http://mainichi.jp/select/news/20130209k0000m040129000c.html
毎日新聞　2013年02月09日　02時30分

　東京電力福島第１原発事故を受け福島県が実施している子供向けの甲状腺検査を巡り、県民健康管理調査の検討委員会が、県外避難者について検査の早期実施を表明しながら、準備会（秘密会）では「県外を遅らせる」との考えが示されていたことが分かった。実際に県外検査は県内の約１年後に始まった。県外検査を遅らせる意図は不明だが、専門家は「早く検査すべきなのに、このような対応では県の信頼を失う」と指摘している。

　◇公開の場では「早期に」

　毎日新聞の情報公開請求で開示された準備会議事録で判明した。甲状腺検査は健康管理調査の一環として福島県が県立医大に委託して実施。県内では同大付属病院（福島市）で１１年１０月に始まり、翌月以降、県内各地の公民館などでも実施されている。

　議事録によると、福島市内で開かれた非公開の第４回準備会（１１年１０月１７日）で、県外医療機関での検査体制の整備が議題になった。検査責任者の鈴木真一・県立医大教授が「甲状腺の専門家が少ない。県外（で検査をする医療機関の）認定を遅らせて、県内体制を作っていきたい」との考えを示した。

　一方、同じ日にあった公開の第４回検討委で、鈴木教授は「広く県外に避難している人にも甲状腺検査を行えるよう検査体制を整える」と表明していた。

　また、１２年１月２５日の非公開の第５回準備会では、検討委座長の山下俊一・県立医大副学長が「県外の体制整備のメッセージを出すのも重要」と発言。同日開かれた検討委で鈴木教授が「（県外の医療機関）１１３カ所をリストアップした。１月に内諾をいただけるよう進めており検査実施は４月以降になる」との見通しを示した。

　同年３月１３日の県議会特別委員会では県の佐々恵一・健康管理調査室長が「５月に（甲状腺検査の）受診が開始できるよう最終調整している」と説明。４月２６日の第６回検討委後の記者会見で鈴木教授も「（県外の医療機関を）５月連休明けに公開したい」との方針を明らかにした。

　だが、毎日新聞が複数の県外医療機関に問い合わせたところ、県立医大から協力の依頼文が届いたのは同年３月下旬〜６月上旬。県立医大から検査実施に関する協定書が届いたのは８月下旬になってからだった。

　結局、県は同年９月５日に県外で検査を受けられる７１カ所の医療機関をようやく公表。検査開始は同年１１月にずれ込んだ。

　県健康管理調査室は「当初は１２年度早期の実施に向け調整していたが、細部の調整に日数を要し、結果として（県外検査機関の公表が）９月上旬になった」と文書で回答。鈴木教授は取材に応じていない。

　検討委を巡っては、議事録から内部被ばくに関する記述を削除して公開するなど問題が次々と発覚している。【日野行介】

　◇「県は信用できない」

　「県内の人より早く検査してほしいとは言わないが、『県外でも実施する』と期待させながら１年以上も遅れたのは許せない」。福島市に住む男性（４６）は憤った。事故直後から長女（５）を京都府内に避難させている。

　男性は、チェルノブイリ原発事故後に子供の甲状腺がんが増えたことを知り、早急に長女に検査を受けさせようと考えたが、県から京都府内の医療機関で検査を受けるよう通知が届いたのは昨年１２月下旬。「県は県外に避難した住民に冷たい。こんな対応では信用できない」という。

　原発事故後に役場機能を埼玉県に移した双葉町は昨年夏、井戸川（いどがわ）克隆町長の指示で県外での独自検査を検討。８月下旬、開業医を中心にした全国組織「全国保険医団体連合会」（保団連）に協力を要請した。だが、直後の９月５日に、県外で検査を受けられる医療機関を県が発表。保団連側も協力の見送りを伝えてきたという。

　井戸川町長は「町が県外検査を検討しているのを知り、県は慌てて県外検査機関を認定したのではないか」といぶかる。【日野行介】

　【ことば】甲状腺検査

　８６年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故で子供の甲状腺がんが増えたことから、福島第１原発事故を受けて福島県が実施。首に超音波を当ててモニター画面上でしこりなどを探し、がんの疑いの有無を判断する。対象は事故当時１８歳以下の子供で、全県で約３６万人。うち県外避難者は約２万人とみられている。

