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「中国は世界最大の紙幣印刷機」との見方に専門家が反論
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/225.html
投稿者 あっしら 日時 2013 年 2 月 09 日 11:54:03: Mo7ApAlflbQ6s
 


 先日投稿した「中国、マネーサプライ急増が意味するものとは?」の続報である。


 言い訳っぽいこともいろいろ書かれているが、


●「通貨が過剰発行状態かどうかを判断する指標の1つとして物価の安定がある。金融政策の良し悪しを判断する上で重要なのは、経済の成長率・規模と歩調が合っているかどうか」

● 「「通貨の過剰発行」は表面的な現象であり、その裏には中国経済構造のアンバランスや金融体系発展の遅れといった問題が隠れている。」


● 「中国のマネタイゼーションの過程には、他国とまったく異なる構造的・制度的基礎が存在する。その核心は、(1)政府が主導となったマネタイゼーション、(2)国際資本の循環を受けた「受動的な創造」、(3)金融資源配分の効率低下」


● ※中国経済にとって合目的的かどうかは別にして

「「通貨の中にいれば、通貨の仕組みを理解できないため、通貨の外に出て通貨を見直す必要がある。政府主導の資源配分モデルから脱却し、市場を資源配分の主体とし、投資への過度な依存をやめ、金融分野の全面的な改革を促進することで初めて、通貨の過剰発行を緩和することができる。人民銀行による通貨発行抑制や信用貸付規模に頼っていてはこの局面を変えるのは難しい」

● 中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は、「我々は2008年以降、世界的な金融危機に対応するために積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策をとってきた。政策自体は正しいが、何がしかの副作用がもたらされることは確実だ。金融政策にはタイムラグが存在し、一部の効果や現象がやや遅れて現れることもある。金融危機への対応の際は、マクロ経済調節に適度に力を入れる必要があるが、危機が過ぎた後は逆方向の調整が必要だ」と説明している。


ということで、最終節を読めば済む内容になっている。


※ 関連投稿

「中国、マネーサプライ急増が意味するものとは?:世界総量の1/4・米国の1.5倍・GDP同等規模日本の1.7倍」
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/200.html

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「中国は世界最大の紙幣印刷機」との見方に専門家が反論

 各国が相次いで新たな量的緩和策を発表する中、あるメディアが「中国の通貨過剰発行も深刻だ。昨年、中国の通貨増加量は世界の約半分を占め、世界最大の紙幣印刷機になった」と報じた。これについて専門家は、「このような言い方はあまりにも常識外れで、一方的すぎる」との見方を示している。中国の通貨発行量が本当に深刻なのかどうか、1つのデータに基づいて当て推量することはできない。通貨が過剰発行状態かどうかを判断する指標の1つとして物価の安定がある。金融政策の良し悪しを判断する上で重要なのは、経済の成長率・規模と歩調が合っているかどうかだ。

 ▽中国の通貨過剰発行は誇張

 中国の通貨過剰発行問題はここ数日、各方面で話題になっている。中国人民銀行(中央銀行)の統計データによると、2012年末現在、中国のM2残高は97兆4200億元に達し、世界一となった。この額はすでに、世界のマネーサプライ総量の4分の1に近づいており、米国の1.5倍だ。さらに、M2の対GDP比は188%の過去最高に達した。ちなみに同期の米国の同比率は63%で、中国のわずか約3分の1だった。一部メディアはこの差を根拠として中国を「世界最大の紙幣印刷機」と比喩し、多くの人が中国の通貨過剰発行が深刻であると考えるようになった。

 しかし、専門家はこれについて「表面的に見て、中米のデータを比較すればこの結論も一理あるように感じるが、理論的に分析、もしくはもっと広範囲で比較すれば、この判断が大雑把であることが分かる。特にM2残高と対GDP比だけで中国が通貨過剰発行状態だと断定するのはあまりにも単純で一方的だ。各国のマネーサプライの統計範囲の違い、融資構造の違い、経済発展段階の特徴などの要素を全く考慮していない」と指摘する。

 中国人民大学財政金融学院の趙錫軍副院長は「中国の通貨発行量は確かに多いが、中国経済の成長率を見ずに単純に過剰発行だと決め付けてはならない。合理的な通貨発行は、国の経済成長率・規模に応じたものであるべき。例えば米国は経済成長が鈍化しているため、発行量を再度増やせば過度な発行になってしまう」とする。

 ▽通貨発行量の増加には原因が

 中国人民銀行の周小川総裁は、「中国がこれまで統計してきた実体経済には形のあるものしか含まれず、サービス業が含まれない。このため、市場化が進み経済発展が加速するに伴い、マネーサプライは統計範囲内の『実体経済』の需要をすぐに上回り、いわゆる『過剰発行』の状態になった。しかし実際のところ、マネーサプライは実体経済だけでなく、サービス業や金融市場の需要も満たす必要がある」と指摘する。

 興業銀行の魯政委チーフエコノミストは「中国のM2対GDP比は前々から高かった。この原因として、1つには中国のマネタイゼーションの進展が挙げられる。これまで市場で取引されてこなかった多くの製品が市場に流入し始め、自然とより多くの通貨が必要になった。もう1つの原因は、中国の社会融資構造だ。社会融資の大部分は銀行によるものであるため、M2が必然的に高くなる」とする。

 国家情報センター経済予測部世界経済研究室の張茉楠副研究員は「まず第一に、改革開放の深化と市場化の高まりに伴い、中国の通貨需要が絶えず高まり、マネーサプライの増加ペースが経済成長ペースを上回った。このためM2の対GDP比が高まった。第二に、WTO加盟以降、中国の輸出の高成長および蓄積された外貨準備高は、貨幣創造のメカニズムと供給構造を大きく変化させた。最後に、投資に対する過度な依存度もまた、通貨の受動的な過剰発行の主因となっている。金融資源の国有経済に対する過度な依存、国有部門の予算に対する『ソフトな制約』は、金融資源の効率低下を招いている。経済の高度成長を維持するためには、さらなる信用貸付・貨幣供給に依存する必要がある」と語る。


 ▽市場を資源配分の主体に

 実際のところ、「通貨の過剰発行」は表面的な現象であり、その裏には中国経済構造のアンバランスや金融体系発展の遅れといった問題が隠れている。中国のマネタイゼーションの過程には、他国とまったく異なる構造的・制度的基礎が存在する。その核心は、(1)政府が主導となったマネタイゼーション、(2)国際資本の循環を受けた「受動的な創造」、(3)金融資源配分の効率低下だ。

 張茉楠副研究員は、「通貨の中にいれば、通貨の仕組みを理解できないため、通貨の外に出て通貨を見直す必要がある。政府主導の資源配分モデルから脱却し、市場を資源配分の主体とし、投資への過度な依存をやめ、金融分野の全面的な改革を促進することで初めて、通貨の過剰発行を緩和することができる。人民銀行による通貨発行抑制や信用貸付規模に頼っていてはこの局面を変えるのは難しい」と指摘する。

 周小川総裁は、「我々は2008年以降、世界的な金融危機に対応するために積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策をとってきた。政策自体は正しいが、何がしかの副作用がもたらされることは確実だ。金融政策にはタイムラグが存在し、一部の効果や現象がやや遅れて現れることもある。金融危機への対応の際は、マクロ経済調節に適度に力を入れる必要があるが、危機が過ぎた後は逆方向の調整が必要だ」と指摘する。(編集SN)

 「人民網日本語版」2013年2月7日 

http://j.people.com.cn/94476/8124799.html


 

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コメント
 
01. モンテカルロ・モナコ 2013年2月09日 23:14:18 : jxuoe3ac9bV5I : UZZkrvTd1c
ベース・マネー(マネタリー・ベース)

信用乗数

マネー・ストック(マネー・サプライ)


売り手が2人で買い手が1人

買い手が2人で売り手が1人

意味わかる?


02. 2013年2月12日 09:01:29 : xEBOc6ttRg
近隣窮乏化政策の果てしない愚かさ
アベノミクスは本当に近隣窮乏化政策なのか?
2013年02月12日(Tue) Financial Times
(2013年2月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 近隣窮乏化政策の古典的定義は、1937年に英国の経済学者ジョーン・ロビンソンによって提示された。日本やその他の先進国で追求されている今の政策を考えると、これは再考する価値が十分にあるだろう。

 どんな国にとっても、輸入に比べて輸出を増やすよう誘導することは、その国の雇用拡大につながるとロビンソンは述べた。当初の雇用増加に加え、新たに雇われた労働者が使うお金から2次的な増加が生まれる。彼女が指摘したように、問題は「その他の条件がすべてが同じ」なら、ある国の輸出増加は他国の輸出減少につながることだ。

 良くても「世界全体の雇用水準には何の影響も与えない」し、恐らくは世界全体の雇用を減少させる。

 予想される結果に関するロビンソンの説明も思い出す価値がある。「ある国が他国を犠牲にして貿易収支を改善させることに成功するや否や、他国が応酬」し、世界の活動に占める割合で見た国際貿易の規模が縮小するとロビンソンは書いた。「政治的、戦略的、感情的な判断が火に油を注ぎ、経済ナショナリズムの炎が一段と燃え盛る」

国際貿易を減らす近隣窮乏化策が今も魅力的な理由

 ロビンソンは、これを国内投資によってもたらされる国内雇用の増加と対比させ、国内投資は「世界全体の雇用の純増をもたらす」と述べていた。

 今は「国内投資」の代わりに、純粋な内需刺激策を代用することができる。筆者の見解では、このような刺激策を抑制する財政均衡の教義への固執が、近隣窮乏化政策の魅力が継続している理由の1つだ。

 ここ数十年間の割と希薄な数学的貢献とは対照的に、1930年代の論文の妥当性が続いていることは、それ自体が不吉な兆候だ。

 ロビンソンは元々の論文で、近隣窮乏化の4つの武器を挙げていた。当局の誘導による為替レートの切り下げ、賃金の引き下げ、輸出補助金、輸入制限である。誘導された為替レートの切り下げは、今最も注視する必要のある要素だ。

 言うまでもなく、こうした手段はどれも国際通貨基金(IMF)や世界貿易機関(WTO)、欧州連合(EU)その他の国際機関によって禁止されている。だが、こうした禁止は実際に効果があるのだろうか?

