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電機産業はもはや円安だけでは挽回できない (東洋経済オンライン) 
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/543.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 4 月 15 日 08:26:00: igsppGRN/E9PQ
 

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130415-00013623-toyo-bus_all
東洋経済オンライン 4月15日(月)8時0分配信


 電機関連企業の3月末の株価は、昨年9月末に比べ、4割程度高い。では、業績はどうか?

まず、各社の2013年3月期の営業利益予想を見よう。シャープは赤字を続け、その赤字額は12年3月期の4倍強になる。ソニーは、前年の赤字から回復するものの、11年3月期比で34.9%の減だ。パナソニックの営業利益は1219億円で前年比約3倍となるが、11年3月期の3052億円に比べ、半分以下だ。しかも、最終損益は7650億円の赤字になる。1950年以来の無配転落で、ボーナスも大幅に見直す。

 12年3月期は、シャープやソニーの営業利益がマイナスになった年で、電機メーカーの業績悪化が大きなニュースとなった。これと比較すれば、13年3月期の予想は若干の改善だ。しかし、本格回復にはほど遠い。シャープのホンハイとの交渉は決裂し、同社の再建は厳しい状態だ。それなのに株価は約4割上昇している。赤字脱却の確実な保証がない企業の株価がこれほど上昇するのは、異常としか思えない。ソニーは黒字に転換したが、11年3月期には及ばない。それなのに、株価は約8割も上昇している。日立と東芝は、赤字転落は免れているが、営業利益は3年間ほぼ横ばいだ。実際の株価上昇を正当化できるような状況ではない。

 以上は個別企業の状況だが、法人企業統計で電気機械器具製造業と情報通信機械器具製造業の利益の合計を見ると、次の通りだ。10年(暦年)は2兆0821億円だったが、11年には1兆1903億円とほぼ半減した。さらに12年には4068億円に減少した。情報通信機械器具製造業の営業利益が、12年4〜6月期には赤字になったのが印象的だ。これは、地デジ特需の終焉(11年7月でアナログを停波)、エコポイントの終了などによるものだ。ここ数年の電機業界は、エコポイントや地デジ移行によって翻弄されてきた。補助金がないと収益が上がらない構造になっているのが実情だ。

■ 円安が続いても利益が増える保証なし

 では、円安によって将来の利益が増えるのだろうか?  原理的には、いくつかのルートが考えられる。

 第一は、円安によって輸入品が割高になって国産品が有利になり、国内販売が増加するルートだ。例えば、サムスン電子がウォン建て価格を変えなければ、円建て価格は上がる。それを日本国内の販売価格に転嫁すれば、日本市場で競争力が落ちて、販売量が減る。

 では、輸入価格は上昇しているか?  貿易統計において、数量が分かる項目(電算機類、IC、映像記録・再生機器など)について、単位数量あたりの輸入価格の推移を見ると、過去1年間程度の期間で、変動はあるものの、傾向的な動きは見られない。したがって、円安で国産品の価格競争力が高まるという現象は、起きていないわけだ。実際には、例えばサムスンがウォン建て価格を引き下げ、円建て価格を一定に保っているのだと考えられる。

 テレビやPCなどの輸入品は、荷揚げの段階で価格が上昇しておらず、末端価格も動いていない。実際、韓国製テレビや台湾製PCの価格が上昇しているという話は聞かない。そうであれば、日本国内で外国製品のシェアが落ちることはない。

 第二のルートは、輸出を通じるものだ。例えば、日本メーカーが円建て価格を一定に保てば、アメリカの市場でドル建て価格が下がる。そうすれば、サムスンなどに対する競争力が増して、販売量が増える。

 しかし、末端価格を変えるには時間がかかるし、「円安による輸出ドライブ」と批判されるおそれもある。また、需要の価格弾力性が低ければ、ドル建ての販売額は減る。だから、末端でのドル建て価格は一定に保たれていると考えられる。

 つまり、自動車や電機製品のように価格競争が激しい商品では、為替レートが変わっても、末端価格は変わらない可能性が高い。したがって、円安が今後も続くとしても、それによって外国製品の輸入量が減ったり、日本製品の輸出量が増えたりすることはないと考えられる。

