★阿修羅♪ > 経世済民80 > 116.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
市場とかけ離れる、日銀の物価動向判断 フォワードレートが証明する「2%物価目標達成」の難しさ 
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/116.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 5 月 27 日 10:01:00: igsppGRN/E9PQ
 

http://toyokeizai.net/articles/-/14036
2013年05月27日 野口 悠紀雄 :東洋経済オンライン


日本銀行の黒田東彦総裁は、「今後2年間で消費者物価上昇率を2%に引き上げる」と述べている。4月26日に発表された日銀の「物価展望レポート」は、そこに至る道筋を示した。

これは、実現できるだろうか? 消費者物価に対する金融緩和策の波及メカニズムが説明されていないため、その判断は難しい。ここでは、2%目標を市場がどのように評価しているかを見ることとしよう。

名目金利=実質金利+期待インフレ率 の関係(フィッシャー方程式)があるので、実質金利が変わらないときに期待インフレ率が高まれば、名目金利はその分だけ上昇する。金融緩和によって実質金利が低下すれば、名目金利の上昇幅はインフレ期待の上昇幅よりは小さくなる。これまでのデータを見ると、長期金利と物価上昇率の間には正の相関が見られるが、長期金利の変動は物価上昇率の変動より小さい(白塚重典「金利の期間構造と金融政策」、『日銀レビュー』2006年4月)。

長期金利の最近の動向を見ると、新金融政策発表前に比べて、長期金利は上昇した。これを反映して、住宅ローン金利も上昇した。これを見ると、人々のインフレ期待は高まったように見える。ただし、上昇幅はごくわずかだ。

人々のインフレ期待に関する情報は、イールドカーブ(金利の期間構造を示す曲線)から計算することができる。以下では、これについて説明しよう(なお、ここで述べることの基礎的な説明は、拙著『金融危機の本質は何か』第10章、東洋経済新報社、09年、を参照されたい)。

■1年債利回りは2年後でも0.17%

以下では、「フォワードレート」を計算する。「n年後のm年債のフォワードレート」とは、「n年後にm年債を買う(あるいは売る)」と現時点で先物契約をした場合の利回りである。先物契約は、n年後の経済状況がどのようになっていようとも履行しなければならない。つまり、これはリスクのない取引の金利だ。

すべてのnやmに対応した先物取引が現実に存在しているわけではないが、イールドカーブに含まれている情報を用いれば、以下のように計算することができる。これが「インプライド・フォワードレート」だ。

現時点の2年国債利回りは0.11%であり、3年国債利回りは0.13%である(利率は年率表示、以下同様)。ここで2年後の1年債のフォワードレートをx%としよう。

現在から2年間を2年債で運用し、その後1年間を1年債で運用する。ただし、その利回りは、現時点で先物契約をして、x%と確定しておくことにする。この場合、現時点で1投資すると、3年後には1.00112×(1+x/100)となる。

他方、3年債で運用した場合には、1.00133となる。両者はリスクのない運用だから、3年後の資産額は同一にならなければならない。この関係から、xを0.17と計算することができる。

この値は、現在の3年債の利回りより高いことに注意が必要だ。つまり、今後の3年間において、最初の2年間はあまりリスクがないが、その後にリスクが大きくなると考えられているわけだ。

最近時点の日本国債の利回りのデータを用いて、n=1〜9について1年債のフォワードレートを計算すると、図に示すとおりとなる。

時間の経過とともにレートが徐々に上がっている。これは将来になるほどインフレ期待が高まるのを示していると解釈することもできる。ただし、2年後でも0.17%であるから、その時点のインフレ率が2%になっていることはありえない。つまり、マーケットは、2%目標はとても実現できないと判断していることになる(この点は、以下で詳しく述べる)。したがって、『物価展望レポート』の見通しは、市場の見通しとかけ離れているわけだ。

なお、フォワードレートは、9年後くらいからは一定値に収束する。これは、経済の長期的均衡を示していると解釈できる。

■2%達成と予想するなら金利はもっと上がるはず

フォワードレートとは、先物取引の利回りであり、将来の利回りの予想値(期待値)ではない。これについて説明しよう。

資金の借り手の立場では、先物取引によって将来金利変動のリスクを回避できるのであれば、そのレートが自分の予想する将来の実際の利回りより高くても、先物取引をする。したがって、フォワードレートは予想利回りより高くなる。この差が、借り手のリスクプレミアムである。

他方、貸し手の立場では、将来金利変動のリスクを回避できるのであれば、そのレートが将来の利回りの予測値より低くても、先物取引をする。したがって、フォワードレートは予測利回りより低くなる。この差が、貸し手のリスクプレミアムだ。

市場におけるフォワードレートは、借り手のリスクヘッジ需要と貸し手のリスクヘッジ需要のどちらが強いかで決まる。普通は、前者が強い。なぜなら、リスクヘッジしなかったときの損失は、借り手のほうが大きいからだ。したがって、市場で決まるフォワードレートは、市場参加者の予想利回りの平均より高くなる。ヒックスやケインズは、これをnormal backwardation(正常な逆ザヤ)と呼んだ。この差が、リスクプレミアムの市場値だ。

ところで、以上のこととフィッシャー方程式から、フォワードレート=予想実質金利+期待インフレ率+リスクプレミアムという関係が得られる。右辺の3項は、ここで用いているデータでは分離できない。実質金利は時点によらず一定と仮定しても、期待インフレ率とリスクプレミアムの分離はできない。

先に、フォワードレートの曲線が右上がりになるのは、予想インフレ率が高まるからだろうと述べた。しかし、実際には、リスクプレミアムが高まるのかもしれない。将来になるほど金利が予測しにくくなり、リスクプレミアムも高まるというのは、大いにありうる。そうだとすれば、フォワードレートが右上がりになっていても、期待インフレ率はさほど上がっていないわけだ。

なお、いまの10年国債利回りが0.5%なのに、9年後の1年債が1.2%になる。これは、フォワードレートが7、8年後から急に上がるからだ。つまり、そのあたりで何かが起こると予想されているのだ。物価上昇率がこの時点で上がるとの解釈もできるが、海外投資家の売却が予想されているのかもしれない。また、この期間が国債の市場平均残存期間(12年3月末で7.0年)にほぼ一致しているのは興味深い。

以上のように、期待インフレ率の値を知るのは難しい。しかし、次のことは確実に言える。それは、「2年後にインフレ率が2%を超えていることはありえない」ということだ。なぜなら、先に示したように、2年後の1年債のフォワードレートは0.17%だ。そして、予想実質金利もリスクプレミアムも正の値である。したがって、期待インフレ率が0.17%より高いことはありえない。図に示した結果では、少なくとも8年後までは、期待インフレ率が1%を超えることはありえないのだ。

(週刊東洋経済2013年5月25日)


 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2013年5月27日 10:48:28 : niiL5nr8dQ
http://diamond.jp/articles/print/36488
第10回】 2013年5月27日 伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授、総合研究開発機構(NIRA)理事長]
長期金利上昇の裏に秘められた物価連動国債利回りの急激な下落

