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バーナンキ米FRB議長の議会証言での発言要旨(3/26ロイター)   
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/331.html
投稿者 良寛 日時 2013 年 2 月 27 日 11:33:12: Vgi3QvtUnz6pE
 

バーナンキ米FRB議長の議会証言での発言要旨(ロイター)


米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は26日、上院銀行委員会で半期に一度の金融政策報告を行った。証言内容は以下の通り。

◎以下は証言原稿

<量的緩和に伴う潜在的コスト>

一部金融市場でのリスクテークの高まりに伴う潜在的なコストが、景気回復の促進や雇用創出の加速という効果を上回っているとはみていない。

<3月1日に発動期限が迫る歳出の強制削減>

短期・長期双方の問題に対処するために、議会と政府は、歳出の強制削減がもたらす急激かつ前倒しでの支出削減に代わり、短期的にはより緩やかに、長期的には一段と大幅な財政赤字の削減を目指す政策を検討すべきだ。

こうした方策によって、景気回復が直面する短期的な財政面での向かい風を軽減すると同時に、連邦予算の長期的な不均衡問題へのより効果的な対処が可能となる。

<景気回復支援に向けた財政政策による取り組み>

財政赤字削減に向けた最近の動きは、かなりの部分が短期的な予算の修正に集中しており、こういった修正は景気回復への深刻な逆風となる可能性がある。

議会予算局(CBO)の試算によると、現在の法律の下で赤字削減策が実施された場合、そうでない場合に比べて今年の実質国内総生産(GDP)の伸びは約1.5%ポイント押し下げられる。このうちの大部分は3月1日に発動が迫っている歳出の自動削減に関連しており、CBOの試算では約0.6ポイントに相当するとみられている。

<資産買い入れの利点>

現在の経済環境において、資産買い入れおよび、より全般的な金融緩和による利点は明白だ。金融政策は景気回復への重要な支援を提供する一方、インフレ率を連邦公開市場委員会(FOMC)の目標である2%の近辺に維持している。

とりわけ長期金利を引き続き低水準にとどめることで、住宅市場の回復に寄与するとともに、自動車など耐久財受注の販売・生産の拡大を支援した。

<高失業率のコスト>

高水準の失業率は、失業者やその家族が苦境に陥るだけでなく、米経済全体の活力や潜在的な生産能力を損なうという、多大なコストを伴う。

高失業率に伴う生産や収入の喪失は、政府の歳入を減少させると同時に歳出を増加させ、赤字や債務水準の拡大につながる。

<ガソリン価格とインフレ>

原油高と製油マージン拡大を反映した最近のガソリン価格の上昇は、家計に打撃を与えている。しかし、インフレ率は全般的に引き続き低水準にとどまっている。

<長期インフレ期待>

長期的なインフレ期待を示す指標はここ数年間、狭いレンジ内にとどまっている。これを背景に、FOMCはインフレ率が中期的に目標の2%、もしくはそれを下回る水準で推移すると予想している。

◎以下は質疑応答

<「互恵的な」刺激>

国内目標の達成を目指した金融政策の実施を通貨戦争への関与とはみなさない。輸入品に関税を課すのとは異なる。従ってわれわれの政策は、国内産業に恩恵を与える「近隣窮乏化」政策ではない。

支援を必要とするすべての主要国が刺激や追加的な需要を提供すれば、相互に恩恵をもたらす。中国が輸出市場として、欧州や米国の強さに依存することはその一例だ。

これはゼロサムゲームではなく、全体でプラスになるゲームだ。

<第4・四半期米GDP>

2012年第4・四半期には、さまざまな一時的要因が存在したと考えており、経済成長ペースに実質的な変化が生じたことを示しているとは受け止めていない。

成長率が引き続き2%近辺で推移していることはプラスの材料だ。しかし、われわれが望んでいるほどの力強いペースではない。

<「大き過ぎてつぶせない」金融機関と公的資金注入に対する期待感>

これら企業が破綻すれば公的資金が注入されるだろうとの市場の期待感があるから支援が行われる。この期待感は誤りがある。

それは市場の期待であって、われわれがしなければいけないということを意味している訳ではない。これからは、これらの機関が破綻することもあり得ると市場がみるようになっていくだろう。予測とは常に危険なものだが、別の予測をすれば、規模が大きいということで得られる利益は少しずつ損なわれていく。

<株式バブルと金融政策>

株式バブルの発生を示す確証はほぼ存在しない。株式保有者の間では引き続き、幾分リスク回避の動きがみられる。

しかし、FRBは2段階の計画を用意している。まずは異なる資産市場の動向を監視する。さらにFRBの見解が誤っており、特定の資産でバブルが生じた場合、どのような影響が生じるか、誰が損害を受けるか、金融機関に何が起きるか、広範な影響波及の可能性があるかなどを見極めていく。

これら問題が懸念要因として顕在化するなら、金融政策(の策定)で考慮することをFRBは排除していない。

<「大き過ぎて投獄できない」>

犯した罪からはどの個人も機関も免れることができないはず。(大き過ぎてつぶせないを)解決する必要があると合意もしている。大き過ぎてつぶせないを排除することが重要な目標で、それに向かって取り組んでいるところだ。

<クレジット市場と低金利>

クレジット市場は現時点でよりオープンになってきている。銀行の融資も増えている。そういう意味で低金利が数年前よりもより広がりをみせている。

<バランスシートの縮小>

FRBは(保有資産の大規模な売却を迫られる事態を)想定していない。売却せずに出口戦略を実施することや、準備預金への付利引き上げを通じ金融引き締めを行うことが可能だ。ただ、これらはあくまでも戦略の一例だ。

これまでも言ってきている通り、売却に関しては事前にしっかりと通知し、緩やかなペースで実施する。また、市場での金利見通しを安定させるため、FRBは政策金利に関するフォワードガイダンスを示していく。

現在の状況においてリスクを伴わないアプローチは存在しない。また、行動しないことが引き起こすリスクは深刻だ。そのため、FRBは均衡を取ることに最善を尽くしている。

<「ハト派」であること>

ハト派と呼ばれ、ある一面ではそうかもしれない。ただ一方で、私は戦後で最もインフレを上手く制御してきたFRB議長だ。もしくは少なくとも最も上手く制御したうちの1人で、インフレ率は平均約2%となっている。

<出口政策での超過準備金利水準>

市場のレートで支払うことになる。レポ市場やコマーシャル・ペーパー市場、その他の市場でのレートと全く変わらない。助成する訳ではない。

<イタリア国債>

市場は何よりもまず不透明性に反応している。市場にとり、イタリア政権がどちらの方向に進み、政策がどのように効果を発揮するかは不透明な状況となっている。

私はイタリアの政情に通じているわけではないが、同国の総選挙では、どの候補者もユーロ残留、さらにユーロ残留に必要な政策の維持に真っ向から反対していないと考えている。しかし、かなりの不透明性が存在することは確かで、動向を見極めたい。

イタリアは、経常赤字の規模がさほど大きくないものの、大規模な債務を抱えているという、まれなケースと言える。多額のイタリア国債が世界的に保有されていることを示している。

われわれの試算では、米銀のイタリアやスペイン債へのエクスポージャーは控えめな規模だ。米金融機関が評価損を計上したとしても深刻な影響を及ぼすことはない見通しであることから、エクスポージャー自体がそれほど大きな意味を持つことはないだろう。

<通貨戦争>

米国は通貨戦争に関わっておらず、為替を目標にもしていない。日米欧7カ国(G7)は、金融政策を国内目的の達成に用いることは適切とする明確な声明を発表した。米国の場合、これは雇用(最大化)と物価安定だ。

米国の拡張的な金融政策は他の先進国も追随しており、世界的な需要を押し上げ、米企業活動だけでなく、対米輸出を行う他国の企業をも支援してきたというのがわれわれの見解だ。そのため「近隣窮乏化」政策ではない。

<バーゼルIII>

明確な時期は言えないが、新銀行自己資本規制(バーゼルIII)の最終案が年央にも整う計画だ。年内の実施を目指している。

ストレステスト(健全性審査)やその他の措置から、ほぼ全ての米銀がバーゼルIIIの基準をすでに達成する見通しであると言える。自己資本が不十分という問題ではない。米銀はバーゼルIIIの資本基準にすでに達しているか、もしくは達成間近の状況にある。

<歳出強制削減による影響>

米議会予算局(CBO)は、2013年の米国内総生産(GDP)伸び率が歳出強制削減によって、約0.6%ポイント押し下げられると試算している。FRBもほぼ同様の状況を想定しており、これは妥当な見通しと考える。

歳出強制削減の過程には時間がかかることから、即座に大規模な影響が出ることは想定していない。数カ月の間に影響が強まっていくと考える。

<財政政策と金融政策の「相反する目的」>

金融政策は万能薬ではない。全ての問題を解決することはできない。金融政策措置がいかに強力かについてわれわれは全員意見が異なるであろうし、効果はあると思う。だが予想される財政政策による1.5%ポイントの経済成長率押し下げを相殺できるとは思わない。

短期的回復という意味では金融政策と財政政策は目標が食い違っていると思われる。行われようとしている財政政策上の決定は、問題の対応として時期的にやや不適切なところがある。問題はより長期的なものであり、可能な限り現在の回復を阻害しないやり方で時間をかけて対応すべきものだ。

<長引く欧州景気後退による米国への影響>

特定国のソブリン債の安定をめぐる不透明性を踏まえ、米国がここ数年直面しているリスクは主に金融情勢絡みだ。

欧州中央銀行(ECB)は、ソブリン債利回りの低下に寄与した国債買い入れプログラム(OMT)など、数多くの重要な措置を講じてきている。

<日本の経済政策>

日本はデフレ解消に注力すべきと考えており、日本のデフレ脱却に向けた取り組みを支持している。

<デフレリスク>

FRBの政策は、インフレを目標の2%、もしくはそれを下回る水準に維持することを通じ、デフレリスクを大幅に後退させた。デフレは現時点で主要な懸念材料のようには見られない。ただ、インフレ率がゼロという臨界水準に近付くにつれ、いずれかの時点でリスクは高まる。また、インフレを過度に低水準に抑制し過ぎると、デフレの長期化が経済成長や安定を阻害する日本のような状態を引き起こすリスクが生じる。


2012/02/27
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPTJE91P01A20130226?sp=true
(以上転載終了)



(以下感想)


そーいえば、バブル期のバーナンキ発言は、市場を見間違えたものが多かった。


2005年7月
質問「住宅バブルの懸念が強まっているが...」
バーナンキ
「バブルの懸念はあるものの、ファンダメンタルは強い.経済成長、低い失業率、低金利、住宅供給不足などある.住宅価格が高いかはわからないが、価格上昇は経済成長によるもの」


質問「住宅バブルの最悪のシナリオは?」
バーナンキ
「住宅価格の下落がおきることは、極めて低い.おそらく、住宅価格の上昇がおさまり、価格は安定するだろう.」


2006年11月
バーナンキ
「住宅市場は、徐々に下落するだろう.」


2007年2月
バーナンキ
「もし、住宅市場が安定しはじめ、在庫調整がおこなわれたら、今年の中旬には景気は回復しはじめるだろう.」
「サブプライムの問題が、住宅ローン全体の問題に広がるとはみてない.ローン市場は健全.


2007年7月

・住宅販売数はしばらく減少するだろう.
・世界経済は強い.したがって、アメリカの輸出は伸びる.
・2007年2Qからアメリカ経済は回復、2008年には成長するだろう.


しかし、間違っていたと認識してから、
2008年のリーマンショック後の対応は見事なものだったと思う。


個人的には、最悪の金融危機を乗り越え、
アメリカをここまで経済を延命させることができたのはすごい実力だと思う。


ただ、日本で彼に匹敵する人が誰ひとり見当たらないのが悲しすぎるが・・。


http://hellow42.blog.fc2.com/blog-entry-149.html
 

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コメント
 
01. 2013年2月28日 01:00:44 : Zag6oDNMIo
竹中氏:「黒田日銀」は脱デフレ好機、財政再建失敗なら100円超円安

  2月27日(ブルームバーグ):慶應義塾大学の竹中平蔵教授は、政府が日本銀行の新総裁候補に黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁を提示する見通しとなったことについて、デフレ脱却の絶好の好機として期待を示す一方、その実現には「政府にも責任がある」とした上で、財政再建が進まなければ円が暴落する可能性があるとの見方を示した。
政府は28日にも、総裁に黒田氏、副総裁に岩田規久男学習院大学教授と中曽宏日銀理事を充てる人事案を衆参両院に正式提示する。竹中氏は27日、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで「長期にわたり適切でなかった金融政策が適正化される非常に大きなチャンスだ」と強い期待を表明した。
人選については「最大の妙は全員が新しい人であることだ。その方が好感度が持てる」と指摘。黒田氏については「財務省出身者の中では異色で、私たちが共感できる経済学の体系を持っている。国際機関の長をやっていたのも大きい。国際的な発信力に期待している」と述べた。
一方、安倍政権の3本の矢に関しては「1本目の大胆な金融緩和の矢は放たれた。2本目の機動的な財政政策は中長期の財政再建シナリオが示されていない。3本目の成長戦略はまだ始まったばかりで、どうなるか全く分からない」と指摘。2%の物価目標を達成する上で「困難があるとすれば、むしろ政府の構造改革が進まないことだ」と語った。
為替相場では「当面は1ドル=95円くらいまで戻っても全く不思議はない」としながらも、「3本の矢に失敗しデフレを克服できなければ、また円高に振れるだろう。しかし、逆のリスクもある」と言明。「金融を思い切って緩和し、財政も拡大したが、財政再建ができなかったということになると、今度は行き過ぎた円安に振れる可能性もある。100円を超えて相当の円安になることは十分あり得る」と述べた。
悪い円安が進む可能性も  
竹中氏は「一気にそこまで行ったら、円がフリーフォール(暴落)というイメージになってくる。これは良い円安とは言えないだろう」と指摘。「賃金は遅行指標なので、輸入物価の上昇を通じて物価の上昇が速くなると、賃金との差が開き、国民の実質生活水準を下げる。そうなると安倍内閣に対する政治的な支持を弱めることになる」と語った。
黒田ADB総裁は12日のブルームバーグのインタビューで、2年くらいで物価目標を達成するのがグローバル・スタンダードだと語った。竹中氏は「日銀にも責任があるが、政府にも責任がある。政府は財政政策で短期の需給ギャップを埋めるとともに、規制緩和等々をしっかりやり、中長期の成長力を健全に高めていく。そういう条件があって初めて、2年くらいで物価目標を達成することが可能になる」と述べた。
さらに、「政府は日銀に目標を達成しろと明確に言っており、私はそれは正しいと思うが、日銀も政府に対して、きちんと構造改革を行うべきだと言えばよい」と指摘。「日銀の仕事は基本的に、やるべきことが非常に複雑だというわけではない。だからできる。しかし、政府の規制緩和や、新しい政策を通すということは、それは複雑怪奇だ。政府の構造改革が進まないリスクの方がある」と語った。
金融政策運営については「全ての政策に共通しているが、特に金融政策はシンプルであるべきだ。これは極めて重要だ」と指摘。「日銀は何かを買ってマネーを出す。買うべきものは圧倒的に国債だ。それが一番安定している。日本は国債市場が大きいので、最も市場をゆがめない。日銀にとっても良いし、市場にとっても良い。国債を買うことが基本中の基本だ」と述べた。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡 徹 tfujioka1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/27 14:04 JST


02. 2013年2月28日 02:07:58 : Zag6oDNMIo
バーナンキ米FRB議長の議会証言での発言要旨
2013年 02月 28日 01:41 JST
[ワシントン 27日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は27日、下院金融委員会で半期に一度の金融政策報告を行った。証言原稿は26日に上院銀行委員会で行った証言とほぼ同じ内容だった。質疑応答での発言内容は以下の通り。

<現行政策に対するFOMCの支持>

連邦公開市場委員会(FOMC)の大部分が現行の政策を支持している。

<財政政策>

証言では、一連の財政措置によって今年の成長が1.5%ポイントと極めて大幅に押し下げられることを示した議会予算局(CBO)の試算のみを引用した。

検討してもらいたい提案は、問題に合わせて財政再建の時期をより的確に調整することだ。すなわち、成長や雇用への影響が最も大きく、FRBにも影響を相殺する余地がない当座は措置を幾分軽減し、代わりに実質的な問題がなお残ると思われるより長期の対応に注力することだ。

財政再建は強く支持しているが、長期的な課題だと考える。一連の措置の前倒しを控えることを支持する。

米緩和の出口観測消えず、バーナンキ発言を逆説的に受け止め
2013年 02月 27日 13:05 JST

[東京 27日 ロイター] バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は量的緩和策を擁護したが、市場の早期緩和縮小観測は消えなかった。量的緩和に効果があるとすれば、米国の景気回復は進むと、発言を逆説的に受け止めたためだ。米緩和継続はドル安要因であり、イタリアの政治不安定化によるリスクオフも重なり円買いが進みやすい地合いのはずだが、円高進行は限定的で、日本株も下げ渋っている。

<議長発言で米景気回復に安心感>

バーナンキ議長は26日、上院銀行住宅都市委員会で半期に一度の金融政策報告を行い、量的緩和を強く擁護した。「現在の経済環境において、資産買い入れおよび、より全般的な金融緩和による利点は明白だ」と指摘。「金融政策は景気回復への重要な支援を提供する一方、インフレ率を連邦公開市場委員会(FOMC)の目標である2%の近辺に維持している。とりわけ長期金利を引き続き低水準にとどめることで、住宅市場の回復に寄与するとともに、自動車など耐久財受注の販売・生産の拡大を支援した」と述べた。

緊縮財政反対派が躍進したイタリア総選挙を機に欧州の経済改革路線への不安から、マーケットは全般的にリスクオフムードが強まっており、米緩和継続の思惑が強まればドル安・円高要因になりやすかったが、ドルは海外市場で91円後半止まり。日本時間に入ってヘッジの巻き戻しなどでやや円高が進んだが、92円を中心に底堅い展開が続いている。

米量的緩和の早期解除観測の後退を織り込む展開とはならなかった理由について、FXプライム取締役の上田眞理人氏は、市場は逆説的に議長発言を受け取ったと指摘する。「量的緩和の効果が出ているなら、米経済の回復も早いと市場は受け止めた。早期の緩和縮小観測は消えていない」という。FOMC議事録では緩和の早期縮小を視野に入れるメンバーが複数いることが明らかになっており、市場では「今回の発言はカウンター。景気回復が順調に進めば、早期緩和解除が視野に入るのは当然」(外為アナリスト)との声が出ている。

