの資源を探査する船の受注増への期待が高い。


 国土交通省の2012年度補正予算では、「海洋資源開発の推進」として18億円が計上され、洋上の物流・輸送施設プロジェクトを手がける技術研究組合が造船大手と共同で結成されるなど、一部は既に動き出した。

 3月末に向けて改定作業が進む政府の「海洋基本計画」では、海洋資源開発や海上輸送の安全確保、離島保全などの戦略が改めて示される。海洋資源や防衛関係の予算拡大が見込める。

人材と技能の断絶が懸念

 日本造船工業会の釜和明会長(IHI会長)は「これまで商船事業が艦船の事業基盤を支えてきた。これからも艦船向けの人材や設備を維持できるよう、国家の安全保障の視点で考えてほしい」と話す。

 大手造船会社の造船事業に占める防衛事業の割合は、10年前の3割近くから直近はその半分の15%以下へ低下した。護衛艦1隻の建造に携わる日本企業は2500社とされ、その8割が中小企業。防衛省向けの特殊な規格や装備に対応できる技術を持つ人材が途絶えてしまう懸念も強い。

 中国と領土を巡る緊張が続けば、艦船の新規建造や補修ができるインフラ強化は重要性を増す。日本企業の中国ビジネスには逆風となるが、造船業界では長引く低迷脱却の1つのきっかけになる可能性もある。


熊野 信一郎(くまの・しんいちろう)

日経ビジネス香港支局特派員。日経BP社入社後、日経ビジネス編集部に所属。製造業や流通業を担当後、2007年に香港支局に異動。現在は主に中国や東南アジアの経済や企業の動き、並びに各地の料理やアルコール類の評価、さらに広島東洋カープの戦力・試合分析などを担当する。


11. 2013年3月14日 12:40:12 : xEBOc6ttRg
北朝鮮が朴大統領を初めて非難

「毒々しいスカートの風」


 6・25戦争(朝鮮戦争)の休戦協定破棄を宣言するなど韓国への威嚇を強めている北朝鮮が、初めて朴槿恵(パク・クンヘ)大統領を非難する談話を発表した。名指しは避けたものの、現在の南北対立の責任を朴大統領に転嫁した格好だ。

 北朝鮮の国防委員会に所属する人民武力部は13日に報道官談話を発表し、朴大統領について「傀儡(かいらい)軍部の好戦狂たちの狂気じみた醜態は、大統領府(青瓦台)の居間で巻き起こっている毒々しいスカートの風と無関係ではない」と主張した。朝鮮中央通信が伝えた。「スカートの風」には「出しゃばり女」などの意味があり、女性大統領を遠回しに非難したものとみられる。

 北朝鮮はまた「大統領府の居間では『安保態勢』に万全を期すべきだとしながら『武器だけで国を守ることはできない』『核兵器など軍事力にばかり集中する国は自滅する』などと非常に不吉な悪口が流れいる」と非難した。朴大統領が今月8日、韓国軍の式典で「国民は飢えているのに核兵器などの軍事力ばかりに集中すれば、どんな国も結局は自滅する」と北朝鮮を非難したことに反発したものだ。

 北朝鮮は「核を持った民族と人民の軍隊は大敵との戦いで常に勝利を収め、国の強盛と安全を最も頼もしく保障するものだ。この厳然たる真実から目を背けたまま核兵器を放棄しろと言うことこそ、現実判断能力が完全にまひしたばか者たちの妄言だ」と主張し、核保有の意志を重ねて強調した。

 さらに「休戦協定の効力も北南不可侵宣言による拘束も存在しない」ため「残されたのはわが軍隊と人民の正義の行動、無慈悲な報復行動だけだ」と韓国を威嚇した。

パク・スチャン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版


 


 


中国「サイバー攻撃」で国際ルール順守要求 米大統領

 オバマ米大統領は13日放送のABCテレビのインタビューで、米国を標的にしたサイバー攻撃について「国家や犯罪組織の支援を受けている」と述べ、組織的な犯行であるとの認識を示した。同時に「米国は中国や他の国に国際規範や国際法に従うよう求める」と強調。中国などと「真剣に話し合わなければならないだろう」と語った。

