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黒田日銀批判が軽視する米金融政策の「常識」=嶋津洋樹氏
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/268.html
投稿者 賢者の石 日時 2013 年 6 月 04 日 19:05:51: Qf5ShLuWtoZHs
 

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE95300Y20130604?sp=true

嶋津洋樹 SMBC日興証券 債券ストラテジスト(2013年6月4日)

黒田日銀が「量的・質的金融緩和」を導入してから2カ月が過ぎた。筆者はこの間の日銀を積極的、前向きに評価しているが、実感からすると、そうした声は少数だ。

むしろ、メディア上では「債券市場の需給要因と流動性リスクを理解していない」「長期金利は量的・質的金融緩和後に上昇した」「実体経済と乖離(かいり)したバブル的な株価上昇を引き起こしている」などの批判が目立つ。もっとも、こうした批判はいずれも「異次元」緩和を従来と同じ目線、いうなれば「同次元」で評価することから生じている。

たとえば、上記以外にも「黒田日銀の展望レポートは願望レポート」といった批判をよく耳にするが、そう皮肉る人の多くは「インフレ率はあくまで需給ギャップで決まり、金融政策に影響されない」と考えている。しかし、黒田日銀はそうした従来の常識ではなく、米連邦準備理事会(FRB)の「長期的なインフレ率は主に金融政策によって決定される」(長期的な目標と金融政策戦略に関する声明文)という知見を重視している。

また、バーナンキFRB議長が理事時代、インフレ目標を採用する中央銀行のコミュニケーション手段の一つとして、インフレ報告などを通じた経済見通しやその評価の公表の重要性を指摘していたように、日銀が「物価安定の目標」を導入し、事実上のインフレ目標政策を採用したことは、展望レポートが期待インフレを安定させるためのコミュニケーション手段へと変化したことも意味する。黒田東彦日銀総裁は4月に「現時点で必要な政策をすべて講じた」とはっきりと発言しているのであり、展望レポートでデフレが継続するシナリオを提示することは基本的に考えにくい。

ところが、日本では黒田総裁の「期待へ働きかける」ことに対する批判的、懐疑的な見方も多い。白川方明前総裁が退任会見で「期待に働きかけるという言葉が、中央銀行が言葉によって市場を思い通りに動かすという意味であるとすれば、そうした市場観、政策観には、私は危うさを感じる」と回答したのは象徴的だ。金融政策の実体経済への効果を論じる際、貸出の増減だけに注目し、物価を主に需給ギャップで説明していては、黒田総裁の考え方は理解できないだろう。

<米金融政策の教訓>

米ニューヨーク連銀のダドリー総裁は5月21日、「ゼロ金利制約下での教訓:日本と米国の経験」と題して講演。その冒頭で6つの教訓を紹介する際、「最初の、そして最も重要な教訓は」と前置きしたうえで、「ゼロ金利制約下で金融政策を運営するにあたって、期待を管理することが不可欠だ」と説明した。その後も「期待の管理は金融政策において常に(ゼロ金利制約下以外でも)最も重要だ」と繰り返した。ダドリー総裁が従来の日銀を冷ややかに見ていたのは想像に難くない。

ダドリー総裁はまた、日米の現在の金融政策がインフレ目標を明確に掲げていること、その達成のためにあらゆる手段を講じるとコミットしていること、そして実際にフォワードガイダンス(いわゆる時間軸政策)と巨額の資産購入を実施している点で似ていると発言。さらに、日本の「量的・質的金融緩和」と米国のいわゆる「量的緩和」について、「主にバランスシートの資産側で、民間部門のデュレーションリスクを中央銀行へ移すことで機能」し、「それがリスクプレミアムを引き下げ、民間部門の投資家を一段とリスクの高い資産へと押し出す」とも説明した。

誤解を恐れずに言えば、筆者は日米の中央銀行の狙いが国債市場にとどまる投資家をリスクの高い市場へ追い出すことにあると考えている。もちろん、それが国債市場の需給逼迫(ひっぱく)や流動性低下を通じて、経済に悪影響を与えるリスクは小さくないが、そのリスクよりも、投資家の資金が国債に偏ることの弊害が大きいと認識しているのだろう。国債は一般的にリスクの低い資産として知られるが、国債だけに偏ったポートフォリオのリスクは当然、高い。すべての卵を一つのバスケットに入れてはいけないとの考えは、資産運用のみならず、リスク管理の面でも常識だ。

また、バーナンキ議長は5月22日の議会証言で「住宅およびその他の資産の価格上昇は順次、家計の富と消費者の信頼感を回復させ、消費支出を押し上げ、生産と雇用の増加に貢献する」と、資産価格の上昇が景気回復につながることを明確に説明した。ダドリー総裁の発言にも当てはまるが、金融政策の実体経済や物価への影響を貸出や需給ギャップには結び付けていない。

日本では、資産価格の上昇を論じると、「バブル」や「後ろめたさ」と結び付けて捉えられることが多い。しかし、バーナンキ議長の考え方に基づけば、それは景気回復にとって重要かつ必要な最初の一歩と言えるだろう。実際、金利や株価は代表的な景気の先行指標として世界中で広く利用されている。資産市場におけるバブルとは、その価格が実体経済から説明できないほど高騰することを示す。それを景気回復の初期に見られる主に金融資産の価格上昇と区別することは困難だが、だからといって同列に扱うことはできないだろう。

<金利上昇めぐる日銀批判への違和感>

日本の株式市場はこれまで、日銀がデフレを容認していると見られていたことで、欧米の株式市場から取り残されていたのであり、政治的な混乱や規制緩和の不足、高齢化などの問題は、少なくとも日本株がリーマンショック前の水準を回復するにあたっては、それほど重要でない。実際、そうした問題はどこの国にも多かれ少なかれ存在するだろう。たとえば、労働市場の硬直性やそれによる競争力の低下は、日本よりも欧州で深刻だ。日本の財政赤字が名目国内総生産(GDP)の約2倍の水準で、事実上財政破綻したギリシャの1.5倍を上回っていることは特筆すべき点だが、そもそもそれが最も直接的に影響を及ぼすのは株式ではなく、長期金利のはずだ。日本の株価がリーマンショック前の水準を回復しただけで、「バブル的」と批判するのは行き過ぎだろう。

筆者は「量的・質的金融緩和」の副作用で長期金利が上昇したとの批判にも、納得していない。確かに、経常黒字や家計部門の貯蓄、対外純資産の大きさなどを勘案すれば、先進国で最悪の財政赤字を抱えていても、日本の長期金利の低位安定は正当化されやすい。しかし、勢いを増す批判の裏側には、日銀が介入して金利低下を促すべきという意図が見え隠れする。株式市場ではかつて、「株価PKO」と呼ばれた政府による株価維持政策の是非が問われた。日銀に、金融政策としての「量的・質的金融緩和」以上の措置を求めるのは、「量的・質的金融緩和」に否定的な人々が指摘する金融政策と財政政策との境界を一段と曖昧にするリスクを高める。

黒田総裁は足元の長期金利の上昇について、国債市場の投資家が考えるほど深刻に捉えていない可能性がある。日米中銀の国債購入がそもそも、国債市場の投資家をリスクの高い別な市場へ追い出すことを念頭に置いているとすれば、なおさらその可能性が高い。

黒田総裁は5月22日の金融政策決定会合後の会見で「量的・質的金融緩和」について、「物価上昇や景気回復の期待」を通じた金利上昇と「リスクプレミアムの圧縮効果」を通じた金利低下の2つの相反する効果があると説明。足元にかけての金利上昇が後者の失敗ではなく、前者の成功によってもたらされていることを示唆した。また、「実質金利はたぶん下がっていると思う」とも発言。「量的・質的金融緩和」で期待インフレの引き上げに成功していることも暗に認めた。

冒頭でも触れた通り、日銀が金融政策を大きく転換してからまだ2カ月しか経過していない。金融政策は通常、実体経済に影響を及ぼすまで半年から1年半程度の時間がかかるとされ、「量的・質的金融緩和」の効果を確認するにはもう少し時間が必要だろう。それは「長期的なインフレ率は主に金融政策によって決定される」との「常識」を否定し続け、デフレを放置してきた10年以上の歳月と比べると非常に短い時間だ。

筆者は「量的・質的金融緩和」に副作用やリスクがあるのを否定しない。それでも、他国の金融政策やその成果から目を背け、デフレの原因を主に政府や企業の努力不足のみに求める考え方には依然として全くなじめない。2年後のインフレ目標未達を前提に現在の正副総裁の責任を追及する時間は、日銀が10年以上もデフレを放置することになった反省と、デフレからの脱却へ向けた方策を議論するために割かれるべきだろう。

*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントを経て2010年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネージャーとして、日米欧の経済、金融市場の分析に携わる。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
 

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コメント
 
01. 2013年6月04日 20:19:24 : CaPVOdT6CU
もうじきあらゆる相場が崩落する
上げたものはいつかは下がる
それがホントの常識

02. 2013年6月04日 20:30:15 : e9xeV93vFQ
為替の急変動を嫌気、ドル100円割れに財界の反応
2013年 06月 4日 19:05 JST
[東京 4日 ロイター] - 3日の海外市場で1ドル100円を割り込むドル安/円高が進んだことについて、財界からは、急激な変動を嫌気する声が聞かれた。その一方で、あくまで調整局面に過ぎず、この先も円安基調は続くとの見方が大勢を占めた。

新日鉄住金(5401.T)の友野宏社長は4日、経団連のイベントでロイターに対し「乱高下は好ましくない」と指摘。経営判断をする上では為替の水準よりも、安定することのほうが重要との認識を示した。三菱重工業(7011.T)の大宮英明会長も「基本的に為替が急激が動くのは好ましくない」と述べた。

ドルが100円を割り込んだこと自体については、急ピッチで円安が進んだことの揺り戻しに過ぎないとの反応が多く、「この半年間は急激過ぎた。少ししたら安定するのではないか」(アサヒグループホールディングス(2502.T)の荻田伍会長)などの声が出ていた。

そのうえで、多くの財界首脳が円安基調に変化はないとの見方を示した。日立製作所(6501.T)の川村隆会長は「全体としては上がり基調」と指摘。トヨタ自動車(7203.T)の内山田竹志副会長は「少し円高を是正しようというのが政府を含めて大きな方向性だ」とし「日本の実力だと、(1ドル)100円から110円くらいでないか」と述べた。

このほか、安倍政権が取り組む日本経済の成長戦略については「規制緩和が大きなポイントになる」(日立の川村会長)、「時間軸を絞って実行あるのみ。出す以上、全部やればいい」(丸紅(8002.T)の勝俣宣夫相談役)などの声が聞かれた。

その一方で、東芝(6502.T)の佐々木則夫社長は「本当に設備投資に効くまでには少し時間がかると思う」と語った。

 

 

アングル:ドル100円回復の陰に年金フローか、上値追いは限定的
2013年 06月 4日 18:59 JST
[東京 4日 ロイター] - ドル/円が1日も経たずに100円台を回復したのは、国内年金のドル買い観測が広がったことが一つの要因だ。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方針見直しへの期待もあり、切り返しに勢いを付けた。