実際、26日に発表された米住宅関連指標は軒並み好調だった。12月S&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年比6.8%上昇と、2006年7月以来約6年ぶりの大きさとなった。1月の新築1戸建て住宅販売(季節調整済)は、前月比15.6%増の年率43万7000戸で、2008年7月以来4年半ぶりの高水準だ。3月1日に自動歳出削減の期限が到来するなど懸念材料も少なくないが、年後半にかけて循環的な景気回復局面が到来するとの見方を示すエコノミストは依然多い。

<日本株は為替次第の展開>

前場の日経平均.N225は続落。材料一巡感が強まる中、為替次第の展開になっている。海外勢の買いボリュームはやや減少しているとみられているが、ジャスダックなど新興株市場は堅調で個人の物色意欲は健在だ。立花証券・顧問の平野憲一氏は「円安に押し上げられていた株高であり、円安が一服すれば株高も一服するが、米国の景気回復期待は継続しており、いずれ米金利上昇によるドル高/円安局面が到来する」と述べる。

為替の見通しについて、大和証券投資戦略部チーフ為替ストラテジストの亀岡裕次氏は、いったん調整で円高方向に向きやすく、一時的に90円を割り込んでもおかしくないとしながらも、長い目でみればまだ円安は進むとの見方を示す。「(すでに高まってしまった)日本の緩和期待は盛り上がりにくいとしても、緩和はかなり長期にわたり続けていくことになる。一方、米国は(量的緩和を擁護した)前日のバーナンキFRB議長の議会証言はあるが、長い目で見れば減額していく方向にある。(ドル/円相場をサポートする)金利差は相対的に拡大していくだろう」と話す。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 久保信博)

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全米に広がる「成績の悪い公立学校は閉鎖」の波
先生も事務員も解雇、生徒はホームスクールへ
2013年02月28日(Thu) 堀田 佳男
 2月初旬、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアに住む知人から1通のメールを受け取った。

 そこにはフィラデルフィア市内の公立校が続々と閉鎖されている事実が語られていた。日本でも少子化の影響で、公立小中学校の併合や閉鎖はあるが、1校や2校という話ではないという。米国の大手メディアはほとんど報道しないので、日本から発信できないかという内容だった。

ニューヨークでは100校以上が閉鎖された

 同市内だけで、今後数カ月に40校以上が閉鎖される予定だという。そうなると、知人の一人息子は慣れ親しんだ近所の小学校から、遠く離れた公立の小学校に通うか、ホームスクール(後述)を選ばざるを得ないらしい。

 最初は個人的な不満が綴られているだけかと思ったが、学校閉鎖の波は同市だけの現象ではなかった。

 調べると、ロサンゼルス市、ニューヨーク市、シカゴ市、アトランタ市、首都ワシントンDCなど全米に及んでいた。実は公立校の閉鎖問題は米国では10年以上前から起きており、少しずつ肥大化している。

 例えばニューヨーク市では近年だけで100校以上が閉鎖されていた。閉鎖を決めるのは市の教育政策パネル(PEP)で、マイケル・ブルームバーグ市長が圧倒的な権限を行使している。13人からなる理事会のうち過半数の8人を自ら任命し、市内の教育関連の施政を事実上牛耳っていた。

 同市長の教育方針は、全米中で見られる教育へのスタンスに共通するものがある。それは日本のゆとり教育からの反動と同じで、生徒の統一テスト結果を重視する方向に舵が切られていた。さらにビジネス型の学校経営が導入されたことにも原因がある。

 端的に述べると、教育レベルの低い学校を閉鎖するという悪しき慣行がまかり通り始めるのだ。同時に、予算不足による経営学的な観点から学校を閉めざるを得ないという。

 全米教育統計センター(NCES)の発表によると、2001年に全米で717校だった閉鎖数は、10年後の2011年には1069校に増えている。1年間で約1000校も閉鎖に追い込まれているのだ。知人はメールの最後に、「公立校の無分別な閉鎖は社会を潰す!」と書いた。

 統一テストの成績が悪い学校が閉鎖されるという。本来であればそうした学校に通う生徒を立ち直らせるのが教育現場だと思うのだが、そうではないらしい。

 さらに米国の大都市の公立校が抱える共通する問題は前述したように予算不足である。例えば、知人が住むフィラデルフィア市は累積で2億8200万ドル(約262億円)の財政赤字を計上している。近年、緊縮財政を採っているが赤字は改善していない。今後は6校につき1校は閉鎖になる予定だ。

 学校を閉鎖するということは、子供たちが行き場を失うということと同時に、教諭や関連業務に携わっている人たちの職を奪うことでもある。昨夏、フィラデルフィア市では教諭以外で、少なくとも2700人が失業の憂き目に遭っている。清掃や警備、学校管理をする人たちだ。

閉鎖を止める手だて見つからず

 それでは子供たちはどこに行くのか。私立校に転向するオプションもあるが、経済的に全員が可能なわけではない。

 米国にはチャータースクールという変則的な「公設民営校」もある。役所が定めた諸条件に合えば、民間の事業者が学校を経営する資格を得て、学校経営ができるのだ。だが、様々な条件が付帯されており、生徒たちの学力が向上しない場合は閉鎖に追い込まれる。

 いまのところ公立学校閉鎖の流れを止める手だては見つかっていない。公立から私立へという傾向が強まっているだけだ。

 メールをくれた知人に返事をしていくつか質問をした。すると、遠く離れた公立校に通わせない場合はホームスクールを視野に入れていると書いてきた。

 ホームスクールというのは、文字通り学校に通わせずにホーム(自宅)を学校にする教育方法だ。教師はもちろん親である。

 教育というのは大げさな言い方をすれば、これまで人類が獲得してきた英知を子供に授けることである。将来への投資であるとともに、人類の義務でもある。この点で、人間の営みの中でも極めて重要である。

 今後、iPS細胞やDNAの研究が進化しても、親はそれまで自分が獲得した知識や経験を新生児に託すことはできない。いつの時代でも新生児は無垢のまま誕生し、白紙の状態から人生を始める。

 生まれながらに運動能力が高いなどの遺伝的な要素はあっても、子供が社会生活を送るためには教育は必須である。ほとんどの国家で義務教育が定められているが、その前に子供は親から家庭教育を授かる。

 親が家庭教育という概念をしっかりと捉えていないことも多いが、ホームスクールは多くの点で、学校が生み出す社会問題を回避する利点がある。

 米国で1960年代から始まったホームスクールは、小学校教諭だったジョン・ホルト氏が提唱者となり、全米に広まった。氏が著した『教室の戦略(How Children Fail)』では、学校という機関がそもそも子供にとっては悪しき場所とまで踏み込んだ。

日本では認められないホームスクール

 親と教師の対立、いじめ、人種的偏見、学校の教育方針への疑問など、子供が直面する問題は多い。それであるならば、子供を学校に行かせずに自宅で教育することの方が望ましいと強調した。

 日本では例外を除いてホームスクールは許可されていない。だが、米国では1993年に全米50州で正規教育として認められた。生徒数は増え続けている。

 ただホルト氏は、子供によって成熟度と学習の習得度に大きな違いがあるため、すべての子供にホームスクールが適合しているかどうかは明言できないとも述べている。

 もちろん全米教育協会(NEA)は様々な理由からホームスクールに反対する。それは親が長年にわたって教育の質を保ち続ける難しさや、団体教育だけで養われる社会性を得られないなど多岐にわたる。

 夫婦共稼ぎで、朝から晩まで両親が自宅にいない環境では難しいし、往々にして親は特定教科に集中しがちという傾向もある。

 ただ、日本でも自分の部屋で勉強する子供よりもリビングやキッチンで勉強している子供の方が、成績がいいという統計が出ている。それと同じように、ホームスクールの生徒の方が、学校で学ぶ生徒より学力テストで37%も結果が良好という報告もある。

 米国ではホームスクールの生徒数はすでに300万人(推定)に達している。日本でも十分に試してみる価値はあるだろう。

 保守的な文部科学省がホームスクールを認可するにはいくつものハードルをクリアする必要がある。しかし、家庭で学ぶオプションを認め、その幅を広げるくらいはすべきである。


03. 2013年2月28日 02:09:22 : Zag6oDNMIo
黒田総裁「デフレと円高の悪循環を絶て」

2013年2月28日(木)  日経ビジネス編集部

「日銀総裁に黒田氏、副総裁に岩田規氏 政府提示へ」
 次期日銀首脳人事について日本経済新聞が2月25日に速報を打つと日経平均株価が急騰するなどマーケットは素早く反応した。最大野党である民主党もこの人事案を容認する方向で、大きな問題がなければ黒田東彦氏が日銀の次期総裁に選ばれる可能性は極めて高くなった。
 「日経ビジネス」は2012年12月17日号の編集長インタビューで、アジア開発銀行総裁として黒田氏のインタビューを掲載した。テーマはアジア経済の今後の見通しについてだったが、インタビューした11月16日はちょうど野田佳彦前首相が衆議院を解散した当日だった。当時は「アベノミクス」という言葉が出てくる前だったが、自由民主党の総裁に返り咲いていた安倍晋三氏は積極的な金融緩和政策を訴えていた。こうした経緯もあり、財務省出身である黒田氏への質問は自然と日本の金融政策に及んだ。
 本記事では、日銀の金融政策についてかなり踏み込んだ批判を展開している箇所を中心に再度掲載します。
アジアの近未来を見据えた時に、日本の企業経営はどうあるべきだと考えられていますか。


黒田 東彦(くろだ・はるひこ)氏
1944年福岡県生まれ。67年東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。71年英オックスフォード大学経済学修士課程修了。財政金融研究所長や国際金融局長を経て、99年から2003年まで財務官。2003年内閣官房参与、同年から一橋大学大学院経済学研究科教授も兼務。2005年にアジア開発銀行の第8代総裁に就任、2011年に再任。フィリピンのマニラにあるアジア開発銀行の本部にいることは少なく、世界各国を飛び回る。
(写真:菅野勝男)
黒田:やはりあらゆる産業分野で付加価値を高めていくしかありません。これは製造業やサービス業に限った話ではなく、農業についても同じことが言えます。

 日本の農業の競争力は低いとよく言われますが、日本は賃金水準が高いのですから普通に穀物を作っていても競争力が低いのは当たり前なんです。単に農作物を作り出すのではなく、ブランド力を高めてより高く売れるようにする。そうすればその農家の所得を引き上げることができます。

 その意味で私が注目しているのは観光業です。観光業は所得が低い国でも高い国でも成立しています。それはなぜかというと、それぞれの観光地でコンテンツが異なるからですね。歴史的な名所旧跡を巡るものもあれば、自然を満喫するものもある。例えば、スイスのように世界に冠たる高所得国でも観光業は重要な産業と位置づけられています。付加価値を高めることができれば、賃金水準が高くとも十分な利益を出していけるということです。

 日本は名目の賃金は上がっていないと言われていますが、実質的な賃金は上がっています。人口が減っていることを差し引けば、1人当たりのGDPは米国や欧州とほとんど同じように伸びています。

一人ひとりの日本人は頑張っているということですね。

黒田:そうです。日本全体で見れば確かにGDPは伸び悩んでいますが、人口や労働人口が減っていることを考慮すれば十分に頑張っている。だから、将来の見通しが全く立たないということではなくて、付加価値を高めていくために新しいテクノロジーや新しいマーケットを追求していくことが重要になってくるのです。

デフレと円高の悪循環を絶て

黒田:だからこそ政府が企業を強化するための環境を作ることが重要なのです。農業やサービス業向けにさらなる規制緩和は必要ですが、何と言っても円高とデフレの悪循環を断つことが求められています。企業が一定の計算をして投資しても、円高が進みその後にデフレになってしまうとその前提条件が崩れてしまいます。これでは企業が安心して事業を継続することができません。やはり、政府と日銀が一体となって円高とデフレの悪循環を終わらせる必要があります。

どのように金融政策を進めるべきでしょうか。


(写真:菅野勝男)
黒田:一番重要なのは、絶対にデフレを克服するんだという強い意志を表明することだと思います。

 例えば米連邦準備理事会(FRB)は量的緩和を3度にわたって実施してきましたが、特にQE3では景気が回復し、失業率が減るまではMBS(住宅ローン担保証券)を金額の上限を設けずにいくらでも買い取ると発表しました。欧州中央銀行(ECB)のOMT(アウトライト・マネタリー・トランザクション)にしても、要請があれば国債価格の下落を食い止めるために当該国の国債を無制限に購入すると宣言しています。このように、目的が達成されるまでは無制限にやるという意志を表明することが非常に重要なのです。

 日本に今求められているのはデフレの克服であるはずです。それでは物価の上昇がどの程度になればデフレを克服したと言えるのか。「2%で十分」とか、「3%は必要なんじゃないか」とテクニカルな議論はいろいろとあります。けれど、ポイントは何度も繰り返しになりますが、その問題が解決されるまではいくらでも何でもやるという姿勢を日銀が示して、市場をコンビンス(信頼)させることなのです。

一応、日銀は「中長期の物価安定のメド」としてCPI(消費者物価指数)の1%上昇を目指しています。

黒田:あれだって全然コミットメントがないでしょう。マーケットはコミットメントがあるかどうかを見ているわけですよ。「目標を1年で実現します」とか「実現しなかったら辞めます」とか。そのコミットメントがあるかどうかだけをマーケットは注視しているんです。今さら見通しを言ったって、そんなの全然信用されませんよ。

 日本は15年近くデフレが続いてきたんですから、「これからは物価が1%ずつ上昇します」と言われてもそんなの誰が信じますかね。テクニカルには中央銀行がいろいろとお考えなんでしょうが、やはりデフレ克服の目標をはっきりとさせて、それを達成するまでは必要な施策を何でもやることです。

 物価が年々下がっていくのは異常な事態です。経済協力開発機構(OECD)の中では日本だけですからね。これは企業の足をものすごく引っ張っている。

黒田総裁はいわゆるインフレターゲット論者と呼んでいいのですか。

黒田:私はそんなに強いターゲット論者ではないですけれど、これだけデフレが続いてきて、何の当てもなく単にデフレを克服しますと言っても、マーケットから見たら全然意味がないでしょう。だから落ちてきた物価水準をここまで戻しますとか、きちんとクリアなコミットメントを示すことが求められているはずです。

 もちろん金融政策というのは基本的にフレキシブルであることが望ましくて、物価だけじゃなく景気とか金融システムの安定性なども考慮して政策を決めなければなりません。今、日本の金融機関は米欧と比べても一番健全なところに来ているわけですからね。何が最大の問題かと言えば、間違いなくデフレの克服ですよね。

円の為替レートについて、政府が市場に介入しすぎることを懸念している人もいます。

黒田:為替レートも実体経済と懸け離れてしまっていることが問題なのです。マクロ経済全体の中で適切な為替レートというのがあって、その水準から乖離して推移すると経済にとって好ましくありません。ですから円安にすべきと言ったって、1ドルが1000円になったら日本経済が持つわけがないのです。だから何が何でも円高とか、何が何でも円安というのは経済のロジックではない。

 今のマクロ経済の実態から言えば、今の為替レートは明らかに適切ではない。円の価値がオーバーバリュー(過大評価)されていることは国際通貨基金(IMF)も認めていることです。円高のままであれば輸入業者は儲かるとか言う人がいますが、今の円高水準が行き過ぎているのは事実です。デフレ、円高、デフレ、円高という悪い循環をずっと繰り返してきたのが日本経済の問題点なのです。

(「日経ビジネス」2012年12月17日号48−51ページの一部を再掲載しました)


賃上げは来年まで待つべきです

宮原耕治・経団連副会長(日本郵船会長)に聞く

2013年2月28日(木)  日野 なおみ 、 渡辺 康仁

 労働側がデフレ脱却へ賃上げを求めるのに対し、経営側は企業収益の改善が前提との姿勢を崩さない。宮原耕治・経団連副会長(日本郵船会長)は賃上げができるようになるまでには、あと1年待つべきだと主張する。
大胆な金融緩和、機動的な財政支出、成長戦略の3本の矢を通じてデフレ脱却を目指すアベノミクスをどう評価していますか。


(写真:古立康三、以下同)
宮原:3本の矢というのは非常に良い表現をされたと思います。小難しい理屈やイデオロギーではなく、分かりやすい形で出されたのが良かったのでしょう。だからこそ、市場が反応して円相場や株価も動きました。政府や自民党の布陣も重厚で、経済財政諮問会議や産業競争力会議などをうまく組み合わせてやっていくこともイメージとして伝わってきます。期待は高まっていますので、是非、応えてもらいたいですね。

 3本の矢のうち、金融緩和と財政出動はクルマで言うとメインエンジンを始動させるセルモーターの役割です。民間の経済活動というメインエンジンが回りだして、初めてスムーズに走り始めます。そうなれば国の富が増えて企業収益も上がり、人件費にも還元できる状況になる。民主導の成長のためには、やはり国が成長戦略に真剣に取り組むことが必要です。

 財政出動と言うと、公共事業の復活という言葉が踊りますが、やらなければいけない公共事業はやるべきです。何よりも東日本大震災からの復旧・復興です。安倍晋三政権は本気で取り組むと言っています。さらに、戦後の高度成長期に急いで作ったインフラが点検や更新の時期を迎えています。経済効果は踏まえるべきですが、公共事業を増やすのは望ましいことだと考えています。

 発電所の建設や道路、港湾、橋梁の整備は日本のお家芸です。これを新興国が欲しています。公共事業で培ったノウハウをインフラ輸出につなげていくこともできます。

日本企業の「六重苦」は解消に向かいそうですか。

宮原:まず指摘したいのはエネルギーコストです。コストが上がるとボディブローのように日本の経済・企業活動にダメージを与えます。それを恐れて日本での投資に二の足を踏む経営者はたくさんいます。適正なエネルギーミックスについて早くコンセンサスを得なければなりません。原子力発電所についても、1つずつ丁寧に検査をしたうえで、安全が確認されたものは再稼働していくべきでしょう。

デフレだから賃金が上がらない

 輸出産業を中心に円安のメリットが出てくるのはこれからです。ただ、円安が行き過ぎると、LNG(液化天然ガス)の調達コストが膨らむなどのデメリットも生じてしまいます。こうしたデメリットを上回るメリットが得られれば円安は歓迎すべきものです。様々な人の話を聞くと、その分岐点は1ドル=100円から110円くらいではないかと思います。

 企業の競争力に関して、最後まで残るのが法人税の高さです。法人税率の世界標準はおおよそ25%。15%違えば、汗の結晶の利益から15%余計に持っていかれてしまいます。世界標準からすると1周や2周は遅れています。早く国際標準にしてほしいですね。