 米国では政府や報道機関、企業でサイバー攻撃による機密の盗難やコンピューターシステムの混乱が相次いで発覚。中国の人民解放軍の関与も疑われており、オバマ氏は中国がサイバー攻撃を仕掛けている可能性を示唆した。インタビューではサイバーセキュリティー対策の強化を定めた法案の可決も議会に求めた。

 カーニー大統領報道官は13日の記者会見で、サイバー攻撃への対応を巡ってオバマ氏と米企業首脳らが会談すると明らかにした。オバマ政権はサイバー攻撃の違法性を国際世論に訴えつつ、企業との連携を強化しながら対抗策づくりを進める構えだ。

(ワシントン=吉野直也)

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12. 2013年3月14日 20:15:19 : xEBOc6ttRg
深まる北朝鮮の孤立、中国が取るべき選択
2013年 03月 14日 18:42

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コラム:リーダーシップなき欧州の行方
国際政治学者イアン・ブレマー

朝鮮半島では緊張が高まっており、今後さらに不安定さが増していくとみられる。北朝鮮は朝鮮戦争休戦協定の破棄を表明し、同国の人権侵害を指摘した国連報告書を偽造だと非難、米国に対しては「核兵器での先制攻撃」さえ警告している。

私は先週に中国を訪問したが、そこで面会した外交政策担当の高官らは、かつてほど北朝鮮への影響力は持っていないと口をそろえた。北朝鮮をめぐる状況が手に追えなくなりつつあるという発言は、それ自体、同国への厳しい対応で中心的役割を担うべきとの圧力から自らを守る意味合いもある。しかし、われわれはこうしたメッセージを真に受け取るべき時期に来ている。

今のところ、中国から北朝鮮への通常の外交チャンネルは機能していない。当局者が語ったところによれば、中国は北朝鮮側に何かを伝える際、財界のリーダーなどを通じた非公式な接触に頼らざるを得なくなっている。かつて毛沢東は中朝関係を「唇と歯のように緊密」と表現したが、今ではあたかも北朝鮮の唇は閉じられ、中国は歯ぎしりをしているようだ。

では、問題をどう解決すべきか。中国国内では、北朝鮮との外交関係を完全に断ち切るべきかどうかといった声さえ出ている。共産党幹部によると、今月初めに開催された中国人民政治協商会議(CPPCC)では、北朝鮮を「維持すべきか見捨てるべきか」との議論もあったという。

中国の沈黙は北朝鮮には間違いなく打撃となる。1990年代初頭以降、北朝鮮はエネルギー輸入の90%超を中国に頼ってきたとみられる。消費財の80%と食料の45%が中国からの輸入品という推計もある。中国は、北朝鮮経済の命綱を握っていると言えそうだ。

一方、中国は北朝鮮の不安定化から得るものはほとんどなく、外交関係の断絶は状況を悪化させるだけだろう。

3度目の核核実験を強行した北朝鮮の最近の行動は、日米韓の関係強化を促し、中国の影響力がどれほど低くなっているかも浮き彫りにした。北京から500マイル(約800キロメートル)以内での核戦争の脅威さえもたらしている。

故金正日総書記が中国を訪問したのは、最高指導者となってから6年後だった。後継者の金正恩第1書記も、関係強化や対話確立の前に、機が熟すのを待っているのかもしれない。金正恩氏が米国から不当な扱いを受けていると感じていることは確かだ。短気な子どものように振る舞うことで怒りを示し、その態度が交渉や支援を引き出すことを期待している。しかし、それで望むものが得られることはまずないだろう。

対北朝鮮で何が正解かを見極めようとすることも同様に無駄な試みだ。状況変化の鍵は北朝鮮政権内部の健全性だ。金正恩氏の態度は足元の不安定化を表したものだろうか。同国の権力構図の分析は非常に難しくなっているので、「対立国」は現状維持の姿勢を通すことがベストかもしれない。

米国と韓国にとってそれは、北朝鮮の攻撃に備えて軍事演習を継続することを意味する。中国にとっては、北朝鮮との関係を切らないことを意味する。金正恩氏が自らを追い詰める事態を避けるため、確固たる外交チャンネルを作ることが重要だ。