 判断が難しいのは、ほとんどの雇用促進政策が、純粋な国内景気刺激策と輸出促進策が入り交ったものであることだ。英国の首相が英国製品を売り込むために発展途上国を訪問するのを止めるとしたら、それは失礼というものだろう。

 近隣窮乏化の問題は、日本の新政府が打ち出した国内景気拡大策との関係で、より真剣に取り上げられるようになった。

緊縮を拒んだ日本に喝采

 筆者の最初の反応は、声援を送ることだった。何しろ日本はこれで、米国を除くG7諸国の中では、緊縮を唱える息苦しい主張を拒否し、国内の成長を促すための対策を取った最初の国になったからだ。

 日本は国内経済拡大策を必要としているし、それをやるだけの財力も十分にある。日本の国内総生産(GDP)は2007年のピーク水準をまだかなり下回っているし、そのピーク時以降、平均すると物価水準は下落してきた。

 日本の新しい景気拡大策の最も重要な側面は恐らく、2.3%という今年度の経済成長率の政府目標を後押しするための新たな大型財政刺激策だろう。日銀は多かれ少なかれ、その財源の穴埋めを余儀なくされる。

 ドイツの指導者たちは躊躇せずに、日本の対策は近隣窮乏化政策の一種だと非難した。だが、果たしてそうだろうか?

 日本の政策はまだ作成途上だ。その最大の目玉は、インフレ目標を年間1%――日本は明らかにそれを下回ってきた――から2%に引き上げることのようだ。

ドイツが日本の政策を非難する理由は・・・

 雇用とインフレの間のトレードオフは、どんなものも本来一時的であるため、筆者なら、ケインズ主義の景気刺激策を提示するのに、このような方法は選ばない。だがそれが、より拡張的な金融政策を明確に伝える政治的に都合のいい方法であるのなら、それはそれでいいだろう。

 国際的に議論を呼んでいる政策の側面は、口先介入によって円を安値誘導していることだ(円は2011年のピークから下落している)。

 そのこと自体は悲惨なことではない。バンクオブアメリカ・メリルリンチのエコノミストらは、円の対ドル相場が名目ベースでは歴史的な平均値に近く、実質実効ベースでは危機以前のピーク水準をかなり上回っていることを示している。

 ドイツの懸念は結局のところ、競争力を強めた円がもたらす中国向け輸出への脅威という具体的な心配に根差している可能性が十分ある。

通貨戦争に陥ってはならない

 それでも日本政府は、円安を目指す取り組みが言葉の範囲を超えないよう注意する必要がある。

 最も厳密な監視を必要とする要素は、円相場が反発するのを防ぐために日銀による外国債券の購入を望む、かなり露骨な政府の願望だろう。もっとも、発展途上国のかなりの資産を買い占めるために中国が国際収支の巨額黒字を使っていることに比べれば、悪いとは到底言えないが・・・。国際経済は、通貨戦争に持ちこたえるには、あまりに脆弱過ぎる状態にある。

By Samuel Brittan


03. 2013年2月12日 09:02:12 : xEBOc6ttRg
米国の財政緊縮に戦々恐々、脅かされる日常生活
2013年02月12日(Tue) Financial Times
(2013年2月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 国内の空港での大幅な遅延や政府職員の大量解雇の可能性、天気予報の精度の低下など、米国人は近く、緊縮財政の厳しい影響を感じるようになるかもしれない。

 いわゆる「強制削減」問題の解決策を見つけるために共和党とホワイトハウスが画策しているにもかかわらず、3月1日に発動される1兆2000億ドルの自動的な歳出削減を回避するための本格的な提案は出ていない。

 米議会では、次に何が起きるかという点が憶測の的になっている。というのも、1つには、米国の政府機関がいかにして今後10年間で6000億ドルの歳出削減を吸収するのか、また、さらに6000億ドルの追加削減を達成するために米国防総省が具体的にどのプログラムを廃止するのかについて、オバマ政権が詳細を公表していないからだ。

 「一般市民は、怒りを示すようになるほど歳出削減の影響を受けるのか、それとも、何ら変わらない態度で退屈そうにやり過ごすのか? どんな展開になるのか、誰も分からない」。トム・デービス元下院議員(共和党、バージニア州選出)はこう言う。「バージニアは(防衛産業に依存しているために)大きな打撃を受けるが、ウィスコンシン州オシュコシュで傍観している人たちは『もう潮時だ』と言っている」

 財政の専門家たちは、強制削減が経済活動と日常生活に与える影響について、悲惨な光景を描いている。

国防総省などで大幅な人員削減、観光業に大きな打撃も

 最も直接的な影響を受けるのは、恐らく政府職員だろう。国防総省は、軍人以外の職員80万人が年内いっぱい労働時間を20%カットされ、4万6000人の臨時職員が解雇されると話している。

 だが、ほかの政府機関でも人員が大幅に削減される見込みだ。国境監視員が推定で25%減らされるほか、食肉解体場と食肉加工工場の食品安全検査官が600人、航空管制官が1200人削減される見通しだ。


人員削減の影響で、空港での待ち時間が長くなる恐れもあるという〔AFPBB News〕

 観光産業を支援するロビー団体、米国旅行業協会(USTA)の副理事長を務めるジェフ・フリーマン氏は「どんな影響が出るのか、誰もはっきりしたことが分からない。我々が抱いている大きな懸念は、強制削減を目の当たりにし、直に感じる場所が旅行だということだ」と言う。

 USTAの最大の懸念は、2013年に見込まれている5%の予算減額が、旅行のピーク期間に欠かせない時間外のスタッフに即座に影響することだ。人員削減は、米国に入国する外国人旅行客の待ち時間を長くする恐れがあるという。

 空港警備を扱う米運輸保安庁(TSA)の元幹部、キップ・ハウリー氏は、TSAは運営が持続不能になったり、安全対策の実施方法を再考せざるを得なくなったりするまで、1〜2カ月くらいは予算削減を吸収できると指摘する。

 安全対策を見直す際には、例えば一部の尖ったモノの機内持ち込み禁止など、必ずしも安全にとって決定的に重要ではないが大変な人手がかかる規則を段階的に廃止することなどが考えられる。

研究予算カットで科学分野での競争力低下

 研究活動の支持者らは、米国の医療研究を牽引する米国立衛生研究所(NIH)に対する全面的な支出削減は、今年の研究費を125億ドル減額させ、9年間で最大8600億ドル相当の経済成長を損なうと主張。その結果、長期的には科学分野での米国の競争力が低下し、2013年から2016年にかけて50万人近くの雇用が失われるという。

 天候を予想する能力さえ、影響を受ける可能性がある。中道派のシンクタンク、サード・ウェイによると、強制削減が実施されれば、2016年に必要となる新しい極軌道衛星の予算が大幅に削られ、ハリケーンなどの潜在的な大惨事に関する長期気象予報の精度向上を事実上遅らせることになる。

 アナリストの中には、強制削減はすぐに政治的に持続不能になると予想する向きもある。一部の理論によると、歳出削減は行政サービスにも食い込み、議員に行動を迫る圧力がかかるという。

 だが、その一方で強制削減が変更される可能性を低くする、相反する流れもある。小さな政府を求めている保守派の共和党議員は強制削減のことを、米国の債務問題への対処を迫る自分たちの圧力がもたらした具体的な成果と見なしているのだ。

 「(強制削減について折れたら)共和党は信頼をすべて失う。共和党に関する限り、強制削減は絶対確実だ」と前出のデービス氏は言う。

連邦予算は既に圧迫されているのに・・・

 削減に反対する向きは、連邦政府の予算は既に大きく圧迫されていると主張する。リベラル系のシンクタンク、アメリカ進歩センター(CAP)によると、政府の各種プログラムと行政サービスに対する連邦予算は過去50年間で、国内総生産(GDP)比3.2%を下回ったことが1度もない。