安倍政権は賃金を上げた企業の法人税負担を軽減します。効果は見込めますか。

宮原:姿勢としては評価できます。賃金を上げて購買力を高め、経済の活性化につなげるという発想はいいのではないでしょうか。ただ、別の言い方をすると、この税制ができたからといって、企業の成長力が高まるわけではありません。制度を続けている間に企業が成長の道筋を作り、具体化していくことが重要だと理解しています。

 日本中の企業の7割は法人税を払っていません。特に中小企業の皆さんにとっては、法人税の軽減は絵に描いた餅に終わりかねません。法人税の負担が軽くなるから、賃金を上げようと考える経営者はいないのではないでしょうか。

労働側はデフレ脱却のためには賃上げが必要だと主張しています。

宮原:連合の方々とお話をしましたが、賃金を上げないからデフレになっているとおっしゃる。しかし、それは違うのではないでしょうか。デフレの原因は色々あります。総需要が足りないとか、金融緩和の度合いが足りなかったということも考えられます。賃金を上げないから20年来のデフレになったのではなく、デフレという現象があるから賃金が上がらない。逆なんですね。

 経営者も全部溜め込めばいいのではなく、適正な配分をしなければなりません。配分の原資である収益が上がらないから、賃金を上げたくても上げられない状況なのです。特に地方は連合の皆さんが考えている以上に厳しい。雇用を守るのが精一杯です。

 賃金については、ベースアップはもちろん出来ないし、定期昇給もすべての企業がそのカーブの通りに上げられるかどうかは分かりません。定昇の一部延期や凍結をお願いしなければならないところはあります。

 幸い、アベノミクスで向こうの空には青空が見えてきました。しかし、足元はまだ凍ったままです。いま大事なのは凍った道を滑らずに前に行くことです。経営者も労働側も我慢して、この道を安全に渡りきって、次の成長の軌道に乗せていく。そのために、よく話し合いをしなければなりません。労と使はパートナーです。企業収益という根っこを増やさないといけないのです。

従業員への還元は賞与・一時金で

 日本経済を成長させるために、2つのことが重要になります。1つはこれから圧倒的に成長するアジアの新興国で稼ぐことです。もう1つは内需型の成長産業を国が本気で育てていくことです。その候補は農業、教育・保育、介護・医療です。農業は若い人がビジネスとして取り組めるようにしていくべきです。規模の集約や企業化のために農地法や農協法の規制を緩和することも必要です。保育や介護も、施設整備や資格取得などの面で規制を緩和してもらいたいものです。

足元の円安で企業収益が改善すれば賃上げの可能性も出てきますか。


宮原:私が言いたいのは来年まで待とうよ、ということです。アベノミクスは素晴らしい滑り出しを見せており、今までなかった成果を上げてくれると期待しています。しかし、3カ月や半年で際立った成果を出せというのは無理です。

 実際に労使交渉をやっているわけではありませんが、1年たって企業業績が伸びて、配分の原資が増えれば当然賃金は上がるでしょう。向こうに青空が見えたからすぐに上げるのは無理です。足元を見ても、エネルギー問題1つ片付いていません。

 足元の円高修正が効いてくるまでに半年はかかります。今まで1ドル=70円台で輸出の契約をしていたとしましょう。仮に100円で行けると確信が持てたら、100円で計算した見積もりを出せるようになる。交渉には1〜2カ月かかるでしょうから、契約して製品が出て売り上げが入るまでには半年はかかります。

 アベノミクスによる金融緩和にしても財政出動にしても、結果が見えるように出てくるまでに1年は必要です。今まで20年も出てこなかったわけですから、1年で出てくれば十分だと思います。パッケージ型の政策ですから、3〜4年は続けてやってもらいたいと思いますね。

2000年代初めの戦後最長の景気回復局面では、結局賃金は伸びませんでした。1年待つと本当に増えますか。

宮原:あの時はボーナスは増えました。海外を見ても、元々、定昇がある国はほとんどありません。日本は戦後の復興期にゼロからスタートし、若い人が結婚して家庭を持って子どもを育てるために賃金カーブができました。状況はだいぶ変わってきましたが、我々は根こそぎ止めてしまおうとは言っていません。

 賃金カーブというものは、今でもそれなりの意義はあります。しかし、それは会社によって地域によって色々と異なる。労使で絶え間なく見直して、変えるべきところは変えた方がいいのです。賃金カーブをいったん変えるとベースも上がりますから、次の年が悪くても下げようがなくなります。利益変動の部分は賞与・一時金で従業員に還元しましょうというのは定着していると思います。来年以降も賞与・一時金で期待できるのではないでしょうか。

物価上昇なら考慮する必要も

アベノミクスによって物価が上がってきたら、賃金にも反映しますか。

宮原:いまの状況と違うことになるでしょうから、それはそれで考慮する必要が出てくるかもしれません。物価だけ上がって企業も従業員も苦しくなるというのでは意味がありません。日本経済全体の体温が温まって、地方の隅々まで企業活動が盛んになって初めて物価上昇率は2%に届くはずです。

最初に上がらなければならないのはやはり企業収益ですか。

宮原:そうだと思います。ただ、企業収益が上がっても従業員の賃金に全部いくわけではありません。税の支払いも増えますし、投資もしていくことになるでしょう。日本の企業は内部留保をたくさんしているという統計もありますが、どこに投資をするか、何に投資をするか、確信が持てない状況だと思います。国内で投資が盛んになって、自動車や電機などのメーカーが雇用をたくさん抱えるような工場ができることが理想形です。


日野 なおみ(ひの・なおみ)

日経ビジネス記者。

渡辺 康仁(わたなべ・やすひと)

日経ビジネス副編集長


徹底検証 アベノミクス

 日本経済の閉塞感を円安・株高が一変させた。世界の投資家や政府も久方ぶりに日本に熱い視線を注ぐ。安倍晋三首相の経済政策は日本をデフレから救い出す究極の秘策か、それとも期待を振りまくだけに終わるのか。識者へのインタビューなどから、アベノミクスの行方を探る。



【第30回】 2013年2月28日 山田厚史 [ジャーナリスト 元朝日新聞編集委員]
恐いのは「関税」より「非関税障壁」
日米首脳会談の盲点
 再選を果たしたオバマ大統領、再挑戦の安部首相。初顔合わせの首脳会談は、日米双方の外交姿勢が鮮明に現れた。米国は攻めの外交。国内を守りながら日本市場を取りに行く戦略性を鮮明にした。日本は、米国にすがる外交が露わに。国内を説得するためTPP関連では「関税撤廃に聖域」があるかのような表現を共同声明に入れてもらった。

 焦点はもはや、「関税撤廃の聖域」ではない、ということに多くの国民は気付いていない。実は「非関税障壁」がより問題にされている。コメよりも、保険、医薬品、遺伝子組み替えなどに米国の標的は移った。

 昨年2月、このコラムに「TTP=自由貿易」の嘘、という題で事前協議が米国のむちゃくちゃな論理で行われていることを指摘した。今回も同じだ。

首脳会談での一芝居

 安倍首相はひらすら「交渉に聖域がある」という言質をオバマに求め、「米国も聖域に理解を示した」と土産を持ち帰ることで、TPP交渉参加への道を開こうとした。

 そんな日本の事情を熟知した米国は1月下旬、各国の政府関係者が集まるスイスのダボス会議で、カーク通商代表が茂木経産相に「日本車の輸入関税を続ける」と通告した。

「政府内は戸惑いと安堵という複雑な反応だった」と、政府関係者は明かす。

 自動車の関税を残すTTPとは一体何なのだ、という声が上がる一方で「これで交渉参加へ道が開ける」と外交関係者は胸をなで下ろした、という。

 舞台裏で進んだ根回しの結果、安倍首相は「聖域なき関税撤廃というのでは日本の国益は守れない。首脳会談で私が直接オバマ大統領に確かめ、(聖域があるという)心証を得てきたい」と国会などで繰り返し発言するようになった。

 自動車関税継続の通告で「聖域化」は既に決まっていた。そこを伏せて、首脳会談で心証を引き出すと芝居をうった。

今や通商交渉のテーマは非関税障壁

 工業品の代表である自動車に関税を残すというのでは、TTPが唱える「高いレベルの自由化」は空文化するのではないか。今回のポイントはここにある。

 実は、TTPの主課題は今や関税ではない。世界の通商交渉のテーマは、すでに非関税障壁、投資保護、知的所有権、紛争処理など関税以外の分野に移っている。

「関税引き下げ」が自由貿易の代名詞のように使われていたのは、米国が最強の輸出国だったころからだ。米国の主導でケネディラウンドと呼ばれる一括関税交渉が始まったのは1960年代。ガットのウルグアイラウンドを経て、ほぼ落ち着くところに達したのが現状だ。残るは「センシティブ・マター」と呼ばれる各国の政治案件だ。日本のコメと同様の課題をそれぞれの国が抱え、突っつきすぎると交渉の枠組みが壊れかねない。

 関税は途上国に市場開放を迫る道具としては今も有効とされるが、先進国間では自由貿易の旗を振るアメリカでさえ、自動車産業などが「関税保護」に頼り、関税交渉の時代は終わったというのが現実だ。

 そこでアメリカは他国の市場をこじ開ける「新しい道具」を用意した。分かりやすい例が「日米構造協議」であり「対日経済要求」である。「あなたの国はこんなにおかしな制度だから、米国企業の活動の自由が妨げられている。直しなさい」というやり方だ。

 こうした2国間協議をアジア太平洋で丸ごと仕組み化しようというのがTPPだ。

 もともとシンガポール、ニュージーランドなど産業がぶつかり合わない4ヵ国でやっていた取り組みに米国が乗り込んで、主導権を取った。

 米国の国家情報会議(NIC)が昨年末にまとめた「2030年グローバルトレンド」は、今後30年間で文明の重心は米国からアジアに移るという。産業革命から始まった西洋の隆盛が反転し、世界経済や政治でアジアが復興する、と予測している。

 米国はこうした大局観から国家戦略を構築する。狙いはアジアだが、そこには中国が控えている。「制度を変えろ」と要求しても、従う国ではない。

 そこでアジア地域の経済改革を、非中国の国家群で先行させようというのがTTPである。平たく言えば「アジアにおける米国主導の経済同盟」である。

仲間であり利害対立を抱える当事者

 当然「日本も入れ」となる。だがこの同盟は必然的に抱える難問がある。「仲間であり利害対立を抱える当事者」という複雑な関係だ。

 今回の首脳会談にもそれが滲み出た。安倍首相は民主党政権がこじらせた日米関係を修復して存在感を示したい。領土問題で争う中国への対抗上、米国と緊密な関係を強調したい。

 そのためには「忠誠の証し」が必要となる。自民党内は国内での反対を押し切って交渉に参加する意思表示が、交渉の予備段階で米国に示され、共同声明の文案が作られた。

「すべての関税撤廃をあらかじめ約束するよう求められるものではない」という表現で「聖域があります」と読めるようにした。ここまでは同盟関係である。

 その裏に「利害対立」が潜む。声明に盛られた以下の部分だ。

「両政府は、TTP参加への日本のありうべき関心についての2国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税障壁に対処し、TPPの高い水準を満たすことについての作業を完了することを含め、解決する作業が残されている」

 さらっと読むと素人には分かりにくいが、やさしく言えば次のようになことだ。

「コメなど農産物に特段の配慮してもらえるならTPPに参加したい、という日本の事情は日米でさらに話し合いましょう。でもそのための条件として米国が要求している自動車と保険の問題に決着がついていない。懸案となっている非関税障壁の問題も含め、外国企業が日本で自由な活動が出来るよう制度やルールを変える仕事がまだ残っています」

 両国間には、まだ決着しない利害対立が残っていますよ、と書いてある。

 それでも帰国した安倍首相は同盟関係を重視し、交渉参加へと舵を切った。反対の声が多かった自民党も「首相一任」。TTP交渉参加に弾みがついた。

アメリカの真の狙い

 だが、聖域が残れば、問題はないのか。そうでないからTTPはややこしい。

 政界・国会・メディアで取り上げられているTTP問題は、いつもコメに象徴される農業問題であり、防波堤となっている関税問題だ。反対するのは農協であり農林議員という構造で描かれる。無策の農政、既得権にしがみつく農業団体や経営感覚のない農民。旧態依然たる産業が、構造改革に抵抗しているので日本の強みであるモノ作りの強みを世界で発揮できない――という分かりやすいストーリーで描かれている。

 確かに農業には問題がある。TPPがあろうとなかろうと改善しなければいけない課題は山積している。だがTTP問題のキモは農業に関係する関税でもなければ、関税に例外措置を設ければ打撃を回避できる問題でもない。

 コメ問題は「敵は本能寺」なのである。アメリカの真の狙いは非関税障壁と投資だ。察するところ戦略的ターゲットは、医薬品認可基準の変更、保険ビジネスへの参入、とりわけ医療保険ビジネスを広げるため国民健康保険制度に風穴を空けること。そして遺伝子組み替え食品の表示を取り外し、日本で遺伝子組み替え種子のビジネスを展開することなどが予想される。

 ここで「推察」とか「予想」とかの表現を使っているのは、交渉の実態が明らかにされていないからだ。TPP交渉は秘密交渉で行われ、参加国でも交渉の全貌は明らかにされていない。日米間で行われている事前協議でも、米国側から「日本車への輸入関税継続」が通告されながら、国民や国会に伏せられていた。

 オバマ政権は、アジア市場に製品やサービスを売ることで輸出と雇用を増加させる、という分かりやすい政策を米国民に約束している。米国の強い産業が自由に活躍できる制度的インフラを、市場たるアジアに広げる。それがTTPの狙いだ。

 競争はあっていい。だが、自分たちの都合の悪い制度や仕組みを潰しに掛かるようなことがあるなら、受け入れることはできない。それが「利害のぶつかり合い」だ。

国民健康保険制度が標的か

 分かりやすいのが日本の国民健康保険だ。日本国内では財政問題など難点が指摘されるが、世界水準で見れば「優れモノ」である。日本が長寿国になったのも国民健康保険があったからだ。

 一方、民間の保険産業を見れば、米国の保険会社は圧倒的な力を持っている。いま米国の保険産業はアジアを目指す。日本でも急進している。だが得意分野の医療保険が日本ではさっぱりだ。国民健康保険がほぼすべての国民をカバーしているので、入り込む余地がない。国民健康保険が壊れれば民間保険を売ることができる。

 英国ではサッチャー政権の時、それが起きた。財政削減で国民健康保険でカバーできる医療が劣化し、きちんとした医療を受けるには民間の保険を買うしかなかった。制度の崩壊は保険会社にとってビジネスチャンスだ。

 米国の論理で言えば、財政が支援している国民健康保険は「民業圧迫」で、優れた保険商品を扱う米国の保険会社の活動を妨げる「非関税障壁」となる。今は、日本国民が国保を支持しているので、そこまでの主張はしないが、国保が財政的に衰退すれば状況は変わる。

 その原型が事前協議の「保険問題」にある。米国は政府が株主である日本郵政の子会社であるかんぽ生命が売るガン保険などを止めるよう求めている。政府の信用で全国展開のビジネスをするのは「非関税障壁」だというのだ。この論法は、やがて国民健康保険でも使われるのではないか。

 医療関係は米国が強い。薬品も同じだ。今の薬品価格は厚労省が低く抑えている。これでは儲からない。これも非関税障壁になり、撤廃されれば薬価は上がり、国民健康保険の財政も危うくなる。

表示で差別するのは非関税障壁!?

 注目したいのが「遺伝子組み替え食品」だ。害虫に喰われない農産物を作るため遺伝子組み替えの種子が米国では一般化し、いまや穀物地帯の南米まで席巻している。ムシが付かない防虫効果が人にどんな影響を与えるのか、まだはっきりしない。

 日本では作付けは認められていないが、遺伝子組み替えの大豆を輸入して作った醤油やみそなどが売られている。こうした状況に消費者は敏感になり、「遺伝子組み替え食品は使っていません」と表示した商品に関心が高まっている。米国はこの表示を問題にしている。「表示で差別するのは非関税障壁」というのだろうか。

 背後には遺伝子組み替え種子で世界制覇を目指すモンサント社がある、とされる。この問題はいずれ改めて書く。

 ワシントンで石を投げればロビイストに当たる、というほど米国議会は業界のロビー活動が盛んだ。民主党も共和党も国会の議決に党議拘束はない。業界ビジネスがストレートに経済外交に反映し、米国の世界戦略と一体となって進んでいる。

 それは米国のお国柄だが、他国が築き上げた制度や消費文化を破壊して攻め込むのは歓迎できない。開かれた貿易体制を目指すTTP交渉なら、国民に情報を開示して判断を仰ぐことが必要だろう。

 メディアも、表で騒がれていることばかり追うのではなく、裏で秘密裏に進む重大事案を描き出す努力が必要だと、つくづく思う。


【第172回】 2013年2月28日 田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]
日銀総裁人事とTPP参加
懸案に挑む安倍首相に死角はあるか
 今回の日米首脳会談は一定の成果があったと評価できる。

 何よりも、安倍晋三首相とオバマ米大統領の間で信頼関係が構築される出発点となったことは大きい。

 最初は2人の間にぎこちなさが感じられたと報道されているが、それはオバマ大統領に少なからず誤解があったからだと推察する。

 今までの外交・安保政策に関する発言。ウルトラ・ナショナリストというメディアからのレッテル。大統領から見ると、米共和党の最右翼の政治家と同類に映っても不思議ではない。それに、かつて第一次内閣ではブッシュ米大統領の相手の1人であった。同じ党名の民主党の首相とは思想的に距離があると思われただろう。

 オバマ大統領にこんな先入観や違和感があったとしても、昼食や会談を通じてそれが払拭され、首相が「かなり手応えのある会談」と言えるほど相互の理解が進んだことはよかった。

3月上旬にもTPP参加を表明
参院選では「例外品目」が争点に

 さて、今回の会談では、首相のTPP参加問題への対応が特に注目された。

 結局、会談の核心部分は共同声明に「一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」と明記。これで首相は「聖域なき関税撤廃が前提ではない認識に立った」と表明。総選挙での自民党の公約に沿うものと強調した。

 共同声明と会談内容を総合すると、「協議の対象に例外品目は認めないが、協議の結果として例外品目を認める可能性もある」ということだろうか。

 首相は、電光石火、党役員会で一任を取り付け、これから国内での説明を尽くし、3月中にもTPP参加を表明する意向らしい。そして、TPP関係国との協議や手続きを経て、参院選前の6月にも日本の交渉への正式参加が決定する見通しとなった。

 問題は、具体的に目指す「例外品目」は何か、ということだ。

 おそらく、参院選に際して、地方、団体、政党、国会議員から具体的な約束を厳しく迫られ、参院選の主要な争点となることは間違いない。

 特に、その頃、アベノミクスが足踏みでもしていれば思いがけない展開にも成り得る。今回のイタリア総選挙の結果によって、世界経済は大きく揺れているように、夏場の経済状況に楽観は禁物だ。