黒田ショックに揺れる長期金利

?長期国債の利回りである長期金利が、一般の人に注目されることは通常はあまりなかった。株価や為替レートはいろいろな意味で私たちの生活に

直接関わってくるが、国債利回りの動きは新聞紙上の話で、私たちの生活とはあまり関係ないからだ。その意味で、長期金利は市場のプロたちの世

界の話であった。

?もちろん、私たちの日々の生活に関係するその他の金利、たとえば預金金利や住宅ローン金利は、国債利回りである長期金利の動きと連動して

いる。世の中にはさまざまな金利があるが、それらはすべて強い相関をもって動く。それでも、多くの人の関心は預金金利や住宅ローン金利に対するも

のであり、国債利回りではなかった。

?その長期金利に世の中の関心が集まりつつある。日本銀行が大胆な金融緩和を行い、長期国債を大量に購入する。その動きを受けて、長期金

利が大きく変動し始めたのだ。そして、大胆な金融緩和策で市場が動くほど、日本政府が抱える膨大な公的債務への注目も集まる。長期金利は

国債価格でもある。長期金利が上昇を始めれば、総理大臣は国会で「日本の財政運営に懸念はないのか?」といった質問を受けることになる。

?4月に日本銀行の黒田東彦総裁が、長期国債を大量に購入する大規模な量的緩和策を発表してから、長期金利は急速に低下し始めた。そ

れ以前、安倍晋三政権になってから白川方明前総裁のもとでより踏み込んだ金融緩和策がとられたときにも、長期金利は低下傾向を示していた。

長期金利は様々な思惑が重なり合って決まる

?日本銀行が長期国債を大量に買えば、長期金利が低下するのは当たり前だと思う人も多いかもしれない。しかし、話はそう簡単ではない。「長期

」という名前が付いていることにも象徴されるように、長期金利は足もとでの長期国債の需給動向だけでなく、将来の経済の動きを反映する存在であ

るからだ。

?現実にも、黒田総裁が就任してから、長期金利は大きく変動することになる。就任時の3月中旬には0.6%前後の水準であったのが、4月の金融

緩和を受けて一時は0.3%に近い水準まで下落した(4月3日)。しかし、それから1ヵ月ほどで、今度は上昇に転じ、5月23日午前には一時1%に

まで急上昇した。その後は下落して0.8%台で推移している。

?これだけ大きな変動をしたということに、市場が日銀の大胆な金融政策に対応できず、大きく揺れていることが見て取れる。0.3%台から0.8%台

への変化というと、しょせんは1%以下の低い水準での変化と思われるかもしれない。だが、国債の価格変動ということであれば大変な変化なのだ。

?この間の金利変動のなかで、金融機関が保有している国債の市場価値は大きく動いたことになる。すぐに国債を売買するわけではないので、金融

機関の損失や利益となるわけではないが、大量に国債を保有する金融機関にとって長期金利の今後の動向は大きな不安要因であるだろう。

大胆な金融緩和策が長期金利に及ぼす影響

?そもそも日本銀行が大量に長期国債を購入すると、長期金利は下落するものだろうか。少し考えればわかると思うが、これはそう簡単なことではない

?たとえば10年物国債の利回り(代表的な長期金利の指標)を考えてみよう。これは今後の10年間にかけての利回りである。当然、これから10年

間、金利(短期金利)がどのように推移していくかに関する予想に大きな影響を受ける。金利が上昇していくと予想されるなら、長期金利もそれを反

映して高くなっていくだろう。逆に、これからも低金利の状況がずっと続くと予想されれば、長期金利も低い水準にとどまる。

?日本銀行は足もとの金融緩和をしただけでなく、将来にわたっても金融緩和を続けるというメッセージを出している。2%の物価目標(インフレーショ

ン・ターゲット)を設定したということは、その目標を実現するまで金融緩和を続けるということである。物価はすぐに上昇していくものでもないので、金融

緩和はまだ当分続くことになる。こう考えれば、金利は当分低水準が続くので、長期金利は低く抑えられるということになる。

?ただ、長期金利を考えるとき、もう1つ重要な要因がある。それは物価の動きである。短期金利であろうが長期金利であろうが、すべての金利は物

価の動きに大きな影響を受ける。一般的に物価が上昇していれば、金利もそれを反映して高めになる。もし将来的に物価が上昇していくという予想

が広がれば、長期金利はそれを反映して上昇を始めるはずだ。

市場は物価上昇予想を織り込んでいないのか

?長期金利が上昇してきたとはいっても、まだ0.8%台で推移している。長期金利がこれほど低い水準を維持しているということは、市場は当分、日

本の物価が上昇しないと見ているのだろうか。

?日本銀行は2015年までの2年間で、物価上昇率を2%にまで持っていくとの目標を掲げている。もしそれだけのスピードで物価上昇が始まることを

市場が信じていれば、長期金利はもう少し高くなってよいとも思える。

?ただ、4月に大胆な金融緩和をしてから1カ月くらいは、長期金利は0.55%から0.6%あたりの非常に低い水準にあったので、この時期に比べれ

ば金利が高くなっている分、物価上昇予想が少しずつ金利に織り込まれていると見ることもできる。

?国民に対する物価予想のアンケートの調査結果を見ると、デフレの終焉、あるいはある程度の物価上昇を予想する人が増えているようだ。

?市場関係者が物価予想の指標として使うものに、BEI(ブレーク・イーブン・インフレーション率)という指標がある。通常の国債の利回りと物価連動

国債の利回りの差をとった数値である。

?通常の国債の利回りには物価予想が織り込まれている。これに対して、物価連動国債はインフレによって価値が毀損するリスクがないので、その金

利は物価予想を含まないものとなっている。その差であるBEIの水準は物価上昇の予想を示していると考えることができる。

?このBEIは確実に上昇のトレンドを示している。特に、安倍政権が発足してからは、その上昇スピードが少し速まってきているようだ。こうした動きから

も、市場が物価上昇の予想を織り込んできたと言えなくもない。

物価連動国債の金利は下がり続けている

?大胆な国債購入を行うことで、物価上昇の予想が入っていない物価連動国債の金利で示される長期金利は、相当な規模で下落している。ただ

、物価上昇予想を織り込んでいる通常の国債利回りは、下がっていないかあるいは少し上昇している傾向にさえある。したがってその差であるBEIは

上昇傾向にあって、2%の水準に近づいてきている。

?BEIの数字はあくまでも参考程度のものかもしれないが、今の市場状況をうまく表しているように思う。物価連動国債の利回りが下落傾向にあると

いうのは、日本銀行の大胆な金融緩和が非常に効いていることを示唆している。一方で、通常の国債利回り(長期金利)はそれよりかなり高くなって

おり、BEIが2%近い数値になっているということは、市場がそれなりに物価上昇の予想を織り込んでいるということでもある。

?長期金利だけを見ると、この2つの動きの両方が織り込まれているので、全体の動きが見えにくくなっているのだ。物価連動国債の利回りの下落と、

BEIの上昇という2つが重なっており、長期金利は依然として1%以下の水準にとどまっている。

?ところで長期金利の動きには、まだいくつか重要な要素がある。

?1つは、将来の景気動向や資金の動きの影響である。将来の景気が良くなると見れば、そして資金がよりリスクの高い投資に回ることで国債に回る

資金が細ってくれば、それに応じて長期金利は上昇を始めるはずである。

?もう1つ、長期金利に大きな影響を及ぼすのは、日本の国債に対する信用度である。もし財政危機のリスクが高まれば、長期金利は急騰すること

になる。欧州で起きたことを思い出してほしい。幸いなことに、日本ではまだこうしたことは起きていない。

?次回以降、日本銀行の金融政策の影響や、財政政策との関係など、長期金利についてもう少し詳しく論じていきたい。 


02. 2013年5月27日 11:07:16 : niiL5nr8dQ
【第2回】 2013年5月27日 小幡績
国債ハイブリッド・バブル
国債市場は、説明できない高価格が継続する「バブル」が続いてきた。日本の財政状況は悪化の一途をたどり、国債は暴落すると言われ続けたが、暴落しない。この不思議な安定性を維持する状態を、名づけて「ハイブリッド・バブル」。その基本構造は、2種の投資家に支えられている。

暴落しない不思議なバブル

 この20年間、国債は暴落すると言われ続けた。なぜか。

 それは、日本政府の財政状況が世界最悪だからだ。2012年9月末時点で、政府債務残高は総額1000兆円と、先進国ではダントツに大きい。世界ではジンバブエに次ぐ水準だ。しかも毎年の借金額は加速度的に増加しており、国債発行残高は948億円にのぼる。

 国債はデフォルト(債務不履行)すると思われて当然だ。時期について見解が分かれるものの、いつか破綻するだろうことはコンセンサスになっている。

 にもかかわらず日本国債は高い価格を維持し、安定した低利回りを実現してきた。だから、これを人びとは「国債バブル」と呼ぶ。リスクが高く、高リスクに見合った利回りが得られないのに、高い価格で投資家がいまも買い続けている。説明できない高価格の継続、すなわち「バブル」というわけだ。