 為替レートの変化は、メーカーや流通業者の利益の増減で調整されてしまう。ただし、円安による利益が日本メーカーの手に落ちるのか、それとも流通業者の手に落ちるのかは定かではない。結局、円安で日本の電機メーカーの利益が増大するか否かには、大きな不確実性があると言わざるを得ない。以上を考えると、現在の株取引は、収益が目的でなく、短期的な売買益確保を目的としたものが中心だと考えられる。


■ 基本的なビジネスモデルの再構築が必要

 日本電機工業会(JEMA)の大坪文雄会長が3月15日に発表した見通しによると、13年度の国内電気機器生産は、前年度比1.7%減になる。内訳を見ると、重電機器が1.2%減、家電機器(エアコン、冷蔵庫など)が2.8%減だ。

 「円高是正・株価上昇が進んでおりますが、未だ実体経済の回復までには至っておらず」「未だ成長は見通せない状況」としている。「景気刺激策による民間設備投資回復への期待もある」としながら、全体ではマイナス成長を予測せざるを得ないのだ。「円高是正」という言葉が前文と結語に2カ所出てくるが、見通しの説明中に為替レートへの言及はない。つまり、円安が需要に影響するとは見ていないようだ。この報告の静かな口調と、株式市場の熱気との間に、大きな隔たりを感じる。

 ところで、「電気機器」には、テレビ、PCなどの「電子機器」は含まれていない。そこで電子情報技術産業協会(JEITA)が提供する13年1月の数字を見ると、国内生産のうち輸出される比率は、電子工業計で74%、民生用電子機器で73%だ。したがって、輸出がかなり増加しないと、国内生産は増加しない。

 ところが、「電子工業計」の数字を見ると、輸出は3.2%増だが、生産は前年比14.6%減だ。民生用電子機器(テレビなど)の生産は、前年比で実に47.7%減であり、輸出は21.3%減である。こうした数字から考えると、円安が進んだとしても、テレビなどの輸出や生産が回復するとはとても考えられない。

 電機産業は、高度成長を実現する上で重要な役割を果たした。これに変化をもたらしたのは、90年代から顕著になった新興国の工業化だ。

 電気機械器具製造業(情報通信機械器具製造業を含む)の11年度の売上高は、90年頃と同じだ。このように売り上げが伸びないことに加え、売上高営業利益率が低下した。60年代までは10%程度の水準だったのに、70年代から低下し、86年度からは3%台を超えることがなくなった。11年度は2.5%だ。この結果、営業利益も急減している。11年度の7400億円は、72年度より少なく、90年度の4分の1でしかない。

 本来は、こうした大きな変化に対応して、ビジネスモデルを再構築する必要があった。しかし、05年頃からの円安で利益が復活し、国内工場の建設も進んだ。経済危機で需要が激減したあと、それが重荷になっている。ここ数年の利益の減少で、ビジネスモデルの再構築の機運が生まれていた。株価高騰がそれを阻害しないかと、懸念される。

 (週刊東洋経済2013年4月13日号)

野口 悠紀雄


 

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コメント
 
01. 2013年4月15日 08:34:27 : AjT2wU6UUk
工場海外進出が、カウンターパンチとなって降りかかってくる。
安物生産競争が起こした足跡だ。

どこにとっても幸せでない。
日本、進出先国両者ともに。
自衛隊で進出工場は守らんぞ。


02. 2013年4月15日 09:10:41 : vVfqOja32o
少し前には、日本製品の品質に対する信頼は絶大で、韓国や中国で日本の製品を真似しても、“安かろう悪かろう”で、かなりの価格差があっても日本製に軍配が上がっていた。

ところがスマートフォンでは立場が完全に逆転している。富士通製のF−11Dでbmobileで使ってみた。時たまフリーズするのでサムソンのGalaxy SC-02Cに換えて見た。フリーズするのは、“動作確認機種”のリストにない製品なので富士通の責任とは言わない。

Galaxyの方が操作性は良いが、画面の大きさが異なり、富士通にも画面の大きな製品もあるのでこれは問わないことにしよう。

レスポンス、これは明らかにGalaxyの方が良い。指でなぞった時の反応がはっきり違うのである。

次に電池の消耗。画面を消して何もしないで、一晩置いて朝見ると、富士通製は少しであるが電池が消耗している。Galaxyは画面表示で見る限り全く消耗していない。電池の容量の違いかと思ったが、わずかにGalaxyの容量が大きいが、差はわずかである。どうやら富士通製は画面が消えていて何も操作しなくても裏でせっせと電気つかっているのだろう。