ただ週末に5月米雇用統計を控え、神経質な展開が続いているだけに、上値は重いとの見方が多い。

<年金フローが相場サポートか>

ドル/円は、3日のニューヨーク市場で100円を割り込み、一時98.86円と5月9日以来の安値をつけた。5月米ISM製造業景気指数が予想外に弱かったことで、米量的緩和の早期縮小観測が後退。ドルが全面安となる中で、海外短期筋の投げが出た。「ドル/円は戻りが鈍くなってきたので、これはだめだと思い始めていたところに、弱いISM製造業景気指数が引き金を引いた」(大手邦銀)という。

ただ、4日午後の東京市場でドル/円は100円をすぐさま回復。夕方には一時100.42円まで上昇するなど予想以上の戻しを演じた。市場では、この陰に国内年金によるドル買いフローの存在を指摘する声が出ている。

ある大手邦銀関係者は「きのうニューヨークで下をやって、きょうはショートカバーで99.80─100.10円くらいまで戻ることはある程度予想できたが、かなり強い買いが入っているような感じだった」と指摘。「年金フローが入っていたフシがあり、そうであればこのまま堅調に推移する可能性がある」との見方を示した。

国内年金のフローをめぐっては、政府が、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など公的・準公的年金資金の運用方針の見直しに着手することが関係筋の話として明らかになっており、市場では海外投資拡大などの思惑が出やすくなっている。

<米雇用統計控え上値追いも限定的>

市場ではドル高・円安シナリオは依然健在だ。米国は量的緩和の早期縮小観測が後退しているとはいえ、米連邦準備理事会(FRB)内での議論の高まりなどをみれば、「出口」は着実に近づいてきている。一方、日銀はデフレ脱却に向けて金融緩和を深めていく方向にあり、そのスタンスは大きく異なる。

安倍政権についても7月参院選を控え、株安・円高が続くようなら「リップサービスにしろ、何かしらやってくるだろう」(大手邦銀)との期待感が根強い。

もっとも、週末に5月米雇用統計の発表を控え、5月22日につけた年初来高値103.74円を再びトライするような雰囲気はまだ出ていない。足元では「良い米経済指標に対するドル買い反応は鈍くなっており、上振れた場合よりも、下振れた場合のほうが相場の反応は大きくなりそうだ」(国内証券)と警戒する声が出ている。

SMBC日興証券の為替ストラテジスト、野地慎氏は「シカゴの投機筋ポジションをみると、ドル買いは相当積み上がっており、5月米雇用統計によってはまだ巻き戻されるポジションが残っている」と指摘。為替は他のマーケットよりもポジションの偏りが大きいとして「リバウンドも大きく、雇用統計次第でドル/円は97.50円くらいまで下げても不思議ではない」と慎重な見方を示している。

(ロイターニュース 志田義寧 編集:伊賀大記)

 

 

米国債続落で相場変動拡大 BIS、景気刺激解除を予測
2013.6.4 05:00   国際決済銀行(BIS)は、成長回復によって中央銀行が刺激策の解除に動くと予想される状況で、米国債相場の下落が続き、相場の変動が拡大するとの見通しを明らかにした。

 BISの金融経済部門責任者、スティーブン・チェケッティ氏は5月31日の電話会議で報道陣に対し、「利回りは景気回復に伴い上昇するだろう。利回りは落ち着きと不安定な局面を経験し、正常な状態に向かうまでの間に浮き沈みが激しくなるのはほぼ確実だ」と語った。

 米国の10年国債利回りは先月、2010年12月以来の大幅上昇となった。連邦準備制度理事会(FRB)が月間850億ドル(約8兆5500億円)相当の債券購入の縮小を開始するとの観測が広がったことが背景にある。バーナンキ議長は5月22日、経済成長に持続的な改善を示す兆候が見られれば、資産購入のペースを落とす可能性があると発言した。(ブルームバーグ Emma Charlton、Jennifer Ryan)

 

情報BOX:米量的緩和終了に関するFRB当局者の見解
2013年 06月 4日 18:45 JST
[3日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の債券買い入れプログラム終了の時期や方法にはバーナンキ議長の考えが最も大きく影響するが、FRB当局者からもさまざまな見解が示されている。

6月18─19日の次回連邦公開市場委員会(FOMC)までは、議長や当局者による量的緩和に関する発言が注目される。

以下は各自の見解。◎は今年のFOMCで投票権をもつ当局者。

<債券買い入れの縮小>

◎バーナンキ議長:5月22日の上下両院合同経済委員会での証言で、景気の勢いが維持されていることが分かれば「今後数回の会合で(next few meetings)」債券購入ペースの減速を決定することもあり得ると発言。

◎エバンズ・シカゴ地区連銀総裁:5月20日の講演で「次回かその後、あるいは秋のFOMCでの他の当局者の意見に耳を傾ける」と発言。FRBは現在のペースで資産買い入れを継続できるが、秋までに労働市場の回復が定着したと確信できれば、突如停止することもあり得るとの考えを示した。また、債券買い入れ終了を支持するには、月間の雇用者数が数カ月間少なくとも20万人増加すること、トレンドを上回るGDPの伸び、失業率の低下が必要と指摘した。

ウィリアムズ・サンフランシスコ地区連銀総裁:5月16日の講演で、雇用市場が自身の予想通りに改善を続ければ、夏までに債券買い入れを縮小し、その後年内に終了することが可能と発言。年末時点の失業率は7.5%弱、今年の成長率は2.5%で来年は3.25%、インフレ率は今後数年2%を下回ると予想した。一方6月3日の講演では「低インフレが続き、長期インフレ期待が2%を大きく下回るようなより危惧すべき状況になれば、他の条件が変わらないことを前提に、買い入れ拡大を求める要素となる」とした。インフレを抑制している要因の多くは一時的なものとの見方を示した。

◎ローゼングレン・ボストン地区連銀総裁:5月29日に「労働市場と経済全般の成長率が徐々に回復する状態があと数カ月続いた場合、資産買い入れペースの若干の緩和を検討することが理にかなう」と発言。以前の発言では、米失業率は年末までに7.25%に低下すると予想しているが、債券買い入れの縮小や終了を検討するにはこの水準までの低下が必要と指摘している。成長率は2013年下半期に約3%に改善すると予想している。

◎ダドリー・ニューヨーク連銀総裁:5月21日に、財政緊縮の不透明な影響を考慮し、量的緩和を縮小するかどうかの判断は数カ月待つ必要があると指摘。「あと3、4カ月もすれば、財政引き締めの影響を克服できるほど経済が健全な状態なのかどうかという点について、よりはっきりしてくるだろう」と発言。また、FRBが買い入れを縮小したとしても、その後も同様のかたちで縮小を続けるということではなく、必要となれば買い入れを増やす可能性を指摘した。

◎ブラード・セントルイス地区連銀総裁:5月24日に、労働市場の改善見通しを受けて債券買い入れの縮小を支持するが、それまでにインフレ率が2%に向けて上昇することが必要と発言。インフレ率を懸念しており、次回FOMCまでの数週間でどう推移するかはわからないとした。

◎イエレン副議長:4月4日の講演で、雇用情勢の改善とともに債券買い入れを縮小させることに前向きであることを示唆。「労働市場の見通し改善に合わせて資産買い入れペースを調整することは、FRBの意思に関する情報を一般に提供し、プログラムの終了が近づくにつれて誤解や市場の混乱といったリスクを軽減することができる」と発言した。また「たとえインフレ率が一時的にやや2%を上回る結果になるとしても、失業率の改善がFOMCにとって中心議題となるべきだ」と述べた。

ロックハート・アトランタ地区連銀総裁:6月3日に、FRBはまもなく債券買い入れペースの縮小を真剣に検討することが可能になると指摘。「経済の勢いは強くないものの、信頼感に基づき前進しており、6月のFOMCでなくとも(金融緩和縮小を)真剣に検討し得る時期が近づいている」と語った。

<借入コストをさらに押し下げ量的緩和を継続する必要性>

コチャラコタ・ミネアポリス地区連銀総裁:FRBは超低金利を維持する失業率の目安を、現在の6.5%ではなく5.5%とすべきと発言。どのデータによって労働市場見通しが大幅に改善したと判断するかは明言しておらず、債券買い入れ縮小についての考えも明らかにしていない。

<すぐに量的緩和を縮小あるいは終了>

フィッシャー・ダラス地区連銀総裁:5月16日の講演で「住宅分野に関して勝利を宣言し、住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れ縮小をすぐに開始し、年末までに完全に停止すべき」と発言。国債買い入れも縮小すべきとの考えを示した。

◎ジョージ・カンザスシティー地区連銀総裁:4月4日に「現在の政策は過度に緩和的で、リスク縮小のためFRBは債券買い入れを縮小すべき」と発言。今年の成長率は2%との見通しを示したほか、過度の金融緩和がインフレにつながる可能性を指摘した。

ラッカー・リッチモンド地区連銀総裁:5月3日に、住宅市場の回復を踏まえ、FRBはMBSの買い入れを停止し国債買い入れも縮小すべきと発言。昨年9月の量的緩和の開始以来、労働市場の見通しが大幅に改善したことに疑いの余地はなく、市場はFRBが資産買い入れのペースを縮小する可能性を考慮する必要がある」と述べた。

ピアナルト・クリーブランド地区連銀総裁:3月27日に、金融市場の混乱や過度のリスクテークの可能性を減らすため、FRBは債券買い入れを縮小することが可能と発言。バランスシートの拡大は、インフレ圧力への対応を限定する可能性があるとの見方を示した。また「資産買い入れプログラムの経験が限られていることを考えると、買い入れペースの縮小は、拡大したバランスシートに伴うリスクの最小化に寄与する」と述べた。

プロッサー・フィラデルフィア地区連銀総裁:5月16日に、米経済の見通し改善に伴い、FRBは6月に債券買い入れの縮小を開始すべきと発言。

◎スタイン理事:債券買い入れ縮小に関する見解を直接明らかにしてはいないが、2月7日の講演で現在の超低金利の期間が長引けば、信用バブルを促す可能性があると警告した。


03. 2013年6月04日 20:31:01 : ARV0X3cQvE
ロイター=大ユダヤ資本。

米連銀=大ユダヤ資本。

アホノミクス=大ユダヤ資本。

http://palestine-heiwa.org/choice/g-list.html


04. 2013年6月04日 22:22:04 : e9xeV93vFQ
2013/06/04 4:31 pm
伊藤、藻谷両氏、アベノミクスめぐり賛否両論の熱い議論─WSJカフェ

アベノミクスは果たして成功するのか──。1999年からインフレ目標の採用を提案してきた東京大学大学院教授の伊藤隆敏氏は「必ず成功する」と断言する一方、日本経済低迷の原因として人口動態の変化に重きを置いてきた日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介氏は「金融緩和は物価上昇につながらない」とその成果に疑問を呈した。


