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米雇用統計と市場の動き (在野のアナリスト) 
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/373.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 6 月 09 日 01:45:01: igsppGRN/E9PQ
 

http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52450787.html
2013年06月08日 在野のアナリスト


週末にかけて、色々な経済の動きがありました。まず注目された米5月雇用統計は、非農業部門で17.5万人増、失業率は7.6と予想より少しよい程度でした。これを好感し、米株式市場は緩和縮小懸念が後退とみて、200$を越える上昇となり、為替は緩和縮小をおりこむ形でドル高に向かいました。同じ数字を、違った解釈をして『いいとこどり』した印象をうけますが、最近の市場は経済指標のおり込み方に首をかしげるものが多く、それがまた市場に不安を与える結果になっています。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用方針を見直し、国内債券を67%から60%、国内株式を11%から12%、外国債券を8%から11%、外国株式を9%から12%にします。これは非常に疑問な内容です。日銀のバランスシート拡大に伴い、国内債券は処分先がある状況です。しかし安定保有者が減り、国債市場にはマイナスでしょう。株式の配分は、大型投信の2、3本で賄えるぐらいなので、大して市場に影響しないでしょう。問題は外国株式、債券の比率を大幅に高めることです。
GPIFが株や債券のリスクと同時に、為替リスクも負う。二重のリスク管理が必要である点と、日銀の異次元緩和により、世界でおきたことはリスク投資の拡大です。ジャンク債級の債券が買われ、利回りが20%近い水準から、一気に5%まで低下したものまであります。この急激におきたジャンク債バブル、これによりリスクテイクが一気にすすみ、株や不動産に資金が流入し始めた、という背景があるのです。つまり今の外国株式、債券はバブルの波及効果で高い面があり、仮に今回の円高局面でキャリー取引の巻きもどしが起これば、一気に資産価値を目減りさせてしまう可能性が高いのです。

逆に言えば、政府がまたしても外国の顔色をうかがい、GPIFに外国資産を買え、と促したのかもしれません。今の政府は円安信奉者が多いので、円安効果を狙ったのかもしれません。いずれにしろ、今がバブルならいずれ弾け、損失を拡大させる恐れがあります。そしてそれは今の市場動向からも、はっきり読み解けるのです。整理すると、円キャリー取引が起きる、リスク投資が活発化する、各市場が高騰する、という流れです。それが逆回転を起こすと、市場下落、リスク投資の縮小、円キャリー取引の終わりで円高、と二重、三重に損失を拡大させてしまう形になるのです。
今回、一気におきた円高局面でさえ、円キャリー取引を雇用統計発表前に、一旦手仕舞う動きがあり、それがまた少しもどったから米株は上昇した。そう考えるのが妥当なのでしょう。そしてある水準を抜けると、リスク投資も一気に巻きもどされ、欧州の債務不安が再燃する、といったシナリオも十分にあり得ます。ECBは金融政策の現状維持を決めましたが、リスク投資の行方次第では、ECBは更なる緩和策を求められるかもしれません。それは日銀、FRBとて同様だということです。

しかしリスク投資を活発化させると、バブルの懸念が付きまとう。だからFRB地区連銀総裁などは、緩和縮小を示唆しています。口先介入だけで、リスク投資を縮小させようとしている。その結果が、今回の大幅下落の背景だとすれば、それはリスク投資の縮小に伴う実体経済への鞘寄せ、という流れであり、実際に緩和縮なのか、継続なのかは、実はそれほど重要ではない、ということです。

日経平均は、ナイトでも13000円回復、シカゴ日経平均先物も、13000円をキープしたので、一旦は反発も期待できそうです。しかし海外のリスク資産、ジャンク債級の動向には注意しておいたほうがいいのでしょう。結果的に、マネーを巻きもどす流れを、日本が大きくしているのも、日本がバブルの一翼を担ったためであり、それは政策の結果として起きたことでもあるのですからね。


 

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コメント
 
01. 2013年6月10日 09:43:39 : niiL5nr8dQ
政策が失敗する原因は「イデオロギー」、「無知」、そして「惰性」

エスター・デュフロ米MIT教授に聞く

2013年6月10日(月)  広野 彩子

5月31日に発売した別冊「新しい経済の教科書2013〜2014年版」では、「制度と貧困の経済学」をテーマの1つにした。その中で、共著『貧乏人の経済学』(みすず書房)で知られるエスター・デュフロ教授のインタビューを掲載している。貧困削減の現場に密着し、貧しい人々を支援する側の思い込みを実証的に否定し、「イデオロギー先行は失敗する」「職業訓練より、新しい雇用の創出が重要」と言うデュフロ教授に、貧困をなくす制度改革のあり方などを聞いた。オンラインで、拡大版を掲載する。
(聞き手は広野彩子)
貧困削減の施策で、最も犯しやすい失敗とはどのようなものでしょう。