Galaxyがスマートフォンだとすると、富士通のF11-Dはスマホの格好をしたまがい物といって言いすぎでない。

昔の電気製品は日本製に対して韓国製や中国製はまがい物であったが、キャッチアップの過程であった。それでも韓国や中国では安価なため自国製品が普及していた。

今やスマホに関して日本製と韓国製は立場が逆転してしまった。日本の製品がやがて韓国の製品に追いつくなんて状況ではないであろう。恐らく日本製のスマホには海外における競争力はほとんどないだろう。日本国内でだけ通用した高性能の従来がた携帯はガラケーと言われたが、いまやガラパゴスに住むスマホになり果てたようである。


03. 2013年4月15日 13:05:58 : xEBOc6ttRg

>円安で日本の電機メーカーの利益が増大するか否かには、大きな不確実性があると言わざるを得ない

企業ごとの不確実性はあるが、持続的な円安は確実に輸出産業にとってプラス要因


>電機産業はもはや円安だけでは挽回できない

そんなのは当たり前だ

ダメな企業は、どんなに優遇してもダメなのは、農業を見ていれば明らか


04. 2013年4月15日 18:19:48 : HrkgpfvQPE
>電機産業はもはや円安だけでは挽回できない ?


大手企業100社だけで300兆円の内部留保。

すべては外資が株仕込みなおす(空売り買戻し)ための

見せ掛けの死んだフリ+税金払いたくない病による死んだフリ

だったみたいだぞ。


05. 2013年4月16日 00:45:04 : niiL5nr8dQ
 

【第8回】 2013年4月16日 松尾博文 [神戸大学大学院経営学研究科教授],滝波純一 [ヘイ コンサルティング グループ プリンシパル]

半導体サプライチェーン寸断の教訓
トヨタ新戦略とルネサス再建の関連を再考する

――神戸大学大学院経営学研究科教授 松尾博文

「オペマネの思考法」を解説するシリーズの第4回。東日本大震災で日本の製造業のサプライチェーンが寸断されたことは、壮絶な記憶である。最近、産業革新機構がルネサスエレクトロニクスへの出資を決定。トヨタ自動車が「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」を公表。我々はここで何を学んだのかを考えてみる。

 昨年12月に産業革新機構とトヨタを含む民間企業8社が、計1500億円をルネサスに出資することを決定し、今年の3月末にトヨタは、「もっといいクルマづくり」に向けて、「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」を公表した。この2つの決定は関連していて、日本の製造業の将来を考える時の重要なマイルストーンになる。「オペマネの思考法」の第4回目の今回は、2年前の東日本大震災のサプライチェーン寸断の事例に立ち返り、2つの製造業の事業プロセスの相互関係という観点から、震災と2つの決定の意味することを考える。

サプライチェーン寸断の2つの何故

 日本で一番黒字を出しているトヨタと一番赤字を出しているルネサスは、車載マイコンと呼ばれる半導体のサプライチェーンでつながっており、その鎖が東日本大震災で寸断された。その結果、トヨタは3ヵ月間、国内生産台数が半数以下になるという事態に陥った。 

 このサプライチェーンの寸断の意味することを理解するために、車載マイコンとは何か、そのサプライチェーンはどうなっているのか、何故、トヨタの生産が回復するのに3ヵ月もかかったのかを理解する必要がある。一方、ルネサスは震災前から、財務状況は最悪であった。ここでは、何故、車載マイコンのサプライチェーンでつながっている2つの会社の業績がこうも違うのか、ということを理解する必要がある。

ルネサスの再建とトヨタの新戦略

 ルネサスに産業革新機構の投資が決定した。このことを理解するためには、そもそも、なぜ半導体産業が製造業の要ともいえる産業であるのかを理解する必要がある。そのためには、米国で1987年に設置された半導体コンソーシアムであるセマテックの設置理由とその貢献を考える必要がある。

 以上の背景が理解できると、何故、トヨタが新戦略をこの時点で打ち出してきたのかが明確になる。今回は、この順序で話を進めていくので、論理の展開を注意深く追っていただきたい。

 企業戦略を再構成する時に、その企業が関与するサプライチェーン全体の構造を変えるような戦略を考えるということを議論する。「オペマネの思考法」の言葉に直すと、企業戦略の「分析単位」を単にその企業とするのではなく、サプライチェーンを「分析単位」とするということである。

