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［東京 １０日 ロイター］ - 午後３時のドル／円は、前週末のニューヨーク市場午後５時時点に比べてドル高／円安の９８円前半。
未明に９７円前半の安値を付けたあと、ちょうど１円反発したが、あすに日銀金融政策決定会合を控えてポジションを傾けづらく、９８円半ばを目前に折り返して小幅に軟化した。
前週末７日のニューヨーク市場では、５月米雇用統計の発表後にドル／円が一時９４．９７円付近まで下落したが、米長期金利の上昇基調で急速に水準を回復した。この日は、早朝からドル／円が再び騰勢を強め、午前８時２０分ごろには９８．４３円まで上昇。未明につけた安値９７．４３円からちょうど１円値を戻した。
一方、日経平均株価.N225は６００円を超える上昇となったが、円売り反応はいまひとつ盛り上がりに欠けた。大手信託銀行の関係者は「９８円台では売り注文がかなりある。（前週末に）ドル／円が急落する場面でも、９８円台で構築したロングを切らずに持っていた参加者も多いようだ」と話した。
個人投資家については「株と為替、両市場でダメージを被っており、クロス円は先週、損失カットでロングを切らされ、全般にトレード意欲が減退している」（ＦＸ会社）という。
市場では、ドル／円の先行きについて慎重な見方が聞かれた。
「完全に調整（円売りポジションの巻き戻し）が終わったとは言えないが、とりあえず小康状態にある。債券市場が安定しない限りは、底固めができたとは言えないだろう」とＦＸプライム取締役の上田眞理人氏は述べ、短期的にドルが９３円台まで下押しする可能性もあると予想する。
今週最大の注目点は日銀決定会合だが、海外投資家の間では、年０．１％の固定金利オペの期間を現行の１年以内から３年まで延長して資金供給する「日本版ＬＴＲＯ」およびＥＦＴの購入枠追加への期待が徐々に広がっている。
「戦力の逐次投入はしないという黒田総裁の姿勢を踏まえると後者の確率は低いとみられるが、ＬＴＲＯについては、２年物どまり、あるいは延長なしの場合は、失望感からドル売り／円買いが誘発される可能性があるとみている」と野村証券金融市場調査部・チーフＦＸストラテジスト、池田雄之輔氏は言う。
ＬＴＲＯについて池田氏は、２年間で２％インフレを達成すると宣言した手前、２年物がすわりが良いかもしれないが、２年物では時間軸を伸ばす効果が十分に得られず、金利が２年経過後もすぐには上昇しないとのメッセージが含まれない、と指摘する。他方、ＬＴＲＯが３年、ＥＴＦ追加購入なしのメーンシナリオでは、ドル／円の押し目買いにつながると同氏は予想する。
財務省によると、４月の経常収支は７５００億円の黒字。事前予想の中央値３２００億円の黒字を大きく上回った。所得収支が２兆１１６０億円と過去最大の黒字幅を記録したことが貢献した。
所得収支が前年比５１．８％増と大幅に増加した要因は、直接投資収益の中の「配当金・配分済支店収益」。海外子会社の配当金や利益の差し戻しなどを計上するもので、差し引き７８１１億円と前年同月の２３９６億円から３倍超の伸びとなった。決算期を迎える企業が多い３月などは、海外からの送金が集中する傾向があるが、４月の大幅な増加は異例。財務省でも「個別企業の個々の判断が重なったとしか言いようがない」とのみ説明している。
米経済学者のキンドルバーガーやクローサーが提唱した「国際収支の発展段階説」では、国の発展段階を１）未成熟な債務国、２）成熟した債務国、３）債務返済国、４）未成熟な債権国、５）成熟した債権国、６）債権取崩国の６段階に分類する。
日本は対外競争力の低下により日本の貿易サービス収支が赤字化する一方で、所得収支の黒字で経常収支は黒字という「成熟した債権国」の段階に入っている。
(ロイターニュース 森佳子)
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