エスター・デュフロ(Esther Duflo)
米マサチューセッツ工科大学(MIT)教授
1972年フランス生まれ。1995年、仏DELTAで経済学修士号取得、99年、米マサチューセッツ工科大学で経済学博士号取得(Ph.D.)。同大学助教授などを経て2005年から現職。2011年、アビジット・バナジー教授と共著で『Poor Economics(邦題:貧乏人の経済学)』を出版、11カ国で翻訳される。英エコノミスト誌で「若手経済学者ベスト8」の1人に選出。2010年、40歳以下の最も優れた経済学者に贈られるジョン・ベーツ・クラーク賞を受賞するなど受賞歴多数。(写真:Mayumi Nashida、以下同)
 最大の過ちは、貧困について一面的な見方をすることです。どんな見方も、完全に間違いというわけではありません。しかし、貧困をめぐる問題は1つではなく、大変多くの違う問題がからみあっているということを忘れがちなのです。魔法の一撃のような施策はないのです。しかしいつでも、これだけやればすべてうまくいく、という1つのやり方だけを求めようとするのがよくある間違いですね。

1つの方法に過剰に期待してしまう。政府や世界銀行や国連なども、そういった間違いを犯しがちですね。

 もちろん、彼らがうまくいくこともあります。現場の担当者はいつも現実をよく理解し、頑張っていると思います。大変細かく気を遣い、苦痛の伴う仕事に懸命に取り組んでいます。どちらかと言えば問題は「識者」です。現場にあまり行きたがらない人たちがよく間違えるのです。現場で信念を持って貧困支援に取り組んでいる人たち、とりわけNGO(非政府組織)は常に、問題解決には、複雑な全体像をゼロから理解しなければいけないことを分かっています。

NGOは、官僚的な組織よりもうまくやっていると。

 大体そうですね。国際組織だけではなく、政府関係者も往々にして、現場に行って思考を巡らせることをせずただ抽象的に考え、現実を全然知らないですね。そして、誰の問題も解決しないような解決策を、試行もしないで考えるのです。そして、その解決策を実行に移すことにやっきになり、結局本質的な問題を考えないで終わる。

イデオロギー、無知、惰性が政策失敗の原因

思いつきではなく現場の細かい事実の検証が重要なのですよね。共著『貧乏人の経済学』では、3つのI―イデオロギー(ideology)、無知(ignorant)、そして惰性(inertia)が失敗の原因と述べていました。これは政策全般に言えることのように思います。

 そうです。この傾向は、先進国での貧困対策についても言えますし、経済政策についても言えることです。人は、その時代、地域ではやっている考え方やイデオロギーに強い影響を受けがちです。そしてろくに現実に関する知識もないままに政策やプログラムを考え、実行した後で効果的になるよう改定することすら怠る。これが怠惰、の部分ですね。そして、その現実、事実を知らない。私はたまたま開発支援に携わっているので、こういったことに日々直面しているので、痛感するのです。

現場を見つめ、現場の小さい問題から改善していけば、大きな変化にもつながるとおっしゃっていましたが。

 そうです。本当にそう強く思います。いったん支援プログラムが実行されたら、最初は良いアイデアだったとしても、そのいい点、機能しない点を精査するだけでも、より大きな変化を起こすことができますから。

 たとえば、ブラジルではこんな施策を実施しました。ブラジルは、とても活発な民主主義国家です。選挙には大勢立候補します。しかしあまりに立候補者が多すぎて、選ぶのがとても難しい。その結果、貧困層の票は反映されなくなるのです。文字を理解しない人が多いからです。


 そこで投票を電子投票システムに変えるというシンプルな改革で、貧困層の投票能力が大きく改善し、だれが当選するか、どのような政策が実行されるかにまで影響を及ぼすようになりました。たとえ民主主義国家で言論の自由があっても、それを全員が間違いなく行使できるような仕組みづくりの視点に欠けると、本当の民主主義や言論の自由を実現できないのです。既存の政策には、そういった間違いがたくさんあります。

小さな改革が、大きな結果をもたらすという好例ですね。小さなことから変化を起こすには、虚心坦懐に現場の実態を良く知らなければいけません。

 そうです。そしてまずは果敢にやってみる。やっているうちに、最初のアイデアは少しずつ小さなことから修正されていきます。この現実に合わせた修正の積み重ねが、全体の効果を高めることにつながるのです。

需要と供給の間に、現実がある

なるほど。ところで、貧困削減の取り組みにおいて、自己責任で自立させるよう啓発すべきとする「需要型」の考え方と、ジェフリー・サックス氏のような「供給型」、すなわち大きい箱物や施設をまず作るべきという考え方と両方ありますが、あなたはどちらですか。

 どちらでもありません。その現場によって違うからです。もちろんどちらも、現実を反映している解決策ではあります。供給側から考えるのは、現実が直面している制約に着目した政策です。たとえば、学校がないというのがその典型ですね。

 一方で、需要からのアプローチは、支援する内容は人々が何を必要としているか次第だというものです。たとえば、看護師が地域で唯一の診療所での勤務をサボるので、その出勤率を改善する取り組みをしたケースがあります。でも全くうまくいきませんでした。理由は、地域住民が診療所に全く関心がなかったからです。地域にとって本来必要な施設にもかかわらず。患者に求められていないので、看護師もやる気にならなかったのです。そして、政府がこのプログラムをうまくいかせるかどうかにも住民は関心がなかった。