車載マイコンは車の中枢神経系

 ハイブリッド車のコストの47%はエレクトロニクス関連である。車載マイコンはその中でも頭脳、中枢神経系にあたるものであり、車一台あたり、1億行にせまる組み込みソフトのプログラムを必要とする。

 車載マイコンの品質と耐久性については、極端に高いものが要求されている。車は温度と振動に関して過酷な環境で、平均10年以上使用され、事故につながるような不良半導体が使われているとなると、対応に大変なコストがかかってしまう。

 ルネサスエレクトロニクスは、エレクトロニクス技術と半導体生産技術の結晶であるそのような車載マイコンの生産者で、車載マイコンの世界シェアは44%であり、その約半分は被災した那珂工場で生産されていた。

車載マイコンのサプライチェーン寸断

 車載マイコンのサプライチェーンにおいては、ルネサスが製造し、ルネサスの販社等を通して、デンソーが購入する。デンソーは、車載マイコンを核に、エレクトロニクスシステム・コンポーネントを製造する。ここで、組み込みソフトのプログラミングもなされ、最後はトヨタに納入される。

 トヨタは通常、主要コンポーネントに関しては、複数のサプライヤーを指定して、ものづくりを競わせ、さらに、供給寸断のリスクに対応している。エレクトロニクスシステム・コンポーネントに関しても、第1層のサプライヤーは、デンソーを筆頭に複数存在した。

 しかしながら、その第1層のサプライヤーすべてが、那珂工場からの同一の車載マイコンを使用していたことが露呈し、結果、トヨタの生産ラインが長期間ストップするという事態になった。

車載マイコンは代替生産が困難

 那珂工場は旧日立製作所のファブ(半導体工場建屋)であり、ルネサスの旧NECエレクトロニクスのファブで、代替生産できれば、寸断の影響は緩和された。しかしながら、それは技術的にできないのである。もちろん、両方のファブは同等の品質レベルの製品を造っているのであるが、出生が異なると、製造ノウハウが異なったものとなっており、代替品として使える同じようなものはすぐには造れないのである。

 ファンドリーで、代替生産をするとしても、すぐには造れない。日立が昔所有していたシンガポールのファブを買い取ったグローバルファンドリーズだと、そこでの代替生産のめどは立つが、すぐに製造というわけにもいかなかった。生産のセットアップに最低2ヵ月ぐらい、生産のリードタイムも2ヵ月かかるのである。

車載マイコンの製造は儲からない

 ルネサスは車載マイコンの設計と製造の両方に非常に高い技術をもち、代替のきかない部品をトヨタやホンダをはじめとする日本の自動車製造業者にほぼ独占的に提供している。しかしながら、日本一の赤字企業なのである。

 車載マイコンは、外国でも、昔からある有名な半導体デバイスの設計と製造の両方に、高い技術力を持つ製造業者により生産されている。これらの企業は総じて、儲かっていないレベルか、非常に赤字の会社で、先行きが不透明というのが現状なのである。

車載マイコンはなぜ儲からないか?

 車載マイコンが儲からないのは、規模の経済の問題である。半導体製造の固定費は非常に高く、デバイスの開発費用も非常に高い。固定費に見合う売上高(数量×価格)がないといけない。したがって、数量確保が必須で、その後に価格がついてくる。

 車載マイコンは自動車の中枢部品であるのは間違いないので、自動車製造各社は世界中でそれなりのカスタム仕様の製品を、半導体会社とつくりあげてきたという歴史もある。自動車の平均寿命は10年以上、モデルの切り替えは5年ごととなると、古い世代のラインも長期間、使えるようにしておかなければならない。カスタム化の余地が多く、デバイスあたりの数量が出ない。

 国外の自動車メーカーが標準化の進んでいる車載マイコンを使っているとすると、その取引価格がカスタム化の度合いの高い製品の取引価格設定の目安になる。つまり、カスタム化のコストを自動車メーカーにそのまま転嫁することは難しい。自動車が売れなくなるからである。サプライチェーンで、手間とコストばかりかかって、儲からない部分を、ルネサスが担当していることになっている。