 ところが今、既に実施された歳出削減を考慮すると、強制削減を計算に入れる前の段階でさえ、防衛費以外の支出が過去50年間のどの時点よりも14%少なくなるという。

 CAPの最近のリポートによれば、今年度の支出は、米議会予算局(CBO)が2010年8月に予想した額より470億ドル程度少なくなる見込みだ。これは7%をわずかに超える削減に相当する。

 だが2022年には、支出削減が年間950億ドルに膨らみ、支出は2010年時点のCBOの試算で予想された額を12%下回ることになるという。

【強制削減の痛みを感じるその他の分野】

●法と秩序
影響:連邦政府の法の執行機関(警察など)で3700人、検察で975人の人員が削減される
結果:逮捕件数が2万6000件以上、有罪判決が1万2000件以上減る

●刑務所運営
影響:連邦刑務局はさらに6891人の看守を解雇せざるを得なくなる可能性がある
結果:職員に対する受刑者の割合が4.95倍から6.52倍に跳ね上がるかもしれない

●国境警備
影響:国境警察官が25%削減される
結果:南側の国境で1マイル当たりの国境警察官の数が7人以下になるか、北側の国境と沿岸部で国境警察官がゼロになる

●きれいな空気
影響:環境保護庁(EPA)の大気浄化法の検査・執行が減少する
結果:心臓と肺の疾患による死者が50人以上、新たに喘息にかかるケースが900件以上出る

●食品の安全性
影響:食肉・鶏肉をチェックする食品安全検査局(FSIS)の検査官が608人削減される
結果:食品が媒介する疾患が5万件以上増加する

●銃器販売
影響:土日には9時間にわたり即時身元調査システムがシャットダウンされる
結果:銃器の展示会や販売店では週末のビジネスが限定される一方、犯罪者に誤って認可が下りる確率が高まる

(出所:シンクタンク「サード・ウェイ」)

By Stephanie Kirchgaessner


04. 2013年2月12日 09:05:54 : xEBOc6ttRg
「ロスジェネ」の味方となる政党は現れないのか
規制緩和では豊かになれない
2013年02月12日(Tue) 川島 博之
 1月31日、厚生労働省は2012年の給料(残業代やボーナスを含む額)が月額にして31万4236円になり、これは1990年以降の最低であると発表した。ここまで賃金が低下した理由として、賃金が安いパートの割合が増えたことを挙げている。パート労働者が全体に占める割合は 28.75%にもなっている。

 一方、2月1日、総務省は製造業就労者人口が1000万人を割り込んで998万人になったと発表した。製造業就労者が全労働者に占める割合は16%でしかない。この厚生労働者と総務省の発表は無関係のようにも思えるが、実は深く関係している。

 日本の産業構造は大きく変化している。高度経済成長を支えた製造業はアジア諸国の追い上げに苦しんでいる。韓国、台湾、中国をライバルだと思っていたが、昨今はASEAN諸国の製造業も急速に発展している。もはや、よほどのハイテク製品でない限り、日本製が安価なアジア製に太刀打ちすることは難しい。そのことは、パナソニックやシャープの苦境がよく表している。

 製造業はリストラに忙しい。その結果、職を求める人々はサービス業に流れている。バブル崩壊以降に就職した、いわゆる「ロストジェネレーション」(ロスジェネ)の多くはサービス業で働いている。

 そのサービス業には非正規雇用が多い。チェーン店化した飲食業やコンビニはバイトによって成り立っている。そしてサービス業でパート労働が一般化したことによって、平均給与が下がり続けている。これが、厚生労働者や総務省の発表したデータの根底にある現象である。

規制緩和で非正規雇用が増え、給与が下がり続ける

 そんな日本で、アベノミクスが進行している。アベノミクスでは第1の矢が大胆な金融緩和、第2の矢が大幅な財政支出、そして第3の矢が新しい産業の創出である。

 ここで気になるのが第3の矢だ。安倍政権は大胆な規制緩和によって新たな産業を作り出そうとしているが、それはできるのであろうか。

 規制緩和による産業の創出は小泉政権でも言われたことであるが、いまさら言うまでもないが、小泉改革によって新たな雇用が生み出されることはなかった。おそらく、規制緩和によってハイテクを用いた未来産業が作り出されることを夢見ていたのだろうが、そのようなことはなかったし、今後もないだろう。

 それにもかかわらず、新自由主義が金科玉条に掲げる規制緩和を政策の中心に置いていると、多くの労働が正規から非正規に換わってしまう。そして非正規雇用が増えるために、給与が下がり続ける。

 そのような状況を見るにつけて、非正規雇用を全面的に禁止する強い規制を導入する必要があると思う。

 もちろん、そんな規制を行えば、経営者は雇用を減らすから、失業率を一気に高めることになる。それは、経済学を知らない者の暴論だとの批判があることは十分承知している。だが、政治は経済学とは異なる。学問的には間違っていると言われても、自己の利害を強く主張することが政治である。

ロスジェネが低賃金で働くのは老人のため?

 既にロスジェネは4000万人にもなっている。そして、今後ますます増え続ける。彼らの多くはパートで働き、また、たとえ正規社員になっても、中高年に比べて安い給料で、こき使われている。

 本来、そのようなロスジェネの意見を汲み上げて、過激と言われようが、パートの禁止や同一労働同一賃金を党の綱領に掲げる政党が出現してもおかしくない時期に来ている。しかし、ロスジェネが政治に関心が薄く投票に行かないことを背景にして、これまで、ロスジェネの利害を代弁する政党が生まれることはなかった。

 自民党は経団連や農民を支持基盤の中核に据えている。一方、民主党は連合に代表される労組を支持基盤にしている。自民党は保守党であるから、経営者の立場に立って規制緩和を推し進めることは理解できる。しかし、本来、社会民主主義的な政党であるはずの民主党が公務員労組や大企業の労組の立場に立ってしまい、 ロスジェネの待遇改善に興味を示さなかったことは、まことに残念なことであった。

 どちらの政党の支持者も老人が多いから、ロスジェネをパートとしてこき使うことによって、自分たちが利用するファミレスやコンビニの物価が安くなればよいと思っている。老人が年金を使い切ることなく、その多くを貯蓄に回すことができるのは、低賃金で働くロスジェネがいればこそである。

 そして、老人の貯蓄が銀行預金を通じて国債を買い支えているのであるから、ロスジェネが低賃金でこき使われていることは、財政が破綻しない理由にもなっている。

 新自由主義を掲げるみんなの党はパートの立場に立つ政党ではない。それはパートを使って事業を立ち上げることができる頭のよい強者のための政党である。日本維新のイデオロギーもみんなの党に近い。

規制緩和が日本社会に与える負の側面

 規制緩和を進めて、新たなサービス業が起きると、英雄になれるほんの一握りの経営者と、多数の非正規雇用が生まれることになる。それによって、ますます低賃金でこき使われる若者の数が増えるから、消費が伸びることはない。出生率も改善されない。多くの人は、規制緩和が日本社会に与えている負の側面を軽視しすぎている。

 そもそも政治運動とは非理性的なものである。資本主義に追い込まれて、どうしようもなくなった労働者が社会主義政党を作った。当初、社会主義政党は非合法とされて弾圧されたのだが、それは20世紀の歴史を大きく動かすことになった。

 そろそろ、ロスジェネを支持基盤にした政党ができてもよい頃だと思う。その政党は、全ての労働者を正規雇用にしなければならないと主張する。すぐに正規雇用にできないのなら、パートにも失業保険を、健康保険を、大企業や公務員並みの退職金や年金を、同一労働同一賃金は先進国の常識だ、と強く主張する。

労働条件に関しては、徹底的に規制強化だ。そして、20世紀の革新政党が掲げていた護憲や反原発、反米にはこだわらない。

 21世紀の日本には、そのような政党が絶対に必要である。ロスジェネを支持基盤にした政党がないために、昨今、政治に関する議論が空を切っているのだと思う。


「経済成長や多様な働き方は幸福につながる?!」 背景に隠された黒い“本音”

無理やり消費させる世の中から、おカネを出したいと思う世の中へ

2013年2月12日(火)  河合 薫

 今回は、「成長と私たちの幸せ」について考えてみようと思う。

 「私の部下は半数以上が非正規です。はっきり言って、彼らが今の政策で幸せになれるとは到底思えない。実は私の娘も非正規で働いているんですけど、何かかわいそうで。部下や娘を見ていると、経済成長だとか多様な働き方って考え方は、実に無責任で弱い者イジメに近いものを感じてしまうんです」

 安倍晋三政権になってからというもの、毎日のように“景気のいい”ニュースが報じられている。

 トヨタ自動車は、5年ぶりに単独営業黒字となり、ネット証券大手のカブドットコム証券では、今年1月の新規口座開設数が昨年12月の2倍近くに急増し、今年に入ってから全営業日で「大入り袋」が支給されている。1日の売り上げが予算の1.5倍を超えると、500円の「大入り袋」が全社員に支給されるという仕組みだそうだ。

 さらには、大手コンビニエンスストアチェーンのローソンでは、子育て世代の社員などを対象に、会社の業績に関係なくボーナスを増やし、年収を平均3%引き上げる新たな賃金制度を導入することになった。