中国が国連安保理の制裁強化を支持できないという訳ではない。制裁を支持する一方でそれを重要視しないことにより、北朝鮮と欧米諸国の仲介役を果たし、情勢の安定化を図ることが可能かもしれない。

金正恩氏が窮地に陥れば、非常に危険な状況に陥り得る。政権崩壊のシナリオを考えてみるといい。万策が尽きれば今よりさらに常軌を逸した行動に訴え、中国の存在がなければ逃げる先もなく、静かに退陣することより、国際的な危機の引き金を引くことを選択するだろう。

この惨事を阻止する役割は、やはり中国にしか担えない。たとえ影響力が過去に比べ低下していてもだ。北朝鮮の体制と核兵器を解体するための明確な策はない。しかし、 正恩氏が言う「予測不可能な(恐ろしい)栄光の炎」の到来を避けるには、 北朝鮮を見放すより、解決法を模索する方がはるかにベターな選択肢ではないだろうか。

(13日 ロイター)


13. 2013年3月15日 01:37:55 : xEBOc6ttRg
核開発のジレンマに陥った北朝鮮

北の「停戦協定白紙化」は国内を押さえる危機演出

2013年3月15日(金)  重村 智計

 北朝鮮が5日、「休戦協定の白紙化」を宣言した。一方、米韓も最大級の軍事演習「キーリゾルブ」を11日から始めた。対抗して、北朝鮮も大規模演習を行う。――こうした状況を受けて、朝鮮半島は「一触即発の緊張状態」にある、との主張や分析がある。

 だが、不測の事態や偶発的な戦争が起きる可能性は、限りなくゼロに近い。北朝鮮には、軍事紛争を起こす力はない。北朝鮮は国内を引き締め、金正恩体制を強化するために「戦争の危機」を演出している。米国との対話作戦は、2次的な目的にすぎない。

 北朝鮮は、なぜ核開発を続けるのか。最大の理由は、石油がないうえ、通常兵器が劣化しているので、体制が崩壊しかねないからだ。北朝鮮は、石油を一滴も生産できない。中国やロシアからの輸入に頼っている。

 北朝鮮が軍事行動をするには、少なくとも年間で300万トンの軍事用の石油が必要だ。さらに、中国やロシアが無制限に石油を供給する保障がないと戦争はできない。湾岸戦争で多国籍軍は1000万トンを超える石油を使用したと言われる。

 ところが、北朝鮮が昨年輸入できたのは、中国からの原油50万トンと、ロシアや東南アジアから集めた20万トンの石油製品しかない。全て合わせて、わずか70万トンだ。このうち、軍事用に使えるガソリンや軽油、ジェット燃料は最大で40万トンでしかない。40万トンでは、演習もまともにできない。日本の自衛隊は、年間150万トンの石油を消費している。40万トンがいかに少ない量であるかわかるだろう。

米韓軍事演習を「口実」と捉える

 北朝鮮は1993年に「核拡散防止条約(NPT)」から脱退した際に、米韓軍事演習の中止も求めた。なぜ、北朝鮮は米韓演習にそれほど神経を使うのか。理由は簡単で、虎の子の「備蓄石油」を失うからだ。

 北朝鮮は、米韓軍事演習を「口実」にして、米韓軍が北朝鮮に攻め込むと考えている。だから、米韓の演習に対して、同じ規模の演習を行い対抗する。その結果、多量の石油を消費する。備蓄用の石油も使わざるをえず、北朝鮮の通常戦力は「無力化」してしまう。

 韓国軍と米軍は、北朝鮮軍の石油が不足している状況を理解している。だから、北朝鮮軍の石油を大量消費させる軍事演習を展開する。このため、米韓軍事演習が終わると、北朝鮮軍の行動が極端に低下する。戦闘機は飛ばず、戦車や軍用車も動かなくなる。米韓軍事演習が終わると、北朝鮮の軍事挑発の可能性は激減する。

「休戦協定白紙化」は「破棄」を意味しない

 北朝鮮は3月11日に、休戦協定の白紙化を宣言した。休戦協定がなくなれば戦争状態になる――「白紙化」に驚いて米国が「話し合い」に乗り出すことを期待している。休戦協定を白紙化し、「平和協定」に代えるのが北朝鮮の目的だろう。ところが、米国も中国も反応せず、国連安保理の制裁決議を採択してしまった。