今回の日銀総裁人事が
“財務省の天下り”に道を開く恐れも

 さて、25日、安倍首相は、日銀総裁人事案として、黒田東彦総裁、岩田規久男、中曽宏両副総裁を与党に提示した。

 首相自身の政策の方向性はもちろん、財務省、日銀などへの周到な配慮が見られる妙案のように見える。

 今のところ、民主党からも表立った反対意見もないので、意外なほどあっさりと参議院でも同意が得られるかもしれない。

 しかし、1つの明確な政策を託されて総裁に就任する例がかつてあったか、私は知らない。もし万が一、意図するところが不首尾に終わった場合に、一体5年の任期はどうなるのか。「2%の物価目標」が壮大な実験であることを思えば不安も消えない。

 黒田氏は主計畑の人ではなく、国際金融畑の人。だが、財務省OBであることには変わりはない。財務省と重要な金融政策で意見の違いがある場合、結局は折れて財政当局の意向に従うことになるのではないか。また今回の人事は、財務省が、日銀総裁へのかつての天下りの既得権奪回に道を開くもの。表向きはともかく、陰では歓喜の渦が生じているだろう。

 ところで、この総裁人事が国会ですんなりと認められたにせよ、今後の首相の政権運営にとって必ずしもプラスとは言い切れない。

 安倍内閣は依然として快進撃を続け、首相の万全の準備と迅速な決断も好感されているが、それ以上に野党のふがいなさが大きく幸いしている。

 海江田(万里)民主党は党大会を開いたものの熱気は一向に伝わってこない。最大野党が茫然としていれば、安倍政権はブレーキのない車のようになってしまう。それは安倍政権にとっても野党にとっても実に不幸なことである。


04. 2013年2月28日 02:22:43 : Zag6oDNMIo
FRBが50.16億ドルの国債購入
:2013/02/28 (木) 01:25

FRBはNY連銀を通じて50.16億ドルの国債を購入。2017年2月から2017年11月に償還を迎える国債。

バーナンキ議長(質疑応答)

大半のFOMCメンバーは実施した政策を支持

現行政策の費用対効果を継続的に討議していく

長期に渡り失業率で進展みられなければ政策再検討の可能性。ただし、勢いづいている。

望ましい状況には程遠いが、住宅ローン低金利は市場を後押ししている。住宅市場が底打ちし回復の兆候みられる。

実質金利の若干の上昇は景気回復の証拠。

エネルギー分野はここ数年間、経済の明るい部分の一つ。向こう数年間でエネルギー自活に接近との見方がある。

金利が急激に上昇した場合、財務省に国庫納付しない期間があり得る。

付利引き下げは有効な手段ではない。資金市場に弊害。


NY原油 再び93ドル台に上昇(01:57)

ドル円は買い戻し
91.80近辺まで戻している。一時91.15付近と前日安値に顔合わせしたものの、米株が堅調に推移しており、ダウ平均が14000ドルを伺う動きも見せていることから、ドル円をサポートしている模様。ただし、92円に接近すると戻り待ちの売りオーダーも厚く出るようだ。本邦勢のオーダーも並んでいる模様


NY株式 ダウ平均は一時14000ドル回復

:2013/02/28 (木) 01:15

NY株式27日(NY時間11:04)
ダウ平均   13994.01(+93.88 +0.68%)
ナスダック   3156.85(+27.21 +0.87%)

CME日経平均先物 11320(大証終比:+60 +0.53%)

欧州株式27日(GMT15:04)
英FT100  6316.80(+46.36 +0.74%)
独DAX  7662.65(+65.54 +0.86%)
仏CAC40  3666.99(+45.07 +1.24%)

米国債利回り(NY時間11:04)
2年債   0.238(-0.004)
10年債  1.867(-0.014)
30年債  3.060(-0.018)
期待インフレ率  2.520(+0.006)
*期待インフレ率は10年債で算出

各国10年債
ドイツ  1.439(-0.014)
英 国  1.943(-0.024)
カナダ  1.848(-0.012)
豪 州  3.336(-0.046)
日 本  0.670(-0.020)

NY原油・金
NY原油先物4 月限(WTI)(NY時間11:04)
1バレル=92.80(+0.17 +0.18%)
NY金先物4月限(COMEX)(NY時間11:04)
1オンス=1603.10(-12.40 -0.77%)


05. 2013年2月28日 20:51:04 : xEBOc6ttRg
米歳出強制削減、効果は見込みより小さい可能性
2013年 02月 28日 19:08 JST  
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日銀人事案、3月15日か18日までに結論=海江田民主代表

[ワシントン 28日 ロイター] 米国で3月1日に発動が予定される850億ドル規模の歳出強制削減措置では、短期的に強制削減が実施されるのは実際にはその半分の規模にも満たない。政府歳出プロセスの複雑さによるものだが、それでも景気に影響を与え、税収減や失業保険といったセーフティーネットのコスト上昇を招く可能性もある。

さらに、政府機関、特に国防総省は、契約破棄となればサプライヤーに違約金を支払うことになる。

こうした事情を合わせて考えると、実際の歳出削減効果は、予算タカ派が思い描くよりもかなり小さくなる可能性がありそうだ。

議会予算局(CBO)は今年の国内総生産(GDP)伸び率について、強制削減措置が発動されなければ2.0%、発動されれば1.4%に低下すると見込んでいる。

超党派政策センター(BPC)は発動により、2013年と2014年に雇用が100万人分失われるとの見通しを示している。

景気が減速すれば税収も落ち込む。連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が27日の議会証言で強調していた事実だ。

CBOは昨年、GDPの伸び率が0.1%ポイント低下すれば税収が10億ドル減少するとの試算を示した。

また、強制削減措置が発動されれば、別の形で政府の歳入に影響を与えかねない。

米内国歳入庁(IRS)は、態勢の縮小を余儀なくされ、脱税の取り締まり能力が低下することになるとの見通しを示している。
 
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1ドル90─100円が貿易赤字との関連でよい水準=JBIC総裁
2013年 02月 28日 16:03 JST
[東京 28日 ロイター] 国際協力銀行(JBIC)の奥田碩総裁(元トヨタ自動車(7203.T)会長)は28日の会見で、ドル/円が90─100円の間で推移すれば、足元で貿易赤字になっていることとの関連でも、よい水準であるとの見解を示した。

奥田総裁は、ここまで円安が進んできたが、直近ではイタリア総選挙の結果などを受け、相場水準が「ぶれている」と指摘。「できるだけ(為替相場は)安定してほしい。急激な変動は困る」と述べた。そのうえで「レベルについては、90円から100円の間、ここらあたりが貿易赤字の問題と絡んでよい数字だ」と指摘した。

また、自動車業界にとっても「90円から100円の水準で落ち着けば、自動車の輸出は増勢に転じる」との見通しを示した。自動車業界で一段と海外への生産シフトが進むかどうかについては、為替水準が変動すれば、対応が変わるとの認識を示したうえで「ある台数は、国内で生産することになるだろう。(現状の生産から)これ以上(生産台数が)増えるということであれば、プラスアルファ分は日本で生産して米国(などの輸出国)へもっていくことになるのではないか」と語った。

環太平洋連携協定(TPP)への参加問題では、個人的な見解であると断ったうえで「やらないと(日本は)国として沈没してしまう。交渉に参加すると期待しており、そうした決断をすることは非常によいことだ」と述べた。

TPPでは米国が自動車問題を提起しているが、どこに問題があるのか、との質問に対し、個人的に聞いている話と断ったうえで、米国に輸出する際には自動車、トラックともに関税が課せられており、撤廃ないし税率引き下げがあれば、日本にとってメリットがあるとした。また、軽自動車の制度が米国車を結果的に差別しているとの主張が米側にあると聞いていると指摘。交渉ではいろいろな対応方法があるとの見解を示し、「単に軽自動車の制度がまずいとしてつぶしたり、軽自動車自体をなくすということがないような対策が必要だ」との考え方を示した。

政府が次期日銀総裁候補として国会に提示したアジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁について、個人的には「若干知っている程度」と述べつつ、安倍晋三首相の推進するアベノミクスを実行するのに「マッチした人選」と評価。政府と日銀が連携して積極的な金融緩和策を実行してほしいとの見解を示した。同時にADBの後任総裁が引き続き、日本から選出されることが望ましいとの考えも示した。

(ロイター日本語ニュース 田巻 一彦;編集 内田 慎一)


 

政府が黒田日銀総裁と岩田・中曽副総裁を正式提示、野党に容認論も
2013年 02月 28日 20:19 JST
[東京 28日 ロイター] 政府は28日、衆参の議院運営委員会理事会に、次期日銀総裁として黒田東彦・アジア開発銀行(ADB)総裁、副総裁に岩田規久男・学習院大教授と中曽宏・日銀理事(国際関係統括)を候補者とする人事案を正式に提示した。

参院で多数を握る野党間で正副総裁の評価に違いは見られるものの、現状では可決の公算が高まっている。衆参両院は候補者からの所信聴取を来週中に行う方向で調整しており、それを踏まえて各党は最終的に賛否を決める。

現在の日銀正副総裁は3月19日にそろって退任する。黒田氏は白川方明総裁、岩田氏と中曽氏は西村清彦、山口広秀の両副総裁の後任となる。日銀正副総裁人事は衆参両院の承認が必要だが、順調に進めば、内閣の任命を経て同20日にも日銀新体制が発足する見通しだ。

<黒田総裁に民主は容認論優勢>

人事案の正式提示を受け、参院で多数を占める野党の対応が焦点となる。同院で第1会派を形成する民主党は、海江田万里代表が28日の会見で、日銀人事を「いたずらに長引かせることはしない。総裁の空白はつくらない」と発言。同党内では黒田氏と中曽氏を容認する考えが広がっているが、夕方に開いた財務金融部門会議では、前原誠司座長(ネクスト財務・金融担当大臣)ら役員に一任されることが決まった。同党では、同部門会議の意見を踏まえて「次の内閣」で賛否を決める予定だ。

一方、金融政策に過度に依存する経済政策運営を疑問視する声もあり、党内では岩田氏に異論を唱える向きもある。海江田代表も会見で、同氏が人事案提示前に安倍晋三首相からの打診に対して受諾する意思を報道陣に明らかにしたことを問題視。「大変ゆゆしきこと」と不快感を示した。もっとも、岩田氏には12議席を有するみんなの党など他の野党が賛成に回るとみられ、仮に民主党が反対しても僅差で同意されるとの見方が出ている。

甘利明経済再生担当相は28日の臨時閣議後の会見で、日銀正副総裁人事について「日本経済は一刻も停滞できない。与野党問わず、日本再生のために是非協力してもらいたい」と野党に協力を求めた。

<日銀新体制、大胆緩和が至上命題>

安倍首相肝入りの新体制は、日本経済の早期のデフレ脱却に向け、首相が掲げる「大胆な金融政策」の実行が至上命題となる。黒田氏は金融緩和に積極的で、元財務官として世界の金融界に幅広い人脈を持つ。為替を中心に市場にも精通しており、「市場との対話」や、世界への政策発信力が期待されている。

岩田氏はリフレ派の論客として知られ、2%の物価目標は金融政策だけで達成可能などと主張し、日銀法改正の必要性にも言及してきた。両氏とも、2%の物価目標は長くても2年程度で達成可能とみており、これまでの日銀の金融政策運営を消極的だと批判している。

中曽氏は、日本経済に金融システム不安が広がった1990年代後半に日銀の信用機構課長として対応に奔走。その後、金融市場局長と国際決済銀行(BIS)市場委員会議長を兼任するなど金融システム、市場取引、国際金融のいずれにも精通している。

黒田氏は、正式に次期日銀総裁候補となったことを踏まえ、3月18日にADB総裁を辞任する意向を表明した。ADBはこれまで歴代総裁を日本人が務めてきており、同ポストを他国に明け渡すような事態になれば、日本のアジアへの影響力の観点から国益に反するとの声もある。麻生太郎財務相は28日、黒田氏の辞任表明を受け、後任について「最適任の人物を、日本から速やかに推薦したい」とする談話を発表。ポスト維持に注力する考えを表明した。

<4月日銀会合で政策大転換の思惑>

日銀の最高意思決定機関である政策委員会は、総裁1人、副総裁2人、審議委員6人の計9人で構成されており、月に1─2回、定例開催している金融政策決定会合において当面の金融政策運営方針などを決定している。新体制下での初回の会合は4月3、4日に予定されており、市場では同日の会合で新機軸を含めた大胆な金融緩和策を打ち出すとの見方が強まっている。

(ロイターニュース 伊藤純夫 基太村真司 吉川裕子;編集 宮崎亜巳)


 


「黒田日銀総裁」案を提示、政府−安倍首相の異次元緩和を推進 (2) 
  2月28日(ブルームバーグ):日本政府は28日、黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁を日本銀行総裁に起用する人事案を国会に提示した。異次元の金融緩和を求める安倍晋三首相の意向が反映され、副総裁に岩田規久男学習院大学教授と中曽宏日銀理事を充てる案も示された。
衆参両院の議院運営委員会理事会が人事案についての資料を配布した。財務省の元財務官で円売り介入を手掛けた黒田氏(68)は、日銀の年内の追加金融緩和は正当化できるだろうなどと述べている。金融緩和による緩やかなインフレで景気立て直しを目指すリフレ派の岩田氏と日銀から内部昇格する中曽氏が黒田氏の脇を固める。
この人事案は国会で同意される見通しで、安倍首相が進める経済活性化策である金融・財政・成長戦略の3本の矢のうち、金融を担う日銀の体制が刷新されることになる。与党の自民・公明両党は過半数割れしている参院で野党の協力が必要だが、黒田、中曽両氏には民主党で容認論が出ており、岩田氏もみんなの党と新党改革が賛成する方針だ。
元経済財政相の竹中平蔵慶応大学教授は、黒田日銀総裁案について「長期にわたり適切でなかった金融政策が適正化される非常に大きなチャンスだ」と述べた。その上で「財務省出身者の中では異色で国際機関の長をやっていたのも大きい。国際的な発信力に期待している」などとブルームバーグ・ニュースのインタビューで27日語った。
採決日程は決まっていないが、衆院事務局の資料によると、国会同意人事案は1998年6月9日の衆院議運委理事会で「政府は議決が必要とされる時までに10日程度の余裕をもって内示するよう努める」との申し合わせがあるという。仮にこの規定を適用すれば本会議での採決は3月11日以降になる。
所信聴取
日銀の正副総裁の任期は5年。山口広秀、西村清彦両副総裁は3月19日に任期満了となる。白川方明総裁の任期は4月8日までだったが、副総裁と同時に辞職する意向を安倍首相に伝えている。
政府の人事案提示を受けて衆参両院の議院運営委員会は、黒田、岩田、中曽3氏の所信を聴取する。その上で両本会議に人事案が提出されて採決されることになる。民主党の渡辺周衆院議運委理事は記者団に対し、来週中に聴取を行う方向で、与野党が調整していることを明らかにした。民主党など野党側は十分な時間を確保し公開で聴取するよう求めているという。
民主党の海江田万里代表は記者会見で、政府提示の日銀人事への対応について「いたずらに長引かせることはしない」と述べた。その上で、党のガイドラインに照らして適任かどうか議論し、党幹部で構成する「次の内閣」で結論を出すとの方針を示した。いずれにしても3月15日か遅くても18日までに結論を出したいとの意向を明らかにした。3氏への論評は控えた。
無制限の金融緩和を、と黒田氏
黒田氏は1944年福岡県生まれ。67年東大卒、大蔵省(現財務省)入省、99年財務官、05年からアジア開発銀行総裁。1月11日に都内で行われた景気討論会では、日銀は物価上昇率が2%に達するまで無制限の金融緩和を行うべきだと主張している。
バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長も、米下院金融委員会での質疑応答で27日(米国時間)、日銀について「慎重過ぎた」と指摘、日本について「最も顕著な事実は、デフレに陥りかなり長期にわたり物価が下がっているということだ。これは金融政策が物価の安定性を達成できていないことを示唆する」と語った。
金融政策については日銀の木内登英審議委員が28日、横浜市内での講演で「必要に応じて追加的な緩和措置を果断に講じることを検討する」ことを含め、2%の物価目標の実現に向けた政策運営に「責任を持って取り組んでいく」と述べた。
岩田、中曽氏
岩田氏は42年大阪府生まれ。66年東大卒、98年学習院大教授。90年代前半に翁邦雄元日銀金融研究所長との間で、マネタリーベースなど量的指標の操作は可能だとして、操作できないという翁氏と「翁・岩田論争」を繰り広げた。過去に「インフレ目標付きの長期国債買い切りオペ増額」を提案するなどインフレターゲット導入論者の急先鋒でもある。
中曽氏は53年生まれ。78年に東大経済学部を卒業して日銀に入行。97、98年の金融危機当時に信用機構課長を務め金融システム問題に精通しているほか、英語も堪能で日銀有数の国際派でもある。08年11月に日銀金融市場局長から理事に就任した。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 広川高史 thirokawa@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/28 16:07 JST

 


