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円安・株高・債券高は基調転換を迎えたのか 市場動向を読む(債券・金利) (東洋経済オンライン) 
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/151.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 5 月 30 日 01:05:01: igsppGRN/E9PQ
 

http://toyokeizai.net/articles/-/14122
2013年05月29日 石井 純:三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ債券ストラテジスト :東洋経済オンライン


前回(5月3日)の本欄では、4月の波乱の債券相場を受けて、2通りの長期金利シナリオを提示した。

一つは、今年度の債券運用計画が連休明け後から実践され、日本銀行と民間投資家のいわば国債争奪戦による『超・需給相場』が現実化し、長期金利は例えば0.40%台へと再低下し、低位安定するというストーリー。もう一つは、民間投資家が国債争奪戦の不戦敗を決め込み、外国債や株式をはじめとするリスク性資産に運用対象をシフトさせる『ポートフォリオ・リバランス』を活発化させるため、長期金利はさほど下がらないというストーリー。

筆者は前者の可能性の方が高いと予想した。ところが、実際は一段の金利急上昇が債券市場を襲った。具体的には次のような経緯だ。

■米国の長期金利に連動して日本も長期金利上昇

長期金利は4月後半からの3週間、0.60%前後で保合っていたが、5月10日から忽然と上がり始め、15日には昨年4月26日以来の高水準となる0.920%に達した。引き金は米債安と円安・株高を材料にした売り仕掛け。これによって、メガバンクのリスク量を圧縮する目的の債券売りが誘い出され、金利上昇を必要以上に加速させたようだ。

9日に発表された米失業保険申請件数が市場予想よりも下振れしたことから、FRB(米国連邦準備制度理事会)による金融緩和政策の『出口戦略』が早まるとの思惑が強まった。米長期金利が1.90%台に上振れすると、足踏み状態だったドル円相場は円安が再加速、心理的な抵抗線だった1ドル=100円をついに突破した。

日経平均株価は13日、そのような円安進行を好感して416円高と急反発。逆に債券は売り込まれ、先物取引では同日午後、量的・質的金融緩和(4月4日)後で6度目となる売買一時停止措置(サーキット・ブレーカー)が発動された。翌14日にはメガバンクによる中期債の大口売りが噂され、債券先物取引では連日のサーキット・ブレーカーが発動されるなど動揺が深まった。

そうしたなか、日銀は15日、1年物の固定金利オペ2兆円を実施。「やや長めの金利の急激な上昇に対応するため」(金融市場局)とのコメントも付し、金利上昇を抑制しようという姿勢を明確にした。債券市場はこの『シグナル・オペ』を受けてようやく小康を取り戻し、長期金利は週末17日に0.795%まで低下した。

■長期金利急騰、株暴落、円急反発

ところが、嵐はこれで終わらなかった。長期金利は翌週に反発に転じると、23日に一時1.000%と1年2カ月ぶりの高水準まで上振れした。

きっかけは再び前週末の米債安。米景気の楽観的な見通しが広がったことによる。そして、週の初め、20日の黒田発言が火に油を注いでしまった。黒田東彦日銀総裁が月例経済報告で「経済物価の先行き見通しの改善で金利が徐々に上昇していくのは当然」と一般論を展開。債券市場参加者はこれを、金利上昇を事実上容認した発言と自虐的にも受け止めた。21日の40年利付国債入札は慎重ムードのなか、当然、低調な落札結果に。

22日には、日銀が政策委員会・金融政策決定会合で金利上昇の抑制策を打ち出さなかったため、それを期待していた向きからいわゆる失望売りが出た。黒田日銀総裁が会合後の記者会見で「(大規模な国債買い入れの弾力運用で)引き続き金利に下押し圧力」「(長期金利の抑制に)引き続き尽力していく」などと述べ、市場の日銀不信を払拭しようとしたが、地合いは好転しなかった。

そのため翌23日、長期金利は大荒れの展開を強いられた。前日の米長期金利の2.0%台乗せ(FRBによる金融緩和の早期解除に対する警戒感が高まったことによる)などを手掛かりに、朝方から債券先物に売りが集中。9時前に前日比1円安に張り付き、異次元緩和の決定後8度目となるサーキット・ブレーカーが発動された。

9時過ぎに売買が再開された後も大幅に続落。日中取引の値幅は2円4銭と、4月5日(異次元緩和の決定翌日、3円34銭)以来の大きさに。現物市場では狼狽売りが誘い出され、長期金利が1.000%を付けた。日銀は10時過ぎに長期国債買い入れオペの8100億円、1年物の固定金利オペの2兆円をオファーし、後者について「長期金利の過度なボラティリティ拡大に対応するため」とコメントした。

23日午後からは各市場の様相が一変した。発端は、5月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)が49.6と市場予想から下振れしたうえ、好不況の分かれ目とされる「50」を7カ月ぶりに割り込んだこと。中国景気の先行き不透明感を再認識させられた株式市場では、このところ相場が過熱していたこともあって利益確定売りが殺到した。

日経平均株価は下げ幅を急激に広げ、結局、1143円安の1万4483円に大暴落となった。1ドル103円前後まで下落していた円相場は買い戻しが入って100円台へと急反発。債券も買い戻され、長期金利は0.825%まで急低下した。今週もこのような円高・株安・債券高の流れが持続し、長期金利は0.80%台前半で弱含みにもみ合っている。

■債券市場は自縄自縛の悪循環に

こうしたなか、債券市場の目下の関心は、『乱高下相場は一体いつまで続くのか?』『混乱が収束するとき、長期金利の居所は?』に集中している。背景には、金利水準が落ち着きどころを見つければ、今年度の債券運用を本格稼動させたいという考えがある。しかし、その予測は困難を極める。乱高下は『自縄自縛の悪循環』だからだ。

つまり、投資家のリスク管理指標の一つである金利ボラティリティ(変動性)が今回のようにひとたび上振れすると、投資家のリスク許容度が低下し、売買高が細って流動性が低下する。そのため、金利が売り(仕掛け)に過剰反応する格好で上振れし、ボラティリティもさらに上昇し、高止まりしてしまう。市場は混乱収束への糸口をなかなか掴めない。混乱はいきおい長引く。そこで、過去の経験にヒントを探ってみた。

長期金利のボラティリティ(ここでは前日比変化率の20日間の標準偏差・年率換算値)は、4月4日の異次元緩和決定と前後して跳ね上がり、ピークが120%弱に達した。5月24日現在では90%弱まで沈静化している。近年で100%を超えた場面は、1999年12月の“資金運用部ショック”前後および2003年6月からの”VaRショック”による債券相場暴落という2度観察される。いずれも本欄で取り上げて解説したことがある。

当時の日柄調整の期間<金利急上昇直前の大底から大天井までの営業日数、終値ベース>をカウントしてみると、前者が53日、後者が58日だった。一方、今般は5月24日現在で34日。50〜60日間を経験的な目安とすると、現在は未だ、6合目という評価になる。

こうしてみると、長期金利はあと2、3週間、ボラタイルな地合いを強いられ、その間は直近の終値最高値である0.885%(5月22日)を超える場面もあるかもしれない。とすると、23日以降の動きを円高・株安・債券高への基調転換と判断するのは拙速ということになる。


 

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コメント
 
01. 2013年5月30日 10:02:33 : niiL5nr8dQ
#コンセンサスは遠い
 


今までとは異質な「これからの円安」を考える

沈静化が困難になるリスクには要注意

2013年5月30日(木)  深谷 幸司

 先週後半から急ブレーキが掛かった円安・ドル高の流れ。株式相場の急落が発端ではあるが、円相場についても、最近の急ピッチな下げに対する警戒感がくすぶっていたことは否めない。

 それでも、円安・ドル高の大きな流れは今後も止まらないだろう。足元の調整場面でも、1ドル=100円を超える円安圏は維持している。やはり、「アベノミクス」「黒田緩和」といった言葉に表象される安倍晋三政権の経済政策運営が円安を促す、という解釈は定着したままだ。

一段の円安進行は「手放しの礼賛」とはならず

 もちろん、政策の影響が大きかったことは疑いようがない。少なくとも、市場心理にしっかりと「円の先安観」を植えつけることに成功したと言える。過去の75円台の「行きすぎた円高」が修正されたのは日本経済にとって好ましい。しかし、ここからさらに円安が進んだ場合の日本経済に対するマイナスの影響も徐々に懸念されつつある。

 確かに「手放しの円安礼賛」とはいかない面もあり、企業を取り巻くマクロ環境、世界経済の状況を併せて考え、頭に入れておくべき点もいくつかある。

 現在の円安・ドル高は、過去の円安や株高の局面と背景が大きく異なっている。今回はまず、同じ円安進行でも、過去の局面と足元との相違点を踏まえ、改めて今の円安の特徴を中長期的な視点から再考してみよう。

円の対ドル相場の推移

 前回の中長期的な円安局面として思い起こされるのは、上のグラフにある左側の円で囲んだところ。2004年から、サブプライム問題・リーマンショック前の2007年にかけて、101円台から124円台まで20円強も円安が進んだ場面だ。

 このときの円安は、その後のリスク回避環境における円高とはまったく逆の状況下で進んでいた。あるいはその後のリスク回避の円高は、前回の円安の反動で生じたと言ってもよいかもしれない。

 グローバル経済は先進国も新興国も揃って好調を維持しており、世界全体の成長率は2002年以降徐々に加速。2006年には5.4%に達していた。1980年代以降で見ても、世界の成長率が5%台に乗せたのは初めてのことだ。

 こうした異例の高成長のなか、日本だけが超金融緩和政策を維持。内外金利差は年々拡大し、円が独歩安となる地合が整っていた。日米間を見ても、米国では金利先高観が明確で、2年物国債利回りは2003年の1%から2006年には5%台に上昇していた。トレンドとしての円安・ドル高が緩やかに進む材料は整っており、他の通貨に対する円安も淡々とかつ過度と思われる水準まで進んだ。それが2007年に一転し、歪んだ円高へと突き進むこととなった。

「歪んだ円高の修正」という火に油注いだ「黒田緩和」

 次に、今回の急速な円安・ドル高局面を迎える前の状況について、「何が歪んだ円高をもたらしていたのか」を確認しておこう。

 歪んだ円高をもたらした最大の要因は、言うまでもないが、米国のサブプライム問題であり、リーマンショックであり、米国景気をはじめとする先進国経済全般の景気後退であり、欧米の金融システム不安であり、さらには欧州債務問題である。そうした中で、リスク回避の円高が進んだ。

 日本はすでに不良債権問題をこなしており、「安全通貨」とみられた。また経常黒字国であること、対外債権国であることが「円の安全性」を担保していると考えられた。リスク回避や海外の超低金利化により、本邦投資家の対外証券投資は激減。投機的な動きもあいまって円高が進み定着することとなった。

 しかし、2011年ごろから次第に状況は変化していた。まず欧米の金融システム不安は沈静化した。資本注入やリスク圧縮により実体経済にネガティブなインパクトをいまだに残してはいるが、懸念は解消している。傷ついた米国の家計のバランスシートも、株高と住宅価格の上昇により癒え始めた。米国の中古住宅価格はすでに昨年の春先から前年比プラスに転じ、回復基調が続いていた。米国経済は景気拡大基調を昨年来維持している。欧州債務問題もギリシャ問題、スペイン問題にひとまずけりがついて、大きな峠を越えている。

 さらに円の「安全通貨神話」にも翳りが生じた。東日本大震災を契機に原発停止から燃料輸入が大幅に拡大。さらに長引く円高によって中小企業に至るまで生産拠点の海外移転が進み、輸出が減少するとともに国内製品からの輸入代替が進んだ。貿易収支は大幅な赤字に陥り、一方で対外直接投資は高水準が続く。為替需給はむしろ円売りに傾いていた。

 2012年は、こうした変化を無視するかのごとく、なおも円高に踏みとどまっていた状態だった。おそらく、それが解消するのは時間の問題だったとみられ、「アベノミクス」「黒田緩和」がなくとも、自然体で円安・ドル高が進んだであろう。

 これらの効果は、明確なメッセージによって急速なマインドの変化をもたらし、修正の動きを加速させた点にある。例えて言うなら、乾いた薪が積み重なり、その上に油まで撒かれたところに、明確な火を点けたのが「アベノミクス」であり、燃え盛る薪の炎にさらに油を注いだのが「黒田緩和」だろう。

現状は「購買力平価」で見た適正水準から円安気味に

 では、現在の円安の特徴は何か。100円を大きく超えない範囲においては、円安ではなく、「円高の修正」と捉えるのが妥当であろう。為替相場水準に関する企業アンケートの回答をみると、妥当な水準として90円台ないし100円程度とする意見が多い。長きにわたり70円台にとどまる為替相場に憤りの声が多く聞かれた。

 これは、二国間の妥当な為替水準を推測する際によく用いられる購買力平価で考えると分かりやすい。購買力平価とは、過去に為替相場が均衡水準にあった時点を基準点として、その後の物価上昇率の差で、現在のあるべき水準を探る手法である。

対ドルでの円の購買力平価と実勢相場

出所:国際通貨研究所
 インフレ率が相対的に高い通貨の価値は下落する、つまり通貨安となってしかるべきと計算される。日米の場合、常に米国の物価上昇率が高いため、購買力平価の長期トレンドは円高・ドル安の傾きを持っている。

 計算で用いる物価指標によって様々な結果がもたらされるが、貿易収支や企業の経済活動を考えた場合には、消費者物価指数ではなく企業物価指数を用いるのが妥当だろう。1973年を基準にこれを計算すれば、今の購買力平価は96円程度となり、企業のアンケートに示された水準と一致する。

 また海外旅行で物価を比較する個人の感覚としても、妥当なところではないか。したがって、90円台あるいは100円近くまでの円安・ドル高は、それまで割高だった円の水準が修正されたと見るべきだろう。

 これはいくつかのことを意味する。

 まず、円高・ドル安が定着していたことが歪みであるならば、いずれは市場メカニズムによって修正されたであろうということ。すなわち、「アベノミクス」や「黒田緩和」がなくても、早晩、円相場が100円に達していた可能性は極めて大きかったということだ。

 もう1つは、そのスピード、すなわち円安・ドル高のペースが速くなるのは当然だということだ。相場の常として、新たなトレンドとして相場が形成される場合、そのペースは緩やかになりやすい。新たな相場のトレンドを形成する要因であるファンダメンタルズや金利動向はそれほど急激には変化しない。貿易収支なども然りである。徐々に妥当な水準を模索しながら、新たな資金の流れや投機的な動きが相場を動かしていく。

 しかし、行きすぎた相場からの修正は急速となりうる。というのも、行きすぎた相場水準の裏には、歪んだ投機的ポジション形成がなされていたり、偏った投資家のポートフォリオが形成されていたり、為替相場の見通しに先入観的なマインドセットが形成されているためだ。これらは一気に修正される可能性を秘めており、何らかのきっかけで大きく動き始めることがある。今回はまさにそうした状況下での円安だ。

さらなる円安進行だと沈静化は困難

 こうしたことを踏まえれば、円相場が100円近くまで急速に調整したことは妥当だとしても、この先の円安・ドル高は本来、緩やかとなってしかるべきだろう。あたかも、水面下で発せられた光が、水面上に出る際に屈折して、その傾きが緩やかになるがごとくである。その際、「水面」に例えられるのが、先に述べた「購買力平価」ということになる。

 「ここまでの円安・ドル高」と「ここからの円安・ドル高」は異質なものであり、この先に円安・ドル高が進むとすれば「あらたなトレンド」をサポートする要因として、ドルサイドにおけるポジティブな理由か、円サイドにおけるネガティブな理由が必要だろう。新たなトレンド形成であれば、緩やかな傾きとなってよいはずだ。

 今後、リスクが高まるとすれば、市場が過剰に反応し、想定以上に円安が進んでしまうことだ。今は半年前までとは逆に円安がマインドセットされている。日本にとってネガティブな材料が頻発するようだと、なおさら円安が進みやすい。従来は大幅な貿易黒字のなかでの円安局面だったため、その持続性には自ずと限界はあった。しかし今回は根底で貿易収支が大幅な赤字になっている点が大きな違いだ。

 円安を沈静化するのが難しい状況になっているリスクを、為政者および企業サイドも頭に入れておく必要があるのではないか。そして円安の弊害を被りやすい、あるいは円安のメリットを受けにくい構造に日本経済や企業体質が変化している点にも留意は必要だろう。

 次回は、円安がさらに進む場合、企業にどんな影響がもたらされるか、リスク要因について考えていく。


深谷幸司の為替で斬る! グローバルトレンド

円安進行の加速が目立つ為替相場。1ドル=100円を超え、さらに円安は進むかどうか、市場関係者にとどまらず、企業、そして国民の注目が集まっている。今後の円相場の行方は?また日本、さらには世界の経済はどう動いていくのか?国内外の銀行で為替ストラテジストを長らく務めてきた深谷幸司・FPG証券社長が、各国通貨のパワーバランスに垣間見えるグローバル経済の胎動をとらえたホットな話題を提供する。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130528/248765/?ST=print

 


 

 


 

日本経済、回復までの道のりは山あり谷あり
2013年05月30日(Thu) Financial Times
(2013年5月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


アベノミクスにはリスクが伴うが、先週の株安で成否をどうこう言うのは早計〔AFPBB News〕

 日本経済を活気づけようという試みは先週、難しい局面に突入した。債券利回りが上昇し、株価が下落したのだ。すると早速、安倍晋三首相が打ち出した改革「アベノミクス」は失敗だという声が一部で上がった。これは馬鹿げた話だ。

 確かに、アベノミクスが失敗する可能性はある。だが、債券利回りが上昇しているから失敗だとか、株式市場が大きく変動しているから失敗だという話にはならない。

 それどころか、日本経済が復活するなら、その時には債券利回りが上昇しなければならない。また、株式市場というのは大きく変動するのが常だ。

「アベノミクス失敗」と断じるのが馬鹿げている理由

 大いに必要とされているこの日本再生プログラムにはリスクが伴う。しかし先週の一連の出来事は、そうした危険について何かを物語るものではない。

 確かに、日本国債10年物の利回りは5月6日に比べて0.347%高くなった。だが、それでも0.91%でしかない。この利回りは1年余り前と同じ水準だ。また日経平均株価は5月22日から27日にかけて9.5%下落したが、これは2012年11月13日から2013年5月22日にかけて80%上昇した後の出来事だ。

 さらに、日本円は確かに先週、ドルに対して若干上昇したものの、2012年10月前半の水準をまだ23%下回っている。

 このような動きはどう見ればよいのか? 特に意味などないかもしれない短期的な変動だと切り捨てるのでなければ、どう解釈できるだろうか? 