大手メーカーの部長が漏らした本音

 うらやましい――。そんな感想を持った人たちは多いことだろう。

 だが、その一方で、「うちの会社では無理だろうなぁ」と半ばあきらめ顔の人や、「どうせ恩恵を受けるのは、金持ちだけでしょ」と不満を募らせる人、あるいは「非正規社員の問題をもっと取り上げてくれよ」といら立ちを感じる人たちがいる。

 実際、私も年明けから、いくつかの企業の会合に参加させていただいているのだが、経営者が集まる会合ではここ数年にない明るい雰囲気があったものの、中間管理職主体の会合では微妙な空気が流れていた。

 冒頭の言葉も、大手メーカーに勤務する部長職の男性が、ふとこぼしたものである。

 「非正規社員は今後もっと増えていくでしょうね。一度削った人件費を増やすなんてことを会社はしませんよ。特に上の世代は、若い人たちの雇用を増やさなきゃとか、非正規を正社員にした方がいいとか、個人的に話している時にはもっともそうなことを言う。ところが自分たちがもらえるおカネが1円でも減るとなると、猛烈に反対するんです」

 「しかも、これは正社員のモラルの問題なんでしょうけど、年配の正社員たちの中には、給料の安い非正規社員の前で、平気で自分の持つ別荘の話なんかをする輩がいるんです。悪気はないのかもしれないけどね。でも、お恥ずかしい話、私自身、彼らの苦労がホントにわかるようになったのは、娘が非正規雇用になってからなんです」

 「娘は大学卒業後、正社員になれずに契約社員になりました。で、一昨年出産とともに辞めました。契約の身分で、産休を取ることができなかった。ただ、当時の上司が理解ある方で、再び働きたいと相談したら、再契約できるように動いてくれた。ところが、今度は保育園で子供を預かってもらえない」

 「契約前なので求職中ということになると、『だったらまだ育児はできますね』と言われ、後回しにされるんです。いわゆる待機児童ってやつです。家が近ければ家内が見てあげることもできるんですが、離れているのでそういうわけにもいかない」

 「政治家や経営者たちには、非正規社員のホントの苦しみはわからないんだと思います。だって成長戦略と言ったって、正社員の給料だって上がるのに3年かかると言うじゃないですか? 非正規の場合には、いったい何年かかるんでしょうか? 多様な働き方って聞こえのいい言葉ですけど、多様な働き方というのは、選べる自由がある人が使う言葉で、今の非正規社員たちには当てはまらないし、部下や娘たちを見ていると、誰がいったい幸せになれるんだって。暗澹たる気持ちになるんです」

 非正規社員の問題は、これまでにも何度も取り上げてきた。

 正社員との賃金格差。正社員化への法案のハードルの高さ。育児休暇などの待遇面での格差。さらには世間の「非正規=正社員になれなかった人」という偏見……。

 加えて、この方が指摘する通り、認可保育所の入所にはポイント制というものがあり、非正規社員は正社員に比べて入所できる優先度が低い。ましてや、この方のお嬢さんのように、求職中という身分になるとさらに難しくなる。

 単なる雇用形態の違いでしかないはずの正規と非正規の分類が、完全に身分格差となった現実がある。

「政治家や経営者たちにはわからない」

 政治家や経営者たちには、彼らのホントの苦しみはわからない──。

 恐らくこれが、本当に苦しい人たちの本音なんだと思う。

 例えば先週、日本経済新聞の2月6日付け朝刊に、「脱デフレへ所得底上げ 諮問会議、雇用改革に着手 」との見出しが躍った。以下はその記事の抜粋だ。

 政府の経済財政諮問会議がデフレ脱却のカギを握る雇用と所得を増やす議論に着手した。正社員・終身雇用に偏った労働市場を改革して、国民全体の所得水準の底上げを目指す。

(中略)

 具体的には正社員とパートなどに二分された雇用システムを改革し、地域を限定した正社員や専門職型の派遣労働者など多様な働き方を認める「多元的な雇用システム」を実現するよう求めた。

 企業内訓練を受けられない人への教育訓練支援や、職業能力の評価制度の拡充を提言。「女性の活用が遅れている」として、待機児童対策の強化や男性の育児休業取得の推進も主張した。

(中略)

 名目賃金はリーマン・ショックで景気が落ち込んだ2008年から5%程度下がった水準のままだ。主因は企業業績の低迷。利益などからどれくらい人件費に振り向けたかを示す労働分配率は、足元で66%とリーマン危機前より3ポイント程度高い。企業にとって人件費はまだ重荷になっている。

 みずほ総合研究所の山本康雄シニアエコノミストは「賃金上昇には、企業が持続的な成長を信じられるような状況が必要」と指摘する。政府は13年度の税制改正大綱に賃金を上げた企業の法人税を軽減する政策減税を盛り込んだが、産業界では「時限的な減税では人件費を増やす誘因にならない」との声が多い。

 この中にも、「多様な働き方を認める」という文言はあるが、そこで生じている格差の是正には一言も言及していない。

 だいたい「多様な働き方を認める」などと言うけれど、非正規雇用の方たちを対象に、「なぜ、現在の働き方を選んだのか?」という質問をした結果、「正規の社員、従業員として働く機会がなかったから」という回答が40%を超えている(「労働政策研究報告書」130号「契約社員の人事管理と就業実態に関する研究」)。

 つまり、ポジティブな結果として「多様な働き方」が出てきているのではなく、ネガティブな結果として「多様な働き方」が生じているという実態があるわけだ。

 しかも、これまで私自身がインタビューさせていただいた非正規雇用の方たちの中には、サービス残業を強要された人たちや、長時間労働で身体を壊してしまった人たちもいた。

 彼らの多くは、「次も契約を更新してもらえるように」と無理をしたり、正社員というニンジンをぶら下げられて、長時間労働に耐えていたのである。

 そういった実態があることもわかったうえで、「多様な働き方を認める」という言葉は発せられているのだろうか。

非正規の処遇を巡る日本とフランスの違い

 念のため断っておくと、「多元的な雇用システムの実現」という考え方を批判しているのではない。ただ、今や3人に1人が非正規社員で、ついには大学新卒者も、派遣や契約社員として就職することが珍しくなくなった今、もっともっと非正規社員の直面している問題にクローズアップした政策を取るべきではないか。

 そもそも非正規社員が増えた背景には「できれば安い賃金で、いつでも切れる人がいい」という、「人=カネ」という考えがあったことは言うまでもない。しかも、非正規社員というのは、有期雇用という点で、ただでさえ将来が不安定な身分にもかかわらず、なぜ、「非正規社員の賃金は正社員よりも低くて当たり前」などという常識が、日本ではまかり通るようになってしまったのか。

 フランスでは派遣労働者や有期労働者は、「企業が必要な時だけ雇用できる」というメリットを企業に与えているとの認識から、非正規雇用には不安定雇用手当があり、正社員より1割程度高い賃金が支払われている。

 そんなに「消費を増やす」ことがデフレ脱却に欠かせないというのであれば、非正規雇用の賃金を正社員よりも上げるって取り組みだって、議論してもいいはずだ。

 だが残念なことに、非正規雇用にスポットを当てた取り組みは見受けられない。

 しかも、安倍総理は 先週の経済財政諮問会議で、「業績が改善している企業には、賃金の引き上げを通じて所得の増加につながるよう協力をお願いしていく」と述べたそうだが、「正社員の賃金をアップするんだったら、正社員の採用を控えて非正規を増やそう」なんてことになったりしないだろうか?

 だいたい正社員の賃金でさえ、日本経済団体連合会の米倉弘昌会長は1月29日に連合の古賀伸明会長と会談した折、「デフレ脱却には働く者の賃金や処遇改善が重要」と古賀会長が訴えたのに対して、「企業の存続と雇用の維持が最優先」と答えているのだ。

 ローソンの新浪剛史社長のようなトップばかりじゃない。「政府にばかり頼るんじゃなくて、企業も頑張らなきゃだと思って賃金アップを決めました」と語っていたが、ローソンという会社は、もともと「人」を大切にしている会社なのだ。これまでインタビューさせていただいた方の中にローソンに勤めている方がいて、「いい会社なんだなぁ」とつくづく感じたのを覚えている。

 賃金面だけでなく、裁量権や能力発揮の機会といった社員のやる気を高める制度、トップと社員との距離感の近さや、社員同志の相互理解など。いくつもの「人」を中心とした制度や働かせ方、働き方を実行していた。

 もちろん今回のローソンの動きに触発されて、働く人たちのために努力する企業が増えれば、それは喜ばしいことだ。

 だが、実際にはどうなのだろう? 