木内日銀委員:「日銀券ルール」見直しも検討課題−年限長期化なら

  2月28日(ブルームバーグ):日本銀行の木内登英審議委員は28日午後、横浜市内で会見し、日銀が長期国債を買い入れる際の制約条件となっている日銀券ルールについて「見直していくことも検討課題になるかもしれない」と述べた。
木内氏は、資産買い入れ等基金で「仮に年限の長い国債を買っていくということになると、基金を通じた資産の買い入れと、輪番オペの境目が不明確になってしまうので、将来的には何らかの工夫が必要だ」と述べた。日銀は長期国債の買い入れに当たり、保有残高が日銀券発行残高を上回らないようにする、いわゆる「日銀券ルール」を設けている。
日銀は現在、日銀券の伸びに合わせて長めの資金を市場に供給するのを目的として月1.8兆円、年間21.6兆円の長期国債を買い入れている。「輪番オペ」と呼ばれるこの買い入れとは別に、資産買い入れ等基金において残存期間「1年以上、3年以下」の長期国債を購入しているが、これは日銀券ルールの例外扱いとしている。
19日公表された1月21、22日の金融政策決定会合の議事要旨によると、複数の委員がこれを「5年程度まで延長することも考えられる」と述べたことが分かった。
木内氏は日銀券ルールの見直しについて「正直言ってあまり差し迫った課題ではないように思うが、将来的には課題になってくる」と指摘。日銀券ルールは、日銀による長期国債の買い入れが「財政ファイナンスではないということを、ある意味で担保しているルールなので、そういった重要性にも配慮しながら、将来適当な時期に慎重に判断していきたい」と語った。
財政再建強化ならより多くの資産購入も
木内氏は講演で、@日銀の当座預金の超過準備に適用している0.1%の付利の引き下げや撤廃A資産買い入れ等基金における買い入れ対象国債の年限の長期化Bリスク性資産の買い入れ拡大−について「コストとベネフィットを慎重に見極めながら検討することが重要だ」と述べた。
会見では「政府が財政健全化という方針をより強化していくということであれば、日銀がより資産を買う余地が高まっていく、あるいは長めの年限の資産を買っても、財政ファイナンスと誤解されるリスクが低下していくという点からすると、政府との協調強化も、われわれが今後金融緩和を進めていく上では非常に重要だ」と語った。
木内氏は日銀が1月22日の金融政策決定会合で2%の物価安定目標の導入を決めた際、佐藤健裕審議委員とともに反対票を投じたが、2月の決定会合では「日銀は物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%としている」という文言が含まれた対外公表文に賛成した。
この理由について「2%の物価 目標の実現は容易ではないという考えに変わりはない」としながらも、「目標を導入したことが金融市場の期待に強く働き掛けたことは確かであり、金融市場に既に反映されたことを踏まえると、それは尊重すべきではないかと思った」と述べた。
拙速に物価押し上げはせず
さらに、「2%を掲げたものをまた1%に戻すということになると、政策に対する信認が損なわれるというマイナス面も大きいし、引き続き反対という姿勢を示した場合、どこかで2%の物価目標が覆るのではないかという見方が金融市場で広がると、われわれのデフレ脱却に向けた姿勢が弱いのではないか、政策効果が逆に弱まってしまうのではないかと考え、2%の物価安定目標に賛成した」と述べた。
木内氏は一方で、「2%は決して容易ではないし、非常に短期間で達成できるというよりは、相応の時間を要するのではないか。拙速に物価を目標値に近づけていくというのは、われわれが掲げている物価安定の目標ではない」と指摘。あくまで日銀が目指しているのは「物価と賃金、成長率がバランスよく高まっていくことだ」と述べた。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/02/28 16:49 JST

 

デフレ脱却の途上で油断はできない、日銀に全力投球を期待=経済再生相
2013年 02月 27日 20:06 JST
[東京 27日 ロイター] 甘利明経済再生・経済財政相は27日夕、月例経済報告関係閣僚会議後に会見し、2月の月例経済報告で先行きのリスク要因から「デフレの影響」を削除したことに関連し、日本経済はデフレ脱却の途上にあるが油断はできないとの認識を示した。

そのうえで、日銀には全力投球を期待するとし、日銀が金融緩和を続けていく間に実体経済を回復させることが理想だと述べた。

政府は2月の月例経済報告で景気は「一部に弱さが残るものの下げ止まっている」とし、2カ月連続で基調判断を上方修正した。先行きのリスク要因として引き続き海外経済の下振れや雇用・所得環境を挙げたが、2009年11月から明記してきた「デフレの影響」は予想インフレ率が上昇していることからリスク要因から削除した。

景気の現状認識について「明るい兆しになりつつある」と述べ、政権交代後に矢継ぎ早に政策を打ったことなどが功を奏したとした。

デフレ状況についても、「リスク要因」から削除して改善を示唆したが、「(デフレから)脱却しつつある途上で、全く油断はできない」とも語り、物価安定目標達成に向けた「日銀の全力投球」を期待した。

そのうえで、12年度補正予算の遅滞なき執行と13年度予算の早期成立、成長戦略の具体的な道筋を早期に打ち出していくことなどを通じて「期待値が実績につながっていくよう、さらなる努力を続ける」と政府としての決意を語った。

また、円安による輸入物価上昇の経済に与える影響に関しては「「為替のレベルについて言及するつもりはない。市場がバランスよく導いてくれることを期待しているだけだ」としたうえで、「(円安は)輸出にはプラスに働き、輸入にはマイナスに働く。プラスの影響が伸びるように輸出企業には頑張ってもらいたい」と述べ、「プラスの連鎖から、物価の上昇をはねのけるような給与の上昇」を期待するとともに、「日銀が金融緩和を続けていく間に、実体経済をしっかり回復させていくことが理想形だ」と金融緩和を起点とする好循環に期待を示した。

イタリアの政情不安による欧州債務危機再燃リスクに対しては「そうならないように、EU全体で努力されていくだろうし、世界各国が適切なアドバイスを送り続けるだろう」と述べた。

イタリアに対しては「財政再建の路線をしっかり堅持することはイタリア経済にとってプラスに働く。達成半ばで放棄すれば今までの苦労が無に帰してしまう。是非、財政健全化に引き続き取り組んでもらいたい」と注文を付けた。

(ロイターニュース 吉川 裕子;編集 宮崎亜巳)


 

アングル:ベルルスコーニ氏次第でユーロ再下落、くすぶる下値不安
2013年 02月 28日 20:09 JST
[東京 28日 ロイター] イタリアの政局混迷で急落したユーロは、思いのほか堅調だった同国国債入札でいったん持ち直した。しかし市場関係者は、新政権成立にあたってキーパーソンになるベルルスコーニ前首相の言動次第で、再び下落する事態になりかねないと身構えている。

ユーロ相場をサポートしてきた需給面やテクニカル面の要因にも変化が見られ、下値不安がくすぶる。

<「ザ・ベルルスコーニ」か「ニュー・ベルルスコーニ」か>

ユーロはイタリア総選挙を受けて急速に売られたが、総選挙後初となった27日のイタリア国債入札が堅調な需要を集めたことで持ち直した。しかし、りそな銀行・市場トレーディング室の尾股正寿シニアクライアントマネージャーは、再びユーロが急落するリスクがあると警戒。イタリアの中道右派連合を率いるベルルスコーニ前首相の一挙手一投足を注視する必要があると指摘する。

ベルルスコーニ前首相は、中道右派連合とベルサニ氏率いる中道左派連合との連携に前向きな姿勢を示し、政治空白は避けるべきとの姿勢を取っている。そのため、市場が「最悪のシナリオ」(欧州系銀行)と位置付ける再選挙のリスクが後退している。しかし、財政緊縮維持を掲げる中道左派連合と連立政権を樹立した場合に、同氏が反緊縮を主張して政権をかき回す事態にならないかが焦点となる。尾股氏は「『ザ・ベルルスコーニ』が顔をのぞかせるのか、ニューバージョンのベルルスコーニが顔をのぞかせるのかで分かれる」と話す。

28日のユーロは明確な方向感を見出せず、大手信託銀行の関係者は、しばらくは「出たとこ勝負で臨む」と語る。

<変わるユーロのサポート要因>

イタリア情勢以外に、今までユーロを支えてきた複数の要因が変容していることも見逃せない。

これまでユーロの調整局面では、アジア中銀や中東系などの市場参加者が大口で買ってくることが注目されてきた。しかし日本の大手銀関係者は、石油取引に絡んだ中東系のユーロ買いはコンスタントに期待できるものの、アジア中銀のユーロ買いは見込みにくいと指摘する。自国通貨の上昇を防ぐためにドル買い介入をするアジアの当局は、外貨準備を分散させるためにユーロ買いをすることが多いが、同関係者は「今はアジア通貨高にもなっていないし、アグレッシブに介入もしていないから、買い手としては消える」と話す。

テクニカル面を見てもユーロは下値不安がくすぶる。昨年11月以降のいわゆるアベノミクス相場で、ユーロ/円は20日移動平均線や25日移動平均線を割り込むことなく上昇を続けてきたが、2月21日に両線を明確に下抜けた。ユーロ/ドルも、昨年の7月安値(1.2042ドル)と11月安値(1.2661ドル)を結んだサポートラインが前週は1.32ドル付近に位置していたが、その後に割り込んで以降は同水準まで戻していない。外為どっとコム総研の川畑琢也研究員は、ユーロは対ドル、対円とも「下向きに目が向きやすいチャート形状になっている」と指摘する。

<ギリシャとイタリアは違う>

それでも、前年のギリシャ総選挙時のような混乱が再びマーケットで起きると警戒する向きは多くない。三井住友銀行・市場営業統括部の山下えつ子チーフ・エコノミストは、ギリシャとイタリアが置かれた立場の違いを指摘する。ギリシャは、当時すでに金融支援を受けていたがために、反緊縮財政派の躍進で支援継続をめぐる不透明感やユーロ離脱懸念を招いた。しかし、イタリアは金融支援を受けていない。

山下氏は、イタリアの国債利回りが上昇を継続すれば支援観測が高まりやすいものの、「イタリアの総選挙の結果だけを見て、またユーロ崩壊だとか、ギリシャの時のようになるとか、一足飛びにリスクをものすごく大きく見てゆくようなことはないのではないか」と話す。ギリシャはユーロ離脱懸念こそ高まったものの、結局離脱には至らなかった。こうした事実をマーケットは「学習してきた」と、山下氏は指摘する。「OMTがあることは大きい」――大手邦銀の関係者はこう話し、仮にイタリアの政局不安が一段と高まっても信用不安に発展する事態には至らないとみている。昨年、スペインの金融危機で欧州中央銀行(ECB)はOMT(新しい債券購入プログラム)を導入。国債を無制限に購入する方針を示したことで、スペインなど周辺国の国債利回りは顕著に低下し、OMTが発動されないまま信用不安は後退した。

<OMTが発動できないリスク>

もっとも、そのOMTが波乱要因になる可能性がある。イタリアの新政権が打ち出す財政政策によっては、国債利回りが上昇を続けてもOMTが発動されないリスクがあるためだ。OMTは国債利回りが上昇した国の国債を制限なく購入するものだが、前提条件として、当該国が財政緊縮プログラムを作成し、欧州当局の承認を受ける必要がある。「今のイタリアはそうした条件を満たせないのではないかという懸念で国債利回りが上がっている」と、大和総研の山崎加津子シニアエコノミストは言う。

(ロイターニュース 和田崇彦 編集:久保信博)


06. 2013年2月28日 21:13:42 : xEBOc6ttRg
「白川日銀」いったい何だったのか 築き上げた莫大な負の遺産
2013.2.28 11:08

 国会承認手続きが順調に行けば、3月20日には黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が誕生するが、新総裁に引き継がれるのは白川方明(まさあき)総裁が築き上げた莫大(ばくだい)な負の遺産である。いったい、「白川日銀」とは何だったのか。

 日銀生え抜きの理論家、白川氏は京都大学教授時代(2006年7月〜08年3月)を除き、独立日銀の政策決定に深く関わり、日銀が理想とするインフレ率ゼロ%以下を達成してきた。いわば白川氏は「15年デフレ」の立役者で、本人もそのことを矜持(きょうじ)としているフシがある。

 昨年秋、安倍晋三自民党総裁が登場して日銀への大胆な政策転換を求め始めたとき、白川総裁は「後世、日本の金融政策を振り返った歴史家は、1990年代後半以降の日本銀行の金融政策が如何(いか)に積極的であったか、大胆であったか、あるいは革新的であったかとみると思います」(11月20日の記者会見)と言い放ったのである。

 「積極的」を「消極的」、「大胆」を「臆病」、「革新」を「伝統」に置き換えれば白川氏は極めて正しい。2008年9月のリーマン・ショック後、日銀が包括緩和政策なるものを始めたのは実に2年余後の10年10月で、柱は小口の資産買い入れである。

 以来、外部から金融緩和圧力が高まるたびに小出し方式で追加緩和してきた。チリも積もれば山となる式で、ことし末には100兆円を突破する見通しだ。対照的にリーマン後、米連邦準備制度理事会(FRB)は資産を2倍、3倍と短期間で増やしてドル安、デフレ回避、株価回復に成功してきた。

 マーケット理論によれば円の対ドル相場の水準は、日銀資金発行残高をFRBのドル資金発行残高で割った値で落ち着く。09年秋、100兆円の日銀資金投入があれば、1ドル=100円が実勢レートになった計算になる。

 日銀は超円高を招き寄せた。小出し方式で国債を追加購入すると、外国の投機勢力は安心して国債を買うのでますます円高が進み、デフレ圧力が増す。消費者は物を買わず、企業は設備投資をしないので、景気は悪くなり、若者の就職難が起きる。

 日銀が積み上げた100兆円の資産は「黒田日銀」の足かせとなる。日銀のスタッフたちはすでに十分緩和していると言い張り、大規模な量的緩和論の「黒田総裁、岩田規久男副総裁」コンビを悩ますだろう。

 もう一つの難題は実質高金利に慣れきった金融界である。

 日銀は「事実上のゼロ金利政策」を標榜(ひょうぼう)しながら、金融機関が日銀に預ける超過準備に0・1%の金利を払っている。そればかりか、日銀はリーマン・ショック後、民間銀行の基準金利であるTIBOR(東京銀行間取引金利)が市場実勢金利を大幅に上回るのを知りながら、放置してきた。

 TIBORは住宅ローンや中小企業向け貸し出しの土台となる金利で、実体経済やわれわれの暮らしに影響する。銀行はこうして日銀の庇護(ひご)のもとに高めの金利で楽々と高収益を稼いできた。かれらを貸し出し増に駆り立てるためには、少なくても日銀当座預金の金利をマイナスにするのが当然だ。

 いきなり直面する壁は白川流理論で染まった政策審議委員たちである。日銀政策は総裁、副総裁2人と6人の審議委員で構成される政策委員会の多数決次第だが、総裁でも投票権は1票分しかない。委員たちは与(くみ)した政策の失敗を認め、新首脳陣に全面協力すべきだ。(編集委員 田村秀男)


 

【日銀総裁人事】新体制の追加緩和期待、株高後押し  
2013.2.28 20:51
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衆院本会議で財政演説する麻生太郎副総理・財務金融相=28日午後、国会・衆院本会議場(酒巻俊介撮影)【拡大】

 黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁を次期総裁に充てるなどの政府の日銀人事案が国会の同意を得られれば、20日に発足する黒田新体制は4月3、4日に開催される金融政策決定会合で積極的な緩和姿勢を打ち出すことが期待されている。

 イタリアの政局不安などで一時、調整色が強まっていた東京株式市場は、欧州経済への懸念が後退したことや金融緩和への期待感も重なり大幅に反発。日経平均株価の終値は前日比305円39銭高の1万1559円36銭となり、「株高の底流には日銀の追加緩和への期待があった」(大手証券)との声も聞かれた。

 市場は、積極的な金融緩和でデフレ脱却を目指す「リフレ派」の黒田氏と副総裁候補の岩田規久男氏が政府案通りに就任すれば、日銀の金融政策は資金供給のための資産買い入れのペースが確実に加速するとみる。

 政府も日銀批判のトーンを和らげている。麻生太郎財務相は28日の衆院予算委員会で、2%の物価上昇率目標の達成に関し、「日銀だけに押し付ければ甚だ偏る。(政府と日銀が)共同責任を負っていると思って、頑張っている」と発言。新体制が取り組むハードルへの配慮ともみられる。

 ただ、金融政策の変化は「リフレ派」の看板の印象に比べて静かなスタートを予想する向きもある。日銀の政策は、総裁・副総裁に6人の審議委員を加えた計9人の政策委員の多数決で決まるためだ。日銀内からも「執行部(総裁・副総裁)が変わったからといって、すぐに議論の流れが変わるものではない」との声が漏れる。日銀が打ち出す次の一手は、償還期間のより長い国債の買い入れなど、手堅い従来路線の拡充となる公算が大きい。


日銀総裁人事めぐる維新内紛 小沢氏が橋下氏に謝罪「揚げ足をとられ申し訳ない」

日銀総裁人事案、3月15日までに採決 杉本公取委長らは国会同意

日銀総裁人事、黒田氏に打診 首相、関係各方面と調整へ

日銀総裁人事 安倍首相、25日にも公明山口代表と協議

訪米後に人事案提示 日銀総裁人事で首相


 

【日銀総裁人事】「購入対象は何?」国会聴取に市場が注目
2013.2.28 20:55

 政府が28日に次期日銀正副総裁の人事案を提示したことを受け、次の焦点は4、5日に衆参両院で開かれる総裁候補の黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁、副総裁候補の岩田規久男学習院大教授と中曽宏日銀理事からの所信聴取に移る。安倍晋三政権とともに、前年比2%上昇を目指す物価目標の達成をどう実現するのか。市場は3人の発言に注目している。

 「何を購入対象にイメージしているかを具体的に知りたい」

 日銀の金融政策に詳しいSMBC日興証券金融経済調査部の岩下真理債券ストラテジストは、黒田氏に金融緩和策について踏み込んだ説明を期待する。

 日銀の緩和策を不十分と批判してきた黒田氏は「国内にまだ日銀が買うことができる金融資産は何百兆円もある」と述べていた。

 日銀では、資金供給のために購入する資産の対象を国債から、すでに上場投資信託(ETF)や社債、不動産投資信託(J-REIT)などのリスク資産まで広げている。

 日銀の選択肢としては、リスク資産の購入額をさらに増やす可能性がある。ただ、買い入れ額を増やし過ぎると市場の価格形成をゆがめるうえ、将来の価格が下落すれば日銀が大きな損失を被る恐れがあり、増額余地は限られるとの見方が大勢だ。

 このため、黒田氏の買い入れ余地の規模感の根拠をめぐり、「個別の現物株式などの購入も見据えたものなのか」「損失リスクへの備えはあるのか」など、市場の関心は高い。

 一方、「なぜ黒田氏や岩田氏が主張する積極緩和でデフレ脱却が実現できるのか。そもそものメカニズムを確かめてほしい」(JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミスト)との声もある。現在の白川方明総裁は「金融政策だけでデフレを脱却するのは困難」としていたからだ。

 また、「岩田氏から金融引き締めの話を聞いたことがない」(大手証券)との意見もあった。物価上昇局面で、いかに景気を冷やさずに利上げするのか、緩和の「出口戦略」の考えも注目されている。

 所信聴取後の質疑は非公開で、議事録の公表にとどまっているが、今回は野党内にオープンな人事案評価を求める声がある。質疑が公開されれば、市場の注目が一段と高まるのは確実だ。


 

機能マヒ寸前の米連邦政府(強制歳出削減)

小笠原 誠治 | 経済コラムニスト

2013年2月28日 11時59分 
最近、財政の崖という言葉を聞かなくなったと思いませんか?

昨年末頃まで、あんなに世界の関心を集めていた米国の財政の崖。あれ、どうなったのでしたっけ?

確か、決着したような、しないような‥

そうなのです、問題を先送りすることによって取り敢えず財政の崖が回避されたのでしたよね。

でも、問題を先送りしたということは、いつかまた問題がぶり返す。

明日はもう3月1日。そうなのです、明日までに米国議会が赤字削減について妥協ができない場合にはシクエスターが実施されてしまうのです。

Sequester !