 なぜ北朝鮮は、休戦協定「破棄」と言わず「白紙化」と言ったのか。まず、「白紙化」の撤回を議題とする話し合いをする余地を残したのだ。「破棄」と言うと「後戻りができない」事態に陥るかもしれない。

 休戦協定の位置づけは複雑だ。既に実質的な効力を失っているものの、北朝鮮が白紙化しても効力を維持し続けている。

 既に効力を失っていることについて。北朝鮮は韓国の延坪島を砲撃したり、韓国海軍の艦艇「天安」を撃沈したりしている。これらは休戦協定違反だ。自ら協定に違反しながら「米国の敵視政策」を非難し、「白紙化」を宣言する「田舎芝居」を打ったわけだ。観客である米中韓は衝撃を受けることもなく、拍手することもなかった。

 依然として有効であることについて。休戦協定の署名当事者は、(1)朝鮮人民軍最高司令官、(2)中国人民志願軍司令官、(3)国連軍総司令官――の3者である。北朝鮮だけが「白紙化」しても、他の2者は合意していない。

 北朝鮮は、これまでも「危機」を演出し米国と交渉する手口を何度も使い成功してきた。この成功体験が、「休戦協定白紙化」宣言に踏み切らせたのだ。だが、童話の「オオカミ少年」のように、さすがの米国や韓国も今回は騙されることはなかった。

 北朝鮮が白紙化を撤回するか、米国が話し合いに応じるか、双方の我慢比べである。先に折れた方が、負けだ。

核開発のジレンマ

 北朝鮮はいま、核開発のジレンマに直面し始めている。北朝鮮は、体制崩壊を懸念して、核開発を推進した。石油がなく通常兵器が劣化しているのがわかれば、米軍と韓国軍が攻めて来る、と心配した。また、軍の威信が失われれば体制が崩壊する、と恐れた。

 その結果、核開発を推し進めた。核兵器を保有すれば、韓国軍と米軍は攻めてこないし、体制は崩壊しないと考えた。確かに、この判断は正しかったかもしれない。「リビアやイラクが攻撃されたのは、核開発をしていなかったからだ」というのが北朝鮮が歴史に学んだ教訓だ。小国は、核兵器を開発すれば防衛力が高まり、交渉が有利になると考えがちだ。

 ところが、核開発が交渉の道具として使えるのは、開発途中の段階だけである。大国は、核開発を中止させようと交換条件を提示する。だが、核兵器を完成させてしまうと事態は変化する。

 核兵器の保有が明らかになり、放棄を迫ることが難しくなると、大国は厳しい制裁を課す。このとき核開発国は「核兵器は使用できない兵器」であるという現実に気づかされる。もし核兵器を使用すれば、自分も核攻撃される。核攻撃されれば、北朝鮮は崩壊する。これが、核兵器のジレンマである。核兵器の脅しの効果がなくなると、重荷になるのだ。こうして、旧ソ連は崩壊した。中国も、核兵器を脅しの材料としては使えない。

 北朝鮮は「核兵器の小型化と軽量化に成功した」と発表した。これからが、大変である。ミサイルと核兵器の改良にはなお資金が必要だ。さらに、核兵器の管理維持も大変だ。核兵器が使用できない武器である以上、負担だけが増える。アメリカは、核兵器を保有している国が核兵器を使用したり、核攻撃をしたりする恐れがある場合は、核先制攻撃すると宣言している。

 北朝鮮は、核兵器をほぼ完成させたために、「核は使用できない兵器」であることのジレンマに直面することになった。このジレンマを解消するために、「北の核は、日本を狙っている」と北支持の専門家に言わせているのだ。

金正恩体制の不安――改革の挫折

 韓国人の専門家の多くは、北朝鮮の「休戦協定白紙化」と「南北基本合意」破棄は、国内的な理由が70%を占めると分析している。つまり、金正恩体制が安定していないので、緊張状態を高め「戦争だ」と宣伝し不満を押さえる必要があるというのだ。それほどに、体制はまだ安定していない。

 それを示す情報がいくつもある。例えば、経済改革についての情報と報道が消えてしまった。金正恩体制が発足した直後に、北朝鮮が改革開放に踏み切るとの情報が流れた。さらに、軍の利権が内閣に移管される、との報道もあった。ところが最近になって、改革は中止され軍の利権は全て軍に戻された、との情報が北朝鮮内部から伝えられた。