しわ寄せは非正規や社会的弱者に向かう

 正社員の賃金を上げる代わりに、非正規社員にそのしわ寄せを押しつけるなんてことは起こらないだろうか。あるいは、下請けの中小企業に「ホラ、うちは正社員の賃金をアップしなきゃならないから、お宅の経費を抑えてよ」なんてことにはならないだろうか。

 私は少し悲観的すぎるのかもしれない。でも、何かといえば企業は逃げ道を探し、政府が規制すればするほど、弱い立場の人たちが働きづらくなったり、誰かを守るために誰かが切り捨てられたりしてきた過去の経緯を考えると、絶望的な気分になってしまうのである。

 安倍内閣の金融政策の指南役である、浜田宏一内閣官房参与は某雑誌のインタビューで次のように語っている。

 「雇用されている人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢し、失業者を減らして、それが生産のパイを増やす。よく『名目賃金が上がらないとダメ』と言われますが、名目賃金はむしろ上がらないほうがいい。名目賃金が上がると企業収益が増えず、雇用が増えなくなるからです」

 ってことは、安倍総理の「賃金アップのお願い」はポーズだったりして。いやいや、そんなふうには思いたくない。うん、そんなうがった見方はやめておこう。

 それでもやはり、私たちが幸せになる方向に、日本は向かっているのか? 進むべき方向が、何か違っているんじゃないのか? という疑問は残る。

 「賃金アップのお願い」のしわ寄せが、非正規雇用や、社会的に弱い立場にいる人たちに押し付けられることになりやしないか?

 そんな不安を拭い去れないのだ。

 幸福感は極めて主観的な問題なので、数字で測るのは難しい。だが自分の努力だけではどうにもならない状態になった時、自分に向けられる視線が偏見に満ちたものである時、「幸せだ」という感情を抱くことはできない。

 社会的不平等が存在するという事実は、差別を受ける人たちにとっては慢性的なストレスとなる。しかも厄介なことに、人間は「自分がその差別を受ける側」にならない限り、その人たちの苦しみを理解できない。本当の痛みなどわからないのだ。

 どんなに「日本は世界的にみても格差なんて存在しない」と豪語しようとも、どんなに「差別っていったって、それって本当に差別って言えるほどのものじゃないでしょ?」と言い張ろうとも、それは強い立場にいる人から見える景色でしかない。

 国民経済というものが、「国民1人ひとりが、幸せになるためにある」という考え方に立つならば、「苦しむ人たちがどうすれば幸せになれるのか?」という視点にもっとウエートを置く必要がある。

株価やGDPに一喜一憂する世の中は幸せか?

 そもそも株価に一喜一憂し、GDP(国内総生産)を押し上げることにこだわる世の中って、そんなに幸せなのだろうか?

 「経済の専門家じゃないのに、口を挟むんじゃない!」と言われてしまうと、ひとたまりもないのだが、民主党政権の時に「新成長戦略」をまとめ、その中で「生活者が本質的に求めているのは『幸福度(well-being)』の向上であり、それを支える経済・社会の活力である。こうした観点から、国民の『幸福度』を表す新たな指標を開発し、その向上に向けた取り組みを行う」と発表して、GDPの向上だけが幸せじゃないとしたのは何だったのか?

 幸福度を数字で示すことには賛否両論があるせよ、「幸せは物質的な豊かさではない」と感じていた人は多かったはずだ。

 あと1カ月で、東日本大震災の発生から2年が経つ。あの頃、「人生において大切ものは何か?」「幸せとは何か?」といったことを誰もが自問自答し、自分たちの働き方、生き方に疑問を持ち、物質的な豊かさではないものを求めようとしたのではなかったのか?

 あの頃の気持ちはどこに行ってしまったのだろう。

 「私が成長に反対するのは、いくら経済が成長しても人々を幸せにしないからだ。成長のための成長が目的化され、無駄な消費が強いられている。そのような成長は、それが続く限り、汚染やストレスを増やすだけだ。政治家は経済成長と財政再建は両立できると訴える。だが、誰一人として成功していない。限りある地球で成長が可能だと考えるのは、エセエコノミストか愚かもので、今はそんな愚かものたちばかりになっている」

 「脱成長」を掲げ、一昨年来日した仏の経済哲学者セルジュ・ラトゥーシュ博士はこう批判した。

 一方、成長論を唱える専門家たちは異を唱える。

 「経済的成長は人が幸福になるには、大きなカギを握っている。人のことを考えるのであれば、脱成長論に逃げるのではなく、経済を成長させるための努力もすべきだ」と。

 経済の専門家ではない私には、ラトゥーシュ博士の主張の方が腑に落ちる。でも、だからといってそれは成長論を完全に否定しているわけじゃない。だって、もし経済が上向きになればハッピーになる人たちもいるのだろうから、成長論者たちが言う通り、成長できるのであれば、成長する努力もしてくれればいいとは思っている。

 あえて私なりの解釈を言わせてもらうなら、「経済成長して幸せになる人たちもいるにはいる。でも、幸せになれない人たちを量産するリスクも多い」ってことなのではないか?

 恐れずにさらに言わせてもらうなら、経済成長にばかりにこだわり、カネばかりを追いかけている今の動きは、「キミたちにはもっともっと働いてもらわなきゃ。生産性を上げるためにもっともっと肉体を酷使して、マッチョに働いてよ。だって、こっちだって賃金アップするために頑張っているんだからさ〜」。こんなふうに聞こえてしまうのである。

 つまり、「経済成長こそが大きなカギとなる」というのであれば、「賃金格差や身分格差の不平等をどうやって解決するか」「精神的な豊かさとは何か?」といった、ここ数年に誰もが解決しなきゃと考えていた問題を、もっともっと議論し、そのための施策に、もっともっと取り組んでほしいと思う。

当然だが、おカネですべてが解決されはしない

 それに……おカネはなければ困るけど、おカネですべてが解決されるわけじゃない。

 「タイムマッチョ」な働き方を見直し、長時間労働をなくし、時間的余裕のある働き方を目指す。もっと仕事以外の活動が可能な、時間的余裕ができれば、そこそこのおカネのある人たちは、自発的に「自分にホントに必要なモノ。自分の生活を豊かにするもの」におカネを使うはずだ。

 無理やり消費させる世の中ではなく、おカネを出したいと思う世の中。おカネなどの物質的な豊かさではなく、心の豊さを実感できるために、国が何をできるのか? そんな議論も不平等問題と同時にしてほしい。

 このコラムを書いている途中で、「富士通、国内外で5000人を削減。4500人を転籍」とのニュースが飛び込んできた。

 成長路線の道のりは険しい。

 「成長のための成長が目的」ではない、「ホントに人が幸せになるために必要なこと」――。私も政治家任せにするだけじゃなく、かなり微力ではあるし、たいした影響力もないけれど、もっともっと考えてみたいと思う。


河合 薫(かわい・かおる)

博士(Ph.D.、保健学)・東京大学非常勤講師・気象予報士。千葉県生まれ。1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学非常勤講師、早稲田大学エクステンションセンター講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。主な著書に『「なりたい自分」に変わる9:1の法則』(東洋経済新報社)、『上司の前で泣く女』『私が絶望しない理由』(ともにプレジデント社)、『を使えない上司はいらない!』(PHP新書604)


河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。


05. 2013年2月12日 09:08:44 : xEBOc6ttRg
亀井氏激白、中小企業は潰れる

「アベノミクス」の前に必要な処方箋

2013年2月12日(火)  馬場 燃

 中小企業金融円滑化法の生みの親である亀井静香元金融相が3月の法律打ち切りを前に、本誌に激白した。モラトリアム(返済猶予)導入で企業が事業再建に向けた時間は稼げたものの、その間に経済環境が上向かず、法律が終われば倒産が増加するとの厳しい見方を示す。小手先の「アベノミクス」だけでは景気が好転しないと断言する亀井氏が、いま必要とする処方箋を語る。

日銀の金融緩和だけでは意味がない

円滑化法を施行した2009年当時、「金融機関が社会的な役割を果たしていない」と声高に批判していたが、銀行の姿勢は変わったのか


写真:後藤 麻由香
亀井:先日も中小企業の人が「銀行から取引は3月までと言われた」と話していた。そうなってしまうんですよ、実際に法律が切れてしまうと。倒産が増え、日本経済を支える底辺の企業が大変なことになる。

 金融機関は社会的な責任や経済に対する自覚を持って、企業に融資をする方向に変わらないといけない。リスクをとって、カネを貸す大胆さが全くない。ベンチャー企業を含めて、新たな産業を支援しようとの気概がないんだから。バブル時代の苦い経験に学んだのかどうか知らんが、安全な国債の運用手数料だけで稼ぐならば、経済を活性化させる役割は果たせない。銀行の体質は変わらなかった。

 いくら日銀が金融緩和してカネを作っても、国民のために前向きに運用しようという金融機関がなければ意味がない。金融緩和による資金を活用して、産業界が守りではなく、攻めに向かうようにしなければ、日本経済は沈没しちゃうよ。

 私もわかっていますよ、借りたカネは本来返すのが当たり前だと。問題は返せない経済状況であり、それを2009年に誕生した民主党政権は変えられなかった。なぜ円滑化法を時限立法にしたのか。それは無期限にやるんじゃなくて、借りたカネを返せる社会を作るため。当時の大塚耕平副大臣や金融庁はよくやってくれた。私は批判するマスコミに「バカヤロー」といって、反対の圧力を蹴っ飛ばす役割を果たしただけ。でも、経済状況は良くならずに2回延長した。

今のままではアベノミクスはバブルに

どんな処方箋が必要なのか。

亀井:現在の問題はアベノミクスをやろうとしても、その受け皿である社会・経済構造が壊れちゃっていること。小泉改革で変わった。いまの産業界では、下請けや孫請け企業に優越的な立場を使っているなんて話は珍しくないでしょ。