 ニューヨーク・タイムズ紙のポール・クルーグマン氏は、もし今回の株価下落が単なる大騒ぎ以上のものになるとすれば、それは経済成長が期待したレベルに達しないのではという恐怖感、日本の債務に関する恐怖感、日銀の決意に関する恐怖感のいずれかを反映したものだと述べている。

 第1の恐怖感は株価の下落を説明できるが、債券利回りの上昇を説明できない。第2の恐怖感は債券利回りの上昇を説明できるが、日本円の上昇を説明できない。

 しかし第3の恐怖感は、債券利回りも上昇も株価の下落も円高も説明できる。これらはすべて、金融政策が約束されたものより引き締め気味であることへの反応だというわけだ。従って、3番目の恐怖感が最も妥当と思われる説明になるとクルーグマン氏は結論づけている。

投資家はまだ日銀と政府を信頼

 しかし、これはかなり短期的な動きの分析だ。もう少し長期的な視点から見れば、債券利回りは0.4%に近かった底を大きく上回り、株価も昨年11月の底値から63%上昇している。円相場も直近の高値からかなり下落している。

 このように少し長期的に見る限り、投資家はまだ、日銀と日本政府は先日導入した新しい政策に真剣に取り組んでくれると信じているようだ。2013年第1四半期の経済成長率が年率換算で3.5%に達したことは、この新しい政策とはほとんど関係ないかもしれないが、それでも励みになる。


日銀の政策転換が不安定さをもたらすのは不可避〔AFPBB News〕

 また、日本の政策変更が不安定さをもたらす要因になることも避けられない。

 日銀の政策委員会の委員の一部は、現在の政策スタンスは市場を困惑させていると考えている。インフレ率の引き上げと金利の引き下げを同時にやろうとしている、というのがその理由だ。

 債券市場が大きく変動したことで、黒田東彦・日銀新総裁への批判も出ている。銀行が保有している日本国債に損失が生じれば、経済再生に向けて銀行が貸し出しを行う能力も意欲も損なわれてしまうというのだ。

円安批判は「通貨戦争」の様相も

 円安の進行については外国から批判が出ている。中国・清華大学の李稲葵教授は本紙(フィナンシャル・タイムズ)への寄稿で「世界が目の当たりにしているのは(インフレ率の上昇などではなく)円相場の急速な下落である。この円安は、ほかの国々に対し不公正であると同時に持続不可能だ」と警鐘を鳴らしており、特に東アジアを中心に多くの賛同を得ている。

 これに対し、東京のイトウ・タカシ氏は本紙への読者投稿で「自国の為替レートを切り下げた、あるいは操作した国が、円安にしていると言って日本を非難できるとは聞き捨てならない話だ」と反発している。こうしたやり取りは確かに通貨戦争の様相を帯び始めている。

 これらの議論はどう評価できるだろうか? 第1に、デフレを終わらせ、経済成長を再開させると決意すれば、日本国債の利回りは当然上昇する。インフレ率が年2%の安定した経済になれば、長期金利が0.5%という低水準にとどまることにはならないだろう。

 であれば、先週見られた債券利回りの小幅な上昇は、政策失敗の印などではない。むしろ、新しい政策が成功することを示唆する1つの前兆だ。

新しい政策を成功させるために必要なこと

 しかし、日本が必要としている実質金利の低下をもたらすためには、金利の上昇が予想インフレ率を超えないことが重要だ。

 日銀は長期金利の道筋についてガイダンスを与えなければならない。金利が(恐らくは変動する)上限を超えた時には、無制限で買い入れを行うべきだ。日銀としては、多少の上振れがあっても、短期金利をゼロ%に維持する期間を明示することで、政策を後押しできるだろう。

 例えば、(インフレ率ではなく)物価水準が特定のレベルに達するまで金利をゼロに据え置いてもいい。こうすることで日銀は一定の予測可能性をもたらせるかもしれない。

 次に、政府と日銀は日本の政府債務の山を管理する良い方法を見つける必要がある。いかなる解決策にもマネタイゼーション(貨幣化)という大胆な措置が盛り込まれなければならない。これには恐らく、銀行に対する預金準備率の恒久的な引き上げが必要になるだろう。

 準備率の引き上げは銀行の預金者に負担を課すことになる。だが、日本では、民間銀行に政府への恒久的な超低利融資を担わせることが理にかなう。経済成長の見込みが薄く、民間借り入れが力強い回復を遂げる可能性が低く、公的債務残高が巨大だからだ。

 また、銀行預金に付く低い(恐らくはマイナスの)実質金利は、円安と資産価格上昇、そして個人消費の増加をもたらす可能性もある。こうした効果はどれも極めて望ましいものだ。

 3番目に、円安の効果に関する懸念は理解できる。筆者が4月初旬のコラム「日本の政策転換、やり残した『革命』」で論じたように、経常収支の黒字の拡大は、日本の企業部門の貯蓄超過を相殺する1つの方法だ。

 しかし、ロンバード・ストリート・リサーチのチャールズ・デュマ氏は、李教授の懸念は確かな根拠に基づいていると主張する。中国は世界の経済大国の中で、日本の大幅な通貨切り下げの影響を最も受ける国だからだ。

日中の経済ナショナリズムが衝突する恐れ

 だが、中国は近年、大規模な為替操作を行う国でもあった。本来ここで必要なのは、為替レートに影響を与える政策を律する原則について、国際通貨基金(IMF)主導で議論を行うことだ。これは実現しない。その代わり、安倍首相の経済ナショナリズムが中国のそれと衝突する可能性がある。ゾウ同士が戦った時に傷つくのは草だ*1。

 国内外の不安定化のリスクは確かに大きい。このことは火を見るより明らかだ。だが、日本は低迷から抜け出さねばならなかった。まだ抜け出せる可能性は十分ある。しかし、日本は構造転換を行って初めて最終的な成功を収められる。企業から、株主、政府、労働者へ所得を移さねばならないのだ。

 もっと長期的には、実質賃金の上昇、減価償却引当金の引き下げ、内部留保に対する課税強化、そして配当金の大幅な増額も必要になる。

 結局のところ、安倍首相は金融の操作と為替レートの低下だけに頼ることはできない。確立された日本の企業構造に切り込まなければならない。これを実行すれば正真正銘の革命になるだろう。安倍首相はこれに挑むだろうか? 悲しいかな、筆者はまだ大いに疑わしいと思っている。

*1=東アフリカ地域の諺で、「大きく支配的な者同士が対立した時に苦しむのは無力の弱者」といった意

By Martin Wolf
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37884

 

 

 

 


【第6回】 2013年5月30日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
1ドル100円で正当化できる日経平均は、
1万3000円程度
 株価が大きく変動している。以下では、本連載の第4回「円安は企業利益をどう変化させるか――シミュレーションモデルによる分析」に示したモデルを用いて、現実の株価の評価を試みることとしよう。

為替レートが10%減価すると、
利益は20%増加する

 第4回に示したモデルは、輸出、国内販売、海外生産ごとに、円安が利益にどのような影響を与えるかを分析するものであった(注1)。

 このモデルを用いて、為替レートが10%減価した場合の利益の変化を計算すると、結果は図表1に示すとおりである。海外生産の利益は10%増加するだけだが、輸出による利益は2倍以上に増える。国内生産の利益は、輸入原材料の値上がりのために5%ほど減少する。これらを合わせると、利益の総額は、20.3%ほど増える。

 さまざまの為替レート減価率に対応する利益増加率を図示すると、図表2のようになる。この図からわかるように、両者は比例関係にある。こうなるのは、為替減価率がeの場合の利益率が、第4回で示した式から、e[1-f+fq+(-f+fq)b+qc]/q(1+b+c)となるからだ。比例係数は、2.03である。

(注1)第4回のパラメータにつき、一部修正しておきたい。第4回で述べたように、2012年における総輸入70.7兆円の41.7%に当たる29.5兆円が原材料と考えられる。そして、このうち、上場企業使用分は11.3兆円と推計される。第4回は、この売上高に対する比率2.2%をもってfの値としたが、正しくは、原価(売上高512兆円から、営業利益22.8兆円を控除した489兆円)に対する比率2.3%を用いるべきだった(ただし、結果に大きな差は生じない)。以下では、f=0.023として計算する。

円安と株価の理論値

 株価は将来利益の割引現在価値である。したがって、割引率に変化がないとすれば、1年間の利益がs倍になれば、株価もs倍になる。

 したがって、為替レートが減価し、その水準が永続するとすれば、図表2で示した利益増加率に等しい率で株価が上昇すると考えてよい。

 例えば、それまで一定であった為替レートが20%減価し、その水準が永続するとすれば、株価は為替レート減価前に比べて約40%上昇すると考えてよい。

 このことを用いて、為替レートと株価の関係を分析しよう。

 2012年10〜12月の円ドルレートの平均は、1ドル81.2円であった。他方で、日経平均株価は9590円であった。

 これらの数字をもととして、為替レートと日経平均株価の関係を計算すると、図表3のようになる(注2)。


 1ドル100円の場合に日経平均の計算値が1万3244円、110円で1万4679円だから、現実の株価は過大評価だと言える。

 1万5000円の株価を正当化するには、1ドル113円程度になっている必要がある。また、2万円の平均株価が実現するのは、1ドル180円程度まで円安になる必要がある。

(注2)第4回と同様の計算値を示したが、それは、2013年5月10日における為替レートと株価を所与としての計算であった。ここで示した計算は、2012年10〜12月を基準としたものである。どちらを取るべきかについての客観的な基準はないが、5月を出発点にすると、この時点においてすでに株価が過大評価であれば、それを取り入れてしまうことになる。それを排除するには、ここで行なったように、株価高騰以前を出発点にすることが適切だろう。

計算株価と実際の株価の比較

 上で計算したモデルによる株価と現実の株価の関係を比較すると、図表4のとおりである(以下で用いる現実の株価や為替レートは、週末値である)。


 3月中旬頃までは両者にほとんど乖離はない。つまり、このモデルは、現実の株価の動向をきわめてよく説明している。大まかな方向だけでなく、水準や細かい上がり下がりに至るまで説明している。

 これは、つぎの2つの重要な意味を持つ。

 第1は、昨年秋以来の株価の上昇は、円安というただ一つの要因によってほぼ説明できてしまうということである。

 これを逆から言えば、「株価上昇は、企業の生産性の上昇、新しい事業の開発、需要の増加などの実体的要因によって生じたのではない」ということだ。

 第2は、将来にわたる利益増加は、すでに株価に織り込まれてしまっているということだ。これを逆に言えば、「今後さらに円安が進むのでないかぎり、株価は上昇しない」ということである。

 円安以外の要因が株価に影響したと考えられるのは、つぎの2点だけだ。

 第1は、3月中旬頃から、現実株価の動きがモデルによる計算株価と乖離しだしたことである。すなわち、この時点以降、現実の株価は、計算株価より高い伸び率を示すようになる。両者の乖離は、図表5に示すとおりだ。時間の経過とともに乖離は大きくなり、4月下旬からは、現実の株価は計算株価より10%程度高くなっている。暴落前の週である5月13日の週の乖離率は、15.3%(1.153)である。


 現実株価が計算株価より高くなった理由として、日本銀行が金融緩和を推し進め、金利がさらに低下するとの期待が高まったことが考えられる。株価は将来の利益の割引現在価値であるため、金利が低下すれば、利益見通しが不変でも上昇するのだ。

 第2は、5月23日の暴落である。もっとも、このモデルも、方向としてはこの時点における株価下落を予測している。ただし、現実の株価の下落幅は、モデルの予測より大きいと言えるかもしれない。

 これをもたらしたものは、長期金利の高騰であったのかもしれない。

 3月下旬からの現実株価の計算株価からの乖離が金利低下期待によってもたらされたのであれば、そして、5月23日の暴落が長期金利高騰によってもたらされたのであれば、「株価がバブルを起こし、そして破裂した」とは必ずしも言えない。

「これらは、期待割引率の変化によってもたらされたものだ」との説明が不可能ではないからである。先に、「1ドル100円の場合の計算株価は1万3244円、110円で1万4679円だから、現実の株価は過大評価」と言ったが、これは、「割引率が一定であれば」との前提に基づくものである。

「したがって、ここで述べたモデルだけから株価のバブル性を判断するのは難しい。ただし、期待割引率は現実に観測できる変数ではないので、「期待割引率が変化した」との仮説は検証不可能だ。

 なお、現実の株価を個別企業ごとに見ると、赤字脱却の見込みのない企業の株価までも、昨年の秋から上昇している。これは、短期的売買益を狙ったバブルだとしか考えようがない。

円安だけに依存する利益増は脆弱

 第4回にも述べたことであるが、ここで示したモデルは、為替レートを所与とした場合に利益がどうなるかを計算するものであり、為替レートがどうなるかについては、何も述べていない。また、利益の見通しから株価を計算するには、割引率のデータが必要であるが、ここでは、割引率が不変である場合の株価の上昇率を計算している。

 その意味では、このモデルは、経済的なモデルというよりは、会計的なモデルである。

 また、図表3、4、5に示す計算株価は、2012年10月1日の株価が正しい株価であると仮定して、それからの変化を示すものだ。10月1日の株価が本来あるべき株価に対して過大であるのか過少であるのかは、このモデルからはわからない。

 なお、円安自体が、海外のヘッジファンドなどによる投機によって進んだ可能性がある。それに加え、株価も、現物の取引ではなく、日経平均先物などの先物を用いた投機によって進んだ可能性がある。したがって、株価は、企業活動の実体とはかなり離れてしまった可能性が強い。

 仮に今後も円安が進むとすれば、株価は再び上昇する可能性がある。しかし、円安や株価上昇によって海外の投機家が巨額の利益を得る半面で、円安による原材料の価格上昇や電気代の上昇などが、日本の中小企業や国民生活を脅かすことになる。

「そもそも、企業の利益が、あるいは日本経済の動向そのものが、為替レートによってこのように大きく変動してしまってよいのか?」という問題も考えなければなるまい。投機によって為替レートや株価が大きく変動し、実体経済が一向に改善しない状況は、どう考えても不健全だ。

 企業利益が為替レートで大きく変動するのは、このモデルで示したように、輸出の比重が大きいからである。海外需要は海外生産によって対応し、他方国内では為替レートにあまり大きく左右されない内需中心産業が成長すれば、こうした構図は大きく変わる。日本経済は、そのような方向を目指す必要がある。

●野口教授が監修された経済データリンク集です。ぜひご活用ください!●
http://diamond.jp/articles/print/36694


 


 
 


 

【第333回】 2013年5月30日 
足もとでいったい、何が起きているのか?
方向感を失った「株式・国債バブル」の行き着く先

――小幡績・慶應義塾大学大学院准教授に聞く

アベノミクスで円安・株高に沸いていた日本の金融市場が、足もとで変調をきたしている。5月中旬以降、株式と国債の乱高下が止まらない。まるで方向感を見失ってしまったかのような市場の動きに、投資家の不安は募る。足もとでいったい、何が起きているのか。黒田日銀の「異次元の金融緩和」は、市場の平静を取り戻せるだろうか。金融市場に精通し、かねてよりリフレ政策の課題を指摘して来た小幡績・慶應義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授に、「株式・国債バブル」の行方を詳しく聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 編集長・原英次郎、小尾拓也)

今は典型的な「バブル相場」の動き
株式市場で何が起きているのか?

――アベノミクスで円安・株高に沸く日本の金融市場が、足もとで変調をきたしています。1万5000円を越えて続伸していた日経平均株価は、5月23日、終値ベースで前日比7.3%安となる1万4483円へと暴落。これは、リーマンショックや東日本大震災直後を越え、2000年のITバブル崩壊以降、13年ぶりとなる大きな下げ幅です。その後も株価は乱高下を繰り返し、不安定な相場が続いています。こうした異変の背景には、いったい何があるのでしょうか。


おばた・せき
1967年生まれ。千葉県出身。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授。92年東京大学経済学部卒業、大蔵省(現財務省)入省、99年退職。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。2003年より現職。『すべての経済はバブルに通じる』(光文社)、『リフレはヤバい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ハイブリッド・バブル』(ダイヤモンド社)など著書多数。
 今の株式市場は完全なバブル状態であり、バブル相場特有の動きが出ているということです。とりわけ5月のゴールデンウィーク明けから、明白なバブル相場になった感があります。現に先週末から今週にかけて、株式投資家はバブルであることを認めざるを得ないような状況になっている。

 私の言うバブルの意味は、ファンダメンタルズで見る割安や割高とは関係なく、ほぼ全ての投資家が「今持っている株を隙あらばできるだけ素早く他人に売りつけて、一旦市場から出てやろう」と思っている状況です。彼らは短期で大きなキャピタルゲインを狙っているため、相場は彼らが右往左往することにより、乱高下を繰り返す不安定な相場になります。

 暴落時の狼狽ぶりで明らかなように、皆バブルだとわかっていながら相場に乗っかっているので、アテが外れて大きく下落すると、焦って投げ売り、それが暴落をもたらしているのです。

 今回の上昇相場は、最初に外国人投資家が勢いよく買った後に、日本の株式投資経験の浅い個人投資家が出遅れて買った構図ですが、主に相場が沈んでいるときに塩漬けだった株を売って一度儲け、新たな株に手を出した人、あるいは今回のバブルで初めて市場に参入し、下げに慣れていない人などが、動揺しているのではないでしょうか。

――こうした状況は、アベノミクスの副作用と考えられるでしょうか。

 確かにアベノミクスはバブルをつくりましたが、今回の暴落は具体的な政策がもたらしているわけではない。バブルをつくった結果の、当然の成り行きに過ぎません。意図的にせよそうでないにせよ、誰かが一定量の株を売って、相場が下がる流れをつくったため、皆焦ってそこに乗ろうとして、パニックが起きている。典型的なバブル相場だと思います。

いつまで続くかわからない
乱高下を繰り返す株式バブルの中身

――足もとでは毎日、相場の乱高下が続いています。この調整はいつまで続きそうですか。

 バブルになれば、すぐに暴落して終わりかというと、そうではない。バブルとは続くからバブルなのです。バブルの一番の問題は、いつまで続くかわからないことです。買い手がいなくなったときが終わりの始まりですが、バブルに期待している株の保有者が、できるだけ売りを我慢して先伸ばししようとするので、終わりのタイミングの予測は難しいです。

「これだけ上がったのだから一度は調整がないとおかしい」「調整後はむしろ買いやすくなった」というようなコメントは、市場関係者のポジショントーク。バブルを維持したいという気持ちの表れです。しかし、じゃあ嘘かというとそうでもない。このような願望は短期には維持される可能性がある。

 皆が上がる流れをつくりたがっていれば、あえて売り崩す人は少数派。混乱が一旦収束したら、また上がる流れはつくれる。もう一山できる可能性もありますね。ただ、みんな「今度は売り損なわずに売ろう」と思っているので、次の山は壊れやすいし、次に壊れたらもう崩壊となるでしょう。

 一般的に、バブルは一発では崩壊しません。何度か乱高下を繰り返してから崩壊します。1回小さく崩壊すると、その後は乱高下を続け、本格的な下落が起きるまで、何とか上手く売り抜ける売り場を皆がつくろうとします。今回も同じ可能性があります。もう一度上がるかもしれませんが、今回の下げで皆不安を持っているので、次に下げが来たら「早く逃げよう」と思う人が増え、いつか大きく崩壊するでしょう。

――バブルなのでファンダメンタルズは関係ないということですが、景気が上向き、企業業績の回復が追いついてくれば、バブルの崩壊を伴わずに、相場は底堅い推移を続けるでしょうか。

 あまり関係ないと思いますね。なぜなら、実体が伴いつつある企業の収益増を、投資家はすでに織り込んでいたからです。主な企業の2013年3月期決算はゴールデンウィーク前にあらかた出そろいましたが、プロの投資家はその前までに利益を確定していました。ところが各企業とも、決算でプロの投資家が驚くほど楽観的な今期(2013年度)見通しを出してきた。

 これまでの企業は、期初の見通しをかなりコンサバにし、半期決算が出たあたりから「この見通しはコンサバ過ぎないか」と言われて、いやいや上方修正し、それが実現できそうになくなると責任逃れで下方修正する、というパターンを続けてきました。ところが、今回は期初から目いっぱい強い見通しを出して来た。そこで投資家たちは喜び、再び買いに動いて、結果的に相場はもう一山上がりました。日経平均が1日で300〜400円上がったこともありましたね。つまり、これ以降の相場は完全なバブルになったわけです。

株式市場は一度盛り返し、再び崩れる
ただし下ブレ余地はそれほど大きくない

 一度バブル相場になると、売買の発想自体がバブル的なので、ファンダメンタルズは関係なくなる。むろん、決算発表前に一度利益を確定して悔しがっている投資家らが、もう一度買い直そうとして市場に参入すれば、実体を伴う下支えにはなります。しかし、まだそんな感じではありません。

 外れることを承知で個人的な予測を言えば、株式市場はもう一度盛り返し、再び崩されると思います。ただ、アベノミクス前の8000円台の水準まで、とことん下がることはないでしょう。今は米国景気も雰囲気がいいですから。

 万一米国市場が崩れて世界同時株安にでもなれば、世界的なリスクオフが起きて一段安もあり得ますが、たとえそうなっても、日経平均が1万円を割り込むような展開は考えにくいですね。調整の下の余地はそれほど大きくないでしょう。もちろん、バブルの中での調整相場なので、乱高下はしばらく続くと思いますが。一方、これまでのようなスピードで上がり続けることもないでしょう。日経平均2万円というのは、あり得ないと思います。

 考えてみれば、米国のブラックマンデーと一緒で、何もないのに日本の株価だけが、あのリーマンショック時よりも暴落しているわけです。これはどう見ても異常事態。いかに我々が、アベノミクスが演出するバブルに浮かれていたかがわかりますよね。

―― 一方で5月中旬以降、新発10年物国債をはじめとする債券価格も、再び乱高下を始めました。取引所では先物売買を一時停止するサーキットブレーカーが発動される場面もありました。足もとでは、日銀の国債大量買い入れによって一時史上最低水準にあった長期金利が1.0%へと急上昇し、1年2ヵ月ぶりの高水準となっています。金利上昇は株式市場の重石にもなる不安要因です。足もとで何が起こっているのでしょうか。

 今回の株式市場と債券市場の変調には、直接のつながりは認められません。別々に動いていると考えてもいいと思います。株式について言えば、一時大きく調整したアジア市場がすでに戻していることからもわかる通り、今回の動きは日本独自のものであり、外的な要因との連動が考えにくい。

国債市場の調整はより本質的な問題
機関投資家はいつまで下支えするか?