 もし、需要の問題があれば需要を喚起し、需要に問題がなければ供給すればいいと考えがちですが、そうではないと思います。たとえば貧しい人たちが自分で学校を作ることはできません。しかし学校を建てさえすればいいと考えてもいけないのです。学校に対して、人々がどういう意識を持っているのか知らなければいけません。需要側、供給側、双方から考えることが重要なのです。相互に密接にからみあっているからです。需要がないから供給しない。供給されないから需要が生まれない。

多くの人は、一面的に考えてしまうと。

 そうなのです。人々が欲しがるものを市場に出せば、市場が問題を解決してくれるという人たちがいます。一方、伝統的な開発支援系の人は、供給サイドから考えるのが好きです。お金で問題を解決できると思っているからでしょう。ビジネスマンにもその傾向がありますね。新しいものを供給するには、需要に合ったものを出さなければいけない、と言うのは簡単ですが、需要と供給の間に横たわる現実がどのようなものか、まずしっかり定義しなければいけないのです。

貧しい人々は、我々が考える以上に多くを個人で背負っていますね。たとえば先進国の人間が蛇口をひねればすぐに得られるきれいな水を得るためだけに、1日苦労しなければいけない現実に直面している。デュフロ教授が書いた、「彼らは生き延びるために考えることが多すぎて、もうこれ以上考えられないのだ」との指摘にははっとさせられました。

 それは私が取り組みを進めているうち自然に実感してきたことです。その現実を、貧困支援に携わる人はしっかり見なければいけません。貧しい人々はあまりに多くのことを、日々の問題解決に費やしすぎて、より大きなこと(子供の教育など)に目を向ける余裕がない、というのが現実なのですから。

国家の制度は同じでも小さな変革で改善できる

制度の経済学とジェームズ・ロビンソン米ハーバード大学教授との著作『Why Nations Fail』で知られるダロン・アセモグル教授は国家の制度が重要だと言っています。デュフロ教授はそれを「悲観的だ」と論評されていました。

 そうです。彼らは、大きな意味での「制度」の改革に関して悲観的だからです。国家の制度、しくみを変えるのは容易でないという。私たちは楽天的です。それは「小さな制度改革」に日々携わっているからです。国の仕組みが素晴らしくても、常に、もっと改善が必要で、機能不全に陥っている部分があります。ブラジルの例はそうですね。

 一方、大きな国としての仕組みはひどいとしても、大きな動乱を起こさずに改善できる取り組みは存在します。たとえばインドネシアはかなり厳しい国ですが、そこでも人々の暮らしを改善する取り組みはいくらでもあります。辺境から変えることだってできるのです。中国も民主主義国家ではありませんが、選挙を導入しました。小さくても何らかの変化は起こるはずです。日々の変化の積み重ねが重要なのです。

日本企業の一部は、途上国でのビジネスに関心を持っています。社会に貢献しつつ、収益を上げていくというのは可能でしょうか。

 それは素晴らしい質問です。安定した仕事につけると、貧しい人の生活は劇的に向上しますが、地元企業、とりわけ中小規模の町や村にある企業はその点で(雇用の吸収に)多くの制約があります。民間企業が大きな変化をもたらす方法の1つは、首都ではなく郊外に立地するような地元企業と提携することです。交通の便も悪いので日本企業側にとっての利益の最大化は難しいでしょう。しかし地元中小企業は日本企業と組むことで取引に携わる入り口とチャンスが得られ、取引のノウハウに関して多くを学ぶことができます。証拠はありませんが、1つの途上国支援策としていかがでしょうか。

なるほど。ノウハウがないのが問題であると。

 市場への足がかりがないのです。一方で、いったん市場への足がかりを得たら、ノウハウは自然に進化していきます。貧しい人々に、チャンスを与えるのです。日本の中小企業も単独で中規模の町でビジネスを展開するのは、言葉の問題などで難しいでしょう。地元企業と組めば、地元の労働者が喜んで働きにきますよ。パートナーシップがカギです。そして事業のターゲットを特に貧困層に限定する必要もない。輸入商品の製造スタッフとして雇うなど、現地で雇用を創ってくれればいいのです。

貧しい人々を、貧困の連鎖から断ち切らせる力になるのは、どのような取り組みでしょうか。

 途上国支援の世界では現在、まずは情報提供が最初に必要だ、情報はタダだから、という話が人気です。しかし情報はタダではありません。情報を持ってくる人を雇わなければいけません。しかし情報提供会社を作ったところで全く効果はないでしょう。それだけで貧しい人たちの行動を変えることはできません。彼らはそうした情報を信用しないし、理解しませんから。もちろん彼らがサービスを得られる場所などに関する情報提供は重要なのですが、思うほど簡単ではないのです。

