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米国の中身のないアジア重視戦略
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投稿者 MR 日時 2012 年 8 月 28 日 22:40:45: cT5Wxjlo3Xe3.
 

米国の中身のないアジア重視戦略
マイケル・オースリン
2012年 8月 28日 16:24 JST 
 オバマ政権がアジア重視戦略を葬るときが来たようだ。この軍事・外交資源の再分配は、中国の台頭でバランスの建て直しが求められている地域の安定を保証するとされている。しかし、実際のところ、この戦略転換に見た目ほどの効果はない。アジアの問題解決にならないばかりか、その期待外れの支援はかえって地域に不確実性をもたらすかもしれない。

 この戦略転換の欠点をまとめると、おおげさな言葉(rhetoric)、現実問題(reality)、資源活用(resourcing)、期待を高めておきながら、疑念を抱かせる(raising expectations and then doubts)という4つのRになる。今のところ第一かつ最大の問題はアジア重視戦略――国防総省はバランスの修正と呼んでいる――がほとんど言葉だけであり、漠然としていて、意気込みだけが高いということである。

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AFP/Getty Images
米第7艦隊旗艦ブルー・リッジ(4月12日、ベトナム・ダナン)
 米海兵隊をオーストラリア北部に駐留させたり、米海軍の新型戦闘艦をシンガポールに入港させたりといった称賛に値する動きがあったことも事実だ。しかしそうしたことが打開策につながっていない。世界は米国の意図に関して今も頭を捻っている。中国を抑えつけるためなのか、民主主義を広めるためなのか、米国を事実上のアジアの覇権国にするためなのか、それとも単純に中国の台頭に不安を覚えている近隣諸国を安心させるためなのか。

 米国の行動にあまり変化はないというのが現実である。アジア重視戦略では、たとえば東南アジア諸国連合(ASEAN)や現在、米国と正式な同盟を結んでいない国に対して新たな責任を引き受けるという話は出ていない。同様に重要なのは、日本やフィリピンといった同盟国が当事国であるにもかかわらず、東シナ海、南シナ海を混乱に陥れている領有権争いに関して、この数カ月間、米国政府が明確に中立的立場を主張してきたことである。

 こうした現実のさらなる裏付けとしては、この壮大なプロジェクトに課せられた資源の制約が挙げられる。オバマ政権はこの戦略を少ない予算で実現しようとしている。というのも、発動されれば2009年からすでに9000億ドルも削減されている国防予算がさらに5000億ドルも減る強制削減の影響がアジア重視戦略の資金にも及ぶ恐れがあるのだ。

 アジアにおける米軍の存在感がこうした国防予算の削減の影響を受けることはない、とオバマ政権は主張する。だとすると、世界の他の地域での米軍の態勢が縮小することになる。それ以上に、アジアでの軍事力増強を維持していくのが難しくなる可能性が高い。空軍と海軍の規模が縮小され、イランやシリアといった他の地域の問題が米国の政策立案者の重大懸案事項であり続けると、軍用機や艦船の太平洋への移動もじきに減速するだろう。

 これにより、米国政府がその言葉で期待値を上げて間もないにもかかわらず、アジア重視戦略に疑念が生じてしまう。ベトナムやフィリピンといった国々は、アジア重視戦略が米軍の地域における存在感の急拡大、あるいは中国との領有権争いにおける米国の支援といった具体的な成果をもたらしてくれると信じ込んでしまった。その結果両国は米国政府と接触し、新たな軍事演習を行ったり、安全保障協力の強化を話し合ったりした。

 ところが、このように期待が高まっていた分、米国政府が行動を起こさなかったときの失望感も大きい。この春、スカボロー礁をめぐって中国とフィリピンがにらみ合いになっていたとき、フィリピンのある議員は、パートナーが困っているときに援護を拒否するような米国と同盟関係を結んでいる意味があるのだろうかという疑問を呈した。非現実的な約束をしたかのように思わせたことで、オバマ政権は期待に添わなかったことで生じた不信感や不満に対処するという、新たな外交上の頭痛の種を自ら作り出してしまった。

 だとしたら、アジア重視戦略に何の意味があるのだろうか。米国政府は言葉以外では領有権争いにかかわらないという最も現実的なアプローチを取っている。明らかに他国が支配している領土を中国があからさまに占領でもしない限り、中国と危機状態に発展するリスクを冒すことなど共和党政権であっても民主党政権であってもあり得ない。アジアにおける米国の軍事力増強がたとえ可能だとしても、そうした政治的打算が変わることはない。

 現在の米軍の態勢をさらに数カ国に分散させることもできるが、米国政府による過去数十年間のバランスは本質的に間違っていなかった。アジアにおける米空軍と米海軍の存在感を縮小するのは間違いだが、米国政府にできるのはわずかな増強であり、それぐらいでは地域は何も変わらない。さらに言えば、新たなアジアの同盟国には一定レベルの地域の安全保障協力を提供できる日本やオーストラリアといった現実的な選択肢もある。つまり、現在の米国と同盟国や連携国の軍事力は、近い将来のアジア太平洋地域にとって、政治的にも、安全保障の現実に照らしても、ちょうど良い規模になっているのである。

 しかし、米国政府がアジアに関して新しい政策を持っているという主張を曲げない限り、それが何を意味するのかという厄介な質問に答えざるを得なくなる。今月の党大会が終われば、共和党のロムニー候補とオバマ大統領は穏やかに話すことと、アジア諸国の微妙なバランスを一方的に崩そうとする国への警告として現状の軍事力を維持することを決意すべきである。

 (筆者のマイケル・オースリン氏はアメリカン・エンタープライズ研究所の日本部長で、wsj.comのコラムニストでもある)

記者: Michael Auslin

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