Sequesterとは何か?

議会が赤字削減について妥協ができない場合には、どんな予算項目であろうとも一律に強制的に削減してしまうというのがSequesterであるのです。


例えば、貴方の給料が、何らかの理由によって10%カットされることになったとしましょう。

いきなり10%も給料が少なくなる訳ですから‥当然、節約が求められることになりますが、そんな場合、貴方は一体どうやって乗り切るでしょうか?

通常、そのような場合には、不要不急のものと、緊急度、或いは重要度が高いものを峻別して貴方は対処することになるでしょう。

つまり、例えばスーツの購入を予定していたとしても、当分スーツの購入はお預けにする、と。或いは、旅行を計画していた場合にも、旅行も当分見送る、と。その一方で、ローンの返済を滞ることはできない訳ですし、家賃の支払いも当然滞ることはできない、と。それから通勤のための交通費も削ることはできないし、食費も贅沢は控えるものの、基本的には切り詰めることは難しいでしょうう。

まあ、それが常識というものです。

だったら、アメリカの連邦政府も、幾ら歳出削減をする必要があっても、そのようにして不要不急のものと、そうでないものを区別して対応できればいいのですが‥この一律の強制歳出削減措置は、問答無用にどの項目も同じ率だけ削減してしまうのです。

平等でいいではないか、って?

でも、幾ら歳出を削減する必要があるからと言っても、どうしても支出する必要があるものもある訳です。

では、一律の強制削減の結果、どのようなことが起きるかと言えば‥

「数千人の教員が解雇され、数万人の親が保育所探しを強いられる。数十万人がインフルエンザ・ワクチン接種など予防医療が受けられなくなる」(オバマ大統領)他、航空管制官や沿岸警備隊、空港の保安担当官、国立公園の管理者、食肉検査官、連邦捜査局(FBI)捜査官は勤務時間が減らされる見通しだと言います。

これでは、大変困った事態になるのです。そうでしょ?

ところで、sequesterという単語の意味を、普通、「隠退させる」と理解している人が私も含め多いと思うのですが‥この場合には「差押え」とか「差し止め」を意味しているように思われます。

つまり、議会が赤字削減について合意に至らないために、その対抗手段として、本来支出される予定の予算の一定割合について予算の執行を差し止めてしまう、と。

真面目に赤字削減の方策を考えろ、と。それができなければ、一律に一部歳出を差し止めるぞと、そういうことのようなのです。

いずれにしても、何としてもそのような事態は回避すべきだと外国人の私でさえ思うのですが、では、オバマ大統領はどう考えているのかと言えば‥

以前と同じように歳出カットと富裕者層への増税で対応すべきだ、と。しかし、その一方で、共和党は、これまた以前と同じように、増税は絶対反対という態度を崩していないので、オバマ大統領は、これまた以前と同じで、有権者の皆さんから、政治家に対し妥協するようにお願いして欲しいと懇願するだけなのです。

もう残り時間も僅かになってきました‥なんて思っていると、「オバマ米大統領は歳出の強制削減が発動する3月1日に、議会指導者とホワイトハウスで会合を開く」なんてニュースが入ってきています。

どういうことでしょう? 3月1日だと手遅れでは?

誰だってそう思うのです。何故前日に会合を開いて打開策を見出そうとしないのか、と。

強制歳出削減は、もはや回避できないのでしょうか?

以上


イタリアの政治的混乱の根が深い理由(グリッロ氏こそキーマンだ!)
 今回、市場に旋風を巻き起こしたのは、ご承知のとおりイタリアの総選挙の結果なのです。そうなのです、緊縮財政を進めるモンティ首相に対する支持がさっぱりで、1年ほど前に辞めたばかりのあのベルルスコーニ氏がI am back 状態になり、日本でも再び注目されているのです。

 では、今後のイタリアの政治動向はベルルスコーニ氏にかかっているのか?

 しかし、そう考えたら大間違い。

 何故ならば、今回の選挙ではグリッロ氏の「5つ星運動」が躍進し、下院でも単独の勢力としては最大政党になる見通しだからです。

 ということで、今回の総選挙は、「5つ星運動が真の勝者だ」との声が上っているのです。

 では、その5つ星運動のグリッロ氏とは何者なのか?

 元コメディアンと紹介されていますが‥

 (写真は、グリッロ氏のブログより)

 ベッペ・グリッロ氏。今回のイタリアの総選挙で大躍進を成し遂げた5つ星運動の創始者。

 1948年7月21日生まれの64歳。子供5人。会計士として学位を受けたが、偶々お笑いのオーディションを受け、コメディアンになった、と。

 1970年代の終わり頃から頭角を現し、1980年代には大変な人気を博するようになった、と。

 ただ、彼の芸風は政治家の風刺にあり、政治家の腐敗を題材にすることが多かったと言います。そして、政治家を余りにも攻撃したために、テレビカメラの前に立つことが少なくなり、舞台での公演が多くなったのだ、と。

 2007年9月8日、彼は「Vデーのお祝い」という運動を組織化します。

 VデーのVには、腐敗した政治家は「とっとと失せろ!」という意味があるらしく、彼は、この運動行進の最中に数十名の腐敗した政治家の名前を連呼したと言われています。

 いずれにしても彼は、ネットでの呼びかけによって2百万人以上のイタリア人を動員することに成功したというのです。

 このVデーの運動は1回で終わることはなく、翌2008年4月25日にも同様のデモ行進が行われ、今度は、政府から様々な恩恵を受けていた新聞社が批判の対象にされたというのです。

 そして、その後も様々な機会を通じて政治の浄化のための訴えを続け‥2010年、5つ星運動を開始したというのです。但し、自らはそのリーダーとなることはなく、ただ、ネットを通じてイタリアの人々に清潔さと民主主義を訴えるだけだ、と。

 彼の考えによれば、政治家は国民の奉仕者であって、暫しの間、国のために働くのが政治家の役目だ、といいます。
 
 そして、そのような運動が勢いを増し、政党へと変身することになった、と。

 なお、彼は、犯罪歴のある者はリーダーになるべきではないとの考え方であるのですが‥それゆえ、自分がリーダーになる道を閉ざしてもいるのです。何故かと言えば、1980年に彼は交通事故を起こして、3人を死に至らしめているからだ、と。
 
 グリッロ氏は、今回の選挙結果が明らかになった後、記者会見で次のように語っています。

  We're bringing honest people into parliament who will have a positive effect. They will be like a virus that will make honesty fashionable again.

 「我々は、議会によい影響を与える正直な人々を送り込む。彼らは、ウイルスのようなもので、正直さを流行らせるであろう。」

 グリッロ氏の率いる5つ星運動は、元々生活のために必要なモノやサービスを無料にすることを求めていると言われます。つまり、水道料金は無料にする。教育も無料とする。医療費も無料とする、と。そして、今回の選挙においては、次のようなことを要求していると言われます。

 ・緊縮策を止めさせる。
 ・増税を止めさせる。
 ・ユーロ圏に残るかどうかの国民投票を行う。

 グリッド氏を単なるコメディアンであると考えたら、それは大きな間違いを犯すことになるでしょう。こうした経歴からみて分かるように、本職はコメディアンであっても、彼は筋金入りの政治改革者でもあるからです。

 但し、恐らく彼は国際金融の知識などは殆どないのではないでしょうか? そして、それはまた、大多数のイタリアの国民も同じ。だから、大衆は、国際経済の舞台で支持されているモンティ首相のことをどうしても理解することができないのです。モンティ首相が言っていることよりも、グリッロ氏が言っていることの方が正しく聞こえる、と。

 しかし、その辺りにイタリアの事態の深刻さが隠されているのです。

 イタリアの債務問題の原因は、当然のことながらイタリア政府の借金が多すぎるからです。

 従って、債務問題を解決するためには借金を減らす努力が必要となり、その結果、緊縮財政と増税が実行されることになるのです。

 しかし、国民からみたら、何故自分たちだけが犠牲を負わなければいけないのかという不満が募るのです。

 一方、政治家を始めとするエリート階級は、腐敗や脱税などやりたい放題ではないかという意識が国民の間に渦巻いています。

 だとすれば、どうしても政治の浄化を進めないことには、このまま緊縮措置を継続することは国民的理解が得られない、と。

 それが、今回の選挙結果に表れているということではないでしょうか?

 もちろん、ユーロ圏に属するドイツやフランスなどは、危機の封じ込めのために、イタリアが早く連立を組むなりして緊縮措置を続行することを望んでいる訳ですが‥

 腐敗を徹底的に洗い出さないことには、国民が納得する筈がないのです。

 さればとて、本当に腐敗が一掃されるようなことが期待できるかと言えば‥そう簡単にイタリアの体質が変わるとも思えないのです。

 腐敗を正そうとするグリッロ氏の支持率が高ければ高いほど、イタリアの混乱は続くと思われるのです。なんとも皮肉な話です。

小笠原 誠治
経済コラムニスト
1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。以降、経済コラムニストとして活躍。


07. 2013年3月01日 16:30:47 : OKlGuvUQDE
米歳出一律削減の危険
2013年2月28日  田中 宇

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 米国は3月1日、連邦政府の全分野における一律的な歳出削減を開始する。米政府の財政赤字は2001年の911以後、テロ戦争を口実にしたブッシュ政権の財政の大盤振る舞いによって増え続け、08年のリーマン危機後に公的資金で景気テコ入れ策をやったため、赤字増に拍車がかかった。当時、オバマ大統領と米議会は赤字削減の必要性で合意したものの、どの分野の歳出を削るかで対立を解消できないまま交渉期限の11年夏がすぎ、11年8月にS&Pが米国債を格下げした。(米財政赤字の何が問題か)

 米2大政党は財政再建議論を仕切り直すことにしたが、民主党は防衛費削減に積極的で社会保障費削減に反対、共和党は逆に社会保障費削減に積極的で防衛費削減に反対で、2大政党間の対立が解けないまま議論が平行線をたどりそうだった。そこで両党は、12年末(昨年末)までに議論に結論を出せない場合、罰則として13年(今年)1月に全分野の一律削減策(財政の崖)を自動的に発動し、10年間で1・2兆ドルを強制的に歳出削減する条項を制定したうえで緊縮議論を開始した。(当時、罰則条項を発案した大統領府の予算担当者だったジャック・ルーは、近く財務長官に就任する)(What Is Sequestration and What Does It Mean for Me?)

 結局、その後も2大政党は財政議論で対立を解消できず、平行線のままだった。一律削減の自動的な開始を目前にした昨年末、米議会は、一律削減策の発動を2カ月延期する法律を可決し、削減の開始を3月1日に延期して議論を継続することにした。しかし、その後も議論は進展せず、削減発動の再延期も決めず、3月1日に予定通り初年度分として850億ドルの一律削減策が発動されることになった。(◆終わらない米国の財政騒動)

 米国には「これまで何回も一律削減が発動されると言われ、そのたびに土壇場で発動が延期されてきた。今回もまた延期だろう」と高をくくった見方がある。だが今回は土壇場になっても何の回避策も出てこない。削減は発動されると有力議員が言っている。今回は発動が決定的だ。(Sequestration Cuts Draw Yawns From Americans As March 1 Looms)

 歳出一律削減の罰則を定めた11年の米財政管理法は、米連邦政府のすべての事業、すべての分野について、例外なく一律に支出を削減することを命じている。米国の行政は、連邦政府が運営している部門、連邦政府から渡された資金で地方政府(州や市など)が運営している部門、地方政府が独自に運営している部門が混在しており、今回は連邦政府の歳出削減だ。部門ごとに財政状況が異なるので、一律削減の影響がどこにどんな風に出るか、全体像がつかみにくい。(California braces for impending cuts from federal sequestration)

 公務員の解雇や一時帰休、ゴミ回収頻度の低下、空港の荷物検査の行列の長さの倍増、失業手当の減額などが予想されると報じられている。連邦政府からもらう資金に頼る傾向が強いワシントンDCやハワイ、アラスカは、一律削減の悪影響が大きく、州独自の歳入が多いニューヨークやミネソタは悪影響が小さいと言われている。(Washington nerves jangle at sequestration)

 米国では貧富格差が拡大し続け、中産階級が失業して貧困層に没落する流れだが、一般に、貧しい人々ほど公的資金による扶助に頼って生活する度合いが増す。歳出削減は、貧困層にとって最も厳しい悪影響をもたらす。今後貧困層が増える一方で、歳出削減で公的扶助が減っていくと、貧困層の不満が拡大し、銃器を使った犯罪や反政府決起などが広がるかもしれない。オバマ政権は数カ月前から銃規制強化に熱心だが、それは歳出削減に象徴される財政難による状況悪化を先取りする意味があったのかもしれない。(Sequestration threatens local airports, public schools)

 米司法省は、すぐにでもテロをやりそうな者がいたら逮捕せず射殺してかまわないとする政策を持っているが、この条項の「すぐにでも」を構成する要件を従来より緩和する新たな運用規則を決めた。不満を持つ米国民が増えそうなので、反抗的な米国民を射殺できる態勢を作りたい感じだ。この件が当局自らの発表でなく、メディアへのリークによって暴露された点も重要だ。(Leaked Justice Department Memo Reveals Legal Case for Targeted Killings of US Citizens)

 一律削減は、米経済の成長を0・4−0・6%減速させると予測されている。成長鈍化は、株価など金融市場に悪影響を与えるはずだが、米国の株価は年初来、上昇傾向を続けている。これを見て「一律削減は米経済にほとんど悪影響を及ぼさない」といった分析が出回っている。(Markets Shrug Off Sequestration)

 しかし、リーマン危機後の米金融市場を上向かせている最大の要因は、米連銀が量的緩和策で意図的に金あまり状態を作り出し、資金が株や債券に流れ込むよう仕向けている錬金術的な策だ。実体経済の動きは、金融市場にあまり影響を与えなくなっている。リーマン危機後、米国の実体経済は、政府の景気テコ入れ策(歳出増)に支えられてきた。歳出一律削減は米国民の消費を減退させ、米経済の大事な支えを減らす。一律削減は、米経済を悪化させる。しかし、それは株価に反映されず、金融マスコミは「一律削減の米経済への影響は軽微」「米経済は引き続き回復基調」と報じ続けるだろう。

▼軍事費削減がもたらす米国の戦略転換

 政治面で、一律削減の影響が最も出そうなのは、軍事費(防衛費)の策減だ。一律削減策は、軍事費が半分、他の分野(主に社会保障費)が残りの半分となっており、軍事費は10年で6千億ドル削られる(共和党が軍事費減に反対し、民主党が社会保障費減に反対するので、両者半額ずつの喧嘩両成敗的な罰則の一律削減になっている)。国防総省は人件費を削るため、制服組以外の80万人の文民職員に対し、毎週1日ずつ無給の自宅待機をとらせる制度を5カ月間続けることを決めている。(800,000 Pentagon staff face unpaid leave)

 国防総省を動かす軍産複合体にとって重要なのは、職員の給与よりも軍事産業に対する発注だが、その分野の削減も大きい。一律削減を前に、今年1月の防衛機器の発注額は、前年同月の70%減と急減している。米国の軍事費は911以降急増しており、一律削減で支出を減らしても、軍事費が6年前の07年の水準に戻るにすぎない。だから大したことないと言われているが、発注額7割減の状況を見ると、軍事産業に対する悪影響が意外に大きいともいえる。(US spending cut fears hit aircraft orders)

 米政界では1950年代から軍産複合体の力が強く、これまで多くの政権が軍事費削減をめざしたが成功せず、逆に冷戦やテロ戦争のように、世界的な対立を煽って軍事費を急増させる計略が連発されてきた。米国の議員らの間では「軍事費を削るには、弊害を承知で、自動発動される一律削減に頼るしかなかった」という見方が強い。(What Congress Could - But Won't - Do on Sequestration)

 米国では今後、軍事費の削減だけでなく、軍事費削減を理由とした、世界からの軍事的・政治的な撤退が強まりそうだ。国際問題を軍事でなく外交で解決すべきだと主張し、オバマから次期次期国防長官に指名されたチャック・ヘーゲル元上院議員が、2月27日に米上院でようやく人事承認された。軍産複合体やイスラエル右派系の議員らがヘーゲルの国防長官就任に強く反対したが、就任を阻止できなかった。この件と、3月1日からの軍事費を含む一律削減策を合わせて考えると、今後米国が進みそうな方向が見えてくる。(U.S. Senate confirms Chuck Hagel as defense secretary)

 2月27日、中央アジアのカザフスタンで開かれていた米英仏中露独(P5+1)とイランとの核問題協議で、米国側は、これまで「フォルド核施設を破棄し、濃縮したウランを引き渡せば、経済制裁を解いてやる」と言って、イラン側から拒否されていた状態から譲歩し「フォルド核施設を破棄しなくても、施設内のウラン濃縮工程を停止すれば、経済制裁を解いてやる。濃縮したウランもイラン側が持っていて良い」という、かなり甘い新条件を出した。(World powers present Iran with new proposal that would ease sanctions without closing Fordo)

 イラン核問題はこれまで紆余曲折あったので、今回も甘い新提案が出たからといって問題が解決していくとは限らない。だが今回、これまで考えられなかった展開であるのは確かだ。今回の展開を見て、イランの台頭を誰よりも脅威と考えているイスラエル政府が「イラン問題を解決するのは、もはや軍事しかない(制裁や外交でのイラン潰しが期待できない)」と言い出している点も、問題が外交交渉で解決するのでないかと感じさせる。もし今後イラン問題が解決していくとしたら、米国の軍事費削減、ヘーゲルの国防長官就任、アフガニスタン(イランの隣国)からの米欧軍の撤退などと合わせ、軍事重視が退潮し、外交重視に世界が転換していきそうな流れである。(Netanyahu after Kazakhstan nuclear talks: Only military sanctions will stop Iran)

 韓国では、北朝鮮と敵対でなく交渉していきたい朴槿恵が大統領に就任した。米国側は「朴槿恵が北朝鮮を封じ込めたいなら米国はそれを支持するし、北朝鮮と交渉したいなら米国も一緒に交渉する」という姿勢だと、米国の北朝鮮政策立案に関与してきた元高官のビクトル・チャが発言している。朴槿恵は、封じ込めでなく交渉の北朝鮮政策をやりたいと選挙期間中から言っている。米国はそれに反対しないということだ。ここでも米国が、軍事から外交主導に転換している観がある。(South Korea's 1st female president takes office, but few other women in administration so far)

 朴槿恵は、韓国の通商政策を担当する役所を、約10年ぶりに、外務省から通産省に戻した。韓国で、外務省は対米従属色が強く、米国の言いなりで米韓FTAを進めたが、通産省は自国産業を保護する姿勢が強く、米国の言いなりを嫌う。米韓FTAは今後、うまくいかなくなるだろう。朴槿恵は、それを承知で通商担当を通産省に戻したのだろうから、対米従属を嫌っていることになる。WSJ紙が朴槿恵を非難している。朴槿恵は、韓国を対米従属から離脱させ、中国など東アジア共同体を重視するつもりだろう。(Seoul's Bureaucracies Have Consequences)

 韓国と北朝鮮、米国と北朝鮮が対話を開始したら中国が6カ国協議を再開するのが、一昨年から米中が決めていたシナリオだ。米国が外交上で中国に頼る傾向も強まりそうだ。北朝鮮は、このような展開をすでに察知し、自国の立場を先取りして強化するために核実験を挙行したのだろう。北朝鮮問題も紆余曲折あったので、一筋縄で解決しないだろうが、敵対から和解に動きそうな兆候があるのは確かだ。(UN bid to probe N Korea worries Seoul)

 米国が、軍事費削減や、世界に対する支配的な関与の減少に動いていくとしたら、米国は在日米軍を重視せず撤退方向に動いていくだろう。世界のことを米国でなく各地の地元の国々が決定するのが、米国のめざす着地点になる。この方向性は、日米同盟だけを重視する対米従属の姿勢をとり続けている日本の方向性と正反対だ。(Who Has Abe's Back?)