Ko Sasaki for The Wall Street Journal
東京大学大学院教授の伊藤隆敏氏
伊藤、藻谷両氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパンが3日に東京都港区のアークヒルズカフェで開いたトークセッション「WSJカフェ東京」で、アベノミクスをめぐって賛否両論の熱い議論を展開、対照的な評価を下した。

伊藤氏は、昨年11月16日の衆議院解散を転換点にして、市場が安倍自民党の総選挙の勝利を先取りする形で株高円安のトレンドができたと指摘した。それに先立ち、同年9月に自民党総裁に就任した安倍晋三氏は日銀による大胆な金融緩和を訴え続けていた。

伊藤氏は、アベノミクスの一本目の矢である大胆な金融政策が円安株高につながり、輸出企業の業績を向上、資産効果を通じて消費を高めていると強調した。二本目の矢である財政出動も、特に東日本大震災の被災地での建設雇用などで効果が表れてきていると述べた。

そして、三本目の矢である成長戦略について、伊藤氏は、安倍政権が強い農業づくりや、保育所整備などを通じて子育て年齢の女性の労働参加といった政策を打ち出してきている点を取り上げ、これらが投資や消費を押し上げるとの見通しを示した。

伊藤氏は「これから一年くらいの間に成長力が上がり、それによってGDP(国内総生産)ギャップが縮まり、物価が上がっていく。アベノミクスは必ず成功する」と述べた。

これに対し、藻谷氏は、アベノミクスで円安が進み、輸出企業の収益も改善がしばらく続くことを認めたものの、その後は円安による原材料費の高騰が到来。コスト増による経費上昇分を価格転嫁できない企業の採算はむしろ悪化していくと指摘した。


Ko Sasaki for The Wall Street Journal
日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介氏
藻谷氏は「(日本の)多くの企業は経営戦略がなっていない。経費アップの結果、赤字が拡大する。円安で企業収益が良くなるというのは針小棒大の最たるもの」と指摘、物価についても「円安による原材料高を価格転嫁できた商品は上昇するが、総じて上がらない」と述べた。

さらに株高といった資産効果も限定的で、ブランド力のあり、経営がしっかりとしたごく一部の企業の売り上げが伸びる程度にとどまるとの見通しを示した。

藻谷氏は「スターバックスのように、ある程度価格転嫁を実施し、値上げしても売り上げが落ちずに大丈夫だという産業は値上げをしていくでしょう。しかし、それが全体のどれだけなのか。概して、残念ながら価格転嫁ができずに、さらに人件費と経費を削ることで、コスト縮減で対応。その結果、かえってデフレを助長するのではないか、と危惧している」と述べた。

為替相場について、伊藤氏は昨年11月の1ドル80円台から最近の1ドル100円台までの円安進行局面を「(1ドル)80円が異常だった。少なくとも80円から90円は円高の是正であって、円安ではない」と述べた。そして、円安で短期的には貿易赤字が増えるが、タイムラグをもって来年には日本からの輸出価格が低下、輸出が伸びて貿易黒字に転換するという、いわゆる「Jカーブ効果」を強調した。

藻谷氏はリーマンショック後、円高が一気に進行し、東日本大震災後には1ドル77円台まで突入したのに日本の輸出額が落ちなかった点を指摘した。「これだけ円高になって、震災もあって輸出競争力が落ちたら、もっと輸出が減るはずだった。しかし、(実際は)減っていなかった。それは(企業が)無理して赤字でも輸出していた。今、円安に戻ってきたので、赤字で輸出していた企業の収益は上がり、株価も上がるでしょうが、輸出額は変わらない。赤字発注で無理に輸出していた輸出が黒字に戻るだけ」と述べ、円安によって輸出額が増えるわけではないと強調した。


Ko Sasaki for The Wall Street Journal
(左から)藻谷浩介氏、伊藤隆敏氏、WSJ日本版編集長の小野由美子
金融緩和と物価の関係について、藻谷氏は、小泉政権下の量的緩和や民主党政権下の金融緩和でも物価が上昇してなかった点を指摘、「企業は値上げをして売り上げが落ち込み、逆に値下がりをする」という悪循環に陥ってきたと述べた。

これに対し、伊藤氏は2003年から06年に金融緩和が効果が持たなかった理由について、当局の説明不足やコミュニケーションの失敗があったと述べ、今回は2%というインフレ目標を掲げて量的緩和をどんどんと進めることを表明しているため、「大丈夫」と強調した。

このほか、伊藤、藻谷両氏とも、資金のある高齢者にもっと消費してもらうことが、企業の売り上げや設備投資が増やし、経済を活性化させるために必要との考えで一致した。

会場からは高齢化による医療費の増大の影響などを問う質問が出た。

■トークセッション「アベノミクスー日本再生の劇薬」のアーカイブ動画はこちら
http://www.ustream.tv/recorded/33755609

記者: 後藤 浩祐

(後藤記者をツイッターでフォロー: @KOSUKEGOTO2013 )

アベノミクス, インフレ目標, 金融緩和, 藻谷浩介, WSJカフェ東京, 円安・株高, 日銀, 伊藤隆敏


 

 


 
• 2013年 6月 03日 18:03 JST
米国に広がるリスク回避の文化―労働者から企業まで
• 記事インタラクティブ原文(英語)By BEN CASSELMAN
 米国民は長い間、自ら進んですべてを夢に賭ける意欲を誇りに思ってきた。しかし、このリスクをいとわない精神は徐々に弱まりつつあるようだ。
 長期的な3つの傾向が、米国経済がリスクに対して弱腰になってきたことを示唆している。企業は業績が良い時期でさえも、以前より雇用を増やすペースが遅いこと。投資家が新たなベンチャー事業へ投入する資金が以前よりも少ないこと。そして、もっと広くみれば新たに起業する件数や転職、新たな機会を求めて引っ越す件数が減っていることだ。
画像を拡大する

D.L. Anderson for The Wall Street Journal
トニー・レーニーさんは、安定を求めて家業を辞め、連邦査定会社のデータ入力の仕事に就いた
 こういった変化は幅広く、より永続的なシフトを反映している。それには高齢化する人口、多くの産業で起こっている大手企業による新たな独占といったことが含まれる。また、これらは過去3回のリセッション(景気後退)の後、景気回復がますます緩慢になっていることを説明するものかもしれないと専門家は指摘する。
 米国民の起業家精神の低迷を研究してきたメリーランド大学の経済学者ジョン・ハルティワンガー氏は「米国の成功の一因には、その活気と、雇用創出と破壊のペースの速さ、さらに労働者の回転の速いペースがあった」と指摘し、「悲観的な見方をすれば、われわれは魔法の力を失ったということだ」と述べた。
 新たなアイデアに賭ける企業は失敗する可能性もあるが、一方で大きく成功する可能性もある。起業家の勝算が大きいわけではないが、成功した企業は多くの雇用を創出している。
 エコノミストらはリスクをいとわない小さな行動も、起業と同様に重要だと言う。より良い仕事を求めて今の仕事を辞める労働者や、雇用を増やす企業、景気の悪い地域から失業率の低い地域へ引っ越す家族などがその例だ。
 米経済全体でみると、こういった希望や野心による行動は、資金や人材、それに資源がそれらを必要としている場所へ流れるペースを加速させる一助となる。
 もちろん、金融危機が示したように、あまりにリスクをとりすぎれば危険になり得る。それに株式市場の急伸で、あるタイプのリスクは危機後に起きる大きなリバウンドの兆候を示している。実際、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融緩和政策により投資家がいきすぎたリスクをとることにつながっていないか、その兆候を監視していると述べている。
 しかし学派や政治思想の違いを超えて、幅広い米国のエコノミストらは、ある特定の必要不可欠な種類のリスクテイクは縮小傾向にあるという見方で一致している。歴史的に高い回転率――雇用と解雇、企業の組成と解体――を支えるリスクテイクは変化する市場に順応するための、より高い柔軟性を経済に与える。
 マキシム・スヒレベークスさん(28)は長い間米国経済を前進させてきた野心的な米国の若者のタイプだ。セントルイスにあるワシントン大学で遺伝学の博士課程の学生だが、経済学でも修士号を持っている。スヒレベークスさんは、地元の新興企業に科学分野でのアドバイスを行う、学生によるコンサルティング会社を作る手助けをした。
http://si.wsj.net/public/resources/images/P1-BL745_Risk_G_20130602181808.jpg インタラクティブ を見る