 なぜ暴落しないのか。それは、独特の国債の価格形成、および、暴落しそうでしない状態をうみだす構造を有しているからだ。私はこの構造を「ハイブリッド・バブル」と名づけた。ふたつのタイプの投資家が、テールリスク(発生確率はきわめて低いが、発生すれば甚大な影響を与えるリスク)の捉え方の違いにより、それぞれの合理性を持って、一方の投資家は売り、他方の投資家は買っている。この2極に分かれた投資家の存在と、その相互作用が“ハイブリッド”であり、この構造が、国債市場の安定性をうみだしているのだ。

3つのカテゴリーの投資家

 ここからは、より具体的に、「ハイブリッド・バブル」の構造を説明しよう。

 まず、日本国債の投資家は、3種に分けて考えられる。分類は、国内外の投資家にかかわらず、その投資行動の違いによる。

 第1は、常に投資からの利益最大化を狙う投資家である。ヘッジファンドや海外投資家の多くが典型だ。彼らは早く、かつ、速く動くので、市場をリードし掻きまわす存在になり得る。ただし、日本国債は彼らの基準に照らせばハイリスク・ローリターンだから、これまでほとんど買わなかった。

 第2はファンダメンタルズにしたがう投資家で、ほかの資産より国債が割安なら買い、リスクに応じて保有額や満期を調整する。メガバンクなど大手の金融機関や多くの年金基金がこれにあたる。

 第3は、冒頭のべた財政破綻リスクを無視して「限定合理的」に国債を買い続ける投資家だ。主に、信用金庫や信用組合といった中小金融機関や、生命保険、ゆうちょ銀行・かんぽ銀行がこれにあたる。

 第1の投資収益の最大化を狙う投資家は、少なくともこれまでは日本の国債市場で出番がなかったので、ここでは考えない。

 つまり、国債市場には、第2と第3の投資家それぞれが安定的に存在している。第2の投資家の均衡価格はファンダメンタルズに基づいて決まる。財政破綻リスクを無視する第3の投資家たちの均衡価格はそれより高くなる。そして、双方が融合した場合、新しい均衡価格はその中間に決まる。

 新しい均衡価格は、第2の投資家にとっては従来価格より高くなるので保有株を売りやすくなり、第3の投資家にとっては従来価格より安くなるので割安に買い増すことができる。双方にとって望ましいため、この均衡はきわめて安定的となる。両者の中間に価格が決まるということは、ファンダメンタルズ価格より高い水準であり、これが暴騰や暴落もせずに続くのである。これが「暴落しないバブル」が維持されてきた仕組みだ。

安定性を強化する投資家特性

 しかも、ファンダメンタルズに基づいて行動する大手金融機関など第2の投資家、財政破綻リスクを無視して買い続ける「限定合理的」な第3の投資家は、いずれも金融機関が多い。資金調達の多くを、預金に依存している。このため、資金制約上、無限に国債を買えるわけではないし、制度上、ある程度の国債は持たざるを得ない。要は、無茶な売り買いをする投資家は国債市場にいなかったのである。

 第2と第3の投資家それぞれが安定していること、そして、双方の安定的メカニズムが「同時に」存在する状態が、国債市場の安定性をいっそう強固にしているのだ。この“ハイブリッド”構造による安定性があるため、外国人投資家など投資収益を追求する第1の投資家が空売りを仕掛けるなどしても、付け入る隙はない。過去に暴落する可能性があった何度かのショック時も、すぐに均衡を回復し、安定を取り戻せたのは、この“ハイブリッド”メカニズムのおかげなのである。

 しかし、黒田日銀の“異次元”金融緩和で、このハイブリッド・バブルは変調をきたしつつある。次回はその変化を議論しよう。いよいよ国債は暴落するのか? ※次回公開は5月28日です。

<新刊書籍のご案内>

ハイブリッド・バブル  日本経済を追い込む国債暴落シナリオ


暴落しない静かなバブルは、
国債依存症となった金融機関の安楽死、
ひいては日本経済の安楽死につながる。

 日本の国債が暴落リスクと隣り合わせと言われながら、高価格・低金利を維持してきた「不安定な安定性」の均衡メカニズムを分析し、黒田東彦総裁率いる日本銀行が国債買い上げを進めることでこの均衡が崩れ、普通のバブル化を起こしつつある現状と今後の見通しを明らかにします。果たして国債バブルは崩壊するのか?大口保有者である金融機関の未来は?非効率な国債への資金投下が続く日本経済の行く末は?今後を考えるうえで示唆を得られる1冊です。ご一読ください!


03. 2013年5月27日 20:59:06 : e9xeV93vFQ
>市場とかけ離れる、日銀の物価動向判断 フォワードレートが証明する「2%物価目標達成」の難しさ

部分的には一致してる

 

 

日銀議事要旨:見通し期間後半にかけ2%達成困難と複数委員が指摘

  5月27日(ブルームバーグ):日本銀行は27日午前、4月26日に開いた金融政策決定会合の議事要旨を公表した。「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をめぐる議論で、大方の委員が2015年の見通し期間の後半にかけて「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとの見方を示したのに対し、複数の委員が達成は難しいとして反対意見を表明した。

うち1人の委員は、不確実性の高い見通しを示して仮にその見通しが下振れた場合、日銀の物価見通しや金融政策に対する信認をき損する恐れが大きいと述べた。佐藤健裕審議委員と木内登英審議委員が物価見通しについてそれぞれ提案を行ったが、反対多数で否決された。

消費者物価(生鮮食品を除く)の前年比について、何人かの委員は「物価連動債から算出される予想インフレ率(BEI)や各種アンケート調査をみると、足元、市場や家計の予想物価上昇率が上昇している」と述べた。これに対し、ある委員は「こうした指標の動きは消費税率引き上げのがい然性の高まりを織り込んでいる可能性もあり、直ちに予想物価上昇率が高まっているとは解釈できない」と指摘した。

一方、別の1人の委員は「昨年11月末以降BEIは上昇を続けて」いるとし、4月4日に打ち出した「量的・質的金融緩和」の決定後は「そのテンポが早まっている」と指摘した上で、「これは消費税率引き上げ予想の高まりというよりも、金融政策のレジーム・チェンジに関する市場の見方を反映した動きである」との見方を示した。

債券市場はなお不安定

量的・質的金融緩和の効果についても、意見の対立がみられた。複数の委員は「当初、市場は金利の押し下げにつながる大規模な国債の買い入れと、金利の押し上げにつながる『物価安定の目標』の早期実現への強い姿勢とが相反するものと受け止めて動揺した可能性がある」と指摘した。このうちの1人の委員は「債券市場の不安定さは潜在的にはなお続いている」と付け加えた。

別の1人の委員は「日銀が大規模な国債の買い入れを行う中での金利上昇は、予想物価上昇率の高まりとその背後にある実体経済の好転を示唆している可能性がある」と述べた。これに対し、ある委員は「金融機関のポートフォリオ・リバランス行動は名目金利の動きに規定される側面が強いため、金利上昇によりリバランスが遅れることが懸念される」と述べた。

足もとの資産価格の上昇については、1人の委員が「バブルを懸念する声も聞かれるが、企業収益等のファンダメンタルズを反映したものであり、過大評価とはいえない」との見方を示した。また、消費税率の引き上げ前後の時期の物価動向について、ある委員は「消費に追加的な下押し圧力がかかることを懸念して、小売業者が需給バランスの改善分の価格の引き上げを先送りすることも考えられる」と指摘した。

白井さゆり審議委員が展望リポートの分かりやすさやリスク要因の記述の明確化の観点から議案を提出したが、反対多数で否決された。景気判断については、景気は下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられているとの認識で一致。先行きについても、年央ころには緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。

記事についての記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/05/27 10:07 JST


04. 2013年5月27日 21:22:15 : e9xeV93vFQ
2013年 5月 27日 12:38 JST
銀行は融資拡大を=黒田日銀総裁 
By TATSUO ITO


Bloomberg News
黒田日銀総裁

 【東京】黒田東彦日銀総裁は26日、都内で開かれた日本金融学界の会合で講演し、「デフレからの脱却過程は、金融システムが活力を取り戻していく過程でもある」と指摘、資本基盤の強固な商業銀行に対し積極的に融資を拡大するよう要請した。日銀は、金融機関の融資増がデフレ脱却のカギを握っているとみている。