 目立つのは株式市場の暴落ですが、実は実体経済に影響を与える長期金利と連動する国債市場の不安定化のほうが、より深刻で本質的な問題です。これまで、国債も明らかにバブルで割高な状況が続いていました。

 多額の国債発行残高(借金)を抱える日本に対して、過去には海外の投機筋が日本国債の暴落を狙って、空売りを仕掛けたこともありました。しかし、国債価格は一旦下落しても、すぐに上昇に転じ、元に戻った。なぜなら、若干割高だと思っても国債を喜んで買う国内の機関投資家が、多数いたからです。

 このときは、郵貯だという噂が広がりましたが、実は幅広い投資家が買ったんです。中でも代表的な勢力としては、生命保険会社と中小金融機関が挙げられます。預貸率が低くて国債以外に運用手段がない中小の金融機関にとって、低くても安定した利子がつく国債は、非常に魅力的な商品でした。そのため、海外から売り浴びせられて安くなった国債を、喜んで買い続けたわけです。

 日本の国債市場は、このような安定利回りを求める金融機関などが支えているから安定していて、そう簡単には崩れない。彼らは安定利回りを求め、テールリスク(確率は低いものの、発生すると非常に巨大な損失をもたらすリスク)に目をつむって、国債を買っていたのです。結果的に、(国債の価格が上昇し、流通利回りが低下したため)長期金利は低水準にありました。

 その安定していた国債市場をわざわざ壊してしまったのが、黒田日銀総裁の「異次元の金融緩和」というバズーカ砲。しかも、日銀が国債を大量に買うことによって壊してしまったのです。黒田総裁ご本人はどうお考えかわかりませんが、金利を下げて金融緩和効果を高めるために国債を大量に買うことにしたのに、逆に金利を上げてしまったという、大失敗を演じてしまった。

国債市場の安定というコンセンサスを
「異次元バズーカ砲」が壊してしまった

――そのことによって、国債市場の投資家の心理はどう変わったでしょうか。

 問題は、「国債市場は安定している」というコンセンサスを、日銀自身が崩してしまったことです。これまで国債を買っていた投資家たちが、「日銀が異次元で国債を買い続けたら、この先どうなるかわからない。他の投資家たちの今後の動向も予想できなくなった」という不安を抱き始め、疑心暗鬼になっています。

 日銀が大量に国債を買うのですから、国債価格は値上がりしていくはず。ところが一方で、政府・日銀はインフレ率を2年で2%上昇させると言っており、そうなると近い将来、名目金利が上昇して、むしろ国債価格は下がってしまう。これで投資家は大混乱しました。「買いか売りのいったいどちらに動けばいいんだ」と。このように投資家の見方が分かれたため、市場が乱高下を繰り返していると考えられます。

 メガバンクなどは、これを売り逃げる良い機会と捉え、国債市場から徐々に撤退していますが、他に行き場のない中小の金融機関は締め出されることになり、途方に暮れています。市場がコンセンサスを失うことで、投資家の間に「他の投資家はどう動くのか」という疑心暗鬼が広まるなか、不安が募っています。

 焦点は生保です。「生保が米国債に乗り換えるのではないか」という憶測が強まれば、せっかく安定して買っていた投資家も動揺して、買うのを止めてしまうかもしれません。乱高下する市場に短期の鞘取りで相場を振り回すヘッジファンドなどの投機筋も入ってくれば、混乱はさらに大きくなり、なかなか終息しません。

 こうなると、安定運用を目指すまともな投資家たちは市場から次々と出て行ってしまい、国債は方向としては値下がりしていく。よって、金利は今後も上昇基調になってしまいます。

――国債市場が安定する見通しはないのでしょうか。

 今後何か修正が行われれば、一旦金利は落ち着くとは思いますが、もう元の水準には戻らないでしょう。国債市場はバブルが崩壊する過程にあり、劇的ではないものの、崩れ続ける。日銀の国債購入の効果をどう見るかにもよりますが、金利上昇の流れと言う見方が広がるのではないでしょうか。

 株は投資家の中でのゼロサムゲームですが、国債は実体経済にも影響があるところが問題です。住宅ローン金利も上昇し、社債の発行を諦める企業も出て来た。世の中に少しずつ影響が出て来ていると思います。

突き詰めて考えると実は怖い
急激な円安が招く国債暴落リスク

――小幡准教授は、急激な円安が招く国債暴落リスクについてもよく指摘されていますね。

 これは、そう考えない人もいるかもしれないが、突き詰めるとそうなります。円安は、それ自体が国債価格の下落を意味します。たとえば、ドルベースで考えると、1ドル=80円のときに1万円の国債は125ドルですが、1ドル=100円になると100ドルとなり、2割も値下がりすることになります。

 ドルベースで考えた場合の米国債と比較して、日本国債の魅力が落ちたら、みんな日本国債を売って米国債に逃げてしまう。つまりキャピタルフライト(資金逃避)が起き、日本国債が暴落する可能性もあります。

 それだけでは終わりません。日本国債を売って得た円を売ってドルを買い、そのドルで米国債を買うわけなので、円売りドル買いの動きが強まる。そうなると、ますます日本国債のドルベースの価格は下がるので、また円が売られて値下がりするという、円と日本国債の暴落スパイラルが起こり得ます。

 今円安で上がっている株式も、ドルベースで見ると値下がりするのでやはり売られてしまい、結果的に国債、円、株が全て暴落する「トリプル安」「金融危機」ということにもなりかねません。こうした意味で、海外投資家が手仕舞い、日本売りになるきっかけは、急激な緩和による円安ではないかと私は思っています。

 そのときに、ドルベースで考える国債保有者はどこまでいるかというと、キーパーソンは超長期国債を保有する生保。ただし短期的には、彼らの多くは慎重で横並び意識が強いため、おそらくそう簡単には日本国債売りに動かないでしょう。

 しかし、キャピタルロスが生じる恐れのなかで、一旦周囲が動き出せば、横並び意識が強いゆえに、その流れに乗ろうとする投資家も出てくる。今後もさらなるスピードで円安トレンドが続けば、外債へシフトする流れができる可能性もあります。一旦そうなってしまったら、もはや手遅れです。

混乱の主因は黒田総裁の舵取り失敗
実体経済へのリスクはそれほどない

――こうした不安要因があるなか、今後日本の実体経済はどういう方向へ向かうのでしょうか。

 黒田総裁は先日の講演で、「実体経済の成長を伴う金利上昇に心配はないものの、財政破綻リスクを織り込んだ上昇は危険だ」と述べたそうです。しかし問題なのは、日銀の国債政策そのもの。今起きていることは、アベノミクスそのものというよりも、黒田総裁の舵取りの失敗によるところが大きいのではないでしょうか。

 私自身は、実体経済は淡々と、少しずつよくなっていくのではないかと思います。もともと経済が回復基調にあったところに、資産効果が出て、消費も少し増えた。目に見えて物価が上がっているわけでもない。安倍首相のリーダーシップが評価されて、雰囲気が明るくなっています。足もとでは、あまり実体経済が悪くなる要素が見えないですね。当面、金融政策以外は大きな問題は起きないでしょう。

 ただ、何か悪い要素が出て、皆が狼狽して動くと悪い方向へ向かうこともあり得ます。確実に存在するリスクは消費税増税です。消費税は反動減が大きく、景気悪化が起きる可能性が高い。そうなると、すでに財政・金融政策をフルに出し尽くした後では、手当ての手段があまりない。

 一方、消費税増税が延期になれば、日本の財政に対する信頼が揺らぎ、それこそ国債市場は危険です。ですから、消費税は必ず上げなくてはいけないが、変動を小さくするために、毎年1%ずつ5年かけて10%にするべきです。

米国の出口戦略に伴う懸念も
世界的なリスクオフは起きるか?

――出口戦略の見通しが出始めた米国が日本経済に与える影響はどうでしょうか。世界的な流動性の縮小により、金融市場におけるリスクオフの流れは本格化するでしょうか。また、悪い金利上昇の懸念もなくはありません。

 そこは皆が一番心配しているところですが、もともとバーナンキFRB議長は金融緩和傾向が強いので、自分の出口戦略のせいで市場が崩れるような事態にはならないよう、十分な景気回復を待って、慎重に行動する可能性が高いと思います。

 ただ、出口戦略と言っても、出口に向かう意思を少しずつアナウンスして市場に浸透させていくくらいで、実はこれといった方法がない。今持っている長期国債の期落ちを待ち、そのへんが実際の出口になるでしょう。

 日本のバブルよりも米国のバブルのほうがキツイのは事実です。米国はもともと潜在成長率が2%、期待インフレ率が2%程度ある国なので、足し合わせると長期金利の水準は4%程度となります。それと比べれば、日本は期待インフレ率がほぼゼロ、潜在成長率が0.5%程度で、金利は0.5%程度。米国とは大きく差があります。これを見ても、出口後の米国の金利上昇の影響は、わりと大きいかもしれません。

 その場合、日本にとって怖いのは、やはり金利差の拡大による極端な円安です。これは、先ほど述べた国債暴落リスクが高まることにつながる。ドル円レートで金利差が開くときに一番資金を動かすのはやはり生保なので、「日本の生保が動く」という噂を流して、グローバルマクロ系のヘッジファンドが仕掛けたり、個人のFX投資が熱を帯びて、円安の流れを加速させる可能性もありますね。

http://diamond.jp/articles/print/36696

 

 


 


【第5回】 2013年5月30日 小幡績
真の「ハイブリッド」バブルと黒田総裁の過ち
日本国債の暴落しない特殊な「ハイブリッド・バブル」に、黒田日銀の異次元金融緩和による「日銀買い入れバブル」が重なり、ふたつのバブルがハイブリッド化された真の「ハイブリッド」バブルが始まった。

 バブルの上昇局面において、典型的に観察される現象は、「取引量の増大」「保有期間の短縮化」および「価格の変化が激しくなるボラティリティの上昇」である。そして、乱高下が起こる直前には、急激に価格が上昇する局面がある。バブル末期のはじめにみられる典型的現象だ。

 この議論を踏まえて現在の日本国債市場を見ると、まさに、バブルの最終局面の始まりといえる。

 2012年11月16日に野田佳彦前首相が衆議院を解散し、安倍晋三首相が誕生、黒田東彦氏が日本銀行総裁に就任してから今日に至るまで、国債の価格と金利は乱高下を繰り返している。ついに日本国債も安定したバブルから激しく変動するバブルへと転化した。つまり、暴落しない特殊な「ハイブリッド・バブル」と「日銀買い入れバブル」という、ふたつのバブルがハイブリッド化された、真の「ハイブリッド」バブルの始まりである。

必ず来る日銀の政策転換

 今後は、バブルが膨らんだ後、さらなる乱高下を繰り返すという局面が続くと思われる。今後の国債市場の動向は、日銀にすべてがかかっているため、投資家達は、日銀の毎回の政策決定会合に右往左往することになるだろう。

 そして、いつか、日銀は政策変更を行う。景気が回復し、物価上昇率が2%になれば、必然的に金融緩和は縮小に向かう。そうなれば、金利は上昇、国債は暴落する。物価上昇率が2%に達しなくても、金融緩和が景気回復への効果を持つのであれば、物価よりも早いタイミングで必ず期待インフレ率が上昇、名目金利が上がるから、国債の暴落は確実に始まる。いや、この暴落シナリオが投資家の間で広がっただけでも、国債市場は乱高下を始める。

黒田総裁の誤解

 黒田新総裁の放った“バズーカ砲”、彼の言を借りれば「量的・質的金融緩和」は、まさにわれわれの度肝を抜いた。ある有力外資系銀行のレポートでは、あらゆる市場関係者の予想を超えた政策と評していた。

 なぜ誰も予想できなかったのか。

 それは、黒田総裁の政策が完全に間違っていたからだ。

 この緩和政策の質的側面にはほとんど驚きはなかった。驚きのすべては「量」である。緩和策としてあり得るものをすべて、フルスケールで一気に同時に行った。黒田総裁自身も「逐次投入はしない。今考えられるもの、やれるものをすべて打ち出した」と述べている。これは驚いた。なぜなら、明らかに、この考え方が誤りだからだ。あえて誤りの政策を打ち出すとは思ってもみなかった。

 黒田総裁は、流れを変えたいと思っていたのかもしれないが、2012年11月16日に、すべては変わったのである。あとは期待を裏切らない程度に普通にしっかりやれば、最大限緩和をすべきという立場からも、十分だったはずだ。

 それにもかかわらず、異次元の政策をあえて打ち出してしまったのは、功を焦ったか、金融市場および金融政策に関して誤った認識をしているのかの、いずれかだ。後者だとすると、黒田総裁は何を誤っているのか。

 彼は為替介入のプロである。為替介入と金融政策を混同したのではないか。金融政策は為替介入と異なる。為替介入は、流れを変えること、相場を打ち負かすことが重要だが、金融政策は違う。負かす相手などいないのだ。

 金融市場に敵はいない。金融政策の目的は、実体経済の経済主体を動かすことだ。そして、実体経済の経済主体は敵ではなく味方であり、しかし間接的にしか関われない仲間なのだ。金融緩和とは、金融機関を通じてマネーを供給するか、あるいは、資産市場に変化をもたらすことにより、その資産を通じて経済主体の実体経済における行動を変化させるしかない。そして、それを媒介する金融機関は、戦友のような親友だ。その親友を混乱させて国債市場から追い出しては、金融政策がうまくいくはずがない。

暴落か、安楽死か

 ハイブリッド・バブルと、安倍政権の大胆な金融緩和が起こした「日銀買い入れバブル」を、黒田新総裁の「クロダノミクス」ならぬ異次元の量的緩和が一気に飲み込んだ結果、国債市場は、暴落が起こるか、真の「ハイブリッド」バブルとなって安楽死するか、どちらかの運命をたどる。

 現実に起こるのは、このふたつがミックスされたものだろう。

 日銀がいくら投機的なバブルの動きを押さえようとしても、国債市場に残っているプレーヤーは、みなバブルを前提にしか取引しない投機家と化している。彼らとのマネーゲームは激しいものになり、暴落は激しくなる。これを防止するために、日銀はやはり買い支えざるを得ない。その恩恵を受けるのは、日銀と投機ゲームをしてもうけようとして投機家化したファンドや金融機関だ。日銀は彼らを救うため、彼らを儲けさせるためだけに国債買い入れを続けることになり、実体経済を守ることにはならない。

 国債市場で典型的なバブルが起こるというのは、普通でない。金融市場は、その根幹でありベースである安定運用先を失う。こうして、錨を失った金融機関は大海原に投げ出され、金融市場の安定性は世の中から消えていくのだ。そして、実体経済の安定性も失われていくだろう。そして、日銀も日本経済も沈んでいくのだ。

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ハイブリッド・バブル  日本経済を追い込む国債暴落シナリオ
http://diamond.jp/articles/print/36644


02. 2013年5月30日 10:07:48 : niiL5nr8dQ
#今は、期待インフレ率が上昇し、実質金利は下がっている段階
名目金利の上昇自体は、まだ、それほど問題ではない
ただし、ただの資産バブルで終わらないためには、今後の国内実体投資の増加が不可欠
史上最大の財政拡張と量的緩和だけでは、最終的には日本経済の衰退は止まらないので、
その指標として今後も金利動向にも継続的な注意が必要


 

 
【第68回】 2013年5月30日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
経済財政諮問会議が放ったとんでもない“矢”
「財政健全化を第4の矢に」は正しいか
 政府の経済財政諮問会議は28日、とんでもない「矢」を放ってしまった。甘利明経済財政・再生相は安倍政権の経済政策「アベノミクス」の第3の矢である成長戦略に続き財政健全化を「第4の矢」と位置づけた。

 第3の矢である成長戦略は甘利経済財政相の分野だが、「あまり」海外の評判はよろしくない。海外では成長戦略となると、デレギュレーション(規制緩和)、プライバタイゼーション(民営化)、フリートレード(自由貿易)という英語にもある概念がでてくる。

 ところが、経産省の「ターゲット・ポリシー」は産業選別という意味で、なかなか海外には通用しにくい。特定の産業の選別は依怙贔屓(えこひいき)になるし、そもそも政府に成長産業を選び出す能力がないからだ。英語で説明する時には、わざわざ「ジャパニーズ」と形容詞付きで揶揄されている。

財務省のいう財政健全化は増税

 そこで出てきたのが。第4の矢――財政健全化だ。この裏にはもちろん財務省がいる。財政制度等審議会が近々まとめる報告書の原案について各メディアが報じている。いわゆるリークである。

 財政健全化には、その達成手法を大別すると@経済成長、A歳出カット、B増税となるが、財務省のいう財政健全化は、はっきりいえば増税である。

 まず財務官僚には予算査定で無謬性があるので、歳出に無駄があるとはまず認めない。このため、A歳出カットはできないというのが基本的立場だ。となると、@経済成長か、B増税になるが、以下の理由によりB増税になる。

 @経済成長では、増収になるのはわかっているが、その分要求官庁からの歳出圧力が強くなり、それに対抗できない。対抗するためにはA歳出カットをやらざるを得ないが、力不足なのだ。

 その点、B増税は、責任は政治家に取らせることができるので、官僚としてはОKだ。しかも、予算の裁量枠が広がり、財務官僚の権益は拡大する。ここで注意すべきは、あくまで予算上の歳入が増えるだけで、実際の税収が増えるわけでない点だ。増税は経済活動を抑制し、その結果税収は減少することが多い。しかし、増税するときには、予算上の歳入は増える。予算がマクロ経済の動きとは別に、形式計算によって、増税(=税率アップ)がそのまま歳入の税収増になっているからだ。

 というわけで、財務省の財政健全化は増税になるのだ。

 一応経済財政諮問会議では、財政健全化を「第4の矢」としてぶち上げておいて、財政審報告書で財政の健全化は増税となる路線を敷いているわけだ。この意味で、経済財政諮問会議は、財務省の増税の走狗になっている。

民間議員のロジックも怪しい

 経済財政諮問会議の民間議員のロジックも怪しい。民間議員は「デフレからの脱却と中期的な成長を果たすには、金利上昇が民間投資を抑制しないように財政健全化を図るべきだ」と指摘したというが、前回の本コラム『長期金利上昇懸念の「から騒ぎ」』をよく読んでほしい。

「名目金利」は上昇しているが、「実質金利」(=名目金利マイナス予想インフレ率)は低下している。5年もの金利で、1年前と現在の「名目」と「実質」をみてみよう。1年前ごろは、5年名目金利は0.2%程度、予想インフレ率0.2%程度だったので実質金利は0%程度だった。ところが今では、名目金利は0.4 %程度、予想インフレ率は1.8%程度に高くなったので実質金利は▲1.4%程度である。名目金利は上昇したが、実質金利は低下したのだ。

 設備投資などの実物経済に影響を与えるのは、名目金利ではなく実質金利だ。筆者が長期金利の上昇をから騒ぎというのは、実質金利が低下していることをを知らずに、名目金利だけで経済を語ろうとするからだ。

 実は、経済学者の中にも「実質」をキチンと理解せずに、名目値からインフレ率を引いたものという人さえいる。それは「事後的な」実質であり、これからの設備投資動向などを見るには役立たない。インフレ率がまだ上がっていないから、実質金利は下がっていないと誤解する者がいる。経済財政諮問会議の民間議員も似たり寄ったりのレベルだ。