 アベノミクスがいくら公共事業にカネをつぎこむといっても、結局は社会経済の上の方や東京にカネがたまるだけだよ。地方のゼネコンはつぶれている。その下の零細企業も。大企業は自治体発注の小さな工事まで受注している。

 こうした大企業が社会資本整備をどんどんやるなかで政府支出を増やしても、日本全体にカネが行き渡らない。東京が強くなるだけで、アベノミクスの経済効果がうんと減ってしまう。

 今の産業界は右にならえで非正規社員をたくさん増やした。安い給料で、従業員を使えばいいという発想に切り替わっちゃった。従業員にいくべき巨額のカネが大企業のポケットに入っている。所得が上がり、国民全体にカネが行き渡り、そして消費が安定的に伸びないと民需は生まれない。

 それから持続的な投資が起きないと、経済は安定成長の軌道に乗らない。公共投資を増やしても、それでおしまいになってしまう。民需の呼び水にならない。今はマスコミがいろいろヨイショしているけど、アベノミクスだけではある意味でバブルになっちゃう。

 経済を中長期的に押し上げるには、まずはアベノミクスの前に社会・経済構造に手を入れないといけない。日本を支える企業の土台をちゃんとしないと、経済は絶対に活性化しない。だから、円滑化法が切れた後の手当ても必要になる。アベノミクスは必要な手順を踏まないと、成功しないよ。

【円滑化法とは】
正式名称は中小企業金融円滑化法。別名、モラトリアム(返済猶予)と呼ばれる。リーマンショックを受け、2009年末に亀井静香・元金融相が導入。企業は借りた資金の元本分の支払い期限を一定期間先延ばしできるようになった。毎月の返済額を減らし、企業の資金繰りを支援した。今年3月に打ち切りとなる。

馬場 燃(ばば・もゆる)


原発再稼働でも貿易赤字?

2013年2月12日(火)  斎藤 太郎

円安に転じたが、当面は貿易赤字がむしろ拡大する可能性がある。輸出数量が増える前に、輸入価格上昇の影響が先に出るからだ。人口減を考慮すると、長期的に赤字が定着する公算が大きい。

 輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2012年年間で6兆9000億円の赤字と過去最大の赤字額となった。貿易収支が赤字基調となるきっかけとなったのが2011年3月の東日本大震災。全国的に原子力発電所の稼働が止まりエネルギー原料の輸入が増える半面、サプライチェーンの寸断によって自動車などの輸出が減ったためだ。

 当初、貿易赤字は震災という特殊要因による一時的なものと考えていたが、円高が長期化し、新興国など世界経済が低調だったため輸出が伸びず、赤字は継続・拡大する結果となった。


 貿易赤字の元凶は、原発停止によるエネルギー原料の輸入増との印象が強いようだが、つぶさに分析すると、むしろ輸出低迷の影響が大きい。左下のグラフは、貿易収支の前年比増減分を輸出入の数量・価格にそれぞれ分けて要因分解したものだ。輸入数量・価格よりも輸出数量の減少が全体を押し下げたことが分かる。昨秋以降、尖閣諸島問題に端を発する中国での日本製品の需要減が追い打ちをかけた。

為替変動の影響、輸入に大きく

 今年に入って為替は円安に転じている。円安が日本メーカーの価格競争力を高め、輸出数量を押し上げるのは間違いない。しかし、海外で日本製品の競争力が高まって実際に輸出数量が増えるまでには、おおよそ半年前後の時間差が生じると見ている。

 一方、円安は輸出入価格をともに上昇させるが、日本の輸入で取引される通貨ではドルが全体の72%を占め、円は22%にとどまるのに対し、輸出の場合はドルが51%、円が38%(昨年下期実績)。為替変動の直接的な影響は、輸入により大きく出る構造だ。こう考えると、当面は貿易赤字がむしろ拡大すると考えられる。


 貿易収支は、2013年度いっぱいは赤字基調が続くだろう。その後、2014年4月の消費増税後に国内需要が減退し、輸入数量が落ち込めば黒字に戻る可能性がある。

 だが、この黒字化は一時的なものとなる公算が大きく、国内需要が回復し輸入の伸びが高まるのに伴って再び赤字基調に転じる見通しだ。少子高齢化が進む日本では中長期的に国内供給力の低下が避けられない。生産年齢人口の減少によって、モノを海外から買う傾向が強まると考えるのが自然だ。これは構造的な問題で、仮に原発が震災前の水準まで再稼働したとしても、赤字基調は変わらないと見ている。

 そもそも、貿易赤字が定着したとしても、筆者は過度に悲観視する必要はないと考える。あまりに急激に貿易赤字が拡大し、経常収支までが一気に赤字になる事態は憂慮すべきだが、輸出が伸びないのは日本メーカーが海外生産を増やしている裏返しという面もある。この結果、海外での稼ぎを示す所得収支の黒字が増え貿易赤字を補う。

 国家が成熟するに従って所得収支に頼る経済構造に変化することは、理論的にも合理性がある。

(構成:伊藤 正倫)

朽ち果てる日本

2013年2月12日(火)  蛯谷 敏

 クリームスキミングという表現をご存知でしょうか。

 原乳の一番おいしいクリームの部分だけをすくい取る、その行為から派生して「いいとこ取り」を意味する言葉として使われるようになりました。公共性の高い通信や運輸業界の規制論議でしばしば用いられ、規制緩和によって参入した新規事業者が収益性の高いサービスばかり手がけていることを批判する際に、収益性の低いサービスも提供せざるを得ない既存の事業者が持ち出す論理です。

 2000年代前半に筆者が通信業界を担当していた頃、この言葉を頻繁に耳にする場面がありました。当時は、新規参入事業者であるソフトバンクが「Yahoo! BB」と呼ぶ高速通信サービスを大々的に展開して世間の耳目を集めていました。同社の孫正義社長はサービス展開を加速させるために、NTTに通信設備開放迫り、総務省を始め関係者にプレッシャーをかけ続けていました。「NTTのインフラは事実上、国民の負担によって構築されたものである。ならば、新規参入事業者にもオープンに貸し出すべきである」。

 この主張に対して、NTTはしばしば冒頭のクリームスキミング論を持ち出しました。曰く、現在も安定した通信網を維持できるのは、NTTが連綿と通信設備の維持管理に務めてきたからこそ。その負担を無視して、格安に貸し出せとはクリームスキミングに他ならない、という主張です。そこには、「自分たちが日本の通信インフラを支えている」という責任感と共に、新規参入事業者のように高収益サービスだけに集中できない、公共事業者としてのもどかしさが混在していました。

 両者の主張は平行線をたどり続け、総務省や政府を巻き込んだ論争へと発展しましたが、通信の主役がモバイルへと移ったことで、議論の熱気は急速に萎んでいきました。しかし、今から考えれば、通信業界ではこのような議論ができていただけ、幸せだったのかも知れません。

 2月11日号特集「インフラ クライシス」をご覧いただくと、日本の道路や橋梁、トンネルといった交通インフラの老朽化の実情に言葉を失います。1960年代に大量に建設された日本の道路設備。50年以上が経ち、その多くが補修を必要としています。老朽化によって改修を必要とし、通行規制がかかっている橋は、3年で5割増えました。日本経済を支える首都高速道路をはじめ、全国の道路やトンネル、そして水道インフラも大規模な更新が求められています。

 深刻なのは、道路や橋の崩壊は即、人命に影響を与えかねないことです。昨年起きたトンネルの崩落事故の悲劇に触れるまでもなく、日本のインフラ改修は喫緊の課題となっています。ところが、その改修費用を負担する財源が足りません。自治体で負担しきれない莫大な改修費用をどう工面するか。さらには、改修の担い手である建設業の縮小という構造問題も潜んでいます。

 日本経済の裏で進行するインフラ危機。景気回復ムードに沸く日本経済の思わぬリスクとなる可能性もあります。経営者が知っておくべき、隠れた日本の問題に焦点を当てました。


蛯谷 敏(えびたに・さとし)

2000年、日経BP社入社。通信業界誌『日経コミュニケーション』記者を経て、2006年より日経ビジネス記者。情報通信、ネット、金融、不動産、政治、人材など色々担当。「一極集中」から「多極分散」へと移り変わる様々な事象をテーマに日々企画を考えている。


日本の円安政策は危険な賭け

2013年2月12日(火)  FINANCIAL TIMES

金融緩和を巡り安倍新内閣と日本銀行の駆け引きが続いているが、市場は楽観的だ。しかし、国債の大量供給と円安の進展がもたらすリスクに市場はまだ気づいていない。日銀が外債購入を拡大すれば、円安と金利上昇の悪循環に陥る危険性がある。

 日本銀行と安倍晋三新政権との駆け引きは、依然として続いている。

 日銀は安倍政権の圧力についに屈し、新たに2%の物価上昇率目標を導入したが、その達成時期についてはコミットはせず、「できるだけ早期」とした。金融緩和策についても、終わりの期限を定めないと約束したものの、開始は2014年となる。