半導体は国の技術の根幹

 私がテキサス大学オースチンにいた1987年当時に、米国国防総省の予算がつき、テキサス大学の敷地に半導体製造に関するコンソーシアムであるセマテックが設立された。この当時は、日本の半導体企業のシェアが米国のそれを抜き、まさに、米国の半導体産業の存亡を賭けて設立された。

 予算が国防総省からついたことにも着目する必要がある。通常のビジネスに関しては、国の予算はつけにくい。しかしながら、軍事用の半導体技術は、先端のものが国内にないといけないという共通認識があった。極端な話、例えば、他国で製造されブラックボックス化した半導体デバイスを軍用兵器に組み込んだとき、何か仕込まれていてもわからないので、国防にもならないという懸念もあったに違いない。

セマテックの成果とは

 セマテックに対しては当初、半導体最先端技術の進歩に貢献していないというような懐疑的な評価が多かった。しかしながら、米国における、半導体に関するハードとソフトの標準化という点では、多大な貢献があった。また、標準化が装置会社の技術レベルと収益性を向上させた。

 日本の半導体製造企業というのは、非常に閉鎖的である。したがって、技術が企業ごとに別々に進化していき、旧日立ファブで造る同じものを旧NECファブでは造れないということになってしまった。一方、国外では標準化が進み、デバイスの設計のみをするファブレスと、製造のみをするファンドリーの垂直的分業が可能となったのである。さらに、装置製造業者とファンドリーのオープンな連携も進展した。

 技術進歩が多数の領域で同時発生するエレクトロニクス産業では、オープンなイノベーションの組み合わせに成功した標準製品のサプライチェーンと、閉鎖的、固定的なカスタム製品のサプライチェーンを比較すると、前者の方に分があるようである。

トヨタが震災で学んだだろうこと

 トヨタは震災の2日前の2011年3月9日にグローバルビジョンを公表している。当たり障りのないCSRの内容である。震災1年後の4月9日、2年後の3月27日に公表した、「もっといいクルマづくり」に向けて、「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」は、一変して、従来のトヨタ方式とは異なるものづくりを打ち出している。

 従来はトヨタ専用規格に準じた部品開発であったが、多数の自動車メーカーがグローバルに採用している標準部品も、採用できるようにするとしている。半導体部品のことが念頭にあるのに違いない。

 メカニカルな部品に関しては、従来の閉鎖的、擦り合せ型のモデル、多重層的なサプライヤー管理であるトヨタ方式が機能する。一方、半導体や電子部品については、全面的なカスタム化から標準化の方向に移行すること、トヨタがサプライチェーンを直接的、統合的に管理することの両方は、サプライチェーン寸断のリスク回避の面のみでも正当化できそうである。さらに、標準化がもたらすコスト削減の側面も大きく、供給者のルネサス自体の存亡が問題となっては、こうするしかないだろう。

ルネサスの存亡

 2012年の9月に米国投資ファンドのKKRが1000億円の出資をルネサスに提案したが、1500億円でも安い買い物である。日本の根幹技術の値札は、これではないだろう。投資ファンドが、一方で日本の自動車メーカーの株をショートセル(空売り)して、他方で車載マイコンの価格交渉に入るというようなことも考えないといけないだろう。

 ルネサスの操業が完全に停止すれば、サプライチェーンでつながっている日本の自動車製造業者の操業もほぼ完全に停止する。ハイテクの根幹技術なくして、技術立国はない。ということで、税金由来の産業革新機構の1383.5億円がルネサスに投資されることになったと理解できる。

ルネサスの今後で問うべきこと

 ルネサスには、少し黒字のマイコン部門、少し赤字のアナログIC&パワー半導体部門、非常に赤字の携帯・パソコン・ゲーム用のシステムLSI(SoC)部門の同規模の3事業部門があるとされている。SoCには新世代の半導体技術が必要であり、マイコンには少し古い世代ではあるが、熟練した半導体技術を使っている。

 不採算のSoC部門を切り離して、キャシュフローの改善を図るというようなことが言われているが、切り離してそのファブと技術をどうするのかを先に真剣に考えていただきたい。

 車載マイコンの半導体技術世代は古い方で、切り離す方が新しい世代の半導体技術である。古い方の技術は自動車にとりあえず必要なので残して、その次の世代は捨てたので、徐々に国外の標準品に切り替えて行くという算段なのだろうか。そうなれば日本の半導体製造はほぼ終末を迎えることとなる。重大なインプリケーションがあるので、拙速な判断は控えるべきである。

