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日本が次の原発震災をまのがれるためにやるべきこと。
現状を見ると、ほぼ確実に次の原発震災へ向けてまっしぐらになっているとしか見えない。以下、その理由。
１．議論がほとんど表面的なものに終わっている。原発事故の実態が全く見えないまま、「たいしたことがない」とか「健康被害は少ない」とか「津波で壊れた」とか「事故は人為的なものだった」という発言がどんどんとされている。しかし、これらの発言はどれもウソでしかない。原子炉建屋に設置されていた監視カメラ映像が公開されていないことが典型で、原子炉は地震でかなり壊れたことが確実だ。更に、そのための放射能漏れも地震直後にあったはずであり、福島第一原発の半径30キロとか50キロ程度はかなりヨウ素やキセノンによる初期被ばくを被ったはずだ。また、未だ原子炉からの放射能漏れは続いていて、これによる健康悪化も今後数十年続くはずだ。空間線量が低いと言ってもそれは平均しての話だ。原子炉内の水温が急上昇しているなど、原子炉内で核反応が依然継続していることは明らかであり、漏れた放射能はプルームとして大気中を漂い、それに接した人が被害を被ることになる。
２．議論が再稼働するかしないかで終わっていて、どう廃炉をするのかになっていない。福島県内の除染活動で出た放射性物質の仮置き場さえ決まっていない状況で、日本中の原子炉にたまっている使用済み核燃料の保管をどうするかは一切決まっていない。青森県にある保管施設へ一時的に集めることが行われているがそれは再処理が前提だ。しかし、再処理自体が核燃料を細かく裁断する必要性があり原発事故にも匹敵するような放射能漏れを恒常的に引き起こす。更に、再処理施設がある六ヶ所村近辺はもともと沼地であり、しかも海岸線にある。そばには太平洋プレートが沈み込む断層帯があり、大地震の危険性がある。３１１の揺れ残りの部分に当たり、今後数十年で大きな地震が起こることは確実だ。日本で地層処分は無理であり、乾式キャスクでの地上保管しかないが、それをやるにも場所の選定が全くされていない。除染で出た放射性物質の仮置き場さえ見つからないのに数万年とかそれ以上保管しなければいけない地上施設の場所はそう簡単に決まるはずがない。今のペースでやっていたらいつまでたっても決まらない。
３．結果として、原発再稼働についての話が延々と続き、原子炉には核燃料が入ったまま。保管プールも満杯のままと言う状況が数十年続くことは明らか。まあ、その間に幾つかの原子炉は再稼働に踏み切るかもしれない。しかし、再稼働は稼働中に事故にあうため停止中の事故よりも苛酷なものになる。
４．地震対策はある程度されるだろうが、これも表面的なもの。地震被害で最も影響があるはずの直下型地震による地震衝撃波のことが無視されたままであり、地震衝撃波により、コンクリートが粉々に壊れ、原子炉が一気に破壊されてしまうはず。地震衝撃波は縦波であり、地震の初期微動を検知して制御棒を稼働するシステムが間に合わない。よって、もし原子炉が稼働中に地震衝撃波が直撃したらそれこそ核爆発そのものという被害になる。また、運転停止中でも原子炉圧力容器の底部がかなりの被害を受けることは明らかであり、各種の配管の破断などで水素爆発や水蒸気爆発にはなってしまう。
ともかく、既に使用済み核燃料は大量に溜まっている。これをどうするのかをちゃんと決めないといけない。地層処分はできないので、地上で乾式キャスクを用いて保管することになる。どこで誰の管理のもとに保管するのか、何年に一度の割合で乾式キャスクの詰め替えをするのか、もし放射能漏れが起こったらどう対処するのか、その場合の近隣住民への補償はだれがどうやるのか、などを議論して決めなければいけない。
少なくとも、乾式キャスクの保管施設の場所を決めるのだけでも数十年はかかるだろう。そして、その前にマグニチュード6から7程度の地震が頻発して、一気に原発事故に至る可能性が大変に高い。
海溝型の大地震が起こる前の数十年でどの程度その周辺域で地震が起こるか、その実例がhttp://www.hinet.bosai.go.jp/about_earthquake/PNG/fig7.C.png
にある。これは1946年に起こった南海地震の直前40年間に震源域の周辺で起こった地震を示したものだ。ここには40年間で12個のマグニチュード6以上の地震が載っている。
1909年 姉川地震 M6.8
1916年 M6.1
1923年 M6.5
1925年 北但馬地震 M6.8
1927年 北丹後地震 M7.3
1936年 河内大和地震M6.4
1938年 M6.8
1943年 M6.2
1943年 M6.2
1943年 鳥取地震 M7.2
1944年 東南海地震 M7.0
1946年 南海地震 M8.0
