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(書評)烏賀陽弘道「福島 飯館村の四季」    西岡昌紀
http://www.asyura2.com/13/genpatu30/msg/696.html
投稿者 西岡昌紀 日時 2013 年 3 月 13 日 21:56:20: of0poCGGoydL.
 

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http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1895715505&owner_id=6445842
http://blog.livedoor.jp/nishiokamasanori/archives/6371190.html

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(書評)


5つ星のうち 5.0


この本が全世界で読まれる事を願ふ。, 2013/3/11
By 西岡昌紀

レビュー対象商品: 福島 飯舘村の四季 (単行本(ソフトカバー))
http://www.amazon.co.jp/%E7%A6%8F%E5%B3%B6-%E9%A3%AF%E8%88%98%E6%9D%91%E3%81%AE%E5%9B%9B%E5%AD%A3-%E7%83%8F%E8%B3%80%E9%99%BD-%E5%BC%98%E9%81%93/dp/4575304255/ref=cm_cr-mr-title

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 原っぱの十字路で、赤いムクゲの花が咲いていた。でかいムクゲだった。30センチはあるのではないか。
 車をおりてカメラを構えた。排気ガスもないからだろう。怖くなるほど空が青い。ムクゲの赤と空の青が、ファインダーを半分ずつに割った。
 エンジンの音が近づき、背後で止まった。振り向くと、白い軽トラックの運転席から、おじいさんがじっとこちらを見ていた。ベージュの作業服に作業帽をかぶっている。赤銅色に日焼けした顔がガラス越しに見えた。
 私は一礼して軽トラックに歩み寄った。無人になった村で、村人が警戒のために「見回り隊」を作って巡回している。怪しまれたのだろうと思った。
 私は名刺を出し、説明した。自分はフリーの記者です。原発災害の被害を伝えるために、村で写真を撮っています。
 黙っていたおじいさんが小さな声でぼそっと言った。
「ちがう」
−−何が、ですか?
「それ」
 おじいさんは私の脇の下を指差した。一眼レフがぶら下がっている。
「それで、そのカメラで」
 のど骨が動いて、息を絞り出すように言葉が出てきた。
「そのカメラで伝えてほしい。この村のことを」 
 私はごくんと息をのんだ。言葉が出なくなった。
「ここは土地が汚染されてしまった。ここで何が起きたのか伝えてほしい。外の人たちに」
 彼は雑草の原っぱになった田んぼを見た。そこは彼が毎年慈しみながら手入れをしてきた田んぼなのかもしれない。
 一体何年くらい、この人はその土とともに生きてきたのだろう。この村の土地は、この人にとって自分の子どものようなものだろう。いや人生そのものかもしれない。時間、季節、年齢、人生すべての記憶は土地とともにあるはずだ。
 その土地が放射能で汚れている。むごたらしく荒れ果てている。何もできないまま、去る。それは瀕死で血を流すわが子に何もできない親のようなものではないか。
 おじいさんは目を落とした。
「ここは見た目には何一つ変わらん。何も変わらん。だから去るのがつらい。よけいにつらいんだ」
 トラックが走り去ったあとも、私は十字路に立ち尽くしていた。しばらく動けなかった。
 爆弾が落とされたわけではない。虐殺された死体が転がっているわけではない。だが、私が踏みしめている大地には、それと同じくらい惨たらしいことが起きていた。

(本書38〜47ページより)
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 これが、原発事故後の飯館村の現実である。著者は、この本に収められた写真と文章によって、この村人の願ひに答えた。この老人の思ひを、そして、著者の怒りと悲しみを、全ての日本人は共有するべきである。この本が、多くの外国語に訳され、全世界で読まれる事を願ふ。

(西岡昌紀・内科医/東日本大震災と福島第一原発事故から2年目の日に)


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