 先日の安倍首相の米国訪問で、日本側は、安倍とオバマの間でいかに話が合致したか、意気投合したかを強調する報道が出回っているが、米国側では、オバマが、安倍に晩餐会でなく昼食会しかもてなさず、尖閣問題で日本の肩を持つ表明も回避したことが指摘されている。オバマは、世界のことをできるだけ世界に任せて自国の負担を減らしたいのに、日本は、できるだけ米国の傘下にいようとすり寄り、米国から乳離れした「大人の国」になることを拒否している。オバマが安倍を歓迎しきれなかったとしたら、その理由は日本の対米従属にある。私は、早く自分の国が幼稚な姿勢を卒業し、すてきな大人の国になってほしいと切に思う。(Shenzo Abe Does D.C.)

http://tanakanews.com/130228sequester.htm


08. 2013年3月01日 22:18:08 : xEBOc6ttRg
コラム:終焉しつつある「緊縮の時代」=カレツキー氏
2013年 03月 1日 16:55

コラム:侮れない円安効果、金融緩和の真の威力=嶋津洋樹氏
コラム:ユーロ圏再び混乱、イタリア人は「正気か」
コラム:米国の「日本化」が望ましい理由
コラム:早くも正念場を迎えるアベノミクス=斉藤洋二氏
By Anatole Kaletsky

大きな声では言えないが、緊縮財政の時代は終わりつつある。今週こんなことを言うのは奇妙に聞こえるかもしれない。米国では歳出の強制削減の発動が迫り、欧州ではイタリアの総選挙を受けて財政危機が再燃しつつある。加えて、英国債が格下げされ、キャメロン首相は「財政再建を速やかに推し進めていく」と約束した。しかし、政治は時に、現実とは逆を映し出す「鏡の国」でもあるのだ。

米国では3月1日に強制削減が発動された場合、国民の反応は今後徐々に明らかになるだろう。しかし、イタリアと英国など欧州で今週起きた出来事は、歳出削減や増税による財政赤字の削減努力が、政治的には自殺行為で、経済的にも逆効果だと政治家および有権者に思わせたはずだ。

イタリアをはじめユーロ圏では、こうした変化は今やほぼ確実に起きている。有権者の過半数が反緊縮を掲げる勢力に投票した今、イタリアでは一段の予算削減や雇用改革の推進はもはや見込めないだろう。もしドイツのメルケル首相が、イタリア支援の条件としてさらなる予算削減や増税、雇用改革を求めても、イタリアの有権者の大半は「もうたくさんだ」という明確な答えを出したのだ。多くのイタリア国民はむしろ、これ以上緊縮策を受け入れるよりは、ユーロ圏から離脱する方がいいと考えている。そして、もし実際にイタリアが離脱するなら、必然的に統一通貨としてのユーロは完全に崩壊する。

メルケル首相は、このことをよく理解しているはずだ。9月22日に行われる自国の総選挙前にユーロの壊滅的危機が起こるの回避しようと心に決めているからこそ、反緊縮に「ノー」を突き付けたイタリアの有権者にも存分な注意を払っているのだ。

今後、欧州中央銀行(ECB)は厳しい前提条件抜きでイタリアに支援を提供せざるを得なくなるだろう。実際のところ、現実的にイタリアが守れると唯一期待できる約束は、現行の税制度とモンティ前首相の下で制定された改革法を維持することだけだ。

一方で欧州委員会は、財政のゴールをイタリア寄りに動かすことができる。いったんイタリアで前例を認めてしまえば、それはユーロ圏全体に広がるはずで、そうなればECBは、メルケル首相とドイツ有権者が目をつぶっている間に、全てのユーロ圏メンバーにも事実上無条件での財政支援を提供できるようになる。

一方、英国に目を向けると、22日のムーディーズによる格下げは、2つの際立った方法で緊縮策の緩和につながる可能性がある。第1に、格下げにより、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)と英財務省が長らく望んでいたように、ポンド安傾向が続くだろう。製造業と輸出を押し上げるためには、これは助けとなる。さらに重要なのは、格下げが英国の政治と経済政策に改革を促すであろうことだ。

2010年の選挙以降にポンドが上昇していた主な理由は、ユーロ圏が混乱に陥る中、英国が財政的・政治的に安定した安全な避難場所と見られていたからだ。その結果、逃避資本が大量にポンドへと流れ込んだ。格下げはこの流れを自動的に覆すものではないが、多くの外国人投資家が最近まで無視していた英国の政治と政策には注目が集まることになる。他の欧州各国の政治的・財政的状況が比較的安定へと向かいつつある中、英国は政治的にも、財政的にも、金融的にも、乱気流に突入しつつある。

次の総選挙まであと2年しかないが、英国経済に持続的回復の兆しはほとんど見られず、国民の生活水準は落ち込み、政府は財政赤字の削減目標を達成していない。他の格付け会社もムーディーズに追随するとみられ、英国の有権者はこうした失敗を繰り返し思い起こされることになる。連立政権を組む保守党と自由民主党は、財政赤字削減ぐらいでしか政策の一致はみられず、政権は崩壊寸前に追い込まれるかもしれない。

選挙が近づいていることに加え、英中銀の新総裁が急進的な考えの持ち主であることも大きな期待となり、緊縮策からの政策転換は2013年後半にも実施されるとみられていた。

英国債がトリプルAから格下げされるとの懸念が、180度の政策転換を妨げる大きな要因となっていたが、先週その信仰は打ち砕かれた。今となっては、キャメロン首相が政治的のは自殺行為で経済的には逆効果な政策に固執する理由はかつてないほど薄らいでいる。

欧州だけでなく、米国、日本、中国など世界中でそうした認識が通用しつつある。今すぐにとはいかないかもしれないが、緊縮財政策の時代は間もなく終焉するだろう。

(28日 ロイター)

*アナトール・カレツキー氏は受賞歴のあるジャーナリスト兼金融エコノミスト。1976年から英エコノミスト誌、英フィナンシャル・タイムズ紙、英タイムズ紙などで執筆した後、ロイターに所属した。2008年の世界金融危機を経たグローバルな資本主義の変革に関する近著「資本主義4.0」は、BBCの「サミュエル・ジョンソン賞」候補となり、中国語、韓国語、ドイツ語、ポルトガル語に翻訳された。世界の投資機関800社に投資分析を提供する香港のグループ、GaveKal Dragonomicsのチーフエコノミストも務める。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。
 

 
コラム:侮れない円安効果、金融緩和の真の威力=嶋津洋樹氏
2013年 03月 1日 19:31 JST
嶋津洋樹 SMBC日興証券 債券ストラテジスト(2013年3月1日)

日銀の金融緩和策について、物価や景気への影響は皆無か、あっても限られるとの見方が国内では根強い。しかし現実には、為替相場など金融市場を通じた影響は無視できない。本気で景気回復とデフレからの脱却を望むのであれば、その力を使わない手はないだろう。

金融政策とは国家の通貨発行権を中央銀行が独占的に行使することで果たす様々な役割や機能の総称だと、筆者は認識している。中央銀行が一般的に「物価の安定」に加え、「金融システムの安定」にも責任を負わされているのは、そのどちらもが主に通貨の需給を調整することで対処が可能だからである。

たとえば、リンゴが1つしかない世界に1万円という通貨(概念)を導入すると、リンゴと1万円を交換することが可能となる。そうした世界で中央銀行が新たに1万円の通貨を供給すると、通貨に対するリンゴの希少性が相対的に増し、2万円という値段で取引されるはずだ。この単純な世界では、金融政策がインフレ、デフレを引き起こすという仕組みに疑問の余地はない。

また、リンゴに1万円と値段をつけることで、他の「財」、たとえばミカンと価格を比較することが可能にもなる。さらに、通貨はリンゴやミカンのように腐らず、保管コストも安い。こうした通貨の役割(決済機能・計算機能・保蔵機能)が確立すると、リンゴやミカンという具体的な「財」だけでなく、通貨そのものにも価値が生じる。

1997年の日本の金融危機の最中や2008年のリーマンショック後に、通貨の最も原始的な形態といえる現金が重宝されたことは、通貨の重要性を改めて浮き彫りにした。その際、各国の中央銀行は大量の資金供給で対応し、「金融システムの安定」に努めた。資金供給を金融緩和の一環ととらえると、中央銀行が景気悪化に伴うデフレ圧力の封じ込めに先手を打ったと解釈できる。

このように考えると、金融政策は直接的に実体経済に影響を与えることではなく、純粋に物価へ働きかけることを期待されているといえるだろう。実際、上述したリンゴの世界で金融緩和策がもたらしたのは、リンゴと通貨の相対的な価格の変化だけで、リンゴの数ではなかった。リンゴで分かりにくければ、自動車をイメージすると良い。金融緩和策は、それ自体が自動車の生産を増やすわけではない。

もっとも、自動車の価格が上昇すれば、企業は本来、増産することで収益を増やそうとするはずだ。もちろん、自動車の増産は中央銀行が通貨の供給量を2倍に増やすことほど簡単ではないので、短期的には増産ペースが通貨の供給量に追いつかず、自動車の通貨に対する希少性が高まる。その間、価格には上昇圧力がかかるだろう。

一方、価格の上昇を見越し、購入を急ぐ消費者が登場するかもしれない。ただし、実際に価格を変更するには、新たなパンフレットの作成など手間暇がかかる。通貨の供給量が増加し、価格に上昇圧力がかかっても、実際の価格変更まではタイムラグが生じる。この間の価格は、消費者から割安にみえるため、需要を刺激すると考えられる。

<「構造改革」は本当に王道か>

ただし、デフレ期待が定着した今の日本では確かに、金融緩和の効果はこの理屈通りには期待しにくい。なぜなら金融仲介機能が低下している日本では、金融緩和策を実施しても、日銀の当座預金の残高が増加するだけで、市中に供給される通貨はそれほど増加しないからだ。また、企業が自動車などの「財」の供給能力を十分に備えているため、つまり供給過多の状態にあるがゆえに、通貨の供給量が増える前に増産が可能なことも想定される。そうしたなかで、販売価格の上昇を見越す消費者はいないだろう。

しかし、金融市場を通じた影響は、実はこの限りではない。上述した例で、リンゴや自動車を米ドルなどの他国通貨や株式、債券などと置き換えてみると分かりやすい。つまり、金融緩和策は米ドルなどの他国通貨を上昇させ(円は相対的に下落)、株高・債券高(金利低下)をもたらす。金融市場が期待や思惑に振らされ、オーバーシュートしやすいことを踏まえると、それらの価格は中央銀行が実際に供給する通貨量を上回って変動するだろう。金融政策の「財」の価格変動を通じた直接的な景気への効果は限られたとしても、為替や株価、金利を通じた間接的な効果にはかなり期待できる。前置きが長くなったが、今回のコラムで筆者が主張したい点はここにある。

特に金融政策の為替相場を通じた実体経済への影響は、日本が輸出主導の経済モデルで、世界最大の対外純資産を抱えていることもあり、金利低下による景気刺激効果や株高に伴う資産効果などを上回ると考えられる。

実際、円安はまず外貨建て売上高などのフローのみならず、海外資産というストックでも評価益を生み出すはずだ。それは本業の収益ではないが、研究開発費や販促費の増額を通じ、競争力を底上げする可能性がある。海外に進出した企業の財務的な負担を軽減できれば、設備投資や雇用などの前向きな投資も出やすい。企業が利益をボーナスなどで家計に還元した場合、個人消費を通じて内需にも追い風となる。

円安は輸出競争力を改善させるため、評価益の計上が一服するころには販売数量が増加し始める可能性が高い。それは損益分岐点の低下によって企業収益を大きく押し上げるはずだ。稼働率が上昇することで能力増強投資に火がつけば、本格的な景気回復も視野に入る。

筆者は今回の国内景気について、1993年11月から97年5月までの43カ月、2002年2月から08年2月までの73カ月に及んだ景気拡張期と同様、円安に支えられて息の長い回復になると予想している。日銀が積極的な金融緩和策を続けるのであれば、賃金を含む物価がプラスに転じ、デフレを脱却することも可能だろう。

もちろん、欧米の政治的混乱や中東、東アジアでの地政学的リスクの高まりなど、景気回復が腰折れするリスクは小さくない。実際、99年には円安が進むなかで国内景気の回復基調が鮮明となったが、その後米国でITバブルが崩壊し、同時多発攻撃が重なったことで、景気の拡張期間は22カ月と前後の景気循環に比べ短かった。

こうした過去もあってか、冒頭で述べた通り、日本では、金融政策の効果を限定的と見る人が多い。また、金融市場に対し漠然と「悪い」イメージが先行している。それを利用した景気回復を「邪道」として敬遠する一方、構造改革による景気回復を「王道」と前向きに評価しがちだ。しかし、構造改革が実を結ぶまでには時間がかかる。すでに10年以上の歳月を失った日本に「待つ」時間は多くないだろう。

そもそも、構造改革を本当に「王道」と呼べるかも怪しい。少なくとも企業レベルではバブル崩壊以降も毎年のように構造改革ともいえる様々な努力を繰り返してきたはずだ。依然として課題が残っているとはいえ、日本がデフレに苦しむ原因を金融政策ではなく、構造改革の不十分さに求めることは妥当とは思えない。構造改革は重要だが、それは景気が回復し、デフレから脱却してから取り組む「三本目の矢」であり、「一本目の矢」ではない。

*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントを経て2010年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネージャーとして、日米欧の経済、金融市場の分析に携わる。


 

アングル:CPIは目先下落幅拡大へ、日銀新体制の緩和促す
2013年 03月 1日 16:27 
[東京 1日 ロイター] 1月消費者物価指数(コアCPI)は、円安による輸入物価上昇やエネルギー価格上昇にもかかわらず、引き続きデフレ状況が改善していないことを示した。この先3、4月にかけて下落幅は一層拡大する見通しとなっており、専門家からは、発足直後の日銀新体制に金融緩和を促す材料になるとの見方が広がっている。

コアCPIは年央にかけて円安を反映した輸入物価の浸透でプラス転換するとみられるが、物価を押し上げる効果は極めて小さく、日銀は景気拡大下でも2%の物価上昇に向けて緩和を継続するという、従来とは違う政策にレジームチェンジすることになりそうだ。

<アベノミクスの成果強調、期待インフレ指標は家計も市場も改善>

政府が27日公表した「2月例経済報告」では、09年11月以来、先行きのリスク要因として言及してきた「デフレによる影響」との文言が削除された。物価下落が続き、デフレ状況という実体に大きな変化はない中での文言変更に、民間エコノミストからは、アベノミクスの成果を強調するものだ、ととらえる声も少なくない。

政府が成果を早くも強調し始めたのは、人々のデフレに関するマインド指標が大きく改善しているためだ。消費動向調査から内閣府が試算したインフレ予想は1月調査で1.6%程度、1カ月前より0.2%程度と比較的しっかり上昇している。またマーケットでのインフレ予想でも、内閣府が物価連動債から試算した結果、2月下旬で1%程度となり、わずか1カ月で0.66%も上昇。物価上昇期待は確実に高まっているとされる。

<4月にかけてCPI下落幅拡大、日銀新体制下で連続緩和の見方>

一方で、実際のCPIはさえない展開が続きそうだ。1月の全国コアCPIは前年比0.2%の下落となり、前の月から下落幅が縮小しなかった。

しかも3、4月に向けて、コアCPIは、前年に価格が上昇したテレビや石油製品の反動により下落幅が拡大しやすい。そうした状況の中で、新総裁が就任後、今後の政策運営と物価見通しを示すいわゆる「展望リポート」の公表日(4月26日)に、3月のCPIも発表となる。エコノミストの間では、マイナス幅は0.5%程度まで拡大すると予想されている。

こうした状況について「あくまで技術的な要因による下落幅拡大とはいえ、物価への注目度合いが高まっている時期だけにとても無視はできない。日銀への金融緩和圧力は一段と高まるだろう」(第一生命経済研究所)との見方や、「市場の一部では、日銀が新体制で臨む4月最初の決定会合での追加緩和が期待されているが、今後3月分コアCPIの弱さが取り沙汰されれば、連続緩和も意識される可能性がある」(SMBC日興証券)との声も浮上している。

<円安によるCPI押し上げわずか、2%達成へ新たな政策>

人々の物価上昇期待を押し上げているのは、一つには円安による輸入物価の上昇だ。足元ではガソリンや食料品の一部が値上がりしている。

ただ円安の進行が実際の物価を押し上げる力は過去のケースからみても非常に小さい。内閣府が2月末に公表したリポートによると、2005年から2年半程度の円安局面で、対ドルでの円安が約19%進行したにもかかわらず、コアCPIはわずか0.3%しか上昇しなかった。家電製品や衣料などの価格競争が激しく、食料やエネルギー価格の上昇を相殺してしまうからだ。しかも、食品への価格転嫁には小売業者は極めて消極的だ。すでに昨年来の日用品値下げを今年も行うと宣言した大手小売業もある。

伊藤忠経済研究所・主任研究員の丸山義正氏も「デフレ下の日本では、輸入価格上昇が消費者物価上昇に及ぼす影響は限定的であり、企業行動が変化しなければ、今回も卸売価格の引き上げが、CPIに及ぼす影響は限られる」と指摘する。