オッカムの剃刀

 財政健全化をわざわざ第4の矢として掲げるのも、おかしい。オッカムの剃刀という言葉をご存じだろか。前提や仮定はなるべく少なくするという考え方だ。筆者は数学出身なので、前提や仮定は相互に矛盾せず最少にするのは当たり前だ。ただ、経済財政諮問会議の議員は、経済の相互関係をよく知らないで、余計な「矢」を放っている。

 実は、第4の矢とされる財政健全化は、以下の示すように、第1の矢である金融政策から導かれるのだ。この意味で不要な「矢」である。また、財務省のもくろむ「増税」なら、オッカムの剃刀によれば矛盾するものとして排除されなければいけない。

 まず財政健全化を定義しよう。これは、債務残高対GDP比が将来において発散しないことと考えていい。この条件は次の通りだ。


 条件式の意味をおおざっぱに言えば、基礎的財政収支について、成長率が(国債)金利より高ければ多少の赤でもよく、成長率と金利が等しければ均衡していること、成長率が金利より低ければ一定の黒字が必要になる。

成長率と金利の関係

 そこで、成長率と金利の関係であるが、理論的にどちらが大きいとはいえない。2000年以降のOECD35ヵ国のデータを見ると、平均はほぼゼロであり、プラスでもマイナスでもほとんどがゼロの近辺になっている(グラフ1)。


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 要するに、データから見れば成長率と金利が等しいと考えてよい。であれば、財政の健全化のためには基礎的財政収支を均衡させればいい。

 バブル後の1991年からのデータを見ると、基礎的財政収支対GDP比は1年前の名目GDP成長率でほとんど決まってくる(グラフ2)。ちなみに両者の相関係数は0.92と高い。1年のズレがあることから、因果関係と考えていいだろう。


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 ところが、増税は明らかに経済成長にはマイナスである。消費税率3%の増税で経済成長率は1%程度低下する。消費税は増収になるかもしれないが、所得税や法人税が減少するのだ。その結果、税全体で増収になるのか減収になるのかわからない。

 他方、金融緩和は名目GDPを伸ばす。2年前のマネーストック増加率は名目GDP成長率と強い相関がある。ということは、金融緩和すると2年後の名目GDPは高まるのだ。この実証データは、2年間金融緩和して、その間に増税を行わないほうが、名目GDPを伸ばし、結果として財政再建の近道になることを示している。


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 ちなみに、財政健全化を達成するためには、8%程度のマネーストック増加率を維持するように金融政策を行えばいいとなる。もちろん、個々の状況ではいろいろとファインチューニングが必要なこともあるが、基本的には適切な金融政策によって安定成長路線を目指したほうがいい。

 イギリスでは2011年から財政再建のために消費税増税したが、景気低迷している。世界的に、緊縮財政が見直されているが、日本の財務省だけは増税に固執している。日銀がまともな金融政策をして世界から評価されたが、今度は財務省の番だ。急がば回れ、財政健全化のためには増税ではなく経済成長が先だ。そうすれば、財政健全化は後からついてくる。
http://diamond.jp/articles/print/36695

 


 

 

成長著しいASEAN株に投資する  

 EUがポルトガルへの財政支援を決定してから丸2年が経ちました。財政支出削減や増税を柱とした財政再建策で、国債の利回りは最悪時の半分以下の水準に低下し、危機状態からは脱しましたが失業率は過去最高を更新するなど、生活の質の低下に国民は不満を募らせています。

 現在の国債の利回りは7%以下で、また新しい国債を発行することも可能となっています。EUの10兆円の支援が功を奏したと言えます。ただ、成長戦略がないために雇用がどうしようもない状況で、社会不安が残っているというのが現状です。財政的には一息ついたものの経済的にはまだまだで、特に若者の失業率が50%を超えているので、深刻な状況にあることには変わりありません。金融的に破綻する時は早いので、これからはゆっくりと経済的な立て直しを実行していくというタイミングになってきたといえます。

 ダイヤモンド社のザイ・オンラインは16日、「成長著しいASEAN株に投資する方法」と題する記事を掲載しました。これは、経済の成長段階などが日本とはまったく異なる国々に投資をすれば分散投資の効果も見込めるとし、近年ではタイやマレーシアの株式指数に連動するETFなどが国内取引できるとし、ネット証券を活用することを勧めた内容となっています。

 これは特殊な記事ではなく、一般的に日本のハイパーインフレ対策や円安対策などもあり、ASEANがBRICsにかわり非常に調子が出てきているので、そちらに投資をしたらどうかというものです。また、個別の企業はよくわからないので、まとめたインデックスを利用してETFなどを勧めています。  例えばタイの株価指数と日経平均株価を比較すると、日本は最近になってアベノミクスで株価が伸びていますが、タイの株式は2009年から継続して上昇しています。リーマンショック後から投資をしていれば、かなりのリターンが得られたわけです。

 タイに限らず、マレーシアやフィリピンなどに投資することは、日本に株式を集中させるよりもリスクヘッジになると考えられます。


3%成長でも2020年度で財政赤字50兆円 日本総研

 アベノミクスの持続性については、出口戦略が非常に難しいだろうと言われます。軟着陸は難しいという意見が多くなってきています。消費税増税を先送りにする意見も出てきていますが、自民党は自分たちの功績を誇示しようと思えば先送りするしかないでしょう。しかし、もともとは8%を前提に経済政策をスタートさせたはずです。8%になった時には景気がしばらく急降下することは間違いないでしょう。延期すれば増税を前提にしていなかったのかと非難をさらに受けることになるでしょう。

 政府は14日、産業競争力会議で、6月にまとめる成長戦略の主な項目を提示しました。主要項目は37で、成長戦略については新たな市場を作る「戦略市場創造」や、企業の再生を図る「産業再興」、海外進出を促す「国際展開」の3つの分野で構成されています。

 これは、戦略を立てると言うよりも希望を書き出したにすぎません。例えば観光客を2000万人にするとか、インフラ輸出を30兆円にするなどと記されていますが、戦略を考えるときに数字だけ目標にあげても仕方ありません。どうやって実現するかが書かれておらず、願望の一覧表となっています。基本的な戦略を立案したことのない素人達の作文集です。非常に情けないことだと思います。


 また、国債の金利が上昇しています。金利が上がることで銀行にどのような影響があるかを見ると、1%上がるとメガバンクでは3兆円、2%上がると6兆円の債券時価の減少になります。地銀でもゆうちょ銀行でも同様で、銀行にとっては命取りになるほど金利上昇はつらいことなのです。しかしこのままいくとハイパーインフレになり金利が大きく上昇する可能性もあり、固定金利に変える動きも出ています。せめて10年間でも金利を固定するなど、長期的に金利が上がることがプレッシャーになって来ているようです。


ウォーレン・バフェット氏 米国量的緩和縮小なら世界市場に混乱も

 アメリカの著名投資家、ウォーレン・バフェット氏が経営する投資会社、バークシャー・ハザウェイが4日、株主総会を開きました。その中でバフェット氏は、アメリカの将来は明るいと強調し、大型買収を続ける意向を示す一方、量的緩和の縮小や停止が起これば、世界の株式市場に混乱が広がりかねないとも指摘しました。

 この株主総会はオマハというところで開かれ、毎回数万人が集まる大規模なものです。彼は今回いくつか特徴的なことを話しました。

 一つは、女性の役割が非常にキーになるということでした。また、もう一つはアメリカの将来は非常に明るいものの、バーナンキFRB議長の量的緩和の出口戦略によっては、かなり混乱する可能性があるだろうとしました。バフェット氏は既に出口戦略について、うまくやってくれないと危険だと警告を発したわけですが、自分の業績が悪化したときに事前に指摘しただろうという布石にも聞こえました。

 また、もう一つは何億分の1秒などといった処理をする高速取引について、なぜそのようなものが必要なのかと疑念を示しました。高速取引によりシステムがうまくいかずトラブルになっているのではないかと言うのです。

 バークシャー・ハザウェイが保有する主な株式を見てみると、Wells Fargo、Coca-Cola、IBM、アメリカン・エキスプレス、ウォルマート、ミュンヘン再保険、P&G、バンコープ、サノフィが並んでいます。0.1秒を争うような会社は一つもないのです。何週間、何ヶ月単位で十分であり、彼は10年、20年後を見ながら投資をしているのです。ですから、高速取引でプログラム売買等をやっている人々は、頭がおかしいのではないかと話したのです。バフェット氏は、よくわからないという理由からハイテク企業には投資しません。それで十分なリターンをあげているのです。


2012年度不動産投資 前年度比50%減 〜インド合同商工会議所〜

 インド合同商工会議所が発表した2012年度の新規不動産投資に関する集計結果によると、インドの昨年1年間の投資額は、4,200億ルピー(約7,860億円)で、前年度の半分以下に減少したことがわかりました。

 やはりインドはシン政権の末期にあるので、非常に混乱しています。インドは一時BRICsということで大変盛り上がりましたが、今は沈んできているということです。私はまたどこかで反転すると思いますが、新しい政府がどういう形になるかが非常に重要です。
>


 そうした中、グジャラート州は41%の投資を受けています。このグジャラート州は、ムンバイ、デリー間の大動脈構想のうち、38%がこの州を通るのです。 日本企業はこのエリアに多く進出していて、自動車ベルトとも言われています。グジャラート州の人口は6,000万人、州1つで東南アジアの大きな国の人口とほぼ同じです。最大都市はアーメダバードです。産業的に見ても輸出はインド全体の21%と、今まさにインドの中で最もホットな場所と言えます。今までは日本企業はムンバイや東側のチェンナイなどに進出していましたが、今はこのベルトに沿って自動車工業や部品工業が出てきているので、このあたりに注目しておく必要があるでしょう。

http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/20130529_123012.html
ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 学長
大前 研一

 

 


 

 


 

<Vol.289:アベノミクスのパラドックス(1)>

テーマの領域: 株、債券、通貨、実体経済
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
バックナンバーはHPで: http://www.cool-knowledge.com/

吉田繁治
43982部

おはようございます。5月20日ころまでは1万6000円(日経225種)
を超える勢いだった株価が、先週の木曜日(5.23)に、突然1000
円以上下げ、1万5000円の大台を割りました。

その後、1日に500円を越える乱高下。昨日(5.29)の日経平均の
終値は、1万4326円でした。

【プロローグ】

▼「5.23」以降、乱高下を続ける株価

別画面に、刻々と動く、日経平均のリアルタイム・チャートを表示
しています。一瞬で100円、1時間で数百円も動く激しさです。

開始直後は1万14500円に上がったあと、14250円に下がったところ
です(5月29日:午前10:36)。

5月28日のNYダウ先物が、$1万5395から$1万5350へと、若干(0.
3%)下げていますから、今日の日経平均も、少し下げるのか?
(注)こういった時、NYダウが先行することが多い。

日経平均で1000円以上の暴落があった5.23以降の値動きは、1日50
0〜1000円と極めて激しい。

連日、4.5兆円(昨年の3〜4倍)を超える売りと買いが交錯してい
ます。1日に3%以上(日経平均で500円)乱高下する市場からは、
普通は手を引き、静観するのが得策です。

http://sisannka.com/chart.html

(注)世界から24時間売買が可能な、日経平均先物では、5月28日
午後10時が1万4295円でした。(日経225:売買単位は1000倍で、一
枚が1450万円です)

2013年になって、上がる株価を見て買い始めた個人も増えています。
年初からの買いなら、平均価格は、日経平均で〔(年初1万500円+
5月1万5000円)÷2=1万2750円〕付近です。毎月一定額を買ったと
きの仕入原価がこれです。

(注)チャートに表示される「移動平均」は、移動平均をとった期
間、上がっても下がっても一定額を買い続けて売らず、保有したと
きの、原価を表します。

5月20日までの1万5000円超の頃、2500円(投資額の20%)くらい利
益が出たと思っていた。これが、あれよと思う間に1800円(+12
%)に減ったという感じが、参加者の平均です。

6月に1500円くらい下がって1万2750円くらいになると、利益がゼロ
です。日経平均で1万2750円が、分岐点になります。

株価は、今後、どう向かうか?

(1)6月、7月に、日経平均で1万2000円割れに下がるのか?
(2)国内勢の買いや、政府の価格維持作戦(PKO)で反発し、再び、
1万5000円を超えるのか?、です。

本稿の、前半では、この判断の素材となるべきものを、検討します。

▼4月からの「金融大緩和」の実施の後、なぜか上がった長期金利

株価と同時に、不思議なことが2013年5月の債券市場で起こってい
ます。

債券市場は、国債を売買する市場です。多くの人に、債券市場のイ
メージがないと思うので金額を示します。
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/toushika/

1ヶ月間で、長期国債が200兆円、満期が1年以内の短期国債が100兆
円、合計で約300兆円売買されています。

売り150兆円;買い150兆円という意味。
1日当たりの売買(売り+買い)では、15兆円くらいです。

内外の金融機関がもつ約1000兆円の国債に対し、1年に3回転する速
度で売買がされています。これが国債をもつ金融機関の、国債を売
買する速度(4ヶ月間保有)です。

新規国債(50兆円)と借り換え債(120兆円)を含む、発行元の財
務省からの国債の売りは、1年間で170兆円(月間で15兆円)です。

【国債は、株式市場の4倍の売買額】
株式市場(東証等)の売買は、2013年は3〜4倍に増えたと言っても、
1日に3兆円〜4兆円です。その4倍という大きさが、債券市場での国
債の売買額です(日本 証券業協会)。金融機関の資金運用の主戦
場は、株式市場ではなく、この債券市場(国債市場)です。

日銀が金利を決めるのではない。国債の売買によって、金利が決ま
ります。日銀は、国債の売買の、量の調節により、金利を誘導でき
るだけです。

〔金利の上昇〕債券市場で国債の売り(現物+先物)が多ければ、
国債価格は下がって、金利は上がります。

〔金利の下落〕市場で、日銀を含む国債の買い手が多いときは、価
格は上がって、金利は下がります。この債券市場のプレーヤーは金
融機関、ヘッジ・ファンド、年金基金等です。個人はほとんどゼロ
です。

【13年4月からは、バズーカ的な量的緩和】
日銀は、13年4月にリフレ派の黒田総裁、岩田副総裁が就任して、4
月は10兆円、5月も7兆円くらいの国債を純増するくらい巨額に買う
ようになっています。

政府が発行する新規国債の、なんと70%くらいを、日銀が買い切る。
これが、「黒田バズーカの量的緩和」と言われるものです。これか
ら2年、毎月、7兆円以上をドカンと打つ感じがバズーカです。

過去、日銀が最大の量的緩和と言ったとき、国債買い切り(純増)
は、1ヶ月に2兆円、年間で20兆円レベルでした。黒田日銀では、1
年に70〜80兆円に増えます。2013年、2014年と続けるという。

黒田総裁は、2015年から、消費者物価上昇率で〔+2%/年〕を実
現するため、日銀によるマネー供給額(マネタリー・ベース:5月2
0日で145兆円)を2倍にすると表明済です(13.04.07)。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2013/ac130520.htm/

2%付近しか増えていなかったマネー・サプライ(M3で1152兆円:1
3年4月)が、
・4%増えるとき(+45兆円)、消費者物価の上昇がゼロ、
・6%以上(+70兆円)増えれば、その1年〜2年後には物価が2%は
上がるように向かうと試算されているからです(副総裁の岩田規久
男氏)。

(注)マネー・サプライの増加と物価の間には、数年の遅れがある
ときもあります。

http://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/ms1304.pdf
http://ecodb.net/country/JP/imf_inflation.html

物価を2%上げるには、マネー・サプライ(≒企業の現金・預金+
世帯の現金・預金)を、6%(預金額で70兆円)は増やすことが必
要です。

この目的で、日銀が、債券市場で国債を毎月7兆円以上、日銀の保
有が純増するように買い切って、円を、毎月7兆円も印刷し、マ
ネーを増加供給すると表明したのです。

〔4月は、長期金利は0.3%と50%下がった〕
日銀が、債券市場で買う国債を増やせば、国債価格は上がって、金
利は下がります。事実、13年4月初旬は、長期金利が0.6%から0.
3%にまで、50%も下がっていました。これが、普通です。日銀も、
当然に、国債価格は上がって、金利は下がると見ていました。

〔5月には、2倍、3倍の1%に上がる日がある。〕
・・・ところが、財務省と日銀の意図に反して、13年5月には長期
金利〔10年もの国債の利回り〕が、1%をつける日があったのです。

▼政府と日銀にとって、想定外だった市場の国債売り

日銀の激しい買いを見て、市場では、日銀が買う予定額より、はる
かに多くの国債(及び国債先物)が、国内金融機関と、海外ヘッジ
ファンドから売られたのです。(注)ヘッジ・ファンドが売るのは、
株と同じように国債先物です。

このため国債価格が急落し金利が、上がった。これが、政府・日銀
にとって想定外だった10年もの国債の長期金利1%が示すことです。

その後の金利の動きを見ると、大量売りに慌てた日銀は、国債価格
を上げるため(=金利を下げるため)、急遽、買い増しています。

5月末現在は、0.8%〜1%を波動しています。政府・日銀は、これ
を1%以上には、絶対に上げることはできない。

〔仮想〕
市場で国債価格が下がり、実際に下がる予想ができると(下落期待
の形成)、金融機関からの国債の売りが、一層増えるからです。こ
れは、短期間(数ヶ月)で、螺旋的な価格下落(金利上昇)も招く
危険があるのです。この国債リスクを未然に防ぐため、日銀が、買
い出動です。

〔具体例〕
0.6%だった10年債の金利が1%に上がると、残存期間10年の国債
は、以下のように下がります。〔国債価格=100×(1+0.6%×10
年)÷(1+1.0%×10年)=100×1.06÷1.10=96.4〕・・・4.
6%下落です。

この長期金利が2%に上がると12%下がり、3%に上がると18%も価
格が下がって、政府財政の破産と金融は同時パニックになります。

日本のように、国債残が1000兆円を越え、しかも、超低金利である
ときは、「ごくわずかな金利上昇」が政府財政と金融機関、そして
実体経済にとっての大問題になります。

長期金利の上昇のため、新規の住宅ローン金利も、上がってしまっ
た。ローンの金利が上がれば、世帯の住宅購入は、進みにくくなく
なります。

日銀が国債を増加買いするという原因から、国債の価格が下がり、
金利が上がるというのは、「異常事態」です。一体、何が国債の売
買市場で起こっているのか?

▼国債の金利が上がったのは、一体、なぜか?

今まで、こうした異常なことはなかった。日銀が、国債の買いに出
動(買いオペ)なら、狙い通り国債価格は上がり、金利は0.6%や
0.3%と下がっていました。これが金融緩和でした。

逆の、日銀による売りオペレーションなら、国債価格は下がって、
金利は上がっていました。これが、マネー量を減らす金融引き締め
でした。日銀は、国債の売りの量、買いの量で、金融を調節し、金
利と通貨量をコントロールしてきたのです。

〔懸念〕日銀は、債券市場のコントロール(制御)ができなくなっ
たのか?

5月の債券市場では、
(1)「日銀が、国債を大量に買うから、国債は安心できない」と
して、
(2)国内と海外の金融機関、およびヘッジ・ファンドが、日本国
債の現物と先物を売り攻勢に出るという、異常な動きが起こってい
ます。

実勢に任せれば、国債価格が一層下がり、長期金利は、あれよあれ
よと、1%を越えるかも知れません。これを防ぐためひとり日銀が、
国債の防衛買いをしています。

黒田日銀と政府は、今のところ、市場の金利上昇に対し、明確なコ
メントを避けています。

総裁が言ったのは、「景気が回復に向かっているから、金利が上が
った。」という、状況の説明としては、訳のわからないことです。

マネーの緩和で金利が上がるなら、経済の回復には、日銀による国
債の大量購入は、不適な政策になるからです。

経済新聞やエコノミストも、「中央銀行が国債を大量に買うから、
国債価格が下がる」という普通の時期と、普通の経済では起こらな
い奇妙なことが、なぜ、債券市場で起こっているのか、納得できる
論評ができていません。

株価の下落、国債価格の下落、金利上昇で、アベノミクスが早くも
座礁に乗りあげたのか? 本稿では、「アベノミクスのパラドック
ス〔矛盾〕」として、ここを明らかにしようと思います。

本号から、無料版だけを購読されている方々にも、この「プロロー
グ(前文)」の部分を、送ろうと考えています。プロローグでは、
(1)問題の提起、(2)内容の要旨、(3)本文とは別のテーマを
書いています。号ですこし異なりますが、「論の足を地につけるた
めもの」がプロローグです。本稿では(1)の問題の提起です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

<656号 :アベノミクス・パラドックスが生じてきた(1)>

有料版:2013年5月29日号

【目次】

1.昨年11月以降、株価はなぜ上がったか?

