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景気対策 (信勇会 松野恭信)
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/122.html
投稿者 秀五郎 日時 2013 年 1 月 22 日 18:51:19: mdRqkn6zfpc6k
 


http://shinyu-kai.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-7443.html


 自民党が政権を取り戻して第二次安倍政権が誕生した。長引くデフレからの脱却を目指すための明確なビジョン、すなわち思い切った景気対策を打ち出した。大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間需要を喚起する成長戦略の三つだ。その中でも特に金融緩和に重点を置くとのことだ。

金融緩和とは市場に出回るお金の量を増やすこと。この場合、日本の金利はすでにゼロに近いため出回る紙幣の絶対量を増やす「量的緩和」に脚光が浴びている。

安倍総裁は衆院選挙前には法律を変えてでも、政府が発行する建設国債を日銀にすべて買ってもらう「日銀の国債引き受け」をすすめたいとの考えを示した。しかし「日銀の国債引き受け」は、なんの担保もない紙幣供給のやり方であり、理屈では、いくらでも紙幣を市場に供給できる。政府が国債を発行さえすれば、日銀の刷る紙幣が欲しいだけ手に入る。もしそれを推進すればコントロール不能なハイパーインフレに陥る恐れがある。したがって「日銀の国債引き受け」は財政法により禁止されている禁じ手であり、諸外国でも中央銀行による「国債引き受け」は禁止されている。


 現在、日銀はデフレ対策の金融緩和策として国債を多く買い続けている。これは、あくまでも市場をとおして、つまり銀行が保有する国債を買うことで銀行に紙幣を供給している。したがって「日銀の国債引き受け」と異なり、銀行にある預金が担保となるため日本円の信用が損なわれることはない。この「日銀の国債買い取り」の枠が2012年10月末、80兆円から91兆円に増やされた。

野党のみならず自民党内部にも「日銀の国債引き受け」に拒否反応を示す議員が多くいるため、安倍政権は建設国債を大量に発行して「日銀の国債買い取り」を一層すすめることで大胆な金融緩和を行うはずだ。

政府が多くの建設国債を発行する。銀行が国債を買い、買った国債を日銀が買い取れば、銀行が貸し出しに使えるお金の量は増える。その結果、金融機関は低い利率でお金を貸すことができ、私たちはお金が借りやすくなる。企業は設備投資がしやすく、個人ではローンを使って住宅などが買いやすくなる。

財政政策とは大規模な財政出動のことで、具体的には13兆円規模の今年度補正予算であり、今後10年にわたり200兆円規模の大型公共事業だ。その内容は国土強靭化対策を中心にするものだが、中には高速道路の未開通区間の建設も含まれる。

成長戦略については金融緩和・財政政策に比べ、やや具体性に乏しいものの再生可能エネルギー・福祉関連・エコ関連・バイオテクノロジーといった分野への投資になる模様。


 デフレ脱却のノーマルな流れは次のとおり。

「企業の売上向上(経済成長)」→「給与・賃金アップ」→「物価上昇」

しかし日本では1997年の平均給与467万円をピークに給与・賃金は減り続け、2011年では409万円にまで下がった。平均給与と連動して物価も減少傾向に入り、デフレは15年以上も続き、日本経済は長く縮小傾向のまま。そして多くの日本人はそんなデフレ環境に慣れ、ともかく安い物に殺到する。1円でも安く済ませるための節約術があらゆるところで展開される。低い給与でもそれなりに暮らせる生活術が定着した。実際、日銀が行う「生活意識に関するアンケート調査」を見ると国民の抵抗感が少ないのは、物価上昇(インフレ)ではなく物価下落(デフレ)であることが分かる。デフレの方がまだましという意識だ。


 そんな状況下で経済成長を起点にしてデフレから脱却するのは難しいという意見がある。この場合の対処策として、まず物価を上昇させれば、その後、景気が連動してくるとの考えに立つ。政府と日銀が協調して大胆な「量的緩和」をすすめ、日銀に大量の紙幣を刷らせて出回る紙幣の絶対量を増やす。そうなればインフレ傾向が現れ、その後、景気は好転する。またインフレ傾向が現れるには市場のインフレ予想を高めることも大切。予想インフレ率が上がれば実質的な金利が低下して景気が刺激されるからだ。

その意味で安倍総理は日銀に対して「1%のインフレ目途(ゴール)」から「2%のインフレ目標(ターゲット)」に変えるよう迫っている。デフレ脱却に向けた断固たる姿勢を国内外に見せることでインフレ期待を盛り上げようとしている。具体的なインフレ目標を掲げ、大胆な金融緩和を日銀と協調して推し進めていけば、物価は上がり、企業の売上は増え、給与・賃金も上がり始めるという。


 大胆な「量的緩和」を打ち出しインフレ期待が高まれば円安の方向へと動き、そして円安が企業にとって好ましいと考える人が多いため株高の傾向に動く。しかし同時に市場の金利は上がり、国債の価格は下落する。

日本の産業構造を見れば、輸出より輸入の方が規模は大きい。したがって円安傾向を手放しで喜ぶことはできない。福島第一原発事故以降、特にエネルギーについては原油やLNGなどの輸入に大きく依存するようになった。

政策が功を奏して物価が上がり企業の売上が増えたとしても本当に給与・賃金は上がるのだろうか。そして雇用条件は改善されるのだろうか。それが重用だ。賃金や雇用条件が同じままで物価だけが上がるのは許容できない。しかし日本企業の多くはグローバル競争にさらされ、生産拠点を発展途上国に移し、非正規雇用を増やして人件費をできるだけ抑えているのが実情だ。売上が増えた分を人件費に転化できる企業はごくわずかである。先行き不安なのは個人も企業も同じだ。増えたとしても個人は貯金に、企業は内部留保に転化されるだけ。


 実際、通貨ウォン安を背景に経済成長を続ける韓国では大企業を中心に業績は伸び、物価は上昇している。にもかかわらず実質賃金は下がり、庶民の生活は苦しくなった。韓国は日本以上にグローバル市場にさらされている。経済成長をしているといってもマクロで見た統計上のことで、実際はほんの一握りの大企業だけが大きな収益をあげ、その他大勢の中小・零細企業や自営業者は苦しい経営を続けている。

物価を上げるといっても物価や賃金には硬直性があり、簡単には上がらない。うまくいっても2〜3年という期間がかかる。物価には、あらゆる物の値段からサービスの値段まで含まれる。たとえば鉄道運賃や家賃の改定を考えても、おおむね2〜3年という年月を要する。


 デフレからの脱却にはインフレに対する期待感が重要だといったとおり、根本的には私たちのマインドが重要になる。最近、あるニュース番組が次のようなアンケート調査の結果について報道していた。

『企業や国民が物・サービスを買う気にならない理由』
【第1位】所得が減っている、あるいは増えないから
【第2位】将来への漠然とした不安
【第3位】税金の増税や社会保障の負担増

給与・賃金が上がるかもしれない、あるいは雇用条件がよくなるかもしれないという期待感。安易な負担を求め続ける国や、連帯感が薄れ孤立化する社会に対する不安感の払拭。そんなマインドを多くの国民に持ってもらえるかどうかにかかっている。しかし現状を見れば次のとおりだ。

東日本大震災の復興財源として所得税・住民税・法人税が増税される。法人税はすでに昨年から、所得税は今月から増税された。住民税は来年から増税される予定。社会保障関係財源として消費税が来年には税率8%、再来年には10%へと段階的に増税される予定。さらに厚生年金の負担額は2017年まで毎年、増え続ける。そして電気料金も値上がりし続けている。


 ここ15年以上も国民の給与・賃金が下がり続けているにもかかわらず、これだけの負担を平気で求めてくる国。その国、つまり官の費用を見る。GDPに占める官の費用について、米国と対比すると次のとおりだ。

【米国】1985年 20.6% → 2010年 17.1% (減少傾向)
【日本】1985年 20.1% → 2010年 24.5% (増加傾向)