日銀内では、今年は政策効果や海外景気持ち直しにより景気拡大局面に入るとみているが、景気拡大下であっても物価2%に向けてさらに景気改善のスピードを上げるために緩和規模を拡大するなど、従来の金融政策の考え方を転換していく必要があるとの認識も広がりつつある。

エコノミスト調査では今年年央から物価はプラス圏への浮上が予想されている。金融緩和継続と円安傾向の持続により、期待から実際の物価上昇に波及していくかが問われる局面となりそうだ。

(ロイターニュース 中川泉:編集 石田仁志)
 


 
来週のドル/円は突如吹き荒れる「円買い戻し旋風」に注意
2013年 03月 1日 16:03 JST
[東京 1日 ロイター] 来週の外国為替市場では、中銀の政策関連イベントが目白押しで、週末には米雇用統計を控え神経質な展開が予想される。

底流ではリスクオンムードが維持されるとの見方が多いものの、円相場とは無関係なきっかけで一気にリスクオフに傾き、円が急騰することは、イタリア総選挙で証明済みで、突然の吹き荒れる「円買い戻し旋風」に注意が必要となりそうだ。

予想レンジはドル/円が91.00─94.00円、ユーロ/ドルが1.2800─1.3200ドル。

この日は米歳出強制削減措置の発動期日だが、政府・与党と野党の溝は埋まっていない。国際通貨基金(IMF)は強制削減が発動された場合、現在2%としている2013年の米成長見通しを少なくとも0.5%引き下げる方針を表明している。

「市場はこれまでのところ安定しているが、なんらかのゴタゴタがあれば、リスクオフに傾く可能性がある」と三井住友信託銀行、マーケット・ストラテジストの瀬良礼子氏は予想する。

<ファンド勢の苦境>

外為市場では、昨年11月中旬からドルを買い続けてきた海外短期筋が、目下93―94円台で相当規模の不採算ポジションを抱えているとみられている。

「しこり(不採算ポジション)の大きさを考えれば、ドルの上値追いは厳しくなっているようにみえる」(ファンドマネージャー)という。

著名投資家のジョージ・ソロス氏が、円の下落を見込んだ取引を通じて昨年11月以降およそ10億ドルの利益を計上したことは記憶に新しい。

しかし、大手ファンドが利食い終えた市場では、「ここから1、2円下がったら、破たんの危機にさらされるファンドが数多く存在する」(外銀)との指摘が出ている。最近は「損失を取り戻すために(ドルの)押し目を必死で拾うファンドの姿が目立つ」(同)という。

しかし、G7の為替に関する緊急声明やG20の討議を経て、円売り戦略に固執するファンド勢は「(ドルを)買っても買っても上がらない状況に次第に追い込まれており、かなり浮き足立っている」(運用会社)との指摘が出ている。

前週の外為市場では、円売りストラテジーのファンド勢を悪夢が襲った。

ドルは25日の日本時間早朝に94.77円と2010年5月以来の高値を付けたが、円相場とは無関係なイタリア総選挙をめぐる懸念を背景に、一昼夜でドルが4円下がり、26日の早朝には90.85円をつけた。その後92.75円まで買い戻されたが、半日後には再び91.11円まで振り落とされた。

SMBC日興証券・金融経済調査部の為替ストラテジスト、野地慎氏は「リスクオフなら円高が意識されることが確認された」、さらに、中央銀行の大胆な金融緩和を背景に過剰流動性が渦巻くなか、ドル/円はリスクアセットの価格次第でいくらでも動く通貨ペアになったと同氏はいう。

<中銀政策関連イベント>

3月4日からの週は5日の豪中銀(RBA)理事会、6―7日に日銀金融政策決定会合及び英中銀の金融政策委員会(MPC)、7日にECB理事会、カナダ中銀の政策金利発表等、中銀政策関連のイベントが目白押しだ。

「特に、ECBやBOEで緩和のニュアンスがどのように出てくるかに注目している。RBAもハト派的になっているので、今後の利下げについてどのようなスタンスを示すか関心が集まっている」とFXプライム取締役の上田眞理人氏はいう。同氏は、需給面では、ドル/円を手当てできていない実需勢は依然多く、円安の流れはなお続いていると分析する。

ロイター調査によると、BOEが3月6―7日のMPCで資産買入れプログラムの規模を拡大する可能性が増しつつある。一方、RBAは5日の理事会で、2月の会合に続いて政策金利を3.00%に据え置くと公算が大きいとみられている。

日銀に関しては、現体制で最後となる3月の会合では政策据え置きとみられているが、海外短期筋の間では、新体制が始動する4月3―4日の日銀決定会合で思い切った緩和策を発表するとの期待が根強い。

為替市場では、日銀新体制が始動し始めるまでは緩和期待が続き、円安プレッシャーが大幅に後退することはないとの見方が聞かれるが、その後は、4月19日までの米予算案をめぐる交渉など、「テーマが日本から米国にシフトするのではないか」(瀬良氏)という。

<雇用統計>

8日には2月の米雇用統計が予定されている。「アメリカ景気の今後を占ううえで重要度が高い」(上田氏)とみられているが、1月に続いて穏やかな景気回復が続いていることを裏付ける結果となるのか関心が集まっている。

米労働省が28日発表した2月23日終了週の新規失業保険週間申請件数は、季節調整済みで2万2000件減の34万4000件と、36万件を見込んでいた市場予想以上の減少となった。雇用市場の回復の勢いがいく分増していることを示唆している。 ただ、季節変動分の調整によるゆがみ背景に、新規失業保険申請件数はこのところ振れの激しい動きとなっており、雇用市場の実態把握が難しい状況にある。

(ロイターニュース 森 佳子)

2月のユーロ圏消費者物価指数速報値、前年比+1.8%に鈍化
2013年 03月 1日 19:55 JST
[ブリュッセル 1日 ロイター] 欧州連合(EU)統計局が1日発表した2月のユーロ圏のEU基準消費者物価指数(CPI)速報値は、前年同月比1.8%上昇となり、1月の2.0%上昇から伸びが鈍化した。

2月の上昇率は、ロイターがまとめたエコノミスト予想の1.9%を下回った。

欧州中央銀行(ECB)が2%をやや下回る水準としているインフレ目標も下回った。同日発表された1月のユーロ圏失業率が過去最悪となったことで、ECBへの利下げ圧力が強まる見通し。

ロイター調査によると、エコノミスト75人中、年内の利下げを予想しているのはわずか17人。ただ欧州委員会は前週、ユーロ圏は今年リセッション(景気後退)が続くとの見通しを示しており、エコノミストの見方は今後変化する可能性がある。

インフレ圧力は全般的に緩和したとみられ、欧州委員会は2013年のCPI上昇率について1.8%になると予想している。

 

1月のユーロ圏失業率は11.9%に上昇、過去最悪
2013年 03月 1日 20:00 JST
[ブリュッセル 1日 ロイター] 欧州連合(EU)統計局が1日発表した1月のユーロ圏の失業率(季節調整済み)は昨年12月の11.8%(改定値)から上昇し、過去最悪の11.9%となった。

失業率はユーロ圏の債務危機の影響の大きさを浮き彫りにしており、この日発表されたユーロ圏消費者物価指数の鈍化と併せ、欧州中央銀行(ECB)には利下げの検討を迫る圧力となりそうだ。

今回の統計では、南欧の周縁国とユーロ圏中核国の格差も強調された。オーストリアの失業率はわずか4.9%なのに対し、ギリシャの失業率(昨年11月時点)は27%に上っている。

コメルツ銀行のエコノミスト、クリストフ・ワイル氏はリポートで「南欧の周縁国と中核国との経済格差は2013年も変わらないだろう。中核国の経済は第1・四半期に再び成長するはずだ。大半の周縁国経済は恐らく、今年後半まで引き続き縮小するだろう」と指摘した。

 


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09. 2013年3月02日 14:13:55 : xEBOc6ttRg
小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! トップ |
オバマ大統領の釈明を支持できるか?
2013/03/02 (土) 12:41


 3月1日を迎え、米国では強制歳出削減が発動されることになり、このためオバマ大統領が記者会見を行い、国民に事情を説明しました。

 まあ、オバマ大統領の話を聞いていると、筋は通っているように思えますし、それほど自分の意見をごり押ししている風にも思えないのですが‥これではまだまだ先は長いとも感じるのです。

 オバマ大統領の会見の模様を和訳しましたので、先ずは読んでみて下さい。


 THE PRESIDENT: Good morning, everybody. As you know, I just met with leaders of both parties to discuss a way forward in light of the severe budget cuts that start to take effect today. I told them these cuts will hurt our economy. They will cost us jobs. And to set it right, both sides need to be willing to compromise.

「おはよう、皆さん。ご承知のとおり、私は、本日から始まる厳しい予算削減にどのように対処すべきかを話し合うために両党のリーダーたちと会った。この削減によって経済が痛められるであろうと私は述べたのだ。雇用に影響するだろう。両党とも妥協する必要があるのだ」

The good news is the American people are strong and they're resilient. They fought hard to recover from the worst economic crisis since the Great Depression, and we will get through this as well. Even with these cuts in place, folks all across this country will work hard to make sure that we keep the recovery going. But Washington sure isn't making it easy. At a time when our businesses have finally begun to get some traction -- hiring new workers, bringing jobs back to America -- we shouldn't be making a series of dumb, arbitrary cuts to things that businesses depend on and workers depend on, like education, and research, and infrastructure and defense. It's unnecessary. And at a time when too many Americans are still looking for work, it's inexcusable.

「良いニュースは、アメリカ人は強くて回復力があるということだ。大恐慌以降で最悪の経済危機からも立ち直ったし、この問題も同様に切り抜けるだろう。こうした予算削減が実施されようとも、国中の人々は一生懸命に働き、必ず乗り切るだろう。しかし、ワシントンでは、そうはいかない。アメリカの経済がやっと回復しようとしているときに‥つまり、雇用が始まり、再び雇用がアメリカに戻りかけつつあるとき‥教育や調査研究やインフラや防衛など、企業や労働者が頼りにしている事業をカットするようなことをしてはいけない。全く不要なことなのだ。余りにも多くの国民がなお仕事を探しているときに、これは言い訳ができないことなのだ」

Now, what's important to understand is that not everyone will feel the pain of these cuts right away. The pain, though, will be real. Beginning this week, many middle-class families will have their lives disrupted in significant ways. Businesses that work with the military, like the Virginia shipbuilder that I visited on Tuesday, may have to lay folks off. Communities near military bases will take a serious blow. Hundreds of thousands of Americans who serve their country -- Border Patrol agents, FBI agents, civilians who work at the Pentagon -- all will suffer significant pay cuts and furloughs.

「ところで、理解しなければいけないことは、この歳出カットによって全ての人々が直ぐに痛みを感じるという訳ではないということだ。但し、痛みは現実のものとなるだろう。今週から、多くの中流階級の家庭が、様々な形で生活に影響が出るだろう。私が火曜日に訪れたバージニアの造船所のように、軍と関係のある企業は、労働者を解雇しなくてはいけないかもしれない。基地がある地域社会は、深刻な痛手を被るでしょう。この国のために働いている数十万人ものアメリカ人‥国境警備隊、FBI関係者、国防総省の役人‥は、皆、給与がカットされ、一時解雇されるだろう」


(バージニアの造船所でスピーチをしている大統領)

 All of this will cause a ripple effect throughout our economy. Layoffs and pay cuts means that people have less money in their pockets, and that means that they have less money to spend at local businesses. That means lower profits. That means fewer hires. The longer these cuts remain in place, the greater the damage to our economy -- a slow grind that will intensify with each passing day.

「こうしたことは、全て我々の経済に副次的作用を与える。解雇と給与カットは、人々の収入が少なくなることを意味し、従って、地域の商店で使うお金が少なくなる。つまり、利益が減る。そして、その結果、雇用が少なくなる、と。こうした歳出カットが長くなればなるほど、経済への痛手は大きくなり、その影響は日増しに大きくなる」

So economists are estimating that as a consequence of this sequester, that we could see growth cut by over one-half of 1 percent. It will cost about 750,000 jobs at a time when we should be growing jobs more quickly. So every time that we get a piece of economic news, over the next month, next two months, next six months, as long as the sequester is in place, we'll know that that economic news could have been better if Congress had not failed to act.

「そこで、経済学者たちは、この強制歳出削減の結果、経済成長率が0.5%以上小さくなると見積もっている。そうなれば、本来もっと経済成長があるべきときに75万もの職が失われることになるだろう。そうなれば、今後、1か月、2か月、或いは半年に渡り、この強制歳出削減が続く限り、我々は経済ニュースを見る度に、もし議会がちゃんと対応していれば、こんなことにはならなかったものをと思うだろう」

And let's be clear. None of this is necessary. It's happening because of a choice that Republicans in Congress have made. They've allowed these cuts to happen because they refuse to budge on closing a single wasteful loophole to help reduce the deficit. As recently as yesterday, they decided to protect special interest tax breaks for the well-off and well-connected, and they think that that's apparently more important than protecting our military or middle-class families from the pain of these cuts.

「はっきりさせたいと思う。こんなことは必要ではないのだ。議会の共和党が行った選択のせいで、こんなことが起きているのだ。赤字を減らすために無駄な税の抜け穴を塞ぐことに彼らが妥協しないために、こうした歳出削減が起きているのだ。昨日時点で、彼らは、裕福で有力なコネのある人々のための減税措置を守ることが、こうした歳出削減で迷惑を被る軍関係者や中流階級の家庭を守ることよりも重要だと考えたのだ」

I do believe that we can and must replace these cuts with a more balanced approach that asks something from everybody: Smart spending cuts; entitlement reform; tax reform that makes the tax code more fair for families and businesses without raising tax rates -- all so that we can responsibly lower the deficit without laying off workers, or forcing parents to scramble for childcare, or slashing financial aid for college students.

「私は、こうした歳出カットの代わりに、全ての人々に負担を求めるより均衡のとれた方法を採用することができるし、そうしなければならないと思う。合理的な支出カット。受給者改革。税率を引き上げることのない、より公平な税法の制定。こうしたこと全てにより、労働者を解雇することなく、そして、子守の仕事のために仕事を休むことなく、或いは大学生に対する奨学金を打ち切ることなく、赤字を少なくすることができる」

I don't think that's too much to ask. I don't think that is partisan. It's the kind of approach that I've proposed for two years. It's what I ran on last year. And the majority of the American people agree with me in this approach, including, by the way, a majority of Republicans. We just need Republicans in Congress to catch up with their own party and their country on this. And if they did so, we could make a lot of progress.

「私の願いが過大だということはないと思う。特定主義に偏ったものでもないと思う。それは、この2年間私が提案していることだ。昨年は、その考えで大統領選を戦った。そして、アメリカ国民の多くが、共和党員の大部分を含め、このアプローチを支持してくれた。議会の共和党員が自分たちの党の考えと、この国の考えに追いつく必要があるのだ。そうすれば、我々は大いに前進することができるのだ」

I do know that there are Republicans in Congress who privately, at least, say that they would rather close tax loopholes than let these cuts go through. I know that there are Democrats who'd rather do smart entitlement reform than let these cuts go through. So there is a caucus of common sense up on Capitol Hill. It's just -- it's a silent group right now, and we want to make sure that their voices start getting heard.

「このまま強制歳出削減を発動させてしまうよりも、税の抜け穴を防ぐ方法を個人的にではあるが支持する共和党員が議会にいることを私は知っている。そして、このまま強制歳出削減を発動させてしまうより、手当の受給者資格を見直すことを支持する民主党員がいることを知っている。議会には常識がある。沈黙しているグループがあり、我々は、そうした者の声を聴くようにすべきなのだ」

In the coming days and in the coming weeks I'm going to keep on reaching out to them, both individually and as groups of senators or members of the House, and say to them, let's fix this -- not just for a month or two, but for years to come. Because the greatest nation on Earth does not conduct its business in month-to-month increments, or by careening from crisis to crisis. And America has got a lot more work to do.

「数日中に、或いは数週間のうちに、私は、個人的に、或いは上院や下院のグループとして、そうした人々に会いたいと思う。そして、この問題を、1か月か2か月間の問題としてではなく、今後数年の問題として解決しようと訴えたい。何故なら、世界でナンバーワンの国家、その場凌ぎの仕事などしない訳だし、次から次に起こる危機に右往左往してはいけないのだから」

In the meantime, we can't let political gridlock around the budget stand in the way of other areas where we can make progress. I was pleased to see that the House passed the Violence Against Women Act yesterday. That is a big win for not just women but for families and for the American people. It's a law that's going to save lives and help more Americans live free from fear. It's something that we've been pushing on for a long time. I was glad to see that done. And it's an example of how we can still get some important bipartisan legislation through this Congress even though there is still these fiscal arguments taking place.

「一方、我々は、こうした政治的こう着状態が、他の問題の解決を邪魔させることはできない。私は、下院が、女性に対する暴力反対法案を昨日可決したことを喜んでいる。それは、単に女性のみならず、家庭及びアメリカ国民にとっても大きな勝利である。アメリカの国民の命を守り、多くの国民が恐怖を抱かずに生活できるようにするだろう。我々が長い間望んできた法律だ。法制化が実現し、嬉しい。そしてまた、これは、財政の議論がなお止まない議会において、党派を超えた法制化ができるという一つの例でもある」

And I think there are other areas where we can make progress even with the sequester unresolved. I will continue to push for those initiatives. I'm going to keep pushing for high-quality preschool for every family that wants it. I'm going to keep pushing to make sure that we raise the minimum wage so that it's one that families can live on. I'm going to keep on pushing for immigration reform, and reform our voting system, and improvements on our transportation sector. And I'm going to keep pushing for sensible gun reforms because I still think they deserve a vote.

「歳出の強制削減問題が未解決であっても、我々にはできることがあると私は考える。私は、そうした議案提出権を後押しし続けたい。従学前の授業についても望む家庭には受けさせる法案を推し進める考えである。移民改革法も推し進めたい。選挙制度、交通運輸の改革もそうである。それに、銃規制も推し進めたい。私は、国民の信を問う必要があると考えるから」

This is the agenda that the American people voted for. These are America's priorities. They are too important to go unaddressed. And I'm going to keep pushing to make sure that we see them through.

「これは、アメリカの国民が賛成した議題である。こうしたことはアメリカにとっての優先事項である。皆大切であり、放っておく訳にはいかないのである。それらが法制化されるよう努力を続けたい」
 
 如何でしたでしょうか?

 オバマ大統領の考え方?

 いずれにしても、まだまだ妥協までには時間がかかるのでしょうが‥その一方で、今月27日には暫定予算の期限が到来するので、さらに難問が付け加わるということになるのです。

 いつも、ハラハラドキドキさせてくれるアメリカ! サンクス!

以上


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