日銀は1月22日の金融政策決定会合後、政府と共同声明を発表、2%のインフレ目標の導入を決めた。写真は、その報告に官邸に行った白川方明総裁(左)、麻生太郎財務相(中央)、甘利明経済財政・再生相(写真:ロイター/アフロ)
日本の問題は競争力がないこと

 日銀がこのように引き延ばし的な対応に出たにもかかわらず、市場では円売り、株買いというポジションが今も広く浸透している。しかし、市場は楽観的すぎるかもしれない。楽観論は、安倍政権が日銀を抑え込むとの見通しからではなく、このポジションでしばらくは良い結果が得られるとの見方による。

 安倍首相と日本の経済界は、日本にとって主たる問題は円高、より厳密に言えば過剰なウォン安であると、相変わらず考えている。過去においてはその通りだったかもしれないが、現在は違う。

 世界の消費者は、たとえ円が大幅に下がったとしても、韓国サムスン電子の携帯機器をあきらめてソニーや東芝の製品に乗り換えることはないだろう。つまり日本の問題は、競争力のない通貨ではなく、製品に競争力がないということである。

 新政権は1月上旬に、20兆円という巨額の景気刺激策を発表した。米金融大手、JPモルガン・チェースによると、この金額は第2次大戦以降最大だという。しかし、過去の経済対策と同様、今回の刺激策も民間の投資や消費の拡大に大きな乗数効果を及ぼすとは期待できそうもない。

 一方、日本の貿易赤字は、輸入コストが上昇する一方で、経常収支は円安の恩恵を受けるものの貿易赤字を埋め合わせるほどではないため、悪化していく。日本の財政赤字は今年、GDP(国内総生産)比11.5%という衝撃的な水準に達する見込みだ、とJPモルガンは予想する。

 円の対ドル相場は既に15%下落しており、相場調整が行き過ぎだと考える人は多い。

円安と金利上昇の最悪のシナリオ


 だが、一部のアナリストは、日銀がさらなる円安を誘導するために、近く巨額の外債購入に乗り出さざるを得なくなると見ており、その総額は50兆円にも達する可能性があるという。

 外債の購入対象がユーロ圏の国債だけに限られるのか、それとも(米連邦準備理事会=FRB=の一部で予想されているように)、米国債も含まれるのかは今のところ明らかになっていない。

 だが、日銀がもし外債の購入に動けば、事態は格段に悪化する可能性がある。円高が(最近まで)続いていた理由の1つは、日銀が他国の中央銀行に比べて、バランスシートを拡大することにはるかに消極的だったことが挙げられる。

 だが、この方針が変わるに従い円安が進行しすぎる危険性が高まり、その場合、日本の国債市場にも日本経済にも重大な悪影響を及ぼす可能性がある。

 市場は今のところ、まだ新発国債の大量供給と為替市場における進展の組み合わせがもたらす脅威に気づいていない。

円安なら利回り求める海外投資家

 だが、今や日本国債の9%を海外投資家が握る。この状況で円が下がれば、これらの海外投資家は円安による目減り分を埋め合わせるために、より高い利回りを求めてくるようになる。そうなった場合、一体何が起きるか。

 考えられる1つのシナリオは、円安を誘導するために欧州と米国に流れた日本のカネが、日本の国債を買い支えるために国内に振り向けられるというものだ。

 というのも日本の投資家で、保有国債の値下がり損に耐えられるところはないし、政府も、膨らみ続ける債務の利払い費をさらに増やすリスクを冒すことはできない。

 しかも、非常に多くのヘッジファンドが円安を見込んでいるため、円はさらに下がる可能性がある。

 米グリーンライト・キャピタルのデビッド・アインホーン氏をはじめ、多くのヘッジファンドが、昨年10〜12月期についに円売りポジションで利益を上げた(実際、円売りはアインホーン氏にとってその3カ月で2番目に多い利益をもたらしたポジションだった)。

 ヘッジファンドは、特に円の借り入れコストがこれほど安い現状では、このポジションをさらに増やしたいとの衝動に駆られるだろう。

新総裁が悪夢に直面する恐れ


 アインホーン氏は1月22日付の投資家向けのレターにこう記している。「ついに円が下がり始めた。我々は円安はもっと、もっと進むと考えている。恐らく相当に。今後も(円については)弱気の見通しを続ける」と。

 それでも今のところ、楽観論が支配的だ。10年物日本国債の利回りは昨年12月に0.69%という低水準を記録。現在もわずか0.74%にすぎない。

 4月に日銀の白川方明総裁が退任し、新総裁が就任すれば、楽観的な空気はさらに強まるだろう。というのも主な次期総裁候補はみな、白川総裁よりも安倍首相への支持に傾いているからだ。

 しかし、もし安倍首相が間違っていたらどうだろう。経済が回復することなく、円安と国債利回りの上昇という悪循環に陥ったとすれば、日銀の新総裁は、白川総裁が任期中に論争に明け暮れた以上に悪夢のシナリオに向き合うことになるかもしれない。

Henny Sender
(©Financial Times, Ltd. 2013 Jan. 31)


06. 2013年2月12日 09:17:28 : xEBOc6ttRg
【第263回】 2013年2月12日 加藤 出 [東短リサーチ取締役]
中国で忘年会が大量キャンセル
習近平が目論むリバランス政策
 2月上旬に上海にいた際、多くの日系の企業、金融機関の関係者から、「日本に頑なだった中国政府に雪解けムードが表れてきた」という話を聞いた。山口那津男・公明党代表の訪中が効いた面もある。

「環球時報」2月4日付は「日本との戦争は、勝とうが負けようが、破滅につながる」という中国社会科学学院の識者の論文を掲載した。過激な反日報道で知られる同紙ですら、そのような論文を載せる空気に変わったと思った直後、5日に中国の艦船が日本の艦船にレーザー照射する事件が報道された。

 日本との関係を改善したがっている一派もいれば、それを知ってあえて対立を煽ろうとしている一派(軍部など)もいるのが、今の中国だ。日本サイドは挑発に乗らないことが大事である。

 その事件の中国メディアの報道は、日本サイドの報道に比べると、テンションが低いものが多かった。尖閣諸島問題で反日感情を再び強く刺激することを北京があまり望んでいないこともあるだろうが、それに加え、他に大きな話題のニュースがめじろ押しで、それどころではない、という雰囲気もある。

 一つは深刻な大気汚染問題だ。PM2.5という大気汚染の濃度を示すインデックスが上がれば大騒ぎになるし、逆に下がっても「今年最低値が記録された」とニュースになる。連日、紙面上では対策が議論されている。

 汚職摘発の記事も多い。共産党は、役人の腐敗を見つけたらインターネットに書き込むように奨励しているため、告発が相次いでいる。中国の代表的な経済誌「財経」1月28日号は、反腐敗運動が「地雷区」に入ってきたと報じた。小物ではなく大物の汚職の摘発に政府はどこまで本腰を入れられるかが人々に注目されている。

 また、中国の忘年会シーズンのピークである1月17日に、習近平総書記は「中国には、農村部に1億人、都市部に数千万人の貧しい人がいる。その一方でひどい浪費が行われている。そういう報告を見るのは不愉快だ」と語った。この発言が、国営企業、政府機関をパニックに陥れ、全国的に忘年会が縮小あるいは中止となった。高級ホテルの売り上げは急減、最高級酒マオタイのメーカーの株価は急落した。「南方周末」1月28日付は、「消滅した夜宴」という記事を1面に掲載した。

 中国では現在、早過ぎた成長で生じた歪みを修正する「リバランス政策」を求める声が非常に多い。それは短期的には成長を鈍化させる恐れもあるが、大気汚染問題など、日本企業のビジネスチャンスも多々出てくると思われる。

 (東短リサーチ取締役 加藤 出)


【第265回】 2013年2月12日 真壁昭夫 [信州大学教授]
日本の株価は本当にこのまま上がり続けるか?
投機筋が売りに転じる“分水嶺”の見極め方
アベノミクスへの期待は想像以上だが
株価上昇の背景には世界的な金余りも

 今年に入って、世界の主要な株式市場は堅調な展開を示している。中でも、わが国や中国など、出遅れ感があった市場に多額の投資資金が流入しており、上昇幅を拡大させている。

 特にわが国の株式市場は、円安傾向が進んでいることやアベノミクスに対する期待などもあり、株式市場は久しぶりに出来高を伴って活況を呈している。

 世界的な株高傾向の背景には、2つの要因がある。1つは、世界的に資金が有り余っていることだ。リーマンショック以降、主要国の経済低迷が続いているため、それぞれの国は非伝統的な金融緩和策を取っている。それによって潤沢な資金が供給されており、“金余り”の状況になっているのだ。

 もう1つは、投資家がリスクを採れる(リスクオン)状態に戻りつつあることだ。世界経済が抱える最大の懸念事項だったユーロ圏問題は、解決したわけではないものの、とりあえず小康状態を保っている。ユーロ問題が最悪の事態を回避できたことで、多くの投資家がリスクを採れると認識し始めた。

 また、欧州圏を除く主要国に関して景気回復の期待が高まり、投資家が少しずつリスクテイクの姿勢を示し始めた。いわゆる「リスクオン」の状態に戻ってきたのである。そうした流れに乗って、投資資金の一部が株式市場に流れ込み、世界的に堅調な株式市場の展開を演出している。