2.2012年からの海外投資家の買い超の金額と株価の関係

3.13年5月23日までの6ヶ月の株価上昇:毎月平均+1000円

4.2011年10月以降の円安が、株価上昇の原因となった

5.13年5月23日の、株価暴落

6.米国の住宅価格が2013年3月には+10.9%上がった

7.向こう3ヶ月の株価(6月、7月、8月)の断言

8.懸念していたアベノミクスのパラドックスが生じ始めた

9.0.6%国債は、インフレ予想が2%に上がるとどうなるか?


 


03. 2013年5月31日 02:58:21 : e9xeV93vFQ

米国の後ろでもたつく欧州
2013年05月31日(Fri) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年5月25日号)

ユーロ圏の回復――あるいは衰退――までの長い道のり

 ヨーロッパ人はとかく、欧州の危機を米国のせいにしたがる。しかし、数字を見ると、ユーロ圏が危機対応を誤ったことは明白だ。成長を取ってみよう。米国の経済生産は危機前のピークを超え、成長している。一方、ユーロ圏はまだ失地を回復できず、縮小している。

 失業率はどうか。2009年には、大西洋両岸の失業率はともに10%だったが、現在は米国の失業率が8%を下回るところまで低下したのに対し、ユーロ圏では12%超まで跳ね上がった。要するに、ユーロ圏は設計がお粗末で、欧州の緊縮財政は厳し過ぎたということだ。

衰退を食い止められなければ1980年代の中南米に


指導者の無能さのツケを失業者が払わされている〔AFPBB News〕

 欧州経済が入院患者だったら、医師は医療過誤で訴えられているかもしれない。欧州では、リーダーの無能さのツケを若い失業者が払っている。

 ユーロがドルと肩を並べるなどといった大言壮語は立ち消えた。今の目標は、単に衰退を食い止めることだ。ベルリンの一部の人が言うように、さもなくば欧州は1980年代の中南米諸国のようになる恐れがある。

 欧州連合(EU)の指導者たちは5月中旬の首脳会議で、通常はもっと貧しい国々を悩ますような問題に没頭した。どうやって銀行の秘密口座に隠された資金を見つけるか、どうやって多国籍企業に税金を払わせるか、といった問題だ。

 EUの指導者たちは大部分において、温室効果ガスの排出量削減で世界をリードしたいという願望を無視した。その代わり、米国がシェールガスの恩恵を享受している今、いかにしてエネルギー価格を引き下げられるかに頭を悩ました。ユーロの修復に向けた次の対策は、6月に予定されている次の首脳会議、あるいは恐らく9月のドイツの選挙の後まで待たねばならない。

 ベルリンでは最近、経済改革に重点が置かれるようになり、財政規律への執着が薄れつつある。ドイツの政府高官が、極端に厳しい救済計画に同意したことで国際通貨基金(IMF)を非難したり、若年失業と、南欧の中小企業を苦しめている信用収縮に迅速に対応できなかったとして欧州委員会を責めたりするのを聞くと、実に奇妙な感じがする。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、3月の首脳会議で欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が各国指導者に示した図表が大層お気に入りだ。図表には、1999年以降、赤字国の賃金が生産性をはるかに上回るペースで上昇したことが示されている。

 イタリアでは、生産性に変化がなかったのに、スペインやポルトガルのように賃金が調整されなかった。また、フランスは、借り入れコストがドイツ並みであるにもかかわらず、心配になるくらい南欧の債務国によく似ている。

 正しい政策は、生産性を引き上げ、賃金を引き下げるための構造改革だ。だが、短期的には生産性の向上は難しい。賃金引き下げは経済的な痛みを生じさせるし、社会不安を招く恐れがある。構造改革には、各国が何十年もかけて築き上げてきた社会契約の変更が伴う。

 問題を抱えた一部の国――ギリシャを含む――はそれでも調整を進めている。労働・製品市場の自由化が救済の条件になっていたり、失業によって賃金が容赦なくカットされたりしているからだ。

極めて難しい「フランス問題」

 フランスはさらに難しい問題だ。同国は市場の圧力を受けていない。また、欧州官僚があれこれ指示するには規模が大き過ぎる。また、フランスはドイツにとって極めて重要なために、声高に批判することができない。

 フランスの衰退はユーロを沈没させる恐れがある。欧州委員会が5月下旬に国ごとの勧告を公表する際、フランスには、赤字削減目標の達成まで2年の猶予期間が与えられる見通しだ。同国がその時間を使って構造改革を行うことを期待してのことだ。

 フランソワ・オランド大統領は、フランスが競争力を取り戻す必要性を認識している。だが、大統領が最近提案したユーロ圏改革には、安易な抜け道を求める願望が透けて見える。

 オランド大統領は常任の指導者を擁する「経済政府」の創設を求めた(EUには既に多くの“大統領”が存在する)。経済政府の仕事には、税制を調和させることや、社会福祉制度を上方へ収束させる取り組みが含まれるという。端的に言えば、フランスの競争力の問題に対する解決策の一部は、他国が人件費と福祉費用を引き上げることだ、というわけだ。

 これはドイツを激怒させる考え方だ。ドイツは、フランスがグローバル化を脅威と見なすのをやめ、チャンスとして受け入れることを願っている。メルケル首相にしてみると、問題は、苦しんでいる国々がドイツに追いつくのをいかに手助けするかではなく、どうすれば欧州が世界と競えるようになるか、なのだ。

 欧州は将来、どのように生計を立てていくのか? 欧州企業はなぜ、なかなか世界的に成功できないのか? ベルリンの見解は、景気後退が周縁国の高失業率を招いているのであれば、硬直化した労働市場が悪い、というものだ。反独感情の高まりは不快かもしれないが、改革を手に入れるための代償としては払う価値がある。

時限爆弾

 ユーロ危機におけるあまたの事柄と同様に、構造改革に重点が置かれるのも遅かった。各国政府は緊縮政策に莫大な政治的資本をつぎ込んでしまったため、自国経済を自由化する力はないかもしれない。

 ユーロ圏全体の改革も同じくらい重要だ。ECBはある程度まで、国家に対する最後の貸し手として介入した。金融セクターは、ゆっくりしたペースの銀行同盟の創設によって安定してきた。

 対応の遅れの一部は、ドイツが自国の負担を限定したいと考えたからだ。だが、フランスやその他の国々が国民投票で敗北することを恐れて、条約改正に消極的だったことも影響している。EU加盟条件の再交渉を求める英国の主張は、この見通しを一段と不快なものにする。

 しかし、ユーロがリスク分担を強化しなくても存続できるという「ふり」をするのは間違いだ。運の悪いオランド大統領は、連帯強化の代償として政治同盟の強化を訴えるメルケル首相の挑戦に応じようとした。オランド大統領は、2年以内に政治同盟を受け入れる用意があると述べ、「何もしなければ、欧州は倒れる、あるいは世界地図から消えることになる」と付け加えた。

 この呼びかけに対する反応の薄さは、フランスの影響力低下について多くを物語る。オランド大統領はドイツの選挙に先立ち、駆け引きをしようとしているのかもしれないが、ドイツの政策が変わると予想する人はほとんどいない。

 欧州の政府関係者らは、欧州は「国家ではない」ため、迅速に対応できず、当然、米国ほど決断力をもって対応することはできないと主張する。ベルリンのある聡明な観測筋いわく、ユーロは「誰も止められない地獄のマシン(時限爆弾)」と化した。各国がこのマシンに巻き込まれて身動きが取れなくなっている今、彼らにはマシンを修理する責任がある。


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【第1回】 2013年5月31日 
急成長するアフリカ経済の光と影  残された格差、貧困、感染症問題
いま、アフリカ大陸に世界の経済人たちの熱い視線が注がれている。日本でも6月1日から第5回アフリカ開発会議(TICAD)が開催されることもあって、注目が集まっている。本格的な経済成長へ向けて、政府間では数千億円規模の開発プロジェクトが次々と決定。企業もアフリカの市場として可能性に注目し、本格的に進出へ動き始めた。それはまるでアフリカ投資に関して遥か先を走る中国政府の動きに引っ張られているかのようで、前のめりな姿勢が目につく。しかし、冷静にアフリカ市場を見ていくと、いまだに貧困問題や感染症問題が未解決のまま残されており、市場の成長を阻害する要因となっているようだ。アフリカ経済の成長性という光の部分と、未解決のまま残された社会問題という影の部分を取り上げる。(ダイヤモンド・オンライン編集部/片田江康男)
成長可能性と脆弱さを孕む
未開の地、アフリカ大陸
「アフリカ進出について、企業がようやく本気で考え始めた。どのような業種でも、行けば必ずビジネスチャンスをつかめる」
 多くのアフリカ進出支援をするコンサルタントやアドバイザーは力説する。そして、こう付け加える。
「アフリカはここ数年で劇的に変わった。未だに飢餓と貧困、紛争の大陸というイメージを持たれているのならば、今すぐそれは忘れたほうがいい――」
 いま、日本企業の視線が、アフリカに集中している。理由は5年に一度開かれるTICAD(アフリカ開発会議:Tokyo International Conference on African Development)が開催されることもあるが、なにより、アフリカが本格的な成長期に入ったからだ。5回目を迎えるTICADは今回、「援助から投資へ」がキーワードとなっている。
 しかし、冒頭のような言葉は、ある意味正しく、ある意味誤解を生むだろう。確かにアフリカ市場、とりわけサハラ砂漠以南のサブサハラアフリカの成長可能性は高く、本格的な成長が始まったのは間違いない。だが、貧困はいまだに残っており、貧困であるが故に引き起こされる健康問題は、社会問題として各国政府に大きくのしかかっている。
 以下では、成長の可能性と社会的未熟さを同時に孕んだアフリカを、指標をもとに見ていくことにする。
面積は欧州の3倍、ドイツの85倍
人口は2050年までに2倍の20億人
 まず、紹介したいのが、ドイツ・ベルリンのデザインオフィス、「DONDON」が制作したビデオ(http://player.vimeo.com/video/37230184http://player.vimeo.com/video/37230185)だ。4月15日に開かれたセミナー「アフリカの変貌とビジネスチャンス」でも、このビデオの一部が翻訳され上映された。制作されたのは約1年前だが、アフリカの成長ぶりを端的に表している。
 以下要素をいくつか抜き出してみよう。
<面積>
 ヨーロッパの3倍、ドイツの85倍、中国とアメリカ、西ヨーロッパ、日本、アルゼンチンを合算した規模
<人口>
 ヨーロッパは7億3300万人、アフリカには10億人が住む。2050年までにアフリカの人口は2倍の20億人に、ヨーロッパの人口は6%縮小して6億9100万人となる。
<土地>
 世界の未開墾地の60%がアフリカにある。
<巨大都市の出現>
 ナイジェリアのラゴスは人口が急増するため、深刻なセメント不足となる。セメント価格はアメリカやヨーロッパの3倍にもなる可能性がある。
<電力>
 コンゴで建設されている世界最大の水力発電所は320テラワットで、現在180テラワットで世界最大の水力発電所である中国の三峡ダムの約2倍の規模である。
 これだけ見ても、大きな可能性があると感じることができる。日本と比較してみるとどうなるだろうか。人口においては、日本は減少の一途をたどり、2050年に世界で16番目、推定人口は1億854万9000人となる。一方で、同年の世界に置ける人口数上位20カ国のなかに、アフリカは7カ国もランクインする見通しだ(図1)。
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 面積においては、日本の約80倍の広さだ。ビデオの中にも同じような比較があったが、以下の図では、アフリカの3022万平方キロメートルという規模は、中国、アメリカ、インド、メキシコ、ペルー、フランス、スペイン、パプアニューギニア、スウェーデン、日本、ドイツ、ノルウェー、イタリア、ニュージーランド、イギリス、ネパール、バングラディシュ、ギリシャを合算した面積に匹敵する。

豊富な地下資源をテコに急成長
30年には中間層人口は5億人に
 GDP成長率も高い水準を維持する。下図でその推移を見てほしい。アジア途上国には及ばないものの、5%台後半を維持する見込みだ(図2)。当然、一人当たりGDPも右肩上がりだ(図3)。さらに、これらの数値を国ごとに見ていくと、2011〜15年では世界で高成長率を維持する国10カ国のうち、7カ国がアフリカ勢で占められるとの予想が出ている(図4)。


 こうした高い成長率をたたき出す原動力は、豊富な地下資源である。南部アフリカでは金、銀、銅、ニッケル、プラチナ、マンガン、レアアースなどが豊富だ。近年最も注目されているのは、三井物産も参画しているモザンビーク沖の巨大天然ガス開発で、世界有数の埋蔵量が確認されている。
 アメリカ地質調査所は、モザンビークとタンザニアの両国沿岸部にあるガス田の埋蔵量は、250兆立方フィートを超えると試算した。これは、モザンビークが世界有数の生産国にのし上がることを示唆している。当然、同国へは投資資金が大量に流入し、GDP成長率はアフリカ各国のなかでも突出した8.4%となっている。
 都市化も急激に進む。2000年時点で2億2300万人だった中間層人口は30年には5億人を超える。都市化率も急激に伸び、60年には80%を超える予想が出ている。すでに人口100万人以上の都市は33もあり、人口300万人以上の都市は17を数える。なかでもナイジェリアのラゴスは既に人口1200万人、ケニアのナイロビは400万人を超えている。

 この都市数はすなわち、まだアフリカに進出していない消費材メーカーやサービス企業にとって、アフリカにおいて成長可能性のある市場の数と同義だといっても過言ではない。巨大な消費マーケットが眠っているのだ。
MDGsは達成困難
ジニ係数40%超えはザラ
 一方で、アフリカ各国にはまだ未解決な問題も多く残る。2000年、国連で策定されたミレニアム開発目標(MDGs)では、極度の貧困と飢餓の撲滅をはじめ8つの目標が設定され、2015年までに目標を達成することを目指していた。ところが、そのほとんどは達成が不可能な状況だ。
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 経済発展は著しいが、貧富の差は確実に広がっており、直近のジニ係数を見てみると、2005年以降、0.4を超えている国が多い。2005年ケニア0.4768、2006年ルワンダ0.5308、2007年シエラレオネ0.6577、2008年モザンビーク0.4561など高い。一般的に0.4を超えると貧富差が激しいとされ、その格差が社会不安に繋がる目安といわれる。
 また、一日1.25ドル以下で暮らす人は、サブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南の国々)で多く、貧困率も高いことが分かる。

 とりわけ注目したいのが、以下の図表が示す事実だ。5歳未満児の死亡、妊産婦の死亡、エイズによる死亡、結核による死亡、マラリアによる死亡は、依然として高い数値のままだ。
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 各国の保険財源は絶対的な不足状態である。サブサハラアフリカ各国の一人当たり年間医療費は82ドルで、高所得国4692ドル、高中所得国326ドルと比べると極端に少ないことが分かる。しかも、最低限必要とされる国民一人当たりの保険財源44ドルすら満たせない国が21カ国も存在している。
 安全な水へのアクセスもまだまだ難しい。アフリカ全体では安全な水へアクセスができる比率は1993年の58%(人口比)から2009年に65%へ上昇したものの、急速な都市化でスラム人口が増えており、悪化している地域もある。
保健・健康問題の放置は
市場の成長を阻害する
 影の部分を放置し続けると、光の部分を消し去ってしまう可能性も指摘されている。
「健全な市場の発展のためには、保健・健康問題の解決が不可欠だ。それを放置していては市場が育たない」
 こう話すのはJICA人間開発部保健第一グループ保健第一課長の瀧澤邦雄氏だ。国際的な保健・健康問題について、一般的に「グローバル・ヘルス」と総称されることが多いが、このグローバル・ヘルスと企業の進出は、一見すると遠い問題のように感じる。だが、ことアフリカでは密接な関係がある。佐藤重臣・アフリカビジネスパートナーズ代表は「せっかく現地の人を雇用、教育するなど人的投資をしても、健康問題が原因で辞めてしまうこともある。また家族が病気で亡くなってショックを受けて仕事に来られなくなったりということは、珍しいことではない」と話す。
 本当にアフリカでビジネスを拡大し、自社の利益に結びつけようとするならば、影の部分の対策が必要不可欠ということだ。しかし、いまは光の部分にばかり耳目が集まっている。視線を固定させる原因の一つには、中国の動きに翻弄されているということもあるだろう。
 中国はアフリカの光の部分にいち早く飛びついている。すでに中国の対アフリカ輸出入は活発に行なわれており、日本はスケールで足下にも及ばない。

 背景には中国の急速な発展を支えるための、莫大なエネルギー需要の発生がある。1995年、スーダンで油田権益を獲得し、2004年には、当時人権問題を抱え国連・IMFなど先進国が開発援助を凍結していたアンゴラに対して手を差し伸べ、見返りとして油田開発に乗り出している。
 日本がTICADを開催する一方で、中国も2000年から3年に一回、中国・アフリカ協力フォーラムを開催しており、前回の12年の第6回では、2013年から15年までに総額200億ドルの融資を行なうことを発表している。日本の対アフリカODA総額は2012年は18億ドル、直接投資残高(5ヵ年平均)で現在34億ドルだ。いかに中国の対アフリカ投資が巨額であるかが分かるだろう。
意味のない中国との比較
日本は無限のリスクを負えない
 こうした現状に一部の報道では、「中国に投資競争で負けるな」と、まるで日本経済界を叱咤するような論調も見られる。日本経済新聞5月3日朝刊では、『アフリカ投資で遅れ、日本、中国の7分の1、巻き返しへ官民連携』と題した記事が掲載され、文中で『日本の出遅れが目立つ』とある。
 しかし、中国と日本の投資額を比較して、日本が少ないから巻き返さなければならないことはない。中国との投資競争など、まったくナンセンスだ。実際、「中国とは事情が違う。日本は日本なりの投資スタンスでアフリカと関わればいい。日本とアフリカの両国のためになる投資案件や手法を模索することが大切だ」と、あるJICA職員は冷静に話す。
 そもそも、中国政府や中国の国有企業のように、湯水のように援助資金を投下することも、計り知れないリスクをすべて背負い込んで現地に進出することも、いまの日本政府と日本企業には無理だ。
 前出の佐藤氏は「規律を守る、規則を守る、『和を以て貴しとなす』、当たり前のことをしっかりやり通すという日本人の姿勢は高く評価されている」と話す。日本の強みを再確認することが大切だろう。
 本連載では、光の部分だけではなく、いまだに残されたアフリカの貧困、保健・健康問題、それが原因で不足する教育問題などに焦点を当てる。次回は日本医療政策機構理事長の黒川清氏のインタビューをお届けする。なぜ保健・健康問題が重要なのかについて、話を伺った。


米国のシェール革命で割れるOPEC
2013年05月31日(Fri) Financial Times
(2013年5月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


OPECも決して一枚岩ではない〔AFPBB News〕

 石油輸出国機構(OPEC)加盟国の石油相2人に米国のシェールオイル革命について意見を聞けば、恐らく正反対の答えが返ってくるだろう。

 サウジアラビアの石油相で、OPECの事実上のリーダーであるアリ・ヌアイミ氏は先月の講演で、あえてシェールオイルに言及して米国の生産拡大を歓迎した。

 だが、それから2週間も経たないうちに、ナイジェリアの石油相であるデザニ・アリソンマドゥエケ氏は、シェールオイル革命はOPECにとって「最も重大な脅威の1つ」だと述べた。