 日銀はまた、4月に打ち出した前例のない金融緩和により金融機関が国債から株式や外国資産などよりリスクの高い資産に資金を移動させる「ポートフォリオ・リバランス効果」が働くことも期待している。さらに、広範な国債利回りの低下や、2%の物価上昇率目標に向けてインフレ期待が高まることを目指している。

 黒田総裁は、邦銀は現在、大量の不良債権を背負っていた1990年代と違い、融資を拡大するとともに、金利上昇などの外部ショックに耐えられるだけの資本を保有していると指摘した。同時に、融資の利ざやが小さいため、銀行は「活力やダイナミズムあふれる姿」を持てないでいるとの認識を示した。

 総裁はまた、最近の統計では買収・合併(M&A)や不動産、天然資源取引に関連した銀行融資は増加しているが、中小企業向け融資は依然「低引き続き低迷している」と述べた。日銀がこのほど発表した4月の銀行貸出残高は前年同月比2.1%増加し、2009年7月以来の伸び率となった。

 総裁は、長期金利の動向について1―3%ポイント上昇しても、経済・物価情勢の改善を伴う限り、「金融システムが不安定化する懸念は大きくない」と語った。これは、利ざやの改善と株価の上昇とともに、融資が拡大することで、銀行は利益を増加できるとみているためだ。

 その一方で、景気回復や利ざやの拡大を伴わず、財政状況をめぐる懸念から金利が上昇すれば、金融機関は国債保有で評価損を抱えることになり、「負の影響が強くでる」恐れがあると警告した。

 日本の財政は先進国で最悪となっており、政府債務残高は国内総生産(GDP)の約200%に達している。総裁は、「何よりも重要なのは、財政健全化や成長戦略を実行することだ」と強調した。

 黒田総裁は、「現時点では、資産市場や金融機関の行動において、過度な期待の強気化を示す動きは見られていない」とも述べた。


05. 2013年5月29日 01:37:28 : e9xeV93vFQ
【第4回】 2013年5月29日 小幡績
金融機関、金融市場、そして日本経済の安楽死
日銀の金融緩和政策により、目下、金利や利回りが乱高下している。短期的には長期金利の安定化に成功するかもしれない。しかし、日銀依存が強まり、中長期的には財政破綻リスクや名目金利急騰リスクが高まっていくだろう。その結果、何が起こるのか? 

リスクは中小金融機関に集積する

 まず、大手金融機関などファンダメンタルズに基づいて行動する投資家は、長期国債の保有を一段と減らし、外債やETFなどほかの運用資産に資金を移す。一方、中小金融機関などは、価格下落リスクに目をつぶり、より満期の長い国債を積極的に買って利回りを確保せざるを得ない。有力な融資先が少ないなか、金融緩和により満期の短い国債の利回りが相対的に低下するためだ。

 その結果、国債はこれら中小金融機関に寄せられていく。保有量以上にリスクテイク量は高まり、デュレーション(満期までの平均残存期間)の急速な長期化によって国債市場のリスクは極端に中小の金融機関に偏り、溜まり、集積することになる。

 これまでの国債市場では、2つのタイプの投資家−−大手行などファンダメンタルズに基づく投資家と、中小金融機関など価格下落リスクに目をつぶる「限定合理的」投資家−−のバランスがとれており、さらにお互いが同時に存在することで、安定性を強化していた。それを私は「ハイブリッド・バブル」と名づけた。しかし、この構造が崩れていく。 

 これは、きわめて危険な状態だ。リスクを集積させている主体は、規模、財務状況、運用の選択肢および経営の選択肢、いずれからいっても、もっとも脆弱な金融機関だからだ。

なぜ暴落しないのか

 市場の崩壊寸前といえるが、しかし、それでも暴落は起きない。

 なぜなら、このリスクを集積させた中小の金融機関は、国債価格下落に反応しないからだ。反応できないと言った方が良い。つまり、損失を限定するために投げ売りをしようとはしない。小規模な地域銀行や信用金庫などは、国債以外にめぼしい運用先がない。国債の投げ売りをしても運用の代替手段がなく、企業体として生き残れない可能性が高い。だから、彼らは国債を投げ売らず、ただ、破綻しないこと、金利が急騰しないことを祈るしかない。

 もし国債価格の下落が進めば、中小金融機関は国債を抱えたまま破綻し、それにより地域経済も破綻する。しかし、そうはならない。この危機を回避するために政治は動くはずで、政府は資本注入を行ったり、中小の金融機関同士の合併などを促進する政策をとるだろうし、そうするしかない。

結局、日銀?

 しかし、もっと手っ取り早く安直な方法がある。政治は、その禁断の果実に手を伸ばすだろう。

 つまり、日銀に国債をさらに大量に買わせるのだ。欧州危機においても同じような措置がとられたが、すなわち、金融機関を資本注入で救済し、同時に時価が暴落した保有資産の買い支えを行い、金融資産のさらなる暴落による破綻を防止する。

 このシナリオの可能性は高い。なぜなら、日本では国債危機が、社会にも政治家にも「危機」と認識されないからだ。国債がなかなか暴落しないため、国債発行自体が悪いという流れにならない。したがって、日本経済が危機を迎えても、国債発行に歯止めがかからない。投げ売りする代わりに、国債を抱えたまま実質債務超過に陥った中小の金融機関は、じっと政府や日銀の救済を待つだろう。これが「金融機関の安楽死」だ。目に見える暴落がおきず、抜本的な再建でなく、安易な日銀による国債買い支えが行われるだろう。

 このとき日銀は、金融機関が保有する国債を時価よりも高く買い取り、現金を注入し、実質的な資本注入を行うだろう。一方、長期国債の年限の長いものを市場で買い支えるだろう。しかし、このふたつの手段は、すでに日銀が取っている政策だ。そう、実は、日本国債危機は始まっており、危機対応も始まっていたのだ。

 これが、現在の日本国債市場であり、今後の国債市場のゆくえである。

 このメカニズムは、金融機関の収益を支える。年限の長い国債を金融機関が買って、たとえば数年間保有すれば満期の短い国債となり、日銀が高く買ってくれるゾーンに入ってくるから、日銀に高く売りつけることができる。こうすれば、長期の国債の利回りと同時にキャピタルゲインも確保できる。リスクを取らずに確実な利益を上げられて、金融機関は収益不足を補える。

 もちろん、このノーリスク・プラスリターンのゲームを「限定合理的」投資家だけに楽しませるわけにはいかない。ほかの投資家も参入してくる。こうして、日本国債は今後、長期物からバブルが膨らんでいく可能性がある。

金融市場、そして日本経済も安楽死

 金融市場の使命は、資本をもっとも効率的に使って、もっとも多くの付加価値をもたらすことのできる地域、産業、あるいは企業に分配することにある。また、その金融市場の代わり、あるいは補完として、資本を最適に配分する機能を果たすのが金融機関だ。しかし日銀の買い入れが極限まで広がったとき、金融機関や金融市場は慢性疾患的な機能不全に陥り、本来果たすべき機能を放棄する。多くの金融機関が思考を止め、このゲームで確実に勝つために、資金を国債に配分する。こうして、金融市場の値付け機能も資金配分機能も失われていくのである。これこそが、「金融市場の安楽死」だ。

 これはいわば、日本金融市場という運用者が、国債に過度に資金配分すれば、政府部門という付加価値をもっとも生み出さない部分に集中したポートフォリオを組むことである。その結果、経済全体で生み出される付加価値は、潜在的な付加価値創出能力を大きく下回る。日本経済そのものの非効率化がすすみ、日本経済の成長力が失われる。これが、GDP成長率の低下、すなわち、日本経済低迷の原因、失われた20年の根源的原因であり、日本経済の「安楽死」につながる。

 前述の通り、国債は暴落しない可能性が高い。しかしそれは、暴落という価格メカニズムがはたらかないだけで、暴落しないことが国債発行の正当性を示しているわけではない。俯瞰してみれば、国債の大量発行が金融機関を通じて吸収されている現状は、実質的に、日本経済において国民の貯蓄を強制的に撤収し、わずかな利子だけを払い続けていることと同義である。

 日本経済を立て直すためには、まず、政府支出を減らし、国債発行を減らすことが重要である。財政再建を行い、国債発行を減らす必要がある。あまりに基本的なことだが、「原点回帰」。これしかない。