 そうした状況を考えると、アベノミクスに対する期待はわが国の株価上昇を加速した面はあるものの、「アベノミクスが株価を押し上げた」との認識は必ずしも適切ではないだろう。

 現在、わが国の株式市場の取引高の約半分は、海外投資家によるものだ。最近のわが国の株価上昇は、海外投資家の動きによって支えられていると言っても過言ではない。と言うことは、今後のわが国の株式市場の行方を占う上で、最も重要なポイントは海外投資家の動きだ。

 つい最近まで、多くの海外ファンドマネジャーは、日本株に対してポジティブな認識をしていなかった。「政策当局は失われた20年を漫然と過ごし、大きな上昇を見込めない」と見ていた。そのため、日本株の保有割合は少なめ(アンダーウエイト)の状態であった。

 ところが、世界的に景気回復に対する期待が盛り上がると、景気敏感株であるわが国の株式に対するスタンスが、少しずつ変わり始めた。わが国株価が少しずつ上昇し始めると、彼らは日本株をアンダーウエイトしているリスクを考え始めた。日本株の保有割合が低いと、世界の株式インデックスの上昇率に負けてしまうからだ。昨年秋以降、徐々に日本株を買い始めた。

株価動向の鍵を握る海外投資家
彼らが失望すれば株高は終焉

 海外投資家の日本株買いを加速させたのが、安倍政権の誕生だった。アベノミクスによって、一層の金融緩和策を進める経済政策がとられる見込みとなったことで、彼らは「新政権によって、日本の経済状況が変わるかもしれない」との期待を持ったのである。

 それに、円安方向への転換が加わった。円安によって、主力の輸出企業の収益性が回復することを見込んだのである。

 2005年の上昇相場では、海外投資家は約7兆円を買い越したと言われている。現在の上昇局面では約4兆円と言われており、おそらくまだ買い余力は残っているだろう。海外投資家の買いが続く間、日本株は堅調な展開が続きそうだ。

 逆に、彼らが買い終わったり、わが国経済に失望すると、株価の上昇局面は終焉に近いと言えるだろう。

 ここまで世界的な株価上昇を支えてきたのが、(1)主要国の積極的な金融緩和策と、(2)ユーロ圏などの問題が小康状態を保っていることである以上、この2つが崩れることが世界の株式市場にとって最も大きなリスクファクターだ。

金融緩和の終わりと欧州リスクの再燃
「2つのリスク要因」の先行きは?

 ただ、1つ目の金融緩和策に関しては問題が見当たらない。米国は「2015年中頃まで非伝統的な金融緩和策を続ける」と明言しており、わが国についても金融緩和が進むのはむしろこれからである。ユーロ圏に関しても、金融緩和策を続けざるを得ない。中国などの新興国も、フィリピンなど一部の例外を除いて、景気の状況は金融引き締めに入れる状況ではない。

 一方、ユーロ圏の問題は心配だ。ギリシャやスペインなどの問題は片付いたわけではない。ただ、欧州中央銀行が無制限に資金を供給しているため、とりあえず資金繰りの問題が解消されたに過ぎない。問題の根源である、南欧諸国の借金返済に目途が立ったわけではない。これからも問題が顕在化する可能性は高い。

 特に、イタリアやドイツの選挙、スペインのラホイ首相の不正疑惑などによって政権が不安定化すると、南欧諸国の財政問題の顕在化が速まることも考えられる。それらが現実味を帯びてくると、再び投資家がリスクを軽減するリスクオフへと動くはずだ。

 その場合には、わが国をはじめ世界の主要国の株式市場の動向が不安定化することは避けられない。株式市場が不安定化すると、株式から債券への資金シフトが起きるだろう。

 また、株価の下落は実体経済にもマイナスの影響を及ぼす。そのとき、政策当局が迅速で有効な対応策を打てればよいが、それができないと、主要国の株価が大きく下落することになるかもしれない。

 リスク要因の顕在化によって世界的に株価が調整局面を迎えると、当然、わが国の株式市場も無傷ではいられない。それに加えて、わが国の株式市場固有のリスクがあることも無視できない。

 わが国固有のリスクは、3つに分けるとわかり易い。1つは、アベノミクスに対する失望だ。現在、アベノミクスに関して海外の評価はかなり高い。有力な経済専門家やアナリストからも、今までとは違った政策運営に対して賛辞が贈られるケースが多い。その意味では、国内では想像できないほど、海外投資家のアベノミクスに対する期待は盛り上がっている。

 問題は、アベノミクスが期待された実績を上げることができないときだ。具体的には、わが国の経済状況が予想されたほど改善しなかったり、デフレからの脱却ができないケースである。

 大型の補正予算と金融緩和策をセットにするため、今年夏場までは間違いなく、わが国の景気は上向きになるだろう。しかし、夏の参院選が終わる秋口以降、景気の先行きに不安が出て来たり、デフレ脱却の道筋がいつまでも見えてこないと、おそらく多くの投資家の期待が徐々に萎んでくる。そうなると、海外投資家の買いも続かなくなるだろう。

日本固有のリスク要因も3つある
このまま株価上昇が続くためには

 2つ目のリスクは為替だ。足もとの円安傾向が一服したり、再び円高方向に進み始めると、わが国の主力輸出企業の業績は厳しくなる。自動車や機械などの大手企業の業績が期待されたほど伸びないと、株価の上昇余地は限定される。上値余地が少なくなると、ヘッジファンドなどの投機筋は相場を売り崩すオペレーションを始めることも考えられる。

 わが国の経常収支が急速に減少していることや、米国を中心としたシェールガス革命などの要因で、当面、円安トレンドに大きな変化はないと思われるものの、欧州圏などからの円安に対する批判の高まりなど、不当面な要因があることは頭に入れておくべきだ。

 そして3つ目は、より本源的に、わが国経済の地盤沈下が一段と進むことだ。安倍政権は企業寄りの政策運営を行なって、企業を強くすることを標榜している。その方向性は間違っていない。

 問題は、本当にわが国企業が競争力を回復して強くなれるか否だ。わが国の家電業界がスマートフォンなどのIT機器に乗り遅れて、世界から取り残されるようなことが起きると、わが国企業は一段と弱体化する。

 わが国企業がそうした失敗を生かせるかどうか。長期的に見ると、そこが最大のポイントだ。それには、企業経営者自身が改革(イノベーション)を目指す必要がある。それができれば、中長期的にわが国の株価は上昇するはずだ。



【第5回】 2013年2月12日 芥田知至 [三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員]
先進国通貨がそろって下落
商品相場上昇につながる公算
 基軸通貨であるドルの下落が国際商品相場の上昇要因だとされることが多い。もちろん、それ以外の要因も各国際商品の相場を変動させる。例えば、2011年以降の各商品の相場動向(上のグラフ)を見ると、ドル相場よりも大きく影響した要因がある。


拡大画像表示
 原油は、リビア内戦やイラン核開発など地政学要因を背景に高止まりした。穀物は、12年夏場に北米の干ばつなどの影響で高騰し、現在、南米の収穫期に入りつつあるが、依然として、その影響が残っている。金は、欧州危機によりリスク回避的な投資対象として人気を集めた。銅は、欧州や中国の景気減速を受けた需要の伸び悩みを背景に上値が抑えられた。

 実際、過去の相場の推移を見ると、為替相場の変化率は国際商品に比べて小さい(下のグラフ参照)。国家破綻などによって通貨が信用力をなくす国などを除けば、通常は、中央銀行や政府が通貨の価値安定に努めていることへの信頼感が厚いことを反映している。

 しかし、景気や地政学問題など他要因に対する見方が安定してくると、為替相場の変動による商品相場への影響が相対的に重要になってくる。

 昨年終盤から、日本銀行の金融緩和観測が急速に強まって、円安が進み始めたことがサプライズになっている。今のところ、日本の景気回復テンポが速まって、工業原材料の需要が増えるという連想はあまり強まっていない。そうした意味で、円の下落が国際商品の相場に及ぼす影響は限定的というのが常識的な見方だ。

 しかし、海外勢の金相場のコメントでは、日銀の金融政策への言及が増えている。海外からは、日本人が運用資金の逃避先として金を選びそうなタイミングに見えるのだろう。

 日本人の目線で見れば、何も金に逃避しなくても、日本株を保有していればいいという状況だ。もっとも、円建てで見れば、外国株式の上昇率も同程度に大きい。つまり、円安になっても、日本企業の価値が、外国企業の価値よりも増大したとは見なされていない。

 円安によって輸出型企業の利益は押し上げられる部分もあるが、輸入金額の増加を負担する部門もあって、全体としては、ほぼ相殺されるという評価にとどまっている。

 総じていえば、欧米を中心とした不安心理が後退した後、国際商品や株式の相場に過熱感はなく、上値余地が広がっているのが現状だろう。一方で中長期的には、通貨価値の下落がリスク要因に見える。上述の通り、主要通貨間の為替レートの変動は小幅であるが、先進国の通貨が同時に下落している面は否定できない。

 金や原油に対して通貨価値は大幅に下落しており、今後、そうした認識が広がる

 (三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)


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