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人類はどうやって暴力を減らしてきたのか 『暴力の人類史』が解き明かす人間の本性
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投稿者 rei 日時 2015 年 4 月 24 日 08:36:22: tW6yLih8JvEfw
 

人類はどうやって暴力を減らしてきたのか
『暴力の人類史』が解き明かす人間の本性
2015.4.24(金) 矢原 徹一

 人間にはぞっとするほどの暴力性と、平和を望む非暴力性とが備わっている。幸いにして、人類史を通じて暴力は減り続けてきた、と心理学者のスティーブン・ピンカーは力説する。最近邦訳が出版された彼の著作『暴力の人類史』(青土社)を参照しながら、人間の本性について考えてみよう。

 2011年に出版された『暴力の人類史』の原題は、"The better angels of our nature - why violence has declined"(われわれの本性はよりよい天使−なぜ暴力は減ってきたか)である。邦題を見ると人間による暴力の歴史をつづった憂鬱な本だと誤解されそうだが、実際には人類史を通じて暴力が一貫して減少してきたことを立証した本である。「人類の未来に向けた希望の書」という帯の説明のほうが、本書の内容をよく表している。

かつて略奪、決闘、殺害は当たり前だった

『暴力の人類史 上』(スティーブン・ピンカー著、幾島幸子・塩原通緒 翻訳、4536円、税込)
 著者はまず、狩猟採集生活時代の残虐性を暴き出す。国家が成立する前の部族社会では、土地・資源・女性をめぐる部族同士の略奪や戦争が頻繁に起きていた。その結果、10万人あたり平均500人が毎年殺されていた。農業が開始され、国家が成立した後の社会では、このような略奪や戦争が減り、死者数も10万人あたり平均100人を下回るようになった。さらに、中世の小規模国家が統合されて中央集権国家が成立し、警察機構によって治安が向上すると、殺人が減った。英国では、最初の統計資料が得られる1300年代には、10万人あたり数十人が毎年殺されていたが、産業革命が起きた1800年代には数人のレベルに減少した。

 要するに、国家が成立する前の狩猟採集社会や、中世の農村社会は、今よりもずっと野蛮だったのだ。

 狩猟採集社会では、自分がほしいものを他人や他部族が持っていて、自分のほうが強ければ、略奪するのは当たり前だった。中世には、国家によって略奪が取り締まられてはいたが、「やられたらやりかえす」という復讐や、名誉をかけた決闘は容認されており、ちょっとした侮辱が血で血を洗う争いに転じがちだった。また、奴隷制や拷問が許されており、魔女狩りのような迷信による殺害も横行していた。

 このような人間の残虐性、暴力性は、今を生きる私たちの中にもある。それは人間の本性の一部なのだ、と著者は主張する。

 ここでいう「本性」とは、遺伝によって、つまり生まれながらにして備わっている性質のことである。それは進化する性質と言い換えても良い。遺伝する性質は必ず変異し、そして淘汰の働きによって進化する。人間は、チンパンジーに近縁な動物であり、ゲノム上のDNA配列の違いは2%に満たない。チンパンジーとの共通祖先が持っていた動物的な性質を少しだけ修正して、より高い協力性を進化させた種が人間だ。

人間の中には5人の悪魔が棲んでいる

 より高い協力性を持つとはいえ、人間は残虐性や暴力性を、動物から引き継いでもいる。例えばライオンの世界では、オスは生まれた群れを離れて育つが、成獣になると他の群れを襲い、群れの支配者であるオスを追い出して、なわばり(土地)とメス(女性)を獲得する。チンパンジーでも同様な現象が見られるし、狩猟採集社会における人間の略奪行為は、ライオンやチンパンジーの行動と大差ない。

 このような、動物的な残虐性、暴力性を、著者は「悪魔」と呼び、われわれの中には5人の悪魔が棲んでいると主張する。その5人とは、捕食や略奪、順位による抑圧、報復性、サディズム、そしてイデオロギーである。

 ここでイデオロギーが登場することに違和感を覚える方が多いだろう。イデオロギーは遺伝的なのか? 実はそうなのだと、著者は考えている。この見解は、2004年に邦訳が出版された『人間の本性を考える』の中で、すでに述べられている。生まれてすぐに別々に育てられた双子を使った研究から、保守的かリベラルかの傾向は、ある程度遺伝することが分かっている。この違いはおそらく、動物の社会において集団への忠実さの程度に個体差があることに対応しているのだろう。