庶民の給与・賃金も、税収も減り続け、国債という借金に依存し続けているにもかかわらず、国会議員や国家公務員は自分たちの給与・手当・福利厚生や特権を維持し続けている。さらに独立行政法人を舞台にする官僚の天下り人事は後を絶たない。


 富を得る者と貧しい者の格差は広がるばかりで、中間所得層は減り続ける。それが続けば、ほんの一握りの大資本家とその他大勢の貧しい者という状況に行き着く。

デフレからインフレに移行する際の最低賃金引上げと物価上昇を両天秤にかければ、低所得層にとってデフレの方がまだまし。また国の下で働く者は相変わらず高い給与水準を維持しているため、物価が下落し続けるデフレ下では実質的な給与アップである。

そして実質的な特権が与えられている銀行はデフレ下では、融資などせず国債が出てくるのを待って大量に買うだけで多額の利益が得られる。銀行が国債を買う時には限度額も決められていないし、原資がなくても買える。預金金利はほぼゼロなので国債金利がほとんど利益になる。デフレ下では金利は低いものの国債の価値は下がらないため安心して多く買えるからだ。

そのように富裕層から貧しい者まで、個人という視点ではデフレの方がよいという意識が働く。ただし企業人・組織人という視点ではインフレになって欲しいと願う人は多い。


 資本主義における自由競争の行き着く先は、ほんの一握りの金持ちとその他大勢の貧しい者。富裕層から多く税金を徴収して、社会保障と称して貧しい者に所得の再配分をいくら行ったところで、貧しい者の心までいやすことはできない。やはり、みずから働いて一定水準のお金を稼いではじめて心が満たされる。

大型チェーン系列が大資本にものをいわせて街の個人商店を淘汰していき、商店街はシャッター通りと化している。そんな光景を食い止めるには中間所得層を増やすことであり、それには国が思い切った規制をつくることだ。つまり大資本に対する規制強化を行うことである。

私たち国民の多くは、中小・零細企業で働く者や自営業者である。所得を一部の者に集中させるのではなく分散させ、多くの人が一定水準の給与を得られるようにしないといけない。そのためには自由競争にルール、すなわち規制を設けるべきである。確かに現在も規制はあるが十分でない。ほとんどの労働者が一定水準の給与・賃金をもらえてはじめて購買意欲がわき、デフレから脱却できる。

同時に国の下で働く者は庶民の苦しみを分かち合うべく、みずから血を流す覚悟を持つべきである。
 

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コメント
 
01. 2013年1月22日 19:18:33 : sAHcQ1WxTA
2パーセントのインフレターゲットをやり続けるアベノミックスはハードランディング型構造改革だと定義できる。
金融の量的緩和は全身麻酔薬だ。痛みがなくなるから、どこが痛いかわからなくなって、
どんぶり勘定の財政が継続されて、改革ができない。痛みのない改革などないと悟るべきだ。

どう見ても今の日本経済は量的金融緩和による円安でしか物価の上昇は起こらない。

円安は輸入物価を上昇させる。エネルギーや原材料や食料など輸入品はほとんどが生活必需品だ。買い控えできない。
高い生活必需品を買わされた消費者は国内で作られる他の製品の買い控えで生活防衛しなければならない。

円安に極端に振れたとしても、世界の主要国はどこも日本と似たり寄ったりの財政情勢だから民間バブルが世界経済に再来することはなく、
世界の消費は財政の制約を絶えず受けることになる。

このような世界経済のもとでは国内の輸出企業は量的に輸出を拡大できないが、円安差益は手に入る。

日本は輸出主導の生産拡大ができず、内需も不振となると、国内で民間の投資先が見つからず、海外へ資本が流出して、ますます円安となる。

量的金融緩和は悪い物価上昇と金利上昇が起こることは想定できる。この状態がもたらすものは低金利で細々とやってきた国内のゾンビ企業の一掃だろう。

財政再建のため、政府がこれらのゾンビ企業の救済をあきらめることはハードランディングを起こすことと同じ経済効果をもたらす。


02. 無段活用 2013年1月23日 03:08:30 : 2iUYbJALJ4TtU : 6MIcfD8YQs
「子ども手当」をやればいいじゃない。

安倍さんがやってもいいよ。


03. 2013年1月23日 05:25:57 : RufpgDo1AM
難しいことはない。

1)最低賃金を1200円にする。
2)派遣・契約社員を雇う企業の
ピンハネをやめさせる。
3)標準月額最低賃金を月額20万円とする。
4)上記を実施するうえでこんなんを伴う中小企業には
無限無期限の政府資金援助実施する。

以上を実現すれば、景気は即、上向くぞ。



04. 2013年1月23日 09:14:03 : mb0UXcp1ss
【第10回】 2013年1月23日 
【テーマ8】若者の失業問題

若者の就職難は自民党政権で一層加速か

正社員も非正社員も救われない危機の正体

――本田由紀・東京大学大学院教授に聞く

2013年も引き続き大きな社会問題であり続ける若者の就職難。2011年における日本の若年失業率は8.2%と、全世代の4.5%を大きく上回る。つまり、働きたくても職に就けない若者が日本では12人に1人いる計算だ。また、職に就けたとしてもそれがブラック企業や不安定な非正規雇用であったりと、肉体的にも精神的にも追い詰められる若者が少なくないのが日本の現状である。現在、2014年度の新卒採用がスタートし、「内定が取れるのか」という不安も学生の間で広がるなか、仕事に就けないとすれば、それは本当に彼らの「自己責任」で片づけてよいのだろうか。経済成長に軸足を置く自民党・安倍新政権が若者の就職難を解決できるのかを含め、就職難の若者を救うために必要な処方箋を、東京大学大学院・本田由紀教授に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

若者の就職難は「自己責任」ではない

――新規学卒者のみならず、若年層の就職難が深刻な問題となっている。彼らが就職できないのは「やる気がないから」と言われることが多いが、本当に「自己責任」で片づけてよいのか。


ほんだ・ゆき
1964年徳島市生まれ。社会学者。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学(教育学博士)。現在、東京大学大学院教育学研究科教授。著書に『多元化する「能力」と日本社会』(NTT出版、第6回大佛次郎論壇賞奨励賞受賞)、『軋む社会』(河出書房新社)などがある。
 私は自己責任だとは全く考えていない。確かに、若者それぞれを見れば、仕事に就ける人と就けない人に分かれており、就職できないとすれば、それは本人の責任のように見える。しかし、経済成長率の低迷や産業構造の変化という大きな趨勢があるなかで、若者が就ける仕事の量自体が長期的趨勢として縮小し、その質も変化している。そうした現実に目をやれば、自己責任などで説明できる状況ではない。

 日本の正社員は昔から企業によって強いメンバーシップを与えられ、職務の内容や分量が不明瞭である一方で、長期的な雇用や賃金の上昇が保証されてきた。しかし、経営環境が将来的に不確実化するなかで、企業は正社員を絞り、賃金も抑制し、出し入れが容易で安価な非正社員を活用することで対処しようとしている。

 また、産業構造の変化によって一次産業は減少、1995年頃まで持ちこたえてきた第二次産業も下降する一方、第三次産業の伸びが著しい。一見、第三次産業に雇用吸収力があるように見えるが、その多くが対人サービスだ。人件費が支出のほとんどを占めるため、収益獲得のために人件費圧縮になりがちで、労働条件の劣悪な雇用が広がっている。

 2012年に厚生労働省が発表した調査結果によると、大卒者の「3年間の離職率」は大卒者全体で3人に1人に対し、サービス産業、なかでも宿泊業・飲食サービスや教育・学習支援業では約5割に上る。新卒入社しても、労働条件の厳しさゆえに離職が発生しているのだ。高卒者の場合はもっと著しい。

――若者を仕事に就ける人、就けない人の2つに分かつものは一体何か。

 新規学卒一括採用に注目した場合、企業側の採用基準は依然として、大学の入試難易度のような一般的な「知力」と、コミュニケーション能力や意欲、立ち居振る舞いといった、知力に還元できない「人間力」、私の言葉で言えば「ポスト近代型能力」が重視されている。つまり、明るく元気でハキハキした積極性のある人が最後の関門である面接を突破する。ある大学の教授は「モテる奴は早く内定が取れる」と言っていたが、そういうオーラを発揮している人が内定をたくさん取っている。