次回は5月30日更新予定です。


06. 2013年5月29日 01:46:17 : e9xeV93vFQ
【第50回】 2013年5月29日 森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
「出口戦略」を誤ると経済は大混乱
カギは財政健全化へのコミットメント
異次元金融緩和に潜むリスクがジワリと顕在化しつつある。リスクを大きくしないためには、「出口戦略」が重要だ。その中核をなすのは、政府の財政再建に向けてのコミットメントである。このことの認識を政府がしっかり持つことがリスク軽減に役立つ。

 23日東京市場の株価が1000円以上急落した。翌日株価は反転したが、週明けの月曜日には再び500円近い下げとなった。アベノミクス、異次元金融緩和のリスクの大きさを改めて認識させる貴重な急落であった。今後、異次元金融緩和の「出口」に向けたハンドリングを誤ると経済は大混乱するだろう。

 未だデフレ脱却も果たしていないのに、出口戦略を語るのは早すぎるという意見もあるが、リスクを語らない経済政策というものは、あり得ない。

「出口戦略」のもたらすリスク

「出口」を簡単に定義しておくと、2年後に消費者物価2%の上昇(消費税率引き上げ分を除く)という目標の到達が視野に入ってきたとき、その時点の経済情勢を踏まえて、どう物価をコントロールしていくのかという点についてのあらかじめの政策だ。

 わかりやすく言うと、異次元金融緩和で大量の国債などを保有した日銀が、その保有資産を経済混乱なしにどう処理していくのか、ということであり、異次元金融緩和が財政ファイナンスではなかったということを市場に認識させることでもある。

 出口戦略がうまくいかないと、異次元金融緩和は、経済を大混乱に陥れる可能性が高い。以下のような局面(リスク)が考えられる。

 例えば、インフレターゲット達成後、ただちに金融引き締め、日銀保有国債の市場売却を行えば、国債価格は大暴落し、金利は急騰するリスクが大きい。

 あるいは、異次元金融政策が人々の将来に対する前向きの期待を高め、土地や株といった資産価格の高騰を引き起こす一方で、実体経済に火がつかず物価も目標に届かぬ場合、一層の金融緩和を進めることになるが、それは資産バブルにつながっていく。バブルは必ず破裂するわけで、経済は大混乱し、巨額の赤字を抱えるわが国の国債は暴落する。

 もう一つ、物価がターゲットの2%を達成した際、円安が進んで輸入インフレになる可能性も十分ある。インフレによって長期金利が急騰していけば、大量の国債を発行している政府の利払いは急速に増加し、経済成長に伴う税収増があっても財政は悪化する。

 このように、さまざまなシナリオのもとで、出口をしっかり押さえておかなければ、わが国の財政状況が注目を浴び、異次元金融緩和政策は実際には財政ファイナンス(マネタイゼ―ション)ではないかと判断され、日本国債の信用度の維持が焦点となる。その際には、政府がいかに財政再建にコミットしているか、それを具体的な政策として採用しているかが、投資家たちによって厳しく問われるのである。

 つまり、出口戦略というのは、金融政策の話ではなく、財政政策の話で、政府・日銀が、それぞれの役割を分担しつつ、有機的に機能しているかどうかが問題とされる。これが出口戦略の本質だ。

重要な財政政策に向けたコミット

 このように考えると、政府の財政政策に向けたコミットを以下のように考えていく必要がある。

 まず2014年4月に予定されている消費税率8%への引き上げである。この実施について安倍総理は、「秋口に判断」といっているが、4〜6月の景気動向がわかる第1次QE(GDP第1次速報)の発表時である8月下旬には決断を行い、財政健全化に向けた政府の確固たる方針を、世界に知らしめることが必要ではないか。自民党政調会長は判断時期を10月まで遅らせるべきだと発言したが、逆である。

 次に、消費税率10%の引き上げに向けての政策である。2015年にプライマリー赤字半減という政府目標達成は、消費税率10%を前提としている。2014年の消費税率引き上げ後には、前倒し消費の反動もあり、景気はある程度落ち込むと予想されるが、そこで、2015年10月消費税率10%という法律決定にひるむ姿を見せてはならない。反動減の経済落ち込みを埋める最小限度の補正予算編成は必要になるかもしれないが、それは10%を実行するためのものである。

消費税10%でも黒字化のメド立たず

 最大の問題は、消費税率を10%に引き上げたところで、わが国のプライマリーバランス(基礎的財政収支)を2020年に黒字化するという目標には、およそ達成のめどは立たないということである。

 だからこそ、異次元緩和の出口戦略の重要なポイントは、10%引き上げ後の財政政策を考慮しておくことである。そして、財政健全化は、日銀に異次元金融緩和を求めた安倍政権の責任であるという認識を政府が持つことだ。

 このような認識なしには、出口は果てしないバブルとその崩壊による経済混乱、あるいは金利高騰・国債暴落による経済混乱のどちらかに終わることは目に見えている。

 では、消費税10%引き上げ後の財政健全化策は何か。それは、言い古されてきた社会保障改革を中核とした歳出改革、歳入(税制)の分野でいえば、地方税改革を中核に据えた法人税改革、加えて所得税の課税ベースを拡大していくことによる地道な増収策の実施であろう。

 政府の財政再建へのコミットが弱すぎるという外国投資家の見方は現在根強く存在している。その見方を転換させるためにも、消費税率引き上げのコミットメント、その後の財政運営について、経済財政諮問会議に任せるのではなく、安倍総理自身が、その決意をタイミングを見計らってきちんと示す必要がある。

 


 

【第281回】 2013年5月29日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
“激震”株式市場の今後を展望する
バブル期にもよくあった
利食い売りによる“激震”

 5月23日に日経平均で前日比1143円安の大幅下落となった株式市場の“激震”は、翌日にも上下の値幅が1000円を超える乱高下を演じ、さらに週明けの28日にも469円安と“余震”が続いた。

 暴落の初日には、中国の経済統計の悪化などが一応の材料として挙げられたが、主な原因は「利食い売りの集中」に尽きるだろう。

「期待」のレベルから日経平均で8000円台からスタートしたアベノミクス相場は、調整らしい調整を経ずに、ほぼ一本調子で1万5000円台まで駆け上っていたので、何かのきっかけがあれば、利食い売りが集中して大きく調整してもおかしくはなかった。

 大まかに言うと、株価水準が1万円のときに株式を買った人も、1万1000円のときに買った人も、1万2000円のときに買った人も、いずれも「儲けを確定するために売りたい」と思っていたはずで、これにきっかけが与えられると、彼らの売りが集中する。

 加えて、上昇した株価で買った人のストップ・ロス(損切り)の注文や信用取引で買っている人たちの証拠金不足に伴う売りなどを巻き込んで、下げ幅が拡大する。

 急落相場のこうしたパターンは古典的なものであり、1980年代後半のいわゆるバブルの時期にあっても、上昇相場の途中に、今回のような急落局面がときどき節目をつくりながら推移することがよくあった。

 急落があると、株価はしばらく上昇ペースが鈍り、あたかも地固めをするかのように下値を固めつつ、再び上昇してやがては高値を更新する、といった動きが典型的だ。

 アベノミクスと共に株式投資を始めた人の場合、政策が株価上昇を目指しているのだから、政策が目標とする水準まで株価が上がり続けて当然と思う向きもあるかも知れないが、ときどき今回の急落のような調整局面がある方が普通である。

 今回は、1万5000円台までの株価の上昇があまりに一本調子であったことが異例だったし、そのぶん潜在的な利食い売りの溜まり方が大規模だったため、荒っぽい値動きになったものと考えられる。

 今回、値動きを激しくした理由として、ヘッジファンドやHFT(高頻度取引)などの影響が挙げられているが、こうしたものがなくても、大きな値幅での調整は起こっていた公算が大きい。

急落場面では現状の確認を
株価はまだ「大いに安い」レベル

 一般に、こうした急落場面があったときは、株価の位置や投資環境、自分の投資の状態などを改めて点検し、確認しておくいい機会だ。

 前週末比469円安の急落を経た27日月曜日のマーケット(日経平均は1万4142円)では、東証一部の平均PERは16.1倍となった。これを益利回りに直すと、6.2%となる。名目成長率の政府見通しは2.7%(2月28日閣議決定)であり、両者を足し合わせると8.9%もある。長期金利は0.83%なので、両者の差は8%強となる(リスクフリーレートを長期金利、利益成長率が名目GDP成長率と同じでかつ一定と仮定した場合の「リスクプレミアム」に相当する)。