 しかし、起業家精神への強い賛同や新興企業での経験にもかかわらず、スヒレベークスさん自身は会社を興したり、新たなベンチャー企業で働くよりも、コンサルティング業務やプライベートエクイティ(PE)業務での仕事に安定を求めると話す。
 スヒレベークスさんは「個人的にはかなりリスク回避型だ」と述べ、「起業家になろうと思えば、無茶な行動もいとわないという意欲がなければならない」と続けた。
 ハルティワンガー氏などのエコノミストらは、リスクをいとわない行動の縮小は――企業も個人も両方ともそうだが――特に新規雇用に現れている米経済の幅広い減速と時期が一致していると指摘する。
 米国では第二次世界大戦後から1980年代までの8回のリセッション(景気後退)で、雇用がリセッション前の水準に戻るまで、平均で20カ月余りを要した。しかし90年代初めの比較的浅いリセッションでは、雇用が完全に回復するまで32カ月を要した。
 それよりも程度が軽かった2001年のリセッションでは、4年を要した。現在、直近のリセッションが終わってから4年近くが過ぎているが、雇用はリセッション前の水準にまだ戻っていない。
 エコノミストらは、以前よりも緩慢なこれらの回復について、さまざまな説明を提示してきた。そのなかには、より少ない労働者で生産可能なアウトソーシングやオートメーションの増大も含まれる。
 米経済には今もリスクテイク精神が旺盛な分野がある。グーグル、アップル、フェイスブックはテクノロジーセクターの形を変え、新たなカテゴリーの製品やサービスを生んでいる。エネルギー企業やその投資家は巨額の資金を新たな掘削技術に投じ、この技術が米国に埋まる石油や天然ガスを解き放った。サンフランシスコやボストンなどの沿岸都市、コロラド州ボルダーやテキサス州オースティンといった学園都市は、起業家や投資家の活気あるコミュニティーを擁する。
 だが、リスクテイクがみられる業界や地域はここ数年に比べ集中しているとユーイング・マリオン・カウフマン財団(ミズーリ州カンザスシティー)のデーン・スタングラー氏は指摘した。
 同氏は「絶対に地理的な分散がある」と述べ、「こうした地域では新興企業の温床があるが、他では同水準の活動がみられない」と説明している。
 取り残された地域にとっては問題だ。ハーバード大学の経済学者、エドワード・グレイザー氏と同僚2人が昨年発表したところによると、起業活動の水準が高い都市は既存企業への依存度が高めの都市よりも雇用の伸びがずっと順調だ。
 ハルティワンガー氏は、起業とは参加者の群れからひと握りの勝者しか出ない数当て賭博だと語った。同氏ら研究者は、比較的少数の急成長企業が不釣り合いな数の新たな雇用を生んでいることを発見した。だが、そうした企業を成功前に特定することはほぼ不可能だ。
 アーカンソー州ベントンビルのサム・ウォルトン氏の安物雑貨店を見ても、ウォルマートが世界的な小売りチェーンに発展する兆候はほとんどうかがえなかった。ジェフ・ベゾス氏のオンライン書店には、インターネット最大の商業ハブである現在のアマゾンを示唆するものはほとんどなかった。
 事業を始める米国人の減少が問題なのは、次のアマゾンやウォルマート、あるいは成功する中小企業が出るチャンスが減るためだ。
 ワシントンのシンクタンク、ニュー・アメリカで起業家の減少について研究するエコノミスト、リナ・カーン氏は起業の減少について、「雇用を創出する新しい企業の数が減ることを意味する。労働者を奪い合う新たな企業が減るということだ」と述べた。「従来、自分の事業を始められることは、上方に移動するための道筋になってきた」という。
 こうした道を選ぶ米国人は減っている。国勢調査によると、1982年には、新しい企業(創業5年未満)が米企業の約半分を占めていた。これが2011年には3分の1強に減っていた。新興企業で働く労働者の割合は同期間に20%超から11%に縮小している。
 こうした傾向はともに、リセッション(景気後退)前に始まり、回復局面でも続いている。
 一方、投資家は新興企業への情熱を失いつつあるようだ。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、米国で投資されたベンチャー資本の合計は昨年10%近く減少し、リセッション前のピークを回復していない。
 PwCのデータによれば、新興企業に向かう資本は縮小ペースが加速している上、集中化している。12年にシリコンバレーに集まったベンチャー資本は40%と、1990年代終盤の約30%から拡大した。
 リスクテイクの減少は、米国の転居状況にも表れている。国勢調査によると、州をまたいだ転居の割合は、20年以上なかった水準に落ち込んでいる。労働省によれば、転職熱も冷めており、同じ仕事を5年以上続けている成人の割合は昨年53%と、96年の46%を上回った。自主退職した労働者は、06年の25.2%から09年には16.1%に減り、リセッションの前の水準を大幅に下回ったままだ。
 FRBのエコノミストは、州をまたいだ転居の比率が、転職の減少と長期的に強く相関していることに気づいた。言い換えれば、転職が減っているために転居が減っているのだという。
 最近の転居の減少は、住宅市場の崩壊と関係している可能性がある。持ち家の価値以上の借金を抱え、引っ越しが難しくなっている住宅保有者が何百万人もいる。だが、より長期的な傾向は、前回の住宅市場崩壊の前からある。リサーチャーはその要因として、人口動態の変化と、共働きで引っ越しが難しくなっている家庭を挙げた。
 企業もあまりリスクを取らなくなっている。FRBによると、例えば従業員を増やすよりも手元により多くの現金を留保するようになっており、企業の資産に占める現金の割合は30年前は3%未満だったのに対して、12年末は5.7%にまで増えており、この傾向はリセッション(景気後退)以降さらに加速している。また労働省のデータによると、雇用のペースも、特に比較的新しい企業では以前よりも遅くなっている。
 アンディ・グガーさんは1987年にテキサス州タイラーにレストラン「メルカドス」をオープンし、1年後に2店舗目をオープンした。やがて店は2000年代初めまでにはテキサスとルイジアナ州12カ所に店舗を有する「パサドス・カフェ」と呼ばれるチェーンにまで発展した。
 だが以降拡大ペースは減速している。現在の店舗数は16で、年間売上高は約3800万ドル(約38億1500万円)。パサドスの最高執行責任者(COO)を務めるスコット・ノードンさんは、いつかは20−25店舗に達する可能性もあるが、急いではいないと話す。
 「100店舗持ちたいとは思っていない」とノードンさんは述べ、「成長させなければというプレッシャーはない。チャンスがあれば利用するつもりだ。だがそうでなければ現状で満足だ」と語った。
 ノードンさんは、そうした保守的な戦略はリセッション前からだと説明したが、金融危機や現在の軟調な景気によってそうした考え方がさらに強まったと話した。同社は今後4年間かけて債務を返済する計画で、拡張するとすれば現金で資金を賄うつもりだと述べ、「肝心なのは長く生き延びることだ」と語った。
 リスク志向減退の背景に何があるのかエコノミストはその明確な答えを見いだせずにいる。考えられる理由の1つは医療費の上昇で、それが仕事を辞めるリスクを高めるとともに、新規従業員の雇用費用を高くしていることだ。そしてもう1つは州や政府の許認可要件が厳しくなっており、それが新規参入の障壁となっていることだ。最近のある調査で、08年に政府の許可や認可を必要とした米国の被雇用者の割合は29%と50年代の5%未満から大幅に増えていることが明らかになった。さらにもう1つ考えられるのが、他国からの起業志望者の入国を妨げる移民規制だ。
 このほか人口の高齢化も理由に挙げられている。若者は起業や転職に比較的積極的な傾向があるためだ。だがリスク志向の減退は団塊の世代が定年退職し始める前から始まっている。しかも若い労働者の間でさえも転職回数が減っている。
 有望な起業家を阻む障壁の1つには、ほぼ全ての業界で大企業による寡占が拡大し、新興のベンチャー企業が足掛かりを築くのが難しくなっていることもあるかもしれない。例えば小規模な書店はもはや同じ町のライバル店よりも優れた品ぞろえや感じのいいスタッフを確保するだけでは済まなくなっており、全国規模のチェーンやさらにはアマゾンのようなネット通販会社とも競い合わなくてはならない。
 08年の国勢調査によると、従業員数500人以上の大企業で働く米国人の数が統計開始以来初めて中小企業で働く米国人の数を上回った。その傾向は以降も続いている。
 若い世代は家業経営も敬遠する傾向にある、と家族経営企業への助言業務を手掛けるファミリービジネスUSAのヘンリー・ハッチソン社長は指摘する。
 「いい仕事やかなりの給料が得られる優良企業に入社するという魅力や気楽さには単純に抗し難いようだ」とハッチソン氏は述べ、「人々はこう言っている。『父の園芸用品店を継ぎ、それを経営し、1週間休みなく働き、夜明けから夕暮れまで店にいることもできる。でもホームデポを運営すれば15万ドル得られて、しかも週末の休みや休暇ももらえる』」
 まさにその選択肢に直面したのがトニー・レーニーさんだ。レーニーさんは1年前までノースカロライナ州ウィルクスボロにある家族が経営する小さな家電機器チェーンで働いていた。だが義理の父親が夜や週末まで働いているのを目にしたことで、レーニーさんに迷いが生じ始めた。より安い価格で販売する全国規模のチェーン店との競争もそれに拍車をかけた。「独立企業のオーナーははるかにリスクが高い」とレーニーさんは述べ、「大企業にやられてしまう可能性がある」と話す。
 1年後、レーニーさんは家業を辞めて連邦査定会社のデータ入力の仕事に就いた。「以前よりも安心感がある」とレーニーさんは述べ、「会社に勤めてトップになろうとは思っていない。ただ会社に行って仕事がしたいだけだ」と話す。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323924104578522660904744712.html?mod=WSJJP_hpp_MIDDLENexttoWhatsNewsThird


05. 2013年6月04日 22:27:27 : e9xeV93vFQ

リスク回避型の意思決定パターンは日本人固有のものというより、デフレ的な環境(期待収益率の低下)への適応と言えそうだ

06. 2013年6月05日 06:32:33 : e9xeV93vFQ
「事実上、日銀の独立性は先進国で一番低い」
異次元緩和と「日銀製バブル」の危うさ
2013年6月5日(水)  河野 龍太郎 、 加藤 出

 日本銀行の黒田東彦総裁は4月4日の金融政策決定会合において、従来とは「次元の違う金融緩和」を発表した。大きく円安に振れたことで株価なども顕著に上昇。従来は専門家の領域と見られていた金融政策が、これほど注目されたのは史上初めてのことだろう。
 安倍首相の打ち出したいわゆるアベノミクスの評価も含めて、これからの日本経済は順調に上昇軌道に乗っていくのか、失速するとすればリスクはどこにあるのか。実力派エコノミストの河野龍太郎氏と屈指の日銀ウォッチャー、加藤出氏という、どちらかといえば黒田日銀に懐疑的な気鋭の論客に、とことん語り合ってもらった。(聞き手は飯村かおり)
黒田総裁は、2%インフレ目標の2年程度での達成を目指し、日銀による長期国債の購入額を大幅に増加しました。こうした「異次元緩和」について、どのように評価しますか。
加藤:4月4日の日銀の「異次元緩和策」の基本的なコンセプトは、円安バブル、株式バブル、不動産バブルを起こして、国民のマインドにユーフォリア(酔狂)を発生させ、企業が値上げしても消費者はそれについていくという状況を生み出すことで、2年後の2%インフレを目指すということだと思います。

加藤出氏(写真:大槻純一、以下同)
 日銀幹部も明確に言及していますが、今の日本のフィリップス曲線(図)では、ものすごい成長が継続しない限り、インフレが早期に2%に到達することは困難です。フィリップス曲線を上方にシフトさせるには、国民、企業のマインドをジャンプさせる必要があります。そのために政府が市中で発行する長期国債の4分の3を日銀が買い取り、金融機関や投資家を国債市場から追い出して、彼らの資金運用が外国債券、株、不動産融資などにシフトすることを日銀は期待しています。
 もし日銀が外債購入オペというような「実弾」を打ちながら円安誘導を行う政策を採用したら、日本は国際社会から激しい批判を受けたでしょう。しかし、今回の政策は幸い日本国内のデフレ対策、景気浮揚策と解釈されたので、今のところは許容されています。ただし、実際はこの政策は、急激な円安を必要としています。海外からの批判を避けるには、説得力のある成長戦略を描いていく必要があります。
図:(短期の)フィッリプス曲線