 一方、ぱっと見は地味でも情報分析や資料収集能力には長けているようなコツコツタイプにこそ、本来はイキイキと働いてもらった方が経済は活性化するはずだが、企業はむざむざと切り捨てているのが現状である。

――ここ最近、「学歴不問」という企業が増えているが。

 60〜70年代はむき出しの形で大学名を重視する採用が行われていたが、社会的な批判を受けて徐々に潜在化する方向に進んだ。そこで出てきたのが、OB・OGリクルーターを通じた80年代バブル期の採用だ。

 その後、90年代に入り、採用が全体的に縮小するなかでインターネット採用が広がった。ネット採用はオープンで誰でもエントリーできるという外見を持っていたが、実際には膨大な母集団から絞り込む際は大学名を重視したり、特定の説明会には特定の大学の人だけを優先的にエントリーできるような仕組みがもぐりこまされている。つまり、学歴重視は隠蔽されつつ、強固に残っているのだ。

 就活コンサルタントによると、インターネットを通じて作り上げられた膨大な母集団を絞り込む手間感が企業で高まっているため、これからは企業が特定の大学に出かけて説明会を開催するような、大学に直に手を伸ばすやり方がより広がるのではないか、という指摘もある。そうなれば今後は、いっそうはっきりと出身大学が就職に利いてくることになるだろう。

なぜ就職難にある日本の若者は
デモをしないのか

――アメリカやユーロ圏では就職難にある若者がデモを行う様子がしばしば見受けられる。しかし、なぜ日本では大きなデモが起きないのか?

 ここ数年、勤労感謝の日に『就活ぶっとばせデモ』『就活くたばれデモ』が新宿で開催されているが、人数は目立って増えてはいない。それは、「デモをやっている暇があるなら就活しろ」、というバッシングが強いからだ。3.11以降、原発問題に関するデモが社会的に広がっているように、デモは本来、様々な問題を社会問題として集団で指摘するものだ。しかし、就活や雇用の問題になると個人に還元して、「負け組の遠吠えだ」と嘲るような発想がとても強い。

 しかも、先ほど述べたように企業は、学歴とともに「人間力」という非常に抽象性の高い曖昧な採用基準を重視して採用を行っている。この「人間力」には、公正さや正当性を主張しうるような能力測定の基準はない。学生側からすれば非常に不透明な新規学卒採用が行われていること自体、大きな問題だが、あまりにも広がっているために、問題性を指摘しても受け止められにくく、いつまでも変わらない。

 そこでは私は、一見、平原状だが、実は尖った円錐状の階層性のある現状の新規大卒労働市場に仕切り線を入れて「サブ労働市場」に分け、職務(ジョブ)内容を明確化し、応募者の具体的な専門的知識・スキルや志望との適合性を向上させるべきだと考えている。最初の入職時のジョブとスキルの対応関係は1対1の極度にかっちりしたものではなくても構わない。実際に仕事に就くまでに身につけられる専門性は基礎的なものであり、働き始めてからそれに肉付けがされてゆくことは言うまでもない。

 また、一生その職業や専門性だけで生きていけるとは限らないため、一旦ジョブにマッチングをしたうえで、その後は最初の専門性から隣接領域に進んだり、膨らませたりする余地を含んでいることが望まれる。こうした「柔軟な専門性」を身につけうる大学のカリキュラムや、企業内・企業間のキャリアルートを導入することが重要だろう。

 しかし、現状の日本の正社員は、組織へのメンバーシップを基軸とする働き方であるがゆえに、職務範囲が不明確で専門性も重視されず、過重労働も発生してしまっているのが現状である。

「卒業後3年以内は新卒扱い」では
解決しない就職難の処方箋とは

――若者の就職難の問題を解決するには、まずどこから手をつけていくべきか。

 若者の仕事に関する問題とは、教育から仕事への移行に関する問題である。現状として、以上に述べてきた問題が起きているにもかかわらず、企業と教育機関の両者がお互いに責任をなすりつけて変わろうとしない。変えるためには、企業と教育機関の両方に呼びかけなければならない。

 企業に対しては、新規学卒一括採用をいきなり全廃しろというのは非現実的であるため、せめて複線化してほしいというのが1つの提案だ。複線化とは、これまでのような知力&人間力重視の新規学卒採用とは別に、経歴にはこだわらずらず、ジョブに即した知識・スキルを身に付けている人であれば、広く採用するというもう1つの門戸を開くことである。

 2年ほど前に、私も参加する日本学術会議の報告書を発端に「大学卒業後、3年以内は新卒扱い」という方針が政府によって掲げられた。確かに「3年以内」までは応募できる企業は増えたが、既卒者が採用される機会がはかばかしく増えたわけではない。なぜなら、今までと採用基準は変わらないからだ。

「傷」のついていないピカピカの経歴を持ち、知力・人間力ともにフルスペックの人から順に採用されており、経歴に職に就かない空白期間があるだけで「傷」がついている人と見なされる。だから「3年以内」だけを叫んでもしょうがない。経歴や属性に基づく差別をいくらでも含んでしまうこれまでのメンバーシップ型採用ではなく、職種別での採用を少しでも厚くしていくように企業を誘導する政策が重要だ。

 そうした採用を行う企業の例として挙げられるのが富士通で、事務系でも様々な職種別採用を行っている。例えば、サプライチェーンマネジメントもその1つで、あまり派手な職種ではないにもかかわらず、やる気があり、それについての勉強をしてきた人が応募してきて、その部門の採用担当者も満足しているとうかがっている。ある職種に関心があり、それに向けてよく調べたり考えたりしてきた人を、きちんと尊重した採用をしてもらいたい。それが企業側に対して申し上げたいことだ。

 対して大学側には、ある特定の仕事内容を明確にした採用があった場合に、それにできるだけ適合した知識やスキルをもつ大学生をどれだけ育て、送り出していけるかが、問われるだろう。

 ただ、日本の大学制度の全体構造においては、長い歴史の中で形成されてきた諸問題、特に大学間の威信・難易度の階層性の強さや、私学が多いことによる学費の高額さ、マスプロ教育などの問題の上に、90年代以降の大幅拡大がもたらした問題がさらに積み重なり、ほころびだらけの状態にあるる。近年は、大学が何もしなくても卒業生が就職できていたバブル期とは異なる危機感が生まれ、教育の質の改善は行われつつあるが、それでも旧態依然たる教育内容・方法や制度全体の問題は残っている。

 それゆえ、容易なことではないとしても、企業と大学の両方に働きかけ、こじれた形でかみ合っている両者の関係をもみほぐし、まずは一部からでも順接的な新しい関係を作り出してゆく必要があるだろう。

自民の唱える経済成長は本当に可能か
“つっこんどけ雇用政策”はもう通用しない

――先の衆院選では自民党が圧勝し、安倍新政権が誕生した。若者の雇用対策は期待できるか。

 経済がなかなか成長しなくなっている今、正社員の働き方の過酷さが強まってきている。特に、いわゆる「ブラック企業」で働く正社員は、凄まじいハラスメントを受けたり、ときに過労死・過労自殺・過労鬱に至るような働き方をさせられている。一方で非正社員の方はメンバーシップがないことから、いつでも使い捨てられる状況だ。

 そうした状況からも、これからの労働・雇用政策を考える上で、正社員の働き方の改善が不可欠だが、民主党も自民党も、そういう観点がほとんどない。ずっとやってきたのは、“つっこんどけ雇用政策”だった。それは、とにかく若者をどこかの会社の正社員につっこんでさえおけば、雇用政策は終わりだという前提に立った政策である。

 しかし、いくら若者を会社につっこんでも、つっこんだ先が荒れていれば、疲弊し、ぼろぼろになってそこからまた吐き出されてくる若者が後を絶えない。だからこそ、非正社員はもちろん、正社員側の働き方を是正することが必要である。いまやサービス残業を含む長時間労働で、最低賃金を実質割り込むこともめずらしくない。最低賃金を機能させ、労働基準法を機能させ、労働時間法制を拡充させるといったルールの実効化をしたうえで、先ほどから述べている「ジョブベースでの仕事の割り当て」が求められる。