 この方式で計算したリスクプレミアムに対する筆者の高安判断は、リスクプレミアム6%なら株価は「普通」、7%なら株価は「安い」というものなので、現状は「大いに安い」と言えるレベルだ。

 主に円安を受けて企業の業績見通しが改善していることが効いているように思うが、たとえば、トヨタが想定為替レートを90円と保守的に見ている(儲けすぎ批判を警戒したのかも知れないが)ことなどから見て、業績には十分余裕がありそうだ。

 相変わらず、株価に一番影響のありそうな材料は為替レートだが、日銀は暗黙のうちに意図的な円安誘導を行っていると考えられ、加えて、一連の国際会議で日本の金融政策については主要国から一定の理解を取りつけており、リーマンショック前の1ドル110円程度の水準に問題はなさそうだ。

 また、4月4日の「異次元緩和」発表の記者会見で、黒田東彦日銀総裁が「株式のリスクプレミアムにはまだ圧縮の余地がある」(株価は上昇余地がある、と言っているのと同じことだ)と言っていたことなどから考えて、株価自体も経済政策の「手段」として意識されているように思う。

 政策面では明らかに「買い」だ。

 米国の金融緩和の「出口」がそろそろ気になる頃合いだが、バーナンキFRBは景気が十分良くなければ出口には向かわないだろうし、出口に向かう段階ではドル金利が上昇する可能性が大きく、これは円安材料だ。

 一方、欧州の低迷は長引きそうだし、中国経済の減速が心配だが、相場には常に心配が付きものだし、米国が好調なら、外国要因の影響はプラスないし中立と見ていいのではないだろうか。米国の好調は、中国や欧州のサポートにもなる。

この局面でどうすればいいのか?
投資家が今、やっておくべきこと

 それでは、今の局面で、個人投資家はどうすればいいのか。もちろん、将来について確かな見通しは立たないので、絶対にこうだと言える投資行動は少ないが、筆者なりに思うことが3つある。

 第一に、これまで株式投資で儲けてきた投資家は、そのまま投資ポジションを維持すべきだろう。80年代バブルのような大相場では、調整局面で一度株式を手放してしまうと、その後にそれよりも安い株価で買うことが難しく、買い場を掴めずに次の上昇に乗り遅れる場合があるのが通例だ。

 特に、今回の調整は、大きな上げ相場のまだ1回目の調整であり、株価も十分割安なので、投資ポジションを維持してマーケットに留まり続けるべきだろう。

 第二に、現状は、これまでアベノミクス相場に参加できていなかった投資家が、株式投資に参入するいい機会ではないか。たとえば、年初よりも株価が大幅に高いのは事実だが、株価が買いたい値段まで戻ってくれる保証はない。

 現在、株価水準自体が高くないことに加えて、「先頃の1万5000円台で買うよりも、安く買える」という満足感があるので、参加しやすいはずだ。

 参加の手段は、国内株では、ETFを含むTOPIX連動型のインデックス・ファンド、外国株では複数の国に総合的に投資するインデックス・ファンドの購入を勧める。

外国債券の投資信託は
解約したほうがいい

 第三に、現在の円安を利して、毎月分配型ファンド、あるいは通貨選択型ファンドなど、外国債券に投資する投資信託を解約することだ。

 手数料が高いことと、毎月分配する仕組みが税制上有利でないことから、円安になっても円高になっても、これらのファンドは解約した方がいい商品だ。しかし、円安が進んだ今なら、「分配金も合わせて考えると、儲かっている」という投資家が多いのではないだろうか。それが確認できたら、さっさと解約してしまう方がいい。

 本当のところを言うと、円安でも円高でも、儲かっていてもいなくても、こうしたファンドは避けるべきだし、持ってしまっていれば、直ちに解約すべきなのだ。しかし、「儲かっている」とき、あるいはせめて「最悪よりもマシな」ときでないと、解約に動きにくいのが人情だ。

 自分がお持ちの場合、あるいはご家族・親戚(高齢者が買っている例が多い)がお持ちの場合に、今なら、解約に踏み切ることができる公算が大きい。自分の行動、あるいは他人へのアドバイスのチャンスかも知れない。

 まだ円安になるのではないかと思われる方は、もっと手数料の安い外貨建てMMFなど別の為替差益狙いの商品に乗り換えるほうが得だし(円高になっても損がマシだ)、外国株式に投資しても円安のメリットが得られる。また、現在国内株も円安には好反応する。

 いずれにせよ、相場の急落時は自分の資産運用を見直すいいチャンスだ。

 


 


【第98回】 2013年5月29日 高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]
“異次元の金融政策”で異次元に入った債券市場
管理相場の新たな次元「市場との対話」へ
――高田創・みずほ総合研究所チーフエコノミスト
世界大恐慌後の
時間軸と国債暴落

 下記の図表1は、今から12年前の拙著『国債暴落』 (注1)において、米国の大恐慌(1929年)後の道筋と、日本のバブル崩壊(1990年)が起点となった時間軸とを合わせて描いた概念図である。

 バランスシート調整に伴う調整は長期を要し、その道筋には類似性が生じるとの事例を米国の大恐慌の歴史的事例を参考にしたものである。12年前、日本の調整はすでに10年を超えていたが、米国の事例を振り返れば、一層の長期化が生じ得るとの認識にあった。

 米国の調整も大恐慌発生から22年で完了したなか、現段階でも日本は調整完了に至っていない。過去12年を振り返れば、2007年まで日米の調整のペースは比較的同じ時間軸で進んでいたが、米欧の2007年から6年のバランスシート調整で、日本の調整進展の断絶が生じた。


拡大画像表示
日本の債券市場も
管理相場化に

 筆者の認識は、日本は2007年から6年の足踏みを経て、米国の1945年「ペギング」の局面、すなわち図表1の「構造改革(第2期)」として国債管理政策が新たな次元で強化される管理相場の局面になったと考える。

(注1)「国債暴落」(高田創・住友謙一 中央公論新社 2001年)

 それは、国債市場から見れば、金融政策が一体になった管理相場が短期だけでなく長期国債の分野に及ぶことを意味する。

 米国は大恐慌の後、1945年から10年国債金利を実質的に2%の水準で固定化、「釘付け(ペギング)」状況が続いた。その背景には、米国では1945年当時、国債保有の主体は国内銀行を中心とした保有構造にあるなか、急速な金利上昇に伴う金融機関への変動を回避することと、同時に財政の持続性への不安を低下させて安定的な国債の発行を実現させることにあった。以上の環境は、今日、日本とも共通する。

異次元の金融緩和と
管理相場化

 以上の流れから見て、2013年の「異次元の金融緩和」は、米国の大恐慌時の「ペギング」の発想に類似した管理相場の第一歩を踏み出したのではないかとの認識を筆者は抱いている。

 同時に、そうした局面においては一層の財政再建シナリオも含めた財政規律を市場に示す必要が生じる。また市場参加者としては、国債市場の価格変動が抑えられ、管理相場下に向かうという観点から「変質」が生じているとの認識をもつ必要がある。これは、日本に止まらず、QE3という観点から国債購入を強めた米国にもあてはまるものである。

国債管理の三位一体策

 それでは、こうした環境における出口に向けた課題はなんだろうか。それまでの20年の調整期間では、いくら金融拡張でバランスシートを拡大しても金利上昇にはつながらなかったが、金融政策の効果が生じれば生じるほど、為替の円安や資産価格上昇に伴って金利上昇を招く。

 ここで、2%の物価目標の実現は容易でないなか、金融緩和継続は一段の資産価格上昇を導く。かかる環境下、外貨資産へのシフトと債券から株やクレジット商品への金融機関のポートフォリオリバランスが生じうる。

 その副作用は、従来大量の国債を保有する金融機関への問題と国債の発行コストが上昇することに伴う財政の持続性不安にある。すなわち、債務の負担が逆流し、国債暴落で国や金融機関に負担が戻ることで、債務調整がぶり返すことにある。