 また、過去1年間に軍首脳が何人も更迭、もしくは格下げされた。さらに、昨年9月から今年初めまで、金正恩第1書記は軍部隊の視察をやめた。軍人による金正恩氏暗殺計画やクーデター計画が発覚したのではないかと観測された。

 さらに、金正恩第1書記が演説している際に、実力者と言われる張成沢・国防副委員長がまったくそっぽを向いて勝手な動きをしている写真が公開された。韓国や日本の新聞は、「張成沢氏が実力者であることを証明している」と伝えた。

 ただし、この解釈には無理がある。むしろ、反張成沢派が意図的に公表したと考えるべきだろう。つまり、体制の中でなお勢力争いが展開されていることの表れなのだ。

 北朝鮮では、写真は厳格な検閲を経て公開される。写真は、張成沢氏にとっては決して好ましい構図ではなかった。金正恩氏が演説して最中にそっぽを向いている写真は、絶対に公表してはいけないものだ。それが公表されたのは、張成沢氏をおとしめるための画策と考えるべきだろう。

 張成沢氏は、軍から利権を引きはがし政府と党に移管しようとして、軍首脳部から大きな反発を受けた。また、実力者の崔龍海・人民軍総政治局長とはライバル関係にある。さらに、北朝鮮軍の首脳である呉克烈・国防副委員長と金英哲・偵察総局長も、対立関係にあるとされる。金格植・人民武力相も勢力拡大を狙っている。

 こうした内部の抗争や不満を抑えるために、「戦争の危機」を演出する必要に迫られたとすれば、北朝鮮の対応は理解できるだろう。

いつもの劇場型演出

 北朝鮮はいつも同じ手口を使う――緊張を高め、制裁が実施されると、次は対話を演出し、場面を突然転換させようとする。これは、金正日総書記が使った手法である。金正日総書記は、映画や歌劇の演出者だった。観客を感動させ、驚かせる手法に長けていた。

 この映画の演出を、外交交渉にも利用してきた。北朝鮮の首脳たちは、これまでと同じ「劇場型演出」の手法を使っているにすぎない。だから、国連で制裁決議が採択されそうになると、話題を変えるために「休戦協定白紙化」で驚かし、場面を転換しようとした。

 だから、緊張状態を転換するために、次は対話攻勢に出るだろう。あと数回の核実験を行った後で、「核実験放棄」を宣言し、「そのための米朝交渉」を呼びかけるに違いない。あるいは、南北対話を提案するだろう。南北の当事者が対話をすると、緊張が緩和し、制裁の効果が失われる。南北対話がだめなら、日朝交渉を呼びかける。これが、古くからの北朝鮮の日米韓分断戦略である。

 ともかく、北朝鮮の「一触即発の危機」宣伝に騙されてはならない。危機とジレンマに直面しているのは、北朝鮮なのだと冷静に考えることが大切だ。


重村 智計(しげむら・としみつ)

早稲田大学国際教養学術院・教授。
1969年早稲田大学法学部卒業。1976年に韓国高麗大学大学院研究生。 1986年スタンフォードプロフェッショナルジャーナリズムプログラム修了。
シェル石油勤務を経て、1971年毎日新聞社に入社。 1979年〜1985年、毎日新聞社ソウル特派員。89年〜94年ワシントン特派員。 毎日新聞論説委員をへて、2004年9月より現職。
主な著書に『北朝鮮はなぜ潰れないのか』 (2007年・ベスト新書)、『朝鮮半島「核」の外交−北朝鮮の戦術と経済力』(2006年・講談社新書)、『外交敗北−日朝首脳会談の真実』(2006年・講談社)など。


混迷する朝鮮半島

朝鮮半島の動向から目が離せない。

金正恩政権は、事実上のミサイル実験と見られる「人工衛星打ち上げ」を計画。
この成否は、日本に対する核の脅威を変質させる可能性がある。
金正恩氏の政治基盤の安定にも影響する。