 一方で自民党は、経済成長に最も力点を置き、世界で一番企業が活動しやすい国にしておけば、雇用と所得が自然と拡大すると考えている。もちろん経済成長そのものを否定しているわけではない。可能ならば望ましいが、経済成長率が長期的に低下する趨勢にあり、産業構造の変化が起こっているなかで、私にはそれが容易とは到底思えない。世界経済に緊密に組み込まれ、不安定要素が多い現代で、金融政策ぐらいで景気が回復するなら、他の国も困っていない。さらに、2004年頃から2007年頃までの景気回復期にも、企業収益が労働者の賃金にトリクルダウンしなかったことを思い起こせば、経済成長が仮に起こったとしても、それが人々の生活をよくする保障はない。したがって、経済成長という1点に、雇用や若者の生活の是正を依存させれば、経済成長が空振りに終わった場合、どうなるのか。

 だからこそ、経済成長戦略の成果が出るまで待つのではなく、若者の仕事や生活を支えるための働き方の是正を同時に進めるべきである。つまり、ジョブを基軸として、新しい仕事を作り出すとともに、今過重になっている正社員の仕事をシェアしてゆくことが重要だ。

 例えば、高齢化が進むいま、地域で孤立した高齢者を支える仕事は儲かるわけではないが、社会的には大事な仕事である。そういう地味な仕事でも頑張ってくれる人に、税金から報いる形での仕事のひねり出しが必要ではないか。そして、正社員のジョブの輪郭が不明確な中で、仕事の内容や分量と賃金との対応関係について納得感が失われてしまっている状況を是正するためにも、仕事を切り分けるとともに、どれだけの内容・分量の仕事ならどれだけの報酬が最低限得られるのかについて、できるだけ目安やルールを作っていくことが望ましい。
http://diamond.jp


05. 2013年1月23日 10:10:42 : mb0UXcp1ss
【第5回】 2013年1月23日 田中秀明 [明治大学公共政策大学院教授]
【番外編】
「アベノミクス」最初の予算
緊急経済対策と補正予算を検証する
去る1月15日、安倍政権の最初の予算となる平成24(2012年)年度補正予算が閣議決定された。「日本経済再生に向けた緊急経済対策」の財源を裏付けるための予算であり、いわゆる「アベノミクス」の柱の1つである。日本ではこれまでも補正予算による景気対策が繰り返されてきたが、これまでとどう異なるのか。日本における補正予算の基本的な問題は既に第4回で議論したが、今回の補正予算について改めて考える。景気刺激策の有効性そのものは否定しないが、現実の政治状況では、真に効果のある施策を選定し、それを適時かつ適切に執行することは極めて難しいことを述べたい。折角、お金を使っても、有効に使われないのが現実である。

なんでも「あり」にならないか

 最初に、緊急経済対策の中身を見よう。緊急経済対策は3つの重点分野からなり、第1は復興の加速と事前防災、第2は民間投資の喚起、第3はくらしの安心の確保と地域活性化、である。これらの項目そのものがおかしいと否定する人いないだろう。筆者が質問したいのは、この項目に該当しない対策あるいは予算が存在するのか、である。公務員の給与といえども、事前防災や安心確保のためといえば正当化できる。要するに、説明次第であり、なんでも「あり」なのである。復興予算が被災地以外で使われた問題を思い出してほしい。

 この緊急経済対策の財源となるのが、平成24年度補正予算である。対策がなんでもありであれば、予算もなんでもありとなる。現実には、各省庁は、予算を獲得するために、様々な対策を盛り込んだのである。基礎年金の国庫負担部分を除く日本再生にかかる補正予算の規模は、約10.3兆円である。政府の説明では、これにより、GDPが2%、雇用が60万人増えることになる。積算根拠は十分に説明されていないので、この数字が真に正しいのかを判断できないが、それほど単純な問題ではない。以下では、補正予算の問題を整理する。

 第1に、昨年12月26日に政権が発足してから、わずか3週間程度で、真に効果のある事業を選定することは難しいことである。必要な予算や重要な予算は、当初予算に計上されていたはずだ。逆にいえば、計上されなかったものが、少なからず補正に計上されていると推測される。補正予算の詳細が判明していないので、現状ではわからないが、事業仕分けで削減や見直しの対象となったものが、少なからず含まれているのではないか。事業の名前だけでなく、中身を吟味する必要がある。

 予算制約が緩めば、無駄な予算が膨らむことは古今東西の共通の現象である。補正予算の国会審議は、通常、衆参併せても、1週間から10日程度である。そのような短い期間で、内容を吟味できるだろうか。審議に2月かかる当初予算でさえ、十分に審議しているとはいえず、まさに、民主党政権が行った事業仕分けで、我々は無駄な予算の存在を知ったのではないか。

 第2に、予算は、補正といえども、建前としては、年度内、すなわち3月31日までに使わなければならないことである。「単年度主義」が、予算の原則だからである。仮に、補正予算が2月上旬に国会を通ったとしても、公共事業等の執行のためには入札手続きが必要であり、公募から契約まで、金額にもよるが、通常2月程度はかかる。もちろん、一定の範囲で2013年度への繰越が認められるだろうが、その場合は、景気浮揚効果はすぐには出てこない。

 第3に、経済の実際の動向とのずれである。景気が最も底にあるときに、適時適量に景気対策を打つことができれば、その効果は最大となる。景気の底がいつだったかを確認できるのは、1年も2年も後である。これは、「タイム・ラグ」と呼ばれており、例えば、公共事業が実際に執行される時には、景気は既に底を通過し、対応が遅くなることがしばしば指摘される。遅くなるだけではなく、景気を過熱させることにもなる。

麻生政権時代の使い残し

 もちろん、以上は一般論であり、今回の補正予算がそうなるとは限らない。しかしながら、今までできなかったことが、どうして突如としてできるようになるのか。

 麻生政権が、政権交代の前に実施した平成21年(2009)度補正予算を思い出してほしい。46の基金に約4兆3000億円が計上された。「消費者行政活性化基金」に219億円、「安心こども基金」に3485億円、「介護基盤緊急整備等臨時特例基金」に2938億円などである。ここで個別事業の問題を議論する余裕はないが、会計検査院は、平成22年(2010年)度末までに、平成20年(2008)度第2次補正と合わせて、基金の使い残しが2兆円(全体の約6割)に達していることを指摘している。その理由はいろいろあるだろうが、無理に予算を積み上げた結果、さすがに使い切れなかったのである。予算制約が緩めば、そうなるのは必然の現象である。

 今回の補正でも、「官民ファンド」がいくつもつくられる。補正予算作成の舞台裏はわからないが、出資金であれば、建設公債の対象となるからではないか。リスクをとるのがファンドと考えられるので、もし失敗して資産がなくなると、借金だけが残ることになる。道路などのインフラであれば、利用者が少ないとしても、まだ資産が残るので、建設公債で賄うことが正当化できるかもしれないが、出資金はそうではない。

 安倍首相は、去る1月11日の緊急経済対策の記者会見で、「安易なバラマキではないということは明確にしておきたいと思います」と述べたが、何を根拠にそうだと言えるのか。記者会見では、「中身もガラス張りにして、費用と効果の比較も見えるようにしてまいります」と述べているが、施策の評価をするためには、事前に目標が定められていなければならない。

 そもそも、緊急経済対策の中身をみると、「イノベーション創出に向けた科学技術研究の加速」、「環境関連投資促進税制の拡充」、「中小企業の交際費課税の特例の拡充」、「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」などとしか書かれていない。今後、施策毎に評価目標や基準が導入されるかもしれないが、そうした趣旨は緊急経済対策には書かれていない。

検証や評価があっての財政規律

 英国では、保守政権が2011年3月、「成長のための計画」(The Plan for Growth)を発表している。ここでは、@投資と輸出を促進する、A英国を欧州の中でのビジネスの最適地として位置づける、Bより教育訓練された労働力を育成する、CG20諸国の中で最も競争的な税制を構築する、という4つの目標を定めるとともに、これを実現するための施策を列挙している。さらに、法改正等のスケジュールと進捗状況、施策の達成度の評価など、を半年毎に検証している。まさに、政策のPDCAを実践している。