 皆さん、もう一度、日本にどういうふうにして、半導体技術を残すかということを真剣に検討してください。セマテックの貢献は、半導体の次世代技術への移行を促進させたというような性質のものではなく、ハードとソフトの標準化の促進ということが、その時代のサプライチェーンの構造変革をもたらし、新しいビジネスモデルを創造したというふうに解釈するべきです。

 半導体に関する日本の次の一手は何かということを考える時、セマテックのように、ゲームのルールを変える、サプライチェーンの構造変革をもたらす要因は何かということを問うべきです。
 


06. 2013年4月17日 19:03:26 : Ym9NcScnZo
相変わらず野口悠紀雄のマクロ経済解説は酷いなw
専門の金融工学以外は学部生以下とまで酷評されてるんだから、金融工学と整理法だけ発言してればいいのに何やってんだろう。
円安効果のルートの第一も第二も説得力がないというか、「移行期」「Jカーブ効果」などの言葉で片付けられる代物だ。

07. 2013年4月20日 23:19:07 : JjNtNbJEr2
>>02さんの指摘された内容だが、ラジオの分野でも顕著である。

短波国際ラジオ放送を聴くためのBCLラジオの分野で、かつてはソニーやパナソニックなど日本メーカーの製品が世界的に売れていた。しかし今日では中国大陸のTecsunやDegenなどのメーカーの製品が世界中で売れており、日本メーカーは次々と撤退。あれほど売れていたパナソニックも撤退し、唯一残ったソニーですら、12年前にICF-SW7600GRを出して以来、新製品を送り出さなくなったのである。外国では、ソニーは会社として終わったものと見なされている。

ソニーのICF-SW7600GRと、中国大陸TecsunのPL-660を比較すれば一目瞭然だ。ソニーのラジオは内部ノイズが酷く、微弱な電波がラジオ内部の電子回路でかき消されている状態。これに対しTecsunの方は、内部ノイズが極めて小さい。このため、微弱な電波でも音として聴こえてくる。回路設計の技術力で歴然たる差がついてしまっているのだ。

ソニーのラジオは1980年代以降、これまでのポータブル型からブック型に進化して小さくなり、内部回路がPLLシンセサイザー方式となって国内他社に差をつけていったが、この部分が深刻なノイズを発生させるようになった。とりわけICF-SW77のノイズの酷さは最悪で、買った人の失望感は驚くほど大きく、「もうソニーは懲りた。」と何度も聞いたものである。市場の評価も低く、ICF-SW77は早々と生産停止に追い込まれた。

この頃、出井が社長になり、BCLラジオの製品の縮小が行なわれた。8万円クラスのICF-SW77の後継機は用意されず、そのまま撤退した。中国大陸製のTecsun PL-660は、実はこのICF-SW77のクラスである。価格は1万円台の前半で、ソニーとは比較にならないほど安いのだが、内部ノイズが格段に低い等、性能面でも大きく上回っている事実がある。このクラスのラジオを要望するマニアが、インターネットのブログ記事を見て次々と購入し、今ではベンチマーク製品となってしまった。

中国大陸のTecsunには、日本製ラジオがまだ採用していないDSPラジオがいくつも登場している。PL-310、PL-380、PL-505などDSP方式であり、圧倒的に静かなラジオとして知られている。もはやBCLラジオの分野では、中国大陸製一択なのだ。日本メーカーはDSPラジオを未だに市場に送り出していない。製品企画の段階で、「ラジオなんて新製品を出しても売れない。」と決めてかかっているのだろう。だが、東日本大震災の時は在庫も払底してしまったのである。当方、関西だが、どこの量販店にもラジオの在庫のない状態が長く続いたことを覚えている。あの時、市場の需要を満たしたのは、ネット販売された中国大陸製ラジオであった。

スマホの世界でも韓国製が日本製を凌ぐようになったが、短波ラジオの世界でも中国大陸製が日本製を凌いでいるのだ。ソニーは社長が変わってもラジオに力を入れる積もりはないし、製品展開がどんどん消極的になっていく。そもそも生産そのものを下請けに丸投げにしている。かつての井深大氏の時代を知る者にとって、現在の状況は同じメーカーと思えないほど酷い。このようにして歴史のかなたに消えていくのだろう。


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