湾岸諸国とその他加盟国の間に溝

 世界の石油の約40%を生産するOPEC加盟国は今週、石油市場の状況について協議するためにウィーンで年に2度開く定例総会に集まる。コンサルティング会社データモニター・エナジーの幹部ニール・アトキンソン氏は「OPEC内には、あまり心配していないペルシャ湾岸の産油国とその他諸国の間に溝がある」と言う。

 米国政府のデータによると、世界最大の石油消費国である米国が今年2月に輸入したOPEC産原油は、1994年1月以来初めて日量300万バレルを下回った。だが、シェールブームによって米国の輸入市場が縮小する中、サウジアラビアと他の湾岸諸国は、他のOPEC加盟国、特にナイジェリアとアンゴラほど打撃を受けていない。

 米国の精油業者は西アフリカ産の低硫黄原油の代わりに、よく似た高品質の米国産シェールオイルを使うようになっているが、粘着性のあるサウジアラビア産高硫黄原油の代替品は見当たらない。サウジアラビアには、米国内に物理的な存在感があるという強みもある。複数の大規模精油所の共同所有者として一定の影響力を持つのだ。

 その結果、何が起きただろうか。サウジアラビアの米国向けの原油輸出は昨年、平均して日量135万バレルとなり、2008年の金融危機以来最高を記録した。一方、ナイジェリアとアンゴラの2012年の対米原油輸出は合計で日量60万バレルにとどまり、25年ぶりの低水準となった。

 ヌアイミ石油相は今週ウィーンに到着した際、現在の環境は石油市場にとって「最高」であり、「供給は潤沢で需要は好調だ」と述べた。

アフリカ諸国の苦しい財政事情

 シェール革命がもたらす不均等な影響はOPEC内の資金力の格差を広げている。こうした格差は過去に、OPEC内の持てる者と持たざる者との関係を悪化させてきた。

 資金の蓄えが潤沢な湾岸諸国は比較的安い原油価格に耐える力があるが、ナイジェリアのような国々は原油収入が多くないと収支を合わせられない。

 ワシントンに本拠を構えるコンサルティング会社PFCエナジーの試算では、ナイジェリアが2013年に輸入代金を賄うためには、原油の平均価格が1バレル87ドルになる必要があるという。アンゴラの場合は1バレル94ドルだ。

 これに対し、サウジアラビアは1バレル70ドルを若干下回る価格で輸入代金を賄える。一方で、世界の原油価格の指標であるブレント原油は1バレル100ドルを若干上回る水準で推移している。

 アリソンマドゥエケ石油相は、米国のシェールオイルはアフリカの原油収入を25%減少させ、OPEC加盟国数カ国の経済を著しく損なう恐れがあると警告した。

 急成長するアジア諸国からの需要はまだ伸びているため、ナイジェリアとアンゴラにとっての問題は、買い手を見つけるというよりは、むしろ原油販売の条件をまとめることだ。

長期契約からスポット市場での売買へ

 米国と欧州の精油業者は長期契約で西アフリカ産原油を購入することが多かったが、こうした契約が切れるに従い、より多くの原油をスポット市場で売らなければならなくなる。そしてスポット市場では、他国が供給する原油に対して競争力のある価格をつける必要がある。

 バークレイズの石油アナリスト、ミスウィン・マヘシュ氏は、インドの精油業者は価格を重視するバーゲンハンターだと言う。「インド勢はブレント原油との価格差が魅力的な時にはナイジェリア産原油に飛びつく・・・こうした購入は、期間を決めた購入契約のような長期的な支えにならない」

 インドは今月、初めて米国を抜き、ナイジェリア産原油の最大の輸出先となった。中国もナイジェリア産原油の購入を増やしている。だが、湾岸諸国は原油生産の規模と信頼性、そしてインド洋へのアクセスの良さのおかげで、アジア市場でも他のOPEC加盟国よりも優位性がある。

定例総会が荒れることはなさそうだが・・・

 とはいえ、米国のシェールを巡る緊張が今週ウィーンで明るみに出る可能性は低いだろう。サウジアラビアは米国で市場を維持してきたかもしれないが、同国は需給を均衡させるために自発的に減産を実施した唯一のOPEC加盟国でもある。

 一方、ナイジェリアとアンゴラは原油収入を最大限に増やすために能力いっぱいに生産しており、両国が他の加盟国に要求できることは限られる。

 だが、特に需要の伸びが鈍った場合には、悲運は避けられないように見える。ドバイに本拠を構えるコンサルティング会社マナール・エナジーの代表、ロビン・ミルズ氏は次のように話している。「OPECはできる限り、この問題と対峙することを先送りしようとするだろう。だが、米国のシェールがもたらす影響の大きさは、今になって加盟国に理解され始めている」

By Ajay Makan




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【第1回】 2013年5月31日 
急成長するアフリカ経済の光と影  残された格差、貧困、感染症問題
いま、アフリカ大陸に世界の経済人たちの熱い視線が注がれている。日本でも6月1日から第5回アフリカ開発会議(TICAD)が開催されることもあって、注目が集まっている。本格的な経済成長へ向けて、政府間では数千億円規模の開発プロジェクトが次々と決定。企業もアフリカの市場として可能性に注目し、本格的に進出へ動き始めた。それはまるでアフリカ投資に関して遥か先を走る中国政府の動きに引っ張られているかのようで、前のめりな姿勢が目につく。しかし、冷静にアフリカ市場を見ていくと、いまだに貧困問題や感染症問題が未解決のまま残されており、市場の成長を阻害する要因となっているようだ。アフリカ経済の成長性という光の部分と、未解決のまま残された社会問題という影の部分を取り上げる。(ダイヤモンド・オンライン編集部/片田江康男)
成長可能性と脆弱さを孕む
未開の地、アフリカ大陸
「アフリカ進出について、企業がようやく本気で考え始めた。どのような業種でも、行けば必ずビジネスチャンスをつかめる」
 多くのアフリカ進出支援をするコンサルタントやアドバイザーは力説する。そして、こう付け加える。
「アフリカはここ数年で劇的に変わった。未だに飢餓と貧困、紛争の大陸というイメージを持たれているのならば、今すぐそれは忘れたほうがいい――」
 いま、日本企業の視線が、アフリカに集中している。理由は5年に一度開かれるTICAD(アフリカ開発会議:Tokyo International Conference on African Development)が開催されることもあるが、なにより、アフリカが本格的な成長期に入ったからだ。5回目を迎えるTICADは今回、「援助から投資へ」がキーワードとなっている。
 しかし、冒頭のような言葉は、ある意味正しく、ある意味誤解を生むだろう。確かにアフリカ市場、とりわけサハラ砂漠以南のサブサハラアフリカの成長可能性は高く、本格的な成長が始まったのは間違いない。だが、貧困はいまだに残っており、貧困であるが故に引き起こされる健康問題は、社会問題として各国政府に大きくのしかかっている。
 以下では、成長の可能性と社会的未熟さを同時に孕んだアフリカを、指標をもとに見ていくことにする。
面積は欧州の3倍、ドイツの85倍
人口は2050年までに2倍の20億人
 まず、紹介したいのが、ドイツ・ベルリンのデザインオフィス、「DONDON」が制作したビデオ(http://player.vimeo.com/video/37230184http://player.vimeo.com/video/37230185)だ。4月15日に開かれたセミナー「アフリカの変貌とビジネスチャンス」でも、このビデオの一部が翻訳され上映された。制作されたのは約1年前だが、アフリカの成長ぶりを端的に表している。
 以下要素をいくつか抜き出してみよう。
<面積>
 ヨーロッパの3倍、ドイツの85倍、中国とアメリカ、西ヨーロッパ、日本、アルゼンチンを合算した規模
<人口>
 ヨーロッパは7億3300万人、アフリカには10億人が住む。2050年までにアフリカの人口は2倍の20億人に、ヨーロッパの人口は6%縮小して6億9100万人となる。
<土地>
 世界の未開墾地の60%がアフリカにある。
<巨大都市の出現>
 ナイジェリアのラゴスは人口が急増するため、深刻なセメント不足となる。セメント価格はアメリカやヨーロッパの3倍にもなる可能性がある。
<電力>
 コンゴで建設されている世界最大の水力発電所は320テラワットで、現在180テラワットで世界最大の水力発電所である中国の三峡ダムの約2倍の規模である。
 これだけ見ても、大きな可能性があると感じることができる。日本と比較してみるとどうなるだろうか。人口においては、日本は減少の一途をたどり、2050年に世界で16番目、推定人口は1億854万9000人となる。一方で、同年の世界に置ける人口数上位20カ国のなかに、アフリカは7カ国もランクインする見通しだ(図1)。
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 面積においては、日本の約80倍の広さだ。ビデオの中にも同じような比較があったが、以下の図では、アフリカの3022万平方キロメートルという規模は、中国、アメリカ、インド、メキシコ、ペルー、フランス、スペイン、パプアニューギニア、スウェーデン、日本、ドイツ、ノルウェー、イタリア、ニュージーランド、イギリス、ネパール、バングラディシュ、ギリシャを合算した面積に匹敵する。

豊富な地下資源をテコに急成長
30年には中間層人口は5億人に
 GDP成長率も高い水準を維持する。下図でその推移を見てほしい。アジア途上国には及ばないものの、5%台後半を維持する見込みだ(図2)。当然、一人当たりGDPも右肩上がりだ(図3)。さらに、これらの数値を国ごとに見ていくと、2011〜15年では世界で高成長率を維持する国10カ国のうち、7カ国がアフリカ勢で占められるとの予想が出ている(図4)。


 こうした高い成長率をたたき出す原動力は、豊富な地下資源である。南部アフリカでは金、銀、銅、ニッケル、プラチナ、マンガン、レアアースなどが豊富だ。近年最も注目されているのは、三井物産も参画しているモザンビーク沖の巨大天然ガス開発で、世界有数の埋蔵量が確認されている。
 アメリカ地質調査所は、モザンビークとタンザニアの両国沿岸部にあるガス田の埋蔵量は、250兆立方フィートを超えると試算した。これは、モザンビークが世界有数の生産国にのし上がることを示唆している。当然、同国へは投資資金が大量に流入し、GDP成長率はアフリカ各国のなかでも突出した8.4%となっている。
 都市化も急激に進む。2000年時点で2億2300万人だった中間層人口は30年には5億人を超える。都市化率も急激に伸び、60年には80%を超える予想が出ている。すでに人口100万人以上の都市は33もあり、人口300万人以上の都市は17を数える。なかでもナイジェリアのラゴスは既に人口1200万人、ケニアのナイロビは400万人を超えている。

 この都市数はすなわち、まだアフリカに進出していない消費材メーカーやサービス企業にとって、アフリカにおいて成長可能性のある市場の数と同義だといっても過言ではない。巨大な消費マーケットが眠っているのだ。
MDGsは達成困難
ジニ係数40%超えはザラ
 一方で、アフリカ各国にはまだ未解決な問題も多く残る。2000年、国連で策定されたミレニアム開発目標(MDGs)では、極度の貧困と飢餓の撲滅をはじめ8つの目標が設定され、2015年までに目標を達成することを目指していた。ところが、そのほとんどは達成が不可能な状況だ。
拡大画像表示
 経済発展は著しいが、貧富の差は確実に広がっており、直近のジニ係数を見てみると、2005年以降、0.4を超えている国が多い。2005年ケニア0.4768、2006年ルワンダ0.5308、2007年シエラレオネ0.6577、2008年モザンビーク0.4561など高い。一般的に0.4を超えると貧富差が激しいとされ、その格差が社会不安に繋がる目安といわれる。
 また、一日1.25ドル以下で暮らす人は、サブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南の国々)で多く、貧困率も高いことが分かる。

 とりわけ注目したいのが、以下の図表が示す事実だ。5歳未満児の死亡、妊産婦の死亡、エイズによる死亡、結核による死亡、マラリアによる死亡は、依然として高い数値のままだ。
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 各国の保険財源は絶対的な不足状態である。サブサハラアフリカ各国の一人当たり年間医療費は82ドルで、高所得国4692ドル、高中所得国326ドルと比べると極端に少ないことが分かる。しかも、最低限必要とされる国民一人当たりの保険財源44ドルすら満たせない国が21カ国も存在している。
 安全な水へのアクセスもまだまだ難しい。アフリカ全体では安全な水へアクセスができる比率は1993年の58%(人口比)から2009年に65%へ上昇したものの、急速な都市化でスラム人口が増えており、悪化している地域もある。
保健・健康問題の放置は
市場の成長を阻害する
 影の部分を放置し続けると、光の部分を消し去ってしまう可能性も指摘されている。
「健全な市場の発展のためには、保健・健康問題の解決が不可欠だ。それを放置していては市場が育たない」
 こう話すのはJICA人間開発部保健第一グループ保健第一課長の瀧澤邦雄氏だ。国際的な保健・健康問題について、一般的に「グローバル・ヘルス」と総称されることが多いが、このグローバル・ヘルスと企業の進出は、一見すると遠い問題のように感じる。だが、ことアフリカでは密接な関係がある。佐藤重臣・アフリカビジネスパートナーズ代表は「せっかく現地の人を雇用、教育するなど人的投資をしても、健康問題が原因で辞めてしまうこともある。また家族が病気で亡くなってショックを受けて仕事に来られなくなったりということは、珍しいことではない」と話す。
 本当にアフリカでビジネスを拡大し、自社の利益に結びつけようとするならば、影の部分の対策が必要不可欠ということだ。しかし、いまは光の部分にばかり耳目が集まっている。視線を固定させる原因の一つには、中国の動きに翻弄されているということもあるだろう。
 中国はアフリカの光の部分にいち早く飛びついている。すでに中国の対アフリカ輸出入は活発に行なわれており、日本はスケールで足下にも及ばない。

 背景には中国の急速な発展を支えるための、莫大なエネルギー需要の発生がある。1995年、スーダンで油田権益を獲得し、2004年には、当時人権問題を抱え国連・IMFなど先進国が開発援助を凍結していたアンゴラに対して手を差し伸べ、見返りとして油田開発に乗り出している。
 日本がTICADを開催する一方で、中国も2000年から3年に一回、中国・アフリカ協力フォーラムを開催しており、前回の12年の第6回では、2013年から15年までに総額200億ドルの融資を行なうことを発表している。日本の対アフリカODA総額は2012年は18億ドル、直接投資残高(5ヵ年平均)で現在34億ドルだ。いかに中国の対アフリカ投資が巨額であるかが分かるだろう。
意味のない中国との比較
日本は無限のリスクを負えない
 こうした現状に一部の報道では、「中国に投資競争で負けるな」と、まるで日本経済界を叱咤するような論調も見られる。日本経済新聞5月3日朝刊では、『アフリカ投資で遅れ、日本、中国の7分の1、巻き返しへ官民連携』と題した記事が掲載され、文中で『日本の出遅れが目立つ』とある。
 しかし、中国と日本の投資額を比較して、日本が少ないから巻き返さなければならないことはない。中国との投資競争など、まったくナンセンスだ。実際、「中国とは事情が違う。日本は日本なりの投資スタンスでアフリカと関わればいい。日本とアフリカの両国のためになる投資案件や手法を模索することが大切だ」と、あるJICA職員は冷静に話す。
 そもそも、中国政府や中国の国有企業のように、湯水のように援助資金を投下することも、計り知れないリスクをすべて背負い込んで現地に進出することも、いまの日本政府と日本企業には無理だ。
 前出の佐藤氏は「規律を守る、規則を守る、『和を以て貴しとなす』、当たり前のことをしっかりやり通すという日本人の姿勢は高く評価されている」と話す。日本の強みを再確認することが大切だろう。
 本連載では、光の部分だけではなく、いまだに残されたアフリカの貧困、保健・健康問題、それが原因で不足する教育問題などに焦点を当てる。次回は日本医療政策機構理事長の黒川清氏のインタビューをお届けする。なぜ保健・健康問題が重要なのかについて、話を伺った。


04. 2013年5月31日 17:17:37 : niiL5nr8dQ
焦点:全国CPIは6月にもプラス転化、ゼロの壁突破で消費喚起効果も
2013年 05月 31日 16:56 JST
[東京 31日 ロイター] - 今朝方発表された5月東京都消費者物価指数(コアCPI)が約4年ぶりにプラス転化、サプライズとなった。エコノミストの間では、全国コアCPIについてもマイナス脱却時期の予想を前倒し、早ければ5月分からプラスに転じるとの見方が浮上。注目されるのは、円安によるコスト増を価格転嫁できそうだとの企業行動の変化と、期待インフレ率への波及だ。

「物価ゼロの壁」を突破すれば、企業の価格設定が消費の前倒しにつながり物価上昇に勢いが出てくれば、アベノミクスの思惑通りの展開が期待できそうだ。あとは所得の増加が後から追いつけるかどうかがカギとなる。

<テレビ価格に変化、コスト転嫁への動きも>

足元のコアCPIは、5月の東京がプラス転化し、全国の4月分も3月よりマイナス幅は縮小した。こうしたデフレ圧力緩和の大きな要因は、主に食料品・日用品への円安による輸入コスト転嫁と、自動車保険料の引き上げによるところが大きい。

もっとも今回の消費者物価の動きを見て、従来とやや異なる企業の価格設定の動きが出てきたことが注目されている。

一つはテレビの価格がここにきて下げ止まりから上昇に転じつつあることだ。SMBC日興証券では「テレビについては、従来は調査対象銘柄変更や新製品投入などの特殊要因で押し上げられるケースがあったが、今回はどちらにも該当しないようだ。特殊要因でないとすれば、需給を素直に反映していると考えられる」と見ている。

またエアコンも前年比上昇、3月までの下落とは様相が異なる。伊藤忠経済研究所では、こうした動きが統計の歪みの影響を除いたとしても値下げの動きが一服している可能性があると指摘、「消費者の低価格志向の弱まりを踏まえた、企業行動を反映した動きとも解釈できる。こうした解釈は、現段階では推測の域を出ないが、6月日銀短観などで、企業の価格認識の変化が示される可能性がある」と見ている。

消費者サイドからみても、期待インフレ率は相当上昇している。クレディスイス証券の試算によれば、消費動向調査による1年後の物価見通しをもとに分析した期待インフレ率は4月に2.5%と、日銀の物価目標2%を越えて上昇している。同調査では身の回り品や電気料金に影響されやすいが、1年後には相当上がっていると消費者が認識していることを示す。

こうした消費者の意識を踏まえて、さらに企業の価格設定行動が変化する可能性がある。物価がいったんプラスに転じた場合は、こうして前向きの循環が生まれる可能性がある。「食料品や生活必需品の値上げは基本的にはコストプッシュだが、転嫁するか否かの最終判断の裏には、家計が多少なりとも値上げを受け入れるとの企業側の認識が存在する可能性が高い」(伊藤忠経済研究所)というわけだ。

<CPIプラス転化前倒し、5月にもデフレ脱却の可能性>

東京都の5月CPIプラス転化を受けて、エコノミストの間では全国コアCPIについても、デフレ脱却の予想時期を前倒しする動きが相次いでいる。

SMBC日興証券では従来の6月から5月に、第一生命経済研究所でも5月に0%ないし0.1%程度の上昇を予想している。

第一生命によると、「影響が大きいのは電気代であり、プラス寄与の拡大が予想される。5月からの電力大手2社による大幅値上げの影響も大きい。また、前年の裏の影響で石油製品価格が前年比で改善が見込まれるほか、テレビも押し上げに寄与しそうだ」と見ている。多くのエコノミストがその後も緩やかな上昇を続けるとみている。

<インフレ期待上昇による消費刺激効果は>

変化の兆しが出てきた企業の価格設定行動と消費社の意識変化が持続すれば、アベノミクスが狙っていた期待インフレ率への働きかけはある程度成功したとも言えそうだ。

政策当局では「企業の価格設定行動が変われば、家計のインフレ期待が高まり、消費を前倒しする刺激効果が強まることが期待できる」との見方が浮上しているほか、「物価がせめてマイナスを脱すれば、ゼロの壁突破の勢いが出てくるはずだ」との見方もある。

その勢いを本物にするには、やはり所得の増加が必須となる。株高による資産効果についても、年初来の株価の上昇による消費押し上げ効果はざっと1%と試算されており、5月まででほぼ出尽くしたと分析されている。ここから先は、所得の増加と物価上昇のスピードのタイムラグが消費回復ペースに影響を与えることになりそうだ。