 また、安倍首相は、記者会見で、「財政規律は極めて重要であると私も認識をしております。プライマリー・バランスの黒字化を目指してまいります」とも述べているが、今回の景気対策で財政はさらに悪化するにもかかわらず、なぜ目標を維持できるといえるのか。今回の補正予算と最新の経済データに基づき、歳出・歳入の将来見通し(「ベースライン」と呼ぶ)を示し、直近の推計とどう乖離したのかを検証し、プライマリー・バランスの達成度の可能性などを検証すべきである。そして、政府はベースラインと目標の乖離をどうやって是正するのかを、説明しなければならない。

 こうした検証や評価があって初めて、財政規律を重視していることを説明できる。ニュージーランド等の「財政責任法」では、景気対策により財政が悪化し、目標から乖離する場合、政府がそれをどうやって是正するか(将来の増税など)を事前に説明しなければ、そうした政策をとることができない。景気対策を講じてはならないと言っているのではなく、財政がどのように悪化し、それにどう対応するかを先に説明しなければならないと言っているのである。

 景気対策の有効性そのものを否定しているわけではない。しかし、現実には、それは恐ろしく難しいのである。景気対策は、いわば「麻薬」である。効果が発生しても、それは持続しない。エコカー減税やエコポイントを思い出してほしい。これらは、結局、需要の先食いであり、永続的な効果は期待できない。もちろん、あらゆる施策にはリスクがある。リスクがあるからできないと言っていては、何もできないだろう。しかし、過去にできなかったことが、今直ちにできるとはにわかには信じられないのである。政府は、今回の対策が「安易なバラマキではない」ことを、データに基づき立証する責任を負っている。そして、我々はそれを注意深く監視しなければならない。


06. 2013年1月23日 10:15:28 : mb0UXcp1ss
【第88回】 2013年1月23日 高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]
日本株市場の「失われた3年」
安倍政権は“ジャパン・ペシミズム”から脱却できるか
――高田創・みずほ総合研究所チーフエコノミスト
2009年半ばからの
日本株の出遅れ

 下記の図表は、金融危機以降の主要株価指数の推移である。日本株は他国の株式と較べて明らかに出遅れていただけに、ここ2ヵ月の株高はこれまでの出遅れの調整の側面が強いと評価される。また、こうした出遅れが生じた過去3年は、日本の株式市場の「失われた3年」であっただけに、その脱却が2013年の課題になる。


 それでは、なぜ2009年以降の日本株の完全な出遅れ、日本の株式市場の「失われた3年」が生じたのかを、改めて考える必要がある。ここで、2009年後半以降に乖離ができた要因を考えると、次に挙げる2点がある。

@為替の円高局面

A民主党への政権交代

 為替の円高は2007年以降続いており、2009年後半から新たに生じたものではないが、円高の影響が株価の重石になっていたのは事実であろう。一方、2009年9月の民主党政権の誕生は、非連続的な影響を市場に与えた。「生活者重視」とするスローガンのなか、企業との一体感など「プロビジネス」な動きが後退したとの印象が生じた。

均衡財政の乗数

 マクロ経済学の教科書に必ず出てくる議論に「均衡財政の乗数」がある。その意味するところは、増税を行ってその同額の公共投資を行うと、GDPが公共投資の分、拡大するというものである。簡単な数式示すと図表2の通りである。


民主党政権での成長抑制策

 一方、以上とは逆のことを行ったらどうなるだろうか。すなわち、公共投資を削減し、その分の金額を国民に直接給付する行為である。その効果は、先の均衡財政乗数を考えれば、理論上は公共投資を抑制した分のGDPマイナス効果が及ぶことになる。

 通常の教科書では、経済政策を行う上でGDPを押し上げる効果しか議論の対象にならないので、このように実際に公共投資を縮小して国民にお金を戻すことは議論されにくい。

 しかし、実際にそれに類似した政策が、過去3年の民主党政権下で行われていたとも解釈される。すなわち、「コンクリートから人へ」のスローガンのもと、公共投資を削減し、その分を国民への直接給付として支給することである。子ども手当や農業への所得補償がその実例となる。

 振り返れば、民主党政権で「コンクリートから人へ」として、公共投資から国民に直接支給をすることは、マクロ経済学の「均衡財政の乗数」の理論からすれば、経済成長を低下させる政策を意図的に行うことだった。

 さらに、2009年の民主党政権発足で始まった事業仕分けを通じて支出削減を声高に掲げることが、一層乗数効果を引下げた面もあった。

海外投資家は買い越しに

 以下の図表は、日本株に対する主体別の売買状況を示している。11月以降の日本株の買い越し主体は海外投資家であり、足もと、海外投資家が買いに転じてしばらく上昇になった。

 そこで海外投資家が期待するのも、従来の日本株の制約であった反企業的側面の転換、すなわち安倍政権のプロビジネスに期待し、円高是正への期待の大きさにある。今後の株式市場を展望する上で、外人投資家の買いが続くか、海外投資家の期待を維持できるかがポイントとなるだろう。


海外投資家への
2の矢、3の矢は?

 総括すれば、今後の日本株の回復は「日本株の失われた3年」を転換させる期待を海外投資家に与えることができるかにある。上記の主体別売買状況を踏まえると、短期的に見て日本国内の機関投資家が積極的な買い手に転じることを期待するのは難しいだろう。同時に、個人投資家も常に買い手として期待されてきたが、実際には容易でないだろう。

日本そのものが
壮大なSWFだった

 最近、政府の成長シナリオのなかで政府も一体になったファンドの組成が多くなったのは、今日の日本の株式市場の実情を踏まえたものとも言える。すなわち、日本の機関投資家は株価上昇を期待するものの、株式の買い手として即効性のある担い手になりにくいなか、当面、国家も含めたファンドでの支援を呼び水に利用することにある。

 戦後、日本そのものが壮大な「ソブリン・ウェルス・ファンド」(SWF)、つまり投資ファンド機能を備えた「日本株式会社」の状況にあった。しかし、そのエクイティ供給機能が崩れ、政・官・財の絆も低下に陥ったことによる混乱がバブル崩壊後の20年であり、その混乱が過去数年、さらに強まった面もあった。

 東日本大震災で「絆」の重要性が再認識されたが、日本としての投資ファンド機能を維持した数少ない形態が総合商社にあり、その競争力を国家レベルに引き上げることが重要になる。すなわち、再び国を挙げて投資ファンドになることが重要な成長戦略である。

株・不動産は「悪の枢軸」
から脱却できるか

 日本では、国富を形成する重要な要素である株式・不動産を重視する風潮が薄れた状況になってしまったのではないか。それは、「株・不動産・レバレッジ」はさながら、「悪の枢軸」のように扱われる「空気」が支配した20年だった。株・不動産価格の上昇を「バブル」と決め付けるだけでなく、国家として「国富拡大」を掲げることもマインド転換には必要と考えられる。


07. 2013年1月23日 13:45:15 : xEBOc6ttRg
第1回 なりふり構わぬ財政出動が加わり、現状は完全に「期待相場」
2013年01月22日

 安倍政権の経済政策は、賛否両論あるものの、現在のところは株式市場を中心に期待感が先行しているように思います。その経済

政策に「アベノミクス」という固有の名称がついていることからもわかるように、安倍政権は少なくとも何かしらの経済政策を積極的に打ち出

そうとしている、と世間は評価しているのでしょう。

民主党の「縮小均衡に向かう分配政策」に批判
 一方、民主党の経済政策とは何だったのかと問われたら、多くの国民には「迷走」の一言しか思い浮かばないでしょう。民主党政権が