 このような遺伝に関する説明をすると、遺伝の影響は変化しないものと誤解される場合が多いので、遺伝の影響は環境や年齢によって大きく変化することを強調しておきたい。双子を使った研究から、好奇心、攻撃性、慎重さなど多くの心的性質に遺伝の影響があることが分かっている。その影響の程度を「遺伝率」という指標で測るのだが、「遺伝率」は年齢とともに高まることが多い。「年をとるほど親に似る」というのは、本当なのだ。若いときにはさまざまな環境に柔軟に対処する必要があるため遺伝の影響が小さいが、年齢を経て地位や暮らしが安定すると遺伝の影響が大きくなるのだ。

残虐性、暴力性を抑えてきた「天使」とは

 さて、人間が生まれながらにして残虐性、暴力性を持っているとすれば、どうして人類史を通じて暴力は減り続けてきたのだろうか。それは、私たちの中にある非暴力的性質(天使)が社会において表現される機会が増えてきたからだと著者は主張する。

 その「天使」とは、共感(エンパシー)、自制心、道徳的感情、理性の4人である。これらの人間的性質は、おそらくチンパンジーにもその原型が見られるが、人間への進化の過程で「よりよい天使」へと強化された。

 なお、心理学においては、同情(シンパシー)と共感(エンパシー)は異なる心的能力だと考えられている。共感とは、単に同情する(他人の痛みを感じる)だけでなく、相手の視点に立って考え、関心を共有できる能力のことである。

 共感はもともと、家族や友人に対する協力行動を支える心的能力として進化したものと考えられる。動物の社会における協力行動は、血縁者同士か、あるいは日常的に助け合うことができる親しい個体同士いわば友人同士)に限られる。一方、人間の協力行動は、日常的な親しさを超えた大規模な集団で行われる。このような大規模な集団での協力行動を支えるのが共感力であり、さらに自制心、道徳的感情や理性である。

 このような人間の性質がいかにして進化したかはまだ十分には解明されていない。しかしこれらの能力が、われわれの中にある残虐性、暴力性を抑えて、今日の社会を作りだしたことは、ピンカーが主張する通りだろう。

現代社会でいちばん危ない悪魔は「イデオロギー」

 ところで、20世紀には2回の世界大戦が起きた。この2回の世界大戦は、「人類史を通じて暴力が一貫して減少してきた」という著者の主張に反しているように思える。

 しかし著者は、実は必ずしもそうとは言えないと主張する。確かに死者数は過去の戦争に比べて圧倒的に多い(第1次大戦:2600万人、第2次大戦:5355万人)。しかし、そもそも世界人口が大きく増えているのだ。人口比で比較すると、第2次大戦を上回る戦争が過去に何度もあったことが分かる。

 そして、第2次大戦後は、戦争による死者数は減り続けている。この減少には、書物やテレビ、最近ではインターネットによって、非常に多くの情報を交換できるようになったことが関係している。これらの情報源のおかげで、今や私たちは、いちども会ったことがない世界各国の人たちとつながり、共感し合うことができる。

 ただし、私たちが暴力的衝動をどれだけ抑制できるかは、社会環境によって大きく変化する。「よりよい天使」への進化に要した数十万年の時間ではなく、わずか数十年や、ときには数年のうちに、天使から悪魔に逆戻りすることもある。

 私たちの中に棲む5人の悪魔の中で、現代社会にもっとも力を持っているのはイデオロギーだろう。イデオロギーが違えば、何が道徳的かの規範が違う。イデオロギーを同じくする者同士の共感が強まれば、イデオロギーを異にする集団間での対立が先鋭化する。

 私たちがさらによい天使となるためには、このようなイデオロギーによる対立を避け、科学や理性にもとづく意思決定を当たり前にすることが肝心である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43610  

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コメント
 
1. 2015年7月04日 12:17:50 : jPycZr6gdA
>著者はまず、狩猟採集生活時代の残虐性を暴き出す。国家が成立する前の部族社会では、土地・資源・女性をめぐる部族同士の略奪や戦争が頻繁に起きていた。その結果、10万人あたり平均500人が毎年殺されていた。農業が開始され、国家が成立した後の社会では、このような略奪や戦争が減り、死者数も10万人あたり平均100人を下回るようになった

農耕が登場してから争いが激しくなっというのがこれまでの定説であったが時事一はどうなのだろうか。


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