ひとつは紛争仲裁調停の失敗はアサド政権にあるとして安保理の開催を要請し、安保理決議にアサド政権の退陣と拒否した場合はイラクやリビアでそうしたように罰則の援用を利用した武装勢力側に直接的な武力援助を施しアサド政権を力で排除したいアメリカ、イスラエル、サウジ、カタールの対イランを睨んだ策謀をロシア、中国が調停の仲介にあたる確約をしてとりあえず避けたこと。

もうひとつは監視団の延長は監視団がシリアに留まる限り、強力な治安活動が監視により妨げられるので武装勢力側にとって願ったり叶ったりであるということ。
監視団が動いている地域では監視もあり武装勢力側は手を出さないでおとなしいが、そうでない地域では武装勢力側はテロ攻撃を頻繁に引き起こし、後手に回るシリア治安側の仕業とメディアを使い喧伝する。30日延長が認められたということはシリアに敵対する周辺国にとって工作できる日にちが30日追加されただけでありさして痛手ではない。

国連監視団を査察に入れて国内を返って不安に陥れようとするこの策謀は国内を紛争でグチャグチャにしておいていよいよどうにもならなくなると国連の調停と銘打った査察監視団を送り込んで自分たちの息のかかった勢力に優位な案で調停を飲ませ利を得るエル・サルバドル方式と呼ばれレーガンのアメリカの中南米への介入で露骨に見られたものだ。
アメリカはエル・サルバドル政府の要請だと開き直り、反体制派のファラ・ブンドマルチゲリラを圧殺するためニカラグァのサンディ二スタ革命政権を倒すため右派民兵を養成して送り込み、ニカラグアを内戦に陥れ実質的に潰したがサンデ二スタに影響を受けるファラ・ブンドマルチゲリラに脅かされた政府と権益を護るためコントラをエル・サルバドルに送り込んだ。

今、シリアで行われていることはこういうことだ。
この30日の査察延長が事実上のアサド政権と敵対勢力の最後の決戦であり、ゆえに敵対する側は情報戦も含め、ありとあらゆる手を打ってアサド政権を揺るがしてくるだろう。
手回しの良いことで無能なアラブ連盟、サウジとカタールはアサド退陣を機に乗じて盛んに触れ回っている。
トルコはロシアには良い顔をしつつ、裏でFSA支援のため露骨に国境線沿いに遊撃地帯を作り上げ武装勢力を送り込み、ヒット＆アウェイを繰り返させ国内の治安をかき回している。
いかにアサドが確固たる決意でことに励もうと、もぐら叩きのように国境沿いから入り込んでくるテロリストどもを水際で食い止めることは不可能だ。
なにしろもう一方の隣国トルコの国境警備がスカスカなのだから。