どっちに動こうとしているのか、まったく見えませんでした。

 そうした経済政策の混迷や混乱を受け、自民党は民主党の政策を「縮小均衡に向かう分配政策」と総括し、批判して政権を奪還し

ました。自民党は富を創造して善循環を生み、成長を軌道に乗せる政策を推進すると訴えたのです。

 「コンクリートから人へ」の標語に象徴されるように、確かに民主党の政策は分配に偏ったものでした。2009年の総選挙で小沢一郎氏

は「国民の生活が第一」というキャッチコピーを打ち出し、当時は人々の心をとらえることに成功しました。

 人々が「国民の生活が第一」や「コンクリートから人へ」といった分配政策に引かれたのは、世界金融危機により生活基盤がズタズタに

裂かれたことが大きかったと思います。自殺者は相変わらず多く、生活保護者も急増しました。非正規雇用の上昇が止まず、給料は上

がらないし、就学支援児童も増えていく。

 国民生活の基盤が確実に蝕まれる状況の中で、従来の自民党型分配政策では不十分だということに人々が気づいたというわけです

「美しい国」で失敗、今回は明確かつ具体的な主張
 90年代以来、分配政策に数々の問題が発生していた日本で、人々が分配政策の充実に目を転じたこと自体は良かったと思います

。ところが、民主党政権の分配政策はかけ声だけで、子ども手当の迷走に象徴されるように、具体化する段階になると何をやっているの

かわからなくなってしまいました。

 分配政策がうまく進まず、「国民の生活」が改善されたかどうかよくわからない状況になると同時に、成長政策もほったらかしですから、

低成長の下、国民生活は苦しくなっていく一方でした。民主党政権は3度も成長戦略を、掲げはしましたが、いずれも美辞麗句ばかり

で具体性を欠いていたので、低成長になるのは当然だったと言えます。

 結局、民主党政権は何をやっているのかわからないという失望が広がる中で、安倍晋三氏が出てきました。現在の日本が抱えている問

題はデフレに原因があり、デフレを克服するためにあらゆる手段を講じると主張する安倍さんは、意味不明な民主党に比べると、実に明

快な存在に思えたのです。

 安倍さんの論法は、かつての安倍さんとはまったく違うものになっていました。2006年の第1次安倍政権の時は、「美しい国、日本」とか

、主張が情緒的で意味不明だったため、急速に国民からの支持を失った。今度は単なる言葉ではなく、あくまで具体的な主張を明確に

しています。

 たとえば、「円が高い」と安倍さんは言います。また、「日銀の金融緩和は誤りだ」と批判し、デフレ克服のために無制限な金融緩和を

要求しました。

Next:日銀が標的にされ、国民も市場も納得した
 ここで日本銀行は相変わらずの反応を見せます。政治から批判されるとやるけれども、批判されないとやらないのが日銀の行動原理で

す。今回、安倍さんからインフレターゲット(物価上昇率目標)を要求された日銀は、すぐに2%のインフレターゲットを策定することを決め

ました。

 日銀と対照的な行動原理を持っているのが米国の連邦準備制度理事会(FRB)です。FRBの場合は、とにかく危機が発生すれば、

市場予想を超えてあらゆることを迅速かつ大胆に実行する。危機を乗り切ったら、その後で副作用などさまざまな問題を考える。そうした

事後処理型の行動を展開します。事後処理型の問題解決というのは、米国社会全体に通底している、やり方と言えます。

 ところが、欧州や日本のような伝統的社会では、将来起こりうる副作用をまず考えつつ、事前に注意しながら慎重に行動する傾向が

強い。欧州中央銀行(ECB)も日銀も、金融緩和について保守的なのはそうした社会的背景も要因となっています。

 もっとも、日銀としては、これまでにも十分な金融緩和をしてきたと考えているでしょう。ゼロ金利を実施したのは世界で一番早かったし、

量的緩和もFRBよりも先にやっています。国内総生産(GDP)に対する日銀の資産残高も、世界に先駆けて膨張してきました。

 しかし、日銀は日銀なりにそうした金融緩和を実施してはいるのでしょうが、結果がほとんど出ていないのが実情です。そこで、日本は

1998年からデフレ下にあるわけですが、この根因は何かと言った時に、日銀が標的とされてしまった。

 人間というのは、病根や真犯人がわからないことがもっとも不安です。「円高と日銀の金融政策が原因だ」と安倍さんが明言してくれると

、国民はホッとするし、市場も「そりゃそうだ。悪いのは日銀だ」と安心、得心したというわけです。

Next:先行き不安だと企業も個人もお金を退蔵する
 問題はここからです。日銀を悪者にしたところで、デフレがすべて解消されるはずもない。なぜなら、金融緩和でお金をどんどん出しても、

それを使って企業が投資をする、あるいは個人が消費をしなければ意味がないからです。

 この点がアベノミクスについて政財界はもとより、マスメディアや国民の間で広く誤解されていることです。中央銀行がお金をばらまけば、ば

らまかれたお金でモノを買うので需要が増え、需要が増えるからインフレになると単純に考えられていますが、そうではありません。

 確かにお金を本当にばらまく(一方的に新たなお金を付与する)ことができれば、必ずインフレになります。しかし、実際に中央銀行が行

うのは、市中銀行が持っている国債などを買うという作業です。あるいはFRBのように、企業や各種の投資家が持っている国債や優良証

券を、オープンマーケットを通して買い入れる。

 この場合、どういうことが起きるでしょうか。

 たとえば企業や個人のポートフォリオを100として、そのうち20が現金で80が国債だったとします。ここで中央銀行が国債を30買い入れ

て現金が50になったとしても、ポートフォリオの総体は変わらないわけですから、それがかならず投資や消費に回るとは限りません。

 先行きが見えない現在のような状況では、企業が投資するという意思決定をすることが難しい。同様に個人も、給料や雇用の先行き

が不安な中、お金を使わずに退蔵してしまいます。

Next:クルーグマンの説をめぐる大きな誤解
 ここで、ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏など米国の経済学者が言っているのは、中央銀行がインフレにすると宣言すれば

、インフレ予想下では現金の価値が目減りするので、それを避けるためにお金を使うようになるというものです。

 日本の経済学者やエコノミストも、クルーグマンを引き合いに出して、インフレターゲットさえ実施すればみんながお金を使うようになると考

える人が多い。ただ、クルーグマンは4%のインフレターゲットを15年の長期間やれと言っています。そんなに長い期間、インフレターゲットを

実施するのは現実的ではありません。中央銀行がお金を無制限に供給し、近い将来に必ずインフレになるといっても、先行きの見通しが

定まらず、給料の増加が望めない限り、企業投資も個人消費も増えはしません。

 そう考えると、インフレターゲットを中央銀行が明確に掲げても、せいぜい市中にお金を回すバックアップにはなるけれども、企業や個人が

お金を使うことには必ずしも結びつきません。魅力的なクルーグマン理論は、長いデフレで「デフレ心理」が根雪化している日本では、「机

上の空論」の域を出ません。ただ、短期的(1年間前後)には無制限の金融緩和等は脱デフレ効果を持ちえます。正確にいえば、脱デ

フレへの期待効果といっていいものです。

 先述のように企業や個人のポートフォリオのなかで、現金比率が20から50に高まれば、過剰な現金を設備投資や消費でなく、株式、

債券、土地、外貨などへの、金融資産への投入を増大させる可能性が高まります。この点で、株価や不動産価格の上昇に加え、ドル

高(円安)の流れが広がり、これが資産効果として、総需要拡大に作用することです。しかし、ユーロ危機、米国景気の減速やドル不安

あるいは地政学的リスク(中国リスクを含む)が発生すれば、市場期待は一気に崩れ、効果は吹っ飛んでしまいます。

 同様に、円安も一時的な気休めにはなるけれども、問題を根本的に解決するには至りません。たとえば対ドルレートで80円だった円が

25%安くなると100円になります。輸出競争力がそれだけ強まるように思いますが、それ以上に日本と新興経済国との賃金格差が大き

いので、この円安では結局焼け石に水です。

「そこのけ、そこのけ、お馬が通る」の財政出動
 中国と日本の賃金格差は1対8くらいあります。25%の円安を加味したとしても、賃金コストの格差はまだ1対6くらい残るわけです。ま