コメント
01. 2013年2月09日 09:37:34 : PKGkYtkLoA サンプルを揃え何するのが目的であるから、県外、何処で、其の期間、与件が違うとＡＢＣＣの用向きに合致しない。
02. 2013年2月09日 11:26:34 : 7iXdkN9VDY 県外避難者、特に西日本避難者に、県内と同程度に甲状腺異常が見られた場合は、 放射線が原因であることが確定的になる。 二枚舌を、どのように弁解するのか。
03. 恵也 2013年2月09日 13:04:44 : cdRlA.6W79UEw : Xbz8CDHSMI >>　全県で約３６万人。うち県外避難者は約２万人とみられている。 俺には34万人の子供が逃げ出し、2万人が残ってるのじゃないかと勘違いした。 このことは官僚の不作為が根本的原因。 福島県内の子供にはこれからモルモットとしての地獄が始まりそうだ。
04. 2013年2月09日 16:18:27 : 8fZFnR7UsM 県外避難者の検査を後回しにするのは，本当はやりたくないからです。 県外避難者と県内残留者を比較したとき，残留者群に対して，避難者群の方が， さまざまな疾患の罹患率などの指標が統計的に有意に低いことが明らかになると， 避難した方がよいことが医学的に認められてしまうからです。 その場合，福島に残留することのリスクが，定量化されてしまいます。 県外避難者と残留者は，原発事故までの公衆衛生上の条件（気候・食生活など）や 健康状態は同じ分布に従うと考えてもいいでしょうから， 原発事故後の行動「だけ」が異なる残留群と避難群が比較できてしまうと， 福島に残留することの健康上のリスクが，明確になってしまうのです。 これに対して，原発事故以前から他県に居住する者との比較では， 気候条件，食習慣など，他の条件の違いという解釈がいくらでも成立します。 つまり，比較対象と原発事故前の条件が同一になっていない，という批判です。 そのため，かりに有意な差が認められても，厳密な検証ではないからと， 質の高い学術雑誌ほど掲載を拒否されます。その状態では， 事故による被曝で，住民の健康状態に有意な差を認めた論文はない，という主張が継続できます。 避難者と残留者の比較は，実施可能な比較対象としては， もっとも信頼性の高い比較になってしまい，統計的に有意な差が出てしまった ときの対応に苦慮するから，やりたくないのです。 福島に居住することのリスクは，それ以外の条件ができるだけ同一である2群で比較しないと， 統計的に検証できない。それを先送りしたいのが，この意思決定と整合的です。 なお，後回しにしても，いずれ統計的に有意な差が認められれば， 無意味だろうという意見もあるでしょうが，それは誤差の混入というものを軽視しています。 調査が後回しになるほど，線量の違い以外の他の要因の混入が多くなり， それによる誤差は拡大するからです。 たとえば，調査が後になるほど，避難先の気候，食習慣，仕事などの影響が 次第に大きくなってきます。 それらは，検定では誤差としてはたらきますから，統計的に有意な差は出にくくなります。 危険を早期に発見する，定量化して，予防と治療に役立てるために検査をするのではなく， 安全を実証するために検査をしようとしているから，こういう不公正な誘導が行われるのです。
05. 2013年2月09日 20:15:18 : 8tFWC3ExoM ＞井戸川町長は「町が県外検査を検討しているのを知り、県は慌てて県外検査機関を認定したのではないか」といぶかる。 つまり、県は勝手に検査されちゃ放射能の醜さの事実がバレてかなわんから、原発マフィアに都合の良いように検査機関を作り、それをあてがおうとしたわけですね。
06. 2013年2月09日 23:33:41 : k7hApNv6yg 汚染された土地に強制的に人を居住させようとする極悪国家。 それが日本。 愛国心がなくなりそうだ。
07. 2013年2月10日 07:24:52 : ynSQvzTlvk 2月13日に第10回「県民健康管理調査」検討委員会が開催されるので、甲状腺検査の実施状況と検査結果についての報告があるだろう。要注目だ。
08. 2013年2月10日 08:44:23 : rEuxotdnXQ ↑　要注目ですね。 この秘密会という現代ではあってはならない会合をスクープしたのは毎日新聞だけど、 実に意義のあるスクープだった。いままた、「県外避難者の甲状腺検査、後回し」 が秘密会で方針が決められたと報じられた。一体日本はやくざ、ちんぴらが動かして いる国なのか。おそろしいことだ。
09. taked4700 2013年2月11日 20:06:54 : 9XFNe/BiX575U : CE7OEtiS2g >>08 ＞この秘密会という現代ではあってはならない会合をスクープしたのは毎日新聞だけど、実に意義のあるスクープだった。いままた、「県外避難者の甲状腺検査、後回し」が秘密会で方針が決められたと報じられた。一体日本はやくざ、ちんぴらが動かしている国なのか。おそろしいことだ。 全くです。日本を動かしているやくざ・チンピラというよりも、アメリカの支配下になってしまっている日本の官僚や政治家の問題です。 先日、１号炉の非常用復水器の検査妨害を東電がやったという話が出ましたが、単に真っ暗だから検査ができなかったということ自体がおかしなことです。誰でも懐中電灯やより大型の照明器具を使えばいいことは思いつきます。 更に監視カメラが付いているわけで、それの映像をチェックすれば済む話です。このことは関係者だれでもが分かっているわけで、その上で知らんぷりをしているわけです。これは何も関係者が何らかの利害があってのことと言うよりも、アメリカの支配層の意向でそう動かざるを得ないということのはずです。 そして、アメリカの支配層はほぼ確実に原発事故による日本国土の大規模汚染を狙っているはずです。そして、日本国土を世界の高レベル核廃棄物処分場にし、日本と言う国自体を消滅させ、日本政府が持っている米国債を日本国民をアメリカが受け入れる代わりにチャラにさせることを狙っているのです。

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