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(書評)桜井淳『福島原発事故の科学 』(日本評論社・2012年)    西岡昌紀
http://www.asyura2.com/13/genpatu33/msg/536.html
投稿者 西岡昌紀 日時 2013 年 9 月 13 日 12:49:53: of0poCGGoydL.
 

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(書評)桜井淳『福島原発事故の科学 』(日本評論社・2012年)
http://www.amazon.co.jp/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E5%8E%9F%E7%99%BA%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%AE%E7%A7%91%E5%AD%A6-%E6%A1%9C%E4%BA%95%E6%B7%B3/dp/4535586144/ref=cm_cr-mr-title


5つ星のうち 5.0


技術史から見た福島第一原発事故−−専門家より政治家、官僚、企業人が幅をきかす日本の原子力発電,


2013/9/8


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 海岸線に原発が造られているのは、英国・韓国・台湾・中国・日本などである。深刻な津波が問題になるのは日本だけである。軽水炉を日本に導入する際、津波を考慮して設計し直す能力が原子炉メーカーにはなかった。電力会社は、国に設置申請する際、問題点を把握して正すことをしなかった。国は電力会社の申請内容をそのまま追認するような安全審査しかしなかった。

(本書122〜123ページ)

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 私は脱原発派である。だが、原子力発電について学ぶほどに、私は、原子力発電に対する立場と言ふ物は、単純に「推進派」と「脱原発派」に二分できる物ではない事を痛感して居る。確かに、原発をどうするか?と言ふ問ひに対する答えは、究極には二者択一である。だが、同時に、自戒を込めて言ふが、原発支持派も脱原発派も、原子力発電の歴史を正しく理解して居る人は少なく、少しでも自分たちと違ふ事を言ふ者は「敵」だと見なす傾向が顕著である事は困った事である。

 私は、今、「原子力発電の歴史を正しく理解して居る人は少なく」と書いた。皆さんの中には、原子力発電の「歴史」などそんなに重要なのか?と反駁する人が居るかも知れない。原発支持派にも、脱原発派にも。そう言ふ人たちは、原子力発電の「歴史」などどうでも良い事で、重要な事は、原発を続けるかやめるかの議論だ、と言って私を罵倒するかも知れない。

 だが、あえて言ふ。原子力発電を論じるためには、原子力発電の歴史を知る事が極めて重要であると。何故なら、原子力発電を「推進」して来た人々は、多くの脱原発派が、或いは逆に原発支持派が、錯覚して居るのとは違ひ、一枚岩の人々ではないからである。

 原子力発電の歴史は、紆余曲折に満ちて居る。その紆余曲折の中で、脱原発派の友人たちからは攻撃されるかも知れないが、原発を開発し、改良して来た技術者たちは、原発事故を意識し、それなりの努力をして来たのである。その歴史の深さを脱原発派も原発支持派も、どれだけ理解して居るだろうか?

 そうした原子力発電の歴史を知れば知るほど分かって来る事は、原子炉を開発し、改良して来た技術者たちの意向が、特に日本においては無視され、歪められて来た傾向が顕著だと言ふ事である。例えて言ふなら、マルクスとエンゲルスが唱えた共産主義理論が、ロシア革命後の「社会主義国」で歪められ、ついには北朝鮮の様な独裁国家をも支える別物に変質した様に、原子力発電を生み出し、改良した技術者たちの設計思想や考え方を日本の政治家、官僚、企業が、歪めたのである。(と、昔の左翼風に言ってみるが、現在の私は「共産主義」を奉じる人間ではない。念のため)

 こう言ふ事は、原子力発電の歴史を学んで初めて気が付く事であり、マルクスの思想がソ連や中国で大きく歪められたのに似て、原子力発電の基本的な思想が、日本において歪められた事を私は、極めて残念に思ふ者である。

 本書は、原子炉物理学の専門家であるフリーランスの技術評論家、桜井淳氏が、福島第一原発を生のデータを示しながら分析したコンパクトな一書であるが、特筆すべきは、福島第一原発を原子力発電の歴史の中でとらえようとして居る事である。医学もそうだが、科学技術の現在は、その過去を振り返って、初めて理解が可能に成る。その点で、この本は貴重であり、皆さんが原発に賛成するにせよ、反対するにせよ、読まれる事をお薦めする。

 この書評を書いて居る今日、ブエノスアイレスで、2020年のオリンピックが東京で開催される事が決まり、同時に、その大ニュースの陰で、安倍首相が、今後、日本の電力供給における原発の比率を下げて行く事を明言したと言ふ重要なニュースが伝えられた。2012年の衆議院選挙の頃から、私は、安倍首相は、隠れ脱原発派だと言って来たが、その見方が当たったと言ふ気持ちである。原発を巡る政治の在り方が今、変化し始めた様に思はれる。

(西岡昌紀・内科医/2020年の東京オリンピック開催が決まった日に)


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