してバングラデシュやミャンマー、インドネシア、ベトナムといった国々を考えると、賃金格差は1対10とか1対20になるので、円安では到底

埋めることができません。また技術力という点でも日本と新興国との差が縮まってきているため、やはり賃金コストを考えた場合には日本は

不利となります。

 円安誘導と無制限の金融緩和だけを実施したところで、マーケットは活況を呈するかもしれませんが、長続きしないということは、多くの

人が気づきつつあります。その点で今回、安倍さんが巧みだったのは、金融政策だけでなく財政政策も盛り込んだことです。

 アベノミクスに市場が反応しているのも、財政出動への期待によるところがかなり大きいと言えます。安倍政権は住宅減税、自動車減

税、公共投資など、経済を活性化するところにターゲットを絞っているので、市場も安倍政権の財政政策には期待をするわけです。

 金融政策だけでは不安なところに、「プラス1」として大胆かつ柔軟に財政政策を打ち出していく。悪い言い方をすれば、なりふり構わず

に「そこのけ、そこのけ、お馬が通る」で財政を出動していく。そこに市場が期待している段階ですから、現在は完全かつ完璧なまでの「期

待景気」です。

Next:「期待相場」が膨らんでいる
 今年は実質成長率1.5% 前後が達成され、為替も1ドル=100円近くになる可能性があります。日経平均株価も1万3000円を超

え、1万5000円に迫るかもしれません。それだけ「期待相場」が膨らんでいるのです。

 安倍さんがデフレ脱却に力を入れているのは、今年7月に参院選が控えているからだということは言うまでもありません。また、今秋には消

費税引き上げの条件となっている景気の判断が待っています。何としてもそれまでに結果を出さなければならないのです。

 少なくとも参院選と消費増税判断までは、安倍政権はこの期待を保ち続けるように最大限の努力をしていくものと思われます。今のとこ

ろ、経済政策としての妥当性はともかく、政治学的にはほぼ満点の対応ができているのではないでしょうか。

齋藤 精一郎(さいとう・せいいちろう)
NTTデータ経営研究所 所長、千葉商科大学大学院名誉教授
社会経済学者、エコノミスト

 1963年東京大学経済学部卒。63〜71年まで日本銀行勤務。72〜05年まで立教大学社会学部教授(経済原論、日本経済

論担当)。05年〜09年まで千葉商科大学大学院教授。
 2012年まで24年間、「ワールドビジネスサテライト」(WBS、テレビ東京系)のコメンテーターを務める。
 主要著作は、近著に『デフレ突破 −第3次産業革命に挑む−』(日本経済新聞出版社、2012年12月)、『「10年不況」脱却の

シナリオ』(集英社新書)、『パワーレス・エコノミー 2010年代「憂鬱の靄」とその先の「光」』(日本経済新聞出版社)など。翻訳書とし

てはジョン・F・ガルブレイスの『不確実性の時代』(講談社学術文庫)など。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/tk/20130116/337021



08. 2013年1月23日 20:33:03 : xEBOc6ttRg
賃金を上げるには成長戦略が必要
米国のインフレ率2%の理由は生活コスト上昇
加藤 出:東短リサーチ取締役・チーフエコノミスト2013年1月18日
「われわれは“ホテル・カリフォルニア的な金融政策”と私が呼んでいるリスクに瀕している」。米ダラス連銀のフィッシャー総裁は昨年12月14日のCNBCテレビのインタビューでそう答えた。“ホテル・カリフォルニア”は、ご存知のように、イーグルスの1970年代の大ヒット曲だ。「一度入ったら誰も出られない」という意味合いで、米国では近年その曲名がよく引用される。

フィッシャーは、FRB(米国連邦準備制度理事会)がこれまで行ってきた超金融緩和策(いわゆる“QE”)の先行きの出口政策はかなりの困難、トラブルを伴うと心配しているため、そのような表現を使っている。「理論的にはわれわれはこのプログラムから好きなときにチェックアウトできることになっている。しかし、実際は、われわれはバランスシートを膨張させ続けているため、この状況から抜け出すことはできないかもしれない」。

ただし、フィッシャーはFOMC(連邦公開市場委員会)の中では少数派である。主流派を引き連れるバーナンキFRB議長がすぐにスタンスを変えることはないだろう。彼は2014年1月に議長の任期を終える。そこで彼が退任するなら、事実上の「勝ち逃げ」となり得るが、後任議長は出口政策で苦しむおそれがある。

超金融緩和策はフリーランチではない

異例の超緩和策は、実行中の効果だけでなく、出口政策まで含めたトータルのサイクルでそのよしあしを評価する必要がある。現在のFRBは長期のMBS(モーゲージ担保証券)を大量に購入して住宅ローン金利の上昇を抑えようとしている。

経済が活性化して、金融引き締めに転じるときは、FRBは同証券を市場に売却しなければならない。それは住宅ローン金利を高騰させうるが、そこで多くの政治家はFRBに金融引き締めを抑えるように攻撃を加えるかもしれない。フィッシャーは明示していないが、彼はそういった摩擦を心中で懸念しているのだろう。出口政策が円滑に行えない場合は、その後にインフレ率の高騰か、あるいは何らかの望ましくない資産バブルが起きる可能性が高まる。

元BIS(国際決済銀行)のチーフ・エコノミストだったウイリアム・ホワイトは、昨夏に発表した論文で、「超金融緩和策はフリーランチ(ただ飯)ではない」と強い口調で警告を発した。超緩和策の景気や資産価格に与える効果は言われているほど強くなく、他方、モラルハザードの発生を含めたさまざまなコストが発生する可能性が高い。

ホワイトは、03〜04年頃にFRBの金融緩和姿勢は危険だと警笛を鳴らしていたが、当時FRB理事だったバーナンキは、それは筋違いだと激しい反発を見せた。その後、サブプライムバブルの破裂とともに、ホワイトの見解が正しかったことが明らかになる。このため、彼の現在の警告にも耳を傾ける必要があるだろう。

市場の期待が過剰になると、反動のおそれも

一方、今の日本では「FRBの政策を見習え」というムードが非常に強い。日銀は安倍政権が要求する政策を基本的には受け入れていくと思われる。

昨年11月後半から現在にかけて、ドル円相場は大幅な円安になり、日経平均は1万円台を大きく上回った。同10月に東京で開かれたIMF・世界銀行総会で世界中から集まってきた海外の機関投資家は、日本の貿易赤字、高齢化問題などを改めて認識し、「いつまでも円高トレンドではないな」という思いを抱くようになりつつあった。

また、リーマンショック以降、外貨建て運用を控えていた日本の個人投資家も、最近はそれに再び関心を高めているため、それも円安要因の1つとなっている。

そういった潮目の変化の時期に、安倍発言がタイミングよく出てきた。海外の大手ヘッジファンドは、相場の流れを形成する「ストーリー」を好む。最近はユーロを攻撃する「ストーリー」が描けなくなっている。世界を見渡してわかりやすい「ストーリー」といえば、「安倍トレード」ぐらいになっている。このため、多くのファンドマネジャーが「安倍トレード」に参戦してきている。

ただし、彼らの中には、日本経済の実情、デフレ脱却の難しさを知らない人も多い。市場の期待が過剰になると、反動のおそれが出てくるため、注意が必要である。

1月22日の日銀金融政策決定会合では、国債の買い取り増額を中心とする追加緩和策が決定されるだろう。

超過準備への付利(現在0.1%)の引き下げは今回はないと予想している。短期金融市場の機能を壊すというデメリットがわずかなメリットを凌駕するおそれがあり(バーナンキもその理由ゆえに0.25%という超過準備への付利を今でも維持している)、かつ、現時点で日銀が予定している資金供給額(合計120兆円超)が実行できなくなるおそれがあるからである。

インフレ目標に関しては、報道されているように、2%を明記するものの、達成期限は明示しないことになるのではないか。達成期限を示さないと思われる大きな理由は、(1)現実に日銀の政策だけでそれが実現できるかというと大きな不確実性がある、(2)国債市場で暴落が生じないようにグレーな部分を残しておく必要がある(例えば、2年以内に必ず2%を達成すると政府・日銀が宣言したら、0.70%台で10年国債を買った銀行は、それを急いで売却したくなるだろう)、という点にある。