 これは識字率の問題だけではありません。先進国の人々が提供する情報は、何であれ先進国の考え方、思考回路、文化に合うように作られています。そのためにときには情報が多すぎて、必要な人に必要な部分が届かなかったりもします。受け手が、「自分に関係ない」と思ってしまうからです。これが特効薬、というような方法は最初にも触れましたが、存在しないのです。

女性の活用と、経済成長を絡めるべきでない

先進国のケースで、職業訓練を公費で続けても、雇用創出には貢献しないという研究をされました。

 そうです。結局仕事の数は同じなので、訓練を受けた男性は採用され、その分誰かがふるい落とされるだけだったのです。女性は訓練を受けてもそれが就業に役に立たない場合が多かったです。雇用全体が増えないので、失業率の改善には役に立たない。スキルを身に着けた人材とそうでない人材の雇用の再配置が起こっただけで、雇用を生み出さないのです。効果的な政策とは言えないのです。

日本では、安倍政権が成長の3本の矢として女性の活用を提唱しています。


 日本では女性に対して、いまだに伝統的な役割を果たすことが求められていると聞きます。女性を活用することが経済成長に資するかどうかはともかく、日本の女性が、もっと広く社会で活躍できるようになることに反対する理由は全くありません。女性にとっては極めて重要なことで、疑いようもありません。家庭での意思決定に女性の意向がより強く反映されますし、子供への投資がもっと増え、次世代のためにもよいインパクトがあります。大きな間違いの1つは、経済成長のために女性活用が必要だと主張することです。

ゼロから制度を導入して都市を作ってもうまくいかない 

 女性活用に関するビジネススクールのケーススタディもあります。でもこれ、なぜなのでしょう。

 人口の半分が(社会の意思決定に際して)何の力も持てないなんて、そもそもとてもおかしなことです。それが成長を促すかどうかなど、そもそもケースにする必要なんかない。それに反対する理由がない。たとえ経済を成長させないとしたって、女性に活躍の場を与えるというのはとても大切なことですよ。

最後に。内生的成長理論を確立したことで知られるポール・ローマー米スタンフォード大学教授が、既得権者のいない、理想的な制度を最初から導入した都市をゼロからつくるという「チャーター・シティー」の構想を打ち上げ、ホンジュラスで導入するかどうかが検討されました。このような試みに対してどうお考えですか。

 制度の整った理想的なゼロから都市をつくる、というのは理念としては素晴らしいと思うのですが、実行に移すとすれば、かなり乱暴な試みです。ローマ―教授は大変尊敬していますが、かなり勇気のいることでしょう。本気で取り組むとすれば、無数の困難にぶちあたると思います。ホンジュラスで最終的に実現しなかったのは、政府が結局、方針を変えたからなどとうかがっています。先進国からの優れた制度の提案がほとんどなかったとされ、それは現地の政治的特権層が危惧したからとも聞いています。今のところ、失敗に終わりそうな情勢ですね。万が一成功したとしても、グローバルに展開できる貧困解決策ということにはならないと思います。


02. 2013年6月10日 10:02:30 : niiL5nr8dQ
主権という幻想を追い求める国家
2013年06月10日(Mon) Financial Times
(2013年6月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 国家が戻ってきた。1945年以降の多国間の秩序は崩壊しつつある。どこを見ても、国家主義が勢いを増している。既成勢力も新興勢力も、国家主権という伝統的な概念を掘り返している。こうした国々は、1648年のウェストファリア条約が生み出した国際体制を取り戻したいと考えている。彼らは幻想を追い求めている。

 共産主義が崩壊した後、しばらくの間は、未来はポストモダン体制に属していた。この体制は、政治組織に欠かせない基盤だが、共通の利益を認識する。各国政府は協調的な安全保障と繁栄を支持し、国益という狭い概念を放棄する。近年の混乱の後でこう言うのは奇妙に思えるが、欧州連合(EU)は新たな国際秩序の模範と見なされていた。

 この体制には非現実的な夢想以上の実体があった。グローバル化は経済的な相互依存を深めた。国家に対する脅威は、気候変動から流行病、テロリズムと非通常兵器の拡散から大量移住に至るまで、はっきりそれと分かる国際的な特性を備えている。

 移動する資本、国境を越えたサプライチェーン(供給網)、そしてデジタル時代のつながりは、個々の国から力を奪う。失われた権威を取り戻す方法は、各国が協調して行動することだった。

ウェストファリア体制への郷愁?