所得を占う上でまず気になるのが、今年の夏のボーナスだ。企業業績の改善を映じて大企業では2年ぶりに全年を上回るとの結果が経団連から発表された。ただ改善は円安の恩恵を受けた大企業製造業が中心。雇用者の数が圧倒的に多い非製造業や中小企業での改善はまだ期待できそうにない。それでも「所得回復には順番がある。まずは大企業製造業が上がり、徐々に非製造業、中所企業に波及していくことは間違いない。所得の広がりに時間はかかるが、だからといって物価上昇を否定すべきものではない」(野村証券)との指摘もある。

すでに物価を押し上げる基本的な力である需給ギャップは縮小傾向にあることは1─3月GDPでも明らかだ。加えて、 期待インフレ率と所得の向上が加わることで、2%の物価目標に近づいていく可能性が高まる。円安を基点として、企業がコスト転嫁できる環境だと判断できれば、期待インフレ率の上昇と消費の刺激といった前向きの循環が生まれる可能性がある。こうした動きを点検するために、日銀では短観を利用して、企業に対し1年後、3年後の販売価格判断を聞く項目を盛りこむ方向だ。

((ロイターニュース 中川泉 編集:宮崎大)

 


 


 


 

コラム:株式市場は何を恐れているのか=カレツキー氏
2013年 05月 31日 16:00 JST
アナトール・カレツキー

[30日 ロイター] 世界経済と金融市場では今週、奇妙なことが起きている。冒頭の一文は世界金融危機以降の5年間、ほぼいつの時点についても利用可能な言い回しだが、今週の奇妙さは特殊な形態を取っており、それによって生じた混乱よりも、明白になった部分の方が大きい。

最近の経済関連のニュースはほぼすべて良い内容か、少なくとも予想を上回っている。米国では住宅価格が2006年以来で最大の上昇を示し、失業は減り、消費者信頼感指数は金融危機前の水準に戻った。

日本は近年では最も良好な成長を享受しており、消費の高まりと賃金上昇の兆しが増している。欧州ですら、政策が財政引き締めから成長重視に転換し、欧州委員会が各国に財政赤字目標の押し付けを止めたことで、見通しが改善しているようだ。一方、欧州中央銀行(ECB)は中銀預金金利のマイナス化など、非伝統的な景気刺激策をさらに講じる可能性を示唆している。

それなのに金融市場ではボラティリティが急上昇して年初来で最高となり、パニック状態にすら陥った。

米国株は28日にいったん過去最高値を付けたものの、その後はすぐに急落。日本株は2011年の東日本大震災時以来で最大の下げ幅を記録した。最も重要なのは世界各地で起きた債券相場の下落であり、米国や日本、欧州の大半の国では長期金利が1年強ぶりの水準に上昇した。

何が起きているのだろうか。

手掛かりとなるのは金利と債券の市場で発生した直近の混乱だ。株価は日米欧の債券利回りと何がしかの相関関係を持つため、債券価格の急落は株式投資家を怖気づかせた。金利のボラティリティの高まりや株式市場の乱高下に対する恐怖感は、金融以外の分野でも消費者や企業経営陣にすぐに伝染する可能性がある。

こうした恐怖感は3つの疑問を呼び起こす。金融市場に突然の不安を引き起こした原因は何か。懸念は正当化できるのか。政策当局者は市場を鎮静化させるため、もしくは金融市場の混乱と消費や企業投資、雇用など非金融分野の連動を絶つため、手を打つべきか否かということだ。

意外なことに、これらの疑問に対する答えは明快だ。ボラティリティの急上昇がFRB、特にバーナンキFRB議長の22日の議会証言とその数時間後に公表された連邦公開市場委員会(FOMC)議事録によって引き起こされたという主張にはほとんど異論はない。

私は先週のこのコラムでこう論じた。バーナンキ議長は証言で何も目新しいことは述べておらず、FRBは失業率が6.5%に低下するまで景気刺激を継続するという方針を繰り返しただけだと。しかし市場はまったく異なる受け止め方をし、FRBが早ければ6月の実施に向けて資産買い入れ縮小を準備していると考えた。

市場の考え方に確実な証拠はなく、実際のところバーナンキ議長は他の複数のFRB当局者同様に、景気回復の勢いが確固たるものとなる前に資産買い入れを撤収する危険性を強調したのだ。

しかし多くの投資家やメディアのアナリストは、先週私が論じた社会心理学的な理由などにより、納得しなかった。そしてさらに重要なことに、今週に入ってさらに別の心理学的な要因が加わった。バーナンキ議長発言後の債券市場の乱高下自体が、議長発言には重大な新しい情報が含まれているに違いないと投資家に信じ込ませたのだ。相場の変動が大きくなればなるほど、議長の言葉からはそんなことはまったく読み取れないのに、市場はFRBの意図について「何か知っているに違いない」と思い込む投資家が増えた。

こうしたフィードバックはジョージ・ソロスの言う「再帰性」、つまり正当化され得るかどうかにかかわらず、市場の期待が経済の現実を変え、期待通りの現実を成立せしめる能力の模範例だ。

ここから私の2つ目の問いが持ち上がる。金融面の景気刺激策が近い将来に縮小されたり、撤回されると信じる理由があるかという問いだ。2つの大きな理由から、それは疑わしい。1つ目は、バーナンキ議長や他のFRB当局者は、資産買い入れ縮小の検討は成長の勢いや雇用創出に確信が持てるようになってからだと繰り返し表明している。こうした判断に至るには、少なくとも6カ月間にわたる力強い雇用の増加か、2四半期連続の国内総生産(GDP)の堅調な伸びが必要となる。3月分と4月分の統計がまちまちだったことを考えると、今年第4・四半期前にこうした継続的な強い数字が得られるのは文字通り不可能だ。

2つ目に、日本と欧州はどちらも緊縮財政モードを転換したばかりで、FRBが資産買い入れの縮小に着手した後も景気刺激を継続するのは確実だ。日米欧の中央銀行の取り組みを合わせて考えると、世界の金融環境が少なくとも今後1年程度、引き締まるのではなく緩和するのはほぼ間違いない。

つまりほぼ確実に、金融引き締めに対する市場の恐怖には正当な根拠がなく、少なくとも時期尚早だ。そうであるなら、最近の株式・債券市場の波乱について、ましてや市場沈静化について気に掛ける必要などがあるのだろうか。

残念ながら答えは「イエス」。金融市場と現実の経済を結ぶ「再帰性」の相互作用があるからだ。世界経済は回復の勢いを増しているが、まだ足元が固まっておらず、重篤な金融ショックには耐えられない。もし数カ月以内に株価が急激に下落したり長期金利が一段と大幅に上昇すれば、消費者信頼感や設備投資、住宅などはいずれも打撃を受け、財政赤字は再び拡大し始めるだろう。要するに金融ショックが世界経済に影響を与え、実体経済が悪化し、当初の金融ショックが正当化されるような事態になり得るということだ。

こうした自己実現的な下方スパイラルを回避するため、すべての主要国の中央銀行や政府は、金融環境が引き締まらないことを明確に伝える必要がある。そして投資家に対し、長期金利のゆっくりとした上昇は世界経済の正常化に伴う健全な動きだと告げる一方で、中銀はいざとなれば金利の過度の変動や金融市場の急激なボラティリティ上昇から経済を守るべく、無限の資金供給力を備えていることを思い起こさせるべきだ。

*アナトール・カレツキー氏は受賞歴のあるジャーナリスト兼金融エコノミスト。1976年から英エコノミスト誌、英フィナンシャル・タイムズ紙、英タイムズ紙などで執筆した後、ロイターに所属した。2008年の世界金融危機を経たグローバルな資本主義の変革に関する近著「資本主義4.0」は、BBCの「サミュエル・ジョンソン賞」候補となり、中国語、韓国語、ドイツ語、ポルトガル語に翻訳された。世界の投資機関800社に投資分析を提供する香港のグループ、GaveKal Dragonomicsのチーフエコノミストも務める。


 

 

 

 

安倍相場は「波浪注意報」点灯中、反発力弱く短期急変の懸念消えず
2013年 05月 31日 15:14 JST
[東京 31日 ロイター] - 安倍相場には依然として「波浪注意報」が点灯している。日本株とドル/円は反発しているものの、戻りは鈍く、下値不安は残ったままだ。

アベノミクスへの期待は根強く、調整が一巡すれば円安・株高基調が再開するとの見方は多いが、高いボラティリティを嫌う長期投資家は様子見となっており、短期筋の売買が相場を大きく動かしている。生産設備の国内回帰など円安効果が日本経済全体を潤すには至っておらず、市場の「期待感」をどこまで維持できるかが焦点だ。

<日本株の押し目買い鈍る>

日本株の反発力の弱さが目立った。31日前場の日経平均.N225は219円(1.6%)高の反発となったものの、700円を超える下落の翌日にしては戻りが弱い。米株が反発したほか、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用手法を弾力化する方向にあることがわかったとロイターが伝えたことも好材料となったが、上昇過程でみられたような押し目買いの動きは鈍くなっている。また日経平均はファーストリテイリング(9983.T)など寄与度の大きい銘柄が押し上げており、TOPIX.TOPXは0.6%の上昇にすぎなかった。

戻りの鈍さは押し目買いが入りにくくなっていることが要因だ。週末、月末にもかかわらず、東証1部売買代金は1兆3403億円と薄商い。日本株に対して様子見ムードが強まっていることを示している。「ボラティリティが上昇し、高いボラを嫌う長期投資家の買いが引いている。薄商いのなか短期筋の先物売買が引き続き、相場を振らせている」(国内証券)という。日経ボラティリティ指数.JNIVは36ポイント付近で高止まりだ。

ドル/円も上値が重い。日本株反発に加え、GPIFの運用スタンスをめぐる思惑で、前日の海外市場では101円後半まで上昇したが、日本株の伸び悩みに連動するように101円を割り込んでいる。「ドル/円の反発力が鈍いことで日本株も戻りにくくなっている。相場が落ち着いたとはとても言えず依然波乱含みだ」とインベストラスト代表取締役の福永博之氏は話す。

円債市場は比較的落ち着いているが、新たな波乱の芽も出てきた。5月東京都区部消費者物価指数(除く生鮮)が前年比0.1%の上昇と予想に反してプラス転化となり、市場では「円安などによるエネルギーコスト増で電気代の上昇が指数を押し上げた格好。想定していたよりも早めにプラス転化してきたことで、投機筋の売り材料に使われる可能性も否定できない」(国内金融機関)との声が聞かれた。デフレ脱却は日本経済にとってプラスだが、経済実態が伴わないなかで金利だけが上昇すれば、日本株にもマイナスの影響をもたらす。

<米「出口」観測で一喜一憂>

市場のセンチメントが揺らいでいるのは、日本だけではない。世界の各市場が米経済指標や要人発言に一喜一憂しているのは、現在の金融相場を支えている流動性を供給している「大元」のFRB(米連邦準備理事会)が金融緩和策の「出口」を模索し始めているためだ。

米国経済は、1990年後半以降、バブル形成と崩壊を繰り返している。90年後半はITバブルが発生し、2000年に入って崩壊。それに対応するために実施した大幅な利下げが03年からの住宅バブルを引き起こした。住宅バブルによるサブプライム問題は08年のリーマンショックをピークに崩壊。世界的な財政支出がそれを支えたが、欧州の債務問題で財政バブルははじけた。現在はそれに対応した超金融緩和が世界の株価を押し上げている。

現在の米株が「バブル」となっているかどうかは、現時点ではわからないが、少なくとも米株高を支えてきた米金融緩和が転換となれば、投資家はレバレッジを効かせてきたグローバルマネーによる投資をいったん巻き戻す可能性がある。そのときに実体経済が回復していれば、「金融相場」から「業績相場」に比較的スムーズに移行できるが、世界経済はまだ株高を担えるほど回復はしていない。

T&Dアセットマネジメント、チーフエコノミストの神谷尚志氏は「FRBは失業率6.5%という条件を自ら課しており、金融緩和状況はしばらく続くだろう。過去をみても、株価は天井を付けた後もしばらく急落せずに高値圏でもみあう傾向がある。ただバブルはバブルであり、いずれ崩壊する可能性は警戒しておくべきだ」と話す。米株は過去最高値圏で推移しているが、22日以降、急落している米REIT指数.REITなどの動きには注意が必要と指摘している。

<期待感が安倍相場の生命線>

株価は乱調だが、日本株に対しての期待感が低下したわけではない。「現時点で出ている成長戦略は迫力不足だが、参院選後に既得権益に切り込むような改革が出るとの期待が残っている」(外資系証券)という。ロイターが日本、英国、欧州大陸、米国の機関投資家を対象に行った5月の国際分散投資調査によると、日本株の投資比率が約1年ぶり高水準となり、最近のボラティリティにもかかわらず、日本株が引き続き選好されていることが明らかになった。

ただ、日本経済は円安や株高で回復過程にあるとはいえ、自律的な成長軌道に乗れるかはまだ不透明だ。円安効果も、輸出企業の収益は押し上げているものの、輸出数量増や海外生産工場の国内回帰といった実体面にはまだ及んでいない。あくまで期待先行の株価上昇であり、市場の期待感を維持することが、「安倍相場」の生命線だ。

パナソニック(6752.T)の高見和徳専務は30日の主要事業の今後3年間の経営計画発表の席上、アプライアンス(白物家電)の海外生産について、国内生産に切り換えることを検討する為替水準は105―107円だとした。

みずほ証券リサーチ&コンサルティングの調査によると、5月29日までの発表段階で、東証1部企業(除く金融)の2013年3月期営業利益は4.3%増。14年3月期は28.6%増予想だが、12年3月期が16.7%減であり、落ち込みからの反動と円安効果の面が大きい。

かざか証券・市場調査部長の田部井美彦氏は「現在の円安は過度な円高からの修正の範囲内で、日本企業や日本経済の実力を押し上げるにはまだ至っていない。成長戦略を間断なく打ち出し、市場の期待をつなぎ、円安・株高基調を維持することが、日本を自律的な成長軌道に乗せるために重要だ」と述べている。

(伊賀 大記

 

 

都銀の国債保有残高が100兆円割れ、株への資金シフト見えず
2013年 05月 31日 11:51 JST
[東京 31日 ロイター] - 都市銀行の4月末国債保有残高は2011年6月以来1年10カ月ぶりに100兆円の大台を割り込んだ。株や外債などのリスク資産残高も減らしており、安全資産からリスク資産への資金シフト、いわゆる「グレートローテーション」の動きは統計上、確認されていない。

日銀が31日に発表した4月分の「民間金融機関の資産・負債」によると、都銀の国債保有残高は4月末現在、96兆2688億円と4カ月ぶりに減少に転じ、2011年6月以来1年10カ月ぶりに100兆円の大台を割り込んだ。前月末に比べて率で10.8%、金額で11兆6912億円の減少となった。

日銀は4月4日の金融政策決定会合で、2年で2%の物価目標達成に向けて、量的・質的金融緩和を導入。5日の国債市場では10年最長期国債利回り(長期金利)が一時0.315%と過去最低を付けたが、その後は上昇に転じている。

都銀は国債とともに、株式や外国証券などのリスク資産の保有残高も減らしている。4月末の株式保有残高は10兆0109億円と前月末に比べて、率で16.8%、金額で2兆0283億円の減少。外国証券も27兆0384億円と率で4.2%、金額で1兆1819億円の残高を落とした。こうした資産売却で得た資金は、現金のほか日銀当座預金などに預けられたとみられている。

みずほ証券・シニア債券ストラテジストの早乙女輝美氏は「都銀の国債残高が10兆円を超えて減らしたのは、1990年台以降で初めて。同時に株式や外債などのリスク資産も減らしている。都銀の4月マネーフローは、国債から株へのシフト、いわゆるグレートローテーションというよりは、国債を売却していったんキャッシュに置く動きを強めたと判断した方が妥当だ」とみている。

国内銀行の国債保有残高も同6.3%減の156兆1125億円と2011年6月以来の水準まで落ち込んだ。一方、地方銀行は同2.1%増の35兆8799億円。


 


 

 


コラム:貿易黒字の謎に潜む「宇宙人」
2013年 05月 31日 13:13 JST
By Andy Mukherjee

[29日 ロイター BREAKINGVIEWS]  人類はこれまで長年にわたって、地球外生命体の痕跡を探し続けてきた。そしてついに、フランス人の大学院生が意外な場所でその証拠をつかんだようだ。その場所とは、世界の税関の台帳の中だ。

パリ・スクール・オブ・エコノミクスの博士課程に所属するガブリエル・ズクマン氏は、世界各国の輸出入のデータを調べ上げた。理論上、輸出と輸入はトータルすればプラスマイナスゼロになるはずだが、ズクマン氏の推計では2007年の世界全体の貿易収支は4000億ドル(約40兆円)のプラスとなった。宇宙人が「iPhone(アイフォーン)」や「iPad(アイパッド)」を買ってくれなければあり得ない数字だ。

宇宙人の存在を信じる人たちにとっては残念だが、これにはごく平凡な説明がつけられる。ズクマン氏は、世界の貿易収支が黒字なのは発展途上国で計算ミスがあるからではないかと考えている。また、貿易が資本フローを隠している可能性もある。

多くの国では、輸出入業者は通常、国家間で資金を動かすことが可能だが、投資家が同じことができるとは限らない。これは特に中国に当てはまることだ。エコノミストらは、企業が同国の資本規制を逃れるために、貿易を利用しているのではないかと疑いの目を向け続けてきた。

ズクマン氏のデータでは、世界の貿易収支は2004年ごろから黒字が続いている。これは中国の人民元改革で利益を得ようとする投機資金が同国に流入し始めたころである。中国が記録する香港への輸出額と、香港が記録する中国からの輸入額に隔たりがみられるのは、本土側の企業が輸出を水増ししているからだとの見方もある。

ただこうしたミスマッチは今に始まったことではない。1978年に経済学者ジェフリー・フランケル氏が記した論文では、世界の貿易収支は赤字になる傾向があると指摘されていた。1990年代には、赤字額は平均700億ドル(2008年時点のレートで換算)に膨らんだ。しかし中国が2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟すると、貿易収支のバランスは逆方向に振れ始め、その後はプラス幅が拡大した。

ズクマン氏のデータによると、2008年の世界貿易収支は2980億ドルの黒字。前年からは落ち込んだが、それでも大きな額であることには変わりない。

こうした数字を見れば、国の貿易データも疑わしいことに気づくだろう。しかし、現実の世界を反映している面もある。資本収支と経常収支には関連があり、仮に発展途上国の貿易黒字が実際よりも大きく見えるなら、その国の対外債務は過小評価されることになる。こうした「隠れ負債」は、別の惑星と貿易をしない限り、膨大なものになってしまうだろう。


 

 


コラム:米緩和の遠い出口、FRBに残された武器=鈴木敏之氏
2013年 05月 31日 15:56 JST
鈴木敏之 三菱東京UFJ銀行 シニアマーケットエコノミスト(2013年5月31日)

米連邦準備理事会(FRB)による未曾有の金融緩和のもとで、米国株は最高値を更新し、住宅価格は上昇を続け、雇用増も確保されてきた。大きな懸念だった財政の崖と欧州債務危機をめぐる情勢もひとまず落ち着き、市場の破滅的な動揺の可能性は薄らいできたといえよう。

金融政策のアクセルを踏み続けるにしても、もう力の限り踏む必要がないということは納得されつつある。また、幾多のバブル破裂を経て、今の緩和で人々が過剰にリスクをとってしまう懸念があるならば、それを見越して抑制しようという発想も、連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーたちに受け入れられ始めている。未曾有の強烈な緩和は、それを推進したバーナンキFRB議長の任期満了が近づくにつれて、出口政策に進もうとしている。

しかし、今後の経済動向を勘案すると、「出口政策の入り口」には入れても、利上げをして通常の金融政策がとれる状態に戻す、すなわち「正常化の出口」に向かって一直線に進めるかは確信できない。それどころか、「QE3(量的緩和第3弾)」でも経済を浮揚できない場合、他にいかなる手段があるか――。その検討が今、重要なトピックになりつつある。