金融緩和だけでは賃金が上がらない

10月30日に野田前政権と日銀が発表したデフレ脱却のための「共同声明」は、(1)の考え方がベースにあった。デフレ脱却にとって日銀の金融緩和姿勢は重要ではあるものの、それだけでは「良いインフレ」は実現できない。

日本経済が先行き成長して、人々の賃金が上昇し、それを受けて企業が値上げしやすくなって、それにより企業収益が向上して再び賃金が上昇するという「賃金とインフレの適度な好循環」を起こす必要がある。

アメリカのCPI(消費者物価指数)前年比は、この10年間、平均で見ると2%台前半で推移してきた。日本はマイナス0.2%程度である。具体的にどの品目が上昇すれば全体のインフレ率がアメリカのように2%を超えるのか見てみよう。

02年1月時点のCPIを100とすると、昨年11月の自動車は、アメリカ98.7、日本98.4だった。テレビは05年1月時点を100とすると、昨年11月はアメリカ17.7、日本11.8だった。パソコンもそうだが、グローバルに価格競争が激しい品目は、「インフレの国」アメリカであっても価格は上昇していない。

一方、生活コストに直結する品目はアメリカでは日本と異なって随分と上がっている。2002年1月を100とすると昨年11月のアメリカは食料133.6(日本は101.5)、公共交通料金132.3(同100.2)、電気料金144.1(同105.0)、保健医療149.7(同99.9)、大学授業料198.7(同104.9)、ガソリン306.7(同143.3)となっている(日本の大学授業料は市立大学)。

生活コストが上昇しないとインフレにならない

日本でも、そういった生活コストに関連する品目の値上がりが続いていかないと、全体のインフレ率を2%以上の状態で維持することは難しい。しかし、その場合、賃金もそれ以上に上昇していかなければ実質の生活はかえって苦しくなってしまう。また、民間のサービス価格は人件費をかなり反映しているので、それらが値上がりを続けるためにも、賃金の上昇は必要である。

しかし、経団連は労働組合の春闘での賃上げ要求に対して否定的なニュアンスを発表している。大企業の正規労働者ですらそういう状態だと、中小企業の社員や非正規雇用の人々が賃上げの恩恵を受けられるのはかなり先のことになってしまうおそれがある。

日銀が1月11日に発表した「生活意識に関するアンケート」の12月調査では、「物価上昇」について「どちらかと言えば、困ったことだ」と回答した人が85%もいた。賃金上昇を伴わないインフレは勘弁して欲しい、という人が現実には多いのだと推測される。

日本国民の幸福にとって必要なのは、「賃金とインフレの適度な好循環」が起こるように、日本経済の基礎体力を中長期的に強めていくことと思われる。したがって、政府による成長戦略の遂行は極めて重要といえる。

また、高齢化の問題に直面している日本にとって、アジアの成長を取り込んでいくことも非常に大事である。その点では、安倍政権は現時点では適切な方向性を示している。

中国は政治的に大きなリスクがある国だが、一方で、日本経済にとって中国を無視することは現実的に難しい。OECDが12月に発表した経済予想では、購買力平価ベースの世界GDPに占めるシェアは、11年は米国23%、ユーロ圏17%、日本7%、中国17%だったが、2030年には米国18%、ユーロ圏12%、日本4%、中国28%となる。

日本の経済回復へ、日中間の関係修復が大事

1月上旬に中国に出張したが、反日ムードは昨年9月、10月の出張時に比べれば表面的には大幅に後退している。中国のメディアを見ていると、安倍政権の対中外交を見極めようとする記事が現在は非常に多いことに気がつく。尖閣諸島問題をあおろうと挑発してくる勢力が存在するのは事実だが、一方で、地方政府、企業の中には、日本との関係を修復させたいと願っているところも多い。

日中間の経済関係を深めることは、日本経済の早期回復につながるだけでなく、結局はそれが最大の安全保障策になるだけに、安倍政権がプラグマティックなアプローチを今後も続けていくことができるかが注目される。


09. 2013年1月23日 21:17:50 : xEBOc6ttRg
TPP、“日本抜き”に現実味

2013年1月23日(水)  安藤 毅

安倍晋三政権の外交が東南アジア歴訪でスタートした。米国、韓国、ロシア訪問も調整中で、得意分野での成果を急ぐ。一方、TPP交渉参加は先送りで“日本抜き妥結”に現実味も。

 安倍晋三政権が経済再生に続き重視する外交に本腰を入れ始めた。就任後初めての海外訪問先としてベトナム、タイ、インドネシアの3カ国を歴訪。東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済成長を日本に取り込む経済連携の深化や、中国をにらんだ海洋安全保障の協力の強化などが目的だ。

 安倍首相は1月下旬の訪米実現を目指していたが、バラク・オバマ大統領の2期目の政権移行期と重なったことなどから再調整することになった。今年が日本とASEANの交流開始40周年に当たることも踏まえ、ASEAN諸国の歴訪を先行することにした。

 これに先立ち、麻生太郎・副総理がミャンマーを、岸田文雄・外務相がフィリピン、シンガポールなどを歴訪しており、政権発足1カ月で首相と重要閣僚がASEANの7カ国を回ることになった。外務省幹部は「アジア重視を打ち出し、米国と歩調を合わせながら、この地域で影響力を増す中国を牽制する狙いがある」と明かす。

日中首脳会談は春以降に

 領土問題に端を発した中国、韓国との関係修復についてはどうか。韓国とは2月末の朴槿恵(パククンヘ)氏の大統領就任式に安倍首相が参加することも検討しており、早期に首脳会談が行われる見通しだ。

 これに対し、中国との首脳会談は今春以降に先送りされる公算が大きい。「今年3月の全国人民代表大会で中国の新体制がスタートした後でいい」(外務省幹部)との判断がある。さらに、関係者によると、安倍首相は中国の漁船や航空機による領海・領空侵犯が頻発していることに激怒し、「中国首脳と会う気はない」と外務省幹部に言い切っているという。どのようなタイミングで首脳同士の接触を設定するのか、日中双方で神経戦が続きそうだ。


 このほか、安倍首相は今春にもロシアを訪問し、北方領土問題の解決と平和条約の締結に向けた交渉の進展を急ぐ構え。今夏の参院選を控え、矢継ぎ早に外交成果をアピールする狙いだ。

 経済政策に続き、外交でもロケットスタートを目指す安倍政権。だが、その勢いにブレーキをかけかねない課題がある。TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加問題がそれだ。

 「まだ状況分析が十分ではない。情報を精査し、判断していきたい」。TPP交渉参加を巡り、安倍首相はこうした趣旨の発言を繰り返す。本来、安倍首相は日米関係強化の観点からも交渉参加に前向き。だが、自民党内に参院選での農業関係団体の離反を恐れる議員や地方選出議員らを多く抱えていることが慎重姿勢の背景にある。

 交渉参加を推進する立場の茂木敏充・経済産業相はTPPに参加した場合の日本経済への影響について、参院選までに政府の統一試算をまとめる考えを表明した。この試算に基づき自民内の意見集約を図るというわけだが、自民幹部は「党としての方針決定は参院選後になるということだ」と語る。

 米など交渉参加11カ国は今年10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)での基本合意を目指し、協議を加速する方針。それまでに交渉は3、5、9月の3回の開催が予定されている。米議会が新たな参加国を認める手続きには90日以上かかる。日本が7月の参院選後へ決断を先送りすれば、日本は9月の交渉にすら参加できなくなる。

 「農産品の自由化など各国間の主張の隔たりは大きく、今年中の妥結の可能性は小さい」(外務省幹部)との見方も根強い。だが、日本抜きでルール作りが進み、妥結後に日本が加入を模索する、というシナリオが現実味を増しているのは確かだ。

 成長戦略の柱と経済界が渇望するTPP参加。安倍首相が指導力を発揮できなければ、政権への期待が剥げ落ちかねない。


安藤 毅(あんどう・たけし)

日経ビジネス編集委員。


時事深層

“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。


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