 ところが、ムードが変わった。「台頭する」国は、「台頭を遂げた」国になると、ルールに基づく制度を受け入れるのを渋るようになった。そのルールが主に既成勢力の大国によって書かれたものである以上、なおのことだった。

 一方、米国は「世界の警察」の役割から退きつつある。ユーロを救うために大幅な統合深化が求められているポストモダンの欧州でさえ、国家と超国家の緊張と格闘している。

 新たな大国――中国、インド、ブラジル、南アフリカ共和国など――は、ジョン・ロールズの協調的な世界よりトーマス・ホッブズの絶対的な主権を好む。これらの国は、19世紀の世界のような景色を思い描いている。力というものが、最大の経済と軍隊を持つ国々に属し、競合する同盟関係によって均衡が保たれていた世界だ。

 ウラジーミル・プーチン大統領が専制国家を再び築こうとしているロシアも、ほとんど同じ見解を抱いている。主権は不可侵なのだ。ウェストファリア体制の内政不干渉の原則に従うと、世界はシリアの残忍なバシャル・アル・アサド政権をそのままにしておかなければならない。


米国は「世界の警官」の役割から退き始めている〔AFPBB News〕

 現在の体制を設計した立役者であるにもかかわらず、米国は常に、自国の行動の自由を制限することに微妙な感情を抱いてきた。だが、かなり最近まで、自国の好みに合うように国際的なルールを定めることで、矛盾する考えを両立させることができた。

 しかし今、米議会は主権を侵害する恐れがあるとの理由から、全く当たり障りのない国際条約にさえ調印することを拒んでいる。

 バラク・オバマ大統領率いる米政権は口先では、ベルリンの壁崩壊後にジョージ・H・W・ブッシュ元大統領が一時思い描いた新しい国際秩序に賛同する。だが、台頭する中国に挑まれ、気難しいロシアに妨害されている米国は、国際主義に嫌気が差している。

 一極体制の時期は、自給自足の超大国の時代に道を譲った。米国はどの国にも増して、世界と距離を置くことができる地理、天然資源、経済を備えている。米国は今、壮大な多国間体制よりも有志連合を好むようになっている。

 欧州では、事情はもっと複雑だ。ユーロ圏17カ国はより多くの主権の共有化にコミットしているが、ユーロ危機は国家主義の亡霊を呼び覚ました。フランスのフランソワ・オランド大統領は、欧州政治同盟の必要性について雄弁に語ったかと思えば、次の瞬間には、フランスの経済問題に対する欧州委員会の干渉を激しく批判する。

国内問題を「部外者」のせいにすることほど容易なことはない


欧州各国ではEUに対する不信感が高まり、各地で国家主義者が勢いを増している〔AFPBB News〕

 EUに反感を抱いているのは、英国の保守党だけではない。経済的なストレスと不安の時代にあって、大陸全土の国家主義者が魅惑的な調べを奏でている。

 国が抱える国内問題を「部外者」――それが移民であれ、ブリュッセルの官僚であれ――のせいにすることほど容易なことはない。

 これに対抗する見方もある。筆者は先日、外交政策を専門とするアイルランドのシンクタンク、国際経済問題研究所(IIEA)がダブリンで開催した主権とグローバル化に関する会議で、そうした見解を耳にした。

 アイルランドは世界金融危機の後、大変な苦難に耐えた。だが、EUとユーロ圏に対するコミットメントは揺らいでいない。大半のアイルランド市民は今も、ダブリン大学トリニティカレッジの学者、ジョン・オヘイガン氏に同意する。同氏は会議で、アイルランドは国家主権を共有することで、自国の利益を追求する力を高めたと語った。

小国も大国も避けられない「グローバル化の事実」

 この相互依存は、小国のみならず、大国にとっても避けられない現実だ。国家のムードは変わったかもしれないが、グローバル化の事実は変わっていない。どちらかと言えば、国家権力が非国家主体へと拡散する動きは加速した。

 高齢化が進み、世界経済に占める割合が急激に低下する大陸として、欧州は自分たちの価値観と利益を守るために一体となって行動しなければならない。中国は、気候変動の荒廃や、開かれた市場と世界的な供給ルートへの脅威に非常に脆い。米国は、比較的自給自足が成り立っているにしても、自国の繁栄と安全保障に対する遠くの脅威を避けられない。

 我々の元に残された矛盾は、国家主権が大いに尊ばれる一方で、行動する能力と厳密に定義した場合、主権が次第に効果を失っている世界だ。世界の国々は、古い秩序を新しい取り決めに改め、国家の目標だけでなく共通の目標を認めることに、避けられない利害を共有している。

 だからと言って、各国が実際にそうするわけではない。歴史は、政治家が幻想を追求することを選んだ不幸な事例に満ちている。欧州は来年、初期のグローバル化時代が流血のうちに終わってから100周年を迎える。

By Philip Stephens

 


 

混迷深まるキプロス、救世主はロシアから中国へ?
街中に突然増え始めた中国語の看板
2013年06月10日(Mon) 大坪 祐介
 日本では株価の急回復とともにすっかり忘れ去られた感のあるキプロスだが、各種報道によれば国内経済はその混迷の度合いを一段と強めている。4月27日付の英エコノミスト誌で報じられた地元コンサル会社の推計によれば、2013年の国内総生産(GDP)成長率はマイナス15%、さらに2014年もマイナス15%の景気後退が続くという。

 筆者は4月14〜15日の2日間、キプロスのリマソルで開催された Global Russia Business Meeting(GRBM)に出席する機会があり、ちょうど2年ぶりにキプロスを訪れる機会があったので、その様子をリポートしたい。