<経済指標の動きは緩和解除に否定的>

そもそも緩和解除など、以下の4点を考えれば、本来は異次元の世界の話、つまり非現実的な話にも思えてしまう。

第1に、低調な景気指標だ。ISM製造業景気指数は4月の数字で50.7と、景気をみる分岐点の50割れ寸前にある。しかも、5月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数は、マイナス5.2だった。この数字から5月のIMS製造業指数を単回帰で推計すると、50を割ってしまう。

また、さまざまな景気指標が強弱交錯する場合に、総合的な状態を月次で把握できることで有用な全米経済活動指数(CFNAI)も、4月はマイナス0.53だった。この数字はマイナス0.7より下がると、経済の冷え過ぎを警戒しなければならないとされ、決して余裕のある状況ではない。2期連続マイナス成長のリセッションは全くの視野外と言ってよいが、ここでFRBが金融緩和解除に動いてしまうと、後日、勇み足と批判されるかもしれない。

第2に、失業率だ。FOMCが公表する経済見通しは、雇用について失業率を挙げている(4月は7.5%まで下がってきてはいる)が、今日この数字は雇用情勢を示す指標としての信頼性に欠けている。労働参加率が下がると、雇用情勢の改善がなくても、失業率は下がる。この労働参加率の変化要因分を補正すると、失業率は最悪期から、ほとんど下がっていないという試算も可能なほどである。

第3に、物価上昇率の低下である。3月のPCEコア(個人消費支出価格指数)のインフレ率は前年比1.1%と、「歓迎されない継続的な物価上昇率の低下」としてデフレ警戒が発せられた2003年のときよりも低い。インフレ率の低下は一時的という発言がFRB幹部から出ているが、従前のFRBならば、警戒してしかるべき数字だろう。そもそも中央銀行のバランスシートを拡大すればインフレになるという話は、どこへ行ったのか。FRBの任務に、物価の安定と持続可能な雇用の最大化があるが、見方によっては、両方とも未達成である。

第4に、不安含みな世界経済情勢だ。世界景気の動向を比較的早く把握できることで重宝されている世界貿易量は直近の3月分でも前年同月比1.3%の増加しかなく、平時としては、かなり弱い。この状況で、FRBが緩和解除に動けば、ドルが独歩高になり、米経済の重石になることも危惧される。

<弾薬庫に残された4つの武器>

もちろん、信用力の弱い社債の利回り急低下など、不健全といってよい、過剰なリスクテイクが見えていることは否定できない。対応は必要だということで、FOMC内で議論が始まり、ゼロ金利、その維持の公約のフォワードガイダンス(いわゆる時間軸政策)、これまで購入した保有証券の満期到来分の買い取り、そして毎月850億ドルの証券購入という4本立ての強烈な緩和政策をそのまま続ける必要はないと考えるのは、自然の流れである。

しかし、来年、財政の調整の重石がとれて成長が回復するとの見込みが外れたときにどうするのか。緩和を弱めた結果、住宅価格の上昇が止まったらどうするのか。こうした事態に至ったとき、金融政策はもう何もできないということにしてはならない。FRBには、弾薬庫を空にしない準備が必要となる。

議論としては、次のようなものがある。

まず、毎月850億ドルの証券購入の増減を、政策金利の変更に類する政策手段に位置づけることである。一度は、購入を減らすにしても、経済状態に問題が出れば、あたかもフェデラルファンド(FF)金利を下げるように、購入を増やすという発想だ。先般のFOMC声明が、両方向に動ける準備ができているといったのは、この布石といえる。証券購入によるQE政策は事例が増え、また時間の経過とともにデータもそろい、得体の知れない非伝統的金融政策ではなくなってきている。

第2に、目下、学界から大きな関心が寄せられている名目国内総生産(GDP)ターゲット議論だ。むろん、そのような目標を掲げたところで、自動的に名目GDPの数字がそこに向かうわけではないだろうから、証券購入、フォワードガイダンスとの組み合わせになるとみられる。イングランド銀行のカーニー新総裁が、名目GDPターゲットに関心を持つとされる。また、仮にバーナンキ議長が来年議長職を離れて、その後任がイエレン副議長の昇格となれば、FRB副議長の職が空く。そのポジションを埋める人物次第で、この話が進む可能性はゼロではないだろう。

第3に、インフレ目標を4%に引き上げるという議論がある。将来の期待実質金利のパスを変えて、金融緩和効果を狙う発想だ。この亜流ともいえようが、「インフレ率が2.5%を上回らない限り、6.5%の失業率に達するまで異例の低金利(ゼロ金利)を続ける」とのFOMC声明の閾(しきい)値を変えることもオプションといえるだろう。

ただし、これらの3つは、QE3が目的を達せなかった際に繰り出す政策としては、緩和効果と即効性に難があり、迫力不足ではある。そこで浮上してきている第4の議論が、いわゆるヘリコプターマネー(OMF、Overt Monetary Finance)である。中央銀行による財政ファイナンスをタブーとせず、確かに大変な毒薬だとしても、最先端の経済学の識見によって、いかなる毒かを明確にして、それを取り除いて効能のみを用いることはできないか、議論の価値があるというのだ。

金融不均衡やバブルなどの弊害を見越して、強烈緩和からの出口に進むのは健全だとしても、それが正しい判断かは当事者でもわからない。だからこそ、信頼の得られる「プランB」を弾薬庫に確保しておくことが、信認の源として必要になる。それが、成長に貢献できる経済変動の安定確保という中銀の仕事なのだろう。

*鈴木敏之氏は、三菱東京UFJ銀行市場企画部グローバルマーケットリサーチのシニアマーケットエコノミスト。1979年、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。バブル崩壊前夜より市場・経済分析に従事。英米駐在通算13年を経て、2012年より現職。


 

 


 
米議員、TPPで為替操作に対する規定盛り込むよう大統領に求める
2013年 05月 31日 14:28 JST
[ワシントン 30日 ロイター] - 太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に、為替操作に対する新たな規定を追加するようオバマ大統領に求める書簡に署名した米超党派議員が200人近くに上った。

ロイターが入手した書簡のコピーによると「為替操作への対策で合意することが必要だ」とし「為替に関する規定を盛り込むことで、不公平な通商慣行と闘い、米国の労働者や企業、農業経営者にとり公平な場を作ることができる」としている。

この書簡は、ジョン・ディンゲル議員(ミシガン州、民主党)やリック・クロフォード議員(アーカンソー州、共和党)など超党派の下院議員がとりまとめている。既に200人近くの議員が署名しており、議会関係者によると、来週オバマ大統領に送付される予定。

日本がTPP交渉参加を目指すなか、米自動車業界などの間では、日本が意図的に円の価値を引き下げていることで国内自動車メーカーの競争力を不当に高めている、との批判が広がっている。


05. 2013年6月01日 01:50:36 : e9xeV93vFQ

日銀、次回決定会合で期間2年以上の資金供給議論へ=関係筋
2013年 06月 1日 01:10 JST
[東京 31日 ロイター] - 日銀は長期金利の乱高下を抑制するため、現在1年以下に限定されている資金供給オペの期間を2年以上に延長することを議論する。今後の市場動向を踏まえ、早ければ6月10、11日開催の次回金融政策決定会合で具体的な検討に入る。

金融機関による国債購入をしやすくすることで、長期金利の変動を抑制し、景気回復に水が差さされるのを防ぐ狙いがある。複数の関係者が明らかにした。

日銀が検討するのは、日常の資金調節を担う金融市場局が裁量で供給できる資金の期間を現在の1年以下から2年以上に延長する案。伝統的に中央銀行が資金供給を行ってきたのは翌日物など短期の資金が中心で、これまでは1年以上の資金供給を同局の裁量で行うことはできなかった。

しかし、4月4日の異次元緩和導入後の金利乱高下に対して、国債の買い入れペース拡充などの工夫よりも、0.1%の低利で資金を1年間貸し出す固定金利オペ(公開市場操作)がより効果的だったとの認識が、日銀内では広がっている。

異次元緩和で金融政策の目安が金利から資金供給量(マネタリーベース)に転換したが、従来0.1%と低位で張り付いていた期間3年までの金利について、今後も押し下げるとの日銀の姿勢を示す必要性も議論されているようだ。

金融機関からも、資産と負債の期間のバランスを合わせる運用戦略上、1年以上の資金供給に対する要望がメガバンクを中心に出ていた。普通預金は引き出し自由のため通常は年限ゼロの負債となる。年限の長い負債を持てば、それだけ年限の長い国債を資産として買えるためだ。

乱高下を繰り返す長期金利安定のため、日銀が29日開いた市場参加者との意見交換会でも、複数社から要望が出ており、日銀として検討が必要と判断した格好だ。

当初、日銀内では長期金利の上昇は、2年間で物価目標の2%を実現すると宣言したことによる期待物価上昇率の上昇に伴うものと静観する向きもあった。黒田東彦総裁は利回り曲線(イールドカーブ)全体を押し下げる効果を狙うと明言した経緯があるため、日銀としては政策の整合性が問われている。

23日の東京市場で日経平均.N225が13年ぶりの下げ幅で大幅下落するなど株式市場が乱高下し始めたきっかけの一つが、長期金利の乱高下との見方も浮上しつつある。政府部内には、物価上昇に伴う自然な長期金利の上昇とは異なる乱高下は、日銀が抑制して欲しいとの声が高まりつつある。

ただ、「量的・質的金融緩和」は国債から他の資産への投資を促すことも狙いとしており、金融機関に国債の購入を促す措置と政策との整合性が問われる可能性もあることから、慎重に議論する考えだ。



4月米個人消費支出が1年ぶりに減少、FRBに緩和継続の余地
2013年 06月 1日 01:27 JST
[ワシントン 31日 ロイター] - 米商務省が31日発表した4月の個人消費支出は前月比0.2%減と昨年5月以来ほぼ1年ぶりに減少した。インフレ圧力も落ち着いており、連邦準備理事会(FRB)が当面緩和策を維持できる状況にあることが示された。

市場予想は0.1%増だった。ガソリン価格の下落でガソリン販売による収入が落ち込んだことや光熱費の弱い需要が影響した。

インフレ調整後の消費支出は前月比0.1%増加したが、前月の0.2%増から伸びが鈍化した。インフレ調整後の消費支出は6カ月連続で増加したもの、第2・四半期の消費支出の伸びは、第1・四半期の年率3.4%から鈍化すると予想される。

個人所得は前月比変わらず。貯蓄率も2.5%と前月から横ばいだった。

HSBC証券の首席米国エコノミスト、ケビン・ローガン氏は「所得が大きく伸びていないことから消費支出の動きは非常に穏やかだ。雇用が上向いているものの賃金の伸びが非常に遅い」と指摘した。

所得の伸び悩みによる内需停滞は、インフレ圧力の一段の低下でも裏付けられた。個人消費支出(PCE)価格指数は前月比で0.3%低下し、前月の0.1%から低下幅が拡大した。前年比では0.7%上昇と、2009年10月以来の小幅な伸びにとどまり、FRBが目標としている2%を大きく下回った。

食品とエネルギー価格を除いたコアPCE価格指数は前月比横ばい。前月は0.1%上昇していた。前年比では1.1%上昇し前月の1.2%から伸びが鈍化した。

インフレ圧力がみられず消費支出の低迷が明らかになったことから、市場で広がっている、年内にもFRBが緩和策を縮小する可能性があるとの観測は後退するとみられる。

前出のローガン氏は「指標はFRBが現段階でインフレを過度に懸念する必要がないことを示している。QE(量的緩和)を継続する余地が十分あるということだ」と述べた。



5月の米ミシガン大消費者信頼感は約6年ぶり高水準
2013年 06月 1日 01:22


[ニューヨーク 31日 ロイター] - ロイター/ミシガン大学が調査した5月の米消費者信頼感指数(確報値)は84.5と、前月の76.4から上昇し、2007年7月以来およそ6年ぶりの高水準となった。株価が連日最高値を更新する中、経済や家計の先行きに関して楽観的な見方が高まっていることが浮き彫りとなった。

エコノミスト予想の83.7も上回った。

信頼感の改善は、富裕層が引き続きけん引しているものの、中間層や低所得者層でも信頼感が上向き始めた。

景気現況指数は前月の89.9から98.0に上昇し、2007年8月以来の高水準となった。

消費者期待指数も67.8から75.8に上昇した。

調査責任者のリチャード・カーティン氏は「データは明らかに、年内の個人消費の伸びが1カ月前時点の予想ペースより速まることを示している」と指摘した。

耐久財の購入状況に関する指数は137から147に上昇した。

株高や住宅価格の上昇を背景に、家計見通しが最近改善したとの回答が悪化したとの回答を5年ぶりに上回った。また回答者の58%が景気が改善したと答えた。

今後1年のインフレ見通しは変わらずの3.1%。向こう5─10年のインフレ見通しも2.9%で変わらずだった。

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5月米CB消費者信頼感指数、2008年2月以来の高水準 2013年5月29日
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4月米ミシガン大消費者信頼感指数は低下、雇用見通しに根強い懸念 2013年4月27日
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米消費者マインド指数:5月確定値は84.5、6年ぶり高水準

  5月31日(ブルームバーグ):5月の米消費者マインド指数は前月から大きく上昇し、ほぼ6年ぶりの高水準となった。
5月の米トムソン・ロイター/ミシガン大学消費者マインド指数 (確定値)は84.5と、2007年7月以来で最高。前月は76.4だった。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト予想の中央値は速報値と同じ83.7だった。
現在の景況感を示す指数は98と、07年8月以来の高水準。前月は89.9、速報値では97.5だった。
6カ月後の先行き景況感を示す期待指数は75.8に上昇。前月は67.8、速報値は74.8だった。
向こう1年間のインフレ期待値は3.1%と、前月から変わらず。5年後のインフレ期待値は前月と同じ2.9%だった。
原題:Consumer Sentiment in U.S. Rises to Highest Since July2007(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Lorraine Woellert lwoellert@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2013/06/01 00:37 JST

米シカゴ製造業指数:1年ぶり高水準、雇用や生産が持ち直す

  5月31日(ブルームバーグ):5月のシカゴ地区の製造業景況指数は前月から上昇した。前月は約3年半ぶりの活動縮小となっていた。
MNIシカゴ・リポートの5月の製造業景況指数 (季節調整済み)は58.7と、前月の49から上昇した。これは昨年3月以来の高水準で、9.7ポイントの伸びは1983年7月以来の最大。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト予想の中央値は50だった。同指数は50が製造業活動の拡大と縮小の境目を示す。
レイモンド・ジェームズ・アソシエーツのチーフエコノミスト、スコット・ブラウン氏は統計発表前に、「内需全般に関しては、回復が順調に進んでいる兆しが見られる」と指摘。「ファンダメンタルズは改善しつつある」と述べた。
項目別にみると、雇用指数は56.9と前月の48.7から上昇し、1月以来の高い水準となった。生産指数は62.7と昨年3月以来の高水準。前月は49.9だった。
新規受注は58.1と、前月の53.2を上回った。仕入れ価格指数は55.3で、前月の51から上昇した。
原題:Chicago Index Unexpectedly Jumps to Highest Level in aYear (2)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Jeanna Smialek jsmialek1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2013/06/01 00:01 JST

米個人消費支出:4月は前月比0.2%減、12年5月来のマイナス

  5月31日(ブルームバーグ):4月の米個人消費は予想に反して減少した。個人消費のマイナスは2012年5月以来で初めて。個人所得 は横ばいだった。
米商務省が発表した4月の個人消費支出(PCE)は前月比で0.2%減少した。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想中央値では前月比変わらず。前月の個人消費は0.1%増と、速報値の0.2%増から下方修正された。
BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏(トロント在勤)は「減速が見られる」と述べた上で、「それでも非常に強かった第1四半期後のスタートとしてはまずまずだ」と続けた。
貯蓄率は2.5%で前月から変わらず。賃金・給与も横ばいだった。
実質ベースのPCEは前月比で0.1%増加と、前月の0.2%増から伸びが鈍化した。
PCE価格指数は前月比で0.3%低下と、下落率としては2008年12月以来の最大。食品とエネルギーを除くコア指数は前月比変わらず。前年比では1.1%上昇にとどまり、過去最低水準に並んだ。
原題:Consumer Spending in U.S. Unexpectedly Declined in April(2)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Shobhana Chandra schandra1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2013/05/31 23:36 JST



クリーブランド連銀総裁:大き過ぎる銀行には遺言状が有益

  5月31日(ブルームバーグ):米クリーブランド連銀のピアナルト総裁は経営難に陥った銀行の事業閉鎖手順を示すいわゆる「遺言状」について、投資家から見た監督面での透明性を高める効果があるとの認識を示した。
ピアナルト総裁は31日、ワシントンで開かれた会議で講演。事前原稿によると、「『大き過ぎてつぶせない』問題にうまく対処するには、信頼できる整理プロセスの確立が求められる。それはシステム上重要な金融機関の破綻を安全に管理できるものであるべきだろう」と指摘。
「こうした信頼性を確保するには、情報および監督の透明性がかなり求められるだろう」と述べた。
原題:Fed’s Pianalto Says Bank Living Wills Help Solve Too-Big-to-Fail(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Jeff Kearns jkearns3@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2013/05/31 22:58 JST



ユーロ圏:5月のインフレ率速報値、1.4%に上昇−EU統計局
  5月31日(ブルームバーグ):ユーロ圏の5月のインフレ率 は前月から上昇した。食料値上がりとサービスのコスト上昇が要因で、域内経済が過去最長のリセッション(景気後退)から脱却しつつある兆候となった。
欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が31日発表した5月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は前年同月比1.4%上昇。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト46人の予想中央値と一致した。4月の伸び率は1.2%。インフレ率は2月以来、欧州中央銀行(ECB)が目安とする2%弱の水準を下回っている。
ブルームバーグがエコノミスト33人を対象に実施した別の調査によれば、ECBは6月6日の定例政策委員会で政策金利を過去最低の0.50%に据え置くとみられる。ユーロ圏は1年半にわたってリセッションに見舞われており、ECBは刺激策を模索。ドラギ総裁は景気見通しが悪化すれば、追加利下げに踏み切る用意があると示唆している。
HSBCホールディングスの欧州チーフエコノミスト、ジャネット・ヘンリー氏は「今年後半に景気がやや回復というECBの基本想定シナリオが変わらない限り、向こう数カ月の利下げは大変な驚きとなるだろう」と指摘。ECBの利下げ実施には「年央ごろに見込んでいる景気の安定化ではなく、現状からの一段の悪化を確認する必要がある」と付け加えた。
ユーロスタットによると、5月のエネルギーコストは前年同月比0.2%下落。4月は0.4%下がっていた。食品とアルコール、たばこの価格は3.3%上昇。4月の伸び率は2.9%。サービスのコストは1.4%上昇。4月は1.1%上がっていた。
原題:Euro-Area Inflation Accelerates as Food Costs OffsetEnergy Drop (抜粋)Eurozone May Flash Consumer Prices: Summary (Table)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:アテネ Marcus Bensasson mbensasson@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Craig Stirling cstirling1@bloomberg.net
更新日時: 2013/05/31 19:25 JST



ECBビスコ氏:ユーロ安定には各国が債務管理と景気刺激を

  5月31日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)政策委員会のメンバー、イタリア銀行(中央銀行)のビスコ総裁は31日、金融政策を通じたユーロ安定化の取り組みを支えるため、各国に債務を管理し景気を刺激するよう促した。
同総裁はイタリア中銀の年次会合でのスピーチで、「全ての国が自らの役割を果たす必要がある。域内の経済ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)と制度的な構造がその目標に即している場合にのみ、金融政策は安定を保証することができる」と述べた。発言は事前テキストに基づく。
17カ国から成るユーロ圏が失業率の引き下げや経済成長の加速に苦戦する中で、ビスコ総裁は改革と債務管理を呼び掛けている。ユーロの不安定さはECBが昨年発表した国債購入プログラム(OMT)によって抑制されており、ECBはOMTの下で支援要請を行った国の国債を購入することになっている。
原題:ECB’s Visco Says Defense of Euro Requires Action FromMembers(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ローマ Andrew Frye afrye@bloomberg.net;Rome Alessandra Migliaccio amigliaccio@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Hertling jhertling@bloomberg.net
更新日時: 2013/05/31 18:53 JST


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