これらの地震は何も全国で起こった地震ではなくて、関西地域で起こった地震だけでこれだけになる。なお、1946年に起こった南海地震以降の40年間では次に挙げる3回しかM６以上の地震が起こっていない。
1963年 御前崎地震 M6.9
1983年 鳥取県中部地震 M6.2
1995年 兵庫県南部地震 M7.2
なお、地震の起こり方について、注意しなければいけないことがある。それはマグニチュードが2程度であっても震源が浅ければ大きな揺れが起こるということだ。その実例がつい先日箱根で起こっている。2月10日午後1時過ぎに箱根で起こった地震だ。http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130306-00000511-playboyz-soci
にある記事には次のように書かれている。
「箱根地域の地震火山活動を継続観測している神奈川県温泉地学研究所の発表によると、この地震の規模はマグニチュード２．３。さほど大きくはないものの、震源が大涌谷直下１．８ｋｍと浅かったため局地的に震度５に達したという。」
そして、この地震では震源が浅い地震の特徴として縦揺れが大きかった様子だ。「最初は地震だと思いませんでした。いきなり『ズドーン！』とデカい音が響いて地面が跳ね上がり、体がよろけて倒れそうになった。てっきり噴火か、何かの爆発事故かと思って周りを見渡すと、ロープウェイのゴンドラが上下に揺れ続けていたので地震だとわかりました。３０年以上も箱根で働いてきたけど、こんなに瞬間的で強い地震は経験したことがない」と言う発言がされている。
この地震は通常の地震としては記録されていない。現状の地震観測網では震度を記録できていないからだ。この間の地震は次のようになっている。
2013年2月10日 14時17分頃 宮城県沖 M3.5 1
2013年2月10日 7時4分頃 福島県沖 M4.4 1
つまり、現状の地震観測網のほとんどは1995年の阪神大震災後に整備されたものであり、マグニチュード5程度以下の地震について、1946年以前はほとんど記録されていない可能性があるのだ。マグニチュード3以下の地震であっても震源が2キロ以内であれば震度5程度の揺れが起こることは注目に値するだろう。そして、1986年に起こったチェルノブイリ原発事故はやはりマグニチュード2から3程度の小さな地震が原因だったという話があることを指摘しておきたい。
以上見たように、今後、南海地震や東海地震の震源域の周辺でマグニチュード6程度の地震が年に一回程度起こってくることはほぼ確実なのだ。そして、もし震源が数キロ程度と浅ければマグニチュードが3以下であっても原発が大きな被害を被ってしまう。だから、今後10年とか20年程度で原発事故が起こってしまうのはかなり確実だと言える。
よって、日本が次の原発事故を避けるためには、少なくも、次のようなことが必要だ。
１．福島第一原発事故の原因を監視カメラ映像や事故時の作業員の方の証言を検証して地震の影響がどうあったのかを検証すること。
２．核燃料サイクルは放棄をすること。再処理はしないと決定すること。
３．使用済み核燃料の乾式キャスクでの保存場所決定の議論を国レベルと地方レベルの両方で開始すること。決定目標を3年以内に区切り、それまでのタイムラインを作って取り組むこと。具体的には、まず保管場所選定の手順を作成、次にその手順に沿って候補地の選定、候補地の中から最終的に保管地域を決定するなどのスケジュールになる。また、原発立地自治体は、独自に原発が直下型地震に襲われた場合のシュミレーションをし、一時的に県内のどこかでの保管プールでの保管が意味のあることかどうかを電力会社と協議をすること。
４．少なくとも新規着工のときは、高レベル核廃棄物の処分場を決定し地元の了解をとることを条件にすること。このことによって上関原発は建設中止になるはずだ。
５．原発代替えのエネルギーとして、地熱発電と小水力発電を積極的大規模に押し進めること。太陽光や風力のような発電量や周波数の変化する自然エネルギーでは産業用電力としてはあまり意味がない。地熱発電が温泉と共存できないという主に温泉関係者に持たれている誤解を解くこと。
以上、簡単に書きましたが、多分とても難しいでしょうね。でもその難しさの背後には日本を世界の核廃棄物処分場にしようという欧米諸国の狙いがあるということを考えれば、どうしても取り組むしかないはずだと思います。少なくとも「世界中でまだ最終処分場が決まっていないのだから、日本がまだ決定できなくてもしょうがない」というのは大きな間違えで、世界は反対に日本の本土が世界の核廃棄物処分場になるのを待っているのだということを理解するべきです。
＊6月8日の記事「近づく戦争・テロ社会、これらの動きを止めるべきでは？」から一連番号を付していま＜＜1371＞＞TC:38584, BC:21227
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