プールやビーチはロシア人でいっぱい


リマソル市内 週末夜のレストラン、客は筆者のグループのみ
 リマソルはキプロス第2の都市でキプロス島の南側、地中海に面した港町・商業都市である。 港に続く海岸線はキプロス最大のリゾートエリアで高級ホテルが立ち並んでいる。

 特にロシア人には人気の高いエリアで、街中にはロシア語の看板が立ち並んでいる。

 今回のGRBMの会場となった Four Seasons ホテル(世界的な高級ホテルチェーンのフォーシーズンズ ホテルズ&リゾートとは無関係)も金融危機前は客の8割がロシア人とのことであった。

 この時は金融危機後でかつロシアの連休前でもあり、閑古鳥が鳴いているかと思いきや、それでもプールサイドやビーチはロシア人でそこそこ賑わっていた。


リマソル市内のショーウインドウには裸のマネキン
 この時期にキプロスでロシアビジネスフォーラムというのも何とも酔狂な話であるが、会議の開催自体は1年前から決まっており、筆者も1年前からパネルへの参加を誘われていた。

 何よりも筆者の投資先のロシア企業もキプロス親会社の会社が多いので、現地調査にはいい機会と判断しモスクワから3時間のフライトに乗った。果たして週末のキプロス行きの便はロシア人観光客で満席であった。

 ところで、このGRBMはスイスのホラシス(Horasis)という国際組織が主催したコンファレンスで、今回はロシアとキプロスを中心に30カ国、300人以上の政府関係者、ビジネスパーソンが集まり、2日間にわたって各テーマに分かれて議論を行った。

 ホラシス会長のフランク・ユルゲン・リヒター(Frank Jurgen Richter)氏は、前職はワールド・エコノミック・フォーラム(ダボス会議)のディレクター、かつて慶応義塾大学で国際政治学を修めた知日派でもある。

 彼はロシアのほかインド、中国、アラブ諸国にフォーカスしたビジネスイベントをヨーロッパで開催しており、ロシアは2010年から毎年開催、今回は4回目である

 今年はロシアからの出席者は若干少ないように思えたが、その分、湾岸諸国や欧州からの参加者が増えたように感じた。日本からは例年2〜3人がモスクワから参加しているが、今回はジェトロのドバイ事務所が参加していたのが目を引いた。

ロシアへの影響は思ったより軽微


リマソル市内の至る所に「FOR RENT」の看板が
 さて、問題のキプロスであるが、筆者はポジティブ、ネガティブ両方の印象を受けた。

 まずポジティブな印象は、キプロス危機のロシアへの影響は思ったより小さいということである。ディナーのテーブルで隣に座ったプライスウォーターハウスクーパース(PwC)のディレクターにロシアへの影響をストレートに尋ねてみたのだが、答えは「さほど大きくはない」とのことだった。

 その理由はロシア人やロシア企業にとってキプロスは資金の最終投資先ではなく、一時的な通過地点なので、そもそも滞留資金は大きくないこと、またロシア人は昨年夏から秋にかけて(昨年の記事参照)急速にキプロスから資金を移動させており、3月の時点で残っていた資金はさらに少ないのではないかという説明であった。


ハイウエイ沿いにはロシア人に宛てられたメッセージ 「兄弟よ、我々はいつも共にある」。それを見たロシア人は「俺たちはいつからキプロスと兄弟になったんだ?」
 同じ説明は、キプロスからモスクワに戻って、知り合いの弁護士からも聞かされた。特にロシア人のキプロスからの資金移動に関しては昨年12月がピークではないかとのことであった。

 年が明けてからは、彼のオフィスにはキプロスの知り合いの弁護士からの電話がひっきりなしにかかり、「ロシア人のマネーはいつになったら戻るのか」という問い合わせばかりだったという。

 GRBM参加者の中には、ロシア・ナンバーワンの資産家ウスマノフ氏の資産管理会社の財務担当者もいたが、もしロシアのオリガルヒが甚大な損失を被っていたとすれば、こうした会合で和やかに議論に参加することはないだろう。

 ともあれ欧州がロシアへの牽制を込めてキプロスに強硬策を迫ったのだとしたら、それはやや的外れであったと言わざるを得ない。

 もちろん、ロシアの中小企業や富裕層の一部には甚大な影響を被った先がないとは言えないが、ロシア経済を揺るがすインパクトはない。むしろ、次に述べるようにキプロスそのものへの影響がはるかに大きかったと言えよう。

 キプロス経済に対する金融危機の影響は筆者の想像を超えていた。リマソルの街中を歩いてみると、商店の3軒に1軒は閉店しているような状況である。飲食店も営業しているのはマクドナルドやスターバックスといった外国資本の店ばかりで、地元の飲食店は閉店してしまったか、開店休業状態の店がほとんどである。

インフラの老朽化で観光産業にダメージ


中国語の不動産広告
 同じ時期にキプロスの別の観光都市パフォスに滞在したロシア人の友人の話では、パフォスは以前と変わりなく賑やかだったとのことだが、それも時間の問題ではないだろうか。