(出所)池尾和人著『連続講義・デフレと経済政策――アベノミクスの経済分析』日経BP社、7月刊行予定)
「異次元緩和」で大荒れした国債利回り
 「異次元緩和策」によって円安・株高は起きましたが、4月前半、5月前半に国債の利回りは大荒れとなりました。日銀が従来の日銀券ルールを事実上破棄して、強烈な長期国債の購入を始めてから、債券市場では取引の流動性が大幅に低下しました。
 商いが薄い中で誰かがまとまった金額の国債を売ろうとすると、成り行き売り状態になりやすく、ボラティリティが激しくなります。金融機関のリスク管理上、ボラティリティが増大すると国債の安全度が低下することになるので、金利観としてはそろそろ購入してもいいはず、という水準に国債の利回りが上昇しても手が出しにくい状況が一時生まれました。
 アメリカの景気指標の改善、米連邦準備理事会(FRB)のQE3(注1)縮小観測、米長期金利上昇、それに伴う円安に引っ張られ、日本の10年金利が一瞬1%台に乗ったら、5月23日に日経平均が暴落しました。世界中の株価指数の中で日本だけが異様に突出して大きな下げ幅となりました。「日銀製バブル」の危うさが露呈した形となりました。
(注1)QE3:FRBが打ち出した金融緩和第3弾。景気刺激やインフレ率低下の阻止などを目的にバーナンキ議長が取った非伝統的な金融緩和策で、QE2、ツイストオペに続いて実施された。
 とはいえ、日銀が国債買いオペを柔軟に実施し始めたこと、株価急落で金利上昇観測が和らいだことから国債のボラティリティもいったん鎮静化してきています。FRBのQE3縮小開始はすぐではないでしょう。
 しかし、先行き、もしベン・バーナンキFRB議長(注2)が市場の期待のコントロールに失敗し、アメリカの長期金利が急上昇するようなことがあると、日本国債の金利はまた暴れ始める恐れがあります。
(注2)ベン・バーナンキ:アラン・グリーンスパンの後任として2006年2月に米連邦準備理事会議長に就任。大恐慌の研究者でもある。リーマンショック後の世界金融危機を大胆な金融緩和で切り抜けた。
加藤:また、日本で本当にインフレ率が2%に達し、その後も毎年2%以上の物価上昇が続く状況になるのなら、10年金利がいずれ2%を超えても不思議はありません。株の流動性相場は金利上昇には弱い面があります。株価上昇が持続するには、金利から来る不安材料を克服していく必要があります。
「金融政策ができることはない」と言ってもよかった
河野:そもそも、量的緩和策の有効性に疑問があります。もう少し具体的に言うと、通常、金融政策が物価に影響を及ぼすのは、金利を下げることで個人消費や設備投資など総需要を刺激し、需給ギャップ(注3)が改善して、インフレ率が上がっていくというメカニズムです。ところが、日本の場合は1999年2月にゼロ金利政策に突入しているということで、もう政策金利は基本的には下げることができなくなっています。
(注3)需給ギャップ:企業の生産設備や労働力、技術力をフル稼働した潜在的な実質国内総生産(GDP)に対し、実際のGDPがどれだけ離れているかを示す指標。GDPギャップとも呼ばれる。総需要が総供給を下回るときはデフレギャップ、逆の場合はインフレギャップという。

河野龍太郎氏
 正確に言うと、1995年の段階でオーバーナイト金利(注4)が0.5%を割り込み、ほぼゼロ金利制約に直面しているわけです。そうは言っても長期金利がある程度、高い状況であれば、将来のオーバーナイト金利の経路を中央銀行が表明することで長期金利を下げていくということはできるのですが、日本は長期金利も10年金利で0.5〜0.6%なので、ほとんど下げ余地がなくなってきています。
(注4)オーバーナイト金利:金融機関同士がコール市場で、無担保で短期資金を借り、翌日返済する取引の金利。
 黒田総裁がアグレッシブな国債の購入をやって、長期金利があと20ベーシスポイント(0.2%)、30ベーシスポイント(0.3%)下がったとしても、それで貸し出しが増えるか、あるいは設備投資が刺激されていくかというと、そんなことは起こらないと金融機関の人には広く知られています。そういった意味では、金融政策ができることはなくなってきていると、もっと早い時期に中央銀行は言ってよかった。
 そういった中で今回、黒田体制が掲げているのは、大量の国債を買っていくことで金融緩和をしていくということです。この量的緩和の発想のベースは何かというと、マネーストックと物価が、長い目で見ると比例関係にあるという貨幣数量説(注5)です。
 これはスタンダードな考え方ですけれども、均衡において物価と貨幣供給量が比例関係にあると言っているだけで、現状からどう均衡に向かうのか経路を示しているわけではありません。量的緩和の理論的根拠になっている貨幣数量説は、どのような経路をたどってデフレから脱却していくかということは言っていないのです。
(注5)貨幣数量説:ある国の物価水準は、その国で流通している貨幣量に比例するという古典派の学説。貨幣量が2倍になれば、物価も2倍になると考える。18世紀のヒューム以来の古い考え方で、マーシャルらが精緻化した。
河野:そういう批判をすると、たぶんリフレ派(注6)の方々は期待に働き掛けるのだという話を必ずします。しかし、期待で動くのは、株価や不動産価格などの資産価格や、為替レート、商品市況であり、私たちが上げたいと思っている最終財やサービスの価格、あるいは賃金は、基本的に期待が変わったと言っても簡単に動くようなものではありません。むしろ、最終財やサービスの価格、賃金などの期待形成は、適応的な期待形成というか、バックワードルッキングな期待形成なんです。需給ギャップの改善に対応して、ゆっくり上昇していきます。
(注6)リフレ派:インフレ政策(リフレーション)を唱える一派。日本が長らく陥っているデフレ不況を脱するために、量的緩和や日銀の国債引き受け、ゼロ金利政策の継続などを主張している。アベノミクスのブレーンである浜田宏一、高橋洋一の各氏、日銀副総裁に就任した岩田規久男氏らが有名。
値段にはフェアネスの感覚が関係している
 さらに言うと、フェアネスという、この商品はだいたいこのぐらいのものだという感覚があります。雑誌「日経ビジネス」を書店で買っている人は1冊、650円で買っています。だいたい、700円ぐらいだと思っているわけです。値段を見て買っているわけではありません。いつも買っている人がレジに持っていって、1万5000円ですと言われたら、これはショックを受けます。だから、最終財の値段は、ある意味では社会の中ではフェアネス、公正というのがあるので、期待が変わったから値段も変わるという話ではありません。
 そういった意味でも、アグレッシブな金融緩和をやっていくと黒田さんが言われているその議論のベースそのものが妥当性を持っているのかどうか疑問です。リーマンショック後、各国で量的緩和をやっていましたが、マネーの量を増やしていくという政策は、理論的にも実証的にも効果がない、とほぼ決着がつき始めました。そんなとき、非常にオールドタイプのマネタリスト(注7)的な政策が日本で導入されたというのは、皮肉に思います。
(注7)マネタリスト:貨幣供給量(マネーサプライ)を重視する、ミルトン・フリードマンを代表とする経済学の一派。貨幣供給量の変動が、短期における実物経済の成長および長期におけるインフレに対し、決定的に重要な影響を与えるとする。
FRBの「大本営発表」は割り引いて聞く必要がある
加藤:それは全くそうで、何か1周遅れの政策が今、日本で始まった感がありますね。

 例えば、バーナンキ議長も、資産の購入を増やしているけれども、決して中央銀行のバランスシートの負債サイドのマネタリーベースを増やすことに効果があるというスタンスではありません。そえゆえ彼らは自分たちの大規模資産購入策に量的緩和策(QE)という名称を一度もつけていません。中央銀行の資産サイドで市場から買い取って資産価格に働き掛ける、あるいは期待に働き掛けるという効果のことを言っているんですが、それもちょっと怪しいところがあります。
 FRBが2010年11月に大規模資産購入策の第二弾、いわゆるQE2を開始するとほぼ同時に、彼らがインフレ指標として重視しているPCE価格指数前年比は1.4%で底を打って上昇を始めました。それは期待に働きかけた効果だとFRBは強調していますが、先日ニューヨークで会ったある有力FRBウォッチャーは首をかしげていました。
 その時のインフレ率上昇の主因は、コモディティ価格上昇の価格転嫁のタイミングと重なったことと、住宅を差し押さえられて持ち家から賃貸に移る人が増えて一時的に賃貸需要が増えて家賃が上昇したことが主因でした。賃貸物件のオーナーが新聞を見て「QE2が始まったから賃料を上げよう」と決断したとはちょっと考えにくい。
 米国のPCE価格指数は2011年に2%台後半まで上昇しますが、その後ピークアウトし、今年3月は1%まで下がってしまいました。この間、QE2、オペレーションツイスト、QE3と大胆な緩和策が行われてきたのに、米国のインフレ率はQE2開始時より低い水準に落ちているのです。
 基本的に大本営発表なので、FRBのエコノミストの「こんなに効果があった」という発言は、やはり少し割り引いて聞く必要があります。河野さんも指摘されましたが、以前から言われているような貨幣乗数的なものというのは、今は基本的に成り立ちません。
 というのは、銀行の経営上、リスク管理が厳しくなっているため、準備預金が一定量、増えたからといって、それを貸し出しとか投資には回さないのです。準備預金量に制約があって、銀行の行動が制約されているのではなく、資本力が問題なんです。資本が十分になければ、現代の金融機関は投資ができません。また、企業や家計の資金需要も弱い状態が続いている。だから、いくら資金供給してもマネタリーベースは中央銀行の口座にただ溜まっていくということが世界的に起きているわけです。
加藤:マネタリーベースを増やすと通貨安になる、景気が良くなる、というストーリーは為替市場や株式市場では信じる人がまだ多いですが、債券市場、短期金融市場にはほとんどいない。「それは日銀理論(注8)だ」という批判がリフレ派の人たちから聞こえることがありますが、そうではなくて、実務に精通している人にマネーの現実の動きを聞く必要があります。
(注8)日銀理論:中央銀行はハイパワードマネーを増減することによってマネーサプライを増減できるという「標準理論」に対し、実際の資金操作のオペレーションでは信用乗数が不安定でそうはならないと主張する考え方。リフレ派が批判的に使っている言葉。
明かに狙っている「ニセ薬」効果
 それらの市場は銀行が中心の市場なので、彼らは自分が持っている超過準備それ自体は経済に何の影響も及ぼしていないことを当然ながら知っている。アメリカや欧州でも、債券市場、短期金融市場の参加者の大半は、マネタリーベースの増大が経済・インフレに強い影響を及ぼすとは思っていません。黒田総裁は、海外の中央銀行幹部と情報交換を行っているから、その点は意識しているはずです。
 では、なぜ日銀は4月4日に「2年でマネタリーベースを2倍にする」と明示したかというと、明らかに「ニセ薬」効果を狙っています。それで勘違いして円安にベットする市場参加者がいるのならいいではないか、という割り切りですね。
河野:そうですね。
加藤:一方で、FRBの幹部もほとんど主流派はマネタリーベースを増やしても意味はないということを公式に言っています。バーナンキは議会証言でも、FRBの資産買い入れによって準備預金は増えたけど、それは電子的な数字が増えただけで、経済に対しては何の働きもしていないとはっきり言っています。それがなぜか普段、バーナンキを崇拝している日本のリフレ派の人たちはそのことには触れません。
 5月に発表されたFRBのFOMC議事要旨に気になる記述がありました。今後2年間、米国のインフレ率は2%を超えないと彼らは予想している。あれだけの大胆な緩和策を継続し、かつインフレ・マインドが家計や企業にビルトインされている米国でも当面は2%を超えないとなると、日本でそれを2年で実現するには相当の無理が必要になると言えます。
河野:もともと中央銀行は、貨幣数量説を前提に金融政策のチャネルを考えてはいません。普通は金利政策です。ゼロ金利制約に陥ったから、ほかに政策はないのか、という話です。非伝統的な政策がパワーを持っているのなら、ゼロ金利制約に直面しているときだけではなく普通のときでも採用した方がいい。なぜ普通のときに非伝統的政策をやらないかというと、コストに比べると、その効果が少ないと分かっているからやってない。その事実を認識すべきですね。
非伝統的な金融政策には限界があるという点については、黒田総裁も認識しているということになりますね。
加藤:黒田総裁が就任早々、「2年では難しい」と言ってしまうと、安倍政権の要望に応えられないし、また、インフレに向けた国民のマインド転換も早期には起きにくい。2年での目標達成は容易ではないことはある程度認識しつつも、その決意を示すことで、インフレ期待に働き掛けようとしているわけです。
 しかし、今年10月の展望レポート、来年4月の展望レポートで、2015年には2%に行くとの予想をどうやって維持していくかが大きな課題となります。異例の緩和策のコストとリスクをどうしても意識せざるを得なくなるでしょうから、就任から1年以上たってくると、黒田総裁の発言も微妙に白川方明前総裁と似てくると思います。
河野:今回は、中央銀行の政策を批判していた人たちが執行部に入って政策をやるという、ほとんど例がないケースです。だから、同じ発言を続けることができるかどうか、興味深い。黒田総裁はある程度、限界も認識した上でやられていると加藤さんが指摘されましたが、確かにそうでしょう。ただ、アグレッシブに国債を購入していくと、果たして出口のときに大丈夫なのかと思います。