 さらに回復が進めば、貸出拡大も含んだ信用拡張で実物の世界の拡張に伴うインフレや経済の過熱不安にある。こうした状況では、図表2のような「三位一体策」として、金融システム、財政、物価の安定に対し同時に目配りを行なうことが、出口戦略で不可欠になる。


金融機関は体質改善に

 先の図表2での「三位一体戦略」を構成する、金融機関、政府、日銀のそれぞれの課題はなんだろうか。

 まず、金融機関は国債中心のバランスシートからの多様化が必要で、それに対応し、政府は発行当局として国債管理政策が不可欠だ。金融機関としての積極的なポートフォリオシフトに止まらず、それに対応した国債管理政策として、たとえば物価連動国債などの発行の多様化が必要になる。

 米国が大恐慌からの出口で「ボンドコンバージョン」として非市場性国債への転換を行なったことも、1つの参考事例だ。同時に、政府とすれば、財政規律を一層強化し追加発行圧力を少しでも低下させることで、金利上昇圧力を抑制することが必要になる。景気回復のなか、税収増加を追い風にした対応が不可避である。

金融政策の目標も柔軟に

 一方、金融政策では2%の物価目標が掲げられたが、それは現在のようなマインド転換を印象付ける局面では、象徴的な効果がある。しかし、指標たる消費者物価水準は、実際には世界的な低インフレの環境下、世界的にも2%には上昇しにくい状況にある。

 我々は、2013年以降の米国経済の改善のなか、日本経済の回復を見込むが、2%の物価目標への道筋は2014年も2015年も描けない。そうしたなか、日本だけが金融緩和拡大を続けることが過度な資産価格の上昇など、副作用を招く可能性がある。

 そうした環境下、日銀は先の三位一体の安定を維持すべく、物価目標から「総合判断」に目標を弾力化させて、機動的な対応を行なうことも展望される。

新たな次元での市場との対話と
一体化で長期金利水準を模索

 長期にわたるバランスシート調整からの脱却には、先の国債管理の三位一体策として、日銀、政府、市場は一体となって、緊密な状況でエグジットに向かう必要がある。こうした構造は日本のように、国債の保有主体が9割以上国内で完結する状況においては、不可避な状態である。市場との対話のなかで、時間をかけながら丁寧に行なうことが重要だ。

 2013年の展望は、市場との対話を従来以上に行いながら、長期金利水準の居所をつかみに向かう過程ではないか。その水準は長短金利差や今日のように貸出の伸びが本格化せず、貸出金利の低下が続く運用難の状況を前提に考えれば、1%近い水準になるのではないか。

 グローバルにも生じるディスインフレ的状況では、1%近い水準を大きく超える水準も、現在のような期待先行の局面では持続的でない。一方、その水準を大きく低下した水準が続くと期待するのも困難だろう。
http://diamond.jp/articles/print/36621


07. 2013年5月29日 02:01:44 : e9xeV93vFQ
債券市場:ついに終末の到来か?
2013年05月29日(Wed) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年5月25日号)

債券利回りは非常に低いが、日本の例は利回りがまだ低水準にとどまる可能性があることを示している。

 債券バブルは起きているのだろうか、そしてそれはもうすぐ破裂するのだろうか? 英国の政治週刊誌「スペクテイター」は2011年9月にバブルの存在に言及した特集記事を掲載した。利回りは今、その当時よりさらに低い。

 1990年代後半のドットコムブームに懐疑的な人なら思い出すように、資産バブルの絶頂期を判断するのは極めて難しい。歴史を振り返ると、2%以下の利回りで国債を買うことは、実質ベースで投資目的を果たしていないことが分かる。例えば、1945年に2%の利回りで米国債を買った人は、1989年まで購買力が増加することはなかった。

 だが、このルールには1つの重要な例外がある。日本の10年物国債の利回りは、1998年に2%台を割り込み、それ以来ほぼ一貫してそれより低い水準で推移している。デフレのおかげで投資家はまだ実質ベースでプラスのリターンを稼ぐことができている。日本の債券市場が下落する方に賭けることは、これまで勝ち目のないゲームだった。

 経済が停滞している中では、金利が低水準でとどまるのは妥当なことだ。米国の経済学者のポール・クルーグマン氏は、債券利回りは本質的に将来の短期金利の予想値であると指摘する。短期金利が近い将来、危機以前の水準(4〜5%)に戻る可能性は極めて低いように見えるため、債券バブルが起きているとは思えないという。

日本の利回り上昇は潮目の変化の兆候か


 特に日本では、最近の債券利回りの上昇を潮目が変わり始めた兆候だと見る人もいる。

 だが、右図が示しているように、利回りは著しく低い水準から上昇しているに過ぎない。ドイツと日本では、利回りはまだ2012年初めの水準より低い。

 アベノミクスと2%のインフレ目標は、一部の国内投資家に債券を売り、株式に乗り換えるよう促したに違いない(5月23日の株価急落は長い株価上昇の後に起きただけだ)。

 外国人も、円が下落している間は、日本の債券を購入することにあまり乗り気ではないかもしれない。


大規模な量的緩和プログラムに乗り出した日銀〔AFPBB News〕

 いずれにせよ、日銀の量的緩和プログラムの巨大な規模は、当局が、利回りが高くなり過ぎたと感じた場合に、再び利回りを下げるための多くの武器を持っていることを意味している。

 国債市場の終末論的な見方は、多額の財政赤字と中央銀行の紙幣増刷の組み合わせが最終的に急激なインフレ昂進をもたらすというものだ。

 この見方は長期的には正しいことが判明するかもしれないが、まだその兆候はほとんど見られない。

 インフレ率は全般的に低下しており、通常の国債とインフレ連動債との利回り格差で測られる予想インフレ率にも同じことが言える。実際、日本の経済政策は、他国ではデフレ圧力として働くかもしれない。円安で日本の輸出業者が競合他社より安く売ることが可能になるからだ。

「あと1回の景気後退で日本流の全面デフレ」

 1990年代終盤から債券利回りと株価バリュエーションの低下という「氷河期」理論を展開してきたソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、アルバート・エドワーズ氏は、「我々は今、あと1度短い景気後退があれば、日本流の全面デフレに突入するところにいる」と言う。

 国債利回りの大幅な低下は、企業の借り入れコストにも同様の影響を及ぼしてきた。市場の最も危険な部分であるジャンク債の洗練された呼び名はかつて「ハイイールド(高利回り)」だったが、それは今、誤った名称になっている。

 投資適格格付けを持たない米国企業は、5%を切る金利――過去最低水準――で借り入れを行っている。米連邦準備理事会(FRB)の理事、ジェレミー・スタイン氏は2月、「コベナンツ・ライト(条件の緩い)」ローンやPIK債券(利払いが現金ではなく追加の債券で行われる債券)のような投機的要素が市場に戻ってきていると指摘した。

 債券発行は活況を呈しており、格付け機関スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によると、今年1〜4月期に1兆2000億ドル相当の債券が発行されたという。

 だが、S&Pのライバルであるムーディーズの最近の調査リポートは、こうした状況は必ずしもバブルの証拠ではないと述べている。

 第1に、国債に対する社債のスプレッド(超過金利)は、大方の人が信用バブルが発生していたと見なす2006〜07年の水準ほど低くない。第2に、企業は、バランスシートを膨らませるのではなく、むしろ過去の債務を借り換える手段として債券を発行している。

 そして第3に、企業のデフォルト(債務不履行)率は過去の基準から見ると低く、特に米国では、利益がよく持ちこたえている。

転換点は恐らく今年ではない

 とはいえ、社債は本質的に国債よりも脆弱だ。世界がエドワーズ氏の言う氷河期で震えているとすれば、国債は魅力を保つだろうが、社債のデフォルトは増加するだろう。そして、インフレ論者が正しければ、社債の利回りは、国債の利回りとともに急上昇(価格は急落)するだろう。

 そのため、債券投資家は終末に直面するかもしれないが、タイミングを予測するのは難しい。インフレ昂進、中央銀行の突然の政策変更、そして(社債にとっては)深刻な景気後退への逆戻りが起きれば、破壊的な結果になりかねない。だが、恐らく今年ではないだろう。


 


 


小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! トップ | 次の記事 »
精彩を欠いていた黒田総裁の5/22の記者会見
2013/05/27 (月) 14:39


 先週の話になってしまい恐縮なのですが、5/23の株価暴落が起きた1日前に、黒田日銀総裁がどんな記者会見を行っていたかご存知でしょうか? そして、ご存じならば、それについてどのようにお感じになっているでしょうか?