 キプロスの基幹産業は観光業(と金融)であったが、もはやキプロスに外国資本の投資は期待できない。ホテルはじめ観光インフラも老朽化が進む一方だろうし、そうした観光地には観光客の出足が鈍ることは目に見えている。

 もちろん、キプロス当局の危機感は並ではない。BRGMのディナーではアナスタシアデス大統領が出席、金融危機後初めて公のスピーチを行った。30分近くに及ぶ熱弁のほとんどはEUへの恨み言が多かったように記憶する。


3ベッドルーム、プライベートプール付き、30万ユーロから・・・
 何より印象的だったのはロシアマネーを引き留めるための苦肉の策、「300万ドル以上の損失を被ったロシア人には、キプロスの市民権(=EUパスポート)を与えることを検討している」との発言だった。

 大統領は万来の拍手を期待していたのかもしれないが、周りのロシア人は呆気に取られるか苦笑するか、いずれにしても歓心を買うことはできなかったようだ。「同じEU加盟国のラトビアなら1万5000ドルも払えばパスポート買えるからね・・・」

 ところで、今回のキプロスの金融危機対応、すなわち「ベイルイン」に対して、BRGMと同じ週にモスクワで開催されたズベルバンクフォーラムでバルセロヴィッツ元ポーランド中銀総裁、副首相兼大蔵大臣が興味深い発言をしていた。

 曰く、「キプロス自身に痛みを伴う措置が必要であったことは理解できる。しかし、欧州中央銀行(ECB)と国際通貨基金(IMF)はアイルランドは救済したのにキプロスは見放した。その基準が不明確であることには疑問を感じる」

 さて、最後に気になったのが2年前には全く見かけなかった中国語の看板である。今回は空港はじめ、島内の至る所で目にした。

 中国と言えば、BRGMに出席していた筆者の友人の話も興味深い。彼は昨年秋にロシアの大手不動産開発会社の社長を辞め、余生は(といっても筆者よりも若い)はイタリアでと話していたのだが、つい先日、中国の会社で働くことにしたとの由。

 中国の西の端、新疆ウイグル自治区の首都ウルムチから、シベリアの中心都市ノボシビリスクまでハイウエーを建設するプロジェクトの社長になったという。同プロジェクトは3月下旬の習近平国家主席とプーチン大統領の会談で合意されたプロジェクトだが、ロシアも中国の資金力には一目置かざるを得ないようだ。

 ともあれ、キプロスにはロシアのみならず、中国という頼り甲斐のある兄も現れたようである。EUに見放されたキプロスが3兄弟で復活を果たすのか、引き続き注目したい。



03. 2013年6月11日 14:40:28 : niiL5nr8dQ
焦点:ギリシャ経済、昏睡状態から覚醒も停滞継続か
2013年 06月 11日 13:33 JST
[アテネ 10日 ロイター] - ギリシャは建設現場で久しく聞かれなかった槌音が響き、顧客が預金の引き出しではなく預け入れのため銀行に列を作るなど、経済が昏睡状態から覚醒しつつある。

しかし統計が示唆する成長は野心的な債務目標の達成や雇用改善に必要な力強さを欠いており、ギリシャ政府の景気回復宣言は時期尚早にみえる。

ギリシャが経済の急激な悪化から抜け出すことは可能だとの楽観論が高まっているのは間違いない。ユーロ離脱(グレグジット)や混乱を伴う債務不履行は話題に上らなくなった。サマラス首相は、自らの財政政策が欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)から予想外の称賛を受け、国債の利回りが低下していることを採り上げて、ギリシャが回復期に入ったと述べた。

しかし変化がはっきりしているのはあくまでもムードであって、実際の経済は6年連続で景気後退が続いており、失業率は27%近くで高止まりして若者の約3人に2人が職に就けていない。

景況感の改善、国債利回りの低下、株式の反発は、持続的な景気回復の見通しが立ったからというよりも、ギリシャが債務不履行を免れるという安堵感が大きい。EUやIMFはギリシャ政府による財政赤字目標達成をほめそやすが、赤字削減策で将来の成長が犠牲になるかもしれない。

コメルツ銀行のエコノミスト、クリストフ・バイル氏は「サクセスストーリには強い警戒感を抱いている。景気がある時点で底を打つのは普通だが、ギリシャが持続的に回復するには真に改革を実行し、追加の債務免除を受ける必要がある」と指摘する。

経済産業調査財団(IOBE)のギリシャの5月景況感指数は5年ぶりの水準を回復したが、景気回復を示す水準を大きく下回っている。IOBEのアンゲロス・ツァカニカス氏は「強い悲観論は和らいだが、まだ楽観論に置き換わってはいない」とした。

ベレンベルグ・バンクは先週の調査ノートで、今の景況感指数はゼロ成長に相当すると分析。エコノミストによると、2014年のGDP成長率は0.6%程度とみるのが現実的で、2015─21年の債務負担圧縮目標の達成に必要な水準に遥かに及ばない。