一方、韓国では4月に議会選挙が、12月に大統領選挙が予定されている。
現・李明博大統領は日米と緊密に連携している。
しかし、次期政権が同様とは限らない。

韓国の動きも、北朝鮮の変化も、日本の政治・経済・社会に直接の影響を及ぼす。
その変化をウォッチし、専門家の解説をお送りする。


14. 2013年3月15日 20:26:28 : xEBOc6ttRg
2013年 3月 15日 10:45 JST
韓国の延坪島に関心集まる―北朝鮮との緊張高まる 

Reuters
朝鮮中央通信が配信した北朝鮮軍の実弾演習

【ソウル】韓国と北朝鮮の緊張関係が一段と高まっており、2010年に北朝鮮軍部隊が砲撃した韓国の延坪島(ヨンピョンド)に関心が集まっている。韓国の首相が14日、同島を視察したのに対し、北朝鮮メディアは最高指導者・金正恩第1書記が同島近くで実弾射撃訓練を指揮したと伝えた。

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 韓国の鄭烘原首相は14日朝、黄海上の軍事境界線である北方限界線(NLL)に近い延坪島に飛び、避難施設を視察したほか、同島駐在の海兵隊部隊を訪問した。

 同首相は海兵隊部隊に対し、「国民の生命と財産を守る強力な砦として、軍は実際の戦争のように訓練し、高度の警戒を維持し、北(北朝鮮)のどんな挑発行動にも断固として対処する準備を完全に整えるべきだ」と激励した。

 北朝鮮は2010年11月、延坪島を砲撃した。1950年代の朝鮮戦争以来、韓国領土への初めての攻撃で、4人が死亡した。北朝鮮は当時、この攻撃は、韓国軍が同島から訓練で発射した砲弾が北朝鮮の主張する水域に落ちたためだと主張していた。

 北朝鮮メディアは14日、延坪島およびもう一つの韓国の島である白翎島(ペンニョンド)に近い境界線の北側の陣地で金第1書記が砲撃訓練を指揮したと伝えた。同報道は訓練がいつ実施されたか言及していないが、金第1書記が先週、白翎島に近い北朝鮮の陣地を訪問したのに次いで、今週に入って延坪島に近い別の陣地を訪問したと伝えている。韓国国防省は、金第1書記が参加したと伝えられる訓練に関する情報は一切ないと述べた。

 北朝鮮は、2月12日の核実験に対し国連制裁決議が採択されて以降、韓国に対する通常の対決姿勢を強化している。またそれは韓国で実施されている軍事演習への対応でもある。北朝鮮は11日、1953年に調印した朝鮮戦争の休戦協定を白紙化し、南北不可侵合意を無効としたと発表している。さらに、米国に対する核攻撃も辞さないと警告したが、こうした攻撃能力を持っているとは考えられていない。

 アナリストたちは、こうした北朝鮮の瀬戸際政策は、金体制への国内支持を固めることを狙った歴史的なサイクルに沿っているとみている。北朝鮮が侵略の脅威にさらされていることを描写する一方で、就任間もない韓国の朴槿恵政権と米国に圧力をかけ、緊張緩和のため支援などを提供させようとする試みだ。

 北朝鮮は北の海岸から目視できる延坪島と白翎島の領有権を主張していないが、両島周辺の水域の領有権は主張しており、海上の境界線について、休戦協定で合意した1953年当時に国連が引いた境界線より数マイル南に移動するよう主張している。

 NLLとして知られるこの境界線は、韓国と北朝鮮間で海上衝突をいくつか繰り返し、死者も出た。2010年3月には、白翎島近くの水域で韓国の軍艦が爆発・沈没し、水兵46人が死亡した。国際調査団が沈没は北朝鮮の魚雷によると断定したが、北朝鮮はこれを否定し続けている。

 アナリストたちは、北朝鮮による最近の脅しにもかかわらず、攻撃の公算は小さいとみている。韓国もまた、攻撃が差し迫っている兆候はないと述べている。しかし緊張が高まっているだけに、小さな挑発行動があっただけでも衝突が突然エスカレートする懸念はある。


15. 2014年3月29日 03:03:16 : 4bjhSNQflA
金正恩「2015年に朝鮮半島を武力統一する。 俺が戦車に乗ってソウルに進撃する。」
http://dat.2aa.jp/poverty/1395797987.html

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