 多くのマスコミは、黒田新体制が掲げる2年でインフレ率2%という目標の達成は可能かどうかにフォーカスしています。確かにこれもハードルは高いのですが、目標が達成できるという見込みができたと同時に、その出口の困難さに直面してくる。一言で言うなら、2年という短い間に目標を達成するため、大量の国債を購入した中央銀行は、必然的に国債管理政策(注9)に巻き込まれてしまう。
(注9)国債管理政策:国債の確実かつ円滑な発行、消化、流通、償還および中長期的な資金調達コストの抑制を目的とした種々の政策。
 すると、インフレ率が目標の2%に達し、物価安定の観点から利上げや国債売却が必要となっても、財政や金融システムの安定性の問題に直面して政策を手仕舞うことができず、結果的に物価安定を犠牲にする可能性が高い。
長期の国債をスムーズに売ることができるか
河野:白川前総裁は、デフレ脱却に消極的だと見られて批判された。理由の1つは、2年物や3年物という期間の短い国債しか買っていなかったことです。これは、残存期間が3年以下の国債を購入するのであれば、2年あるいは3年かけてデフレから脱却したとき、能動的に国債を売っていかなくても、償還が3年目に来るのでスムーズに出口に向かえるという発想があった。
 しかし、これが10年国債、20年国債、30年国債を買っているとすると、2年後にデフレ脱却はできているけれども、保有している国債の残存期間は8年、18年、28年ということになる。これをスムーズに売ることができるか。
 FRBはうまくできると言っていますが、確かに、中央銀行だけの観点からすれば、できる。しかし、現実には、金利を上げていったとき、利払い負担に国が対応できるのか懸念され、スムーズに金融引き締めができなくなるリスクが非常に強いと思います。
加藤:おっしゃるように、日銀は財政ファイナンス(注10)から今後、抜け出せるのか、と心配されます。FRBの場合も、あれだけ長期の証券を大量に買ってしまうと、先行きの出口政策はやはり相当混乱する。七転八倒することになる。また、FRBが保有している長期証券が今後の景気回復局面での金利上昇の際、巨大な損失を発生させる。昨年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)に、FRBのスタッフがそういったシミュレーションを提出していました。
(注10)財政ファイナンス:中央銀行が新規発行国債を直接買い入れること。中央銀行が政府にマネー(資金)をファイナンス(調達)ことを指す。国債のマネタイゼーション(貨幣化)とも呼ばれる。
加藤:FRBから政府への利益納付ができなくなると、政治的に相当批判される。中央銀行の独立性という面で相当シビアな事象として表れる。2011年6月のFOMCで、FRBの資産にMBS(住宅ローン担保証券)は入っているべきではないので、出口政策のときに3〜5年かけてゆっくりと売却していくべきだ、との合意が形成されました。しかし、当時よりもFRBのバランスシートははるかに膨張し、MBS保有額は今でも増えています。
金融緩和策は「フリーランチ」ではない
 出口政策はより難しくなっており、先日の議会証言でも共和党系の多くの議員がそれを問題視していました。FRB内の出口政策議論は迷走し始めたように思います。最近のFRB幹部は、出口時に保有証券の実現損が出て政治的問題を招かいないように、証券を売却しない出口政策を検討しています。
 しかし、それで必要な引き締め効果を醸し出せるのかというと、景気回復期にあらたなバブルを起こして反動を招く恐れもある。FRBにとって完全に「海図なき領域」であり、やってみないと分からない面が多々ある。FRB幹部は公式には「心配ない」と言っていますが、事務方は相当心配しているように感じられます。
 国際決済銀行(BIS)元幹部のウィリアム・ホワイトは、大胆な金融緩和策は「フリーランチ」(ただ飯)ではなく、必ずコスト、副作用を発生させるため、今すぐやめるべきだと主張しています。現実にはそれは難しいですが、もう何年かたってくると、アメリカの方でも大胆な金融緩和策は実はコストがかかるということが広く意識されてくるようになるでしょう。
 日本でも長期の国債を大量に買ったあと、それが売れるかというと、実際には売れないでしょう。その前段階で、国債買いで増やしたものを減らせるかというと、財政赤字が減って、新規国債発行量が明確に減っていないと、それすら難しいかもしれない。インフレ目標2%と宣言したんだから、2%を超えていったら引き締められるはずだというのは、原則論はそうなんですけれども、これだけ巨額の政府債務を抱えている国で政治的にそれが許容されるのかというと容易ではない。
 事実上、日本の中央銀行の独立性(注11)は先進国で一番低い。別に日銀法を改正しなくても、もう十分低いので、出口政策の議論になったとき、たぶん日本銀行は抵抗できないだろうと多くの人は予想する。すると、そのときのインフレ期待、あるいは妙なアセット・バブルが過熱しないかとか、そういう恐れはあると思います。
(注11)中央銀行の独立性:財政危機に陥った国が紙幣を乱発して超インフレになった歴史的経緯を踏まえ、先進各国では中央銀行が政府から独立している。日本では1998年4月、新日銀法が施行され、日銀の政府からの独立性が明記された。
株式市場は全会一致を称賛したが…
 4月4日に日銀政策委員会が9人全員一致で日銀券ルール(注12)を事実上廃止したことは将来に禍根を残すかもしれません。株式市場は全会一致の評決を称賛しましたが、債券市場では「日銀は政治環境に全く抵抗しない組織なのだな」という印象を抱いてしまった参加者が多かったと思います。
 現時点では日銀がいつ出口政策を開始できるか全く展望できませんが、出口の際には、日銀政策委員会には相当の胆力が求められると言えます。債券市場がそれを信じられないと、期待の制御が難しくなり、長期金利は急騰する恐れがある。その点でも、2013年4月4日に、せめて「演技」でも良かったので、1〜2名の委員が反投票を投じる方が良かったのではないかと思います。
(注12)日銀券ルール:日銀が引き受ける長期国債の総額を日本銀行券の流通残高以下に収めるという日銀の内規。

(次回に続きます)



河野龍太郎×加藤出 金融緩和のゆくえ
日本銀行は黒田東彦総裁が「次元の違う金融緩和」を発表した後、円安・株高が続いている。従来は専門家の領域と見られていた金融政策が、これほど多くの人に注目されたことはないだろう。米国でも積極的な金融緩和が続けられているが、リスクや出口戦略への言及も始まっている。いわゆるアベノミクスの評価、そして、今後の日本経済は上昇していくのか、それとも失速するリスクはあるのか。実力派エコノミストの河野龍太郎氏と、屈指の日銀ウォッチャー、加藤出氏という気鋭の論客が徹底的に語り合う。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130530/248871/?ST=print

 


 

【第9回】 2013年6月5日 野地 慎 [SMBC日興証券為替ストラテジスト]
マネーを行き渡らせるには長期金利低位安定が不可欠
 日本銀行の「量的・質的金融緩和」は資産の入れ替え、ポートフォリオリバランス効果を期待する政策だ。
 4月6日号の本欄で、10年国債利回りは貸出金利から下方に乖離し過ぎると上昇しやすいと指摘した。4月5日に0.315%まで低下した10年国債利回りは、その後上昇傾向に転じ、5月23日には1%をつけた。
 国債利回りが低過ぎれば、国債より株式や不動産への投資、あるいは貸し出しに資金を回すほうがよいとの思惑、ポートフォリオリバランス効果が働いた結果だろう。日銀が円安を最重要視するとの見解が広がり、円安と株高の同時進行の中、「長期金利の低位安定が必要なくなった」との声が増えたことも長期金利上昇に一役買った。
 しかし、再度銀行の新規貸出金利(長期)に注目すれば3月時点で0.932%であり、10年国債利回り1%はこれを上回る。貸し出しが本格的に増加しているのであれば問題にならないが、現時点では貸し出しが大きく増えつつあるとのデータは見られない。
 アベノミクス効果で実際に企業が設備投資を増やし、借り入れ需要が増加すると期待するのだとしても、少なくとも6月に発表される成長戦略を見極めてからの話であろう。過去数年の為替市場の大きな変動をよりどころとした企業のグローバル化の流れも容易には変わりにくく、成長戦略そのものが踏み込み不足と認識されれば、企業の国内投資もどこまで増えるかわからない。
 長期金利が相当に低いのであれば、金融機関が優良な貸出先を探す動きが活発化すると思われるが、10年国債利回りが貸出金利を上回るようであれば、貸し出しに優先して債券投資を行うインセンティブも高まると予想される。国債利回りが上がり過ぎればポートフォリオリバランスは起こりにくい。
拡大画像表示
 20年国債利回りと東証REIT(不動産投資信託)指数の逆相関が続いている点からは、「金利が低ければREITを買うが、金利が高ければ債券を買う」との投資行動も浮かび上がる。10年債利回りが1%に達した5月23日には日経平均株価も急落した。
 市場参加者の期待インフレ率の上昇ペースも緩慢で、また、アベノミクス効果も早期には生じ難いと考えられる中、ポートフォリオリバランスが起き得ない金利水準を放置すれば、貸し出しや不動産投資、株式投資という形で市中にマネーが行き渡らないと考えられる。5月23日の株価急落やREIT指数の軟調などは、警鐘であるといえよう。
 日銀が即座に講じた共通担保オペや国債買い入れオペのかいもあり、その後の長期金利はやや安定傾向にある。日銀は、急激な相場変動を抑えるためだけではなく、長期金利を一定の低い水準にとどめておくために、今後も市場との対話を強化し、金融緩和策を運営していく必要がある。
 (SMBC日興証券為替ストラテジスト 野地 慎)
http://diamond.jp/articles/-/36912

 


 

 


【第203回】 2013年6月5日 週刊ダイヤモンド編集部
米国の量的緩和はサブプライムより危険
日本は国債暴落でキャピタルフライトも
――米ペンシルバニア大学ウォートン校教授
フランクリン・アレン インタビュー

先進国で実行された金融緩和。日本など各国の経済にどうした影響をもたらすのか。以前から日本経済の構造改革を訴えているアレン教授に聞いた。

1956年英国生まれ。80年から同校で教鞭(きょうべん)をとる。専門はコーポレートファイナンスと各国の金融制度
Photo by Satoru Okada
――日本銀行が4月に発表した“異次元”金融緩和に対し、国内では期待と不安の声があり、国外でも賛否両論が出ています。どうお考えですか?