ギリシャの債務の対GDP比は今年末には175%超と予想されており、20年にはこれを124%に引き下げることが義務付けられている。そのためには財政赤字を削減するだけではなく、国営企業の売却収入で債務を返済する必要がある。

しかし民営化は順調とは言い難い。10日にはガス公社DEPAの入札が不調に終わり、 先月実施したくじ事業運営会社OPAP(OPAr.AT)の33%株式放出も売却価格が市場価格を下回った。

これらのことは、ギリシャ債務で将来、評価損が発生することを示している。民間債権者は昨年、大規模な元本削減の受け入れを余儀なくされたが、ユーロ圏の財務相会合は昨年12月、追加的な措置が必要になるかもしれないとの見方を示した。

ギリシャの現在の債務のほとんどは支援融資で、元本削減の対象となる債務の大半を保有しているのは他のユーロ圏政府だ。こうした措置は最大の支援国であるドイツの有権者には極めて不人気で、ドイツ政府が9月の総選挙を控えて態度を軟化させる可能性は低い。

<足踏み状態>

ギリシャ経済の回復を支える輸出、投資、観光は、支援と引き換えに賃下げや競争力強化といった改革が実施されたが、これまでのところ持ち直しの兆しは見当たらない。

観光業の売上高は第1・四半期に前年比3.7%減少。石油製品を除く輸出は月ごとの振れが大きく、3月には前年比6.5%減少した。

企業は、政府が財政赤字目標達成のために増税したため、投資が低迷し、輸出競争力が削がれたと批判している。また銀行が資金不足に陥り、企業向け融資を絞ったり、最大で年率10%もの利子を課していることも成長を妨げている。

政府は今年中に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字に転換させるとの目標を掲げており、1─3月の財制赤字は目標額の4分の1にとどまった。しかし財務省の統計によるとこれは公共投資や税還付の削減などが原因で、税収は目標を下回っており、赤字目標達成で将来の成長が犠牲になるかもしれない。

ギリシャの10年物国債利回りも9%と、昨年の41%からは大幅に低下したが、政府が国債市場から締め出された2010年初頭の7%は上回っている。

あるエコノミストは国債市場について「流動性不足のために相場上昇は簡単に反転し得る」と話した。

サマラス首相の景気回復宣言でギリシャが慢心に陥り、企業カルテルや既得権益の打破といった経済立て直しに必要な改革のペースが鈍る恐れもある。

政治アナリストのジョン・ルイス氏は「ギリシャ政府は傲慢になりつつある。回復を実際よりも大きく考えている」と指摘。「良いシナリオでも同国経済は何年も低迷する。今の状況では、債務の水準を押し下げるのに必要な成長率を生むことはできない」とした。

(Harry Papachristou記者)


 

米セントルイス連銀総裁:低インフレが緩和長期化を正当化

  6月10日(ブルームバーグ):米セントルイス連銀のブラード総裁はインフレ率が当局目標の2%を下回っていることから、成長加速および失業率低下に向け「積極的」な債券購入の長期化が正当化されるとの認識を示した。総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で、刺激策の維持を支持している。
総裁は10日、モントリオールでのパネル討論会に出席。事前に配布された原稿によれば、「労働市場の状況は昨年の夏以降に改善している」とした上で、「驚くほど低いインフレ指標は、FOMCが積極的な購入プログラムをより長期にわたり維持可能なことを意味している可能性がある」と指摘した。
FOMC は、現在月額850億ドルのペースで進めている債券購入の縮小時期をめぐり議論を続けている。サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は先週、「早ければこの夏にも、当局の購入プログラムに対する何らかの調整、恐らくは下方向への幾分の調整があり得ると思う」と指摘。一方でアトランタ連銀のロックハート総裁は、最近の経済指標について「依然として非常にまちまちな内容だ」と発言。債券購入ペース鈍化の検討時期については「私ならもう少し慎重に考えて8月か9月、もしくは年末までにと言うかもしれない」と述べていた。FOMCは来週、政策決定会合を開く。
インフレは低下傾向
この日の討論会でブラード総裁は「米国ではインフレは意外にも低下傾向にある」と指摘。緩慢ながらも安定した成長や労働市場の改善、金融市場での行き過ぎた動きが限定されている状況は、「FOMCが積極的な資産購入プログラムを継続できることを示唆している」と述べた。
討論会後の質疑応答では、インフレ率は「低下が続いており、全く戻っていない」とし、「上昇するのを依然待っているが、やや気がかりではある」と述べた。
このほか記者団に対して、米財政赤字の縮小には経済成長の持続が示唆されていると述べた。
ブラード総裁は、「米国の財政赤字および債務の状況は改善しつつあり、経済成長の持続を反映している」とし、「これは米国の見通し改善を示す新たな兆候だが、もしそうなのであればインフレ率はより高くても良いはずだ。しかしそうなってはおらず、若干理解し難い状況にある」と続けた。
原題:Fed’s Bullard Says Low Inflation May Warrant Prolonging QE(3)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:Atlanta Steve Matthews smatthews@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2013/06/11 04:10 JST


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