 株価下落が起きた後の記者会見であったとしたら、恐らく質問は株価に集中していたと思うのですが、あの時は長期金利の上昇に関心が集まっていたために、質問は主に長期金利に集中したのですが‥

 主な質問と、それらに対する回答をご紹介したいと思います。

(問) 長期金利は、足許では、1%を窺うような水準に上がっています。4 月に金融緩和を決める頃よりもむしろ上がっているということで、この理由をどう分析しているのか、お聞かせ下さい。

(答) 長期金利は、5 月の初めにかけて一旦低下した後、欧米の長期金利の上昇や本邦株価の上昇、為替の円安進行などを背景に上昇しています。

 長期金利は、先行きの経済あるいは物価情勢に関する見通しに、債券を保有することに伴う様々なリスクに応じた、いわゆるリスク・プレミアムが加わって形成されています。日本銀行の巨額の国債買入れには、このリスク・プレミアムを圧縮する効果があり、その効果は、今後買入れが進むにつれて強まっていくと考えています。従って、こうした「量的・質的金融緩和」による強力な金利低下圧力のもとで、長期金利が跳ね上がることは予想していません。

(問) 4 月の緩和を始めてから、長期金利の数字だけでみても、水準はともかく比率的にはかなり上がっていると思います。最初に「長期金利を下げる」とおっしゃっていて、実際には上がってしまっているのは何故なのか、総裁がどのように受け止めているか教えて下さい。

(答) 金利には物価上昇や景気回復の期待の要素があるわけです。これらの要素は、おそらく次第に金利を上昇させていく要素だと思います。他方、保有残高が年間約50 兆円に相当するペースで増加するように行う国債の買入れ、あるいは全体としてマネタリーベースが年間約60〜70 兆円のペースで増加していくことにより、様々な形でのリスク・プレミアムの圧縮という効果も実際にはあるわけです。

(問) 本日発表された4 月の貿易統計では、輸出は確かに伸びてきていますが、数量ベースでみると前年比はまだマイナスです。円安が進み始めたのが昨年12 月頃からと思いますが、過去の円安局面ではもう少し早く数量ベースはプラスになっていたと思います。日本経済の構造的な面で、かつてと違う動きがあるのかどうか、ご所見をお願いします。

(答)輸出数量については、いわゆる「Jカーブ効果」と言われますが、為替レートが変動して直ちに輸出数量が変動するのではなく、一定のタイムラグを置いて輸出数量に影響が出てくる現象だと思います。タイムラグについては、一般的な理論はないと思いますが、6 か月ないし9 か月などとも言われています。「Jカーブ効果」によって、数量増加に一定のタイムラグを要するということです。もちろん、企業が生産拠点を大規模に海外展開していることの影響もあるかもしれませんが、為替が輸出に影響するという基本的な構図は変わっていないと思います。


 大きく2種類の質問を紹介させて頂きました。

 (1)異次元緩和策は、長期金利を下げる狙いがあった筈なのに、何故長期金利は上がっているのか?

 (2)円安が急速に進んでいるのに、輸出数量が伸びないのは何故か?
 そして、これら2つの質問に対して、黒田総裁がどのように答えたかと言えば‥

 長期金利が上がっている理由については、

 長期金利は、将来の経済成長率と物価に関する予想が反映される他、リスクプレミアムが反映されるので、先行きの経済成長や物価の上昇が予想されると長期金利に上昇圧力をかけ、逆に、リスクプレミアムが小さくなれば、長期金利に下降圧力をかける。日銀による大量の国債の購入策には、そのリスクプレミアムを小さくする効果があるので、今後、その効果が効いてきて長期金利を引き下げることが期待される。

 如何です、この考え方?

 長期金利には、将来の経済成長率見通しと物価予想が反映される他、リスクプレミアムがそれらに上乗せされるという考え方は、私も理解できるのです。そして、それが日銀の公式の見解だということも承知しています。

 しかし、解せないのは、日銀が国債を大量に購入することが、国債のリスクプレミアムを引き下げるという考え方です。

 どうして日銀が国債を大量に購入すると、国債を保有することに伴うリスクが小さくなると言えるのか?

 私には、どう考えてもその理屈が分からない。

 その一方で、日銀が国債を大量に購入すると、国債の利回りを、その瞬間、大きく引き下げる効果があると言うのはよく理解できるのです。

 何故ならば、日銀が国債の購入者として市場に乗り込み、どれだけでも国債を買いまくる訳ですから、国債の価格が上り、利回りは低下する筈だ、と。

 しかし、そのことと、実際にリスクプレミアムが低下するというのは、全く別の話ではないのではないでしょうか?

 それどころか、もし、こうした日銀の政策が、ある程度の期間経過後、大きく見直されるようなことにでもなれば、益々ボラティリティは高まり、リスクは大きくなるのではないかと思われます。

 はっきりと言って、黒田総裁のこの答弁に合格点を上げることはできないのです。

 では、次の質問に移ります。

 円安が急速ピッチで進んできたのに、何故輸出数量は伸びないのか?

 これに対し、黒田総裁が何と答えたかと言えば‥今、Jカーブ効果が表れており、そのため輸出数量が伸びていないだけだ、と。

 結論を先に言えば、この答弁にも合格点は上げることができません。それは、2つの意味で満足のいく解答ではないからです。

 先ず、黒田総裁が、今、日本で起きている現象がJカーブ効果によるものだと言うのがそもそも納得がいきません。

 確かに、黒田総裁が言うとおり、円安の効果が輸出数量にまで及ぶのに時間がかかることが、Jカーブ効果の主な原因だというのは分かるのですが、Jカーブ効果というのは、為替安が起きても当初は、むしろ貿易収支が悪化するということを意味する一方で、質問者は、貿易収支のことなど聞いていないので、その意味でJカーブ効果という言葉をここで引用するのがピンとこないのです。

 それに、仮にJカーブ効果があったとしても、円安に伴い輸出数量が減少するなどという現象は、普通は起きる筈はないのです。
 
 普通は円安が起きれば、輸出数量が増えるのです。但し、輸出数量が増えるには時間がかかる、と。そして、そのことは誰でもが理解できる。しかし、円安によって輸出数量が減少することは理解できません。

 そうでしょ?

 記者の質問には、何故、輸出数量は減少を続けているのかという意味が込められているのです。それに対して、黒田総裁は、Jカーブ効果のために輸出数量が増えるのには時間がかかる、と。

 確かに輸出数量が増加するのに時間がかかり、それはJカーブ効果と呼ばれるものと関係しているのはそのとおり。しかし、幾らJカーブ効果を認めるからと言って、円安によって輸出数量が減るなどと主張する人は普通はいないのです。

 そうでしょ?

 つまり、輸出数量が減少を続けているのには、特別な理由があり、それについて黒田総裁は答えるべきだったのにも拘わらず、Jカーブ効果のために輸出数量が増加するには時間がかかるだなんて。

 先日、このブログで紹介したとおり、4月の輸出数量は、対世界では、マイナス5.3%になっているものの、対米国では、4.5%の増加になっており、円安の効果が既に表れているのです。そして、その一方で、対EUについては、マイナス12.6%となっており、そこにはEUの経済成長率がマイナスで推移していることが反映されているのです。因みに、対中国との関係でもマイナス4.9%となっていますが、その理由については、皆さんお分かりのことだと思うのです。

 ということで、黒田総裁の5月22日の記者会見の内容は、精彩を欠くとしか言いようがありません。

 先ずは、日銀が大量の国債の購入を行うことによってリスクプレミアムを引き下げることになるという根拠を分かりやすく説明するのが先決ではないのでしょうか。もし、それが可能であればの話ですが。

以上


  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民80掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

アマゾンカンパ 楽天カンパ      ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民80掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