 今の世界の経済状況での量的緩和は、それほどよい結果をもたらすとは思いませんし、むしろ大きなリスクを伴います。

 日本でのリスクは、まずは長期金利への影響です。日本は対国内総生産(GDP)比200%超と巨額の公的債務を抱えています。数年後に公的債務の金利が上昇すれば、国内総生産(GDP)でこれをカバーしないといけません。

 すでに大きな財政赤字があるのに、さらに3〜4%、あるいは5%の金利上昇分を、果たしてGDPでカバーできるでしょうか。

 また、日本の銀行は多くの日本国債を保有していますが、過度のインフレと金利上昇、国債価格の暴落が同時に起きれば、大打撃を受けませす。

 そうなるとわかれば、国民や企業は資産を一気に海外に移すでしょう。いわゆるキャピタルフライトが起こります。その悪影響は計り知れません。

――例えばジョセフ・E・スティグリッツ・米コロンビア大教授が3月に安倍晋三首相を訪問し、その際報道陣に「デフレから脱却し経済成長すれば歳入が増え、債務の返済に回せる」と述べたと報じられました。

 彼は、私が修士号を取得するときのアドバイザーの1人だったのですが(笑)、確かにインフレは長期的に見れば、公的債務の削減の助けになります。私が懸念しているのは、その移行期に生じる金融市場の混乱です。

 電話のダイヤルを回すようにインフレ率を設定できるのなら、何年も前にやっていますよ。物価はそんな簡単にコントロールできません。日銀や日本政府は実に、綱渡りをしているようなものです。

――日本経済は長年、デフレで苦しんできました。その打開策としての金融緩和という位置づけです。他の方法を採るべきだったのでしょうか?

 日本が抱えている根本的な問題は、自国の企業の競争力が失われてきたことです。典型的な例はソニーです。30年前、ソニーは電機業界における世界的なリーダーでしたが、今はサムスンなどに勝てない。他の日本の企業も同様です。

 確かに低金利が長く続くと、企業の金利負担が減り、経営の効率化への動機づけが難しい。

 ですから、金融緩和よりもっと緩やかな金利上昇を私は薦めます。金融市場の混乱を避けつつ、企業に対してより高いリターンを目指すよう促すのです。

 要は、企業自身が競争力を取り戻す仕組みが必要なのです。構造改革や規制緩和ももちろん重要です。

米国の株価は実体経済とかい離

――米国や国際通貨基金(IMF)は金融緩和の効果を認めています。

 先進国の中央銀行やIMFは、金融緩和にはある程度のメリットがある、という程度の見解でしょう。

 しかし例えばブラジルは、先進国の金融緩和による資金流入で生じる自国の通貨高や、大都市での不動産価格の高騰に苦しんでいます。IMFなどはこうした問題について十分に検証していません。

 また、金融緩和それ自体の効果も疑問です。例えば米国は08年のリーマンショック以来、金融緩和をし、さらに財政刺激策も講じていますが、1.5〜2%とわずかな成長率しか達成していません。

 そもそもリーマンショックの要因は、米国の不動産バブルと、サブプライムローン問題の表面化によるその崩壊でした。金融緩和は、資産バブルと、銀行の資産価値の下落を生じさせるリスクがあります。サブプライムローン問題と同じか、むしろより深刻な事態を引き起こしかねません。

――米国では株価とドル相場が上昇し、シェールオイルやガスの採掘が進むなど好材料もあります。

「シェールガス革命は財政問題を解決するほどではない」と語る
Photo by S.O.
 米国の株価は実体経済とかい離しています。お金をどんどん流し続ければ、必ず何らかの資産へ行き着くのですから。それが突然止まると、バブルがはじけて金融機能が停止します。

 財政赤字も増えるばかりです。歳出の強制削減など改善策は見られますが、オバマ政権と、共和党が多数を占める下院との“ねじれ”による政治的な対立は深刻です。

 債務の上限をめぐる両者の対立は長引く可能性があります。シェールガスやオイルは確かに好材料ですが、財政の問題を解決するほどではありません。

――米連邦準備制度理事会(FRB)は、金融緩和を終わらせることができるのでしょうか?

 バーナンキ・FRB議長が5月22日に連邦議会で金融緩和の縮小を示唆しただけで、24日のダウ工業株30種平均が5週間ぶりに下落したことが象徴的です。

 FRBはおそらく、2〜3%程度の経済成長率を終了の目安にしていると思われます。しかし、今後も世界的な低成長が続くとみられ、出口戦略はそれだけ難しくなります。

――欧州市場も混乱が続いています。解決できるのでしょうか?

 まずユーロ圏の構造的な問題として、財政を全体で規制できる制度がありません。

 そして今や、彼ら自身が将来の成長を見通せなくなっています。四半期ごとに成長するとの予測を出しても、そのたびに実現しないという事態が起きています。

 特にイタリアやギリシャでは、経済の成長どころか、縮小に歯止めがかかっていないのですから。若者の失業率が上昇傾向にあり、底打ちしていません。

 現在、世界的に注目されているのは日本ですが、次はイタリアを中心に再び欧州が注目されます。

――なぜですか?

 イタリアは、日本と同様の経済の構造問題を抱えていますが、それを解決できない政治的な問題があります。

 例えば2月の総選挙では、ユーロからの離脱を主張する五つ星運動のような党の大躍進が挙げられます。

 おそらく半年から1年後には再び総選挙があるでしょう。ベルルスコーニ元首相が返り咲く可能性もある。そうなれば、財政再建を進めると口ではいいながら進めないという事態が起こりえます。

 これに対して欧州中央銀行(ECB)は、イタリアに対して責任ある財政再建を条件に、国債買取プログラム(OMT)を発動するでしょう。

 ユーロ圏も今後、日本と並んで“実験の場”となるかもしれませんよ。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)


 

 

QE3終了の“伝え方”に
苦戦を強いられるFRB

「日銀は景気回復を支援しようとしており、それは機能している。ECBは景気停滞を支援しようとしており、それは機能している」。米経済学者で元イングランド銀行(BOE)金融政策委員だったポーゼン氏はそう述べた。ECBは日銀やFRBに見習い、大胆な金融緩和を行うべき、との批判である。

 しかし、5月23日以降の日経平均株価の乱高下に見られるように、中央銀行が資産価格を人為的に押し上げようとする政策には危うさがつきまとう。BOEのフィッシャー金融政策委員は、ポーゼンとは一線を画した思慮深い見方を5月24日に提示した。彼は「米国式」の無制限資産購入策はやりたくないと明言した。「アメリカ人は脱出の仕方が少し難しいことに気がつき始めたように思う」。

 確かに、最近のFRBは市場への情報発信で苦労している。5月22日にバーナンキ議長の議会証言とFOMC議事要旨の公表が重なった。FRBが全体として発したメッセージを咀嚼すると、「経済の回復にはまだ確信が持てないので、無制限資産購入策(いわゆるQE3)の縮小はかなり慎重にやります。ただし投資家の皆さん、過剰なリスクテークには気をつけて下さいよ」というものだった。

 バーナンキは資産購入額を調整することに「taper」という単語を使わなかった。その言葉だと、一度減額が始まると自動的にゼロまで行くことが暗示されるからだ。FRBは、資産購入の減額を始めても、次の減額は経済の情勢を見極めてから判断するつもりでいる。QE3の縮小に時間をかける姿勢を示すことで、「QE3終了=出口政策の開始」ではないことを伝えたがっている。

 QE3終了はアクセルペダルから足を離すことであって、ブレーキ(ゼロ金利解除やFRBの資産縮小)を踏むことではない。しかし市場は「予想外にFRBはタカ派に傾斜している」と慌てた。市場の期待の制御は難しい。バーナンキが今後うまく立ち回ってくれないと、その衝撃は日本で増幅され、長期金利や株価に再び激しいショックが起きる恐れもある。

 ところで、先のFOMC議事要旨には、インフレ率は今後数年間、2%を超えないという予測が載っていた。あれだけの緩和策が続けられ、しかもインフレが国民のマインドにビルトインされている米国ですらそうだとすると、日本でインフレ率を2%以上に押し上げることは容易ではないといえる。

 (東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)

 

 

欧州の金融政策:マイナス金利という選択
2013年06月05日(Wed) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年6月1日号)
中央銀行に資金を預ける市中銀行に金利を課すのは薬か毒か?
 ユーロ圏経済は、6四半期連続で生産高の減少に苦しんだ後も力を失ったままだ。欧州中央銀行(ECB)は、6月6日に政策理事会を開く時に行動を起こす必要に迫られている。1つの選択肢は、マイナス金利を導入することだ。
 その決定を下せば、ECBは初めてマイナス領域に踏み込む主要中央銀行になる。だが、ECBは独りではない。ユーロ圏には属していないが、自国通貨クローネをユーロに固定させているデンマークも、昨年7月にマイナス金利を導入した。ユーロとのペッグを破壊し、有り難くない通貨上昇を招く恐れのあった外国資金の流入を避けるためだ。
中銀預金金利をマイナスにする?
 ECBがその後に続いても、リファイナンス金利(主要政策金利)はプラスのままだろう。リファイナンス金利は、ECBが市中銀行に資金を貸し出す際の金利で、ECBは5月初めにこれを0.75%から0.5%に引き下げた。
 デンマークと同様、マイナスになる金利は、市中銀行が中央銀行に預けた預金に対して支払われる金利だ。ECBの中銀預金金利は、昨年7月以降ゼロに据え置かれている(この時の決定を受け、デンマークはマイナス金利導入に動いた)。
 2008年の金融危機以前には、ECBの預金金利はそれほど重要ではなかった。銀行が預けなければならない最低限の準備金以外には、銀行が中央銀行に余剰資金を置いておくインセンティブがほとんどなかった。銀行は、短期金融市場で資金を貸し出す方が得になったからだ。

 銀行が相互に資金を融通し合う際の翌日物金利「EONIA(ユーロ圏無担保翌日物平均金利)」は、リファイナンス金利の動きをなぞっていた。
そのリファイナンス金利は、ECBが提供する資金量を制限することによって確実に誘導することができた。
ECBが、銀行が借り入れを望むだけ資金を貸し出し始めると、中央銀行の流動性が非常に潤沢になり、預金金利がEONIAの重要な決定要因になった。EONIAは預金金利を若干上回る水準で推移している。
 同様に重要なことは、短期金融市場が南欧と北欧の間で決定的に分離するようになったことだ。ECBの貸し出しは、主に南欧の銀行に向かった。周縁国から資本が引き揚げられたため、欧州北部の銀行はいつの間にか豊富な資金を持つようになり、そのお金をECBに預けるようになった。
 ECBがマイナスの預金金利を導入すれば、銀行は、中央銀行に資金を置いておくのに金利を支払わなければならなくなる。借り手ではなく預金者に金利を課すことは、通常の物事の道理をひっくり返す。実際、名目金利がゼロを下回ることはあり得ないという考え方が、中央銀行が量的緩和のような政策を採用してきた理由だ。
 「ゼロ金利下限(ゼロより下には引き下げられないという制約)」について通常行われる説明は、預金者は現金に切り替えることでマイナス金利を回避できるというものだ。この制約から、マイナス領域に大きく踏み込むことに限界が生まれるが、多少のマイナス金利は実行可能だ。通貨の保有には保管費用がかかるからだ。
2つの利点

〔AFPBB News〕
 マイナスの預金金利を課すことは、2つの利点をもたらすと考えられる。
 1つは、これらの金利が短期金融市場に浸透するにつれ、ユーロが下落することだ。そうなれば、輸出を刺激し、輸入を抑えることで、需要が下支えされるだろう。デンマークでは、この政策がクローネに対する上昇圧力を防ぎ、ユーロとのペッグを維持することを可能にした。
 デンマークの経験から得られる主な教訓は、このような政策が実際に為替市場に影響を与えるということだ、とノルデア銀行のエコノミスト、ヤン・ストルプ・ニールセン氏は言う。
 また、この政策はユーロ圏の金融細分化と戦う助けになるかもしれない。欧州北部の銀行が中央銀行に資金を預けるために金利を支払わなければならないとしたら、これらの銀行が南欧の銀行に貸し出しを再開する意欲が高まるかもしれない。
 マイナスの預金金利に向けた断固とした行動は、ユーロ圏全体で再びインターバンク(銀行間取引)市場を機能させる可能性がある、とクレディ・スイスのエコノミスト、クリステル・アランダ・ハッセル氏は主張する。
 だが、こうした魅力的な見通しは、実現しないかもしれない。代わりに、南欧の銀行の健全性に対する不信感が広がり、中核国の銀行は余剰資金を南欧に振り向けることを警戒する可能性がある。
 実際そうなれば、マイナス金利の導入は逆効果になる。銀行は、貸し出し金利を引き上げて新たな費用を補おうとし、経済を活性化させるどころか、かえって傷つける恐れがある。
量的緩和の方が好ましいけれど・・・
 ECBは、利益以上に害を生む可能性のある政策には慎重になるだろう。何しろ、ECBは、マイナス金利の導入をちらつかせることで、その効果をある程度達成できるし、ユーロ安を促す助けになる。
 だが、マイナス金利の導入という考え方は、先進国経済に関する最新のリポートの中で経済協力開発機構(OECD)の支持を得ていた。ユーロ圏が景気後退から抜け出せないままなら、ECBは実際にマイナス金利を導入するかもしれない。もっとも、米連邦準備理事会(FRB)やイングランド銀行を手本にして量的緩和に取り組む方がより望ましいのだが。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37935


07. 2013年6月05日 08:59:46 : BDDFeQHT6I
これから円安傾向が続くとすれば、長年のデフレ不況の間もアメリカの様に貨幣の信頼性を犠牲にして金をばら撒く財政破綻バクチを日本が取らずに来たと言う通貨の信頼性を失って円の評価が低下する結果だろう。
国内産業壊滅状態の日本で今頃円安誘導されたって安い円を武器に海外と戦える製造業が日本にはほとんど残っていない、残っているのは実質的に外国企業と同じな少数の大企業に奴隷の様にこき使われて疲弊し切った下請け、部品メーカーだけだ、こんな企業が円安を武器に何か出来るとはとても考えられない。

08. 2013年6月05日 11:33:19 : nJF6kGWndY

>>07

悲観し過ぎ

戦後の焼け野原でも急成長できたのだ

規制を緩和し、円安が続けば、観光、農業、など付加価値の高い国内産業は、確実に発展する

ただし、日本の産業は強く、経常黒字も固いので、原発再稼働すれば、結構、すぐに円高に戻るだろう


09. 2013年6月05日 22:21:03 : e9xeV93vFQ


 ユーロ圏:1−3月にリセッション深刻化−投資と輸出落ち込む
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  6月5日(ブルームバーグ):ユーロ圏経済 は2013年1−3月(第1四半期)にリセッション(景気後退)が深刻化した。投資と輸出が落ち込んだためで、4−6月(第2四半期)も苦しい状況が続く恐れがある。
欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が5日発表した1−3月の域内総生産(GDP )改定値は前期比0.2%減少。先月15日公表の速報値と一致した。総固定資本形成は1.6%減少し、GDPを0.3ポイント押し下げた。
1−3月GDPは前年同期比では1.1%減少と、速報値(1%減)から下方修正された。
原題:Euro-Area’s Recession Deepens on Slump in Investment,Exports(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:マドリード Angeline Benoit abenoit4@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Craig Stirling cstirling1@bloomberg.net
更新日時: 2013/06/05 18:11 JST


 

長期金利上昇における影響とは?


長期金利上昇におけるプラスとマイナスの影響とは?

 株式や為替など金融市場が不安定な動きを見せる中、金利もここのところ急激に上昇しました。この金利の上昇がいろいろなところに影響を与えると言われています。

 長期金利上昇の影響を整理すると、まずマイナス面として日本は大量の国債を発行しているので、その利払い費が増加するのは明らかです。利払い費が上がると日本の財政が破綻に向かうという不安まで出てきます。これは国債を発行する側のコスト増ですが、一方で国債を保有する側にもマイナス面があります。金利が上昇する過程は国債価格が下落する過程でもあり、価格が下がると投資家は持っていた国債の含み損が増加する、または含み益が減少することになります。さらに住宅ローン金利にも影響が出ます。固定金利であれば金利の変動はありませんが、変動金利で借りていた場合にはコストの増加に繋がります。またこれから借りようとしていた人にとっては、低い固定金利が上昇してくる可能性もあるので、家計にとっての負担につながります。

 一方、あまり聞かれませんがプラス面も少なからずあります。金利、債券を見る場合、債券だけで価格が動いているわけではありません。必ず他の現象と連動して動いているのです。株式や為替、外国の債券などがある中で日本の国債も動いているので、通常、金利が上がる時は株価が上がり、円安が進んでいます。いくつかのポートフォリオを持っている人にとっては、金利が上昇してもその時には持っていた株が上昇する、米国債や外貨預金が上がる、というメリットが同時に起きているのです。「資産効果」とよく言われますが、持っている資産が上がるという効果が裏側で起こっているのです。


 さらに企業収益も上がり、これも裏側に起こっている現象からのプラス面であると言えます。また、債券運用をするときに、始めは何故だろうと思うことの一つですが、国債の利回りは確かに上がっていて、持っていたポートフォリオの利益が減るというマイナス面があるものの、逆に新しく投資をしようとした時には、金利が0.5%の時よりも1%の時の方が投資リターンは高くなります。その意味では、新規投資の利回りは上昇しているのです。これから資産運用を始める場合には投資リターンが高くなるのです。そして、景気が回復している中で、株価上昇、円安などの現象があるので、通常、賃金や設備投資などもプラス方向に向かうはずです。つまり、金利が上昇している現象の背景や、同時に起こっている現象から、プラス面をかなり享受することもあるわけです。

 しかし、これは金利が上がることで直接起こることではなく、同時平行的に起こっている現象なのでイメージが湧きづらいかもしれません。金利上昇からまずは利払い費上昇や、含み損増加などの直接影響の方が大きいことは確かです。しかし、逆に言えば2012年までずっと金利は下がっていたので、全て逆のことが起きていました。利払い費は減り、国債価格は上昇して含み益が増加、住宅ローンも下がっていました。ただし、株価は下がり、円高になり、新規国債投資の利回りは減少、賃金や設備投資も下がるというのがこれまでの状況だったのです。債券市場を考えるときには、そのものだけではなくて起こっている背景や合わせて起こる現象をトータルで見ることが非常に重要なのです。



1%未満の長期金利は歴史的に見て極めて稀な局面

 国債利回りの変化を具体的に見てみましょう。2013年1月初めと、日本銀行が異次元の金融政策を発表した4月4日、5月半ばの動きを確認してみます。まず、一番なじみのある10年債でみると、今年の頭には0.835%でした。それが異次元緩和で0.455%になりました。終値ベースの数字なので、実際は瞬間的に0.3%まで下がりました。これは相当な変化です。ところが5月半ばには0.85%となり、1月のアベノミクスが始まった時の水準まで戻しています。その後、瞬間では1%まで付けるなど急激に下がった後、戻って上昇しているというのが今年の動きです。5年債や2年債で見ても同様で、一旦下落した後、1月初めの水準よりもさらに上がっています。やはり、中期債を中心に足元急上昇していることは確かです。

 マーケットが大きく変動していることは間違いなく、これはボラティリティーが急激に上がっている状況です。過去の経験から、このような場合には取引所がマーケットの動きを沈静化させるために一時商いを停止するという措置を講じます。これをサーキットブレーカーと言います。あまりにも急激に価格が動くので、投資家心理を押さえ、取引所としても計り知れないことが起こっていないか確認するために、一度マーケットを止めるのです。このサーキットブレーカーが4月以降、先物市場で頻繁に起こっています。ただ、この場合も他の市場と合わせてみることが重要で、株や為替も同様に、市場関係者の想像を上回る急激な変化をしていることはご存知の通りです。株高、円安が起こっているので、金利も上がりやすい環境だったことは間違いないでしょう。

 さらに10年債の利回り推移を長いスパンで見てみると、2003年に一度0.4%を付けています。ちょうど「りそなショック」後、りそな銀行が救済される直前に0.4%を付けました。その後、小泉改革、安倍第1次内閣と株価が回復する中で、金利も少しずつ上昇してきました。2008年リーマンショックまで1.5%から2%を続けます。しかし、リーマンショック、民主党政権を経て去年まで、ほぼ一貫して下がってきます。今年4月には0.3%という低水準を付けた後は、急に0.8%から1%近辺に戻るという動きです。


 足元、金利は急上昇したと言いますが、このグラフから見ると1%という水準は金利が急上昇してとんでもなく異常事態になっているとは言えません。グラフからは、過去10年の中で、1%よりも下の水準にあった状態の方が極めて短いことがわかります。2003年に少しと2012年だけなのです。1%から1.5%がほとんどを占め、1.5%から2%もそれほど多くありません。

 つまり、1%以下の状況は2012年のように、円高株安、デフレが進行し、日本経済全体、家計も含めて深刻な状況にあるときだと言えます。逆に、1.5%から2%の状況は、株が非常に堅調、経済は自信を回復し、楽観論が広がった時期です。そして1%から1.5%の状況は、両者の移行期であり、超悲観から楽観に向かう間、楽観から悲観に向かう間の時期と捉えることができます。こうして10年間で見ると、長期金利が1%以下であることが実は極めて稀な状況であることを再認識しておくことが重要なのです。




講師紹介



ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 講師
金融経済アナリスト
前クレディ・スイス証券副会長
田口 美一


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